2023.10.05

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の成功率を高めるために把握すべき5つのポイント

  • はじめ方・基礎知識
  • 節税・税金
  • 利回り
  • 賃貸管理
  • 不動産投資
  • 初心者

不動産投資を検討している人なら「少しでも投資の成功率を高めたい」と考えているのではないでしょうか。不動産投資で成功率を高めるためには、まず投資の目的を決め、家賃や投資利回り、管理費用、融資条件などをあらかじめ把握しておくことが大切です。

この記事では、不動産投資の成功率を高めるために把握すべき5つのポイントを紹介します。

不動産投資の成功とは?

「不動産投資で成功した」とは、どのような状態を指すのでしょうか。不動産投資の成功率を表す公的なデータはありません。なぜなら、「成功した」と感じるかどうかは個人の主観によるところが大きいからです。また、不動産投資は「物件売却まで最終的な収支が分からない」という事情があります。

基準の一つは保有期間中のキャッシュフロー+売却金額がプラスになること

不動産投資成功の基準の一つとして考えられるのが、保有期間中のキャッシュフローに売却金額を加えて収支がプラスになることです。

不動産投資は、毎月賃料収入が入り、ランニングコストを差し引いて黒字になればキャッシュフローの面では成功といえます。しかし、毎月のキャッシュフローが赤字もしくはトントンでも失敗と断定することはできません。不動産投資は、物件を売却した後に最終的な収支が決まるからです。
運用期間中に多少の持ち出しがあったとしても、ローンを完済して数千万円の純資産が残れば「不動産投資は成功した」と考えてよいでしょう。

成功の判断基準は目的により異なる

不動産投資は、目的によって成功の基準が大きく異なります。目的別に、どのような状況となれば成功といえるのか説明します。

相続税対策

財産を現金で相続すると相続税評価額は額面の100%で評価されるため、家族に不動産で相続させようと考える人は多いでしょう。不動産で相続した場合は、固定資産税評価額や相続税路線価などで評価されるため、一般的には60~70%程度の評価額になります。

相続した不動産をどのように利用するかは、物件タイプや相続人の方針によって異なります。

例えば、親族が住むための一戸建てであれば、そのまま住み続けることも可能です。被相続人が経営していたアパートを相続した場合は、継続して安定した家賃収入を得ることができれば相続のための不動産投資は成功したといえます。 区分所有マンションを相続した場合は、「親族が住む」「賃貸に出して家賃収入を得る」「売却して現金化する」などの選択肢があります。売却する場合は、売却金額が購入金額を下回れば所得税はかかりませんが、諸費用はかかります。そのため、相続税節税効果より売却の損失や諸費用が少なければ不動産投資は成功したといえます。

所得税対策

不動産投資は、所得税の節税にも活用できます。確定申告において節税可能な方法は「損益通算」と「減価償却費の計上」の2つです。給与所得者が不動産投資を行う場合、不動産所得が赤字になれば給与所得の黒字分と不動産所得の赤字分を合算できるため、総所得が減り、結果的に所得税や住民税が減額されます。

また、物件購入費は法定耐用年数に応じて毎年一定額を減価償却費として計上できます。例えば、建物価格が3,000万円、償却期間が30年の中古マンションを購入した場合、「3,000万円÷30年=100万円」の計算で毎年100万円が減価償却費となります。

減価償却費は、実際の支出を伴わない帳簿上の費用なので、「帳簿上は赤字でも手元に残るお金は黒字」というギャップが生じます。実際に毎年100万円を支出していないのに不動産所得を赤字にできることで、所得税や住民税の節税につながるのです。

本当の赤字では困りますが、減価償却費による赤字で手元に残るお金が黒字なら不動産投資は成功している状態といえます。

保険代わりにする

一般的に不動産投資ローンを契約する際は、団信(団体信用生命保険)に加入するため、不動産投資を保険代わりにする人もいるでしょう。団信に加入していると万が一契約者が死亡した場合または高度障害者となった場合に保険金でローンの残債が支払われるため、家族は残債なしの物件を手に入れることができます。団信に入ることで加入している他の生命保険を解約すれば節約になるという点もメリットといえます。

購入した不動産の経営が順調であれば、保険料を節約できる分、その不動産投資は成功と考えられます。しかし、経営がうまくいかず保険料の節約金額以上の損失が出れば、保険代わりにすることを目的とした不動産投資は失敗したことになります。

