2024.02.29

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資で失敗する原因・理由とは?5つの事例から学ぶ対策と成功のポイント

  • リスク
  • 事例
  • はじめ方・基礎知識

不動産投資で失敗する理由は多岐にわたります。投資家によって不動産投資を行う目的が異なるため、目的ごとの失敗例や失敗の要因を知ることが大切です。

この記事では、不動産投資の失敗事例を紹介した上で失敗しないための対策についても解説します。

不動産投資の失敗とは?目的別に紹介

不動産投資が成功するか失敗するかは、目的によって異なります。 不動産投資の目的別に失敗の要因や典型的な失敗のパターンを紹介します。

キャッシュフロー目的

毎月のキャッシュフロー(CF)を黒字化して収入を得るインカムゲイン狙いの投資法があります。家賃収入で生活できるのが理想的ですが、一般的には不動産投資ローンを組んで購入するので、毎月の家賃収入からローンを返済しなければなりません。そのため、キャッシュフローが黒字になっても手もとに残るお金はわずかな額になることもあります。

キャッシュフローを黒字化して家賃収入で生活できるのは、自己資金が多い投資家に限られます。不動産投資のローン返済を除く経費率は、15~20%程度が一般的です。例えば、家賃30万円の物件なら経費率20%の場合で諸経費6万円を引いた24万円が手取りとなります。

全額自己資金で購入していれば家賃収入のみで生活することも可能ですが、ローンを組んで購入すると毎月のローン返済額が大きいため、キャッシュフローのみを目的にすると期待外れとなる可能性があります。

老後を迎えた時点でローンを完済して家賃収入を得る

老後の年金に加えて家賃収入を得ることを目的として不動産投資を始める人は多いでしょう。老後を見据えた不動産投資は、長期的視点に立つことが求められるため、比較的失敗するリスクは低い傾向にあります。

ローン完済後も目標とする家賃収入を得られるかは、完済時に物件価値がどの程度かによります。新築で購入して35年ローンを組んでいれば完済後の物件は築35年です。この場合は、多少の修繕で入居者を確保できるかもしれません。

しかし、築25年の中古物件を購入した場合、35年ローン完済後は築60年の築古物件になっています。この場合、かなり本格的にリフォームしないと入居者が付かない可能性が高いでしょう。

保険代わり

「不動産投資は保険代わりになる」という言葉を耳にしたことはありませんか。不動産投資ローンを契約する際には、金融機関から団信(団体信用生命保険)への加入を求められるのが一般的です。団信に加入していると万一契約者が死亡した場合または高度障害者になった場合に保険が下りて、ローン残債の支払いが免除されます。

しかし、団信への加入は不動産投資そのものとは直接関係ありません。保険代わりにすることを目的に物件の選択を適当に決めてしまうと運用がうまくいかず失敗する可能性があります。不動産投資が保険代わりになるのは単なるメリットであり、目的にすべきものではないと心得ておきましょう。

節税目的

節税目的で不動産投資を行う人が利用する方法で多いのが、確定申告における「損益通算」です。損益通算は、不動産所得が赤字になった場合、他の所得となる給与所得や事業所得などの黒字所得と合算できる制度です。損益通算により総所得を減らすことができるため、所得税や住民税の節税になります。ただし、この方法で節税効果が得られるのは不動産所得が赤字になった場合のみです。

もちろん赤字になった場合のセーフティーネットになる点はメリットといえます。しかし、不動産投資は事業なので、赤字になることを目的に投資するのは本末転倒です。不動産投資は、事業として黒字化する目的で行いましょう。

相続税対策目的

相続税対策のために不動産投資を行う人も多いです。現金で相続すると相続税評価額は100%ですが、不動産は固定資産税評価額や相続税路線価などで評価されるからです。一般的には、60~70%程度の評価額になるため、例えば相続時5,000万円の不動産の場合、現金相続に比べて1,500~2,000万円程度評価が下がります。

ただし、「不動産に変えれば何でもよい」というわけではありません。割高な物件を購入すると売却時に買い手が付かず、値下げして売却した結果、節税効果が半減する場合もあります。相続税対策の場合でも物件はしっかりと吟味して選ぶことを心がけましょう。

まずは不動産投資の目的を明確にする

不動産投資を行うことを考えたら、まずは投資する目的を明確にしましょう。単に「儲けたい」という理由だけで物件を探すと広告に記載されている高利回りにつられて「飛びつき買い」をすることになりかねません。

