2023.10.10

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

家賃収入で暮らすには年間いくら必要?家賃が入る仕組みも解説

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不動産投資をはじめてみようかと検討している人の多くは「家賃収入で暮らすためには、年間いくらの必要なのかな」「不動産収入だけで暮らしている人ってどのくらい必要なのだろう」などと気になったことがあるはずです。家賃収入で暮らしていけるだけの収入がある人の中には、専業で不動産投資だけをしている人、不動産投資をしながらサラリーマンを続けている人、不動産投資をしながら事業をしている人など、さまざまです。

この記事では、不動産収入で暮らすためには、年最低いくら必要で、どのくらいの規模で不動産投資をすればよいのかなど、家賃収入で暮らすために必要な情報をまとめて解説します。

家賃収入とは?

家賃収入とは、アパート・マンション・一軒家などの不動産を所有して賃貸物件として人に貸し、入居者から家賃として得ている収入のことです。

家賃は毎月支払うものなので、入居者がいる限り、物件オーナーは毎月家賃収入を得られます。このような方法で不動産を人に貸して家賃収入を得る方法を、不動産投資といいます。

家賃が入る仕組み

賃貸物件を人に貸すと、入居者が家賃を支払うので、その賃料が収入となります。家賃には住居以外にも、オフィスビル・ビルのテナント・店舗・戸建てなど、さまざまな物件があります。

一般的には翌月分の家賃を当月末までに支払う契約となっていて、支払い日は月の後半に設定されていることが多いです。月の途中から入居・退去をした場合は、日割り家賃となります。

ただし、家賃収入の全てが利益になるわけではなく、経営のためにかかった経費分は利益から差し引かれることになります。

家賃収入の種類

毎月の家賃以外にも、入居者や契約者から支払われる以下のものは、家賃収入になります。

  • 礼金
    礼金とは、賃貸契約時に、入居者から物件オーナーに対して支払われる一時金のことです。入居するための「お礼」として支払うお金なので返還義務がなく、もらった金額は収入となります。 多くの場合、家賃の1~2ヶ月分が設定されていますが、最近は、入居率を高めるために礼金0円にしているケースも増えています。また、地域によって、礼金の慣習があるところとないところがあります。
  • 敷金
    敷金とは、契約時に、入居者が入居中に家賃滞納や、部屋の一部を棄損した場合などの担保として、物件オーナーに渡すお金のことです。 万が一の場合のお金として、入居者から預かっているだけなので、上記のようなトラブルがなかった場合は、賃貸契約が終了した時点で返すことが原則です。ただし、返還の必要がない場合は収入となります。 部屋の汚れ・破損については入居中に全く起きないことは現実的ではないため、退去時に不動産会社担当者・入居者・オーナーによる確認をした上で、汚れ・棄損度合いに応じた清掃費・修理費などが見積もられ、その金額が敷金から差し引かれたものが入居者に返還されます。
  • 保証金
    保証金とは、物件を借りる時の初期費用の一つで、主に店舗や事務所などを借りる時に使われる言葉です。内容としては、前項の敷金と同じです。
  • 駐車場代
    駐車場として貸している場合は、駐車場賃料が収入となります。
  • 土地代
    土地だけを貸している場合は、土地代が不動産収入となります。
  • 更新料
    賃貸契約を更新した場合、地域によっては更新料が発生します。
  • 共益費、管理費
    共用部分の水道代・電気代・掃除代などを入居者全員で負担するための費用です。家賃支払い時に一緒に支払うことが多く、家賃に含まれているケースと、別になっているケースがあります。また、このような費用がない物件もあります。 共益費や管理費も税務上は収入ですが、実際に支払った共用部分への金額は、経費として計上します。

家賃を得るために必要な支出

家賃収入は賃料の全てが収入になるわけではなく、不動産経営に必要な経費を差し引いた残りが手取り額となります。家賃収入から差し引く不動産投資の経費には、以下のようなものがあります。

  • ローン金利
    物件購入のために組んだローンのうち金利分は経費となる
  • 税金
    固定資産税・都市計画税・所得税・住民税など
  • 保険料
    損害保険に加入した場合の年額
  • 管理会社への管理委託料
    賃貸管理・建物管理会社への業務委託費用
  • 仲介手数料、広告宣伝費など入居付けのための費用
    入居者募集をした際にかかる、不動産会社への仲介手数料とインテンシブボーナスなどの費用全般
  • 減価償却費
    建物や工事費用など、大きな金額が発生した場合は、一度に経費にはせず、法律で決められた年数にわけて経費計上する税務上の出費
  • 修理修繕費
    経年劣化や故障トラブルなどによる修理・修繕費用
  • 通信費
    不動産経営のために使った電話代・ネット代・WIFI代金などの費用
  • 交際費
    不動産投資・経営のために使った打ち合わせ費用・セミナー懇親会費用
  • 旅費・交通費
    不動産投資・経営のために使った旅費・交際費・車移動にかかった費用
  • 情報収集費
    不動産投資・経営のために参加したセミナー代金・書籍・DVD代など

これらの経費は、定期的に発生するものと、必要に応じて発生するものがありますが、発生したら経費として計上します。不動産投資で支払う経費は、基本的に家賃収入から支払うので、あまり経費が多いと手取り額が少なくなります。

 

家賃収入を得るための手順

家賃収入を得るまでの流れを6つのステップにわけて説明します。全体の流れを図に表すと、以下のようになります。

不動産会社を探す

不動産投資を検討し始めたら、まずは、信頼と実績のある、不動産投資のパートナーとなるべき会社を探します。初めての不動産投資では、不動産業界のことも不動産投資のことも、まだ何も知りませんので、情報収集をしながら少しでも知識を蓄えるようにします。

不動産会社が開催する複数のセミナーに参加して、セミナーの内容のわかりやすさや得られる情報の質など、素人ながら感じられる情報をもとに総合的に判断して、パートナーとなる会社を選びます。

コロナ禍以後、多くの会社でオンラインセミナーが開催されているので、積極的に参加するようにしてください。セミナー受講後は、個別相談会に参加して、担当者の対応なども確認しましょう。

セミナーでは無料の資料や冊子などが配布されることもありますが、ご自身でも不動産投資に関する本を複数冊購入して、不動産会社が発信する情報とは違う角度で、知識を補う努力をするとよいでしょう。

物件を探す

複数の不動産投資セミナーに参加し、本を読破して基本的な情報を得たら、不動産投資用の収益物件にはどのようなものがあるのか確認してみましょう。

不動産投資用の物件は、セミナー参加をした不動産会社の公式サイトや配布資料などに掲載されています。それ以外にも、不動産投資に関した情報サイトや、雑誌の広告欄などでも見つけることができます。

この段階では「投資物件と呼ばれるものには、どのようなものがあるのか」を知るために、カタログを見る、ウインドーショッピングをするような感覚なので、気になる物件があれば、URLを記録しておくなどして、どんどん情報を集めましょう。

物件には新築・中古、区分・一棟、マンション・木造など、様々な組み合わせがあります。ご自分がどのような不動産投資をし、いつまでにいくらの家賃収入が欲しいかという目標設定によって、選ぶべき物件が変わります。

目標に適した物件を選ぶためには、ご自身で検索などをして情報を集めることも大切ですが、同時に、不動産投資のプロフェッショナルである不動産投資会社の担当者に聞いてみるとよいでしょう。不動産投資の目的や現時点で用意できる自己資産の額を伝えて相談することにより、自分の目的を達成するためにどのような物件を選ぶべきなのか具体的なアドバイスを受けることができます。

融資を受ける

勉強と情報収集を続けていくうちに「これは!」という物件が見つかったら、買い付け申し込みをすることもできます。申し込みの時点で購入が確定するわけではなく、物件オーナーの選択、金融機関での事前融資審査も含めて手続きが進んでいきます。

金融機関の融資方法は、大きくわけて2つあります。一つはご自分で金融機関に融資相談をする、もう一つは、不動産会社と提携のある金融機関へ、物件紹介をしてくれた不動産投資会社を通じて申し込む方法です。おすすめなのは後者です。

多くの不動産投資会社は、過去の取引実績から金融機関の信頼を得て業務提携をしています。会社によって提携先金融機関には違いがあるため、パートナーとなる不動産会社選びの際には、どのような提携先があるかもチェックしておくとよいでしょう。

購入したいと思うほど気になる物件は、いつ出てくるかわかりません。そのため、物件探しを始めた時点で、融資のための提出書類などは準備しておくようにしましょう。

融資に必要となる主な書類は以下の通りです。

  • 源泉徴収票
    勤務先で入手できます。
  • 全借入の返済予定表
    返済予定表、返済の計画表です。多くの場合、不動産会社のセミナーでサンプルとなる計画表と、書き方の説明があります。
  • 身分証明書
    写真付きの身分証明書など、金融機関が指定するものをご用意ください。
  • 購入物件の収益が分かる資料
    物件検索をしているときに、物件情報としてPDF添付などがされている資料の中にあります。ない場合は自分で作成します。
  • 全資産が分かるもの
    マイホームをお持ちの方は不動産評価額など資産としての価値がわかるものを用意します。その他、株式・投信・預貯金など、現金化できるタイプの資産をお持ちの場合は、自己資産としてリストにしておきます。 必要な書類は金融機関によって違うので、申し込みをする金融機関、または提携不動産会社の資料をよく確認してください。