キャッシュフロー(CF)目的

キャッシュフローとは、家賃収入から諸経費やローン返済分を差し引いて手元に残るお金の流れを指します。不動産投資においては、毎月のキャッシュフローが黒字になることが理想的です。ローンを利用する場合は、融資期間が長いほど毎月の返済額が少なくなるため、キャッシュフローを黒字化しやすくなります。

不動産投資を副業で行っている人は、本業の収入があるため「キャッシュフローはぎりぎり黒字」という状況でも経営は可能です。しかし、不動産投資が専業の場合は、家賃収入から生活費を捻出することになるため、キャッシュフロー目的の投資となります。

自己資金や家賃のレベル、所有戸数にもよりますが、キャッシュフローは毎月20万~30万円程度確保したいところです。これができればキャッシュフロー目的の投資は、成功したといえるでしょう。

老後資金を用意する

高齢化社会が進む中、老後資金を用意するために不動産投資を行うことがスタンダードになりつつあります。定年を迎える前に、ローンを完済すれば、所有している物件が純資産となります。ローンは、毎月の家賃で返済しており、購入価格も減価償却で元をとっているため、大きな負担を負うことなく、純資産を手に入れることができたといえるでしょう。

その後「賃貸経営を続けて家賃収入を得るか」「売却して老後生活のために現金化するか」については、オーナーの判断によります。老後資金を用意することが目的の場合は、ローンを完済した時点で不動産投資は成功したと考えてよいでしょう。

ここからは、具体的に不動産投資の成功率を高めるために把握すべき5つのポイントを紹介します。

ポイント1:利回りを把握する

1つ目のポイントは、利回りの把握です。利回りは、不動産投資だけではなく投資全般において成功のための重要な判断基準です。不動産投資の利回りは、大別すると「表面利回り」「実質利回り」「返済後利回り」の3つです。それぞれの計算方法を把握しておきましょう。

表面利回り

表面利回りは、単純に年間家賃収入を物件の購入代金で割った利回りです。 計算式は以下の通りです。

表面利回り:
年間家賃収入÷物件購入価格×100

中古マンションの物件広告には、ほとんどの場合、表面利回りが記載されています。年間を通じて満室であることを前提として計算するため、実態以上に高い利回りになっている物件も少なくありません。広告を見て購入を検討する場合、不動産仲介会社に入居状況を確認することが大切です。

実質利回り

実質利回りは、年間家賃収入から必要経費を差し引いた手取り収入を購入代金で割った利回りです。 計算式は、以下の通りです。

実質利回り:
(年間家賃収入-年間諸経費)÷物件購入価格×100

不動産投資の収益をシミュレーションする際は、実質利回りを計算する必要があります。ローン返済を除く年間諸経費は、家賃収入の15~20%程度が一般的です。そのため少し多めに見積もって20%で計算すればよいでしょう。

返済後利回り

実質利回りを見て「ローンの返済分は差し引かなくてよいの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。実質利回りからローン返済額を差し引いて計算したい場合は、返済後利回りを利用します。実質的にキャッシュフローの計算と同じ考え方です。計算式は、以下の通りです。

返済後利回り:
(年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額)÷物件購入価格×100

不動産投資の利回り相場について、多くの不動産サイトが表面利回りまたは実質利回りで解説しています。返済後利回りが用いられることは、あまりありません。なぜなら返済後利回りで差し引かれるローン返済額は、人によって返済期間や金利が異なるため、結果に大きな違いが生じるからです。また、全額自己資金で購入する場合は、返済後利回りという概念自体がありません。

ポイント2:家賃が適正かをチェックする

入居者を安定して確保するためには、相場と比較して適正な家賃に設定する必要があります。家賃の相場を調べるには「不動産ポータルサイトを閲覧して自分で調べる」「不動産仲介会社に確認する」という2つの方法があります。

不動産仲介会社に確認するメリットは、周辺物件の家賃と比較して適正な金額をアドバイスしてもらえることです。自分の希望額が相場とかけ離れていた場合、入居者が付きやすい金額に下げることを提案される場合もあるでしょう。

