2023.10.13

資産運用

ベルテックスコラム事務局

日本の年金問題の現状とは?今から出来る対策を紹介

  • 老後資金
  • 資産形成

老後の大きな不安要素と言えば、生活資金となる年金が一体どれほどもらえるのか、という問題でしょう。誰しもが生活に困らない金額を受給したいと思う一方で、日本における社会状況を加味すると、そうは言っていられないのが現状です。

この記事では、年金制度の概要や現状、今後の見通しを解説し、年金問題に対する今からできる対策をご紹介します。

年金制度の概要

「年金がどれだけもらえるか心配」などと日常会話でよく聞く「年金」という言葉は、正確には公的年金の1つである「老齢年金」のことを指します。

 年金制度とは?

年金制度とは国がサポートする社会保障制度のことで、日本では1959年に「国民年金法」の制定があり、拠出制の国民年金制度がスタートしたのは1961年に遡ります。日本における年金制度は「国民皆年金」を採用していることが特徴であり、全国民がなんらかの公的年金制度を適用される仕組みになっているのです。

年金制度は、基礎年金である「国民年金」を土台とした下記の3種類に分類されます。

  加入者
国民年金 20歳以上60歳未満のすべての国民が共通して加入
厚生年金 会社員や公務員等が加入
私的年金 加入を希望する者に限る(任意)

厚生労働省は、これらをわかりやすく「3階建て」の構造で成り立っていると表現しています。

1階部分の国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入義務を負うもので、自動車保険の「自賠責保険(強制保険)」をイメージすると分かり易いでしょう。国民年金は、毎月決められた金額の保険料を納めます。

2階部分の厚生年金は、一部の例外を除いた会社員や公務員が加入するもので、70歳未満の人は強制加入が原則です。人それぞれの給与所得に比例して、納める金額が異なります。

3階部分の国が掲げる私的年金は、「確定給付企業年金(DB)」「厚生年金基金」「確定拠出企業年金(DC)」の3種類があり、原則として任意加入になります。

また、基礎となる国民年金は、職業やライフスタイルによって被保険者は3つの区分に分類されます。

第1号被保険者は主に自営業者・フリーランス・学生等、第2号被保険者は厚生年金に加入している会社員・公務員等、第3号被保険者は第2号被保険者の被扶養配偶者です。
先述の加入する年金の種類や、被保険者の区分によって将来受給できる年金の金額に差が生じます。

【参照元】厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」より

直近の制度改正

国内における社会問題との関連性が高い年金制度は、国民の社会保障を維持していくためにその時々の社会情勢に見合った制度改正を余儀なくされます。令和4年4月より老齢年金の繰り下げ受給の年齢が70歳から75歳に引き上げられる大きな改正があり、年金の受給開始時期を66歳以降から75歳までのタイミングで、受給者が自由に選択出来るようになりました。

しかし、ここで問題が発生します。
老齢年金の受給には5年の時効が設けられており、受給の請求をしないで5年を過ぎてしまうと、受給できる権利そのものが時効消滅してしまいます。
そのため、本来65歳から受給開始できる年金ですが、受給年齢を73歳まで繰下げたとすると、68歳よりも前にもらえていたはずの年金が受給できない事態に陥ってしまうのです。

これに伴い、直近で令和5年4月「特例的な繰下げみなし増額制度」が設けられました。

【制度の内容】
令和5年4月から70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるよう制度改正が行われ、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができます。


【引用元】日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」より

実は、繰下げ受給を選択すると、繰下げる月数に応じて1ヵ月あたり0.7%ずつ年金額が増額されます。そのため、生活資金に余裕がある方は、繰下げ受給をした方が後からもらえる年金が増額し、儲け話になるのです。
要約すると、「繰下げ受給を選択しても、損をせずプラスになりますよ」という内容の制度が付け加えられました。
国が設ける制度は改正が繰り返されますので、その都度正しく理解して、上手く利用していきましょう。

※注意事項として、80歳以降に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合は適用されません。また、過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響のある場合があります。

