2023.10.13

市況

ベルテックスコラム事務局

日本の投資人口はどれくらい?日本人の投資状況と世界との比較

  • 日本の現状
  • NISA
  • iDeCo

世界から見て「日本人は貯金が好き」「日本人は投資をしなさすぎる」と言われているのを耳にしたことがある人は、少なくないでしょう。 この言葉の裏側には、日本人が保有する金融資産の割合の内、現金や預金を多く占めているという現状があります。しかし、最近では少子高齢化、老後2,000万円問題などの社会問題から資産形成の必要性が再認識され、日本政府は投資への本格的な国策に取り組みを見せています。

本記事では、日本人の投資状況や世界の投資状況との比較、人気の投資先に対する見解について解説していきます。

日本人で投資している人の割合

日本人の国民性には「礼儀正しい」「温厚である」「親切」などといった長所が挙げられますが、「人に合わせる」や「シャイである」など消極的な短所もよく聞かれます。 このような短所から「投資は怖いもの」という潜在意識が膨らみ、投資に消極的であったと言われていますが、果たしてこれは事実なのでしょうか。

日本の投資人口

投資とは特定の商品やプロジェクト等に対し、将来的な利益や収益を見込み、資金を投じることです。 代表的なものには国債や外貨預金、投資信託といった主に銀行で取り扱う商品と、株式やFX(外国為替証拠金取引)、暗号資産など証券会社等が扱う商品、不動産投資など不動産会社が販売する商品などがあります。

日本国内における投資家の人口は、野村アセットマネジメント株式会社が2005年から継続的に行い、公表しているデータ「投資信託に関するアンケート調査」を用いて解説していきましょう。

2020年の本調査結果では、投資信託あるいは株式を保有する投資家人口を「日本の人口統計」に当てはめて推計したところ、20歳以上の人口(約1億人)に対して約2,700万人、26%いう結果でした。

そのうち、投資信託の保有者は1,294万人と推計されています。 積立投資の取り組み状況における調査では、全体の約1割程度の利用に留まり、人口統計に当てはめると1,200万人程度の推計結果となりました。

また、日本最大のモバイル専門調査機関であるMMD研究所による「日米中3ヶ国都市部スマートフォンユーザー比較調査」によれば、いかなる投資も行っていない日本人の割合は、59.2%にものぼっています驚くことに、約6割の日本人が投資を何も行っていないのです。 これらの数値は、後述する世界の投資状況と比較し、日本人の投資人口の割合が圧倒的に低いことを裏付ける内容となっています。

世界からも指摘されている通り、日本は「投資をしなさすぎる投資後進国」と言わざるを得ません。

若者の投資人口が増加傾向

世界と比較して日本人の投資人口はまだまだ低い割合に留まっていますが、株式会社野村研究所が3年おきに実施している「生活者1万人アンケート」では、日本人の証券保有率はここ数年で大きな変化を見せていることが分かりました。 中でも、若者の投資人口が急増傾向にあり、早期からの資産形成に取り組む姿勢が調査結果から伺えます。

2021年の本アンケートによる「投資を行っている人の割合(年齢階層別)」の項目では、25~29歳で投資を行っている人の割合は、2018年からの3年間で11.3%増の17.9%となりました。30~39歳においても5.6%増の19.1%へ著しく上昇しています。

また、同調査による「株式・投信を保有している割合(25~69歳)」では、若者には投資信託が人気であることも明らかになり、少額投資商品の存在を知った若者が増えたのが背景にあるようです。

では、なぜこれほどまでに短期間で若者の投資人口が急増したのでしょうか。 現代を生きる日本の若年層にとって少子高齢化による老齢年金の受給額減少が大きな課題ですが、特に2018年から2021年にかけて投資人口が上昇した要因には、新型コロナウイルスによる影響も大きいようです。

新型コロナウイルスが日本での広がりを見せ始めた2020年は、国全体を通して不急不要の外出を控えるようになりました。 これによりオンライン化が急速に進展し、政府や金融機関だけでなく著名人、インフルエンサーによる動画サイトやSNSによる情報提供がより濃厚になり、若者たち自身も情報収集の場として重視するようになっています。

