2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンの金利相場を解説!審査で重視するポイントは?

  • 融資・ローン
  • 審査

投資をしたくても、高額商品であるがゆえになかなか一歩踏み出せないのが不動産投資。意を決して購入の申し込みをすると、次は「ローン審査」という高い壁が待っています。このハードルが高く諦めてしまったり、重い腰がなかなか上がらない方は少なくありません。

今回は不動産投資ローンの相場、融資の際の金融機関によるチェックポイント、固定金利・変動金利の違いについて解説します。また、条件ごとのローン返済シミュレーションもご紹介しますので、最後までご覧ください。

金融機関別不動産投資ローンの相場

不動産投資を行う際に利用する不動産投資ローンは、本人の居住用ではなく第三者に貸して家賃収入を得ることに目的を限定したものです。

中でも、ある程度の審査基準や条件が定められた「アパートローン(パッケージ型)」と、定められた条件がなく金融機関の判断で個別に審査する「プロパーローン(オーダーメイド型)」の2種類に大別されます。

日本では2023年現在も低金利水準が続いていますが、投資ローンの金利は住宅ローンと比較すると高めの設定です。アパートローンの金利相場について金融機関別にみていきましょう。

メガバンク・都市銀行

日本におけるメガバンクは「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」の3行とされています。 都市銀行は「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」の3行に「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」を加えた5行とされています。 全国どこにでも存在するため融資対象が全国と幅広い上に窓口相談を行いやすい反面、融資条件が厳しく設けられているのが特徴です。メガバンク、都市銀行それぞれに大きな金利幅はありません。 融資審査を通過することはなかなか難儀ですが、承認を得られると良い条件で借り入れができます。

・金利相場:1%~2%

地方銀行

地方銀行とはその名の通り、一部の地域・地方で限定的に存在する銀行です。 「福岡銀行」「横浜銀行」「四国銀行」など県名や県庁所在地名、地方名が入っているものもあれば、「十六銀行」「七十七銀行」という数字が使われた銀行も含まれます。 主な融資対象エリアは、本店が所在する県および隣接する県限定されていますが、メガバンクよりも金利が低いことが多く、審査基準も緩くなることが特徴です。

・金利相場:1~4%

信用金庫信用組合

融資対象エリアは地方銀行よりも更に絞られたエリアが対象で、地域密着型と言えるでしょう。 借り入れするためには、投資物件がエリア内に存在していること、もしくはエリア内に居住していることが条件です。 信用金庫・信用組合は利益目的である銀行と異なり、地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした共同組織なので、親身になって相談を受けてくれるでしょう。 寛容な姿勢を持っているため、メガバンクや地方銀行よりも存在は薄いですが、不動産投資ローンを検討する際には必ず視野に入れておきましょう。

・金利相場:2~3%

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、100%政府による出資の金融機関です。国民の生活向上が目的で、銀行からの借り入れが難しい方にとっての救世主的な金融機関と言えるでしょう。 日本政策公庫では、「不動産投資」ではなく「不動産賃貸業」としての見方をします。そのため投資ローンという概念がなく、あくまで「事業」視点での借り入れです。 不動産経営が事業として成り立つことが審査の上で最も重要になります。

・金利相場:1~2%(固定金利に限る)

銀行ほど本人の属性は重視されず、良心的なのは固定金利のみを採用していることです。金利変動リスクに伴う心不安要素がなく、不動産経営における計画が立てやすくなります。

ノンバンク系

ユーザーからお金を預かる預金業務を行わず、融資など貸付業務に特化した金融機関です。 融資エリアは広めに設定されており、全国の主要都市が対象になっています。比較的に融資審査が緩く、銀行のローン審査で高く評価されなかった場合でも、ノンバンクでは融資を受けられるかもしれません。

・金利相場:1~5%

※上記はあくまで相場ですので、物件の収益性や本人の属性、自己資金などにより決定される金利は異なります。

金融機関が審査するポイントとは?

