2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

実質利回りとは?表面利回りとの違い・計算方法を解説

  • 利回り

今のご時世、持っている財産を少しでも増やしたいと誰もが思うことでしょう。そこで、この記事では投資をするときによく耳にする実質利回りとはどういうもので、どのようなことに注意しておけば投資で成功できるのかを紹介します。

実質利回りとは

不動産投資をするときの基準として、実質利回りは重要な要素になります。ここでは、実質利回りとはどういうものなのかを詳しく見てみましょう。

利回りとは?

「利回りがいくらなので今が投資をするタイミング」などといった広告を目にすることがあるのではないでしょうか?その場合の利回りとは一体どういうものなのか具体的に紹介します。
利回りというのは、投資をするときの投資金額に対する収益率のことです。この収益には、運営していくうえで稼げる収益と、売却したときに得られる収益の両方を合わせてから計算されます。
また、1年間に得られる年利回りのことを利回りということがあります。このような投資信託の場合は、分配金と呼ぶのが一般的です。 分配金とは、投資信託の運用期間を通じて変動した基準価額に応じて運用会社の判断で支払われるものなのです。

利率とは?

利率というのは、銀行などで債券や預金金額に対する収益の割合のことをいいます。このように利回りと利率というものは違うものです。混同しないようにしましょう。

表面利回りとは?

年間の家賃収入を、物件価格で割っても度をしたものを表面利回りと言います。投資用のアパートやマンションを探す時に、目安とする利回りがこの表面利回りになるのです。

表面利回り=年間収入÷物件価格×100

という計算式で求められます。表面利回りの場合、年間にかかる諸経費が入っていないため、年間の利益率が高くなります。

実質利回りとは?

実質利回りというのは、年間にかかる諸経費と購入時の諸経費を反映させた利回りのことです。この実質利回りが投資したお金に対して純収入になる利率ということになります。

実質利回り=(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

という計算式で求められます。この実質利回りがトータルで100パーセントを超えると投資金以上稼げたことになるのです。このことを「元が取れる」と言われる率のことになります。
実質利回りの場合は、分子が表面利回りよりも小さくなり分母が大きくなるため、表面利回りよりも利益率が下がるわけです。

想定利回りとは?

想定利回りは、一棟物件であれば全室・全期間満室、区分マンションであれば全期間満室を想定した利回りのことです。表面利回りがそのまま想定利回りになるケースもあります。想定利回りは、以下の計算式で算出します。

想定利回り=満室時の家賃収入÷物件価格×100

区分マンションの場合は1年を通して稼働していることもありますが、ある程度の部屋数のある一棟物件の場合は1年を通して全室稼働しているケースは稀です。このことを踏まえると、一棟物件の想定利回りは参考程度にするのがよいかもしれません。

実質利回りの特徴

ここまで説明した3つの利回りの中でも、「実質利回り」は投資の判断の際に必要不可欠な指標です。その理由や実質利回りの特徴をさらに掘り下げて説明します。

投資の判断には重要

実質利回りは、物件購入や売却のタイミングを計るといった投資の判断において重要な指標です。同じ利回りでも、諸経費を反映させていない「表面利回り」は、大まかな利益率を把握するのに向いています。一方、諸費用を反映させている「実質利回り」は、キャッシュフローに近いので投資の判断をするのに向いているのです。

この2つの利回りの使い分けの例としては、物件検討時に数多くの物件を比較する際に「表面利回り」を用いて絞り込み、その後、本当に購入するかを「実質利回り」を用いて判断するといった流れが考えられます。 このように利回りの特性を理解して、目的に合わせて使うことが不動産投資では重要です。

計算に必要な項目が多い

実質利回りを算出するためには、保険料、税金、管理費/管理委託費、リフォーム費用など数多くの項目にかかる金額が必要になります。これらの金額が現実に近いほど、精度の高い実質利回りを算出することが可能です。
逆にいうと、各項目にかかる金額がズレてしまうと、実質利回りが現実とかけ離れてしまい投資の判断に使えなくなってしまいます。とはいえ、全ての費用を正確に割り出すのは難しい面もあります。ご自身で費用の見積もりができない場合は、不動産会社・税理士・リフォーム会社などに協力してもらいながら費用を割り出しましょう。