物件を購入する

ローンの事前審査とほぼ並行して、売買契約を結びます。このタイミングでは、購入代金の一部を手付金として手渡します。

契約の際に必ず確認しておきたいのが「重要事項説明書」です。重要事項説明書とは、購入物件と契約内容に関する重要な情報記載されている書類です。契約後のトラブルを回避するために、重要事項説明書の内容でわからないことなどは、契約前の段階で、担当者に確認してください。

契約時には宅地建物取引士から直接説明があり、契約内容に問題なければ、契約締結となります。その後、金融機関の最終審査を待ち、決済が完了してから物件の引き渡しへと移ります。

売主の口座に物件の購入代金(手付金を差し引いた金額)が入金されたことが確認され次第、司法書士が所有権移転登記をします。移転内容が登記簿謄本に反映されるまでには1~2週間を要しますが、登記名義人が変わるのは、売買契約で決済を行った日付になります。

貸し出す

物件の引き渡しが終わったら、いよいよ運用開始です。入居者がいない状態の場合は、修理・リフォームなどが必要であれば適切な工事をします。同時に、入居者募集などを任せられる不動産管理会社を選んで契約をします。

入居者募集・案内・契約に関することは、管理委託をした不動産会社が行います。入居申し込みがあれば、オーナーにも申込者の情報が送られてくるので、支払い能力や属性などを考慮して、オーナーが入居の可否を決めます。

入居者がいる状態で購入したオーナーチェンジ物件の場合は、管理会社が入居者にオーナーが変更になったことを手紙などでお知らせしてくれます。

家賃が入る

入居者が決まると家賃収入が発生します。ほとんどの方は不動産投資物件を購入する際にローンを組んでいるので、家賃はローンの返済原資となります。

そのため、ローン完済するまでは、家賃収入が全て収入になるわけではなく、経営のためにかかった経費と、ローン返済額を差し引いた残りが、手取り額となります。

手取り額は、融資申し込みの段階で作成する返済計画でほぼわかります。手取り収入を増やしたい場合は、毎月の返済額を小さくする必要がありますが、その分、完済が遅くなります。

必要な手取り額は「不動産投資を通じて何歳までにいくらの家賃収入が必要なのか」というライフプランによって変わってきます。

家賃収入だけで暮らすのに必要な金額は?

家賃収入だけで暮らすためには、年にいくら、月にいくら必要なのかを把握することが大切です。 そこから逆算すれば、どのくらいの規模・期間で不動産投資をすればよいのかもわかるようになります。 ここでは、家賃収入で生活するために必要な金額について説明します。

1年間の平均生活費

総務省統計局が毎年調査をしている「家計調査報告〔家計収支編〕」によると、2021年の二人以上の世帯(平均世帯人員2.93人、世帯主の平均年齢60.1歳)の消費支出は、1世帯当たり1カ月平均279,024円でした。

二人以上の世帯で、平均的な日本人の暮らしに必要な生活費を家賃収入だけで得るのであれば、月28万円程度を目指す必要があることがわかります。

また、国税庁が公表している「平成30年分民間給与実態統計調査結果」によれば、日本の平均的なサラリーマンが1年間で得る年収の平均は441万円、月額換算で約36.7万円となります。多くのサラリーマン世帯は、月額36万円程度の予算の中で、生活費プラスアルファのライフスタイルを維持しているといえるでしょう。

そのため、家賃収入だけで平均的なライフスタイルを維持できるようになるためには、以下の家賃収入が必要であることがわかります。

平均的な暮らしに必要な金額・・・約28万円(年約336万円)
多少のゆとりがある生活に必要な金額・・・約36万円(年約432万円)

これらのデータは、あくまで平均的な日本人のライフスタイルを想定したものなので、人によって必要な金額は違います。また、生涯独身のままなのか、結婚をして複数人の子供を育てるのかなどによっても、必要な金額が違ってきます。

不動産投資を検討する際には、これらの数値を参考に、自分のライフプランを想定しながら必要な金額を割り出していく必要があります。

1年間の平均不動産投資所得

不動産投資で家賃収入を得ている人たちは、どの程度の手取り額を得ているのでしょうか。

国税庁のデータに基づき、日本全国で家賃収入を得ている人の年収別の構成比を以下のグラフにまとめてみました。

最も多いのは家賃収入400万~500万円以下(青色)であり、これは前項で解説をした、家賃収入だけで比較的余裕のある生活ができる年収約440万円とほぼ一致しています。次に多いのは500万円~600万円以下と200万円台となっています。

ただし、本データには不動産投資をスタートしてからの期間は含まれていないため、ベテランから初心者までが混在している状態です。

家賃収入が400万円以上ある不動産所得者は、ベテランから初心者までを含めた全体の約58%であることから、不動産投資をしている方の半数以上は、最終的に家賃収入だけで一般的な生活は十分可能となっていることがわかります。

また、家賃収入だけで年間1億を超える層は全体の0.3%であることから、不動産投資をスタートさせた多くの方は、億万長者を目指しているのではなく、「家賃収入だけで生活できるようになる」ことをゴールとしていると推測できます。

このことから、不動産投資をスタートするにあたり、最終的に家賃収入だけで生活ができるようなライフスタイルを目標設定にすることは決して夢物語などではなく、むしろ不動産投資をしている人たちにとっては「一般的なゴール」であるともいえます。

家賃収入をシミュレーションしてみよう

実際に不動産投資を始めたら、何にいくら払って、どのくらいの手取りが残るのかをシミュレーションした結果を紹介します。人によって購入する物件の条件が違うため、今回は非常にシンプルな計算をしてみました。

シミュレーションするために必要な情報

まずは家賃収入のシミュレーション計算に必要な情報を準備します。物件オーナーの手元に残る金額は、収入-必要経費(支出)なので、収入と支出のデータが必要になります。

今回は、シンプルなシミュレーション計算のために、以下の情報を用意しました。

【収入】 【支出】
・家賃
・その他収入
・ローン返済費
・その他経費

上記の収入と支出の情報は、情報収集の際に気になった物件・お気に入り物件のデータを使って計算すると、よりリアルなシミュレーションができます。

【収入】

  • 家賃
    家賃物件1室あたりの家賃設定のことです。複数物件を所有している、または将来において複数物件を所有するケースを想定した計算をする場合は、その件数分を加算します。どちらも月額家賃で計算します。
  • その他収入
    その他の不動産収入となるものがあれば、加算します。例えば、更新月には、更新料が発生しますので、その分が収入として加算されます。ただし、今回はシンプルなシミュレーション計算なので、物件×部屋数のみで計算します。

【支出】

  • ローン返済費
    金融機関で借り入れをした金額の、毎月の返済です。ローンの金利は経費ですが、ローン返済額は経費ではなく、毎月の支出になります。 一般的に、安定的な不動産経営を続けるためには、ローン返済比率は家賃収入の40~50%までが望ましいとされています。
  • その他経費
    定期的な経費には、管理委託料・損害保険料・所得税・住民税・固定資産税などの、毎月・毎年必ず発生するものがあります。経費割合は収入の15~20%程度が健全経営の目安といわれています。

年間の家賃収入500万円のケース

年間の家賃収入が500万円ある場合、手取り額はいくらになるのかをシミュレーションしてみました。500万円を12カ月で割ると、月額家賃収入は約42万円となります。

一般的な不動産投資では、借り手が付きやすい、立地条件の良い区分ワンルームマンションを購入することが多いです。ワンルームマンションは家賃設定も低めであることから、年500万円の家賃収入がある方は、投資物件を複数持っていることがわかります。

【サンプルシミュレーション:月額家賃7万円の区分ワンルームを6室所有しているケース】

  計算方法 月額・シミュレーション計算
①家賃収入 家賃×物件数=月額家賃収入 月:7万円×6室=42万円
年:42万円×12カ月=504万円
②支出 ローン返済費 家賃収入の40~50%
経費合計 家賃収入の15~20%
ローン返済費
月21万円(50%計算)
84,000万円(20%計算)
・合計約30万円
③月手取り ①収入-②支出=③月額収入 ①42万円-②約30万円=③12万円
年間手取り ③×12カ月 ③12万円×12カ月=144万円

ここで注意したいのは、家賃収入ではなく、手取り額が500万円以上にならないと、不動産投資による収入だけで、一般的な暮らしができるようにはならないという点です。

上記シミュレーション計算では、家賃収入全体では500万円以上の収入がありますが、経費やローンを支払ってしまうと、オーナーの手取りは年間144万円、月額で12万円程度です。月額12万円の家賃収入だけで生活をするのは、かなり厳しいといえます。

