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- 月額5,000円の差が30年で180万円に…FPが教える不動産投資「ランニングコスト」の賢い見極め方
2025.12.19
三原 由紀
月額5,000円の差が30年で180万円に…FPが教える不動産投資「ランニングコスト」の賢い見極め方
- はじめ方・基礎知識
「初期費用」より「ランニングコスト」が重要なワケ
不動産投資では、どうしても最初にかかる「イニシャルコスト(初期費用)」に意識が向きがちです。仲介手数料、登記費用、ローン手続き費用などまとまった金額が必要になるため、まずここに目がいくのも自然なことでしょう。
しかし、長期で資産を育てる不動産投資において、より重要なのは“保有している限り毎年必ず発生するランニングコスト”です。ここを正しく理解できているかどうかで、将来の手残り額に大きな差が生まれます。
ランニングコストは、大きく次の3つに分類されます。
【管理委託費】
- 家賃の集金
- 入居者対応
- 募集活動(客付け)
- クレーム対応
→ 賃貸オーナー業務を代行してもらうための費用
【管理費】
- 共用部の電気代
- 清掃
- 点検
- 共用設備の維持
【修繕積立金】
- 将来の大規模修繕に備える積立金
→ 区分マンションを所有する限り必要で、オーナーが変更できない費用
【固定資産税・都市計画税】
→ 不動産を所有している限り毎年発生する税金
【火災保険料】
- 自然災害/事故への備え
→特にローン利用時は加入が必須となるケースが多い
「必ず発生する費用」と「選択できる費用」
2の物件維持コストと3の税金・保険は、物件を所有する限り避けられない“固定費”です。
一方で、1の管理委託費だけは、オーナーが自主管理を選べば発生しない、つまり“選択可能な費用”となります。とはいえ、入居者対応・家賃管理・募集活動などの負担は大きいため、実務上は、ほとんどのオーナーが管理会社へ委託しているのが実情です。
ランニングコストの主役「管理委託費」とは?
ランニングコストの中で、不動産投資家が最も注意すべきなのが「管理委託費」でしょう。前述したとおり、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険などはオーナーが選べないコストですが、管理委託費だけは、どの管理会社に任せるかを自分で選べる費用です。
管理委託費の相場は 家賃収入の5%前後。家賃8万円なら月4,000円、家賃10万円なら月5,000円ほどが目安です。
管理会社が担う業務は多岐にわたります。
- 入居者募集・審査
- 家賃の集金・督促
- 騒音・ゴミ・設備故障などのクレーム対応
- 退去時の立ち会い・原状回復の手配
- 空室期間中の募集活動・広告
- トラブル時の関係各所との調整
これらは本来すべてオーナー自身が担う業務ですが、実務量と専門性の高さから、多くのオーナーが管理会社に委託しています。つまり、管理委託費は「入居率を維持し、家賃収入を安定させるための必要経費」といえるのです。
シミュレーション:月5,000円のコスト差が与える影響
「たった月5,000円の差でそんなに変わるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし不動産投資は長期保有が前提のため、管理委託費の小さな差が将来の手残りに大きな影響を与えます。
■月5,000円の差=年間6万円 これが30年間積み上がると…
6万円 × 30年 = 180万円
管理委託費が相場より月5,000円高い管理会社を選んだだけで、30年間で180万円も手残りが変わる可能性があるということです。
さらに、次のような “質の差”が加わると収益差はもっと大きくなります。
- 募集力の違い → 空室期間の差
- 対応品質 → 入居者満足度の差
- トラブル対応の速度 → 賃料維持率の差
「安ければよい」わけではない。管理の「質」の見極め方
管理コストは低いほど収支はよくみえますが、“安い=得”とは限らない点に注意しなければなりません。なぜなら、不動産投資では「コストを抑えること」と「入居率を維持すること」 の両方が揃って初めて収益が安定するからです。