例えば、大学生をターゲットにした入居率の高い不動産経営を行うことが目的ならワンルームであることは必須といえます。アルバイトで生計を立てている大学生が3LDKのファミリー向け物件を探すことはまずないからです。逆に4人家族がワンルームを探すこともほとんどありません。家賃収入をメインにしたインカムゲイン投資の場合は、入居者のターゲットや事業スタイルの目的を明確にしてから物件を選ぶことが大切です。

「他の人はどんな投資目的でやっている?」「自分の現状なら、どんな目的で資産形成をすべき?」「目的は決まっているけれど、どういう持ち方が良いか分からない…」など、そういった疑問があれば、セミナーでコンサルタントが詳しくお答えすることも可能ですので、ぜひご検討下さい。

収益目的の場合、売却までを想定する

売却収益を目的とするキャピタルゲイン投資の場合は、売却した場合の損益まで計算して判断する必要があります。不動産投資は、多くの人がローンを組んで物件を購入するため、保有期間中のキャッシュフローは損益ぎりぎりのラインになる場合があります。

保有期間中のキャッシュフロー+売却損益で判断

不動産投資では、保有した期間のキャッシュフローにローン完済後の物件を売却した損益を加えて、成功・失敗の最終的な判断を行います。物件を保有していた期間のキャッシュフローが黒字かトントンであれば損失はないため、売却代金から売却経費を差し引いて計算する売却益を加えた金額が投資の最終損益です。

例えば、ローン返済額や諸経費が多く保有期間中のキャッシュフローが500万円の赤字だったとしましょう。この場合でもその後売却益が2,500万円あった場合は、差し引き2,000万円手もとに残るため、不動産投資は成功したと判断できます。老後の資金としては十分でしょう。

不動産投資でよくある5つの失敗事例

ここからは、不動産投資の失敗事例や失敗しないための対策について解説します。まずは、代表的な5つの失敗事例を見てみましょう。

空室が埋まらない

一棟オーナーのAさんは、大学のあるエリアで学生向けマンションを経営していました。大学生は、卒業してもすぐ新入学生が入って来ることから安定した需要があり、学生向けマンションは空室リスクが少ない経営が可能です。ところが、新型コロナウィルス感染拡大の影響でエリア内の大学でも対面授業が中止になり実家に帰る学生が増えたため、Aさんのワンルームマンションも空室が目立つようになりました。学生向けマンションのため、空室がなかなか埋まらないに事態に陥ってしまったのです。

そこでAさんは、学生向けマンションの経営方針を改めることにしました。学生だけでなく会社員や単身女性もターゲットに含めて広告を打ち直して新たな設備も導入したことから予定外の費用がかかりました。この経験から、Aさんはターゲットを極端に絞る経営の怖さを痛感しました。

不動産投資で最も大きなリスクが空室リスクです。今まで空室が少なく順調な経営状況であっても、物件の周辺環境の変化によって突然空室が発生する事態に陥る場合があります。

家賃が想定より下がってしまった

不動産投資初心者のBさんは、家賃の下落が少ないだろうと見込んで東京都渋谷区にある築5年の1DKマンションを購入しました。築浅で見た目も新築に近くきれいなため、周辺家賃相場よりやや高い12万円の家賃に設定したところ、すぐに入居者が決まりました。しかし、次第に空室が出るようになり築10年になる頃には当初より2万円下げて10万円の家賃に改定しました。

値下げ効果で入居者は付いたものの想定していた家賃より下がったことでキャッシュフローは余裕がない状態が続いています。「築浅で見た目も新築に近い」という理由から、周辺家賃相場より高い家賃収入を継続して得られると想定したことによる失敗例です。家賃に関して失敗する人が陥りやすいのが「経営を始めたときの家賃がずっと続く」という幻想です。不動産は、築年数の経過とともに老朽化が進んでいくため、いつまでも同じ家賃を維持することは困難なのです。

修繕費が想定よりかかってしまった

区分所有オーナーのCさんは、築35年の築古ファミリータイプマンションを購入。リフォームもされておらず、「現状渡し」という条件が気になりましたが、首都圏となる埼玉県の大宮駅から徒歩15分、3LDKで2,180万円という価格がお買い得に思えて購入に至ります。

この価格ならたいていはバス利用です。しかし、駅からの距離が遠く室内も古いため入居者がなかなか付かず、対策を講じることを余儀なくされました。一見安くてお得に感じる物件でしたが、入居者が付かないからこそ前オーナーが破格の値段で売りに出したのでしょう。クロスや畳の張り替えなど室内リフォームや給湯器など設備の入れ替えを実施し、修繕費が想定よりかかったため、結局は相場並みの価格で購入したのと同じ結果となりました。

