2024.05.28

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンの金利相場を解説!審査で重視するポイントは?

  • 融資・ローン
  • 審査

投資をしたくても、高額商品であるがゆえになかなか一歩踏み出せないのが不動産投資。
意を決して購入の申し込みをすると、次は「ローン審査」という高い壁が待っています。このハードルが高く諦めてしまったり、重い腰がなかなか上がらない方は少なくありません。
今回は不動産投資ローンの相場、融資の際の金融機関によるチェックポイント、固定金利・変動金利の違いについて解説します。また、条件ごとのローン返済シミュレーションもご紹介しますので、最後までご覧ください。

金融機関別不動産投資ローンの相場

金融機関 金利相場
メガバンク・都市銀行 1〜2%
地方銀行 1〜4%
信用金庫信用組合 2〜3%
日本政策金融公庫 1〜2%*
ノンバンク系 1〜5%

 アパートローンの借入金利は、不動産投資において成功の可否に繋がる重要な要素で、金融機関によって大きな差が生じます。

1.    メガバンク・都市銀行
2.    地方銀行
3.    信用金庫・信用組合
4.    日本政策金融公庫
5.    ノンバンク系

各金融機関の特徴や金利相場を理解し、最適な選択をすることで長期的な安定経営に繋がるでしょう。アパートローンにおける金融機関ごとの借入金利について、以下で詳しく解説します。

メガバンク・都市銀行

金利相場:1~2%

都市銀行とは、大都市に本店を置く金融機関のことで、その中でも莫大な収益規模や資産を有する銀行をメガバンクと呼びます。全国展開できるほど安定した財務基盤を持っており、他の金融機関よりも借入金利が安いのが特徴です。大規模な融資が可能な一方で、審査基準が非常に厳しく設定されており、資産価値以外にも自身の年収や勤続年数など属性も重視されます。
メガバンクは「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」、さらに「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」を加えた5行の都市銀行とされています。

地方銀行

金利相場:1~4%

地方銀行のアパートローンは、地域密着のサービスを強みにしている場合が多いです。メガバンクと比較すると、審査基準は緩やかな傾向にあり、地域の実情に応じた柔軟な対応をしてもらえる可能性が高くなります。
金利相場はメガバンクよりもやや高めに設定されているものの、細かいニーズに応じて交渉が可能な場合もありますので、個別の条件をしっかりと確認することが大切です。融資対象エリアや居住エリアが「本店が所在する県」および「隣接する県」に限定されているケースが多いです。

信用金庫・信用組合

金利相場:2~3%

信用金庫や信用組合は小規模でありながら、地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした組織なので、エリアに根差したきめ細かいサービス提供が強みです。特に、地域の中小企業オーナーや個人投資家にとって手頃な選択肢となることが多いです。
金利相場は地方銀行と似た傾向にありますが、信用金庫や信用組合独自の補助制度や優遇条件が設けられているケースも見受けられます。融資の承認は「投資物件が管轄エリア内に存在していること」もしくは「管轄エリア内に居住していること」が条件です。

日本政策金融公庫

金利相場:1~2%(固定金利に限る)

日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、女性や高齢者向けなどの公益性が高い融資制度を多く提供しています。融資は固定金利に限られますが、それでも他の民間金融機関より低金利に設定されています。
ただし、その分審査基準は厳しいとされ、賃貸経営の事業性を評価されるようです。多くのパターンで事業計画の詳細を求められるので、きちんと提出できるように備えが必要です。
新規起業家や中小企業向けの融資プランが豊富で、不動産投資においても有利な条件で借り入れ期待できます。

ノンバンク系

金利相場:1~5%

ノンバンクとは、預金業務を行わず貸付のみを行う金融機関を指し、「消費者金融」「信販会社」「クレジットカード会社」などがこれに該当します。預金業務を行う金融機関とは異なる独自のローン商品を展開している特性があります。
審査スピードが速かったり、柔軟な審査基準を掲げたりすることがある一方で、金利相場はやや高めに設定されるケースが多いようです。特定のニーズにマッチする商品を見つけることができれば、地方の築古物件など他の金融機関では難しい条件でも融資を受けられる場合があります。

※上記はあくまで相場ですので、物件の収益性や本人の属性、自己資金などにより決定される金利は異なります。

融資の際に金融機関が確認するポイントとは?