ポイント3:管理にどの程度の費用がかかるかを把握する

物件の管理には、建物だけでなく運営に関するさまざまなものが含まれます。以下のような費用を把握しておきましょう。

管理委託費

不動産管理会社に管理を委託した場合は、管理委託費がかかります。管理を委託すると建物のメンテナンスの他に入居者募集や家賃の集金なども行ってもらえるため、オーナーの手間を大幅に削減できます。一般的な管理委託費の相場は、家賃の5%程度となります。ただし、管理会社へ委託すると空室期間も管理委託費を支払う必要があるため、注意が必要です。管理委託費は、部屋ごとに必要なため、空室が増えるほど赤字の額も大きくなります。

広告料(AD)

空室が出た場合は、新たな入居者を探さなければなりません。最近の不動産広告は、インターネットの不動産ポータルサイトに掲載する方法が中心となっています。他にもチラシの新聞折込みやポスティング、住宅情報誌への掲載など方法はさまざまです。

これらの一般的な広告は、基本的に不動産仲介会社が出稿して費用も負担します。オーナーは、入居者が見つかった場合に仲介手数料を支払うため、広告料(AD)を負担することはありません。

しかし、例外的にオーナーの意思で特別な広告(告示では、「広告掲載料等、報酬の範囲内で賄う事が相当でない多額の費用を要する特別の刻々費用)を依頼する場合は、広告料(AD)が発生するケースがあります。オーナーの依頼による広告料(AD)については、国土交通省の告示により、仲介手数料とは別に受領することが認められています(「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」第9①」)。

ただし、国土交通省の告示により認められている広告料(AD)について、東京高等裁判所は以下のような見解を示しています。

告示第9が特に容認する広告の料金とは、大手新聞社への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金を意味するものと解すべき
【引用元】東京高等裁判所昭和57年9月28日 判時1058号より

つまり、大手新聞社の広告掲載料よりも高額な費用がかかる場合以外は、不動産会社が広告料(AD)を受け取ることは法規制上認められないということです。この規制について正しく理解していない不動産会社から広告料(AD)の支払いを求められるケースもあるので注意しましょう。

修繕費の見込み

どのような物件であっても修繕費はかかります。築浅物件だからといって修繕費を用意しておかないと、入居者から修繕の要求があったときに生活費から捻出しなくてはなりません。会社員が副業として経営する場合でも、事業費用と生活費はきちんと分けておくことが必要です。

物件購入時点で室内のキッチン・水回りなどを中心に設備や機器を点検し、劣化が進んでいるものがあれば修繕費用を積み立てておくとよいでしょう。

空室損の見込み

不動産投資では、空室リスクを完全になくすことはできません。満室であれば得られたはずなのに空室が出たために発生する損失を「空室損」と呼びます。例えば家賃10万円の1DKマンションの場合、満室が続けば年間の家賃収入は120万円です。ところが2カ月空室期間があった場合は、20万円分の家賃収入が入らないため、年間の家賃収入は100万円になります。

このような状況を想定して、年間の収入計画を「空室損2カ月分」と厳しめに見積もって資金を用意しておけば、より安全性の高い収支計画になるでしょう。

ポイント4:融資条件を確認する

金融機関から融資を受ける場合、融資条件によって毎月のローン返済額に大きな差が生じます。融資の条件で特に重要なのが融資期間と融資金利です。

融資期間(躯体、築年)

金融機関は、融資期間を設定するときに躯体の構造や築年数によって判断することが多いといわれています。なぜなら建物の躯体によって法定耐用年数が決まっているからです。

アパートは木造物件が多いですが、木造の法定耐用年数は22年となります。一方、マンションはRC造(鉄筋コンクリート造)またはSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)がほとんどです。法定耐用年数は、いずれも47年で木造の2倍以上の耐用年数があります。RC造とSRC造は躯体として頑丈なため、法定耐用年数以上の経営が可能と判断する金融機関も少なくありません。

オーナーの資金的余裕にもよりますが、総返済利息を減らしたいなら短めの融資期間、毎月のキャッシュフローを重視するなら返済額の少ない長めの融資期間を選ぶとよいでしょう。

金利

不動産は、高額な商品なので、わずかな金利の差でも長期ローンでは総返済利息にかなり差が出る場合があります。ここでは、返済期間35年で金利が1%違う場合の総返済額を、カシオ計算機が提供している高精度計算サイト「keisan」を利用してシミュレーションしてみましょう。