不動産投資において修繕費の発生は避けて通れません。経営を始めてから修繕費が発生する場合もあれば、購入した物件をリフォームしなければならない場合もあるという点は押さえておきましょう。

相場より高値で購入してしまった

神奈川県に住むDさんは東京で不動産投資を始めようと、都心5区(港区、千代田区、中央区、渋谷区、新宿区)の一つである中央区の「勝どき駅」から徒歩約10分の2LDKマンションを5,180万円で購入しました。不動産ポータルサイトを見たときに似たような物件が5,500万円台で出ていることを考えるとお買い得と思えて早めに手を打つことにしたのです。東京都中央区のブランド力も魅力でした。

ところが、契約を終えて別の不動産ポータルサイトを見ていると同じ中央区勝どきで2LDK、駅歩4分の物件が4,480万円で売りに出ていました。Dさんは、1つのポータルサイトだけを見て相場を判断したことを後悔したといいます。不動産に限らず、投資の世界では高値で購入してしまうリスクが常にあることが分かる事例です。

不動産価格は、所在するエリアや駅からの距離、間取り、築年数、設備、リフォームの有無などによって価格が大きく異なります。タワーマンションであれば高層階は高く低層階は安くなる傾向にあります。

表面利回りと実質利回りの乖離が大きい

男性会社員のEさんは、副業として不動産投資を始めようと考えました。中古のワンルームマンションを購入するため、インターネットの不動産広告を見ていると利回りが8%ある魅力的な物件が目にとまりました。築30年と古いものの経費率を20%としても5~6%の利回りは確保できると踏んで購入を決断しました。ワンルームということもあり入居者はすぐに付きましたが、翌年の9月に退去しました。

10~12月は空室となったため、諸経費に3カ月の空室損を加えて計算した実質利回りが4%まで低下してしまいました。空き室リスクを考慮しなかったことにより、表面利回りと実際の利回りの乖離が大きくなった失敗例といえます。

投資用物件の広告では、ほとんどの場合、表面利回りが記載されていることをご存じでしょうか。表面利回りは、単純に年間家賃収入を物件購入価格で割った利回りのため、高めに表示されます。本来は実質利回りを計算した上で判断するのが望ましいですが、広告の高利回りが魅力的に思えて購入し、失敗する人も少なくありません。

他にも不動産投資のリスクについて知りたいなら、こちらの記事もおすすめです。

不動産投資で失敗しないための対策

次に失敗しないための対策について考察します。不動産を購入する前の段階で、物件についてある程度確認することは可能です。確認した結果をもとに失敗する要素を排除していけば、成功する確率を高められるでしょう。

家賃は適正かを確認する

家賃は、ユーザーが真っ先に見る項目です。周辺の競合物件と比べて高いと感じればユーザーから選ばれない可能性は高くなります。エリアのどの程度の範囲を競合とするかを決め、適正な家賃を判断することが大切です。家賃を判断するには、次のような方法があります。

不動産ポータルサイトを閲覧する

インターネットには、多くの不動産ポータルサイトがあります。自分が購入したい物件タイプと似た条件で同じエリア内の物件を不動産ポータルサイトでピックアップすれば、およその家賃相場を把握することが可能です。エリア全体の相場を調べる場合は、検索サイトで「池袋駅+家賃相場」などとエリア名を入力すると、不動産ポータルサイトが表示され、アクセスすれば池袋駅の家賃相場情報を確認できます。

不動産仲介会社に確認する

すでに購入したい物件が決まっている場合は、仲介する不動産会社に確認すれば競合の家賃を調べた上で適正な家賃をアドバイスしてくれるはずです。自分で家賃を設定するとどうしても欲が出てしまい適正な金額を判断できない可能性があります。その場合は、プロの不動産仲介会社に聞くのが最も確実な判断方法といえるでしょう。

そのエリアの広告や敷礼の相場を確認する

購入したい物件があるエリアの広告はチェックするようにしましょう。広告には、物件概要の他にも敷金・礼金、管理費、駐車料金などお金に関する情報も記載されています。競合物件の相場に比べて自分の物件が割高になっていないかをチェックすることが必要です。近年は「敷金・礼金なし」という物件も増えているため、場合によっては競争力を高めるために合わせることも検討しましょう。

エリアの競合の入居率を確認する

競合する周辺物件の入居率を調べることも必要です。競合物件の入居率を調べる場合、主に次のような方法があります。

不動産会社に調べてもらう

仲介を依頼する不動産会社に調べてもらうのが一番簡単ですが、全ての不動産会社が対応してくれるとは限りません。周辺の不動産を管理している不動産管理会社の方が把握している可能性もあります。ただし、契約することが前提でないと教えてもらうのは難しいでしょう。