日本の投資人口が増えている理由

日本の投資人口が増えた理由にも、やはり新型コロナウイルスが関係しているようです。 新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出た2020年は、ネット証券各社の新規口座開設数が著しく上昇しました。 PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供を行う株式会社マネーフォワードによる「コロナ禍の個人の家計実態調査2021」によれば、全体の約8割が「新型コロナの影響で、生活防衛の意識が高まった」と回答しています。 さらにこのうち約2割が生活防衛のために投資をスタートし、約3割が投資資金を増やす等の行動も起こしているのです。

近年は新型コロナウイルスに加え、ロシアがウクライナへ侵攻したことなど、様々な世界情勢が絡み合い全世界を通じてインフレを引き起こしています。 インフレにより日本国内では物価上昇が未だ終息する気配がなく、生活に不可欠である光熱費さえも値上がりが続いている状況です。 このような状況からも、日本の投資人口は今後もさらに増え続けていくと予測されるでしょう。

世界の投資人口との比較

実際に世界と日本における投資人口の割合には、どれほどの差があるのでしょうか。 この章では、具体的な数値をみていきましょう。

欧米の投資人口はどれくらい?

現在や過去において、欧米の投資人口が明確に何万人ほどいるのか、実は信頼性を証明できるデータは確認できていません。 しかし、各国における「個人が保有する金融資産」の内訳構成に投資に対する違いや特徴が表れています。

日銀が発表している下記の「資金循環の日米欧比較」データを見てみましょう。

このデータは2022年3月の調査結果によるもので、冒頭で触れた通り「日本人は貯金が好き」と言われるのが理解できます。 しかし、実際には日本人は貯金が「好き」なのではなく、各国で「お金に対する考え方の違い」があったため、このような結果になったのではないかと考えられます。

なぜ日本の投資人口は少ない

日本人が現金や預金を多く保有し、投資人口の割合が少ない原因でもある「お金に対する考え方の違い」について、いくつかの理由を挙げてみました。

1. お金に対する消極性

日本の投資人口が少ないのには、消極的な日本人の性格以外にも「お金に対する消極性」といった国民性が伺えます。

古くから日本では、公共の場で「お金」に関する話をすることに悪い印象を持ち、生きていく上で最低限身に付けておきたい「金融リテラシー」の教育を受ける機会がありませんでした。 2022年度から高校で「資産形成教育」を家庭科授業の一環で取り入れられるようになりましたが、現役世代や高齢者はこれらを学ぶことができず、お金に対して「貯金しておけば安心」という意識が根強く植え付いてしまっているようです。

2. リスクを取りたくない国民性

上記で述べた理由に加え、日本人は安全志向であり保守的な国民性を持っていることも後押ししています。

実際に世界主要国価値観調査では、「人生で大切だと思うこと」の回答項目にある「冒険し、リスクを冒すこと、刺激のある生活」にあてはまると答えた日本人は25.8%でした。 アメリカの52.8%、イギリスの56.3%と比較すると、いかに日本人が保守的であるかが表れています。

投資とリスクは切り離すことができず、日本人が投資に積極的になれないのは元本割れリスクを冒したくない気持ちがあるからでしょう。

3. 投資による非課税制度がなかった

本来、投資をすると利益に対して約20%の税金が課税されますが、投資によって得た利益の非課税制度が2013年12月まで日本では未導入であったことも大きな要因として挙げられるでしょう。

2014年1月より一般NISAの少額投資非課税制度が導入されて普及していきましたが、そもそも投資や資産運用に対する教育を受けていなかった世代としては、制度導入されたからと言って需要の急増とはならなかったようです。

4. 公的年金が充実している

最後に挙げる大きな理由は、定年後にもらえる「公的年金(老齢年金)制度」が充実していることです。実はそもそも公的年金制度が無い国も多いのです。

リサーチを進めていくと、イギリスの例は特に興味深く、今後の日本も同様の道を進むことになるかもしれません。かつてのイギリスでは日本と同様に公的年金が充実していましたが、国民の高齢化により公的年金の減額等、制度そのものが縮小していったという過程があります。 これを見越し、積極的に私的年金を充実させてきたことで、「老後の備えは自分で行うもの」という意識改革が国全体で浸透していったようです。

日本においても公的年金制度が充実していることが、日本人の投資意欲の後退を引き起こしていたと言えるでしょう。

日本で増えている投資先は?

