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2025.12.19
川淵 ゆかり
新NISAとiDeCoだけでは「守り」の投資…FPが提唱する「攻め」と「守り」の資産ポートフォリオ
- 資産形成
NISA・iDeCoのメリットと、その「限界」
「NISAやiDeCoは始めたけど、これだけで老後は安心なの?」このような不安を抱える方に向けて、FPの視点から“攻め”の資産形成を提案します。
投資というと、やはり税制優遇が魅力の新NISAやiDeCoが人気ですが、投資枠に制限がある点がネックです。さらに、比較的長期の投資運用期間が必要となり、結果を受け取るまでに時間がかかってしまいます。
| 項目 | 新NISA(2024年~) | iDeCo |
| 制度目的 | 資産形成支援 | 老後資産形成 |
| 対象年齢 | 18歳以上 | 20歳以上~65歳未満(企業年金加入者は異なる) |
| 年間投資上限額 | 成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円(合計360万円) | 職業により異なる(例:会社員 月2.3万円、専業主婦 月2.3万円 自営業 月6.8万円) |
| 非課税期間 | 無期限 | 運用益は非課税(売却時に課税あり) |
| 運用可能商品 | 株式・投資信託・ETFなど(枠により制限あり) | 投資信託・定期預金・保険など(金融機関により異なる) |
| 税制優遇 | 運用益・売却益が非課税 | 掛金が全額所得控除、運用益も非課税) |
| 資金の引き出し | いつでも可能 | 原則60歳以降(途中引き出し不可) |
| 口座開設 | 証券会社 | 金融機関(証券・銀行・保険など) |
[図表1]新NISA・iDeCo 比較表
出所:筆者作成
ポートフォリオにおける「不動産投資」の役割
ある程度家計にゆとりがあり、新NISA・iDeCoだけでは物足りないと感じる方には、一歩進めた“ミドルリスク・ミドルリターン”の投資も検討の価値があります。これは、5~10年などの中長期的な資金計画に適しており、ハイリスク投資ほど大きな振れ幅はありませんが、ローリスク投資よりは収益が期待できる手法です。
もちろん、元本が保証されているわけではなく、損失が出る可能性もあるため、事前のリスク度合いの確認や対策は欠かせません。特にここ数年は物価上昇が目立ち、資産運用においてもインフレ対策を考えた運用が必要です。
その対策として、不動産などの「実物資産」を保有する手法は有効とされています。物価の上昇すると家賃も増額しやすく、家賃が上がると不動産の資産価値が上がるためです。
なかでもアパートやマンションといった不動産は、安定した家賃収入(インカムゲイン)が期待できる点が大きな魅力ですが、タイミングを見計らって売却益(キャピタルゲイン)も得ることができます。
しかし、不動産はやはり高額です。魅力があっても新NISAやiDeCoのように自己資本だけで始めるのは難しいため、他人資本(ローン)を活用します。これにより、手元資金以上の金額を動かし、より大きな利益を狙う「レバレッジ効果」が期待できるのです。
不動産運用事例:都心ワンルームマンション投資
人気の都心でのワンルームマンション投資を例に考えてみましょう。東京都23区のマンション価格は、2025年時点で上昇傾向が続いており、今後も堅調な推移が予想されています。
都心ワンルーム投資の例として、以下の条件で試算します。
- 購入物件新築ワンルームマンション
- 購入金額3,500万円
- 自己資金500万円
- 不動産ローン 借入額:3,000万円/金利2.0%/35年ローン(元利均等返済)
- 家賃収入10万5,000円/月(都心相場)
- 年間支出 管理費・修繕積立金・固定資産税など:約40万円
- ローン返済9万9,379円/月
このケースでは、毎年の持ち出し費用として約33万円が必要です。この物件を6年後に4,200万円で売却できた場合の収支を計算してみましょう。
売却益のシミュレーション(概算)
6年後に売却した場合のシミュレーション
- ローン残債(6年後)約2,600万円
- 売却価格4,200万円
- 売却益(税引前)約1,600万円
- 譲渡所得税 約325万円(長期譲渡・税率20.315%)
- 売却諸費用約135万円
- 当初自己資金500万円
- 6年間の持ち出し 約200万円(約33万円 × 6年)
- 手取り利益 約440万円
6年後に約440万円の利益を出す結果となりました。なお、短期譲渡(5年以内)の場合の譲渡所得税は税率が高い(39.63%)ため、利益の約4割が税金で消えてしまいます。不動産価格だけではなく、税金なども考慮して、売却のタイミングを計りましょう。
もちろん、毎年の持ち出し費用によっては長期で持ち、家賃収入を得続けるという選択肢もあります。
不動産投資を始める際は、次の3点を押さえるようにしましょう。
- 物件選び:都心・駅近・築浅・賃貸需要
- ローン設計:金利・返済期間・頭金の有無
- 管理体制:管理会社・修繕積立金・空室リスク
高年収会社員が「レバレッジ」を活用すべき理由
