2024.11.14

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

【令和6年分対応】不動産収入にかかる税金は? 賢く対策し収益アップを目指そう

  • 節税・税金
  • マンション投資
  • 家賃収入

不動産投資で家賃収入を得る際は、所得税と住民税がかかります。さらに、物件の取得や売却、賃貸契約時には、印紙税、登録免許税、不動産取得税なども発生する可能性があります。これらを考慮し、最終的な収入がどれくらい残るかシミュレーションすることが不動産投資において大切です。

不動産投資で利益が出るとかかる税金は2種類

家賃収入を得る際に避けて通れないのが、所得税と住民税です。

所得税

不動産から家賃収入を得ると、その収入に対して所得税が課されます。所得が多いほど税率は高くなります。

具体的な税率は次の表でご確認ください。

課税所得 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万3,600円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

たとえば課税所得が1,000万円の場合、所得税額は
1,000万円×33%-153万3,600円=176万6,400円です。

【参考】国税庁「No.2260 所得税の税率」2024年11月1日現在

住民税

家賃収入は住民税にも反映されます。住民税は前年の所得によって決定されるため、家賃収入があると住民税も増えます。

住民税には「所得割」と「均等割」の2種類があります。所得割は、前年の所得に基づいて決まる税額で、所得が多いほど税額が高くなります。均等割は、所得に関係なく一律に課される固定額の税金です。

東京都の住民税は、所得割が課税所得の10%%、均等割は一律5,000円です(令和6年の場合)。

例:課税所得が400万円の場合

所得割=400万円×10%=40万円

均等割 一律5,000円

住民税=所得税+均等割=40万円+5,000円=40万5,000円

住民税の税額は自治体によって多少異なりますが、一般的には所得の10%前後ですので、それほど大きな地域差はありません。

条件別に見る、不動産家賃収入にかかる税金

所得税と住民税とは別に、どのようにして不動産を取得したのか、不動産の種類や、取得の手続きなどによってかかる税金もあります。

ここからは、条件に当てはまると課される税金を解説します。

非居住用の物件の場合は消費税がかかる

非居住用の物件で家賃収入を得ている場合、課税売上が1,000万円を超えると、翌々年から消費税がかかります。1,000万円を超えても、居住用であれば消費税は課税されません。

居住用の家賃収入と認められるためには、以下2つの条件をいずれも満たすことが必要です。

  • 契約書に居住用であることが明示されている

  • 賃貸期間が1ヵ月以上ある

物件が居住用か非居住用かは、契約書で明示されています。また、賃貸期間が1ヵ月未満の場合、居住用として運用していても、課税対象となります。

売買で取得するなら不動産取得税がかかる

不動産を購入して取得すると、不動産取得税が課されます。税額は不動産の評価額の4%ですが、現在は土地と住宅に関して軽減税率の3%が適用されます。一方、相続で土地や家屋を取得した場合、不動産取得税は発生しません。

不動産取得税は、不動産を取得してから自治体に届け出を提出して納税します。申請期日は自治体によって異なり、たとえば東京都は取得日から30日以内、愛知県は60日以内です。

所有権を登記するなら登録免許税がかかる

土地や家屋の所有権の登記を行う際に、登録免許税がかかります。税額は固定資産税評価額に税率をかけて決まり、所有権移転の登記は2%、建物を新築した場合の所有権保存登記は0.4%です。

上記は本来の税率ですが、軽減措置によって税率を引き下げてもらえる場合があります。たとえば土地の所有権移転登記に関して、令和8年3月31日までに登記をすると0.5ポイント下がり、2.0%から1.5%になります。

なお、軽減措置が適用されるためには、住宅の床面積や新築のタイミングなど、特定の要件を満たす必要があります。

不動産価格により印紙税が増減する

印紙税とは、課税文書にかかる税金です。具体的には不動産取引での売買契約書、金銭消費貸借契約書などに課税されます。

収入印紙を契約書などに貼り、文書の作成者が押印することで納付が完了します。税額は、契約書に記載された金額によって以下のように定められています。

【不動産などに関する契約書の場合】

契約金額 印紙税額
1,000万円超、5,000万円以下 1万円
5,000万円超、1億円以下 3万円
1億円超、5億円以下 6万円
5億円超、10億円以下 16万円
10億円超、50億円以下 32万円
50億円超 48万円

※1,000万円未満は上記の表から割愛

【参考】国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 (2024年4月1日掲載)

不動産を取得した翌1月1日から固定資産税がかかる

固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産を所有している方を対象に課される税金です。原則として固定資産の所在する市町村が課税しますが、東京23区は例外で都が課税を行います。

固定資産税の税額は、固定資産の評価額から算出された課税標準額に、1.4%の税率をかけた金額です。土地の評価額は売買実例価格などを基礎として算出され、家屋の評価額は再建築価格に経年減点補正率をかけて計算します。

市町村によって税率が異なる場合もあるため、市町村の公式ホームページなどで確認しましょう。税額は市町村が計算して通知をするため、固定資産の所有者が自分で計算する必要はありません。

都市計画法の市街化区域内に所有物件があるなら都市計画税がかる

都市計画法が定める市街化区域内に土地や家屋を所有する方は、都市計画税が発生します。都市計画事業や土地区画整理事業に必要な費用に充てるための目的税です。

納税義務があるのは、毎年1月1日時点の土地または家屋の所有者であると、固定資産課税台帳に登録されている方です。納税方法は、固定資産税とあわせて納付するのが一般的です。

都営計画税の税額は、固定資産税評価額に0.3%以下の税率をかけたものです。市町村が条例で決めることが可能で、0.3%が上限です。

オーナー業が個人事業とみなされる場合は個人事業税がかかる

個人事業税は、個人が営む事業のうち、地方税法などで決められた特定の事業に対して課税される税金です。対象となる業種は3つに分類され、不動産貸付業は第1種事業に該当し、税率は5%です。