管理委託費が安くても、募集力や対応力が弱ければ空室期間が延び、結果的にコストを節約した以上のマイナスが生じることすらあります。
安すぎる管理委託費には、リスクも伴います。
- 募集力が弱く、空室期間が長くなる
- 対応が遅く、入居者満足度が低下する
- トラブル処理が雑で退去率が上昇
FPとして特に重視したいのは、「管理の質=入居率をどれだけ維持できるか」という視点。家賃収入は、不動産投資の“売上”です。入居率が1%下がるだけでも、長期的には大きな収益差となって返ってくるでしょう。
そのため、管理会社を選ぶ際は、主に次のポイントが重要です。
- 募集力(仲介ネットワーク・Web集客力)
- 管理戸数・運営歴
- 対応スピードと品質
- 退去時の原状回復の適正さ
- 口コミや評判
- 入居率の実績(一般的には95%以上が目安)
月額数千円の管理委託費の差より、“確実に入居をつける力”のほうが、不動産投資の成功に直結します。
まとめ
不動産投資では、物件価格や利回り以上に、毎月かかるランニングコストが収益性を左右します。月5,000円の差でも、30年で180万円に。重要なのは、コストの安さではなく、入居率を維持できる“管理の質”です。長期的な資産形成の視点で、管理委託先を賢く見極めることも成功のカギとなるでしょう。
この記事を書いた人
三原 由紀
合同会社エミタメ 代表 プレ定年専門FP® 「FP相談ねっと」認定FP
バブル期にOLを経験、子育て中で外に出られないときに同じアパートに住むママ友3人で株のネットトレードを始め、夫にナイショのままコッソリ1,000万円以上の利益を達成。子供の小学校入学を機に保険代理店でパート開始し、FP資格を取得。「無知はリスク(知らない=損をしていることもわからない)」を実感して、自らの家計を再生。
40代・50代に向け、プレ定年専門FPとして「お金で揉めない夫婦関係を構築」「50代からでも間に合う家計立て直し」を提案・実行支援する。保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動中。
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2025.12.19
三原 由紀
月額5,000円の差が30年で180万円に…FPが教える不動産投資「ランニングコスト」の賢い見極め方
- はじめ方・基礎知識
「初期費用」より「ランニングコスト」が重要なワケ
不動産投資では、どうしても最初にかかる「イニシャルコスト(初期費用)」に意識が向きがちです。仲介手数料、登記費用、ローン手続き費用などまとまった金額が必要になるため、まずここに目がいくのも自然なことでしょう。
しかし、長期で資産を育てる不動産投資において、より重要なのは“保有している限り毎年必ず発生するランニングコスト”です。ここを正しく理解できているかどうかで、将来の手残り額に大きな差が生まれます。
ランニングコストは、大きく次の3つに分類されます。
【管理委託費】
- 家賃の集金
- 入居者対応
- 募集活動(客付け)
- クレーム対応
→ 賃貸オーナー業務を代行してもらうための費用
【管理費】
- 共用部の電気代
- 清掃
- 点検
- 共用設備の維持
【修繕積立金】
- 将来の大規模修繕に備える積立金
→ 区分マンションを所有する限り必要で、オーナーが変更できない費用
【固定資産税・都市計画税】
→ 不動産を所有している限り毎年発生する税金
【火災保険料】
- 自然災害/事故への備え
→特にローン利用時は加入が必須となるケースが多い
「必ず発生する費用」と「選択できる費用」
2の物件維持コストと3の税金・保険は、物件を所有する限り避けられない“固定費”です。
一方で、1の管理委託費だけは、オーナーが自主管理を選べば発生しない、つまり“選択可能な費用”となります。とはいえ、入居者対応・家賃管理・募集活動などの負担は大きいため、実務上は、ほとんどのオーナーが管理会社へ委託しているのが実情です。
ランニングコストの主役「管理委託費」とは?