2018年に発生したいわば「かぼちゃの馬車」事件をきっかけに投資ローンが厳格化され、現在はプロパーローンを組める人が限定されるようになりました。 そのため、投資初心者の方は基本的にアパートローンで借り入れを行うことでしょう。 本章では、融資審査の際に金融機関からチェックされるポイントについて項目ごとにお伝えします。

年収や勤続年数、金融資産などの「属性」

借り入れ審査の際に見られる「属性」とは、主に年収・勤続年数・預貯金などの金融資産です。 金融機関の判断基準は、貸したお金が滞りなく最後まで返済されるかどうかがポイントになります。金融機関にとっての「いい属性」とは、言い換えると「安定していること」でしょう。 医師や税理士を除く個人事業主は安定さに欠けていると判断され、融資のハードルは高くなりがちです。

【年収】

とても重要な判断ポイントで、基準としては700万円以上が1つの目安になります。 高額な商品である不動産は、リスクが発生し返済に充てる家賃収入が減ってしまうと給与から手出しをしなくてはいけません。家賃収入に頼りすぎてしまい、リスクが起こった際の返済能力が不十分では金融機関の審査通過は難しいでしょう。

【勤続年数】

勤続年数は3年以上が望ましいです。例え年収が高くても勤続年数が短いと退職や給与減少が懸念されるでしょう。最低でも直近2~3年以上の安定した収入と勤続年数が必要です。

【金融資産】

空室や修繕にかかる急な出費に対応できる預金が十分にあることは必須条件です。預金が少ないと浪費癖がある人、計画性のない人と判断されてしまうので注意しましょう。

立地や資産価値などの「購入する物件」の状況

属性と同じぐらい重要視されるのが立地や資産などの「物件力」です。 不動産投資が成功するかどうかは、立地で全てが決定すると言われています。利便性の高い駅から近い物件は、築古物件になっても入居者から好まれ続け、高い賃貸需要が見込めるでしょう。 駅まで徒歩7分以内で行けることが理想的です。徒歩15分以上離れた物件を購入する際には、社員数の多い企業が近くにあるなど賃貸需要が見込めるかどうか、周辺環境を吟味しましょう。

もう1つの判断基準が、資産価値の高さです。 新築や築浅物件はそれだけで入居者が付きやすい傾向にあり、家賃回収しやすいことが予想されます。そして、物件を売却する際にも買い手が付きやすく、出口戦略の面でも評価が得やすいです。将来的にも継続して家賃回収が出来る物件であることを金融機関にアピールしましょう。

綿密で詳細な「事業計画書」(シミュレーション)

最後のポイントは、投資ローンの審査をする上で金融機関への提出が必須となる「事業計画書」です。 土地・建物に関する概要、建築費や仲介手数料など購入時の諸経費、家賃収入の推移や年間で発生する諸経費など数値の詳細が記されており、購入したい物件が長期的に収益を見込めることを示します。

事業計画書は、実際に起こりうるリスクを綿密にシミュレーションして作成し、金融機関との面談で細部に突っ込まれても、ぬかりなく答えられる根拠を用意しておきましょう。

固定金利と変動金利はどちらがいい?

不動産投資の収益性を左右する諸経費のうちの1つが金利です。 投資ローンも「固定金利」と「変動金利」のどちらかを個人で選択することになり、どちらを選ぶかによって総返済額に大きな差が生じます。 購入者にとって頭を悩ます問題ですが、それぞれの持つメリットデメリットを把握して適当な判断をしましょう。

変動金利のメリットデメリット

変動金利の大きな特徴は、半年に一度見直しがあることです。 低金利時代が約20年続く日本では、見直しされることにより上昇リスクが懸念されます。 しかし、それでも変動金利を選ぶ方が圧倒的に多いのが現状です。

メリット  デメリット
 ・金利が下落すると返済額が減少する ・金利が上昇すると返済額が増加する
 ・固定金利よりも低金利の傾向にある ・返済計画が立てづらい
  ・変動リスクによる不安がつきまとう