不確定な要素が含まれる

実質利回りはキャッシュフローに近い利益率だとお伝えしましたが、 不確定な要素が含まれるという点には注意しましょう。つまり、「実質利回りイコール現実の利回り」にはなりにくいということです。
例えば、諸経費の一つである管理委託費は、管理会社によって報酬割合が違います。管理会社の業界団体である日本賃貸住宅管理協会(日管協)の「短観」(2022年11月発表分)によると、所属する管理会社などの報酬設定は以下のように差があります。

報酬割合 該当管理会社の割合
1〜2% 4%
3% 18.8%
4% 31.7%
5% 41%
6〜9% 3.8%

この他にも、修繕費やリフォーム費も地域や業者によって、かなり変わってきます。さらに、台風などの影響で想定していた修繕費を大きく上回る可能性もあります。このようなことを考えると、実質利回りだけではなく、他の指標も使って投資の判断をすることが得策といえます。

不動産投資の実質利回りの計算に必要な項目

実質利回りを計算するときに差し引く諸費用には、どのようなものがあるのか見てみましょう。アパートやマンションなどの不動産を運用するときは、どうしても諸費用が必要になってきます。不動産投資を行うときに必要な経費には、保険料・税金・管理費/管理委託費・リフォーム費用・入居準備費用・ローン関連費用・その他の費用が掛かります。 それぞれの費用はどういうものかを紹介します。

保険料

何か災害にあったときのことを考えてから火災保険は必須で、あとは地震保険、損害保険などの費用が必要になります。

税金

不動産を保有していると毎年かかる税金として、固定資産税と都市計画税が必要になります。取得時にかかる税金としては、不動産取得税・印紙税や登録免許税がかかります。

管理委託費・管理費

不動産会社や管理会社に入居者や物件の管理を委託する場合は、管理委託費を支払わなければいけません。なお、自己管理の場合は管理委託費が不要です。
また、区分マンションを所有している場合は、共有部分にかかる管理費が必要です。ただし、共有部分の管理費に関しては、入居者に支払ってもらう契約にした場合は実質的なオーナー負担が必要ありません。

リフォーム費用

マンションなどが劣化していき修繕などが必要になった時は、修繕費用やリフォーム費用を負担しなければいけなくなります。この費用に関しては持ち主の負担になるのです。修繕費に関しては、築年数が長くなればなるほど増加していきます。

入居準備費用

入居者を迎え入れるときに、不動産会社に支払う仲介手数料、鍵の交換費用・部屋の清掃費用などがかかります。

ローン関連費用

もし、取得している不動産がローンを組んでから購入している場合は、ローンの返済費用を支払わなければいけません。

その他の費用

毎年の税金の申告をするときに税理士などに依頼する場合は、手数料を支払わなければいけなくなります。また、中古の区分物件や一棟物件を取得した場合などは、不動産会社へ支払う仲介手数料などが発生します。

不動産投資の実質利回りの計算方法

ここまで解説してきた不動産投資の実質利回りの具体的な計算方法を紹介します。

必要な項目の数値を用意

不動産投資の実質利回りを計算するには、以下の4つの数値を用意する必要があります。

  • 年間収入
  • 年間の諸経費
  • 物件価格
  • 購入時の諸経費

上記のうち家賃収入は、想定される空室率を反映して割り出すと精度が高くなります。また、 年間にかかる諸経費は不明な項目があれば仮の金額を入れて計算するとよいでしょう。物件価格や購入時の諸経費については、購入時の売買契約書や関連書類を確認してみましょう。

計算式を用いて算出

上記の「必要な項目の数値」を計算式にあてはめると、実質利回りが割り出せます。

実質利回り=(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

実際に実質利回りを算出してみると、計算自体は比較的簡単でも「必要な項目の数値」を用意するのが大変なことがお分かりいただけると思います。特に数多くの諸経費を全て用意するのは手間がかかります。

