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2026.01.07
宮路 幸人
お金は出ていかないのに「経費」になる?税理士が解説する「減価償却」の魔法と注意点
- 減価償却
- 税理士
- 執筆記事
「減価償却」とは? なぜ必要なのか?
事業で利益を出すには、売上から経費を引き、税金はその利益にかかります。
ここで、不動産投資をやったことない人が疑問に思うのが、「5,000万円のマンション買ったら、その5,000万円は買った年に全部経費になるの?」という点です。結論からいうと、残念ながら 一度に全額を経費にすることはできません。
税金のルールでは、仕事で使う高価なモノ(建物や機械、車など)で、時間が経つと価値が減っていくものは、買った時に全部経費にするのではなく、そのモノが使える期間(耐用年数)に分けて、少しずつ経費にしていくことになっています。この方法を「減価償却」といいます。
もし5,000万円の物件を買った年に、その全額を経費にできたらどうなるでしょう? その年は、家賃収入(たとえば200万円)よりも大きい経費(5,000万円)が出て、大赤字になります。しかし、次の年からはその経費がゼロになるから、今度は大黒字になる。
これでは、その不動産投資で「毎年どれくらい利益が出ているのか」がわからなくなります。また、税金の面から見ても、ある年は税金がゼロ(または払いすぎた分が戻ってくる)でありながら、ある年からは高い税金を払うのは少々おかしなこと。そこで「モノが価値を生み出す期間(家賃収入を生む期間)」に合わせて、「モノを買った費用も分けて計上」して、毎年の損益を計算しよう考えるのが「減価償却」なのです。
ここで大事なのは、減価償却できるのは「時間が経つと価値が減る(古くなる)モノ」だけということです。 不動産は「土地」と「建物」にわかれますが、このうち「建物」は古くなるけれど、「土地」は古くならないと考えられています。そのため土地の購入費用は減価償却できません。不動産投資で節税を考えるなら、この「建物」と「土地」の違いはおさえておきましょう。
減価償却費の計算方法(区分マンションの場合)
では「減価償却費」は具体的にどのように計算するのでしょうか。
個人で不動産投資をしている人が建物を買った場合、今の税法では基本的に「定額法」という方法で計算します。定額法は、その名前の通り、毎年「同じ額」を償却していく方法で、計算式はすごくシンプルです。
毎年の減価償却費=取得価額×償却率
この計算式で重要なのは「取得価額」と「償却率」です。
前述のとおり、土地は減価償却できません。そのため、ここでいう「取得価額」は、基本的には「建物価格」(と、建物にかかる購入費用の一部)のことです。売買契約書に「土地価格:X,XXX万円」「建物価格:Y,YYY万円」と書いてあれば、その建物価格をそのまま使います。もし合計金額(たとえば5000万円)しか書いてない場合は、固定資産税評価額の割合を参考にし、建物価格と土地価格をわけます。
「償却率」は、建物などの資産をどのくらいの期間で経費化するかを示す割合で、 税法で定められた耐用年数によって決まります。 新築の居住用建物の場合、構造ごとの耐用年数は以下の通りです。
- 木造:22年
- 鉄骨造:19年~34年
- 鉄筋コンクリート造(RC造):47年
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):47年
償却率は、国税庁が公表している 「減価償却資産の償却率表」で確認できます。 以下、計算例です。
【新築RCマンションの計算例】
| 購入物件 | 新築RC区分マンション |
|---|---|
| 物件価格(総額) | 5,000万円 |
| 内訳 | 建物価格:3,000万円/土地価格:2,000万円 |
| 構造 | RC造(新築) |
- ステップ1:耐用年数と償却率の確認
新築RC造の法定耐用年数は47年です。 国税庁の償却率表(定額法)によると、 耐用年数47年の償却率は0.022となります。
- ステップ2:減価償却費の計算
減価償却費の計算式
減価償却費 = 建物の取得価額 × 償却率
計算例:3,000万円 × 0.022 = 66万円
【結論】
- このケースでは、年間66万円を 47年間にわたって減価償却費として計上し、 建物価格3,000万円まで経費にできます。
- なお、年の途中で物件を購入した場合は、 その年の減価償却費は月割り計算となります。
減価償却が「節税」につながるロジック
なぜ減価償却が「節税」になるかというと、一番の理由は、減価償却費が「実際にお金が出ていかない経費」だからです。不動産投資の「利益」である「不動産所得」は、以下の通り計算します。
不動産所得=総収入金額(家賃収入など)-必要経費
この「必要経費」には、例として以下のようなものがあります。
A:実際にお金が出ていく経費
- ローン金利(元本返済は経費になりません)
- 管理費、修繕積立金
- 固定資産税、都市計画税
- 賃貸管理委託料、広告宣伝費