変動金利の商品によっては、金利の上昇時に備えたルールが存在します。 5年間は返済額が据え置きである「5年ルール」と、借入が5年経過後の6年目からは返済金額は125%の金額までしか上げることができない「125%ルール」です。 この2つを知っておくと、変動金利を選択後に急激な利上げが起こった際もリスクヘッジに役立つかもしれません。

固定金利のメリットデメリット

固定金利には5年、10年と期間を選択ぶことができる「期間選択型」と、借入している間は一律である「全期間固定型」があります。

メリット  デメリット
・返済計画が立てやすい ・変動金利よりも高金利の傾向にある
・変動リスクによる不安がない  ・市場金利が下落しても一律である

 変動金利と対照的な特徴を持つ固定金利は、安定した返済計画を立てたい方にはお勧めです。 しかし、総返済額が高くなってしまうため投資ローンとして「収益性」に重きをおくと、不動産投資には不向きと言えます。

今後の金利はどうなる?

ローンを組む人にとって、昨今の低金利水準がいつまで続くのかは重大な問題です。 変動金利は短期プライムレート、固定金利は長期プライムレートが基準となっており、その影響を受けて決定されると言われています。固定金利は10年物国債の利回りに連動しており、過去の推移も酷似しているため変動の予測がしやすいでしょう。

2020年に流行し始めた新型コロナウイルスやロシアとウクライナによる戦争の影響を受け、世界的なインフレが深刻化しています。2022年は世界各国で金利が上昇し、特にアメリカは急激な利上げを行い円安にも拍車がかかりました。 低迷していく日本の経済や世界的な利上げに逆向した状況で、このまま低金利が継続されるのか消費者は判断に悩まされるでしょう。

しかし、物価上昇により企業や家計を圧迫している現状で、金融機関もローンから得られる収益をとても重要な柱です。急激な利上げは破綻する者を増加させ、借入する者を減少させるため、金融機関側としては思い切った利上げはできないのではないか、と分析します。 2022年12月に行われた日銀の政策決定会合では、長期金利の変動幅を0.25から0.50%にする決定がなされ、事実上の利上げが決定されました。 現・日銀総裁である黒田東彦氏は2023年4月に満期を迎えますが、2023年3月に行われた任期中最後となる同会合では、金融緩和政策の現状維持を決定しました。

日銀総裁の交代により、金融政策の方針に多少の修正はあるかもしれませんが、このような背景を加味すると、利上げが行われたとしても微量幅ではないかと推測されます。

ローン返済シミュレーション

長期に渡るローンは、返済不能になってしまうと最悪のケースでは自己破産しなくてはなりません。 滞りなく返済を行うためには、事前のシミュレーションがとても大切です。

毎月の返済額、総返済額、利息総額のシミュレーション

それでは、実際に諸条件を設定して返済シミュレーションをしてみましょう。 尚、借り換えとボーナス払いは行わないものとし、不動産投資初心者向けの元利均等方式を用いた計算結果で示します。

・仮定条件:新築、元本3,000万円、金利2.0%、返済期間20年
・結果:月々の返済額151,765円、総返済額36,423,600円(うち利息総額:6,423,600円)

シミュレーション数値を目の当たりにすると、利息総額に驚くとともに金利がいかに重要かを気付かされます。

金利の違いによる月々の返済額、総返済額の違い

諸条件を設定したシミュレーションで、金利が重要であることが改めて分かったかと思います。 次に同じ仮定条件として、金利の違いによる結果を確認してみましょう。

・パターンA:
新築、元本3,000万円、金利1.8%、返済期間20年
→結果:月々の返済額148,939円、総返済額35,745,555円(うち利息総額:5,745,555円)


・パターンB:
新築、元本3,000万円、金利2.3%、返済期間20年
→結果:月々の返済額:156,064円、総返済額37,455,383円(うち利息総額:7,455,383円)