不動産貸付業の認定基準は以下のとおりです。いずれかの基準を満たせば、不動産貸付業とみなされるため、個人事業税が課されます。

【個人事業税における不動産貸付業の認定基準】

種別 用途 条件(空室も含める)
建物 ①住宅(1戸建) 10棟以上
②住宅(アパートなど) 10室以上
③店舗、事務所 5棟以上
④医療、娯楽、工業、デザイン等 10室以上
⑤倉庫 10室以上
土地 ⑥住宅用 契約10件以上、または貸付総面積2000平方メートル以上
⑦店舗、事務所用など 契約10件以上、または貸付総面積2000平方メートル以上
その他 賃貸用不動産を複数所有 ①~⑤のいずれかの基準を満たしている、または総合計が10以上

 

相続で不動産を取得するときは相続税がかかる

相続で土地や家屋を取得する場合、不動産取得税はかかりませんが、相続税がかかる場合があります。

税額は、取得金額に応じて以下のように定められています。

法定相続分に応ずる取得金額 税率     控除額      
1,000万円以下 10% 0円
1,000万円超、3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超、5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超、1億円以下 30% 700万円
1億円超、2億円以下 40% 1,700万円
2億円超、3億円以下 45% 2,700万円
3億円超、6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の総額は、各人の課税価格を合計し、基礎控除額を差し引いて計算します。

基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。

また、不動産そのものに加え、家賃収入については所得税を準確定申告という形で申告・納税する必要があります。

なお、相続が発生したことを知ったときから3ヶ月以内であれば、相続放棄が可能です。放棄をすると不動産や現金などプラスの財産を相続できなくなりますが、借金などマイナスの財産も相続する必要がなくなります。

不動産の家賃収入でかかる税金の具体的な課税項目とは

ここまでは、不動産の種類や取得の状況によって課される税金を見てきました。

では、実際に運用中に生じる収益に対してはどのような税金がかかるのでしょうか?

家賃収入に対し、具体的にどの項目が課税されるのか見ていきましょう。

家賃収入の課税

課税対象となる家賃収入には、入居者が支払う家賃だけでなく下記も含まれます。

  • 礼金

  • 更新料

  • 敷金・保証金のうち、入居者に返還しない分

  • 管理費・共益費

  • 駐車場代

礼金

借主が家主に対するお礼の意味で支払う費用です。家賃の1ヶ月分が目安で、退去時には返還されません。近年では礼金なしの物件も増加しています。

更新料

賃貸契約の更新の際に、契約書の内容に従って借主が支払う費用です。更新は2年ごとに行われ、更新料は家賃1ヶ月分が一般的です。

敷金・保証金

退去時の原状回復に備えて、借主が事前に支払う費用です。実際に原状回復にかかった費用を差し引いて、借主に返金されます。

管理費・共益費

物件の共用部分のメンテナンス・維持費用として借主が支払うお金です。エントランスや廊下の電球交換、廊下や階段の掃除、エレベーターなど保守点検などに使われます。また、駐車場代も家賃収入に含まれます。

売却益の課税

不動産投資の最終ゴールとして、物件を売却する場合もあるでしょう。不動産を売却する際は、譲渡所得税がかかる場合があります。

税額の計算式は以下のとおりです。

課税譲渡所得税額=収入金額⁻(取得費用+譲渡費用)-特別控除額

土地や建物に関する特別控除額は下記のようになっています。

  • 収用などにより譲渡した場合:5,000万円

  • 居住用財産を譲渡した場合:3,000万円

  • 特定土地区画整理事業などのために譲渡した場合:2,000万円

  • 特定住宅地造成事業等のために譲渡した場合:1,500万円

譲渡所得は分離課税制度が採用されており、他の所得とは合計せずに計算されます。

例として、5年を超えて保有した2,000万円の区分マンションを売却した場合、以下のような計算になります。

2200万円(売却価額) - 2000万円(取得費) - 66万円(譲渡費用、仮に売却価格の3%とした場合) = 134万円(譲渡所得)

長期譲渡所得の税率は約20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)。

134万円 × 20.315% = 約27万円の税金がかかる計算になります。

所得税

相続した不動産に家賃収入があると、その収入に対して所得税がが発生します。被相続人が亡くなるまでの家賃収入は被相続人のものであるため、被相続人が申告作業をする必要があります。しかし、亡くなると申告できないため、相続人が行うことになります。

この場合、遺言書の有無で処理方法が変わってきます。遺言書があり、誰に不動産を相続させるのかが記載されていた場合、物件の所有者は遺言で指定された人になります。

遺言書がない場合、相続人による遺産分割協議を完了させないと、所有者が確定しません。それまでは相続人全員の共有財産とみなされ、家賃収入についても相続人の持分に応じて按分することになります。

遺産分割協議が完了すれば、物件の所有者が確定するため、新たな相続人が申告を行います。

贈与税

親や祖父母などが生存している段階で不動産を譲り受けた場合、相続税の代わりに贈与税が発生します。贈与が成立するには、贈与側・受贈側の双方の合意が必要です。

毎年1月1日から12月31日までの贈与財産の合計額について、翌年の3月15日までに贈与税の申告と納税を行う必要があります。申告の義務があるのは、土地や建物など財産を受け取った受贈者です。

贈与税の税率には「一般贈与財産」と「特例贈与財産」があります。特例贈与は、直系尊属(父母・祖父母など)である贈与者から18歳以上の受贈者への贈与を指し、それ以外は一般贈与です。

それぞれの税率は下記のとおりです。

【一般贈与財産の税率】

基礎控除を差し引いた後の課税価格 税率        控除額     
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

【特例贈与財産の税率】

基礎控除を差し引いた後の課税価格 税率        控除額    
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円


納税タイミングと手続き方法

家賃収入で発生した税金は、確定申告をしたうえで期限までに納めなくてはなりません。申告・納税をしないと、税務署からペナルティが科されるおそれがあります。

この章では、確定申告の期限や手続き方法を解説します。

確定申告の期限

確定申告ができる期間は、毎年2月中旬から3月中旬までの約1ヶ月間です。
令和5年度分の申告は、令和6年2月16日(木)から3月15日(金)までとなっていました。

期限までに申告をしないと、期限後申告となり、ペナルティとして無申告加算税が発生します。

税務署から事前通知を受ける前か受けた後かで無申告加算税の税率が変わります。また、納付すべき税金の金額が50万円を超える場合は、その部分につき、金額に応じて税額が変わります。