【借入条件】
・借入金額:5,000万円
・返済方法:元利均等払い
・返済期間:35年
・金利:1.0%および2.0%

上記の借入条件での返済額の違いは、以下の通りです。

  毎月の返済額 総返済額
金利1.0% 約14万1,142円 約5,927万9,814円
金利2.0% 約16万5,631円 約6,956万4,969円
差額 約2万4,489円 約1,028万5,155円

5,000万円の借り入れでは、金利1%の違いで総返済額が1,000万円以上増えることになります。金融機関を選ぶ際は、できるかぎり金利が低いところを選ぶことが大切です。

ポイント5:売却金額は予想が難しいことを理解する

株式投資をはじめとする投資の世界では、買うよりも売る方が難しいといわれています。なぜなら買うときは冷静でも売るときは欲が出るからです。
不動産投資も同じように売るときは少しでも高く売れることを期待したくなります。しかし、物件は買い手が現れてはじめて売却が実現するものです。また、買い手が現れた場合でも希望する売出価格で売れるとは限らず、値引きを要求される場合もあります。そのため、売却金額は予想が難しいことを認識しておきましょう。

売却金額のおおまかな目安を知りたい場合は、インターネットの一括査定サイトで調べるのが便利です。その際に大切なのは、複数の一括サイトに依頼することです。サイトによって評価の基準が異なるため、AサイトとBサイトで評価額に差が出る場合があります。

1つのサイトだけで判断してしまうと「Aサイトの査定額を見ていれば高く売れたのに、査定額が低いBサイトを見て判断したために安値で売却した」ということにもなりかねません。そのため、必ず複数の一括サイトを利用するようにしましょう。

まとめ

不動産投資の成功率は、利回りのような具体的な基準はありませんが、不動産投資の目的を明確にして、目的達成に向けた努力をすれば、成功したといえる結果に近づけることはできます。成功率を高めるためには、経営計画をしっかりと策定することが大切です。航海図を描かずに船を出航させると極めて危険な航海となります。

まずは何のために不動産投資を始めるのか目的を明確にし、目標とする利回り、融資条件、管理にかかる費用、出口戦略(売却)などについて検討しましょう。

不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.05

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の成功率を高めるために把握すべき5つのポイント

  • はじめ方・基礎知識
  • 節税・税金
  • 利回り
  • 賃貸管理
  • 不動産投資
  • 初心者

不動産投資を検討している人なら「少しでも投資の成功率を高めたい」と考えているのではないでしょうか。不動産投資で成功率を高めるためには、まず投資の目的を決め、家賃や投資利回り、管理費用、融資条件などをあらかじめ把握しておくことが大切です。

この記事では、不動産投資の成功率を高めるために把握すべき5つのポイントを紹介します。

不動産投資の成功とは?

「不動産投資で成功した」とは、どのような状態を指すのでしょうか。不動産投資の成功率を表す公的なデータはありません。なぜなら、「成功した」と感じるかどうかは個人の主観によるところが大きいからです。また、不動産投資は「物件売却まで最終的な収支が分からない」という事情があります。

基準の一つは保有期間中のキャッシュフロー+売却金額がプラスになること

不動産投資成功の基準の一つとして考えられるのが、保有期間中のキャッシュフローに売却金額を加えて収支がプラスになることです。

不動産投資は、毎月賃料収入が入り、ランニングコストを差し引いて黒字になればキャッシュフローの面では成功といえます。しかし、毎月のキャッシュフローが赤字もしくはトントンでも失敗と断定することはできません。不動産投資は、物件を売却した後に最終的な収支が決まるからです。
運用期間中に多少の持ち出しがあったとしても、ローンを完済して数千万円の純資産が残れば「不動産投資は成功した」と考えてよいでしょう。

成功の判断基準は目的により異なる

不動産投資は、目的によって成功の基準が大きく異なります。目的別に、どのような状況となれば成功といえるのか説明します。

相続税対策

財産を現金で相続すると相続税評価額は額面の100%で評価されるため、家族に不動産で相続させようと考える人は多いでしょう。不動産で相続した場合は、固定資産税評価額や相続税路線価などで評価されるため、一般的には60~70%程度の評価額になります。