2018年に発生したいわば「かぼちゃの馬車」事件をきっかけに投資ローンが厳格化され、現在はプロパーローンを組める人が限定されるようになりました。
そのため、投資初心者の方は基本的にアパートローンで借り入れを行うことでしょう。
本章では、融資審査の際に金融機関からチェックされるポイントについて項目ごとにお伝えします。

年収や勤続年数、金融資産などの「属性」

借り入れ審査の際に見られる「属性」とは、主に年収・勤務先・勤続年数・預貯金などの金融資産・既存借入です。

金融機関の判断基準は、貸したお金が滞りなく最後まで返済されるかどうかがポイントになります。金融機関にとっての「いい属性」とは、言い換えると「安定していること」でしょう。
医師や税理士を除く個人事業主は安定さに欠けていると判断され、融資のハードルは高くなりがちです。

【年収】
とても重要な判断ポイントで、基準としては500万円以上が1つの目安になります。
高額な商品である不動産は、リスクが発生し返済に充てる家賃収入が減ってしまうと給与から手出しをしなくてはいけません。家賃収入に頼りすぎてしまい、リスクが起こった際の返済能力が不十分では金融機関の審査通過は難しいでしょう。

【勤続年数】
勤続年数は3年以上が望ましいです。例え年収が高くても勤続年数が短いと退職や給与減少が懸念されるでしょう。最低でも直近2~3年以上の安定した収入と勤続年数が必要です。

【金融資産】
空室や修繕にかかる急な出費に対応できる預金が十分にあることは必須条件です。預金が少ないと浪費癖がある人、計画性のない人と判断されてしまうので注意しましょう。

立地や資産価値などの「購入する物件」の状況

属性と同じぐらい重要視されるのが立地や資産などの「物件力」です。

不動産投資が成功するかどうかは、立地で全てが決定すると言われています。利便性の高い駅から近い物件は、築古物件になっても入居者から好まれ続け、高い賃貸需要が見込めるでしょう。
駅まで徒歩7分以内で行けることが理想的です。徒歩15分以上離れた物件を購入する際には、社員数の多い企業が近くにあるなど賃貸需要が見込めるかどうか、周辺環境を吟味しましょう。

もう1つの判断基準が、資産価値の高さです。
新築や築浅物件はそれだけで入居者が付きやすい傾向にあり、家賃回収しやすいことが予想されます。そして、物件を売却する際にも買い手が付きやすく、出口戦略の面でも評価が得やすいです。将来的にも継続して家賃回収が出来る物件であることを金融機関にアピールしましょう。

綿密で詳細な「事業計画書」(シミュレーション)

最後のポイントは、投資ローンの審査をする上で金融機関への提出が必須となる「事業計画書」です。

土地・建物に関する概要、建築費や仲介手数料など購入時の諸経費、家賃収入の推移や年間で発生する諸経費など数値の詳細が記されており、購入したい物件が長期的に収益を見込めることを示します。

事業計画書は、実際に起こりうるリスクを綿密にシミュレーションして作成し、金融機関との面談で細部に突っ込まれても、ぬかりなく答えられる根拠を用意しておきましょう。

固定金利と変動金利はどちらがいい?

不動産投資の収益性を左右する諸経費のうちの1つが金利です。
投資ローンも「固定金利」と「変動金利」のどちらかを個人で選択することになり、どちらを選ぶかによって総返済額に大きな差が生じます。
購入者にとって頭を悩ます問題ですが、それぞれの持つメリットデメリットを把握して適当な判断をしましょう。

変動金利のメリットデメリット

変動金利の大きな特徴は、半年に一度見直しがあることです。
低金利時代が約20年続く日本では、見直しされることにより上昇リスクが懸念されます。
しかし、それでも変動金利を選ぶ方が圧倒的に多いのが現状です。