家賃収入だけで一般的な暮らしができる400万円以上にするためには、さらに物件数が必要なことがわかります。この話を聞くと、 「一つの物件を購入するだけでも大変だと感じているのに、複数件なんてムリムリ!」 「やっぱり不動産投資はハードルが高いな」 などという感想を持つ人も多いかと思います。

しかし、一つの物件からスタートし、ご自分が望むだけの不動産収入を得るのは、不動産投資の世界では、実はそう難しいことではありません。

次章からは、家賃収入だけで暮らす不動産投資の諸先輩が、どのようにして物件を増やしていったのかを、わかりやすく説明します。

家賃収入だけで暮らす人がやっていること

不動産収入だけで生活をしている方を「専業大家」または「専業」といいます。これに対し、本業として会社で給与などを得ながら、副業として不動産収入も得ている方を、「兼業大家」または「サラリーマン大家」などと呼びます。

不動産収入だけで生活ができるということは、日本人の一般的な生活に必要な金額の全てを、不動産収入だけでまかなえるということです。2章で解説をした通り、日本の一般的なライフスタイルを送るためには年400万円前後の手取り額が必要です。

ここでは、どうすれば不動産収入だけで暮らせる「専業」になれるのか、具体的に説明します。

物件を複数保有している

不動産投資とは、自分の代わりに不動産に働いてもらうことを目的とした投資方法なので、ローンを完済した物件を早めに作りだし、その物件に次のローンを払ってもらう仕組みを構築するのが最も効率が良いということになります。

不動産投資をスタートして比較的短い期間で、家賃収入だけで暮らす「専業」になっている方は、スタート時点で、このことをよく理解しています。

一つの物件のローンをその物件だけでコツコツと支払っていると、完済までに30年程の時間を必要とします。手取りとなる家賃収入を全額貯金に回して2件目を狙ったとしても、2件目の物件を買うためのまとまった自己資金が貯まるまでには、かなりの時間が必要です。

このようなペースで不動産投資をしていると、生涯に1~2物件しか手に入らないことになり、到底、家賃収入だけで食べていけるようにはなれません。

そのため、家賃収入だけで暮らしている「専業」を目指している方は、なるべく早期に1件目のローンを完済し、2件目、3件目と物件を増やす必要があります。

このように、複数の物件を所有していくことで、一つの物件から得られる金額は大きくなくても、合計でまとまった金額になり、家賃収入だけで生活ができるようになっていきます。

空室対策を含めたリスクへの対処ができている

家賃収入で暮らすためには、家賃収入が生活費を上回る必要があります。空室が発生した場合は、その物件からの家賃収入が0円になり、その分の収入が減るため、生活費を抑えなければなりません。

仮に家賃7万円のワンルームマンションを20物件所有していて満室時の家賃収入と生活費がほぼ同じ額だった場合、5件が空き室になれば、生活費を25%削減しないと家賃収入で暮らせなくなります。

所有している物件の中にローン返済中の物件が含まれている場合、その返済原資も25%減ることになるので、空室期間が長引くと、返済計画にも大きな影響が出ることがわかります。

空室以外にも、不動産投資には、家賃下落リスク・滞納リスク・経費増加リスク・金利上昇リスク・災害リスクなどさまざまなリスクがあります。不動産収入だけで暮らしていくことを目指している場合は、これらのリスクに適宜対応できるように準備しておく必要があります。

綿密なシミュレーションを事前に行なっている

不動産投資は、高額な不動産をローン購入して長期間運用することが前提のため、物件購入前のシミュレーションは非常に大切です。シミュレーションを怠ると、経営を続けても利益を出せないような物件に投資してしまう可能性があります。大切な資産を失わないためにも、シミュレーションはしっかり行いましょう

シミュレーションは主に以下の3つの目的のために行います。

物件の収益性を確認する

不動産投資は長期安定収入があることが理想です。購入予定の物件が、購入時だけではなく、10年後20年後にも利益が出せるような物件なのかをよく調査・確認することで、収益プランに計画倒れが少なくなります。

収益性は利回りなどを元に判断をしますが、慣れないうちは、その物件に関したことを網羅的に調べるなど、注意深い情報確認が必要です。

損失をなるべく抑える

不動産投資は運営期間が長いため、さまざまなリスクが想定されます。例えば、空室や家賃滞納による大幅な減収、設備トラブルによる修繕費の増大、火事や自然災害による建物の損傷などは、不動産投資をしている方なら、規模の大小を問わずに、誰にでも起こり得るリスクです。

ただし、不動産投資で起きやすいことは、ある程度の想定できるので、万が一のことがあった場合に対する対策と対処をシミュレーションしておくことで、損失を最小限に抑えることができます。

売却のタイミングを把握するため

不動産投資をスタートし、家賃収入で暮らすことをゴールとしている場合、あまり売却のことは想定していないかもしれません。

しかし、経年劣化による家賃下落や修繕費の増大などの影響で、保有していること自体が経営に影響するケースや、不動産価格の上昇により、大きな売却益が期待できる時には、売却した方が良い結果になることもあります。

売却までをシミュレーションに入れた経営計画は「出口戦略」といい、不動産投資の利益確定方法の一つです。物件を売却したことで、不動産投資全体の利益を確保する方法なので、売る予定がなくても、出口戦略を考えておくべきだといえます。 適切なタイミングで売却するためには、所有している物件がどのような状態になったら売るかを、ある程度決めておく必要があります。

物件のメンテナンスを事前に想定しきっちり対応する

不動産投資で扱う物件は、購入前・入居者が入る前の段階で、メンテナンスの必要性を確認しておきます。これらの確認をしないことにより、空室リスクや家賃下落リスクが上がる、入居後の大きなトラブルによる経費がかかるなどの可能性が高くなります。

特に、築年数が古い物件を取り扱う場合は注意が必要です。気をつけておくべき物件メンテナンス事項には、以下のようなものがあります。

設備の入れ替え

キッチン・トイレ・洗面台・ユニットバスなど水回りを中心として設備が劣化している場合は、新しいものに入れ替える必要があります。室内設備の耐用年数は5~10年前後であることが多いため、築年数の古い物件を購入した場合には、かなりの確率で設備費が発生します。 また、購入の前の段階で、設備がどの程度傷んでいるかを確認しておかないと、ケースによっては配管レベルから取り換えなければならないこともあり、その場合は、フルリノベーション工事などで、数百万単位の費用がかかることもあります。

内装の張り替え

退去をした際の原状回復のレベルではなく、ニオイ・汚れなどが激しく、壁・天井・床などを大がかりに取り換えなければならないケースがあります。 画像がキレイでも、室内に入って確認しないとわからないことが多いため、物件データのみで購入すると、失敗する可能性もあります。

間取り変更など

築年数の古い物件の場合、現代の生活では使いにくい間取りであることがあります。時代に合った間取りにするため・広く使いやすくするために、壁を・抜いてリビングを作るなどの工事が必要になるケースもあります。

物件の外回りに関する修繕

所有物件の建物全体に対する修繕が必要なケースがあります。特に、長期間、大規模修繕や適切な修理が行われなかった場合は、メンテナンスが多発する可能性もあります。 特に、外壁塗装・金属部分の錆止め・ペンキの塗り替えなど、共用部分の修理修繕は、放置すれば空室リスクや家賃下落リスクが上がる可能性があります。

このようなメンテナンス費用の発生は、中古物件を購入して不動産投資をする場合は避けられないことが多いです。かかりそうな費用をシミュレーションした上で返済計画・経営計画を立てるのと、突発的に発生するのとでは、大きな違いが生じます。

対策としては、物件データであまりにも築年数の古いものや、画像で見た時点で印象の良くないもの・汚れが目立つ物件は購入候補リストから外すようにします。

その物件にこだわらなくても、不動産投資物件は大量にあるので、なるべく条件の良いものから選ぶようにすることで、不要な出費を抑えることができます。

家賃収入を得ることで受けるメリット・デメリット

家賃収入を毎月得ることによるメリットとデメリットをまとめて紹介します。

メリット・安定収入が期待できる

不動産の収入は、入居者による家賃収入なので、退去が起きない限りは収入が入り続けます。特に、住居としての賃貸物件は、景気が悪くなっても退去になるケースが少なく、安定した収入が期待できます。

ローンを組んだ場合でも、ローンの返済原資は入居者からの家賃なので、物件オーナーが支払いをしなくても、着実に完済に向かって進んでいき、最終的に不動産という資産も手に入るようになります。

メリット・他の投資に比べてレバレッジが効かせられる

不動産投資におけるレバレッジとは、少ない自己資金でも大きな投資ができるという意味です。不動産投資では、区分ワンルームマンションであっても、売買金額が1,000万円を超えることが多いため、ほとんどの方が融資を受けて物件購入をします。

仮に自己資金が1,000万円しかなくても、それを投資資金として投入することで、5,000万円や1億円の物件を購入することも可能です。このように、金融機関から借入を起こすことでレバレッジがかかり、手持ち資金の何倍もの投資効率を上げることができます。