相続した不動産をどのように利用するかは、物件タイプや相続人の方針によって異なります。

例えば、親族が住むための一戸建てであれば、そのまま住み続けることも可能です。被相続人が経営していたアパートを相続した場合は、継続して安定した家賃収入を得ることができれば相続のための不動産投資は成功したといえます。 区分所有マンションを相続した場合は、「親族が住む」「賃貸に出して家賃収入を得る」「売却して現金化する」などの選択肢があります。売却する場合は、売却金額が購入金額を下回れば所得税はかかりませんが、諸費用はかかります。そのため、相続税節税効果より売却の損失や諸費用が少なければ不動産投資は成功したといえます。

所得税対策

不動産投資は、所得税の節税にも活用できます。確定申告において節税可能な方法は「損益通算」と「減価償却費の計上」の2つです。給与所得者が不動産投資を行う場合、不動産所得が赤字になれば給与所得の黒字分と不動産所得の赤字分を合算できるため、総所得が減り、結果的に所得税や住民税が減額されます。

また、物件購入費は法定耐用年数に応じて毎年一定額を減価償却費として計上できます。例えば、建物価格が3,000万円、償却期間が30年の中古マンションを購入した場合、「3,000万円÷30年=100万円」の計算で毎年100万円が減価償却費となります。

減価償却費は、実際の支出を伴わない帳簿上の費用なので、「帳簿上は赤字でも手元に残るお金は黒字」というギャップが生じます。実際に毎年100万円を支出していないのに不動産所得を赤字にできることで、所得税や住民税の節税につながるのです。

本当の赤字では困りますが、減価償却費による赤字で手元に残るお金が黒字なら不動産投資は成功している状態といえます。

保険代わりにする

一般的に不動産投資ローンを契約する際は、団信(団体信用生命保険)に加入するため、不動産投資を保険代わりにする人もいるでしょう。団信に加入していると万が一契約者が死亡した場合または高度障害者となった場合に保険金でローンの残債が支払われるため、家族は残債なしの物件を手に入れることができます。団信に入ることで加入している他の生命保険を解約すれば節約になるという点もメリットといえます。

購入した不動産の経営が順調であれば、保険料を節約できる分、その不動産投資は成功と考えられます。しかし、経営がうまくいかず保険料の節約金額以上の損失が出れば、保険代わりにすることを目的とした不動産投資は失敗したことになります。

キャッシュフロー(CF)目的

キャッシュフローとは、家賃収入から諸経費やローン返済分を差し引いて手元に残るお金の流れを指します。不動産投資においては、毎月のキャッシュフローが黒字になることが理想的です。ローンを利用する場合は、融資期間が長いほど毎月の返済額が少なくなるため、キャッシュフローを黒字化しやすくなります。

不動産投資を副業で行っている人は、本業の収入があるため「キャッシュフローはぎりぎり黒字」という状況でも経営は可能です。しかし、不動産投資が専業の場合は、家賃収入から生活費を捻出することになるため、キャッシュフロー目的の投資となります。

自己資金や家賃のレベル、所有戸数にもよりますが、キャッシュフローは毎月20万~30万円程度確保したいところです。これができればキャッシュフロー目的の投資は、成功したといえるでしょう。

老後資金を用意する

高齢化社会が進む中、老後資金を用意するために不動産投資を行うことがスタンダードになりつつあります。定年を迎える前に、ローンを完済すれば、所有している物件が純資産となります。ローンは、毎月の家賃で返済しており、購入価格も減価償却で元をとっているため、大きな負担を負うことなく、純資産を手に入れることができたといえるでしょう。

その後「賃貸経営を続けて家賃収入を得るか」「売却して老後生活のために現金化するか」については、オーナーの判断によります。老後資金を用意することが目的の場合は、ローンを完済した時点で不動産投資は成功したと考えてよいでしょう。

ここからは、具体的に不動産投資の成功率を高めるために把握すべき5つのポイントを紹介します。

ポイント1:利回りを把握する

1つ目のポイントは、利回りの把握です。利回りは、不動産投資だけではなく投資全般において成功のための重要な判断基準です。不動産投資の利回りは、大別すると「表面利回り」「実質利回り」「返済後利回り」の3つです。それぞれの計算方法を把握しておきましょう。