  納付すべき税金の額 無申告加算税の税率
事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合 - 納付すべき税金の5%

事前通知の後に期限後申告をした場合

50万円までの部分

 

 

納付すべき税金の10%
50万円を超え300万円までの部分 50万円を超え300万円までの部分の15%
300万円を超える部分 300万円を超える部分の25%

税務署の調査を受けた後に期限後申告をした場合

50万円までの部分 納付すべき税金の15%
50万円を超え300万円までの部分    50万円を超え300万円までの部分の20%  
300万円を超える部分 300万円を超える部分の30%

本来の税額以上の支払いをすることになってしまうため、期限までに忘れないよう申告を済ませましょう。

確定申告に必要な書類

確定申告には青色申告と白色申告の2つの方法があります。不動産所得がある場合は、青色申告ができます。青色申告は帳簿の作成方法がやや複雑ですが、控除額が大きいため納税額を減らせるメリットがあります。白色申告は控除額が少ないですが、帳簿作成が比較的簡単なのがメリットです。

青色申告や白色申告で必要な書類を下記の表にまとめました。

書類名 入手方法 補足
確定申告書 会計ソフト・国税庁ホームページ・税務署など  
青色申告決算書    会計ソフト・国税庁ホームページ・税務署など 青色申告の場合に必須。収益物件に関する収入や支出の詳細が分かるもの
収支内訳書 会計ソフト・国税庁ホームページ・税務署など 白色申告の場合に必須。収益物件に関する収入や支出の詳細が分かるもの
控除関連の書類 控除を証明する発行元  
源泉徴収票 勤め先の企業 給与所得がある場合に必要

 

まず、青色申告・白色申告ともに、確定申告書を提出する必要があります。会計ソフトや国税庁ホームページの作成コーナーを利用すると、申告書を出力できるため、手書きせずに済むので手間が省けます。一人で作成するのが不安な方は、税務署で作成すると職員のサポートを受けられます。

青色申告をする場合、所得税青色申告決算書の提出も必須です。こちらも会計ソフトや国税庁ホームページなどで作成できます。

不動産所得の収支内訳書も必要で、賃貸料や礼金などの収入、減価償却費などの経費を明らかにする書類です。

各種控除を受けるには、控除を受けられることを証明する書類を用意しましょう。たとえば医療費控除なら、医療費控除の明細書の提出が必要です。

なお、医療機関が発行する領収書は提出する必要はありませんが、明細書の内容の確認を求められた場合は必要になるため、確定申告期限から5年間は保管しておくと安心です。

最後に、会社員として勤務しながら家賃収入を得る方も多いでしょう。給与所得がある場合、会社が発行する源泉徴収票も確定申告で必要となります。

確定申告の手続き

確定申告を提出する方法は、e-Tax、郵送、持参の3つです。電子申告であるe-Taxで確定申告を行うと、ほとんどの書類が提出省略できるので、ぜひ活用しましょう。また、不動産投資が事業的規模と認められる場合は、e-Taxで確定申告すると青色申告特別控除額が55万円から65万円に増えるメリットがあります。

e-Taxの手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 利用者識別番号を取得する

  1. 電子証明書を取得する

  1. 手続きをするソフト・コーナーを選ぶ

  1. 申告データを作成・送信する

  1. 送信結果を確認する

利用者識別番号の取得や、手続きをするソフトなどに関して、複数の方法が用意されています。国税庁の公式ホームページも参考にしながら、やりやすい方法を選んでください。

初回はさまざまな準備や手続きがあり、少し時間がかかるかもしれません。しかし、e-Taxの流れ自体は毎年ほとんど同じであるため、一度実践すれば次年度からはスムーズに手続きできるでしょう。

e-Taxがどうしても難しい方は、税務署へ書類を持参するか郵送することもできます。

特別控除や減税制度を活用してみよう

確定申告では、控除や減税制度を活用しないと、不必要に税額が高くなります。余分な税金を支払うことのないよう、使える制度は積極的に活用しましょう。

たとえば確定申告の主な控除制度として、下記が挙げられます。

  • 配偶者控除

  • 扶養控除

  • 社会保険料控除

  • 寄附金控除

  • 生命保険料控除

  • 医療費控除

これらは自動的に適用されないため、確定申告で申告することが必要です。

また、不動産投資で節税できる方法として以下があります。

  • 減価償却費など経費を適切に計上する

  • 損益通算で不動産所得の赤字と給与所得を相殺する

  • 赤字の最大3年の繰り越しを利用する

  • 小規模企業共済に加入する

  • 法人化を検討する

不動産投資の確定申告については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

手元に収益は残るの?不動産投資の最終的な収入目安

ここまで家賃収入について解説してきましたが、「それでは不動産投資はどの程度儲けが出るのか?」と思う方もいるでしょう。

この章では、不動産投資で最終的にいくら手元に残るのか、得られる収入の目安を解説します。

不動産投資の収益構造

不動産投資で得られる利益は、インカムゲインとキャピタルゲインの2つです。インカムゲインは不動産を所有している間に入ってくる利益であり、家賃収入、更新料などを指します。

キャピタルゲインは、土地や建物を売却することで得られる利益です。買ったときより高い価格で売却できると、購入時の価格と売却時の価格の差額が利益になります。

日本における不動産投資の場合、購入時より売却時のほうが価格が下がるケースもあるため、キャピタルロスになる可能性もあります。このため、長期的に収益を得ることを踏まえると、インカムゲインを重視する投資のほうが良いでしょう。