現地で直接調べる

入居率の実態を確認したい場合は、現地で直接調べるのもよい方法です。例えば、「ベランダに物干し竿がある」「カーテンが見える」などの部屋は入居している可能性が高いでしょう。ただし、カーテンを付けて入居者がいるように装う「カーテンスキーム」と呼ばれる手法が使われるケースもあるため、注意が必要です。また、集合ポストのネームプレートの有無から入居率を推測するのは昔から行われている確認方法です。ただし、最近は集合ポストにネームプレートを入れない家庭も増えているため、昔ほど参考にならなくなっています。現地確認の際は、ガスメーターや入り口付近の状況なども確認するとよいでしょう。

事前にどの程度の修繕費が発生するかを予測する

中古物件を購入する場合は、いつ修繕が発生してもおかしくありません。特に築古物件は、入居者が生活を始めて短期間でキッチンや水回りなどで故障が発生する可能性があります。物件を購入したら、まず設備や機器類を点検してどの程度劣化が進んでいるかを確認し、かかりそうな修繕費を予測しておきましょう。

新築物件の場合、入居者が普通に生活している限り築10年程度まで修繕は発生しにくいといえます。それでも、10年目以降にどれくらい修繕費が発生するか予測しておくことは必要です。

売却するにはどの程度の利回りで売却できるかをシミュレーションする

物件を売却する際は、どの程度の利回りで売却できるかをシミュレーションする必要があります。まず所有するマンションがどの程度の価格で売れるかを一括査定サイトで確認します。例えば、複数の一括査定サイトを利用して平均価格が2,000万円と査定された場合は、以下のように売却利回りを算出できます。(購入時・売却時の諸経費は含まず)

【売却シミュレーション】
購入価格3,000万円、平均家賃月10万円、所有期間35年、自己資金500万円、銀行借入2,500万円


  • 収入
    家賃収入:月10万円×12カ月×35年=4,200万円(全期間満室の場合)
    売却価格2,000万円
    減価償却費:3,000万円
    収入計:9,200万円
  • 支出
    ローン返済額:2,500万円(利息は諸経費に含む)
    自己資金:500万円
    諸経費(家賃の20%):4,200万円×0.2=840万円
    支出計:3,340万円
  • 純利益
    9,200万円-3,340万円=純利益5,860万円
  • 利回り
    5,860万円÷3,340万円×100=利回り約175.4%
    約175.4%÷35年=年利約5.01%

3,340万円を使って5,860万円の純利益を得られたため、年利換算で約5.01%の利回りと計算できます。5%以上の利回りなら十分と考えれば、査定通りに2,000万円で売りに出せばよいでしょう。ただし、シミュレーションは簡易的なものです。実際には、空室期間があったり購入・売却時の諸経費もかかったりするため、もう少し利回りは低下します。あくまでもおよその目安としてお考えください。

事前シミュレーションが成功のポイント

不動産投資を行う場合、事前の収益シミュレーションはとても重要です。シミュレーションは、頭の中だけでイメージするのではなく具体的に数字を当てはめて計算するため、現実的な収支見通しや資金計画を立てることができます。大前提として、シミュレーションは表面利回りではなく実質利回りを使って計算することが大切です。

表面利回り計算式:
年間家賃収入÷物件購入価格×100
実質利回り計算式:
(年間家賃収入-年間諸経費)÷物件購入価格×100

さらに資金繰りまで予測するならキャッシュフローの計算を行う必要があります。年間諸経費の他にローン返済額を差し引き、手元にいくら残るかを計算します。

キャッシュフロー簡易計算式:
年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額

キャッシュフロー簡易計算式は、シミュレーションするためにシンプルになっていますが、経営後の確定申告では税金が差し引かれるため、簡易計算式の結果とは異なるという点に注意しましょう。

まとめ

不動産は、居住用であれば住まいが対象となるため、常に一定の需要があります。人は不況だからといって住まいをなくすわけにはいかず、必ず1カ所は住む場所が必要だからです。不動産専門のデータ会社である東京カンテイが発表している家賃相場にも大きな下落は見られません。それらを踏まえると不動産投資は、さまざまな投資の中でも比較的安定した投資先といえるでしょう。

空室リスクは常にありますが、不動産投資の失敗は事前の対策を講じることである程度回避できます。特に購入前の収益シミュレーションや物件相場の把握は重要です。本記事の事例や対策を参考にして、より失敗リスクの少ない不動産経営を目指してみてはいかがでしょうか。

不動産投資をご検討中の方は、ぜひ一度ベルテックスにお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.02.29