メリット デメリット
・金利が下落すると返済額が減少する  ・金利が上昇すると返済額が増加する
・固定金利よりも低金利の傾向にある ・返済計画が立てづらい
  ・変動リスクによる不安がつきまとう

変動金利の商品によっては、金利の上昇時に備えたルールが存在します。
5年間は返済額が据え置きである「5年ルール」と、借入が5年経過後の6年目からは返済金額は125%の金額までしか上げることができない「125%ルール」です。
この2つを知っておくと、変動金利を選択後に急激な利上げが起こった際もリスクヘッジに役立つかもしれません。

固定金利のメリットデメリット

固定金利には5年、10年と期間を選択ぶことができる「期間選択型」と、借入している間は一律である「全期間固定型」があります。

メリット デメリット
・返済計画が立てやすい ・変動金利よりも高金利の傾向にある
・変動リスクによる不安がない ・市場金利が下落しても一律である

変動金利と対照的な特徴を持つ固定金利は、安定した返済計画を立てたい方にはお勧めです。
しかし、総返済額が高くなってしまうため投資ローンとして「収益性」に重きをおくと、不動産投資には不向きと言えます。

今後の金利はどうなる?

ローンを組む人にとって、昨今の低金利水準がいつまで続くのかは重大な問題です。
変動金利は短期プライムレート、固定金利は長期プライムレートが基準となっており、その影響を受けて決定されると言われています。固定金利は10年物国債の利回りに連動しており、過去の推移も酷似しているため変動の予測がしやすいでしょう。

2020年に流行し始めた新型コロナウイルスやロシアとウクライナによる戦争の影響を受け、世界的なインフレが深刻化しています。2022年は世界各国で金利が上昇し、特にアメリカは急激な利上げを行い円安にも拍車がかかりました。

低迷していく日本の経済や世界的な利上げに逆向した状況で、このまま低金利が継続されるのか消費者は判断に悩まされるでしょう。
しかし、物価上昇により企業や家計を圧迫している現状で、金融機関もローンから得られる収益をとても重要な柱です。急激な利上げは破綻する者を増加させ、借入する者を減少させるため、金融機関側としては思い切った利上げはできないのではないか、と分析します。

低い金利で不動産ローンを組む方法


不動産投資を成功に導くためには、適切な借入金利でローンを組むことが肝心です。市場にはさまざまな金融機関やローン商品があり、それぞれで条件が異なります。借入金利をできるだけ低くして、賢明な運用で手元に残る資金を増やしてください。
借入金利を低く抑えるには、実はいくつかの方法があります。以下で解説するポイントを実践することで、より良い条件でローンを組むことができるでしょう。

不動産業者に紹介してもらう

多くの不動産業者は物件の仲介業務に加え、顧客に金融機関へのローン紹介も行っています。物件購入で取引をした仲介業者に頼ることで、通常よりも低い金利のローンを紹介してもらえる可能性が高いです。
金融機関は物件の価値や本人の属性を重視しますが、どの不動産業者が売買に携わっているかということも注視しています。これまでの実績が豊富であったり、付き合いが長かったりという過去の経験から、信頼の厚い不動産業者を介することで金利の優遇があります。
自分で直接金融機関の窓口へ行き、担当者に事情を一から説明するよりも信頼を得やすく、やりとりもスムーズに進むでしょう。

複数の金融機関に並行して交渉して比べる

より良い金利条件を求めるなら労力や時間はかかりますが、複数の金融機関を並行して比較し、交渉していくことは不可欠です。メガバンク・都市銀行、地方銀行、信用金庫信用組合、日本政策金融公庫はそれぞれ一通り打診してみましょう。その差を比較してみると、意外と金利に違いが見られるものです。
また、融資の承認書を持って別の金融機関へ行き、「もう少し低い金利で出来ないか」と担当者に交渉へ行くことも有効な方法でしょう。金融機関の主な利益は顧客から得る利息なので、融資承認を出せる人には「ぜひ自社で借りてもらいたい」と思うものです。
手間を惜しまず、積極的に交渉を続けることで、結果的に総返済額の大きな減額に繋がります。