世の中にはさまざまな投資方法がありますが、投資のために金融機関がお金を貸してくれるのは、不動産投資しかありません。

これは金融機関が、不動産投資を不動産賃貸業の一つだとみなし、入居者がいる限り、物件から長期にわたって安定的な収入が見込めるため、融資返済で失敗が起きにくいビジネスモデルだと認識しているためです。

金融機関からすると、エリアと土地条件が良ければ、長期安定収入が期待でき、万が一の場合は現物資産を売却すれば焦げ付きも起きにくいため、比較的、安全な貸し出し先といえます。

デメリット・確定申告する必要がある

家賃収入から経費を差し引いた分が年間20万円以上ある場合は、確定申告が必要です。サラリーマンをしていると、税に関することは会社に任せられますが、不動投資の確定申告は、副業としての収入なので、自分で申告する必要があります。

初めての不動産投資の場合は、確定申告書を記入するのも初めてであるケースが多く、見たこともない様式の申告書に、自分の税金に関することを記入しなければならないため、気が重い方もいらっしゃるかと思います。

不動産投資に関するセミナーを開催している多くの不動産会社では、年間を通じて確定申告に関したノウハウや提出方法に関した講座を開催しています。これから不動産投資をするのであれば、スタート前の時点で、早めに勉強しておくことをおすすめします。

デメリット・給与所得に比べてリスクが伴う

給与所得は、基本的に会社に勤めていれば、毎月、規定の金額が振り込まれます。企業では部署ごとに仕事が細分化されているため、個人の失敗が全体に影響しにくい構造になっています。

そのため、大きな成果を上げても給与が即上がるようなこともありませんが、代わりに、企業の業績が下がったり、個人の成績が悪かったりしても、規定の給与が支払われなくなることはほとんどありません。

不動産投資の場合は、ご自身が経営者となるので、経営上で起きるあらゆるリスクを全て自分で背負うことになります。例えば、空室が続いたことにより家賃収入が発生しない場合でも、毎月のローン返済はご自分の預貯金を崩してでも支払いを続けなければなりません。

万が一、返済遅延や滞納が続けば、最悪の場合は金融機関から差し押さえられて競売にかけられます。こうなると、苦労して所有した物件のそのものが手元からなくなり、さらに残債だけ支払い続けなければならないケースもあります。

このように、経営者としてのリスクがある点が、会社に守られているサラリーマンとは大きく違います。

家賃収入を増やす方法

ここでは、家賃収入を増すための具体的な方法をいくつか紹介します。 必要な家賃収入額は人によって違うので、ご自分が望む金額にするためには、物件をいくつ・いつまでに所有すればよいのかを考えるための参考にしてください。

ローン残債がない物件を保有する

不動産投資の勉強が進み、シミュレーション計算をしていくとわかることですが、ローン返済がある限り、手取り収入は約半額になります。修理修繕などが多く、経費が多めにかかった年には、手取り額はさらに少なくなります。

家賃の手取り額を増やして家賃収入だけで暮らすためには、物件数を増やせばよいことになります。ただし、物件を複数持つ時のポイントは、単純に物件を増やせばよいのではなく、ローンの終わった物件を着実に増やしていく必要があるという点です。

ローン返済の必要がない物件が手元に1~2件あれば、2馬力以上で返済できることになります。このことを図で表すと、以下のようになります。

【手取り家賃が月60,000円だった場合のシミュレーション】

1件目のローンは繰り上げ返済などで、無理のない範囲で早期に返済を終わらせます。次に、2件目の物件を購入します。2件目の返済は、1件目+2件目の家賃収入で返済していきます。

2件目は最初から2倍の返済額にできるので、最初のローン返済期間の半分で返済ができることになります。同じことを、3件目、4件目と続けていくことで、徐々に、所有物件が、新規物件のローンを支払うという仕組みが構築されていきます。

完済した物件からはローン返済額だった分が手取り収入になっているので、よりスピードアップしたいのであれば、これらの収入を繰り上げ返済に使うこともできます。繰り上げ返済をすれば金利も減っていくので、より返済はラクになり、手取り額も上がっていきます

所有物件が3件目になると、はじめから3馬力で返済をしていることになるので、30年のローンは1/3にまで短縮し、繰り上げ返済なしでも10年前後で完済できるようになります。

シンプルな言い方をすれば、2馬力で返せば2倍速で2件目が手に入り、3馬力で返せば3倍速で3件目が手に入るようになります。このように、家賃収入で暮らしている方の多くは、短期間で複数物件からの収入を生み出す仕組みを構築した結果、家賃収入だけで生活ができる「専業」というライフスタイルを手に入れています。

投資規模は徐々に増やしていく

家賃収入で暮らすことができるためには、複数の物件所有が必要ではありますが、投資規模は、段階をおって増やすようにします。その理由として、不動産投資には、常にローン返済がついて回り、焦って短期間に物件を増やすと、債務過剰になる可能性があるためです。

たくさんの借り入れをしていても、入居者がいて家賃収入が入ってさえいれば、ローンの返済原資は家賃ですので、問題なく返済が進みます。しかし、不動産投資にはさまざまなリスクがあり、その中でも特に、空室リスク・家賃滞納リスクが起きると、ローン返済に問題が起きる可能性があります。

どちらも、家賃収入が入ってこないことにより、ローンの返済原資がなくなります。しかし、返済は待ってくれませんので、次の入居者が現れるまでの期間、オーナーの預貯金などから支払いを続ける必要があります。

潤沢な自己資金があれば問題ありませんが、多くの方は「家賃収入で暮らすことを目指している人」で、お金が余っているわけではありません。自腹返済もしばらくの間は維持できますが、本来、ローン返済は家賃収入が原資となっているので、だんだんと収支バランスが崩れてきます。

問題を早期に解決するためには、家賃を下げて対応する必要があり、これも当初の経営計画に影響を及ぼします。そのため、家賃収入だけで暮らすライフスタイルを早く手に入れたい気持ちがあっても、決して焦らず、確実に返済ができる計画で、段階を追って不動産投資の規模を広げていくようにしてください。

家賃収入を得たら行う確定申告とは?

確定申告とは、所得税を計算し納付するための申告手続きのことです。税金の対象になるのは、収入から経費を差し引いた金額から、さらにさまざまな控除をした金額です。現在、これらの申告はパソコンやスマホからできるようになっており、計算も、必要な項目を埋めていくと自動で税額を提示してくれるため、はじめての確定申告でも間違いのない申告がしやすい環境が整っています。

【参考元】国税庁「令和4年分 確定申告特集」より

対象となる収入は、不動産物件を所有した年の翌年2/16~3/15の間に、前年度1/1~12/31までの不動産所得を計算します。確定申告は、所得があった人全員の義務ですので、所得があるのに申告をしない・忘れた場合は、ペナルティが発生することがありますので注意が必要です。

サラリーマンの場合は、給与収入への納税に関しては、全て会社が管理をして給与天引きをしていますが、不動産収入で得た所得は、別途、ご自身で確定申告をする必要があります。

また、申告義務は、不動産投資による年間の利益が20万円を超えた場合ですが、サラリーマンの場合は、不動産投資が赤字の年であっても、通算損益という、黒字に赤字をぶつけてマイナス分を相殺できる仕組みがありますので、申告をしたほうが良い場合があります。

例えば、不動産投資で赤字が出た場合、サラリーマン収入(黒字)に赤字をぶつけることによって、全体の年間収入を下げることができます。年間収入が下がると課税対象額が下がり、ケースによっては税率も下がりますので、大きく節税出来ることがあります。

また、給与から源泉徴収された金額が、損益通算をして年間収入が下がったことにより「源泉徴収額の払いすぎ」となるため、還付金として戻ることがあります。特に、初年度から数年間の、物件の減価償却費が経理計上される間は赤字になりやすいため、節税対策としても有効です。

家賃収入だけで暮らすことができるほどの金額を得るためには、不動産投資の規模を徐々に拡大していくことになりますので、だんだんと所得が増え、次第に税負担は重くなります。

不動産投資をスタートする際には、将来の節税なども頭に入れた状態で、勉強をしながら進めていく必要があります。

まとめ

家賃収入で暮らすことができるようになるためには、年間いくら必要で、どのくらいの物件数が必要なのかをまとめて解説しました。

家賃収入だけで暮らす方を、不動産投資では「専業」「専業大家」と呼んでいますが、専業となってもサラリーマンを続けている方も大勢いらっしゃいます。ただ、専業になった状態では、会社に自分の意志で勤務することができ、辞めたければいつでも退職することができるという経済的な自由があります。

最終的にご自身がどんなライフスタイルを送りたいのかで、必要な金額も違ってきますが、家賃収入だけで暮らすようになれた投資家の方の多くは、家賃収入だけで生活できるようになることを目指した結果、目標としていたライフスタイルを手に入れています。

将来の自分を思い描き、自分の人生に必要な分だけ収入を増やすことができる不動産投資を始めてみてはいかがでしょうか。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.10

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

家賃収入で暮らすには年間いくら必要?家賃が入る仕組みも解説

  • 年収・収入
  • 賃貸管理
  • 不動産投資

不動産投資をはじめてみようかと検討している人の多くは「家賃収入で暮らすためには、年間いくらの必要なのかな」「不動産収入だけで暮らしている人ってどのくらい必要なのだろう」などと気になったことがあるはずです。家賃収入で暮らしていけるだけの収入がある人の中には、専業で不動産投資だけをしている人、不動産投資をしながらサラリーマンを続けている人、不動産投資をしながら事業をしている人など、さまざまです。

この記事では、不動産収入で暮らすためには、年最低いくら必要で、どのくらいの規模で不動産投資をすればよいのかなど、家賃収入で暮らすために必要な情報をまとめて解説します。

家賃収入とは?