不動産投資の基本

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不動産投資で失敗する原因・理由とは?5つの事例から学ぶ対策と成功のポイント

  • リスク
  • 事例
  • はじめ方・基礎知識

不動産投資で失敗する理由は多岐にわたります。投資家によって不動産投資を行う目的が異なるため、目的ごとの失敗例や失敗の要因を知ることが大切です。

この記事では、不動産投資の失敗事例を紹介した上で失敗しないための対策についても解説します。

不動産投資の失敗とは?目的別に紹介

不動産投資が成功するか失敗するかは、目的によって異なります。 不動産投資の目的別に失敗の要因や典型的な失敗のパターンを紹介します。

キャッシュフロー目的

毎月のキャッシュフロー(CF)を黒字化して収入を得るインカムゲイン狙いの投資法があります。家賃収入で生活できるのが理想的ですが、一般的には不動産投資ローンを組んで購入するので、毎月の家賃収入からローンを返済しなければなりません。そのため、キャッシュフローが黒字になっても手もとに残るお金はわずかな額になることもあります。

キャッシュフローを黒字化して家賃収入で生活できるのは、自己資金が多い投資家に限られます。不動産投資のローン返済を除く経費率は、15~20%程度が一般的です。例えば、家賃30万円の物件なら経費率20%の場合で諸経費6万円を引いた24万円が手取りとなります。

全額自己資金で購入していれば家賃収入のみで生活することも可能ですが、ローンを組んで購入すると毎月のローン返済額が大きいため、キャッシュフローのみを目的にすると期待外れとなる可能性があります。

老後を迎えた時点でローンを完済して家賃収入を得る

老後の年金に加えて家賃収入を得ることを目的として不動産投資を始める人は多いでしょう。老後を見据えた不動産投資は、長期的視点に立つことが求められるため、比較的失敗するリスクは低い傾向にあります。

ローン完済後も目標とする家賃収入を得られるかは、完済時に物件価値がどの程度かによります。新築で購入して35年ローンを組んでいれば完済後の物件は築35年です。この場合は、多少の修繕で入居者を確保できるかもしれません。

しかし、築25年の中古物件を購入した場合、35年ローン完済後は築60年の築古物件になっています。この場合、かなり本格的にリフォームしないと入居者が付かない可能性が高いでしょう。

保険代わり

「不動産投資は保険代わりになる」という言葉を耳にしたことはありませんか。不動産投資ローンを契約する際には、金融機関から団信(団体信用生命保険)への加入を求められるのが一般的です。団信に加入していると万一契約者が死亡した場合または高度障害者になった場合に保険が下りて、ローン残債の支払いが免除されます。

しかし、団信への加入は不動産投資そのものとは直接関係ありません。保険代わりにすることを目的に物件の選択を適当に決めてしまうと運用がうまくいかず失敗する可能性があります。不動産投資が保険代わりになるのは単なるメリットであり、目的にすべきものではないと心得ておきましょう。

節税目的

節税目的で不動産投資を行う人が利用する方法で多いのが、確定申告における「損益通算」です。損益通算は、不動産所得が赤字になった場合、他の所得となる給与所得や事業所得などの黒字所得と合算できる制度です。損益通算により総所得を減らすことができるため、所得税や住民税の節税になります。ただし、この方法で節税効果が得られるのは不動産所得が赤字になった場合のみです。

もちろん赤字になった場合のセーフティーネットになる点はメリットといえます。しかし、不動産投資は事業なので、赤字になることを目的に投資するのは本末転倒です。不動産投資は、事業として黒字化する目的で行いましょう。

相続税対策目的

相続税対策のために不動産投資を行う人も多いです。現金で相続すると相続税評価額は100%ですが、不動産は固定資産税評価額や相続税路線価などで評価されるからです。一般的には、60~70%程度の評価額になるため、例えば相続時5,000万円の不動産の場合、現金相続に比べて1,500~2,000万円程度評価が下がります。

ただし、「不動産に変えれば何でもよい」というわけではありません。割高な物件を購入すると売却時に買い手が付かず、値下げして売却した結果、節税効果が半減する場合もあります。相続税対策の場合でも物件はしっかりと吟味して選ぶことを心がけましょう。

まずは不動産投資の目的を明確にする

不動産投資を行うことを考えたら、まずは投資する目的を明確にしましょう。単に「儲けたい」という理由だけで物件を探すと広告に記載されている高利回りにつられて「飛びつき買い」をすることになりかねません。