高年収の会社員は、その安定性から与信力(信用力)が高く、融資を受けやすい立場にあります。自己資金にローンを組み合わせることで、資産形成を加速できる可能性を秘めているのです。一般的に、不動産投資におけるレバレッジ率は自己資金の5倍から10倍以内が目安とされています。
自己資金1,000万円なら、融資を含めて5,000万円から1億円程度の物件に投資できるイメージです。このようにレバレッジをかけることで、自己資金のみでの投資よりも大きなリターンを狙うことができます。まさに「信用力を資産に変える」戦略的な投資運用といえるでしょう。
FPが組む「NISA/iDeCo + 不動産投資」の黄金比
積立投資(NISA・iDeCo)や実物資産(不動産など)への投資割合は、リスク許容度やライフステージに応じて調整する必要があります。
| 年代 | 積立投資 (NISA・iDeCo) |
不動産投資 | コメント | リスク許容度 |
| 30代 | 60% | 40% | 積立で土台を作りつつ、レバレッジ投資で加速 | 高め(時間的余裕あり) |
| 40代 | 50% | 50% | 両輪で資産形成を本格化 | 中程度 |
| 50代 | 70% | 30% | 安定運用へシフトしつつ、出口戦略を意識 | 低め(保全重視) |
[図表2]年代別「NISA/iDeCo + 不動産投資」の黄金比
出所:筆者作成
また、ワンルームマンション投資などで得た利益は、次の投資の原資として活用するのが理想です。年齢やライフステージに応じて、リスクを抑えた資産へ切り替えていくことで、資産形成から資産保全へとスムーズに移行できます。
まとめ
新NISAやiDeCoは自己資金を活かす「守り」の投資といえます。これに、ローンを活用できる不動産投資を組み合わせることで、「攻め」と「守り」のバランスが取れた資産形成が可能になるのです。成功のポイントは、事前のシミュレーションや市場価値の動きをしっかり観察すること。無理のない範囲で、成功を収めましょう。
この記事を書いた人
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所 代表 ファイナンシャルプランナー (1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
国立大学行政事務(国家公務員)後にシステムエンジニアとして、物流・会計・都市銀行などのシステム開発を担当。その後FPとして独立し、ライフプランやマネープランのセミナーのほか、日商簿記1級、CFP、情報処理技術者試験の合格経験を活かして、企業や大学での資格講座・短期大学や専門学校での非常勤講師としても勤める。 https://yukarik-fp.jimdofree.com/
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2025.12.19
川淵 ゆかり
新NISAとiDeCoだけでは「守り」の投資…FPが提唱する「攻め」と「守り」の資産ポートフォリオ
- 資産形成
NISA・iDeCoのメリットと、その「限界」
「NISAやiDeCoは始めたけど、これだけで老後は安心なの?」このような不安を抱える方に向けて、FPの視点から“攻め”の資産形成を提案します。
投資というと、やはり税制優遇が魅力の新NISAやiDeCoが人気ですが、投資枠に制限がある点がネックです。さらに、比較的長期の投資運用期間が必要となり、結果を受け取るまでに時間がかかってしまいます。
| 項目 | 新NISA(2024年~) | iDeCo |
| 制度目的 | 資産形成支援 | 老後資産形成 |
| 対象年齢 | 18歳以上 | 20歳以上~65歳未満(企業年金加入者は異なる) |
| 年間投資上限額 | 成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円(合計360万円) | 職業により異なる(例:会社員 月2.3万円、専業主婦 月2.3万円 自営業 月6.8万円) |
| 非課税期間 | 無期限 | 運用益は非課税(売却時に課税あり) |
| 運用可能商品 | 株式・投資信託・ETFなど(枠により制限あり) | 投資信託・定期預金・保険など(金融機関により異なる) |
| 税制優遇 | 運用益・売却益が非課税 | 掛金が全額所得控除、運用益も非課税) |
| 資金の引き出し | いつでも可能 | 原則60歳以降(途中引き出し不可) |
| 口座開設 | 証券会社 | 金融機関(証券・銀行・保険など) |
[図表1]新NISA・iDeCo 比較表
出所:筆者作成
ポートフォリオにおける「不動産投資」の役割
ある程度家計にゆとりがあり、新NISA・iDeCoだけでは物足りないと感じる方には、一歩進めた“ミドルリスク・ミドルリターン”の投資も検討の価値があります。これは、5~10年などの中長期的な資金計画に適しており、ハイリスク投資ほど大きな振れ幅はありませんが、ローリスク投資よりは収益が期待できる手法です。
もちろん、元本が保証されているわけではなく、損失が出る可能性もあるため、事前のリスク度合いの確認や対策は欠かせません。特にここ数年は物価上昇が目立ち、資産運用においてもインフレ対策を考えた運用が必要です。
その対策として、不動産などの「実物資産」を保有する手法は有効とされています。物価の上昇すると家賃も増額しやすく、家賃が上がると不動産の資産価値が上がるためです。