変動金利を選ぶ

アパートローンでは、基本的に変動金利と固定金利のどちらか一方を選択できますが、キャッシュフローを重視する不動産投資では変動金利がお勧めです。固定金利は返済額が毎月一定であるため、資金計画が立てやすい一方で、長期間の高金利は大きな影響を与えます。
借入金額2,000万円で返済期間を20年間とし、実際に、以下の2つのプランで返済シミュレーションをしましょう。
1.    変動金利で当初10年間を1.5%、残り10年間で2.5%に利上する場合
2.    固定金利で全期間2.0%の場合

  変動金利 固定金利
毎月の返済額

当初10年間:96,509円
11年目以降:101,322円

全期間:101,176円
年間返済額 当初10年間:1,158,108円
11年目以降:1,215,864円
全期間:1,214,112円
総返済額 23,739,657円 24,282,300円
うち利息分 3,739,657円 4,282,300円
利息割合 15.8% 17.7%

 
利息割合は変動金利の方が小さく、総返済額においても低くなっています。このように金利上昇リスクに直面し、段階的に利上げが起こったとしても、変動金利が有利になり得ます。

取引のある金融機関に相談する

個人と金融機関の関係性も、低金利の実現においては重要な要素です。例えば、会社経営者や個人事業主で長年取引をしている良好関係の金融機関があるならば、その担当者に相談を持ち掛けることで、より良い条件を出してもらえる可能性があります。
また、住宅ローンや他のローンを組んでいる場合には、一度そちらの融資先へ打診してみるのも良いでしょう。返済に滞りがないことが証明となり、信頼関係が築かれた相手であれば、顧客の不安や要望に対して真摯に取り組んでくれることが期待できます。
お互いにとってメリットのある関係を構築していくことで、投資物件を追加購入する際にも有利な結果に働いてくれるでしょう。

ローンの借り換えを検討する

すでにアパートローンを組んでいる人であれば、ローンの借り換えによって金利を下げることができるかもしれません。借り換えでは、別の金融機関から新たな融資を受け、既存のローン残債を一括返済で0にすることで、より低金利なローンへの変更が可能です。
借り換えの際のポイントは、新たなローンの金利が現実のローンよりも実質的に低くなることが前提ですが、これに加えて手数料など借り換えにおけるコストが、返済総額の削減に見合っているかを計算することです。緻密な計算を怠ってしまうと、借り換えしたのに返済総額が高くなってしまう可能性があります。
借り換えによる節約効果が大きいのであれば、長期間のローン返済における負担を軽減できるでしょう。

ローン返済シミュレーション

長期に渡るローンは、返済不能になってしまうと最悪のケースでは自己破産する恐れも出てきます。
滞りなく返済を行うためには、事前のシミュレーションがとても大切です。

毎月の返済額、総返済額、利息総額のシミュレーション

それでは、実際に諸条件を設定して返済シミュレーションをしてみましょう。
尚、借り換えとボーナス払いは行わないものとし、不動産投資初心者向けの元利均等方式を用いた計算結果で示します。

・仮定条件:新築、元本3,000万円、金利2.0%、返済期間20年
・結果:月々の返済額151,765円、総返済額36,423,600円(うち利息総額:6,423,600円)

シミュレーション数値を目の当たりにすると、利息総額に驚くとともに金利がいかに重要かを気付かされます。

金利の違いによる月々の返済額、総返済額の違い

諸条件を設定したシミュレーションで、金利が重要であることが改めて分かったかと思います。
次に同じ仮定条件として、金利の違いによる結果を確認してみましょう。

・パターンA:新築、元本3,000万円、金利1.8%、返済期間20年
・結果:月々の返済額148,939円、総返済額35,745,555円(うち利息総額:5,745,555円)

・パターンB:新築、元本3,000万円、金利2.3%、返済期間20年
・結果:月々の返済額:156,064円、総返済額37,455,383円(うち利息総額:7,455,383円)

・パターンC:新築、元本3,000万円、金利2.5%、返済期間20年
・結果:月々の返済額158,970円、総返済額38,153,008円(うち利息総額:8,153,008円)


仮定条件と比較するとわずかな金利差でも、総返済額には大きな影響を及ぼします。
また、パターンAとパターンCでは総返済額に230万円以上の差が生まれ、これでは不動産投資のキャッシュフローが全く別物になってしまうでしょう。
投資ローンを組む際には、手間と時間をかけてでも金融機関の審査を受け、慎重に比較しましょう。

住宅ローンとの違いは?