例えば、大学生をターゲットにした入居率の高い不動産経営を行うことが目的ならワンルームであることは必須といえます。アルバイトで生計を立てている大学生が3LDKのファミリー向け物件を探すことはまずないからです。逆に4人家族がワンルームを探すこともほとんどありません。家賃収入をメインにしたインカムゲイン投資の場合は、入居者のターゲットや事業スタイルの目的を明確にしてから物件を選ぶことが大切です。

「他の人はどんな投資目的でやっている?」「自分の現状なら、どんな目的で資産形成をすべき?」「目的は決まっているけれど、どういう持ち方が良いか分からない…」など、そういった疑問があれば、セミナーでコンサルタントが詳しくお答えすることも可能ですので、ぜひご検討下さい。

収益目的の場合、売却までを想定する

売却収益を目的とするキャピタルゲイン投資の場合は、売却した場合の損益まで計算して判断する必要があります。不動産投資は、多くの人がローンを組んで物件を購入するため、保有期間中のキャッシュフローは損益ぎりぎりのラインになる場合があります。

保有期間中のキャッシュフロー+売却損益で判断

不動産投資では、保有した期間のキャッシュフローにローン完済後の物件を売却した損益を加えて、成功・失敗の最終的な判断を行います。物件を保有していた期間のキャッシュフローが黒字かトントンであれば損失はないため、売却代金から売却経費を差し引いて計算する売却益を加えた金額が投資の最終損益です。

例えば、ローン返済額や諸経費が多く保有期間中のキャッシュフローが500万円の赤字だったとしましょう。この場合でもその後売却益が2,500万円あった場合は、差し引き2,000万円手もとに残るため、不動産投資は成功したと判断できます。老後の資金としては十分でしょう。

不動産投資でよくある5つの失敗事例

ここからは、不動産投資の失敗事例や失敗しないための対策について解説します。まずは、代表的な5つの失敗事例を見てみましょう。

空室が埋まらない

一棟オーナーのAさんは、大学のあるエリアで学生向けマンションを経営していました。大学生は、卒業してもすぐ新入学生が入って来ることから安定した需要があり、学生向けマンションは空室リスクが少ない経営が可能です。ところが、新型コロナウィルス感染拡大の影響でエリア内の大学でも対面授業が中止になり実家に帰る学生が増えたため、Aさんのワンルームマンションも空室が目立つようになりました。学生向けマンションのため、空室がなかなか埋まらないに事態に陥ってしまったのです。

そこでAさんは、学生向けマンションの経営方針を改めることにしました。学生だけでなく会社員や単身女性もターゲットに含めて広告を打ち直して新たな設備も導入したことから予定外の費用がかかりました。この経験から、Aさんはターゲットを極端に絞る経営の怖さを痛感しました。

不動産投資で最も大きなリスクが空室リスクです。今まで空室が少なく順調な経営状況であっても、物件の周辺環境の変化によって突然空室が発生する事態に陥る場合があります。

家賃が想定より下がってしまった

不動産投資初心者のBさんは、家賃の下落が少ないだろうと見込んで東京都渋谷区にある築5年の1DKマンションを購入しました。築浅で見た目も新築に近くきれいなため、周辺家賃相場よりやや高い12万円の家賃に設定したところ、すぐに入居者が決まりました。しかし、次第に空室が出るようになり築10年になる頃には当初より2万円下げて10万円の家賃に改定しました。

値下げ効果で入居者は付いたものの想定していた家賃より下がったことでキャッシュフローは余裕がない状態が続いています。「築浅で見た目も新築に近い」という理由から、周辺家賃相場より高い家賃収入を継続して得られると想定したことによる失敗例です。家賃に関して失敗する人が陥りやすいのが「経営を始めたときの家賃がずっと続く」という幻想です。不動産は、築年数の経過とともに老朽化が進んでいくため、いつまでも同じ家賃を維持することは困難なのです。

修繕費が想定よりかかってしまった

区分所有オーナーのCさんは、築35年の築古ファミリータイプマンションを購入。リフォームもされておらず、「現状渡し」という条件が気になりましたが、首都圏となる埼玉県の大宮駅から徒歩15分、3LDKで2,180万円という価格がお買い得に思えて購入に至ります。

この価格ならたいていはバス利用です。しかし、駅からの距離が遠く室内も古いため入居者がなかなか付かず、対策を講じることを余儀なくされました。一見安くてお得に感じる物件でしたが、入居者が付かないからこそ前オーナーが破格の値段で売りに出したのでしょう。クロスや畳の張り替えなど室内リフォームや給湯器など設備の入れ替えを実施し、修繕費が想定よりかかったため、結局は相場並みの価格で購入したのと同じ結果となりました。