実質利回りと表面利回りのシミュレーション

実際にアパートを購入して運用した場合の家賃収入の実例を紹介します。中古アパートを1棟購入した場合の購入費用や必要な年間経費、実質の表面利回りと実利回りを紹介します。

購入費用が1,200万円、年間の家賃収入として150万円(月に12万5,000円×12カ月)とした場合、年間の諸費用(管理費・修繕積立金・固定資産税・その他諸経費)としては18万円かかります。
この場合の表面利回り=150万円/1,200万円となり年間の表面利回りは12.5パーセントになります。 この場合の実利回り=(150万円―18万円)/1,200万円となり年間の実質利回りは10パーセントになります。

このように、表面利回りと実質利回りには2.5パーセントもの開きが出てくるのです。不動産投資をするときには、表面利回りではなく実利回りで何パーセントになるのかをしっかり計算してから購入するようにしましょう。これをみると実質利回りが10%もあるので、十分に元がとれるのではと思われます。

しかし、注意しなければいけない事があります。それが、高利回りでも、修繕費などが必要な場合は、実際にはもって低い利回りになると予測できます。そうなると、いくら表面利回りが良くても、維持費用に膨大なお金が必要になる場合は、実質利回りが落ちてしまうので要注意です。

理想的な実質利回りの目安と最低ライン

一般的にいわれている理想的な実質利回りの目安と最低ラインを確認しましょう。

新築物件の場合

実質利回りの目安や最低ラインは、物件の種類・築年数・立地・借り入れ金利などによって変わってきます。
新築アパートの場合、理想的な実質利回りは5%以上、最低ラインは3%程度が目安といわれています。理由は、アパートローンの金利相場が一般的に2〜5%台だからです。
不動産投資では、少なくともローン金利を上回る実質利回りを確保しないと赤字経営に陥ってしまいます。つまり、最低ラインを下回る実質利回りでも、それ以下の金利で融資を受けていれば黒字になる可能性もあるということです。

中古物件の場合

中古物件の実質利回りは、物件の価格が安い分、新築物件よりも高くなる傾向があります。同じエリアで条件が似た物件であれば、築年数が古くなるほど高利回りになります。
仮に、新築物件よりも1%程度、実質利回りが高いと想定すると、理想的なのは6%以上、最低ラインは4%程度となります。ただし、中古物件の利回りはまさにケースバイケースです。実質利回りが10〜20%を超えることもあるため、競合物件と比較することが大切です。

不動産投資の実質利回りを下げる要因

不動産投資の実質利回りを下げる典型的な要因について説明します。

投資物件が旧耐震基準

耐震基準は更新されていて築年数が古いマンションなどは、旧耐震基準しか満たしていないことがほとんどです。このような不動産の場合、地震で倒壊する恐れがあります。耐震基準を満たすような工事をするときに、費用が高額になる恐れがあるのです。地震保険の掛け金が高くなります。

住宅の管理が悪い

安く不動産を手に入れたとしても、管理状態が悪い場合、建物自体が傷んでいる恐れが高いので、修繕費用が高くつくことがあります。トータル費用としては、高くなることになるのです。また、借主がなかなか付かずに空き室が多くなる確率が高くなります。

立地条件が悪い

液から遠くて通勤、通学に不便な立地の場合、なかなか借り手が付きにくくなるので収益が見込めない時が出てきます。川のすぐそばなどの場合は、川が氾濫して水害の被害にあうこともあるのです。

実質利回りが高い物件を選ぶポイント

実質利回りを高める3つの要素は、「入居率を高める」「家賃を上げる」「経費を抑える」です。ここでは、その中でも特に重要な「入居率を高める」「家賃を上げる」を実現するためのポイントを紹介します。

賃貸需要が高いエリアか

賃貸需要が高い(部屋を借りたい人がたくさんいる)エリアは、それだけ入居率を高めやすく、家賃も割高に設定しやすいといえます。では、入居者はどのようなことを重視して部屋選びをしているのでしょうか。

不動産業界の団体である全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)が2023年2月に発表した「不動産の日アンケート」では、 部屋を借りるときに家賃以外に重視するポイントとして、以下のような内容が挙げられていました。