投資ローンと住宅ローンは、一見似たように思えますが内容は全くの別物です。
具体的な相違点とそれぞれの特性を挙げていきましょう。

  住宅ローン 投資ローン
借入目的 本人の居住用 不動産投資用
返済期間 25~35年 20~45年
返済原資 給与などによる所得が主となる 家賃収入が主となる
融資額 年収の5~8倍程度 年収の8~15倍程度
金利 0.5~2%程度 1.5~5%程度
融資基準  本人の属性を重視 本人の属性、物件の収益性を重視
契約名義 個人に限る 個人・法人ともに可

住宅ローンは自宅として自らが居住することが目的で、安定した暮らしを送ることができるよう投資ローンよりも金利が優遇されます。
ただし、給与などの所得から毎月のローン返済をするため、返済終了時が70歳前後となるよう制限されることが多いようです。反対に投資ローンは入居者からの家賃収入を返済に充てるため、物件の収益性や資産状況次第では、高齢者でも借り入れができる場合があります。

(まとめ)収入と支出をシミュレーションして不動産投資を成功させよう

本記事では、不動産投資における投資ローンについて解説しました。
不動産投資における融資は、年々厳格化されているのが現状で想像以上にハードルが高くなっています。
ポイントである「属性」や「物件力」の基準をしっかりクリアし、最終ゴールは収入と支出のバランスがとれたシミュレーションを重ねて不動産投資を成功させることです。

不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.05.28

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンの金利相場を解説!審査で重視するポイントは?

  • 融資・ローン
  • 審査

投資をしたくても、高額商品であるがゆえになかなか一歩踏み出せないのが不動産投資。
意を決して購入の申し込みをすると、次は「ローン審査」という高い壁が待っています。このハードルが高く諦めてしまったり、重い腰がなかなか上がらない方は少なくありません。
今回は不動産投資ローンの相場、融資の際の金融機関によるチェックポイント、固定金利・変動金利の違いについて解説します。また、条件ごとのローン返済シミュレーションもご紹介しますので、最後までご覧ください。

金融機関別不動産投資ローンの相場

金融機関 金利相場
メガバンク・都市銀行 1〜2%
地方銀行 1〜4%
信用金庫信用組合 2〜3%
日本政策金融公庫 1〜2%*
ノンバンク系 1〜5%

 アパートローンの借入金利は、不動産投資において成功の可否に繋がる重要な要素で、金融機関によって大きな差が生じます。

1.    メガバンク・都市銀行
2.    地方銀行
3.    信用金庫・信用組合
4.    日本政策金融公庫
5.    ノンバンク系

各金融機関の特徴や金利相場を理解し、最適な選択をすることで長期的な安定経営に繋がるでしょう。アパートローンにおける金融機関ごとの借入金利について、以下で詳しく解説します。

メガバンク・都市銀行

金利相場:1~2%

都市銀行とは、大都市に本店を置く金融機関のことで、その中でも莫大な収益規模や資産を有する銀行をメガバンクと呼びます。全国展開できるほど安定した財務基盤を持っており、他の金融機関よりも借入金利が安いのが特徴です。大規模な融資が可能な一方で、審査基準が非常に厳しく設定されており、資産価値以外にも自身の年収や勤続年数など属性も重視されます。
メガバンクは「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」、さらに「りそな銀行」「埼玉りそな銀行」を加えた5行の都市銀行とされています。