年金問題の現状

年金制度の概要について、正しく理解できたでしょうか。今後も年金制度の改悪だけは避けたいところですが、年金には様々な問題がつきまとっています。

令和5年現在、問題視されている項目について3点ご紹介しましょう。

少子高齢化による現役世代の負担額

日本では少子高齢化の影響により高齢者の増加に比例して、現役世代へ社会保障費の負担が重くのしかかっているのが現状です。少子高齢化とは、出生率が低く、人口に対する年少人口(0~14歳)の割合が減少する「少子化」と、65歳以上の高齢者人口の割合が7%以上となる「高齢化」を組み合わせた言葉で、2つが同時進行している状況を指します。結果として、現役世代の国民年金保険料はじわじわと上昇を続け、10年前と比較して令和5年現在は1,480円も上昇しています。

保険料を納付する月分 国民年金保険料(円) 平成25年度との差(円)
平成25年4月~平成26年3月 15,040
令和1年4~令和2年3月 16,410 +1,370
令和2年4~令和3年3月 16,540 +1,500
令和3年4~令和4年3月 16,610 +1,570
令和4年4~令和5年3月 16,590 +1,550
令和5年4~令和6年3月 16,520 1,480

【参照元】国民年金機構「国民年金保険料の変遷」よりベルテックス編集

年金額の減少の可能性

現役世代の懸念点は、国民年金保険料の増加だけではとどまりません。人口で高齢者の割合が多く占めていくことにより、1人当たりの年金額が減額されてしまいます。実際のところ、令和3年度の国民年金受給額は65,075円であったのに対し、令4和4年度は64,816円と0.4%の下落が見られました。(下落は2年連続)
現役世代が年金を受給する頃には、今よりも高齢者が人口を占める割合が高くなり、受給額はさらに減少してしまうかもしれません。

年金問題の今後の見通し

年金問題の現状を上記のように数値として「見える化」をすると、現役世代としては将来への不安感がより身近になるでしょう。今のところ、残念ながら年金問題を改善する方法は見つかっておらず、今後の見通しとしてもマイナスの局面ばかりです。

若い人の負担増

少子高齢化は今後も進行していき、現役世代1人あたりにおける負担はますます増加していくでしょう。
内閣府による「高齢者の現状と将来像」では、昭和25年には65歳以上の者1人に対して現役世代が12.1人いたのに対して、令和2年には65歳以上の者1人に対して現役世代2.1人になっていると伝えています。また、今後さらに現役世代の割合は低下し、令和47年には、65歳以上の者1人に対して現役世代1.3人という比率になる構図を予測しています。
現役世代の中でも、社会に出たばかりの若い人たちは定年までの長い間、負担を背負い続けなくてはなりません。

支給額の減額

直近で年金支給額減少の可能性について先述しましたが、その根拠は我が国の平均寿命にも見られます。日本の平均寿命は平成30年時点で男性81.25歳、女性87.32歳となっており、男女ともに前年よりも上回っている状況で、これは世界トップクラスの水準です。
さらに内閣府の予測によれば、令和47年には男性84.95年、女性91.35年まで伸びると見込まれています。そうなると、65歳以上の者1人を支えるために必要な現役世代の比率がより低くなり、支給額の減額で調整していくことはやむを得ません。

増税

このような状況になってくると免れないのが「増税」です。
財務省のホームページでは、消費税率の引上げついて「社会保障制度の財源は、保険料や税金だけでなく、多くの借金に頼っており、子や孫などの将来世代に負担を先送りしています。」と謳っています。財源を確保し、国として全世代に向けた充実した社会保障制度を設けるには、今後も増税は仕方が無いことなのでしょう。

自分で用意する必要性の増加

2019年に金融庁の金融審議会が公表した「老後二千万円問題」では、老後夫婦の年金を足しても生活費が足りず、死期を迎えるまでに夫婦2人で2,000万円の貯蓄をする必要があると提唱されました。老後二千万円問題は、仮定条件に伴い試算・シミュレーションした内容に基づくもので、生活水準は世帯それぞれで一概に正解とは言えないとの見方もあります。
ただし、心配なのは2019年時点で2,000万円不足しているということで、増税や近年の物価上昇を考慮すると今後はさらに多くの生活資金が必要になるかもしれません。
老後の生活に困らないようにするには、今まで以上に計画性をもった資金形成が必要となるでしょう。

年金問題に対して今から出来る対策

終着点の見えない年金問題は、現時点で解決策を国に頼ることは出来ず、自分でできる対策を取っていくしかありません。今からできる対策としては、主に「貯蓄」「年金額を増やす」「資産形成」の3つです。