  • 交通の利便性がよい 39.6%
  • 周辺・生活環境がよい:29.9%
  • コンビニ・スーパーなど商業施設が近い:16.3%

上記を参考にすると、以下の条件に該当するのが賃貸需要の高いエリアと考えられます。

  • 最寄り駅から徒歩10分以内
  • 周辺に嫌悪施設やゴミ屋敷がない
  • 近所に公園がある
  • 近所に人気の商業施設がある

人気のある設備を備えているか

入居率を高めて家賃を上げるためには、住宅設備が充実していることもポイントになります。ただし、古い設備や、魅力が感じられない設備では意味がありません。あくまでも「入居者に人気のある設備を備えていること」が大切です。

注意したいのは人気のある設備はトレンドによって変わることです。例えば、賃貸住宅新聞が毎年行っている「入居者に人気の設備ランキング」の2022年版では、以下のようなアイテムの人気が高かったです。

単身者向け  ファミリー向け
1位:インターネット無料 1位:インターネット無料
2位:エントランスのオートロック 2位:追い炊き機能
3位:高速インターネット 3位:エントランスのオートロック

単身者向けとファミリー向けでは、住宅設備のニーズに違いがあることも覚えておきましょう。

管理が行き届いているか

清掃やトラブル対応などの管理に不備があると、入居者が退去する確率が上がります。入居者が退去すると家賃収入がなくなり新たな費用が発生し、実質利回りを下げる要因になるので注意しましょう。
実際に、GMOの「引っ越しをした理由アンケート調査」(進学・就職・結婚など以外)では、管理に問題があって退去した割合は約3人に1人(計30%)でした。

  • 他の入居者・オーナー・管理会社とのトラブル:18%
  • 騒音問題:9%
  • 害虫:3%

入居者や物件の管理で入居率が落ちていると感じた場合は、管理会社と対策を練ったり、管理会社を変更したりといった対策が必要です。ただし、契約上すぐに管理会社を変えられない場合もあるので注意しましょう。

物件購入後に実質利回りを上げる方法

不動産を購入後に利回りを少しでも上げるための方法があります。この方法を知っておけば、利回りがグーンとアップするのではないでしょうか。ここでは、物件を購入後に利回りをアップするにはどうすれば良いのかを紹介します。

入居者の費用負担を極力減らす

不動産購入後の利回りを増やす前に、入居者がいなければ利回りどころか1円も入ってきません。そこで、入居予定者は新しい住居を探すということは、引っ越しなどもしなければいけません。引っ越し費用が掛かるので、新しい賃貸住宅を選ぶときにできるだけ初期費用が安く済むような物件を探すことでしょう。
その点を考えてから入居予定者の初期費用を少しでも減らせれば、入居率が上がり年間の利回りも上がることになります。初期費用で掛かるのは敷金・礼金・不動産会社へ渡す仲介料・初月の家賃・保険料などです。ここで減らせる費用としては敷金・礼金・初月の家賃があります。これらをできるだけもらわないようにすれば入居率がアップしますし、利回りも上がることになります。

リフォームを行う

リフォームを行なうことで入居率がアップします。特に水回りは重要で、築年数が経っていてもトイレ、キッチン、浴槽がきれいにリフォームされていれば、一気に入居率は上がるのです。

ターゲット層に合わせた広告を出す

入居率を上げるのに効果的なのが広告です。それも、ターゲット層をしっかりと見極めて、インターネット広告を出すと独身の1人暮らしからの契約が取れる確率が上がります。また、ファミリー層の入居を募集するときは、インターネットの広告と別にチラシ広告を出すと入居率がアップします。

不動産投資では利回りもですが、どのように出口戦略を考えるかも成否に影響します。以下の記事もぜひ参考にしてみて下さい。

まとめ

この記事では、不動産投資において特に重要な指標となる実質利回りについて詳しく紹介しました。実質利回りの計算の精度を上げるためには、諸費用などの多くの項目について現実に近い数値を算出する必要があります。ご自身で算出することが難しい場合は、不動産投資のプロからサポートを受けることをおすすめします。
ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

実質利回りとは?表面利回りとの違い・計算方法を解説

  • 利回り

今のご時世、持っている財産を少しでも増やしたいと誰もが思うことでしょう。そこで、この記事では投資をするときによく耳にする実質利回りとはどういうもので、どのようなことに注意しておけば投資で成功できるのかを紹介します。

実質利回りとは

不動産投資をするときの基準として、実質利回りは重要な要素になります。ここでは、実質利回りとはどういうものなのかを詳しく見てみましょう。

利回りとは?