地方銀行

金利相場:1~4%

地方銀行のアパートローンは、地域密着のサービスを強みにしている場合が多いです。メガバンクと比較すると、審査基準は緩やかな傾向にあり、地域の実情に応じた柔軟な対応をしてもらえる可能性が高くなります。
金利相場はメガバンクよりもやや高めに設定されているものの、細かいニーズに応じて交渉が可能な場合もありますので、個別の条件をしっかりと確認することが大切です。融資対象エリアや居住エリアが「本店が所在する県」および「隣接する県」に限定されているケースが多いです。

信用金庫・信用組合

金利相場:2~3%

信用金庫や信用組合は小規模でありながら、地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした組織なので、エリアに根差したきめ細かいサービス提供が強みです。特に、地域の中小企業オーナーや個人投資家にとって手頃な選択肢となることが多いです。
金利相場は地方銀行と似た傾向にありますが、信用金庫や信用組合独自の補助制度や優遇条件が設けられているケースも見受けられます。融資の承認は「投資物件が管轄エリア内に存在していること」もしくは「管轄エリア内に居住していること」が条件です。

日本政策金融公庫

金利相場:1~2%(固定金利に限る)

日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、女性や高齢者向けなどの公益性が高い融資制度を多く提供しています。融資は固定金利に限られますが、それでも他の民間金融機関より低金利に設定されています。
ただし、その分審査基準は厳しいとされ、賃貸経営の事業性を評価されるようです。多くのパターンで事業計画の詳細を求められるので、きちんと提出できるように備えが必要です。
新規起業家や中小企業向けの融資プランが豊富で、不動産投資においても有利な条件で借り入れ期待できます。

ノンバンク系

金利相場:1~5%

ノンバンクとは、預金業務を行わず貸付のみを行う金融機関を指し、「消費者金融」「信販会社」「クレジットカード会社」などがこれに該当します。預金業務を行う金融機関とは異なる独自のローン商品を展開している特性があります。
審査スピードが速かったり、柔軟な審査基準を掲げたりすることがある一方で、金利相場はやや高めに設定されるケースが多いようです。特定のニーズにマッチする商品を見つけることができれば、地方の築古物件など他の金融機関では難しい条件でも融資を受けられる場合があります。

※上記はあくまで相場ですので、物件の収益性や本人の属性、自己資金などにより決定される金利は異なります。

融資の際に金融機関が確認するポイントとは?

2018年に発生したいわば「かぼちゃの馬車」事件をきっかけに投資ローンが厳格化され、現在はプロパーローンを組める人が限定されるようになりました。
そのため、投資初心者の方は基本的にアパートローンで借り入れを行うことでしょう。
本章では、融資審査の際に金融機関からチェックされるポイントについて項目ごとにお伝えします。

年収や勤続年数、金融資産などの「属性」

借り入れ審査の際に見られる「属性」とは、主に年収・勤務先・勤続年数・預貯金などの金融資産・既存借入です。

金融機関の判断基準は、貸したお金が滞りなく最後まで返済されるかどうかがポイントになります。金融機関にとっての「いい属性」とは、言い換えると「安定していること」でしょう。
医師や税理士を除く個人事業主は安定さに欠けていると判断され、融資のハードルは高くなりがちです。

【年収】
とても重要な判断ポイントで、基準としては500万円以上が1つの目安になります。
高額な商品である不動産は、リスクが発生し返済に充てる家賃収入が減ってしまうと給与から手出しをしなくてはいけません。家賃収入に頼りすぎてしまい、リスクが起こった際の返済能力が不十分では金融機関の審査通過は難しいでしょう。

【勤続年数】
勤続年数は3年以上が望ましいです。例え年収が高くても勤続年数が短いと退職や給与減少が懸念されるでしょう。最低でも直近2~3年以上の安定した収入と勤続年数が必要です。

【金融資産】
空室や修繕にかかる急な出費に対応できる預金が十分にあることは必須条件です。預金が少ないと浪費癖がある人、計画性のない人と判断されてしまうので注意しましょう。