ランニングコストの中で、不動産投資家が最も注意すべきなのが「管理委託費」でしょう。前述したとおり、管理費・修繕積立金・固定資産税・火災保険などはオーナーが選べないコストですが、管理委託費だけは、どの管理会社に任せるかを自分で選べる費用です。
管理委託費の相場は 家賃収入の5%前後。家賃8万円なら月4,000円、家賃10万円なら月5,000円ほどが目安です。
管理会社が担う業務は多岐にわたります。
- 入居者募集・審査
- 家賃の集金・督促
- 騒音・ゴミ・設備故障などのクレーム対応
- 退去時の立ち会い・原状回復の手配
- 空室期間中の募集活動・広告
- トラブル時の関係各所との調整
これらは本来すべてオーナー自身が担う業務ですが、実務量と専門性の高さから、多くのオーナーが管理会社に委託しています。つまり、管理委託費は「入居率を維持し、家賃収入を安定させるための必要経費」といえるのです。
シミュレーション:月5,000円のコスト差が与える影響
「たった月5,000円の差でそんなに変わるの?」と思う人もいるかもしれません。しかし不動産投資は長期保有が前提のため、管理委託費の小さな差が将来の手残りに大きな影響を与えます。
■月5,000円の差=年間6万円 これが30年間積み上がると…
6万円 × 30年 = 180万円
管理委託費が相場より月5,000円高い管理会社を選んだだけで、30年間で180万円も手残りが変わる可能性があるということです。
さらに、次のような “質の差”が加わると収益差はもっと大きくなります。
- 募集力の違い → 空室期間の差
- 対応品質 → 入居者満足度の差
- トラブル対応の速度 → 賃料維持率の差
「安ければよい」わけではない。管理の「質」の見極め方
管理コストは低いほど収支はよくみえますが、“安い=得”とは限らない点に注意しなければなりません。なぜなら、不動産投資では「コストを抑えること」と「入居率を維持すること」 の両方が揃って初めて収益が安定するからです。
管理委託費が安くても、募集力や対応力が弱ければ空室期間が延び、結果的にコストを節約した以上のマイナスが生じることすらあります。
安すぎる管理委託費には、リスクも伴います。
- 募集力が弱く、空室期間が長くなる
- 対応が遅く、入居者満足度が低下する
- トラブル処理が雑で退去率が上昇
FPとして特に重視したいのは、「管理の質=入居率をどれだけ維持できるか」という視点。家賃収入は、不動産投資の“売上”です。入居率が1%下がるだけでも、長期的には大きな収益差となって返ってくるでしょう。
そのため、管理会社を選ぶ際は、主に次のポイントが重要です。
- 募集力(仲介ネットワーク・Web集客力)
- 管理戸数・運営歴
- 対応スピードと品質
- 退去時の原状回復の適正さ
- 口コミや評判
- 入居率の実績(一般的には95%以上が目安)
月額数千円の管理委託費の差より、“確実に入居をつける力”のほうが、不動産投資の成功に直結します。
まとめ
不動産投資では、物件価格や利回り以上に、毎月かかるランニングコストが収益性を左右します。月5,000円の差でも、30年で180万円に。重要なのは、コストの安さではなく、入居率を維持できる“管理の質”です。長期的な資産形成の視点で、管理委託先を賢く見極めることも成功のカギとなるでしょう。
この記事を書いた人
三原 由紀
合同会社エミタメ 代表 プレ定年専門FP® 「FP相談ねっと」認定FP
バブル期にOLを経験、子育て中で外に出られないときに同じアパートに住むママ友3人で株のネットトレードを始め、夫にナイショのままコッソリ1,000万円以上の利益を達成。子供の小学校入学を機に保険代理店でパート開始し、FP資格を取得。「無知はリスク(知らない=損をしていることもわからない)」を実感して、自らの家計を再生。
40代・50代に向け、プレ定年専門FPとして「お金で揉めない夫婦関係を構築」「50代からでも間に合う家計立て直し」を提案・実行支援する。保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動中。