・パターンC:
新築、元本3,000万円、金利2.5%、返済期間20年
→結果:月々の返済額158,970円、総返済額38,153,008円(うち利息総額:8,153,008円)

仮定条件と比較するとわずかな金利差でも、総返済額には大きな影響を及ぼします。 また、パターンAとパターンCでは総返済額に230万円以上の差が生まれ、これでは不動産投資のキャッシュフローが全く別物になってしまうでしょう。 投資ローンを組む際には、手間と時間をかけてでも金融機関の審査を受け、慎重に比較しましょう。

住宅ローンとの違いは?

投資ローンと住宅ローンは、一見似たように思えますが内容は全くの別物です。 具体的な相違点とそれぞれの特性を挙げていきましょう。

  住宅ローン  投資ローン
借入目的 本人の居住用 不動産投資用
返済期間 25~35年 20~35年
返済原資 給与などによる所得が主 家賃収入が主
融資額 年収の5~8倍程度 年収の10~20倍程度
金利 0.5~2%程度 1.5~5%程度
融資基準 本人の属性を重視 本人の属性、物件の収益性を重視
契約名義 個人に限る 個人・法人ともに可

住宅ローンは自宅として自らが居住することが目的で、安定した暮らしを送ることができるよう投資ローンよりも金利が優遇されます。 ただし、給与などの所得から毎月のローン返済をするため、返済終了時が70歳前後となるよう制限されることが多いようです。反対に投資ローンは入居者からの家賃収入を返済に充てるため、物件の収益性や資産状況次第では、高齢者でも借り入れができる場合があります。

まとめ

本記事では、不動産投資における投資ローンについて解説しました。 不動産投資における融資は、年々厳格化されているのが現状で想像以上にハードルが高くなっています。 ポイントである「属性」や「物件力」の基準をしっかりクリアし、最終ゴールは収入と支出のバランスがとれたシミュレーションを重ねて不動産投資を成功させることです。 不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンの金利相場を解説!審査で重視するポイントは?

  • 融資・ローン
  • 審査

投資をしたくても、高額商品であるがゆえになかなか一歩踏み出せないのが不動産投資。意を決して購入の申し込みをすると、次は「ローン審査」という高い壁が待っています。このハードルが高く諦めてしまったり、重い腰がなかなか上がらない方は少なくありません。

今回は不動産投資ローンの相場、融資の際の金融機関によるチェックポイント、固定金利・変動金利の違いについて解説します。また、条件ごとのローン返済シミュレーションもご紹介しますので、最後までご覧ください。

金融機関別不動産投資ローンの相場

不動産投資を行う際に利用する不動産投資ローンは、本人の居住用ではなく第三者に貸して家賃収入を得ることに目的を限定したものです。

中でも、ある程度の審査基準や条件が定められた「アパートローン(パッケージ型)」と、定められた条件がなく金融機関の判断で個別に審査する「プロパーローン(オーダーメイド型)」の2種類に大別されます。

日本では2023年現在も低金利水準が続いていますが、投資ローンの金利は住宅ローンと比較すると高めの設定です。アパートローンの金利相場について金融機関別にみていきましょう。

メガバンク・都市銀行

日本におけるメガバンクは「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」の3行とされています。 都市銀行は「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」の3行に「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」を加えた5行とされています。 全国どこにでも存在するため融資対象が全国と幅広い上に窓口相談を行いやすい反面、融資条件が厳しく設けられているのが特徴です。メガバンク、都市銀行それぞれに大きな金利幅はありません。 融資審査を通過することはなかなか難儀ですが、承認を得られると良い条件で借り入れができます。

・金利相場:1%~2%

地方銀行

地方銀行とはその名の通り、一部の地域・地方で限定的に存在する銀行です。 「福岡銀行」「横浜銀行」「四国銀行」など県名や県庁所在地名、地方名が入っているものもあれば、「十六銀行」「七十七銀行」という数字が使われた銀行も含まれます。 主な融資対象エリアは、本店が所在する県および隣接する県限定されていますが、メガバンクよりも金利が低いことが多く、審査基準も緩くなることが特徴です。