立地や資産価値などの「購入する物件」の状況

属性と同じぐらい重要視されるのが立地や資産などの「物件力」です。

不動産投資が成功するかどうかは、立地で全てが決定すると言われています。利便性の高い駅から近い物件は、築古物件になっても入居者から好まれ続け、高い賃貸需要が見込めるでしょう。
駅まで徒歩7分以内で行けることが理想的です。徒歩15分以上離れた物件を購入する際には、社員数の多い企業が近くにあるなど賃貸需要が見込めるかどうか、周辺環境を吟味しましょう。

もう1つの判断基準が、資産価値の高さです。
新築や築浅物件はそれだけで入居者が付きやすい傾向にあり、家賃回収しやすいことが予想されます。そして、物件を売却する際にも買い手が付きやすく、出口戦略の面でも評価が得やすいです。将来的にも継続して家賃回収が出来る物件であることを金融機関にアピールしましょう。

綿密で詳細な「事業計画書」(シミュレーション)

最後のポイントは、投資ローンの審査をする上で金融機関への提出が必須となる「事業計画書」です。

土地・建物に関する概要、建築費や仲介手数料など購入時の諸経費、家賃収入の推移や年間で発生する諸経費など数値の詳細が記されており、購入したい物件が長期的に収益を見込めることを示します。

事業計画書は、実際に起こりうるリスクを綿密にシミュレーションして作成し、金融機関との面談で細部に突っ込まれても、ぬかりなく答えられる根拠を用意しておきましょう。

固定金利と変動金利はどちらがいい?

不動産投資の収益性を左右する諸経費のうちの1つが金利です。
投資ローンも「固定金利」と「変動金利」のどちらかを個人で選択することになり、どちらを選ぶかによって総返済額に大きな差が生じます。
購入者にとって頭を悩ます問題ですが、それぞれの持つメリットデメリットを把握して適当な判断をしましょう。

変動金利のメリットデメリット

変動金利の大きな特徴は、半年に一度見直しがあることです。
低金利時代が約20年続く日本では、見直しされることにより上昇リスクが懸念されます。
しかし、それでも変動金利を選ぶ方が圧倒的に多いのが現状です。

メリット デメリット
・金利が下落すると返済額が減少する  ・金利が上昇すると返済額が増加する
・固定金利よりも低金利の傾向にある ・返済計画が立てづらい
  ・変動リスクによる不安がつきまとう

変動金利の商品によっては、金利の上昇時に備えたルールが存在します。
5年間は返済額が据え置きである「5年ルール」と、借入が5年経過後の6年目からは返済金額は125%の金額までしか上げることができない「125%ルール」です。
この2つを知っておくと、変動金利を選択後に急激な利上げが起こった際もリスクヘッジに役立つかもしれません。

固定金利のメリットデメリット

固定金利には5年、10年と期間を選択ぶことができる「期間選択型」と、借入している間は一律である「全期間固定型」があります。

メリット デメリット
・返済計画が立てやすい ・変動金利よりも高金利の傾向にある
・変動リスクによる不安がない ・市場金利が下落しても一律である

変動金利と対照的な特徴を持つ固定金利は、安定した返済計画を立てたい方にはお勧めです。
しかし、総返済額が高くなってしまうため投資ローンとして「収益性」に重きをおくと、不動産投資には不向きと言えます。

今後の金利はどうなる?

ローンを組む人にとって、昨今の低金利水準がいつまで続くのかは重大な問題です。
変動金利は短期プライムレート、固定金利は長期プライムレートが基準となっており、その影響を受けて決定されると言われています。固定金利は10年物国債の利回りに連動しており、過去の推移も酷似しているため変動の予測がしやすいでしょう。

2020年に流行し始めた新型コロナウイルスやロシアとウクライナによる戦争の影響を受け、世界的なインフレが深刻化しています。2022年は世界各国で金利が上昇し、特にアメリカは急激な利上げを行い円安にも拍車がかかりました。

低迷していく日本の経済や世界的な利上げに逆向した状況で、このまま低金利が継続されるのか消費者は判断に悩まされるでしょう。
しかし、物価上昇により企業や家計を圧迫している現状で、金融機関もローンから得られる収益をとても重要な柱です。急激な利上げは破綻する者を増加させ、借入する者を減少させるため、金融機関側としては思い切った利上げはできないのではないか、と分析します。