表面利回り

表面利回りは、単純に年間家賃収入を物件の購入代金で割った利回りです。 計算式は以下の通りです。

表面利回り:
年間家賃収入÷物件購入価格×100

中古マンションの物件広告には、ほとんどの場合、表面利回りが記載されています。年間を通じて満室であることを前提として計算するため、実態以上に高い利回りになっている物件も少なくありません。広告を見て購入を検討する場合、不動産仲介会社に入居状況を確認することが大切です。

実質利回り

実質利回りは、年間家賃収入から必要経費を差し引いた手取り収入を購入代金で割った利回りです。 計算式は、以下の通りです。

実質利回り:
(年間家賃収入-年間諸経費)÷物件購入価格×100

不動産投資の収益をシミュレーションする際は、実質利回りを計算する必要があります。ローン返済を除く年間諸経費は、家賃収入の15~20%程度が一般的です。そのため少し多めに見積もって20%で計算すればよいでしょう。

返済後利回り

実質利回りを見て「ローンの返済分は差し引かなくてよいの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。実質利回りからローン返済額を差し引いて計算したい場合は、返済後利回りを利用します。実質的にキャッシュフローの計算と同じ考え方です。計算式は、以下の通りです。

返済後利回り:
(年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額)÷物件購入価格×100

不動産投資の利回り相場について、多くの不動産サイトが表面利回りまたは実質利回りで解説しています。返済後利回りが用いられることは、あまりありません。なぜなら返済後利回りで差し引かれるローン返済額は、人によって返済期間や金利が異なるため、結果に大きな違いが生じるからです。また、全額自己資金で購入する場合は、返済後利回りという概念自体がありません。

ポイント2:家賃が適正かをチェックする

入居者を安定して確保するためには、相場と比較して適正な家賃に設定する必要があります。家賃の相場を調べるには「不動産ポータルサイトを閲覧して自分で調べる」「不動産仲介会社に確認する」という2つの方法があります。

不動産仲介会社に確認するメリットは、周辺物件の家賃と比較して適正な金額をアドバイスしてもらえることです。自分の希望額が相場とかけ離れていた場合、入居者が付きやすい金額に下げることを提案される場合もあるでしょう。

ポイント3:管理にどの程度の費用がかかるかを把握する

物件の管理には、建物だけでなく運営に関するさまざまなものが含まれます。以下のような費用を把握しておきましょう。

管理委託費

不動産管理会社に管理を委託した場合は、管理委託費がかかります。管理を委託すると建物のメンテナンスの他に入居者募集や家賃の集金なども行ってもらえるため、オーナーの手間を大幅に削減できます。一般的な管理委託費の相場は、家賃の5%程度となります。ただし、管理会社へ委託すると空室期間も管理委託費を支払う必要があるため、注意が必要です。管理委託費は、部屋ごとに必要なため、空室が増えるほど赤字の額も大きくなります。

広告料(AD)

空室が出た場合は、新たな入居者を探さなければなりません。最近の不動産広告は、インターネットの不動産ポータルサイトに掲載する方法が中心となっています。他にもチラシの新聞折込みやポスティング、住宅情報誌への掲載など方法はさまざまです。

これらの一般的な広告は、基本的に不動産仲介会社が出稿して費用も負担します。オーナーは、入居者が見つかった場合に仲介手数料を支払うため、広告料(AD)を負担することはありません。

しかし、例外的にオーナーの意思で特別な広告(告示では、「広告掲載料等、報酬の範囲内で賄う事が相当でない多額の費用を要する特別の刻々費用)を依頼する場合は、広告料(AD)が発生するケースがあります。オーナーの依頼による広告料(AD)については、国土交通省の告示により、仲介手数料とは別に受領することが認められています(「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」第9①」)。

ただし、国土交通省の告示により認められている広告料(AD)について、東京高等裁判所は以下のような見解を示しています。

告示第9が特に容認する広告の料金とは、大手新聞社への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金を意味するものと解すべき
【引用元】東京高等裁判所昭和57年9月28日 判時1058号より

つまり、大手新聞社の広告掲載料よりも高額な費用がかかる場合以外は、不動産会社が広告料(AD)を受け取ることは法規制上認められないということです。この規制について正しく理解していない不動産会社から広告料(AD)の支払いを求められるケースもあるので注意しましょう。

修繕費の見込み

どのような物件であっても修繕費はかかります。築浅物件だからといって修繕費を用意しておかないと、入居者から修繕の要求があったときに生活費から捻出しなくてはなりません。会社員が副業として経営する場合でも、事業費用と生活費はきちんと分けておくことが必要です。