貯蓄

まず、貯蓄があまりできていない人は、毎月の所得から一定額を貯蓄へ回すことから始めましょう。
インターネットやメディアなどで推奨されるファイナンシャルプランでは、毎月手取り月収の15~20%程度を貯蓄にまわすことが理想的であるとしています。
しかし、実際には20%も貯蓄へ回してしまうと、日常生活がままならないという世帯も出てくるかもしれません。そんな方は最低でも10%以上は貯蓄できるよう、日々の生活を見直してみましょう。

年金額を増やす

次は受給する年金額を増加させることを考えましょう。
具体的には下記の3つの方法があります。

年金の繰下げ受給 

直近の制度改正でも触れましたが、年金を66歳以降に受け取る「繰下げ受給」をすることで、年金額を増やすことが可能です。

【増額率の計算式】
増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
(例)70歳まで繰下げ受給をすると、0.7%×60ヵ月で42%の増額率になります。

尚、繰下げ受給の上限年齢は、原則75歳までです。

付加年金制度

国民年金保険料に付随する「付加年金制度」を利用し、年金額を増加させることもできます。
付加年金制度は、毎月の国民年金保険料にプラス400円上乗せして支払うことで、払い込んだ月数に応じた金額が受給する年金に加算される仕組みです。20~60歳の人なら最大40年間加入できます。

【付加年金の計算式】
・支払う保険料
400円×納付月数(12ヵ月×納付年数)
・受給する年金額/年
200円×納付月数(12ヵ月×納付年数)

この例に当てはめると、30歳で付加年金保険に加入した人は60歳までの30年間で144,000円支払い、受給する年金は年額で72,000円増えることになります。

私的年金の利用

3つ目にご紹介するのは、私的年金の利用です。
私的年金は、年金制度の解説で触れた「確定給付企業年金(DB)」「厚生年金基金」「確定拠出企業年金(DC)」だけではありません。勤務先の会社が導入する「企業年金」や、医療保険などと同じく生命保険会社や金融機関の商品に個人で加入する「個人年金」などがあります。
これらは全て任意加入になるので、老後の生活に潤いを持たせたい方は検討してみて下さい。

資産形成

最後の対策としてご紹介する資産形成は、運用次第で着実に大きなリターンを望め、ここ数年特に注目を浴びています。おすすめの資産運用方法を3つご紹介しましょう。

iDeCo

国をもって運用や節税対策として取り組む「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、老後の資金形成を目的として作られている制度です。加入者が自由に金融商品や掛金を設定でき、積み立てた資金は60歳以降に受け取ることができます。掛金全額が所得控除になるため、節税効果の高さも嬉しいポイントです。
原則として60歳までは引き出せない点や、掛け金の金額変更が年に1回しかできない点、元本割れする可能性がある点など注意点も抑えておきましょう。

NISA

次におすすめするのが、税制優遇制度の「NISA」です。NISAは、成年者が利用できる「一般NISA」と「つみたてNISA」、未成年者が利用できる「ジュニアNISA」の3種類に分類されます。これらは制度や投資対象、年間の取引上限額などに違いが見られますが、中でも資産形成におすすめなのは「つみたてNISA」です。ドルコスト法を用いた長期分散型の投資スタイルをとることで、リスクヘッジを実現しているつみたてNISAは投資初心者でも始めやすく、若いうちに始めるほど運用益が大きくなります。
2024年から始まる新NISA制度にも着目し、上手く活用していきましょう。

不動産投資

レバレッジ効果の効いた高い収益性を狙っていくには、「不動産投資」がおすすめです。
金融機関の融資を利用することにより、本来自己資金だけでは形成できなかった資産を築くことができます。不動産投資はNISAと違い、あらかじめリスクシミュレーションを重ねることで、リスク回避が可能です。
とは言っても、投資物件を購入するのには少なからず自己資金が必要です。まずは規模の小さい区分マンション投資からスタートし、所有する不動産を増やしていく方法でリスク分散しながら賢く資産を築いていきましょう。

少額投資を行いたいのであれば、不動産投資クラウドファンディングやREITなどもありますが、現物不動産を所有する投資とは運用方法が全く異なりますので、知識をつけてスタートすることが大切です。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.13