家賃収入とは、アパート・マンション・一軒家などの不動産を所有して賃貸物件として人に貸し、入居者から家賃として得ている収入のことです。

家賃は毎月支払うものなので、入居者がいる限り、物件オーナーは毎月家賃収入を得られます。このような方法で不動産を人に貸して家賃収入を得る方法を、不動産投資といいます。

家賃が入る仕組み

賃貸物件を人に貸すと、入居者が家賃を支払うので、その賃料が収入となります。家賃には住居以外にも、オフィスビル・ビルのテナント・店舗・戸建てなど、さまざまな物件があります。

一般的には翌月分の家賃を当月末までに支払う契約となっていて、支払い日は月の後半に設定されていることが多いです。月の途中から入居・退去をした場合は、日割り家賃となります。

ただし、家賃収入の全てが利益になるわけではなく、経営のためにかかった経費分は利益から差し引かれることになります。

家賃収入の種類

毎月の家賃以外にも、入居者や契約者から支払われる以下のものは、家賃収入になります。

  • 礼金
    礼金とは、賃貸契約時に、入居者から物件オーナーに対して支払われる一時金のことです。入居するための「お礼」として支払うお金なので返還義務がなく、もらった金額は収入となります。 多くの場合、家賃の1~2ヶ月分が設定されていますが、最近は、入居率を高めるために礼金0円にしているケースも増えています。また、地域によって、礼金の慣習があるところとないところがあります。
  • 敷金
    敷金とは、契約時に、入居者が入居中に家賃滞納や、部屋の一部を棄損した場合などの担保として、物件オーナーに渡すお金のことです。 万が一の場合のお金として、入居者から預かっているだけなので、上記のようなトラブルがなかった場合は、賃貸契約が終了した時点で返すことが原則です。ただし、返還の必要がない場合は収入となります。 部屋の汚れ・破損については入居中に全く起きないことは現実的ではないため、退去時に不動産会社担当者・入居者・オーナーによる確認をした上で、汚れ・棄損度合いに応じた清掃費・修理費などが見積もられ、その金額が敷金から差し引かれたものが入居者に返還されます。
  • 保証金
    保証金とは、物件を借りる時の初期費用の一つで、主に店舗や事務所などを借りる時に使われる言葉です。内容としては、前項の敷金と同じです。
  • 駐車場代
    駐車場として貸している場合は、駐車場賃料が収入となります。
  • 土地代
    土地だけを貸している場合は、土地代が不動産収入となります。
  • 更新料
    賃貸契約を更新した場合、地域によっては更新料が発生します。
  • 共益費、管理費
    共用部分の水道代・電気代・掃除代などを入居者全員で負担するための費用です。家賃支払い時に一緒に支払うことが多く、家賃に含まれているケースと、別になっているケースがあります。また、このような費用がない物件もあります。 共益費や管理費も税務上は収入ですが、実際に支払った共用部分への金額は、経費として計上します。

家賃を得るために必要な支出

家賃収入は賃料の全てが収入になるわけではなく、不動産経営に必要な経費を差し引いた残りが手取り額となります。家賃収入から差し引く不動産投資の経費には、以下のようなものがあります。

  • ローン金利
    物件購入のために組んだローンのうち金利分は経費となる
  • 税金
    固定資産税・都市計画税・所得税・住民税など
  • 保険料
    損害保険に加入した場合の年額
  • 管理会社への管理委託料
    賃貸管理・建物管理会社への業務委託費用
  • 仲介手数料、広告宣伝費など入居付けのための費用
    入居者募集をした際にかかる、不動産会社への仲介手数料とインテンシブボーナスなどの費用全般
  • 減価償却費
    建物や工事費用など、大きな金額が発生した場合は、一度に経費にはせず、法律で決められた年数にわけて経費計上する税務上の出費
  • 修理修繕費
    経年劣化や故障トラブルなどによる修理・修繕費用
  • 通信費
    不動産経営のために使った電話代・ネット代・WIFI代金などの費用
  • 交際費
    不動産投資・経営のために使った打ち合わせ費用・セミナー懇親会費用
  • 旅費・交通費
    不動産投資・経営のために使った旅費・交際費・車移動にかかった費用
  • 情報収集費
    不動産投資・経営のために参加したセミナー代金・書籍・DVD代など

これらの経費は、定期的に発生するものと、必要に応じて発生するものがありますが、発生したら経費として計上します。不動産投資で支払う経費は、基本的に家賃収入から支払うので、あまり経費が多いと手取り額が少なくなります。

 

家賃収入を得るための手順

家賃収入を得るまでの流れを6つのステップにわけて説明します。全体の流れを図に表すと、以下のようになります。

不動産会社を探す

不動産投資を検討し始めたら、まずは、信頼と実績のある、不動産投資のパートナーとなるべき会社を探します。初めての不動産投資では、不動産業界のことも不動産投資のことも、まだ何も知りませんので、情報収集をしながら少しでも知識を蓄えるようにします。

不動産会社が開催する複数のセミナーに参加して、セミナーの内容のわかりやすさや得られる情報の質など、素人ながら感じられる情報をもとに総合的に判断して、パートナーとなる会社を選びます。

コロナ禍以後、多くの会社でオンラインセミナーが開催されているので、積極的に参加するようにしてください。セミナー受講後は、個別相談会に参加して、担当者の対応なども確認しましょう。

セミナーでは無料の資料や冊子などが配布されることもありますが、ご自身でも不動産投資に関する本を複数冊購入して、不動産会社が発信する情報とは違う角度で、知識を補う努力をするとよいでしょう。

物件を探す

複数の不動産投資セミナーに参加し、本を読破して基本的な情報を得たら、不動産投資用の収益物件にはどのようなものがあるのか確認してみましょう。

不動産投資用の物件は、セミナー参加をした不動産会社の公式サイトや配布資料などに掲載されています。それ以外にも、不動産投資に関した情報サイトや、雑誌の広告欄などでも見つけることができます。

この段階では「投資物件と呼ばれるものには、どのようなものがあるのか」を知るために、カタログを見る、ウインドーショッピングをするような感覚なので、気になる物件があれば、URLを記録しておくなどして、どんどん情報を集めましょう。

物件には新築・中古、区分・一棟、マンション・木造など、様々な組み合わせがあります。ご自分がどのような不動産投資をし、いつまでにいくらの家賃収入が欲しいかという目標設定によって、選ぶべき物件が変わります。

目標に適した物件を選ぶためには、ご自身で検索などをして情報を集めることも大切ですが、同時に、不動産投資のプロフェッショナルである不動産投資会社の担当者に聞いてみるとよいでしょう。不動産投資の目的や現時点で用意できる自己資産の額を伝えて相談することにより、自分の目的を達成するためにどのような物件を選ぶべきなのか具体的なアドバイスを受けることができます。

融資を受ける

勉強と情報収集を続けていくうちに「これは!」という物件が見つかったら、買い付け申し込みをすることもできます。申し込みの時点で購入が確定するわけではなく、物件オーナーの選択、金融機関での事前融資審査も含めて手続きが進んでいきます。

金融機関の融資方法は、大きくわけて2つあります。一つはご自分で金融機関に融資相談をする、もう一つは、不動産会社と提携のある金融機関へ、物件紹介をしてくれた不動産投資会社を通じて申し込む方法です。おすすめなのは後者です。

多くの不動産投資会社は、過去の取引実績から金融機関の信頼を得て業務提携をしています。会社によって提携先金融機関には違いがあるため、パートナーとなる不動産会社選びの際には、どのような提携先があるかもチェックしておくとよいでしょう。

購入したいと思うほど気になる物件は、いつ出てくるかわかりません。そのため、物件探しを始めた時点で、融資のための提出書類などは準備しておくようにしましょう。

融資に必要となる主な書類は以下の通りです。

  • 源泉徴収票
    勤務先で入手できます。
  • 全借入の返済予定表
    返済予定表、返済の計画表です。多くの場合、不動産会社のセミナーでサンプルとなる計画表と、書き方の説明があります。
  • 身分証明書
    写真付きの身分証明書など、金融機関が指定するものをご用意ください。
  • 購入物件の収益が分かる資料
    物件検索をしているときに、物件情報としてPDF添付などがされている資料の中にあります。ない場合は自分で作成します。
  • 全資産が分かるもの
    マイホームをお持ちの方は不動産評価額など資産としての価値がわかるものを用意します。その他、株式・投信・預貯金など、現金化できるタイプの資産をお持ちの場合は、自己資産としてリストにしておきます。 必要な書類は金融機関によって違うので、申し込みをする金融機関、または提携不動産会社の資料をよく確認してください。