「利回りがいくらなので今が投資をするタイミング」などといった広告を目にすることがあるのではないでしょうか?その場合の利回りとは一体どういうものなのか具体的に紹介します。
利回りというのは、投資をするときの投資金額に対する収益率のことです。この収益には、運営していくうえで稼げる収益と、売却したときに得られる収益の両方を合わせてから計算されます。
また、1年間に得られる年利回りのことを利回りということがあります。このような投資信託の場合は、分配金と呼ぶのが一般的です。 分配金とは、投資信託の運用期間を通じて変動した基準価額に応じて運用会社の判断で支払われるものなのです。

利率とは?

利率というのは、銀行などで債券や預金金額に対する収益の割合のことをいいます。このように利回りと利率というものは違うものです。混同しないようにしましょう。

表面利回りとは?

年間の家賃収入を、物件価格で割っても度をしたものを表面利回りと言います。投資用のアパートやマンションを探す時に、目安とする利回りがこの表面利回りになるのです。

表面利回り=年間収入÷物件価格×100

という計算式で求められます。表面利回りの場合、年間にかかる諸経費が入っていないため、年間の利益率が高くなります。

実質利回りとは?

実質利回りというのは、年間にかかる諸経費と購入時の諸経費を反映させた利回りのことです。この実質利回りが投資したお金に対して純収入になる利率ということになります。

実質利回り=(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

という計算式で求められます。この実質利回りがトータルで100パーセントを超えると投資金以上稼げたことになるのです。このことを「元が取れる」と言われる率のことになります。
実質利回りの場合は、分子が表面利回りよりも小さくなり分母が大きくなるため、表面利回りよりも利益率が下がるわけです。

想定利回りとは?

想定利回りは、一棟物件であれば全室・全期間満室、区分マンションであれば全期間満室を想定した利回りのことです。表面利回りがそのまま想定利回りになるケースもあります。想定利回りは、以下の計算式で算出します。

想定利回り=満室時の家賃収入÷物件価格×100

区分マンションの場合は1年を通して稼働していることもありますが、ある程度の部屋数のある一棟物件の場合は1年を通して全室稼働しているケースは稀です。このことを踏まえると、一棟物件の想定利回りは参考程度にするのがよいかもしれません。

実質利回りの特徴

ここまで説明した3つの利回りの中でも、「実質利回り」は投資の判断の際に必要不可欠な指標です。その理由や実質利回りの特徴をさらに掘り下げて説明します。

投資の判断には重要

実質利回りは、物件購入や売却のタイミングを計るといった投資の判断において重要な指標です。同じ利回りでも、諸経費を反映させていない「表面利回り」は、大まかな利益率を把握するのに向いています。一方、諸費用を反映させている「実質利回り」は、キャッシュフローに近いので投資の判断をするのに向いているのです。

この2つの利回りの使い分けの例としては、物件検討時に数多くの物件を比較する際に「表面利回り」を用いて絞り込み、その後、本当に購入するかを「実質利回り」を用いて判断するといった流れが考えられます。 このように利回りの特性を理解して、目的に合わせて使うことが不動産投資では重要です。

計算に必要な項目が多い

実質利回りを算出するためには、保険料、税金、管理費/管理委託費、リフォーム費用など数多くの項目にかかる金額が必要になります。これらの金額が現実に近いほど、精度の高い実質利回りを算出することが可能です。
逆にいうと、各項目にかかる金額がズレてしまうと、実質利回りが現実とかけ離れてしまい投資の判断に使えなくなってしまいます。とはいえ、全ての費用を正確に割り出すのは難しい面もあります。ご自身で費用の見積もりができない場合は、不動産会社・税理士・リフォーム会社などに協力してもらいながら費用を割り出しましょう。