資産運用

ベルテックスコラム事務局

日本の年金問題の現状とは?今から出来る対策を紹介

  • 老後資金
  • 資産形成

老後の大きな不安要素と言えば、生活資金となる年金が一体どれほどもらえるのか、という問題でしょう。誰しもが生活に困らない金額を受給したいと思う一方で、日本における社会状況を加味すると、そうは言っていられないのが現状です。

この記事では、年金制度の概要や現状、今後の見通しを解説し、年金問題に対する今からできる対策をご紹介します。

年金制度の概要

「年金がどれだけもらえるか心配」などと日常会話でよく聞く「年金」という言葉は、正確には公的年金の1つである「老齢年金」のことを指します。

 年金制度とは?

年金制度とは国がサポートする社会保障制度のことで、日本では1959年に「国民年金法」の制定があり、拠出制の国民年金制度がスタートしたのは1961年に遡ります。日本における年金制度は「国民皆年金」を採用していることが特徴であり、全国民がなんらかの公的年金制度を適用される仕組みになっているのです。

年金制度は、基礎年金である「国民年金」を土台とした下記の3種類に分類されます。

  加入者
国民年金 20歳以上60歳未満のすべての国民が共通して加入
厚生年金 会社員や公務員等が加入
私的年金 加入を希望する者に限る(任意)

厚生労働省は、これらをわかりやすく「3階建て」の構造で成り立っていると表現しています。

1階部分の国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入義務を負うもので、自動車保険の「自賠責保険(強制保険)」をイメージすると分かり易いでしょう。国民年金は、毎月決められた金額の保険料を納めます。

2階部分の厚生年金は、一部の例外を除いた会社員や公務員が加入するもので、70歳未満の人は強制加入が原則です。人それぞれの給与所得に比例して、納める金額が異なります。

3階部分の国が掲げる私的年金は、「確定給付企業年金(DB)」「厚生年金基金」「確定拠出企業年金(DC)」の3種類があり、原則として任意加入になります。

また、基礎となる国民年金は、職業やライフスタイルによって被保険者は3つの区分に分類されます。

第1号被保険者は主に自営業者・フリーランス・学生等、第2号被保険者は厚生年金に加入している会社員・公務員等、第3号被保険者は第2号被保険者の被扶養配偶者です。
先述の加入する年金の種類や、被保険者の区分によって将来受給できる年金の金額に差が生じます。

【参照元】厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」より

直近の制度改正

国内における社会問題との関連性が高い年金制度は、国民の社会保障を維持していくためにその時々の社会情勢に見合った制度改正を余儀なくされます。令和4年4月より老齢年金の繰り下げ受給の年齢が70歳から75歳に引き上げられる大きな改正があり、年金の受給開始時期を66歳以降から75歳までのタイミングで、受給者が自由に選択出来るようになりました。

しかし、ここで問題が発生します。
老齢年金の受給には5年の時効が設けられており、受給の請求をしないで5年を過ぎてしまうと、受給できる権利そのものが時効消滅してしまいます。
そのため、本来65歳から受給開始できる年金ですが、受給年齢を73歳まで繰下げたとすると、68歳よりも前にもらえていたはずの年金が受給できない事態に陥ってしまうのです。

これに伴い、直近で令和5年4月「特例的な繰下げみなし増額制度」が設けられました。

【制度の内容】
令和5年4月から70歳以降も安心して繰下げ待機を選択することができるよう制度改正が行われ、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができます。


【引用元】日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」より

実は、繰下げ受給を選択すると、繰下げる月数に応じて1ヵ月あたり0.7%ずつ年金額が増額されます。そのため、生活資金に余裕がある方は、繰下げ受給をした方が後からもらえる年金が増額し、儲け話になるのです。
要約すると、「繰下げ受給を選択しても、損をせずプラスになりますよ」という内容の制度が付け加えられました。
国が設ける制度は改正が繰り返されますので、その都度正しく理解して、上手く利用していきましょう。

※注意事項として、80歳以降に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合は適用されません。また、過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響のある場合があります。