インカムゲインの収益目安

不動産投資は家賃収入を長期的に得ることが主な目的のため、インカムゲインが中心の投資と言えます。

キャピタルゲインのように短期で大きな利益は生み出せませんが、保有物件を増やしていくとまとまった額の利益を出せる可能性もあります。

不動産投資のインカムゲインは、賃料収入から経費やローン返済を引くことで算出可能です。また、インカムゲインの目安として使われる指標が、表面利回りと実質利回りです。

  • 表面利回り:年間収益÷購入額×100

  • 実質利回り:(年間収益-経費)÷購入額×100

表面利回りとは、購入した物件から何%の利益を得られているかを示すものです。たとえば購入額が2,000万円、年間収益が100万円とすると、表面利回りは5%です。表面利回りはコストが反映されていないため、おおまかな収益性を把握するのに向いています。

実質利回りとは、諸経費も考慮したうえで、どの程度の利益が出ているかを示す指標です。実質利回りはキャッシュフローに近いため、投資判断をするうえでは表面利回りより重要です。

実質利回りの目安は、新築か中古かによって異なります。理想的な実質利回り、最低ラインは下記のとおりです。

  理想的な実質利回り 最低ライン
新築物件 5%以上 3%
中古物件 6%以上 4%

賃料収入

不動産投資で得られる収入は家賃収入の他に、敷金、礼金、更新料、管理費・共益費、駐車場代などです。入居者がいるかぎり、毎月・毎年決まった額の収入を得ることができます。賃貸需要の高い立地の物件を選べば家賃が急激に下がる心配もなく、10年、20年といった長期間で安定した収入を得ることもできます。

経費

実質利回りを正確に計算するには、税金・管理費・保険料・リフォーム費用などの諸費用を把握する必要があります。すべての費用を正確に割り出すのは難しい面もあるため、不動産会社などに協力してもらって算出しましょう。

ローン返済

不動産投資でローンを組む場合、収益性を判断するうえで毎月の返済額も加味する必要があります。この場合、実質利回りの計算でローンの返済額と金利も考慮して判断することになります。

キャピタルゲインの収益目安

投資のキャピタルゲインは、インカムゲインと比較して大きな収益が期待できる反面、大きな損失となるリスクもあります。キャピタルゲインを重視する投資は、投資に関する知識があり、自己資金も十分にある方に向いています。

不動産投資のキャピタルゲインを左右する要素は、物件の価値変動と諸費用の2つです。

物件の価値変動

不動産は価格が変動するため、購入価格より売却価格が高ければ収益になり、購入価格より売却価格が低いと損失になります。地域の人口減少など、社会的・経済的な要因で物件の価値が変動する可能性があります。

売却時の諸費用

売却価格の他に、売却時にかかる諸費用も考慮する必要があります。具体的には仲介手数料、印紙税、譲渡所得税などです。

最終的な収益を計算する方法

不動産投資における最終的な利益とは、インカムゲインの総額とキャピタルゲイン(またはロス)のすべてを合算した収支です。たとえキャピタルゲインがマイナスとなったとしても、インカムゲインの総額が上回れば、最終的な利益はプラスとなります。

不動産投資ではこのように、売却時も含めた出口戦略も考えておく必要があります。

不動産投資における出口戦略で、プラス収支で終えるためには以下の方法があります。

  • 収益物件として売却する

  • 物件を解体して更地にして売却する

  • 居住用物件として売却する

1つ目の収益物件として売却する方法は、不動産のオーナーを変更することを意味します。物件の資産価値を保てていて、安定したインカムゲインを確保できているなら有効な方法です。

2つ目の方法は、更地として売却することにより高値で売却することを狙うものです。老朽化した建物、利用価値の低い建物の場合に適しています。

3つ目の自己住居用として売却する方法は、投資物件としての売却より相場価格が高くなるメリットがあります。特にファミリー用物件の場合、高値で売却しやすくなります。

また、税制上の居住用物件として認められる場合は、居住用財産の3,000万円特別控除などの優遇措置を受けられます。ただし、自己居住用物件と認められるためには、最低2年以上居住していることなど、一定の要件があります。

不動産投資リスクを極力抑えることも大事

投資は利益が保証されているものではなく、損失が発生するリスクもあります。不動産投資の主なリスクとしては、以下のものが挙げられます。

  • 空室リスク

  • 滞納リスク

  • 災害リスク

  • 価値下落のリスク

  • 老朽化による修繕のリスク

  • 金利上昇のリスク

不動産投資で利益を得るには、これらのリスクをいかに抑えるかも重要です。たとえば空室リスクであれば、駅やバス停から近い物件、人口が増えているエリア、スーパーやコンビニなど商業施設が近くにある物件を選ぶことなどが対策になります。

滞納リスクの対策としては、家賃保証会社の利用、入居審査のハードルを上げる、連帯保証人の義務付けなどがあります。家賃保証会社を利用すれば滞納が発生しても保証会社が代わりに家賃を支払います。

日本は地震や台風など災害の多い国のため、災害リスクをゼロにはできません。

災害が起きることをある程度織り込んで、対策を立てておくといいでしょう。たとえば、火災保険や地震保険への加入、耐震性の高い物件の選択、ハザードマップの確認、耐震補強工事の実施などが挙げられます。

まとめ

不動産投資で得た家賃収入には、まず所得税や住民税がかかります。条件に当てはまれば、消費税・都市計画税などが発生する場合もあります。

税金を納付するには、確定申告が必要です。確定申告には課税所得を減らせる控除などもあるため、ぜひ活用してみましょう。

不動産投資の収益性は、税金や諸経費などもすべて考慮して実質利回りを計算して判断します。個人では判断が難しい項目もありますので、不動産投資会社や専門家などに相談しましょう。

この記事を監修した人

宮川 真一

税理士 税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表

岐阜県大垣市出身。一橋大学商学部を1996年に卒業後、1997年より税理士としてのキャリアをスタート。25年以上の経験を持ち、税務や財務に関する深い知識を生かし、1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士資格も取得。企業の取締役や監査役としても幅広く活躍し、財務コンサルティングや資産管理のエキスパートとして信頼を集めている。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.11.14