物件を購入する

ローンの事前審査とほぼ並行して、売買契約を結びます。このタイミングでは、購入代金の一部を手付金として手渡します。

契約の際に必ず確認しておきたいのが「重要事項説明書」です。重要事項説明書とは、購入物件と契約内容に関する重要な情報記載されている書類です。契約後のトラブルを回避するために、重要事項説明書の内容でわからないことなどは、契約前の段階で、担当者に確認してください。

契約時には宅地建物取引士から直接説明があり、契約内容に問題なければ、契約締結となります。その後、金融機関の最終審査を待ち、決済が完了してから物件の引き渡しへと移ります。

売主の口座に物件の購入代金(手付金を差し引いた金額)が入金されたことが確認され次第、司法書士が所有権移転登記をします。移転内容が登記簿謄本に反映されるまでには1~2週間を要しますが、登記名義人が変わるのは、売買契約で決済を行った日付になります。

貸し出す

物件の引き渡しが終わったら、いよいよ運用開始です。入居者がいない状態の場合は、修理・リフォームなどが必要であれば適切な工事をします。同時に、入居者募集などを任せられる不動産管理会社を選んで契約をします。

入居者募集・案内・契約に関することは、管理委託をした不動産会社が行います。入居申し込みがあれば、オーナーにも申込者の情報が送られてくるので、支払い能力や属性などを考慮して、オーナーが入居の可否を決めます。

入居者がいる状態で購入したオーナーチェンジ物件の場合は、管理会社が入居者にオーナーが変更になったことを手紙などでお知らせしてくれます。

家賃が入る

入居者が決まると家賃収入が発生します。ほとんどの方は不動産投資物件を購入する際にローンを組んでいるので、家賃はローンの返済原資となります。

そのため、ローン完済するまでは、家賃収入が全て収入になるわけではなく、経営のためにかかった経費と、ローン返済額を差し引いた残りが、手取り額となります。

手取り額は、融資申し込みの段階で作成する返済計画でほぼわかります。手取り収入を増やしたい場合は、毎月の返済額を小さくする必要がありますが、その分、完済が遅くなります。

必要な手取り額は「不動産投資を通じて何歳までにいくらの家賃収入が必要なのか」というライフプランによって変わってきます。

家賃収入だけで暮らすのに必要な金額は?

家賃収入だけで暮らすためには、年にいくら、月にいくら必要なのかを把握することが大切です。 そこから逆算すれば、どのくらいの規模・期間で不動産投資をすればよいのかもわかるようになります。 ここでは、家賃収入で生活するために必要な金額について説明します。

1年間の平均生活費

総務省統計局が毎年調査をしている「家計調査報告〔家計収支編〕」によると、2021年の二人以上の世帯(平均世帯人員2.93人、世帯主の平均年齢60.1歳)の消費支出は、1世帯当たり1カ月平均279,024円でした。

二人以上の世帯で、平均的な日本人の暮らしに必要な生活費を家賃収入だけで得るのであれば、月28万円程度を目指す必要があることがわかります。

また、国税庁が公表している「平成30年分民間給与実態統計調査結果」によれば、日本の平均的なサラリーマンが1年間で得る年収の平均は441万円、月額換算で約36.7万円となります。多くのサラリーマン世帯は、月額36万円程度の予算の中で、生活費プラスアルファのライフスタイルを維持しているといえるでしょう。

そのため、家賃収入だけで平均的なライフスタイルを維持できるようになるためには、以下の家賃収入が必要であることがわかります。

平均的な暮らしに必要な金額・・・約28万円(年約336万円)
多少のゆとりがある生活に必要な金額・・・約36万円(年約432万円)

これらのデータは、あくまで平均的な日本人のライフスタイルを想定したものなので、人によって必要な金額は違います。また、生涯独身のままなのか、結婚をして複数人の子供を育てるのかなどによっても、必要な金額が違ってきます。

不動産投資を検討する際には、これらの数値を参考に、自分のライフプランを想定しながら必要な金額を割り出していく必要があります。

1年間の平均不動産投資所得

不動産投資で家賃収入を得ている人たちは、どの程度の手取り額を得ているのでしょうか。

国税庁のデータに基づき、日本全国で家賃収入を得ている人の年収別の構成比を以下のグラフにまとめてみました。

最も多いのは家賃収入400万~500万円以下(青色)であり、これは前項で解説をした、家賃収入だけで比較的余裕のある生活ができる年収約440万円とほぼ一致しています。次に多いのは500万円~600万円以下と200万円台となっています。

ただし、本データには不動産投資をスタートしてからの期間は含まれていないため、ベテランから初心者までが混在している状態です。

家賃収入が400万円以上ある不動産所得者は、ベテランから初心者までを含めた全体の約58%であることから、不動産投資をしている方の半数以上は、最終的に家賃収入だけで一般的な生活は十分可能となっていることがわかります。

また、家賃収入だけで年間1億を超える層は全体の0.3%であることから、不動産投資をスタートさせた多くの方は、億万長者を目指しているのではなく、「家賃収入だけで生活できるようになる」ことをゴールとしていると推測できます。

このことから、不動産投資をスタートするにあたり、最終的に家賃収入だけで生活ができるようなライフスタイルを目標設定にすることは決して夢物語などではなく、むしろ不動産投資をしている人たちにとっては「一般的なゴール」であるともいえます。

家賃収入をシミュレーションしてみよう

実際に不動産投資を始めたら、何にいくら払って、どのくらいの手取りが残るのかをシミュレーションした結果を紹介します。人によって購入する物件の条件が違うため、今回は非常にシンプルな計算をしてみました。

シミュレーションするために必要な情報

まずは家賃収入のシミュレーション計算に必要な情報を準備します。物件オーナーの手元に残る金額は、収入-必要経費(支出)なので、収入と支出のデータが必要になります。

今回は、シンプルなシミュレーション計算のために、以下の情報を用意しました。

【収入】 【支出】
・家賃
・その他収入
・ローン返済費
・その他経費

上記の収入と支出の情報は、情報収集の際に気になった物件・お気に入り物件のデータを使って計算すると、よりリアルなシミュレーションができます。

【収入】

  • 家賃
    家賃物件1室あたりの家賃設定のことです。複数物件を所有している、または将来において複数物件を所有するケースを想定した計算をする場合は、その件数分を加算します。どちらも月額家賃で計算します。
  • その他収入
    その他の不動産収入となるものがあれば、加算します。例えば、更新月には、更新料が発生しますので、その分が収入として加算されます。ただし、今回はシンプルなシミュレーション計算なので、物件×部屋数のみで計算します。

【支出】

  • ローン返済費
    金融機関で借り入れをした金額の、毎月の返済です。ローンの金利は経費ですが、ローン返済額は経費ではなく、毎月の支出になります。 一般的に、安定的な不動産経営を続けるためには、ローン返済比率は家賃収入の40~50%までが望ましいとされています。
  • その他経費
    定期的な経費には、管理委託料・損害保険料・所得税・住民税・固定資産税などの、毎月・毎年必ず発生するものがあります。経費割合は収入の15~20%程度が健全経営の目安といわれています。

年間の家賃収入500万円のケース

年間の家賃収入が500万円ある場合、手取り額はいくらになるのかをシミュレーションしてみました。500万円を12カ月で割ると、月額家賃収入は約42万円となります。

一般的な不動産投資では、借り手が付きやすい、立地条件の良い区分ワンルームマンションを購入することが多いです。ワンルームマンションは家賃設定も低めであることから、年500万円の家賃収入がある方は、投資物件を複数持っていることがわかります。

【サンプルシミュレーション:月額家賃7万円の区分ワンルームを6室所有しているケース】

  計算方法 月額・シミュレーション計算
①家賃収入 家賃×物件数=月額家賃収入 月:7万円×6室=42万円
年:42万円×12カ月=504万円
②支出 ローン返済費 家賃収入の40~50%
経費合計 家賃収入の15~20%
ローン返済費
月21万円(50%計算)
84,000万円(20%計算)
・合計約30万円
③月手取り ①収入-②支出=③月額収入 ①42万円-②約30万円=③12万円
年間手取り ③×12カ月 ③12万円×12カ月=144万円

ここで注意したいのは、家賃収入ではなく、手取り額が500万円以上にならないと、不動産投資による収入だけで、一般的な暮らしができるようにはならないという点です。

上記シミュレーション計算では、家賃収入全体では500万円以上の収入がありますが、経費やローンを支払ってしまうと、オーナーの手取りは年間144万円、月額で12万円程度です。月額12万円の家賃収入だけで生活をするのは、かなり厳しいといえます。