・金利相場:1~4%

信用金庫信用組合

融資対象エリアは地方銀行よりも更に絞られたエリアが対象で、地域密着型と言えるでしょう。 借り入れするためには、投資物件がエリア内に存在していること、もしくはエリア内に居住していることが条件です。 信用金庫・信用組合は利益目的である銀行と異なり、地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした共同組織なので、親身になって相談を受けてくれるでしょう。 寛容な姿勢を持っているため、メガバンクや地方銀行よりも存在は薄いですが、不動産投資ローンを検討する際には必ず視野に入れておきましょう。

・金利相場:2~3%

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、100%政府による出資の金融機関です。国民の生活向上が目的で、銀行からの借り入れが難しい方にとっての救世主的な金融機関と言えるでしょう。 日本政策公庫では、「不動産投資」ではなく「不動産賃貸業」としての見方をします。そのため投資ローンという概念がなく、あくまで「事業」視点での借り入れです。 不動産経営が事業として成り立つことが審査の上で最も重要になります。

・金利相場:1~2%(固定金利に限る)

銀行ほど本人の属性は重視されず、良心的なのは固定金利のみを採用していることです。金利変動リスクに伴う心不安要素がなく、不動産経営における計画が立てやすくなります。

ノンバンク系

ユーザーからお金を預かる預金業務を行わず、融資など貸付業務に特化した金融機関です。 融資エリアは広めに設定されており、全国の主要都市が対象になっています。比較的に融資審査が緩く、銀行のローン審査で高く評価されなかった場合でも、ノンバンクでは融資を受けられるかもしれません。

・金利相場:1~5%

※上記はあくまで相場ですので、物件の収益性や本人の属性、自己資金などにより決定される金利は異なります。

金融機関が審査するポイントとは?

2018年に発生したいわば「かぼちゃの馬車」事件をきっかけに投資ローンが厳格化され、現在はプロパーローンを組める人が限定されるようになりました。 そのため、投資初心者の方は基本的にアパートローンで借り入れを行うことでしょう。 本章では、融資審査の際に金融機関からチェックされるポイントについて項目ごとにお伝えします。

年収や勤続年数、金融資産などの「属性」

借り入れ審査の際に見られる「属性」とは、主に年収・勤続年数・預貯金などの金融資産です。 金融機関の判断基準は、貸したお金が滞りなく最後まで返済されるかどうかがポイントになります。金融機関にとっての「いい属性」とは、言い換えると「安定していること」でしょう。 医師や税理士を除く個人事業主は安定さに欠けていると判断され、融資のハードルは高くなりがちです。

【年収】

とても重要な判断ポイントで、基準としては700万円以上が1つの目安になります。 高額な商品である不動産は、リスクが発生し返済に充てる家賃収入が減ってしまうと給与から手出しをしなくてはいけません。家賃収入に頼りすぎてしまい、リスクが起こった際の返済能力が不十分では金融機関の審査通過は難しいでしょう。

【勤続年数】

勤続年数は3年以上が望ましいです。例え年収が高くても勤続年数が短いと退職や給与減少が懸念されるでしょう。最低でも直近2~3年以上の安定した収入と勤続年数が必要です。

【金融資産】

空室や修繕にかかる急な出費に対応できる預金が十分にあることは必須条件です。預金が少ないと浪費癖がある人、計画性のない人と判断されてしまうので注意しましょう。

立地や資産価値などの「購入する物件」の状況

属性と同じぐらい重要視されるのが立地や資産などの「物件力」です。 不動産投資が成功するかどうかは、立地で全てが決定すると言われています。利便性の高い駅から近い物件は、築古物件になっても入居者から好まれ続け、高い賃貸需要が見込めるでしょう。 駅まで徒歩7分以内で行けることが理想的です。徒歩15分以上離れた物件を購入する際には、社員数の多い企業が近くにあるなど賃貸需要が見込めるかどうか、周辺環境を吟味しましょう。