不動産投資において修繕費の発生は避けて通れません。経営を始めてから修繕費が発生する場合もあれば、購入した物件をリフォームしなければならない場合もあるという点は押さえておきましょう。

相場より高値で購入してしまった

神奈川県に住むDさんは東京で不動産投資を始めようと、都心5区(港区、千代田区、中央区、渋谷区、新宿区)の一つである中央区の「勝どき駅」から徒歩約10分の2LDKマンションを5,180万円で購入しました。不動産ポータルサイトを見たときに似たような物件が5,500万円台で出ていることを考えるとお買い得と思えて早めに手を打つことにしたのです。東京都中央区のブランド力も魅力でした。

ところが、契約を終えて別の不動産ポータルサイトを見ていると同じ中央区勝どきで2LDK、駅歩4分の物件が4,480万円で売りに出ていました。Dさんは、1つのポータルサイトだけを見て相場を判断したことを後悔したといいます。不動産に限らず、投資の世界では高値で購入してしまうリスクが常にあることが分かる事例です。

不動産価格は、所在するエリアや駅からの距離、間取り、築年数、設備、リフォームの有無などによって価格が大きく異なります。タワーマンションであれば高層階は高く低層階は安くなる傾向にあります。

表面利回りと実質利回りの乖離が大きい

男性会社員のEさんは、副業として不動産投資を始めようと考えました。中古のワンルームマンションを購入するため、インターネットの不動産広告を見ていると利回りが8%ある魅力的な物件が目にとまりました。築30年と古いものの経費率を20%としても5~6%の利回りは確保できると踏んで購入を決断しました。ワンルームということもあり入居者はすぐに付きましたが、翌年の9月に退去しました。

10~12月は空室となったため、諸経費に3カ月の空室損を加えて計算した実質利回りが4%まで低下してしまいました。空き室リスクを考慮しなかったことにより、表面利回りと実際の利回りの乖離が大きくなった失敗例といえます。

投資用物件の広告では、ほとんどの場合、表面利回りが記載されていることをご存じでしょうか。表面利回りは、単純に年間家賃収入を物件購入価格で割った利回りのため、高めに表示されます。本来は実質利回りを計算した上で判断するのが望ましいですが、広告の高利回りが魅力的に思えて購入し、失敗する人も少なくありません。

他にも不動産投資のリスクについて知りたいなら、こちらの記事もおすすめです。

不動産投資で失敗しないための対策

次に失敗しないための対策について考察します。不動産を購入する前の段階で、物件についてある程度確認することは可能です。確認した結果をもとに失敗する要素を排除していけば、成功する確率を高められるでしょう。

家賃は適正かを確認する

家賃は、ユーザーが真っ先に見る項目です。周辺の競合物件と比べて高いと感じればユーザーから選ばれない可能性は高くなります。エリアのどの程度の範囲を競合とするかを決め、適正な家賃を判断することが大切です。家賃を判断するには、次のような方法があります。

不動産ポータルサイトを閲覧する

インターネットには、多くの不動産ポータルサイトがあります。自分が購入したい物件タイプと似た条件で同じエリア内の物件を不動産ポータルサイトでピックアップすれば、およその家賃相場を把握することが可能です。エリア全体の相場を調べる場合は、検索サイトで「池袋駅+家賃相場」などとエリア名を入力すると、不動産ポータルサイトが表示され、アクセスすれば池袋駅の家賃相場情報を確認できます。

不動産仲介会社に確認する

すでに購入したい物件が決まっている場合は、仲介する不動産会社に確認すれば競合の家賃を調べた上で適正な家賃をアドバイスしてくれるはずです。自分で家賃を設定するとどうしても欲が出てしまい適正な金額を判断できない可能性があります。その場合は、プロの不動産仲介会社に聞くのが最も確実な判断方法といえるでしょう。

そのエリアの広告や敷礼の相場を確認する

購入したい物件があるエリアの広告はチェックするようにしましょう。広告には、物件概要の他にも敷金・礼金、管理費、駐車料金などお金に関する情報も記載されています。競合物件の相場に比べて自分の物件が割高になっていないかをチェックすることが必要です。近年は「敷金・礼金なし」という物件も増えているため、場合によっては競争力を高めるために合わせることも検討しましょう。

エリアの競合の入居率を確認する

競合する周辺物件の入居率を調べることも必要です。競合物件の入居率を調べる場合、主に次のような方法があります。

不動産会社に調べてもらう

仲介を依頼する不動産会社に調べてもらうのが一番簡単ですが、全ての不動産会社が対応してくれるとは限りません。周辺の不動産を管理している不動産管理会社の方が把握している可能性もあります。ただし、契約することが前提でないと教えてもらうのは難しいでしょう。