- 損害保険料
B:実際にお金が出ていかない経費
- 減価償却費
減価償却費は、あくまで「買った時に払った(またはローンを組んだ)建物のお金を、何年もかけて経費にしている」だけです。経費にする66万円のために、今期66万円を誰かに払うわけではありません。
一方で、お金は出ていくのに経費にならないのが「ローンの元本返済部分」。この「税金のルール」と「お金の流れ」のズレが、節税になる理由です。
会社員が不動産投資をする一番のメリットは「損益通算」です。
たとえば、年間の収支が以下のような場合を考えてみましょう。
【年間収支の例】
- 年間家賃収入:200万円
- 経費(ローン金利・管理費・税金など):50万円
- 減価償却費(支出なし経費):66万円
この場合の不動産所得は、次のように計算されます。
200万円(収入)-50万円(支出あり経費)-66万円(支出なし経費) = 84万円(黒字)
では、もし減価償却費が年間200万円だった場合はどうでしょうか。
200万円(収入)-50万円(支出あり経費)-200万円(支出なし経費) = ▲50万円(赤字)
不動産所得が赤字になりました。この「不動産所得の赤字」は、給料と合算できます。これが損益通算です。
【損益通算のイメージ】
- 給料:600万円
- 不動産所得:▲50万円
この場合、その年の課税対象となる所得は次の通りです。
600万円-50万円=550万円
として計算されます。本来600万円にかかるはずだった所得税・住民税が、550万円で計算されるので、税金が安くなります。給料から天引きされていた税金が多すぎたことになるので、確定申告をすれば、その差額が戻ってきます。
手元のお金(家賃収入-ローン返済-諸経費)はプラスなのに、 減価償却費のおかげで税金が安くなる。
これが、減価償却が「節税」といわれる理由です。
「魔法」が解ける日? 減価償却の注意点
減価償却には強力な効果がありますが、「費用の計上ルール」に過ぎません。そして、この効果は一定期間で終了します。
注意点1:減価償却は「いつか終わる」
減価償却は、決められた「耐用年数」の間しかできません。前述の新築RCマンションの例(耐用年数47年)では、47年間は毎年66万円を経費にできますが、48年目からは、この66万円がなくなります。家賃収入や他の経費が変わらないとすると、48年目からは、不動産所得が年間66万円増えることになります。当然、所得税・住民税も増えます。
注意点2:中古物件は「終わり」が早い
中古物件は、買った時の耐用年数が新築より短くなります。たとえば、耐用年数(47年)を全部過ぎたRCマンションを買った場合、耐用年数は「47年×0.2=9.4年」となり、9年になります。耐用年数が短いということは、1年あたりの減価償却費が大きくなります。これは、短期間で節税したい人にはいいかもしれません。しかし、9年後には減価償却が終わってしまうので、税金が増えることを考えておかないと、急に苦しくなる可能性があります。
注意点3:デッドクロス(Dead Cross)
不動産投資で一番怖いのが「デッドクロス」です。これは、「ローン元本返済額 > 減価償却費」となる状態のことです。
- ローン元本返済額:ローン返済は、年数が経つにつれて「金利」が減り、「元本」が増えていきます。この「元本」は、お金が出ていくのに経費になりません。
- 減価償却:毎年一定額です。これは、お金が出ていかないのに、経費になります。
デッドクロスは、「お金が出ていくのに経費にならない元本」が、「お金が出ていかないのに経費になる減価償却費」を上回った時に起こります。「手元からお金は出ていくのに、税務上の経費はそれより少ない」、つまり「手元にお金は残らないのに、税務上の利益だけが増えていく」。これがデッドクロスの正体です。お金はギリギリなのに、税金だけたくさん払うことになります。減価償却期間が終わる時は、一番大きなデッドクロスといえます。
まとめ
不動産投資の「減価償却」は、建物の購入費用を何年かに分けて経費にするルールです。土地は対象外です。実際にお金が出ていかない経費なので、税金を安くすることができます。
しかし、減価償却はいつか終わり、税金が増えます。特に、ローン元本返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」は危険なので、購入前に一度シミュレーションしておくと安心です。
この記事を書いた人
宮路 幸人
宮路幸人税理士事務所 税理士/行政書士/CFP
税理士としての豊富な実務経験により、会計税務の問題から経営や資金繰りの相談など、様々な問題に対応。強みのある分野は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれる「笑顔相続」を心がけトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。
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「減価償却」とは? なぜ必要なのか?