不確定な要素が含まれる

実質利回りはキャッシュフローに近い利益率だとお伝えしましたが、 不確定な要素が含まれるという点には注意しましょう。つまり、「実質利回りイコール現実の利回り」にはなりにくいということです。
例えば、諸経費の一つである管理委託費は、管理会社によって報酬割合が違います。管理会社の業界団体である日本賃貸住宅管理協会(日管協)の「短観」(2022年11月発表分)によると、所属する管理会社などの報酬設定は以下のように差があります。

報酬割合 該当管理会社の割合
1〜2% 4%
3% 18.8%
4% 31.7%
5% 41%
6〜9% 3.8%

この他にも、修繕費やリフォーム費も地域や業者によって、かなり変わってきます。さらに、台風などの影響で想定していた修繕費を大きく上回る可能性もあります。このようなことを考えると、実質利回りだけではなく、他の指標も使って投資の判断をすることが得策といえます。

不動産投資の実質利回りの計算に必要な項目

実質利回りを計算するときに差し引く諸費用には、どのようなものがあるのか見てみましょう。アパートやマンションなどの不動産を運用するときは、どうしても諸費用が必要になってきます。不動産投資を行うときに必要な経費には、保険料・税金・管理費/管理委託費・リフォーム費用・入居準備費用・ローン関連費用・その他の費用が掛かります。 それぞれの費用はどういうものかを紹介します。

保険料

何か災害にあったときのことを考えてから火災保険は必須で、あとは地震保険、損害保険などの費用が必要になります。

税金

不動産を保有していると毎年かかる税金として、固定資産税と都市計画税が必要になります。取得時にかかる税金としては、不動産取得税・印紙税や登録免許税がかかります。

管理委託費・管理費

不動産会社や管理会社に入居者や物件の管理を委託する場合は、管理委託費を支払わなければいけません。なお、自己管理の場合は管理委託費が不要です。
また、区分マンションを所有している場合は、共有部分にかかる管理費が必要です。ただし、共有部分の管理費に関しては、入居者に支払ってもらう契約にした場合は実質的なオーナー負担が必要ありません。

リフォーム費用

マンションなどが劣化していき修繕などが必要になった時は、修繕費用やリフォーム費用を負担しなければいけなくなります。この費用に関しては持ち主の負担になるのです。修繕費に関しては、築年数が長くなればなるほど増加していきます。

入居準備費用

入居者を迎え入れるときに、不動産会社に支払う仲介手数料、鍵の交換費用・部屋の清掃費用などがかかります。

ローン関連費用

もし、取得している不動産がローンを組んでから購入している場合は、ローンの返済費用を支払わなければいけません。

その他の費用

毎年の税金の申告をするときに税理士などに依頼する場合は、手数料を支払わなければいけなくなります。また、中古の区分物件や一棟物件を取得した場合などは、不動産会社へ支払う仲介手数料などが発生します。

不動産投資の実質利回りの計算方法

ここまで解説してきた不動産投資の実質利回りの具体的な計算方法を紹介します。

必要な項目の数値を用意

不動産投資の実質利回りを計算するには、以下の4つの数値を用意する必要があります。

  • 年間収入
  • 年間の諸経費
  • 物件価格
  • 購入時の諸経費

上記のうち家賃収入は、想定される空室率を反映して割り出すと精度が高くなります。また、 年間にかかる諸経費は不明な項目があれば仮の金額を入れて計算するとよいでしょう。物件価格や購入時の諸経費については、購入時の売買契約書や関連書類を確認してみましょう。

計算式を用いて算出

上記の「必要な項目の数値」を計算式にあてはめると、実質利回りが割り出せます。

実質利回り=(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

実際に実質利回りを算出してみると、計算自体は比較的簡単でも「必要な項目の数値」を用意するのが大変なことがお分かりいただけると思います。特に数多くの諸経費を全て用意するのは手間がかかります。