もう1つの判断基準が、資産価値の高さです。 新築や築浅物件はそれだけで入居者が付きやすい傾向にあり、家賃回収しやすいことが予想されます。そして、物件を売却する際にも買い手が付きやすく、出口戦略の面でも評価が得やすいです。将来的にも継続して家賃回収が出来る物件であることを金融機関にアピールしましょう。

綿密で詳細な「事業計画書」(シミュレーション)

最後のポイントは、投資ローンの審査をする上で金融機関への提出が必須となる「事業計画書」です。 土地・建物に関する概要、建築費や仲介手数料など購入時の諸経費、家賃収入の推移や年間で発生する諸経費など数値の詳細が記されており、購入したい物件が長期的に収益を見込めることを示します。

事業計画書は、実際に起こりうるリスクを綿密にシミュレーションして作成し、金融機関との面談で細部に突っ込まれても、ぬかりなく答えられる根拠を用意しておきましょう。

固定金利と変動金利はどちらがいい?

不動産投資の収益性を左右する諸経費のうちの1つが金利です。 投資ローンも「固定金利」と「変動金利」のどちらかを個人で選択することになり、どちらを選ぶかによって総返済額に大きな差が生じます。 購入者にとって頭を悩ます問題ですが、それぞれの持つメリットデメリットを把握して適当な判断をしましょう。

変動金利のメリットデメリット

変動金利の大きな特徴は、半年に一度見直しがあることです。 低金利時代が約20年続く日本では、見直しされることにより上昇リスクが懸念されます。 しかし、それでも変動金利を選ぶ方が圧倒的に多いのが現状です。

メリット  デメリット
 ・金利が下落すると返済額が減少する ・金利が上昇すると返済額が増加する
 ・固定金利よりも低金利の傾向にある ・返済計画が立てづらい
  ・変動リスクによる不安がつきまとう

変動金利の商品によっては、金利の上昇時に備えたルールが存在します。 5年間は返済額が据え置きである「5年ルール」と、借入が5年経過後の6年目からは返済金額は125%の金額までしか上げることができない「125%ルール」です。 この2つを知っておくと、変動金利を選択後に急激な利上げが起こった際もリスクヘッジに役立つかもしれません。

固定金利のメリットデメリット

固定金利には5年、10年と期間を選択ぶことができる「期間選択型」と、借入している間は一律である「全期間固定型」があります。

メリット  デメリット
・返済計画が立てやすい ・変動金利よりも高金利の傾向にある
・変動リスクによる不安がない  ・市場金利が下落しても一律である

 変動金利と対照的な特徴を持つ固定金利は、安定した返済計画を立てたい方にはお勧めです。 しかし、総返済額が高くなってしまうため投資ローンとして「収益性」に重きをおくと、不動産投資には不向きと言えます。

今後の金利はどうなる?

ローンを組む人にとって、昨今の低金利水準がいつまで続くのかは重大な問題です。 変動金利は短期プライムレート、固定金利は長期プライムレートが基準となっており、その影響を受けて決定されると言われています。固定金利は10年物国債の利回りに連動しており、過去の推移も酷似しているため変動の予測がしやすいでしょう。

2020年に流行し始めた新型コロナウイルスやロシアとウクライナによる戦争の影響を受け、世界的なインフレが深刻化しています。2022年は世界各国で金利が上昇し、特にアメリカは急激な利上げを行い円安にも拍車がかかりました。 低迷していく日本の経済や世界的な利上げに逆向した状況で、このまま低金利が継続されるのか消費者は判断に悩まされるでしょう。