日本では新型コロナウイルスにより一気に広がりを見せた投資ブームですが、日本人が行う投資先として一体どこがベストなのか、その実態について解説します。

日本人に人気の投資先

日本人が投資を行うきっかけは、「裕福な生活」や「刺激的な日常」ではなく「生活防衛」「老後の資産形成」など保守的なものからきています。

そのため、非課税制度を利用して安定的な資産形成を行うことができる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が投資先として人気があるようです。 iDeCoとつみたてNISAは、政府も積極的に非課税制度に取り組んでおり、どちらも少額で始められることから、それぞれの異なるデメリットをカバーするために併用しながら活用している人もいます。

iDeCoの加入者が増えている理由

資産運用の投資先としてiDeCoが注目されているのは、節税効果が期待できるからです。

【iDecoによる3つの税制メリット】

  • 掛け金の全額所得控除が受けられて、所得税・住民税の軽減に繋がる
  • 利息・運用益が税制優遇される
  • 一時金の受け取りは退職所得控除が受けられ、一定額まで非課税となる

積立時、運用時、受取時いずれのシーンにおいても税制上の優遇を受けられる投資商品は、現状ではiDeCoのみで、人気の秘訣と言えるでしょう。

つみたてNISA口座数が増えている理由

2018年に金融庁が創設した「つみたてNISA」の専用口座は、2020年12月末には約300万口座を突破しました。口座開設数は創設1年目の2018年末から約3倍、投信の買い付け額の合計は約7.4倍にも拡大しています。

NISAの口座数が増えているのは、下記の理由が挙げられます。

  • 税制優遇が受けられる
  • ネット証券がメジャーになり、開設の申し込みがしやすい
  • いつでも引き出せるので、若年層でも始めやすい
  • ドルコスト平均法によるリスク低減
  • 最長20年間の長期投資が図れる
  • 毎月自動振替されるので、手間がかからない

iDeCoは掛け金の下限額が最低5,000円以上、原則60歳まで引き出しができないなどの縛りがあるため、将来に結婚や出産を控える若者でも手が出しやすいのが、NISA口座数が増えている大きな理由と言えます。

iDeCo、NISAに次ぐ第3の投資先

最後にiDeCoとつみたてNISAの次におすすめする第3の投資先について、解説していきましょう。

その他の資産運用には、貯蓄型生命保険や国債、ETFやREITなど様々なものが挙げられますが、下記では節税効果を得ることができ、効率よく資産形成を行える「不動産投資」と「一般NISA」についてご紹介します。

不動産投資

不動産投資は、購入した不動産を第三者へ貸し出すことによって、入居者からの家賃収入による不労所得を得られる投資法です。 金融機関のローンを利用し、複数物件を所有していけば本来の自己資金だけでは得られない多額の資金を手にすることができるので、より豊かな老後を築きたい方にはおすすめの資産運用と言えるでしょう。

ローン利用に際してのハードルは少々高めですが、実際の商品が存在する現物取引なのでインフレに強く、つみたてNISAと同じように購入後の手間がさほどかからない点が魅力的です。

一般NISA

次にお勧めするのは、一般NISAです。 つみたてNISAが年間最大40万円の非課税枠であるのに対し、一般NISAでは年間最大120万円まで非課税枠が拡大します。また、非課税期間がつみたてNISAの最長20年に対して、一般NISAは最長5年であることも違いの1つです。

投資に回せる貯蓄や収入が多い方や、株式などの知識があり短期間で積極的に商品選択して運用したい、といった方に向いているでしょう。 投資でリターンを狙うためにはそれなりのリスクが伴いますので、家庭を持つ人は家族と相談してスタートするようにして下さい。

また、生活余剰資金として半年程度の現金を残し、投資先への正しい知識と理解を得た上で始めることで、万が一の事態が起こっても慌てずに対処することができるでしょう。

NISAは2024年に新制度に切り替わります。こちらの記事でも詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

まとめ

今回は日本の投資人口や世界との比較、さらにおすすめの投資先について解説しました。まだ投資に取り組んでいない方でも将来の準備のために早いうちから準備をしておくことをおすすめします。

もちろん投資にはリスクが伴うので、初めて投資に取り組む方には不安に思うことも多いと思います。しかし、リスクに対して正しい知識を身に付け、リスク対策も理解しておけば、比較的低リスクでの運用も可能になるでしょう。