年金問題の現状

年金制度の概要について、正しく理解できたでしょうか。今後も年金制度の改悪だけは避けたいところですが、年金には様々な問題がつきまとっています。

令和5年現在、問題視されている項目について3点ご紹介しましょう。

少子高齢化による現役世代の負担額

日本では少子高齢化の影響により高齢者の増加に比例して、現役世代へ社会保障費の負担が重くのしかかっているのが現状です。少子高齢化とは、出生率が低く、人口に対する年少人口(0~14歳)の割合が減少する「少子化」と、65歳以上の高齢者人口の割合が7%以上となる「高齢化」を組み合わせた言葉で、2つが同時進行している状況を指します。結果として、現役世代の国民年金保険料はじわじわと上昇を続け、10年前と比較して令和5年現在は1,480円も上昇しています。

保険料を納付する月分 国民年金保険料(円) 平成25年度との差(円)
平成25年4月~平成26年3月 15,040
令和1年4~令和2年3月 16,410 +1,370
令和2年4~令和3年3月 16,540 +1,500
令和3年4~令和4年3月 16,610 +1,570
令和4年4~令和5年3月 16,590 +1,550
令和5年4~令和6年3月 16,520 1,480

【参照元】国民年金機構「国民年金保険料の変遷」よりベルテックス編集

年金額の減少の可能性

現役世代の懸念点は、国民年金保険料の増加だけではとどまりません。人口で高齢者の割合が多く占めていくことにより、1人当たりの年金額が減額されてしまいます。実際のところ、令和3年度の国民年金受給額は65,075円であったのに対し、令4和4年度は64,816円と0.4%の下落が見られました。(下落は2年連続)
現役世代が年金を受給する頃には、今よりも高齢者が人口を占める割合が高くなり、受給額はさらに減少してしまうかもしれません。

年金問題の今後の見通し

年金問題の現状を上記のように数値として「見える化」をすると、現役世代としては将来への不安感がより身近になるでしょう。今のところ、残念ながら年金問題を改善する方法は見つかっておらず、今後の見通しとしてもマイナスの局面ばかりです。

若い人の負担増

少子高齢化は今後も進行していき、現役世代1人あたりにおける負担はますます増加していくでしょう。
内閣府による「高齢者の現状と将来像」では、昭和25年には65歳以上の者1人に対して現役世代が12.1人いたのに対して、令和2年には65歳以上の者1人に対して現役世代2.1人になっていると伝えています。また、今後さらに現役世代の割合は低下し、令和47年には、65歳以上の者1人に対して現役世代1.3人という比率になる構図を予測しています。
現役世代の中でも、社会に出たばかりの若い人たちは定年までの長い間、負担を背負い続けなくてはなりません。

支給額の減額

直近で年金支給額減少の可能性について先述しましたが、その根拠は我が国の平均寿命にも見られます。日本の平均寿命は平成30年時点で男性81.25歳、女性87.32歳となっており、男女ともに前年よりも上回っている状況で、これは世界トップクラスの水準です。
さらに内閣府の予測によれば、令和47年には男性84.95年、女性91.35年まで伸びると見込まれています。そうなると、65歳以上の者1人を支えるために必要な現役世代の比率がより低くなり、支給額の減額で調整していくことはやむを得ません。

増税

このような状況になってくると免れないのが「増税」です。
財務省のホームページでは、消費税率の引上げついて「社会保障制度の財源は、保険料や税金だけでなく、多くの借金に頼っており、子や孫などの将来世代に負担を先送りしています。」と謳っています。財源を確保し、国として全世代に向けた充実した社会保障制度を設けるには、今後も増税は仕方が無いことなのでしょう。

自分で用意する必要性の増加

2019年に金融庁の金融審議会が公表した「老後二千万円問題」では、老後夫婦の年金を足しても生活費が足りず、死期を迎えるまでに夫婦2人で2,000万円の貯蓄をする必要があると提唱されました。老後二千万円問題は、仮定条件に伴い試算・シミュレーションした内容に基づくもので、生活水準は世帯それぞれで一概に正解とは言えないとの見方もあります。
ただし、心配なのは2019年時点で2,000万円不足しているということで、増税や近年の物価上昇を考慮すると今後はさらに多くの生活資金が必要になるかもしれません。
老後の生活に困らないようにするには、今まで以上に計画性をもった資金形成が必要となるでしょう。

年金問題に対して今から出来る対策

終着点の見えない年金問題は、現時点で解決策を国に頼ることは出来ず、自分でできる対策を取っていくしかありません。今からできる対策としては、主に「貯蓄」「年金額を増やす」「資産形成」の3つです。