不動産投資の基本

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【令和6年分対応】不動産収入にかかる税金は? 賢く対策し収益アップを目指そう

  • 節税・税金
  • マンション投資
  • 家賃収入

不動産投資で家賃収入を得る際は、所得税と住民税がかかります。さらに、物件の取得や売却、賃貸契約時には、印紙税、登録免許税、不動産取得税なども発生する可能性があります。これらを考慮し、最終的な収入がどれくらい残るかシミュレーションすることが不動産投資において大切です。

不動産投資で利益が出るとかかる税金は2種類

家賃収入を得る際に避けて通れないのが、所得税と住民税です。

所得税

不動産から家賃収入を得ると、その収入に対して所得税が課されます。所得が多いほど税率は高くなります。

具体的な税率は次の表でご確認ください。

課税所得 税率 控除額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万3,600円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

たとえば課税所得が1,000万円の場合、所得税額は
1,000万円×33%-153万3,600円=176万6,400円です。

【参考】国税庁「No.2260 所得税の税率」2024年11月1日現在

住民税

家賃収入は住民税にも反映されます。住民税は前年の所得によって決定されるため、家賃収入があると住民税も増えます。

住民税には「所得割」と「均等割」の2種類があります。所得割は、前年の所得に基づいて決まる税額で、所得が多いほど税額が高くなります。均等割は、所得に関係なく一律に課される固定額の税金です。

東京都の住民税は、所得割が課税所得の10%%、均等割は一律5,000円です(令和6年の場合)。

例:課税所得が400万円の場合

所得割=400万円×10%=40万円

均等割 一律5,000円

住民税=所得税+均等割=40万円+5,000円=40万5,000円

住民税の税額は自治体によって多少異なりますが、一般的には所得の10%前後ですので、それほど大きな地域差はありません。

条件別に見る、不動産家賃収入にかかる税金

所得税と住民税とは別に、どのようにして不動産を取得したのか、不動産の種類や、取得の手続きなどによってかかる税金もあります。

ここからは、条件に当てはまると課される税金を解説します。

非居住用の物件の場合は消費税がかかる

非居住用の物件で家賃収入を得ている場合、課税売上が1,000万円を超えると、翌々年から消費税がかかります。1,000万円を超えても、居住用であれば消費税は課税されません。

居住用の家賃収入と認められるためには、以下2つの条件をいずれも満たすことが必要です。

  • 契約書に居住用であることが明示されている

  • 賃貸期間が1ヵ月以上ある

物件が居住用か非居住用かは、契約書で明示されています。また、賃貸期間が1ヵ月未満の場合、居住用として運用していても、課税対象となります。

売買で取得するなら不動産取得税がかかる

不動産を購入して取得すると、不動産取得税が課されます。税額は不動産の評価額の4%ですが、現在は土地と住宅に関して軽減税率の3%が適用されます。一方、相続で土地や家屋を取得した場合、不動産取得税は発生しません。

不動産取得税は、不動産を取得してから自治体に届け出を提出して納税します。申請期日は自治体によって異なり、たとえば東京都は取得日から30日以内、愛知県は60日以内です。

所有権を登記するなら登録免許税がかかる

土地や家屋の所有権の登記を行う際に、登録免許税がかかります。税額は固定資産税評価額に税率をかけて決まり、所有権移転の登記は2%、建物を新築した場合の所有権保存登記は0.4%です。

上記は本来の税率ですが、軽減措置によって税率を引き下げてもらえる場合があります。たとえば土地の所有権移転登記に関して、令和8年3月31日までに登記をすると0.5ポイント下がり、2.0%から1.5%になります。

なお、軽減措置が適用されるためには、住宅の床面積や新築のタイミングなど、特定の要件を満たす必要があります。

不動産価格により印紙税が増減する

印紙税とは、課税文書にかかる税金です。具体的には不動産取引での売買契約書、金銭消費貸借契約書などに課税されます。

収入印紙を契約書などに貼り、文書の作成者が押印することで納付が完了します。税額は、契約書に記載された金額によって以下のように定められています。

【不動産などに関する契約書の場合】

契約金額 印紙税額
1,000万円超、5,000万円以下 1万円
5,000万円超、1億円以下 3万円
1億円超、5億円以下 6万円
5億円超、10億円以下 16万円
10億円超、50億円以下 32万円
50億円超 48万円

※1,000万円未満は上記の表から割愛

【参考】国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 (2024年4月1日掲載)

不動産を取得した翌1月1日から固定資産税がかかる

固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産を所有している方を対象に課される税金です。原則として固定資産の所在する市町村が課税しますが、東京23区は例外で都が課税を行います。

固定資産税の税額は、固定資産の評価額から算出された課税標準額に、1.4%の税率をかけた金額です。土地の評価額は売買実例価格などを基礎として算出され、家屋の評価額は再建築価格に経年減点補正率をかけて計算します。

市町村によって税率が異なる場合もあるため、市町村の公式ホームページなどで確認しましょう。税額は市町村が計算して通知をするため、固定資産の所有者が自分で計算する必要はありません。

都市計画法の市街化区域内に所有物件があるなら都市計画税がかる

都市計画法が定める市街化区域内に土地や家屋を所有する方は、都市計画税が発生します。都市計画事業や土地区画整理事業に必要な費用に充てるための目的税です。

納税義務があるのは、毎年1月1日時点の土地または家屋の所有者であると、固定資産課税台帳に登録されている方です。納税方法は、固定資産税とあわせて納付するのが一般的です。

都営計画税の税額は、固定資産税評価額に0.3%以下の税率をかけたものです。市町村が条例で決めることが可能で、0.3%が上限です。

オーナー業が個人事業とみなされる場合は個人事業税がかかる

個人事業税は、個人が営む事業のうち、地方税法などで決められた特定の事業に対して課税される税金です。対象となる業種は3つに分類され、不動産貸付業は第1種事業に該当し、税率は5%です。