ベルテックスでは投資初心者の方にも好評の不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.13

市況

ベルテックスコラム事務局

日本の投資人口はどれくらい?日本人の投資状況と世界との比較

  • 日本の現状
  • NISA
  • iDeCo

世界から見て「日本人は貯金が好き」「日本人は投資をしなさすぎる」と言われているのを耳にしたことがある人は、少なくないでしょう。 この言葉の裏側には、日本人が保有する金融資産の割合の内、現金や預金を多く占めているという現状があります。しかし、最近では少子高齢化、老後2,000万円問題などの社会問題から資産形成の必要性が再認識され、日本政府は投資への本格的な国策に取り組みを見せています。

本記事では、日本人の投資状況や世界の投資状況との比較、人気の投資先に対する見解について解説していきます。

日本人で投資している人の割合

日本人の国民性には「礼儀正しい」「温厚である」「親切」などといった長所が挙げられますが、「人に合わせる」や「シャイである」など消極的な短所もよく聞かれます。 このような短所から「投資は怖いもの」という潜在意識が膨らみ、投資に消極的であったと言われていますが、果たしてこれは事実なのでしょうか。

日本の投資人口

投資とは特定の商品やプロジェクト等に対し、将来的な利益や収益を見込み、資金を投じることです。 代表的なものには国債や外貨預金、投資信託といった主に銀行で取り扱う商品と、株式やFX(外国為替証拠金取引)、暗号資産など証券会社等が扱う商品、不動産投資など不動産会社が販売する商品などがあります。

日本国内における投資家の人口は、野村アセットマネジメント株式会社が2005年から継続的に行い、公表しているデータ「投資信託に関するアンケート調査」を用いて解説していきましょう。

2020年の本調査結果では、投資信託あるいは株式を保有する投資家人口を「日本の人口統計」に当てはめて推計したところ、20歳以上の人口(約1億人)に対して約2,700万人、26%いう結果でした。

そのうち、投資信託の保有者は1,294万人と推計されています。 積立投資の取り組み状況における調査では、全体の約1割程度の利用に留まり、人口統計に当てはめると1,200万人程度の推計結果となりました。

また、日本最大のモバイル専門調査機関であるMMD研究所による「日米中3ヶ国都市部スマートフォンユーザー比較調査」によれば、いかなる投資も行っていない日本人の割合は、59.2%にものぼっています驚くことに、約6割の日本人が投資を何も行っていないのです。 これらの数値は、後述する世界の投資状況と比較し、日本人の投資人口の割合が圧倒的に低いことを裏付ける内容となっています。

世界からも指摘されている通り、日本は「投資をしなさすぎる投資後進国」と言わざるを得ません。

若者の投資人口が増加傾向

世界と比較して日本人の投資人口はまだまだ低い割合に留まっていますが、株式会社野村研究所が3年おきに実施している「生活者1万人アンケート」では、日本人の証券保有率はここ数年で大きな変化を見せていることが分かりました。 中でも、若者の投資人口が急増傾向にあり、早期からの資産形成に取り組む姿勢が調査結果から伺えます。

2021年の本アンケートによる「投資を行っている人の割合(年齢階層別)」の項目では、25~29歳で投資を行っている人の割合は、2018年からの3年間で11.3%増の17.9%となりました。30~39歳においても5.6%増の19.1%へ著しく上昇しています。

また、同調査による「株式・投信を保有している割合(25~69歳)」では、若者には投資信託が人気であることも明らかになり、少額投資商品の存在を知った若者が増えたのが背景にあるようです。

では、なぜこれほどまでに短期間で若者の投資人口が急増したのでしょうか。 現代を生きる日本の若年層にとって少子高齢化による老齢年金の受給額減少が大きな課題ですが、特に2018年から2021年にかけて投資人口が上昇した要因には、新型コロナウイルスによる影響も大きいようです。

新型コロナウイルスが日本での広がりを見せ始めた2020年は、国全体を通して不急不要の外出を控えるようになりました。 これによりオンライン化が急速に進展し、政府や金融機関だけでなく著名人、インフルエンサーによる動画サイトやSNSによる情報提供がより濃厚になり、若者たち自身も情報収集の場として重視するようになっています。