貯蓄

まず、貯蓄があまりできていない人は、毎月の所得から一定額を貯蓄へ回すことから始めましょう。
インターネットやメディアなどで推奨されるファイナンシャルプランでは、毎月手取り月収の15~20%程度を貯蓄にまわすことが理想的であるとしています。
しかし、実際には20%も貯蓄へ回してしまうと、日常生活がままならないという世帯も出てくるかもしれません。そんな方は最低でも10%以上は貯蓄できるよう、日々の生活を見直してみましょう。

年金額を増やす

次は受給する年金額を増加させることを考えましょう。
具体的には下記の3つの方法があります。

年金の繰下げ受給 

直近の制度改正でも触れましたが、年金を66歳以降に受け取る「繰下げ受給」をすることで、年金額を増やすことが可能です。

【増額率の計算式】
増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
(例)70歳まで繰下げ受給をすると、0.7%×60ヵ月で42%の増額率になります。

尚、繰下げ受給の上限年齢は、原則75歳までです。

付加年金制度

国民年金保険料に付随する「付加年金制度」を利用し、年金額を増加させることもできます。
付加年金制度は、毎月の国民年金保険料にプラス400円上乗せして支払うことで、払い込んだ月数に応じた金額が受給する年金に加算される仕組みです。20~60歳の人なら最大40年間加入できます。

【付加年金の計算式】
・支払う保険料
400円×納付月数(12ヵ月×納付年数)
・受給する年金額/年
200円×納付月数(12ヵ月×納付年数)

この例に当てはめると、30歳で付加年金保険に加入した人は60歳までの30年間で144,000円支払い、受給する年金は年額で72,000円増えることになります。

私的年金の利用

3つ目にご紹介するのは、私的年金の利用です。
私的年金は、年金制度の解説で触れた「確定給付企業年金(DB)」「厚生年金基金」「確定拠出企業年金(DC)」だけではありません。勤務先の会社が導入する「企業年金」や、医療保険などと同じく生命保険会社や金融機関の商品に個人で加入する「個人年金」などがあります。
これらは全て任意加入になるので、老後の生活に潤いを持たせたい方は検討してみて下さい。

資産形成

最後の対策としてご紹介する資産形成は、運用次第で着実に大きなリターンを望め、ここ数年特に注目を浴びています。おすすめの資産運用方法を3つご紹介しましょう。

iDeCo

国をもって運用や節税対策として取り組む「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、老後の資金形成を目的として作られている制度です。加入者が自由に金融商品や掛金を設定でき、積み立てた資金は60歳以降に受け取ることができます。掛金全額が所得控除になるため、節税効果の高さも嬉しいポイントです。
原則として60歳までは引き出せない点や、掛け金の金額変更が年に1回しかできない点、元本割れする可能性がある点など注意点も抑えておきましょう。

NISA

次におすすめするのが、税制優遇制度の「NISA」です。NISAは、成年者が利用できる「一般NISA」と「つみたてNISA」、未成年者が利用できる「ジュニアNISA」の3種類に分類されます。これらは制度や投資対象、年間の取引上限額などに違いが見られますが、中でも資産形成におすすめなのは「つみたてNISA」です。ドルコスト法を用いた長期分散型の投資スタイルをとることで、リスクヘッジを実現しているつみたてNISAは投資初心者でも始めやすく、若いうちに始めるほど運用益が大きくなります。
2024年から始まる新NISA制度にも着目し、上手く活用していきましょう。

不動産投資

レバレッジ効果の効いた高い収益性を狙っていくには、「不動産投資」がおすすめです。
金融機関の融資を利用することにより、本来自己資金だけでは形成できなかった資産を築くことができます。不動産投資はNISAと違い、あらかじめリスクシミュレーションを重ねることで、リスク回避が可能です。
とは言っても、投資物件を購入するのには少なからず自己資金が必要です。まずは規模の小さい区分マンション投資からスタートし、所有する不動産を増やしていく方法でリスク分散しながら賢く資産を築いていきましょう。

少額投資を行いたいのであれば、不動産投資クラウドファンディングやREITなどもありますが、現物不動産を所有する投資とは運用方法が全く異なりますので、知識をつけてスタートすることが大切です。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。