不動産貸付業の認定基準は以下のとおりです。いずれかの基準を満たせば、不動産貸付業とみなされるため、個人事業税が課されます。

【個人事業税における不動産貸付業の認定基準】

種別 用途 条件(空室も含める)
建物 ①住宅(1戸建) 10棟以上
②住宅(アパートなど) 10室以上
③店舗、事務所 5棟以上
④医療、娯楽、工業、デザイン等 10室以上
⑤倉庫 10室以上
土地 ⑥住宅用 契約10件以上、または貸付総面積2000平方メートル以上
⑦店舗、事務所用など 契約10件以上、または貸付総面積2000平方メートル以上
その他 賃貸用不動産を複数所有 ①~⑤のいずれかの基準を満たしている、または総合計が10以上

 

相続で不動産を取得するときは相続税がかかる

相続で土地や家屋を取得する場合、不動産取得税はかかりませんが、相続税がかかる場合があります。

税額は、取得金額に応じて以下のように定められています。

法定相続分に応ずる取得金額 税率     控除額      
1,000万円以下 10% 0円
1,000万円超、3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超、5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超、1億円以下 30% 700万円
1億円超、2億円以下 40% 1,700万円
2億円超、3億円以下 45% 2,700万円
3億円超、6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の総額は、各人の課税価格を合計し、基礎控除額を差し引いて計算します。

基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。

また、不動産そのものに加え、家賃収入については所得税を準確定申告という形で申告・納税する必要があります。

なお、相続が発生したことを知ったときから3ヶ月以内であれば、相続放棄が可能です。放棄をすると不動産や現金などプラスの財産を相続できなくなりますが、借金などマイナスの財産も相続する必要がなくなります。

不動産の家賃収入でかかる税金の具体的な課税項目とは

ここまでは、不動産の種類や取得の状況によって課される税金を見てきました。

では、実際に運用中に生じる収益に対してはどのような税金がかかるのでしょうか?

家賃収入に対し、具体的にどの項目が課税されるのか見ていきましょう。

家賃収入の課税

課税対象となる家賃収入には、入居者が支払う家賃だけでなく下記も含まれます。

  • 礼金

  • 更新料

  • 敷金・保証金のうち、入居者に返還しない分

  • 管理費・共益費

  • 駐車場代

礼金

借主が家主に対するお礼の意味で支払う費用です。家賃の1ヶ月分が目安で、退去時には返還されません。近年では礼金なしの物件も増加しています。

更新料

賃貸契約の更新の際に、契約書の内容に従って借主が支払う費用です。更新は2年ごとに行われ、更新料は家賃1ヶ月分が一般的です。

敷金・保証金

退去時の原状回復に備えて、借主が事前に支払う費用です。実際に原状回復にかかった費用を差し引いて、借主に返金されます。

管理費・共益費

物件の共用部分のメンテナンス・維持費用として借主が支払うお金です。エントランスや廊下の電球交換、廊下や階段の掃除、エレベーターなど保守点検などに使われます。また、駐車場代も家賃収入に含まれます。

売却益の課税

不動産投資の最終ゴールとして、物件を売却する場合もあるでしょう。不動産を売却する際は、譲渡所得税がかかる場合があります。

税額の計算式は以下のとおりです。

課税譲渡所得税額=収入金額⁻(取得費用+譲渡費用)-特別控除額

土地や建物に関する特別控除額は下記のようになっています。

  • 収用などにより譲渡した場合:5,000万円

  • 居住用財産を譲渡した場合:3,000万円

  • 特定土地区画整理事業などのために譲渡した場合:2,000万円

  • 特定住宅地造成事業等のために譲渡した場合:1,500万円

譲渡所得は分離課税制度が採用されており、他の所得とは合計せずに計算されます。

例として、5年を超えて保有した2,000万円の区分マンションを売却した場合、以下のような計算になります。

2200万円(売却価額) - 2000万円(取得費) - 66万円(譲渡費用、仮に売却価格の3%とした場合) = 134万円(譲渡所得)

長期譲渡所得の税率は約20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)。

134万円 × 20.315% = 約27万円の税金がかかる計算になります。

所得税

相続した不動産に家賃収入があると、その収入に対して所得税がが発生します。被相続人が亡くなるまでの家賃収入は被相続人のものであるため、被相続人が申告作業をする必要があります。しかし、亡くなると申告できないため、相続人が行うことになります。

この場合、遺言書の有無で処理方法が変わってきます。遺言書があり、誰に不動産を相続させるのかが記載されていた場合、物件の所有者は遺言で指定された人になります。

遺言書がない場合、相続人による遺産分割協議を完了させないと、所有者が確定しません。それまでは相続人全員の共有財産とみなされ、家賃収入についても相続人の持分に応じて按分することになります。

遺産分割協議が完了すれば、物件の所有者が確定するため、新たな相続人が申告を行います。

贈与税

親や祖父母などが生存している段階で不動産を譲り受けた場合、相続税の代わりに贈与税が発生します。贈与が成立するには、贈与側・受贈側の双方の合意が必要です。

毎年1月1日から12月31日までの贈与財産の合計額について、翌年の3月15日までに贈与税の申告と納税を行う必要があります。申告の義務があるのは、土地や建物など財産を受け取った受贈者です。

贈与税の税率には「一般贈与財産」と「特例贈与財産」があります。特例贈与は、直系尊属(父母・祖父母など)である贈与者から18歳以上の受贈者への贈与を指し、それ以外は一般贈与です。

それぞれの税率は下記のとおりです。

【一般贈与財産の税率】

基礎控除を差し引いた後の課税価格 税率        控除額     
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

 

【特例贈与財産の税率】

基礎控除を差し引いた後の課税価格 税率        控除額    
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円


納税タイミングと手続き方法

家賃収入で発生した税金は、確定申告をしたうえで期限までに納めなくてはなりません。申告・納税をしないと、税務署からペナルティが科されるおそれがあります。

この章では、確定申告の期限や手続き方法を解説します。

確定申告の期限

確定申告ができる期間は、毎年2月中旬から3月中旬までの約1ヶ月間です。
令和5年度分の申告は、令和6年2月16日(木)から3月15日(金)までとなっていました。

期限までに申告をしないと、期限後申告となり、ペナルティとして無申告加算税が発生します。

税務署から事前通知を受ける前か受けた後かで無申告加算税の税率が変わります。また、納付すべき税金の金額が50万円を超える場合は、その部分につき、金額に応じて税額が変わります。