現地で直接調べる

入居率の実態を確認したい場合は、現地で直接調べるのもよい方法です。例えば、「ベランダに物干し竿がある」「カーテンが見える」などの部屋は入居している可能性が高いでしょう。ただし、カーテンを付けて入居者がいるように装う「カーテンスキーム」と呼ばれる手法が使われるケースもあるため、注意が必要です。また、集合ポストのネームプレートの有無から入居率を推測するのは昔から行われている確認方法です。ただし、最近は集合ポストにネームプレートを入れない家庭も増えているため、昔ほど参考にならなくなっています。現地確認の際は、ガスメーターや入り口付近の状況なども確認するとよいでしょう。

事前にどの程度の修繕費が発生するかを予測する

中古物件を購入する場合は、いつ修繕が発生してもおかしくありません。特に築古物件は、入居者が生活を始めて短期間でキッチンや水回りなどで故障が発生する可能性があります。物件を購入したら、まず設備や機器類を点検してどの程度劣化が進んでいるかを確認し、かかりそうな修繕費を予測しておきましょう。

新築物件の場合、入居者が普通に生活している限り築10年程度まで修繕は発生しにくいといえます。それでも、10年目以降にどれくらい修繕費が発生するか予測しておくことは必要です。

売却するにはどの程度の利回りで売却できるかをシミュレーションする

物件を売却する際は、どの程度の利回りで売却できるかをシミュレーションする必要があります。まず所有するマンションがどの程度の価格で売れるかを一括査定サイトで確認します。例えば、複数の一括査定サイトを利用して平均価格が2,000万円と査定された場合は、以下のように売却利回りを算出できます。(購入時・売却時の諸経費は含まず)

【売却シミュレーション】
購入価格3,000万円、平均家賃月10万円、所有期間35年、自己資金500万円、銀行借入2,500万円


  • 収入
    家賃収入:月10万円×12カ月×35年=4,200万円(全期間満室の場合)
    売却価格2,000万円
    減価償却費:3,000万円
    収入計:9,200万円
  • 支出
    ローン返済額:2,500万円(利息は諸経費に含む)
    自己資金:500万円
    諸経費(家賃の20%):4,200万円×0.2=840万円
    支出計:3,340万円
  • 純利益
    9,200万円-3,340万円=純利益5,860万円
  • 利回り
    5,860万円÷3,340万円×100=利回り約175.4%
    約175.4%÷35年=年利約5.01%

3,340万円を使って5,860万円の純利益を得られたため、年利換算で約5.01%の利回りと計算できます。5%以上の利回りなら十分と考えれば、査定通りに2,000万円で売りに出せばよいでしょう。ただし、シミュレーションは簡易的なものです。実際には、空室期間があったり購入・売却時の諸経費もかかったりするため、もう少し利回りは低下します。あくまでもおよその目安としてお考えください。

事前シミュレーションが成功のポイント

不動産投資を行う場合、事前の収益シミュレーションはとても重要です。シミュレーションは、頭の中だけでイメージするのではなく具体的に数字を当てはめて計算するため、現実的な収支見通しや資金計画を立てることができます。大前提として、シミュレーションは表面利回りではなく実質利回りを使って計算することが大切です。

表面利回り計算式:
年間家賃収入÷物件購入価格×100
実質利回り計算式:
(年間家賃収入-年間諸経費)÷物件購入価格×100

さらに資金繰りまで予測するならキャッシュフローの計算を行う必要があります。年間諸経費の他にローン返済額を差し引き、手元にいくら残るかを計算します。

キャッシュフロー簡易計算式:
年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額

キャッシュフロー簡易計算式は、シミュレーションするためにシンプルになっていますが、経営後の確定申告では税金が差し引かれるため、簡易計算式の結果とは異なるという点に注意しましょう。

まとめ

不動産は、居住用であれば住まいが対象となるため、常に一定の需要があります。人は不況だからといって住まいをなくすわけにはいかず、必ず1カ所は住む場所が必要だからです。不動産専門のデータ会社である東京カンテイが発表している家賃相場にも大きな下落は見られません。それらを踏まえると不動産投資は、さまざまな投資の中でも比較的安定した投資先といえるでしょう。

空室リスクは常にありますが、不動産投資の失敗は事前の対策を講じることである程度回避できます。特に購入前の収益シミュレーションや物件相場の把握は重要です。本記事の事例や対策を参考にして、より失敗リスクの少ない不動産経営を目指してみてはいかがでしょうか。

不動産投資をご検討中の方は、ぜひ一度ベルテックスにお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。