しかし、物価上昇により企業や家計を圧迫している現状で、金融機関もローンから得られる収益をとても重要な柱です。急激な利上げは破綻する者を増加させ、借入する者を減少させるため、金融機関側としては思い切った利上げはできないのではないか、と分析します。 2022年12月に行われた日銀の政策決定会合では、長期金利の変動幅を0.25から0.50%にする決定がなされ、事実上の利上げが決定されました。 現・日銀総裁である黒田東彦氏は2023年4月に満期を迎えますが、2023年3月に行われた任期中最後となる同会合では、金融緩和政策の現状維持を決定しました。

日銀総裁の交代により、金融政策の方針に多少の修正はあるかもしれませんが、このような背景を加味すると、利上げが行われたとしても微量幅ではないかと推測されます。

ローン返済シミュレーション

長期に渡るローンは、返済不能になってしまうと最悪のケースでは自己破産しなくてはなりません。 滞りなく返済を行うためには、事前のシミュレーションがとても大切です。

毎月の返済額、総返済額、利息総額のシミュレーション

それでは、実際に諸条件を設定して返済シミュレーションをしてみましょう。 尚、借り換えとボーナス払いは行わないものとし、不動産投資初心者向けの元利均等方式を用いた計算結果で示します。

・仮定条件:新築、元本3,000万円、金利2.0%、返済期間20年
・結果:月々の返済額151,765円、総返済額36,423,600円(うち利息総額:6,423,600円)

シミュレーション数値を目の当たりにすると、利息総額に驚くとともに金利がいかに重要かを気付かされます。

金利の違いによる月々の返済額、総返済額の違い

諸条件を設定したシミュレーションで、金利が重要であることが改めて分かったかと思います。 次に同じ仮定条件として、金利の違いによる結果を確認してみましょう。

・パターンA:
新築、元本3,000万円、金利1.8%、返済期間20年
→結果:月々の返済額148,939円、総返済額35,745,555円(うち利息総額:5,745,555円)


・パターンB:
新築、元本3,000万円、金利2.3%、返済期間20年
→結果:月々の返済額:156,064円、総返済額37,455,383円(うち利息総額:7,455,383円)


・パターンC:
新築、元本3,000万円、金利2.5%、返済期間20年
→結果:月々の返済額158,970円、総返済額38,153,008円(うち利息総額:8,153,008円)

仮定条件と比較するとわずかな金利差でも、総返済額には大きな影響を及ぼします。 また、パターンAとパターンCでは総返済額に230万円以上の差が生まれ、これでは不動産投資のキャッシュフローが全く別物になってしまうでしょう。 投資ローンを組む際には、手間と時間をかけてでも金融機関の審査を受け、慎重に比較しましょう。

住宅ローンとの違いは?

投資ローンと住宅ローンは、一見似たように思えますが内容は全くの別物です。 具体的な相違点とそれぞれの特性を挙げていきましょう。

  住宅ローン  投資ローン
借入目的 本人の居住用 不動産投資用
返済期間 25~35年 20~35年
返済原資 給与などによる所得が主 家賃収入が主
融資額 年収の5~8倍程度 年収の10~20倍程度
金利 0.5~2%程度 1.5~5%程度
融資基準 本人の属性を重視 本人の属性、物件の収益性を重視
契約名義 個人に限る 個人・法人ともに可

住宅ローンは自宅として自らが居住することが目的で、安定した暮らしを送ることができるよう投資ローンよりも金利が優遇されます。 ただし、給与などの所得から毎月のローン返済をするため、返済終了時が70歳前後となるよう制限されることが多いようです。反対に投資ローンは入居者からの家賃収入を返済に充てるため、物件の収益性や資産状況次第では、高齢者でも借り入れができる場合があります。

まとめ

本記事では、不動産投資における投資ローンについて解説しました。 不動産投資における融資は、年々厳格化されているのが現状で想像以上にハードルが高くなっています。 ポイントである「属性」や「物件力」の基準をしっかりクリアし、最終ゴールは収入と支出のバランスがとれたシミュレーションを重ねて不動産投資を成功させることです。 不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。