日本の投資人口が増えている理由

日本の投資人口が増えた理由にも、やはり新型コロナウイルスが関係しているようです。 新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出た2020年は、ネット証券各社の新規口座開設数が著しく上昇しました。 PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供を行う株式会社マネーフォワードによる「コロナ禍の個人の家計実態調査2021」によれば、全体の約8割が「新型コロナの影響で、生活防衛の意識が高まった」と回答しています。 さらにこのうち約2割が生活防衛のために投資をスタートし、約3割が投資資金を増やす等の行動も起こしているのです。

近年は新型コロナウイルスに加え、ロシアがウクライナへ侵攻したことなど、様々な世界情勢が絡み合い全世界を通じてインフレを引き起こしています。 インフレにより日本国内では物価上昇が未だ終息する気配がなく、生活に不可欠である光熱費さえも値上がりが続いている状況です。 このような状況からも、日本の投資人口は今後もさらに増え続けていくと予測されるでしょう。

世界の投資人口との比較

実際に世界と日本における投資人口の割合には、どれほどの差があるのでしょうか。 この章では、具体的な数値をみていきましょう。

欧米の投資人口はどれくらい?

現在や過去において、欧米の投資人口が明確に何万人ほどいるのか、実は信頼性を証明できるデータは確認できていません。 しかし、各国における「個人が保有する金融資産」の内訳構成に投資に対する違いや特徴が表れています。

日銀が発表している下記の「資金循環の日米欧比較」データを見てみましょう。

このデータは2022年3月の調査結果によるもので、冒頭で触れた通り「日本人は貯金が好き」と言われるのが理解できます。 しかし、実際には日本人は貯金が「好き」なのではなく、各国で「お金に対する考え方の違い」があったため、このような結果になったのではないかと考えられます。

なぜ日本の投資人口は少ない

日本人が現金や預金を多く保有し、投資人口の割合が少ない原因でもある「お金に対する考え方の違い」について、いくつかの理由を挙げてみました。

1. お金に対する消極性

日本の投資人口が少ないのには、消極的な日本人の性格以外にも「お金に対する消極性」といった国民性が伺えます。

古くから日本では、公共の場で「お金」に関する話をすることに悪い印象を持ち、生きていく上で最低限身に付けておきたい「金融リテラシー」の教育を受ける機会がありませんでした。 2022年度から高校で「資産形成教育」を家庭科授業の一環で取り入れられるようになりましたが、現役世代や高齢者はこれらを学ぶことができず、お金に対して「貯金しておけば安心」という意識が根強く植え付いてしまっているようです。

2. リスクを取りたくない国民性

上記で述べた理由に加え、日本人は安全志向であり保守的な国民性を持っていることも後押ししています。

実際に世界主要国価値観調査では、「人生で大切だと思うこと」の回答項目にある「冒険し、リスクを冒すこと、刺激のある生活」にあてはまると答えた日本人は25.8%でした。 アメリカの52.8%、イギリスの56.3%と比較すると、いかに日本人が保守的であるかが表れています。

投資とリスクは切り離すことができず、日本人が投資に積極的になれないのは元本割れリスクを冒したくない気持ちがあるからでしょう。

3. 投資による非課税制度がなかった

本来、投資をすると利益に対して約20%の税金が課税されますが、投資によって得た利益の非課税制度が2013年12月まで日本では未導入であったことも大きな要因として挙げられるでしょう。

2014年1月より一般NISAの少額投資非課税制度が導入されて普及していきましたが、そもそも投資や資産運用に対する教育を受けていなかった世代としては、制度導入されたからと言って需要の急増とはならなかったようです。

4. 公的年金が充実している

最後に挙げる大きな理由は、定年後にもらえる「公的年金(老齢年金)制度」が充実していることです。実はそもそも公的年金制度が無い国も多いのです。

リサーチを進めていくと、イギリスの例は特に興味深く、今後の日本も同様の道を進むことになるかもしれません。かつてのイギリスでは日本と同様に公的年金が充実していましたが、国民の高齢化により公的年金の減額等、制度そのものが縮小していったという過程があります。 これを見越し、積極的に私的年金を充実させてきたことで、「老後の備えは自分で行うもの」という意識改革が国全体で浸透していったようです。

日本においても公的年金制度が充実していることが、日本人の投資意欲の後退を引き起こしていたと言えるでしょう。

日本で増えている投資先は?