家賃収入だけで一般的な暮らしができる400万円以上にするためには、さらに物件数が必要なことがわかります。この話を聞くと、 「一つの物件を購入するだけでも大変だと感じているのに、複数件なんてムリムリ!」 「やっぱり不動産投資はハードルが高いな」 などという感想を持つ人も多いかと思います。

しかし、一つの物件からスタートし、ご自分が望むだけの不動産収入を得るのは、不動産投資の世界では、実はそう難しいことではありません。

次章からは、家賃収入だけで暮らす不動産投資の諸先輩が、どのようにして物件を増やしていったのかを、わかりやすく説明します。

家賃収入だけで暮らす人がやっていること

不動産収入だけで生活をしている方を「専業大家」または「専業」といいます。これに対し、本業として会社で給与などを得ながら、副業として不動産収入も得ている方を、「兼業大家」または「サラリーマン大家」などと呼びます。

不動産収入だけで生活ができるということは、日本人の一般的な生活に必要な金額の全てを、不動産収入だけでまかなえるということです。2章で解説をした通り、日本の一般的なライフスタイルを送るためには年400万円前後の手取り額が必要です。

ここでは、どうすれば不動産収入だけで暮らせる「専業」になれるのか、具体的に説明します。

物件を複数保有している

不動産投資とは、自分の代わりに不動産に働いてもらうことを目的とした投資方法なので、ローンを完済した物件を早めに作りだし、その物件に次のローンを払ってもらう仕組みを構築するのが最も効率が良いということになります。

不動産投資をスタートして比較的短い期間で、家賃収入だけで暮らす「専業」になっている方は、スタート時点で、このことをよく理解しています。

一つの物件のローンをその物件だけでコツコツと支払っていると、完済までに30年程の時間を必要とします。手取りとなる家賃収入を全額貯金に回して2件目を狙ったとしても、2件目の物件を買うためのまとまった自己資金が貯まるまでには、かなりの時間が必要です。

このようなペースで不動産投資をしていると、生涯に1~2物件しか手に入らないことになり、到底、家賃収入だけで食べていけるようにはなれません。

そのため、家賃収入だけで暮らしている「専業」を目指している方は、なるべく早期に1件目のローンを完済し、2件目、3件目と物件を増やす必要があります。

このように、複数の物件を所有していくことで、一つの物件から得られる金額は大きくなくても、合計でまとまった金額になり、家賃収入だけで生活ができるようになっていきます。

空室対策を含めたリスクへの対処ができている

家賃収入で暮らすためには、家賃収入が生活費を上回る必要があります。空室が発生した場合は、その物件からの家賃収入が0円になり、その分の収入が減るため、生活費を抑えなければなりません。

仮に家賃7万円のワンルームマンションを20物件所有していて満室時の家賃収入と生活費がほぼ同じ額だった場合、5件が空き室になれば、生活費を25%削減しないと家賃収入で暮らせなくなります。

所有している物件の中にローン返済中の物件が含まれている場合、その返済原資も25%減ることになるので、空室期間が長引くと、返済計画にも大きな影響が出ることがわかります。

空室以外にも、不動産投資には、家賃下落リスク・滞納リスク・経費増加リスク・金利上昇リスク・災害リスクなどさまざまなリスクがあります。不動産収入だけで暮らしていくことを目指している場合は、これらのリスクに適宜対応できるように準備しておく必要があります。

綿密なシミュレーションを事前に行なっている

不動産投資は、高額な不動産をローン購入して長期間運用することが前提のため、物件購入前のシミュレーションは非常に大切です。シミュレーションを怠ると、経営を続けても利益を出せないような物件に投資してしまう可能性があります。大切な資産を失わないためにも、シミュレーションはしっかり行いましょう

シミュレーションは主に以下の3つの目的のために行います。

物件の収益性を確認する

不動産投資は長期安定収入があることが理想です。購入予定の物件が、購入時だけではなく、10年後20年後にも利益が出せるような物件なのかをよく調査・確認することで、収益プランに計画倒れが少なくなります。

収益性は利回りなどを元に判断をしますが、慣れないうちは、その物件に関したことを網羅的に調べるなど、注意深い情報確認が必要です。

損失をなるべく抑える

不動産投資は運営期間が長いため、さまざまなリスクが想定されます。例えば、空室や家賃滞納による大幅な減収、設備トラブルによる修繕費の増大、火事や自然災害による建物の損傷などは、不動産投資をしている方なら、規模の大小を問わずに、誰にでも起こり得るリスクです。

ただし、不動産投資で起きやすいことは、ある程度の想定できるので、万が一のことがあった場合に対する対策と対処をシミュレーションしておくことで、損失を最小限に抑えることができます。

売却のタイミングを把握するため

不動産投資をスタートし、家賃収入で暮らすことをゴールとしている場合、あまり売却のことは想定していないかもしれません。

しかし、経年劣化による家賃下落や修繕費の増大などの影響で、保有していること自体が経営に影響するケースや、不動産価格の上昇により、大きな売却益が期待できる時には、売却した方が良い結果になることもあります。

売却までをシミュレーションに入れた経営計画は「出口戦略」といい、不動産投資の利益確定方法の一つです。物件を売却したことで、不動産投資全体の利益を確保する方法なので、売る予定がなくても、出口戦略を考えておくべきだといえます。 適切なタイミングで売却するためには、所有している物件がどのような状態になったら売るかを、ある程度決めておく必要があります。

物件のメンテナンスを事前に想定しきっちり対応する

不動産投資で扱う物件は、購入前・入居者が入る前の段階で、メンテナンスの必要性を確認しておきます。これらの確認をしないことにより、空室リスクや家賃下落リスクが上がる、入居後の大きなトラブルによる経費がかかるなどの可能性が高くなります。

特に、築年数が古い物件を取り扱う場合は注意が必要です。気をつけておくべき物件メンテナンス事項には、以下のようなものがあります。

設備の入れ替え

キッチン・トイレ・洗面台・ユニットバスなど水回りを中心として設備が劣化している場合は、新しいものに入れ替える必要があります。室内設備の耐用年数は5~10年前後であることが多いため、築年数の古い物件を購入した場合には、かなりの確率で設備費が発生します。 また、購入の前の段階で、設備がどの程度傷んでいるかを確認しておかないと、ケースによっては配管レベルから取り換えなければならないこともあり、その場合は、フルリノベーション工事などで、数百万単位の費用がかかることもあります。

内装の張り替え

退去をした際の原状回復のレベルではなく、ニオイ・汚れなどが激しく、壁・天井・床などを大がかりに取り換えなければならないケースがあります。 画像がキレイでも、室内に入って確認しないとわからないことが多いため、物件データのみで購入すると、失敗する可能性もあります。

間取り変更など

築年数の古い物件の場合、現代の生活では使いにくい間取りであることがあります。時代に合った間取りにするため・広く使いやすくするために、壁を・抜いてリビングを作るなどの工事が必要になるケースもあります。

物件の外回りに関する修繕

所有物件の建物全体に対する修繕が必要なケースがあります。特に、長期間、大規模修繕や適切な修理が行われなかった場合は、メンテナンスが多発する可能性もあります。 特に、外壁塗装・金属部分の錆止め・ペンキの塗り替えなど、共用部分の修理修繕は、放置すれば空室リスクや家賃下落リスクが上がる可能性があります。

このようなメンテナンス費用の発生は、中古物件を購入して不動産投資をする場合は避けられないことが多いです。かかりそうな費用をシミュレーションした上で返済計画・経営計画を立てるのと、突発的に発生するのとでは、大きな違いが生じます。

対策としては、物件データであまりにも築年数の古いものや、画像で見た時点で印象の良くないもの・汚れが目立つ物件は購入候補リストから外すようにします。

その物件にこだわらなくても、不動産投資物件は大量にあるので、なるべく条件の良いものから選ぶようにすることで、不要な出費を抑えることができます。

家賃収入を得ることで受けるメリット・デメリット

家賃収入を毎月得ることによるメリットとデメリットをまとめて紹介します。

メリット・安定収入が期待できる

不動産の収入は、入居者による家賃収入なので、退去が起きない限りは収入が入り続けます。特に、住居としての賃貸物件は、景気が悪くなっても退去になるケースが少なく、安定した収入が期待できます。

ローンを組んだ場合でも、ローンの返済原資は入居者からの家賃なので、物件オーナーが支払いをしなくても、着実に完済に向かって進んでいき、最終的に不動産という資産も手に入るようになります。

メリット・他の投資に比べてレバレッジが効かせられる

不動産投資におけるレバレッジとは、少ない自己資金でも大きな投資ができるという意味です。不動産投資では、区分ワンルームマンションであっても、売買金額が1,000万円を超えることが多いため、ほとんどの方が融資を受けて物件購入をします。

仮に自己資金が1,000万円しかなくても、それを投資資金として投入することで、5,000万円や1億円の物件を購入することも可能です。このように、金融機関から借入を起こすことでレバレッジがかかり、手持ち資金の何倍もの投資効率を上げることができます。