  納付すべき税金の額 無申告加算税の税率
事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合 - 納付すべき税金の5%

事前通知の後に期限後申告をした場合

50万円までの部分

 

 

納付すべき税金の10%
50万円を超え300万円までの部分 50万円を超え300万円までの部分の15%
300万円を超える部分 300万円を超える部分の25%

税務署の調査を受けた後に期限後申告をした場合

50万円までの部分 納付すべき税金の15%
50万円を超え300万円までの部分    50万円を超え300万円までの部分の20%  
300万円を超える部分 300万円を超える部分の30%

本来の税額以上の支払いをすることになってしまうため、期限までに忘れないよう申告を済ませましょう。

確定申告に必要な書類

確定申告には青色申告と白色申告の2つの方法があります。不動産所得がある場合は、青色申告ができます。青色申告は帳簿の作成方法がやや複雑ですが、控除額が大きいため納税額を減らせるメリットがあります。白色申告は控除額が少ないですが、帳簿作成が比較的簡単なのがメリットです。

青色申告や白色申告で必要な書類を下記の表にまとめました。

書類名 入手方法 補足
確定申告書 会計ソフト・国税庁ホームページ・税務署など  
青色申告決算書    会計ソフト・国税庁ホームページ・税務署など 青色申告の場合に必須。収益物件に関する収入や支出の詳細が分かるもの
収支内訳書 会計ソフト・国税庁ホームページ・税務署など 白色申告の場合に必須。収益物件に関する収入や支出の詳細が分かるもの
控除関連の書類 控除を証明する発行元  
源泉徴収票 勤め先の企業 給与所得がある場合に必要

 

まず、青色申告・白色申告ともに、確定申告書を提出する必要があります。会計ソフトや国税庁ホームページの作成コーナーを利用すると、申告書を出力できるため、手書きせずに済むので手間が省けます。一人で作成するのが不安な方は、税務署で作成すると職員のサポートを受けられます。

青色申告をする場合、所得税青色申告決算書の提出も必須です。こちらも会計ソフトや国税庁ホームページなどで作成できます。

不動産所得の収支内訳書も必要で、賃貸料や礼金などの収入、減価償却費などの経費を明らかにする書類です。

各種控除を受けるには、控除を受けられることを証明する書類を用意しましょう。たとえば医療費控除なら、医療費控除の明細書の提出が必要です。

なお、医療機関が発行する領収書は提出する必要はありませんが、明細書の内容の確認を求められた場合は必要になるため、確定申告期限から5年間は保管しておくと安心です。

最後に、会社員として勤務しながら家賃収入を得る方も多いでしょう。給与所得がある場合、会社が発行する源泉徴収票も確定申告で必要となります。

確定申告の手続き

確定申告を提出する方法は、e-Tax、郵送、持参の3つです。電子申告であるe-Taxで確定申告を行うと、ほとんどの書類が提出省略できるので、ぜひ活用しましょう。また、不動産投資が事業的規模と認められる場合は、e-Taxで確定申告すると青色申告特別控除額が55万円から65万円に増えるメリットがあります。

e-Taxの手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 利用者識別番号を取得する

  1. 電子証明書を取得する

  1. 手続きをするソフト・コーナーを選ぶ

  1. 申告データを作成・送信する

  1. 送信結果を確認する

利用者識別番号の取得や、手続きをするソフトなどに関して、複数の方法が用意されています。国税庁の公式ホームページも参考にしながら、やりやすい方法を選んでください。

初回はさまざまな準備や手続きがあり、少し時間がかかるかもしれません。しかし、e-Taxの流れ自体は毎年ほとんど同じであるため、一度実践すれば次年度からはスムーズに手続きできるでしょう。

e-Taxがどうしても難しい方は、税務署へ書類を持参するか郵送することもできます。

特別控除や減税制度を活用してみよう

確定申告では、控除や減税制度を活用しないと、不必要に税額が高くなります。余分な税金を支払うことのないよう、使える制度は積極的に活用しましょう。

たとえば確定申告の主な控除制度として、下記が挙げられます。

  • 配偶者控除

  • 扶養控除

  • 社会保険料控除

  • 寄附金控除

  • 生命保険料控除

  • 医療費控除

これらは自動的に適用されないため、確定申告で申告することが必要です。

また、不動産投資で節税できる方法として以下があります。

  • 減価償却費など経費を適切に計上する

  • 損益通算で不動産所得の赤字と給与所得を相殺する

  • 赤字の最大3年の繰り越しを利用する

  • 小規模企業共済に加入する

  • 法人化を検討する

不動産投資の確定申告については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

手元に収益は残るの?不動産投資の最終的な収入目安

ここまで家賃収入について解説してきましたが、「それでは不動産投資はどの程度儲けが出るのか?」と思う方もいるでしょう。

この章では、不動産投資で最終的にいくら手元に残るのか、得られる収入の目安を解説します。

不動産投資の収益構造

不動産投資で得られる利益は、インカムゲインとキャピタルゲインの2つです。インカムゲインは不動産を所有している間に入ってくる利益であり、家賃収入、更新料などを指します。

キャピタルゲインは、土地や建物を売却することで得られる利益です。買ったときより高い価格で売却できると、購入時の価格と売却時の価格の差額が利益になります。

日本における不動産投資の場合、購入時より売却時のほうが価格が下がるケースもあるため、キャピタルロスになる可能性もあります。このため、長期的に収益を得ることを踏まえると、インカムゲインを重視する投資のほうが良いでしょう。