日本では新型コロナウイルスにより一気に広がりを見せた投資ブームですが、日本人が行う投資先として一体どこがベストなのか、その実態について解説します。

日本人に人気の投資先

日本人が投資を行うきっかけは、「裕福な生活」や「刺激的な日常」ではなく「生活防衛」「老後の資産形成」など保守的なものからきています。

そのため、非課税制度を利用して安定的な資産形成を行うことができる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が投資先として人気があるようです。 iDeCoとつみたてNISAは、政府も積極的に非課税制度に取り組んでおり、どちらも少額で始められることから、それぞれの異なるデメリットをカバーするために併用しながら活用している人もいます。

iDeCoの加入者が増えている理由

資産運用の投資先としてiDeCoが注目されているのは、節税効果が期待できるからです。

【iDecoによる3つの税制メリット】

  • 掛け金の全額所得控除が受けられて、所得税・住民税の軽減に繋がる
  • 利息・運用益が税制優遇される
  • 一時金の受け取りは退職所得控除が受けられ、一定額まで非課税となる

積立時、運用時、受取時いずれのシーンにおいても税制上の優遇を受けられる投資商品は、現状ではiDeCoのみで、人気の秘訣と言えるでしょう。

つみたてNISA口座数が増えている理由

2018年に金融庁が創設した「つみたてNISA」の専用口座は、2020年12月末には約300万口座を突破しました。口座開設数は創設1年目の2018年末から約3倍、投信の買い付け額の合計は約7.4倍にも拡大しています。

NISAの口座数が増えているのは、下記の理由が挙げられます。

  • 税制優遇が受けられる
  • ネット証券がメジャーになり、開設の申し込みがしやすい
  • いつでも引き出せるので、若年層でも始めやすい
  • ドルコスト平均法によるリスク低減
  • 最長20年間の長期投資が図れる
  • 毎月自動振替されるので、手間がかからない

iDeCoは掛け金の下限額が最低5,000円以上、原則60歳まで引き出しができないなどの縛りがあるため、将来に結婚や出産を控える若者でも手が出しやすいのが、NISA口座数が増えている大きな理由と言えます。

iDeCo、NISAに次ぐ第3の投資先

最後にiDeCoとつみたてNISAの次におすすめする第3の投資先について、解説していきましょう。

その他の資産運用には、貯蓄型生命保険や国債、ETFやREITなど様々なものが挙げられますが、下記では節税効果を得ることができ、効率よく資産形成を行える「不動産投資」と「一般NISA」についてご紹介します。

不動産投資

不動産投資は、購入した不動産を第三者へ貸し出すことによって、入居者からの家賃収入による不労所得を得られる投資法です。 金融機関のローンを利用し、複数物件を所有していけば本来の自己資金だけでは得られない多額の資金を手にすることができるので、より豊かな老後を築きたい方にはおすすめの資産運用と言えるでしょう。

ローン利用に際してのハードルは少々高めですが、実際の商品が存在する現物取引なのでインフレに強く、つみたてNISAと同じように購入後の手間がさほどかからない点が魅力的です。

一般NISA

次にお勧めするのは、一般NISAです。 つみたてNISAが年間最大40万円の非課税枠であるのに対し、一般NISAでは年間最大120万円まで非課税枠が拡大します。また、非課税期間がつみたてNISAの最長20年に対して、一般NISAは最長5年であることも違いの1つです。

投資に回せる貯蓄や収入が多い方や、株式などの知識があり短期間で積極的に商品選択して運用したい、といった方に向いているでしょう。 投資でリターンを狙うためにはそれなりのリスクが伴いますので、家庭を持つ人は家族と相談してスタートするようにして下さい。

また、生活余剰資金として半年程度の現金を残し、投資先への正しい知識と理解を得た上で始めることで、万が一の事態が起こっても慌てずに対処することができるでしょう。

NISAは2024年に新制度に切り替わります。こちらの記事でも詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

まとめ

今回は日本の投資人口や世界との比較、さらにおすすめの投資先について解説しました。まだ投資に取り組んでいない方でも将来の準備のために早いうちから準備をしておくことをおすすめします。

もちろん投資にはリスクが伴うので、初めて投資に取り組む方には不安に思うことも多いと思います。しかし、リスクに対して正しい知識を身に付け、リスク対策も理解しておけば、比較的低リスクでの運用も可能になるでしょう。

ベルテックスでは投資初心者の方にも好評の不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。