物件購入時点で室内のキッチン・水回りなどを中心に設備や機器を点検し、劣化が進んでいるものがあれば修繕費用を積み立てておくとよいでしょう。

空室損の見込み

不動産投資では、空室リスクを完全になくすことはできません。満室であれば得られたはずなのに空室が出たために発生する損失を「空室損」と呼びます。例えば家賃10万円の1DKマンションの場合、満室が続けば年間の家賃収入は120万円です。ところが2カ月空室期間があった場合は、20万円分の家賃収入が入らないため、年間の家賃収入は100万円になります。

このような状況を想定して、年間の収入計画を「空室損2カ月分」と厳しめに見積もって資金を用意しておけば、より安全性の高い収支計画になるでしょう。

ポイント4:融資条件を確認する

金融機関から融資を受ける場合、融資条件によって毎月のローン返済額に大きな差が生じます。融資の条件で特に重要なのが融資期間と融資金利です。

融資期間(躯体、築年)

金融機関は、融資期間を設定するときに躯体の構造や築年数によって判断することが多いといわれています。なぜなら建物の躯体によって法定耐用年数が決まっているからです。

アパートは木造物件が多いですが、木造の法定耐用年数は22年となります。一方、マンションはRC造(鉄筋コンクリート造)またはSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)がほとんどです。法定耐用年数は、いずれも47年で木造の2倍以上の耐用年数があります。RC造とSRC造は躯体として頑丈なため、法定耐用年数以上の経営が可能と判断する金融機関も少なくありません。

オーナーの資金的余裕にもよりますが、総返済利息を減らしたいなら短めの融資期間、毎月のキャッシュフローを重視するなら返済額の少ない長めの融資期間を選ぶとよいでしょう。

金利

不動産は、高額な商品なので、わずかな金利の差でも長期ローンでは総返済利息にかなり差が出る場合があります。ここでは、返済期間35年で金利が1%違う場合の総返済額を、カシオ計算機が提供している高精度計算サイト「keisan」を利用してシミュレーションしてみましょう。

【借入条件】
・借入金額:5,000万円
・返済方法:元利均等払い
・返済期間:35年
・金利:1.0%および2.0%

上記の借入条件での返済額の違いは、以下の通りです。

  毎月の返済額 総返済額
金利1.0% 約14万1,142円 約5,927万9,814円
金利2.0% 約16万5,631円 約6,956万4,969円
差額 約2万4,489円 約1,028万5,155円

5,000万円の借り入れでは、金利1%の違いで総返済額が1,000万円以上増えることになります。金融機関を選ぶ際は、できるかぎり金利が低いところを選ぶことが大切です。

ポイント5:売却金額は予想が難しいことを理解する

株式投資をはじめとする投資の世界では、買うよりも売る方が難しいといわれています。なぜなら買うときは冷静でも売るときは欲が出るからです。
不動産投資も同じように売るときは少しでも高く売れることを期待したくなります。しかし、物件は買い手が現れてはじめて売却が実現するものです。また、買い手が現れた場合でも希望する売出価格で売れるとは限らず、値引きを要求される場合もあります。そのため、売却金額は予想が難しいことを認識しておきましょう。

売却金額のおおまかな目安を知りたい場合は、インターネットの一括査定サイトで調べるのが便利です。その際に大切なのは、複数の一括サイトに依頼することです。サイトによって評価の基準が異なるため、AサイトとBサイトで評価額に差が出る場合があります。

1つのサイトだけで判断してしまうと「Aサイトの査定額を見ていれば高く売れたのに、査定額が低いBサイトを見て判断したために安値で売却した」ということにもなりかねません。そのため、必ず複数の一括サイトを利用するようにしましょう。

まとめ

不動産投資の成功率は、利回りのような具体的な基準はありませんが、不動産投資の目的を明確にして、目的達成に向けた努力をすれば、成功したといえる結果に近づけることはできます。成功率を高めるためには、経営計画をしっかりと策定することが大切です。航海図を描かずに船を出航させると極めて危険な航海となります。

まずは何のために不動産投資を始めるのか目的を明確にし、目標とする利回り、融資条件、管理にかかる費用、出口戦略(売却)などについて検討しましょう。

不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。