世の中にはさまざまな投資方法がありますが、投資のために金融機関がお金を貸してくれるのは、不動産投資しかありません。

これは金融機関が、不動産投資を不動産賃貸業の一つだとみなし、入居者がいる限り、物件から長期にわたって安定的な収入が見込めるため、融資返済で失敗が起きにくいビジネスモデルだと認識しているためです。

金融機関からすると、エリアと土地条件が良ければ、長期安定収入が期待でき、万が一の場合は現物資産を売却すれば焦げ付きも起きにくいため、比較的、安全な貸し出し先といえます。

デメリット・確定申告する必要がある

家賃収入から経費を差し引いた分が年間20万円以上ある場合は、確定申告が必要です。サラリーマンをしていると、税に関することは会社に任せられますが、不動投資の確定申告は、副業としての収入なので、自分で申告する必要があります。

初めての不動産投資の場合は、確定申告書を記入するのも初めてであるケースが多く、見たこともない様式の申告書に、自分の税金に関することを記入しなければならないため、気が重い方もいらっしゃるかと思います。

不動産投資に関するセミナーを開催している多くの不動産会社では、年間を通じて確定申告に関したノウハウや提出方法に関した講座を開催しています。これから不動産投資をするのであれば、スタート前の時点で、早めに勉強しておくことをおすすめします。

デメリット・給与所得に比べてリスクが伴う

給与所得は、基本的に会社に勤めていれば、毎月、規定の金額が振り込まれます。企業では部署ごとに仕事が細分化されているため、個人の失敗が全体に影響しにくい構造になっています。

そのため、大きな成果を上げても給与が即上がるようなこともありませんが、代わりに、企業の業績が下がったり、個人の成績が悪かったりしても、規定の給与が支払われなくなることはほとんどありません。

不動産投資の場合は、ご自身が経営者となるので、経営上で起きるあらゆるリスクを全て自分で背負うことになります。例えば、空室が続いたことにより家賃収入が発生しない場合でも、毎月のローン返済はご自分の預貯金を崩してでも支払いを続けなければなりません。

万が一、返済遅延や滞納が続けば、最悪の場合は金融機関から差し押さえられて競売にかけられます。こうなると、苦労して所有した物件のそのものが手元からなくなり、さらに残債だけ支払い続けなければならないケースもあります。

このように、経営者としてのリスクがある点が、会社に守られているサラリーマンとは大きく違います。

家賃収入を増やす方法

ここでは、家賃収入を増すための具体的な方法をいくつか紹介します。 必要な家賃収入額は人によって違うので、ご自分が望む金額にするためには、物件をいくつ・いつまでに所有すればよいのかを考えるための参考にしてください。

ローン残債がない物件を保有する

不動産投資の勉強が進み、シミュレーション計算をしていくとわかることですが、ローン返済がある限り、手取り収入は約半額になります。修理修繕などが多く、経費が多めにかかった年には、手取り額はさらに少なくなります。

家賃の手取り額を増やして家賃収入だけで暮らすためには、物件数を増やせばよいことになります。ただし、物件を複数持つ時のポイントは、単純に物件を増やせばよいのではなく、ローンの終わった物件を着実に増やしていく必要があるという点です。

ローン返済の必要がない物件が手元に1~2件あれば、2馬力以上で返済できることになります。このことを図で表すと、以下のようになります。

【手取り家賃が月60,000円だった場合のシミュレーション】

1件目のローンは繰り上げ返済などで、無理のない範囲で早期に返済を終わらせます。次に、2件目の物件を購入します。2件目の返済は、1件目+2件目の家賃収入で返済していきます。

2件目は最初から2倍の返済額にできるので、最初のローン返済期間の半分で返済ができることになります。同じことを、3件目、4件目と続けていくことで、徐々に、所有物件が、新規物件のローンを支払うという仕組みが構築されていきます。

完済した物件からはローン返済額だった分が手取り収入になっているので、よりスピードアップしたいのであれば、これらの収入を繰り上げ返済に使うこともできます。繰り上げ返済をすれば金利も減っていくので、より返済はラクになり、手取り額も上がっていきます

所有物件が3件目になると、はじめから3馬力で返済をしていることになるので、30年のローンは1/3にまで短縮し、繰り上げ返済なしでも10年前後で完済できるようになります。

シンプルな言い方をすれば、2馬力で返せば2倍速で2件目が手に入り、3馬力で返せば3倍速で3件目が手に入るようになります。このように、家賃収入で暮らしている方の多くは、短期間で複数物件からの収入を生み出す仕組みを構築した結果、家賃収入だけで生活ができる「専業」というライフスタイルを手に入れています。

投資規模は徐々に増やしていく

家賃収入で暮らすことができるためには、複数の物件所有が必要ではありますが、投資規模は、段階をおって増やすようにします。その理由として、不動産投資には、常にローン返済がついて回り、焦って短期間に物件を増やすと、債務過剰になる可能性があるためです。

たくさんの借り入れをしていても、入居者がいて家賃収入が入ってさえいれば、ローンの返済原資は家賃ですので、問題なく返済が進みます。しかし、不動産投資にはさまざまなリスクがあり、その中でも特に、空室リスク・家賃滞納リスクが起きると、ローン返済に問題が起きる可能性があります。

どちらも、家賃収入が入ってこないことにより、ローンの返済原資がなくなります。しかし、返済は待ってくれませんので、次の入居者が現れるまでの期間、オーナーの預貯金などから支払いを続ける必要があります。

潤沢な自己資金があれば問題ありませんが、多くの方は「家賃収入で暮らすことを目指している人」で、お金が余っているわけではありません。自腹返済もしばらくの間は維持できますが、本来、ローン返済は家賃収入が原資となっているので、だんだんと収支バランスが崩れてきます。

問題を早期に解決するためには、家賃を下げて対応する必要があり、これも当初の経営計画に影響を及ぼします。そのため、家賃収入だけで暮らすライフスタイルを早く手に入れたい気持ちがあっても、決して焦らず、確実に返済ができる計画で、段階を追って不動産投資の規模を広げていくようにしてください。

家賃収入を得たら行う確定申告とは?

確定申告とは、所得税を計算し納付するための申告手続きのことです。税金の対象になるのは、収入から経費を差し引いた金額から、さらにさまざまな控除をした金額です。現在、これらの申告はパソコンやスマホからできるようになっており、計算も、必要な項目を埋めていくと自動で税額を提示してくれるため、はじめての確定申告でも間違いのない申告がしやすい環境が整っています。

【参考元】国税庁「令和4年分 確定申告特集」より

対象となる収入は、不動産物件を所有した年の翌年2/16~3/15の間に、前年度1/1~12/31までの不動産所得を計算します。確定申告は、所得があった人全員の義務ですので、所得があるのに申告をしない・忘れた場合は、ペナルティが発生することがありますので注意が必要です。

サラリーマンの場合は、給与収入への納税に関しては、全て会社が管理をして給与天引きをしていますが、不動産収入で得た所得は、別途、ご自身で確定申告をする必要があります。

また、申告義務は、不動産投資による年間の利益が20万円を超えた場合ですが、サラリーマンの場合は、不動産投資が赤字の年であっても、通算損益という、黒字に赤字をぶつけてマイナス分を相殺できる仕組みがありますので、申告をしたほうが良い場合があります。

例えば、不動産投資で赤字が出た場合、サラリーマン収入(黒字)に赤字をぶつけることによって、全体の年間収入を下げることができます。年間収入が下がると課税対象額が下がり、ケースによっては税率も下がりますので、大きく節税出来ることがあります。

また、給与から源泉徴収された金額が、損益通算をして年間収入が下がったことにより「源泉徴収額の払いすぎ」となるため、還付金として戻ることがあります。特に、初年度から数年間の、物件の減価償却費が経理計上される間は赤字になりやすいため、節税対策としても有効です。

家賃収入だけで暮らすことができるほどの金額を得るためには、不動産投資の規模を徐々に拡大していくことになりますので、だんだんと所得が増え、次第に税負担は重くなります。

不動産投資をスタートする際には、将来の節税なども頭に入れた状態で、勉強をしながら進めていく必要があります。

まとめ

家賃収入で暮らすことができるようになるためには、年間いくら必要で、どのくらいの物件数が必要なのかをまとめて解説しました。

家賃収入だけで暮らす方を、不動産投資では「専業」「専業大家」と呼んでいますが、専業となってもサラリーマンを続けている方も大勢いらっしゃいます。ただ、専業になった状態では、会社に自分の意志で勤務することができ、辞めたければいつでも退職することができるという経済的な自由があります。

最終的にご自身がどんなライフスタイルを送りたいのかで、必要な金額も違ってきますが、家賃収入だけで暮らすようになれた投資家の方の多くは、家賃収入だけで生活できるようになることを目指した結果、目標としていたライフスタイルを手に入れています。

将来の自分を思い描き、自分の人生に必要な分だけ収入を増やすことができる不動産投資を始めてみてはいかがでしょうか。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。