実質利回りと表面利回りのシミュレーション

実際にアパートを購入して運用した場合の家賃収入の実例を紹介します。中古アパートを1棟購入した場合の購入費用や必要な年間経費、実質の表面利回りと実利回りを紹介します。

購入費用が1,200万円、年間の家賃収入として150万円(月に12万5,000円×12カ月)とした場合、年間の諸費用(管理費・修繕積立金・固定資産税・その他諸経費)としては18万円かかります。
この場合の表面利回り=150万円/1,200万円となり年間の表面利回りは12.5パーセントになります。 この場合の実利回り=(150万円―18万円)/1,200万円となり年間の実質利回りは10パーセントになります。

このように、表面利回りと実質利回りには2.5パーセントもの開きが出てくるのです。不動産投資をするときには、表面利回りではなく実利回りで何パーセントになるのかをしっかり計算してから購入するようにしましょう。これをみると実質利回りが10%もあるので、十分に元がとれるのではと思われます。

しかし、注意しなければいけない事があります。それが、高利回りでも、修繕費などが必要な場合は、実際にはもって低い利回りになると予測できます。そうなると、いくら表面利回りが良くても、維持費用に膨大なお金が必要になる場合は、実質利回りが落ちてしまうので要注意です。

理想的な実質利回りの目安と最低ライン

一般的にいわれている理想的な実質利回りの目安と最低ラインを確認しましょう。

新築物件の場合

実質利回りの目安や最低ラインは、物件の種類・築年数・立地・借り入れ金利などによって変わってきます。
新築アパートの場合、理想的な実質利回りは5%以上、最低ラインは3%程度が目安といわれています。理由は、アパートローンの金利相場が一般的に2〜5%台だからです。
不動産投資では、少なくともローン金利を上回る実質利回りを確保しないと赤字経営に陥ってしまいます。つまり、最低ラインを下回る実質利回りでも、それ以下の金利で融資を受けていれば黒字になる可能性もあるということです。

中古物件の場合

中古物件の実質利回りは、物件の価格が安い分、新築物件よりも高くなる傾向があります。同じエリアで条件が似た物件であれば、築年数が古くなるほど高利回りになります。
仮に、新築物件よりも1%程度、実質利回りが高いと想定すると、理想的なのは6%以上、最低ラインは4%程度となります。ただし、中古物件の利回りはまさにケースバイケースです。実質利回りが10〜20%を超えることもあるため、競合物件と比較することが大切です。

不動産投資の実質利回りを下げる要因

不動産投資の実質利回りを下げる典型的な要因について説明します。

投資物件が旧耐震基準

耐震基準は更新されていて築年数が古いマンションなどは、旧耐震基準しか満たしていないことがほとんどです。このような不動産の場合、地震で倒壊する恐れがあります。耐震基準を満たすような工事をするときに、費用が高額になる恐れがあるのです。地震保険の掛け金が高くなります。

住宅の管理が悪い

安く不動産を手に入れたとしても、管理状態が悪い場合、建物自体が傷んでいる恐れが高いので、修繕費用が高くつくことがあります。トータル費用としては、高くなることになるのです。また、借主がなかなか付かずに空き室が多くなる確率が高くなります。

立地条件が悪い

液から遠くて通勤、通学に不便な立地の場合、なかなか借り手が付きにくくなるので収益が見込めない時が出てきます。川のすぐそばなどの場合は、川が氾濫して水害の被害にあうこともあるのです。

実質利回りが高い物件を選ぶポイント

実質利回りを高める3つの要素は、「入居率を高める」「家賃を上げる」「経費を抑える」です。ここでは、その中でも特に重要な「入居率を高める」「家賃を上げる」を実現するためのポイントを紹介します。

賃貸需要が高いエリアか

賃貸需要が高い(部屋を借りたい人がたくさんいる)エリアは、それだけ入居率を高めやすく、家賃も割高に設定しやすいといえます。では、入居者はどのようなことを重視して部屋選びをしているのでしょうか。

不動産業界の団体である全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)と全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)が2023年2月に発表した「不動産の日アンケート」では、 部屋を借りるときに家賃以外に重視するポイントとして、以下のような内容が挙げられていました。