なかでもアパートやマンションといった不動産は、安定した家賃収入(インカムゲイン)が期待できる点が大きな魅力ですが、タイミングを見計らって売却益(キャピタルゲイン)も得ることができます。
しかし、不動産はやはり高額です。魅力があっても新NISAやiDeCoのように自己資本だけで始めるのは難しいため、他人資本(ローン)を活用します。これにより、手元資金以上の金額を動かし、より大きな利益を狙う「レバレッジ効果」が期待できるのです。
不動産運用事例:都心ワンルームマンション投資
人気の都心でのワンルームマンション投資を例に考えてみましょう。東京都23区のマンション価格は、2025年時点で上昇傾向が続いており、今後も堅調な推移が予想されています。
都心ワンルーム投資の例として、以下の条件で試算します。
- 購入物件新築ワンルームマンション
- 購入金額3,500万円
- 自己資金500万円
- 不動産ローン 借入額:3,000万円/金利2.0%/35年ローン(元利均等返済)
- 家賃収入10万5,000円/月(都心相場)
- 年間支出 管理費・修繕積立金・固定資産税など:約40万円
- ローン返済9万9,379円/月
このケースでは、毎年の持ち出し費用として約33万円が必要です。この物件を6年後に4,200万円で売却できた場合の収支を計算してみましょう。
売却益のシミュレーション(概算)
6年後に売却した場合のシミュレーション
- ローン残債(6年後)約2,600万円
- 売却価格4,200万円
- 売却益(税引前)約1,600万円
- 譲渡所得税 約325万円(長期譲渡・税率20.315%)
- 売却諸費用約135万円
- 当初自己資金500万円
- 6年間の持ち出し 約200万円(約33万円 × 6年)
- 手取り利益 約440万円
6年後に約440万円の利益を出す結果となりました。なお、短期譲渡(5年以内)の場合の譲渡所得税は税率が高い(39.63%)ため、利益の約4割が税金で消えてしまいます。不動産価格だけではなく、税金なども考慮して、売却のタイミングを計りましょう。
もちろん、毎年の持ち出し費用によっては長期で持ち、家賃収入を得続けるという選択肢もあります。
不動産投資を始める際は、次の3点を押さえるようにしましょう。
- 物件選び:都心・駅近・築浅・賃貸需要
- ローン設計:金利・返済期間・頭金の有無
- 管理体制:管理会社・修繕積立金・空室リスク
高年収会社員が「レバレッジ」を活用すべき理由
高年収の会社員は、その安定性から与信力(信用力)が高く、融資を受けやすい立場にあります。自己資金にローンを組み合わせることで、資産形成を加速できる可能性を秘めているのです。一般的に、不動産投資におけるレバレッジ率は自己資金の5倍から10倍以内が目安とされています。
自己資金1,000万円なら、融資を含めて5,000万円から1億円程度の物件に投資できるイメージです。このようにレバレッジをかけることで、自己資金のみでの投資よりも大きなリターンを狙うことができます。まさに「信用力を資産に変える」戦略的な投資運用といえるでしょう。
FPが組む「NISA/iDeCo + 不動産投資」の黄金比
積立投資(NISA・iDeCo)や実物資産(不動産など)への投資割合は、リスク許容度やライフステージに応じて調整する必要があります。
| 年代 | 積立投資 (NISA・iDeCo) |
不動産投資 | コメント | リスク許容度 |
| 30代 | 60% | 40% | 積立で土台を作りつつ、レバレッジ投資で加速 | 高め(時間的余裕あり) |
| 40代 | 50% | 50% | 両輪で資産形成を本格化 | 中程度 |
| 50代 | 70% | 30% | 安定運用へシフトしつつ、出口戦略を意識 | 低め(保全重視) |
[図表2]年代別「NISA/iDeCo + 不動産投資」の黄金比
出所:筆者作成
また、ワンルームマンション投資などで得た利益は、次の投資の原資として活用するのが理想です。年齢やライフステージに応じて、リスクを抑えた資産へ切り替えていくことで、資産形成から資産保全へとスムーズに移行できます。
まとめ
新NISAやiDeCoは自己資金を活かす「守り」の投資といえます。これに、ローンを活用できる不動産投資を組み合わせることで、「攻め」と「守り」のバランスが取れた資産形成が可能になるのです。成功のポイントは、事前のシミュレーションや市場価値の動きをしっかり観察すること。無理のない範囲で、成功を収めましょう。
この記事を書いた人
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所 代表 ファイナンシャルプランナー (1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
国立大学行政事務(国家公務員)後にシステムエンジニアとして、物流・会計・都市銀行などのシステム開発を担当。その後FPとして独立し、ライフプランやマネープランのセミナーのほか、日商簿記1級、CFP、情報処理技術者試験の合格経験を活かして、企業や大学での資格講座・短期大学や専門学校での非常勤講師としても勤める。 https://yukarik-fp.jimdofree.com/