インカムゲインの収益目安

不動産投資は家賃収入を長期的に得ることが主な目的のため、インカムゲインが中心の投資と言えます。

キャピタルゲインのように短期で大きな利益は生み出せませんが、保有物件を増やしていくとまとまった額の利益を出せる可能性もあります。

不動産投資のインカムゲインは、賃料収入から経費やローン返済を引くことで算出可能です。また、インカムゲインの目安として使われる指標が、表面利回りと実質利回りです。

  • 表面利回り:年間収益÷購入額×100

  • 実質利回り:(年間収益-経費)÷購入額×100

表面利回りとは、購入した物件から何%の利益を得られているかを示すものです。たとえば購入額が2,000万円、年間収益が100万円とすると、表面利回りは5%です。表面利回りはコストが反映されていないため、おおまかな収益性を把握するのに向いています。

実質利回りとは、諸経費も考慮したうえで、どの程度の利益が出ているかを示す指標です。実質利回りはキャッシュフローに近いため、投資判断をするうえでは表面利回りより重要です。

実質利回りの目安は、新築か中古かによって異なります。理想的な実質利回り、最低ラインは下記のとおりです。

  理想的な実質利回り 最低ライン
新築物件 5%以上 3%
中古物件 6%以上 4%

賃料収入

不動産投資で得られる収入は家賃収入の他に、敷金、礼金、更新料、管理費・共益費、駐車場代などです。入居者がいるかぎり、毎月・毎年決まった額の収入を得ることができます。賃貸需要の高い立地の物件を選べば家賃が急激に下がる心配もなく、10年、20年といった長期間で安定した収入を得ることもできます。

経費

実質利回りを正確に計算するには、税金・管理費・保険料・リフォーム費用などの諸費用を把握する必要があります。すべての費用を正確に割り出すのは難しい面もあるため、不動産会社などに協力してもらって算出しましょう。

ローン返済

不動産投資でローンを組む場合、収益性を判断するうえで毎月の返済額も加味する必要があります。この場合、実質利回りの計算でローンの返済額と金利も考慮して判断することになります。

キャピタルゲインの収益目安

投資のキャピタルゲインは、インカムゲインと比較して大きな収益が期待できる反面、大きな損失となるリスクもあります。キャピタルゲインを重視する投資は、投資に関する知識があり、自己資金も十分にある方に向いています。

不動産投資のキャピタルゲインを左右する要素は、物件の価値変動と諸費用の2つです。

物件の価値変動

不動産は価格が変動するため、購入価格より売却価格が高ければ収益になり、購入価格より売却価格が低いと損失になります。地域の人口減少など、社会的・経済的な要因で物件の価値が変動する可能性があります。

売却時の諸費用

売却価格の他に、売却時にかかる諸費用も考慮する必要があります。具体的には仲介手数料、印紙税、譲渡所得税などです。

最終的な収益を計算する方法

不動産投資における最終的な利益とは、インカムゲインの総額とキャピタルゲイン(またはロス)のすべてを合算した収支です。たとえキャピタルゲインがマイナスとなったとしても、インカムゲインの総額が上回れば、最終的な利益はプラスとなります。

不動産投資ではこのように、売却時も含めた出口戦略も考えておく必要があります。

不動産投資における出口戦略で、プラス収支で終えるためには以下の方法があります。

  • 収益物件として売却する

  • 物件を解体して更地にして売却する

  • 居住用物件として売却する

1つ目の収益物件として売却する方法は、不動産のオーナーを変更することを意味します。物件の資産価値を保てていて、安定したインカムゲインを確保できているなら有効な方法です。

2つ目の方法は、更地として売却することにより高値で売却することを狙うものです。老朽化した建物、利用価値の低い建物の場合に適しています。

3つ目の自己住居用として売却する方法は、投資物件としての売却より相場価格が高くなるメリットがあります。特にファミリー用物件の場合、高値で売却しやすくなります。

また、税制上の居住用物件として認められる場合は、居住用財産の3,000万円特別控除などの優遇措置を受けられます。ただし、自己居住用物件と認められるためには、最低2年以上居住していることなど、一定の要件があります。

不動産投資リスクを極力抑えることも大事

投資は利益が保証されているものではなく、損失が発生するリスクもあります。不動産投資の主なリスクとしては、以下のものが挙げられます。

  • 空室リスク

  • 滞納リスク

  • 災害リスク

  • 価値下落のリスク

  • 老朽化による修繕のリスク

  • 金利上昇のリスク

不動産投資で利益を得るには、これらのリスクをいかに抑えるかも重要です。たとえば空室リスクであれば、駅やバス停から近い物件、人口が増えているエリア、スーパーやコンビニなど商業施設が近くにある物件を選ぶことなどが対策になります。

滞納リスクの対策としては、家賃保証会社の利用、入居審査のハードルを上げる、連帯保証人の義務付けなどがあります。家賃保証会社を利用すれば滞納が発生しても保証会社が代わりに家賃を支払います。

日本は地震や台風など災害の多い国のため、災害リスクをゼロにはできません。

災害が起きることをある程度織り込んで、対策を立てておくといいでしょう。たとえば、火災保険や地震保険への加入、耐震性の高い物件の選択、ハザードマップの確認、耐震補強工事の実施などが挙げられます。

まとめ

不動産投資で得た家賃収入には、まず所得税や住民税がかかります。条件に当てはまれば、消費税・都市計画税などが発生する場合もあります。

税金を納付するには、確定申告が必要です。確定申告には課税所得を減らせる控除などもあるため、ぜひ活用してみましょう。

不動産投資の収益性は、税金や諸経費などもすべて考慮して実質利回りを計算して判断します。個人では判断が難しい項目もありますので、不動産投資会社や専門家などに相談しましょう。

この記事を監修した人

宮川 真一

税理士 税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表

岐阜県大垣市出身。一橋大学商学部を1996年に卒業後、1997年より税理士としてのキャリアをスタート。25年以上の経験を持ち、税務や財務に関する深い知識を生かし、1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士資格も取得。企業の取締役や監査役としても幅広く活躍し、財務コンサルティングや資産管理のエキスパートとして信頼を集めている。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。