  • 交通の利便性がよい 39.6%
  • 周辺・生活環境がよい:29.9%
  • コンビニ・スーパーなど商業施設が近い:16.3%

上記を参考にすると、以下の条件に該当するのが賃貸需要の高いエリアと考えられます。

  • 最寄り駅から徒歩10分以内
  • 周辺に嫌悪施設やゴミ屋敷がない
  • 近所に公園がある
  • 近所に人気の商業施設がある

人気のある設備を備えているか

入居率を高めて家賃を上げるためには、住宅設備が充実していることもポイントになります。ただし、古い設備や、魅力が感じられない設備では意味がありません。あくまでも「入居者に人気のある設備を備えていること」が大切です。

注意したいのは人気のある設備はトレンドによって変わることです。例えば、賃貸住宅新聞が毎年行っている「入居者に人気の設備ランキング」の2022年版では、以下のようなアイテムの人気が高かったです。

単身者向け  ファミリー向け
1位:インターネット無料 1位:インターネット無料
2位:エントランスのオートロック 2位:追い炊き機能
3位:高速インターネット 3位:エントランスのオートロック

単身者向けとファミリー向けでは、住宅設備のニーズに違いがあることも覚えておきましょう。

管理が行き届いているか

清掃やトラブル対応などの管理に不備があると、入居者が退去する確率が上がります。入居者が退去すると家賃収入がなくなり新たな費用が発生し、実質利回りを下げる要因になるので注意しましょう。
実際に、GMOの「引っ越しをした理由アンケート調査」(進学・就職・結婚など以外)では、管理に問題があって退去した割合は約3人に1人(計30%)でした。

  • 他の入居者・オーナー・管理会社とのトラブル:18%
  • 騒音問題:9%
  • 害虫:3%

入居者や物件の管理で入居率が落ちていると感じた場合は、管理会社と対策を練ったり、管理会社を変更したりといった対策が必要です。ただし、契約上すぐに管理会社を変えられない場合もあるので注意しましょう。

物件購入後に実質利回りを上げる方法

不動産を購入後に利回りを少しでも上げるための方法があります。この方法を知っておけば、利回りがグーンとアップするのではないでしょうか。ここでは、物件を購入後に利回りをアップするにはどうすれば良いのかを紹介します。

入居者の費用負担を極力減らす

不動産購入後の利回りを増やす前に、入居者がいなければ利回りどころか1円も入ってきません。そこで、入居予定者は新しい住居を探すということは、引っ越しなどもしなければいけません。引っ越し費用が掛かるので、新しい賃貸住宅を選ぶときにできるだけ初期費用が安く済むような物件を探すことでしょう。
その点を考えてから入居予定者の初期費用を少しでも減らせれば、入居率が上がり年間の利回りも上がることになります。初期費用で掛かるのは敷金・礼金・不動産会社へ渡す仲介料・初月の家賃・保険料などです。ここで減らせる費用としては敷金・礼金・初月の家賃があります。これらをできるだけもらわないようにすれば入居率がアップしますし、利回りも上がることになります。

リフォームを行う

リフォームを行なうことで入居率がアップします。特に水回りは重要で、築年数が経っていてもトイレ、キッチン、浴槽がきれいにリフォームされていれば、一気に入居率は上がるのです。

ターゲット層に合わせた広告を出す

入居率を上げるのに効果的なのが広告です。それも、ターゲット層をしっかりと見極めて、インターネット広告を出すと独身の1人暮らしからの契約が取れる確率が上がります。また、ファミリー層の入居を募集するときは、インターネットの広告と別にチラシ広告を出すと入居率がアップします。

不動産投資では利回りもですが、どのように出口戦略を考えるかも成否に影響します。以下の記事もぜひ参考にしてみて下さい。

まとめ

この記事では、不動産投資において特に重要な指標となる実質利回りについて詳しく紹介しました。実質利回りの計算の精度を上げるためには、諸費用などの多くの項目について現実に近い数値を算出する必要があります。ご自身で算出することが難しい場合は、不動産投資のプロからサポートを受けることをおすすめします。
ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。