事業で利益を出すには、売上から経費を引き、税金はその利益にかかります。
ここで、不動産投資をやったことない人が疑問に思うのが、「5,000万円のマンション買ったら、その5,000万円は買った年に全部経費になるの?」という点です。結論からいうと、残念ながら 一度に全額を経費にすることはできません。
税金のルールでは、仕事で使う高価なモノ(建物や機械、車など)で、時間が経つと価値が減っていくものは、買った時に全部経費にするのではなく、そのモノが使える期間(耐用年数)に分けて、少しずつ経費にしていくことになっています。この方法を「減価償却」といいます。
もし5,000万円の物件を買った年に、その全額を経費にできたらどうなるでしょう? その年は、家賃収入(たとえば200万円)よりも大きい経費(5,000万円)が出て、大赤字になります。しかし、次の年からはその経費がゼロになるから、今度は大黒字になる。
これでは、その不動産投資で「毎年どれくらい利益が出ているのか」がわからなくなります。また、税金の面から見ても、ある年は税金がゼロ(または払いすぎた分が戻ってくる)でありながら、ある年からは高い税金を払うのは少々おかしなこと。そこで「モノが価値を生み出す期間(家賃収入を生む期間)」に合わせて、「モノを買った費用も分けて計上」して、毎年の損益を計算しよう考えるのが「減価償却」なのです。
ここで大事なのは、減価償却できるのは「時間が経つと価値が減る(古くなる)モノ」だけということです。 不動産は「土地」と「建物」にわかれますが、このうち「建物」は古くなるけれど、「土地」は古くならないと考えられています。そのため土地の購入費用は減価償却できません。不動産投資で節税を考えるなら、この「建物」と「土地」の違いはおさえておきましょう。
減価償却費の計算方法(区分マンションの場合)
では「減価償却費」は具体的にどのように計算するのでしょうか。
個人で不動産投資をしている人が建物を買った場合、今の税法では基本的に「定額法」という方法で計算します。定額法は、その名前の通り、毎年「同じ額」を償却していく方法で、計算式はすごくシンプルです。
毎年の減価償却費=取得価額×償却率
この計算式で重要なのは「取得価額」と「償却率」です。
前述のとおり、土地は減価償却できません。そのため、ここでいう「取得価額」は、基本的には「建物価格」(と、建物にかかる購入費用の一部)のことです。売買契約書に「土地価格:X,XXX万円」「建物価格:Y,YYY万円」と書いてあれば、その建物価格をそのまま使います。もし合計金額(たとえば5000万円)しか書いてない場合は、固定資産税評価額の割合を参考にし、建物価格と土地価格をわけます。
「償却率」は、建物などの資産をどのくらいの期間で経費化するかを示す割合で、 税法で定められた耐用年数によって決まります。 新築の居住用建物の場合、構造ごとの耐用年数は以下の通りです。
- 木造:22年
- 鉄骨造:19年~34年
- 鉄筋コンクリート造(RC造):47年
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):47年
償却率は、国税庁が公表している 「減価償却資産の償却率表」で確認できます。 以下、計算例です。
【新築RCマンションの計算例】
| 購入物件 | 新築RC区分マンション |
|---|---|
| 物件価格(総額) | 5,000万円 |
| 内訳 | 建物価格:3,000万円/土地価格:2,000万円 |
| 構造 | RC造(新築) |
- ステップ1:耐用年数と償却率の確認
新築RC造の法定耐用年数は47年です。 国税庁の償却率表(定額法)によると、 耐用年数47年の償却率は0.022となります。
- ステップ2:減価償却費の計算
減価償却費の計算式
減価償却費 = 建物の取得価額 × 償却率
計算例:3,000万円 × 0.022 = 66万円
【結論】
- このケースでは、年間66万円を 47年間にわたって減価償却費として計上し、 建物価格3,000万円まで経費にできます。
- なお、年の途中で物件を購入した場合は、 その年の減価償却費は月割り計算となります。
減価償却が「節税」につながるロジック
なぜ減価償却が「節税」になるかというと、一番の理由は、減価償却費が「実際にお金が出ていかない経費」だからです。不動産投資の「利益」である「不動産所得」は、以下の通り計算します。
不動産所得=総収入金額(家賃収入など)-必要経費
この「必要経費」には、例として以下のようなものがあります。
A:実際にお金が出ていく経費
- ローン金利(元本返済は経費になりません)
- 管理費、修繕積立金
- 固定資産税、都市計画税
- 賃貸管理委託料、広告宣伝費
- 損害保険料
B:実際にお金が出ていかない経費
- 減価償却費
減価償却費は、あくまで「買った時に払った(またはローンを組んだ)建物のお金を、何年もかけて経費にしている」だけです。経費にする66万円のために、今期66万円を誰かに払うわけではありません。
一方で、お金は出ていくのに経費にならないのが「ローンの元本返済部分」。この「税金のルール」と「お金の流れ」のズレが、節税になる理由です。
会社員が不動産投資をする一番のメリットは「損益通算」です。
たとえば、年間の収支が以下のような場合を考えてみましょう。
【年間収支の例】
- 年間家賃収入:200万円
- 経費(ローン金利・管理費・税金など):50万円
- 減価償却費(支出なし経費):66万円
この場合の不動産所得は、次のように計算されます。
200万円(収入)-50万円(支出あり経費)-66万円(支出なし経費) = 84万円(黒字)
では、もし減価償却費が年間200万円だった場合はどうでしょうか。
200万円(収入)-50万円(支出あり経費)-200万円(支出なし経費) = ▲50万円(赤字)
不動産所得が赤字になりました。この「不動産所得の赤字」は、給料と合算できます。これが損益通算です。
【損益通算のイメージ】
- 給料:600万円
- 不動産所得:▲50万円
この場合、その年の課税対象となる所得は次の通りです。
600万円-50万円=550万円
として計算されます。本来600万円にかかるはずだった所得税・住民税が、550万円で計算されるので、税金が安くなります。給料から天引きされていた税金が多すぎたことになるので、確定申告をすれば、その差額が戻ってきます。
手元のお金(家賃収入-ローン返済-諸経費)はプラスなのに、 減価償却費のおかげで税金が安くなる。
これが、減価償却が「節税」といわれる理由です。
「魔法」が解ける日? 減価償却の注意点
減価償却には強力な効果がありますが、「費用の計上ルール」に過ぎません。そして、この効果は一定期間で終了します。
注意点1:減価償却は「いつか終わる」
減価償却は、決められた「耐用年数」の間しかできません。前述の新築RCマンションの例(耐用年数47年)では、47年間は毎年66万円を経費にできますが、48年目からは、この66万円がなくなります。家賃収入や他の経費が変わらないとすると、48年目からは、不動産所得が年間66万円増えることになります。当然、所得税・住民税も増えます。
注意点2:中古物件は「終わり」が早い
中古物件は、買った時の耐用年数が新築より短くなります。たとえば、耐用年数(47年)を全部過ぎたRCマンションを買った場合、耐用年数は「47年×0.2=9.4年」となり、9年になります。耐用年数が短いということは、1年あたりの減価償却費が大きくなります。これは、短期間で節税したい人にはいいかもしれません。しかし、9年後には減価償却が終わってしまうので、税金が増えることを考えておかないと、急に苦しくなる可能性があります。
注意点3:デッドクロス(Dead Cross)
不動産投資で一番怖いのが「デッドクロス」です。これは、「ローン元本返済額 > 減価償却費」となる状態のことです。
- ローン元本返済額:ローン返済は、年数が経つにつれて「金利」が減り、「元本」が増えていきます。この「元本」は、お金が出ていくのに経費になりません。
- 減価償却:毎年一定額です。これは、お金が出ていかないのに、経費になります。
デッドクロスは、「お金が出ていくのに経費にならない元本」が、「お金が出ていかないのに経費になる減価償却費」を上回った時に起こります。「手元からお金は出ていくのに、税務上の経費はそれより少ない」、つまり「手元にお金は残らないのに、税務上の利益だけが増えていく」。これがデッドクロスの正体です。お金はギリギリなのに、税金だけたくさん払うことになります。減価償却期間が終わる時は、一番大きなデッドクロスといえます。
まとめ
不動産投資の「減価償却」は、建物の購入費用を何年かに分けて経費にするルールです。土地は対象外です。実際にお金が出ていかない経費なので、税金を安くすることができます。
しかし、減価償却はいつか終わり、税金が増えます。特に、ローン元本返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」は危険なので、購入前に一度シミュレーションしておくと安心です。
この記事を書いた人
宮路 幸人
宮路幸人税理士事務所 税理士/行政書士/CFP
税理士としての豊富な実務経験により、会計税務の問題から経営や資金繰りの相談など、様々な問題に対応。強みのある分野は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれる「笑顔相続」を心がけトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。