低い金利で不動産ローンを組む方法


不動産投資を成功に導くためには、適切な借入金利でローンを組むことが肝心です。市場にはさまざまな金融機関やローン商品があり、それぞれで条件が異なります。借入金利をできるだけ低くして、賢明な運用で手元に残る資金を増やしてください。
借入金利を低く抑えるには、実はいくつかの方法があります。以下で解説するポイントを実践することで、より良い条件でローンを組むことができるでしょう。

不動産業者に紹介してもらう

多くの不動産業者は物件の仲介業務に加え、顧客に金融機関へのローン紹介も行っています。物件購入で取引をした仲介業者に頼ることで、通常よりも低い金利のローンを紹介してもらえる可能性が高いです。
金融機関は物件の価値や本人の属性を重視しますが、どの不動産業者が売買に携わっているかということも注視しています。これまでの実績が豊富であったり、付き合いが長かったりという過去の経験から、信頼の厚い不動産業者を介することで金利の優遇があります。
自分で直接金融機関の窓口へ行き、担当者に事情を一から説明するよりも信頼を得やすく、やりとりもスムーズに進むでしょう。

複数の金融機関に並行して交渉して比べる

より良い金利条件を求めるなら労力や時間はかかりますが、複数の金融機関を並行して比較し、交渉していくことは不可欠です。メガバンク・都市銀行、地方銀行、信用金庫信用組合、日本政策金融公庫はそれぞれ一通り打診してみましょう。その差を比較してみると、意外と金利に違いが見られるものです。
また、融資の承認書を持って別の金融機関へ行き、「もう少し低い金利で出来ないか」と担当者に交渉へ行くことも有効な方法でしょう。金融機関の主な利益は顧客から得る利息なので、融資承認を出せる人には「ぜひ自社で借りてもらいたい」と思うものです。
手間を惜しまず、積極的に交渉を続けることで、結果的に総返済額の大きな減額に繋がります。

変動金利を選ぶ

アパートローンでは、基本的に変動金利と固定金利のどちらか一方を選択できますが、キャッシュフローを重視する不動産投資では変動金利がお勧めです。固定金利は返済額が毎月一定であるため、資金計画が立てやすい一方で、長期間の高金利は大きな影響を与えます。
借入金額2,000万円で返済期間を20年間とし、実際に、以下の2つのプランで返済シミュレーションをしましょう。
1.    変動金利で当初10年間を1.5%、残り10年間で2.5%に利上する場合
2.    固定金利で全期間2.0%の場合

  変動金利 固定金利
毎月の返済額

当初10年間:96,509円
11年目以降:101,322円

全期間:101,176円
年間返済額 当初10年間:1,158,108円
11年目以降:1,215,864円
全期間:1,214,112円
総返済額 23,739,657円 24,282,300円
うち利息分 3,739,657円 4,282,300円
利息割合 15.8% 17.7%

 
利息割合は変動金利の方が小さく、総返済額においても低くなっています。このように金利上昇リスクに直面し、段階的に利上げが起こったとしても、変動金利が有利になり得ます。

取引のある金融機関に相談する

個人と金融機関の関係性も、低金利の実現においては重要な要素です。例えば、会社経営者や個人事業主で長年取引をしている良好関係の金融機関があるならば、その担当者に相談を持ち掛けることで、より良い条件を出してもらえる可能性があります。
また、住宅ローンや他のローンを組んでいる場合には、一度そちらの融資先へ打診してみるのも良いでしょう。返済に滞りがないことが証明となり、信頼関係が築かれた相手であれば、顧客の不安や要望に対して真摯に取り組んでくれることが期待できます。
お互いにとってメリットのある関係を構築していくことで、投資物件を追加購入する際にも有利な結果に働いてくれるでしょう。

ローンの借り換えを検討する

すでにアパートローンを組んでいる人であれば、ローンの借り換えによって金利を下げることができるかもしれません。借り換えでは、別の金融機関から新たな融資を受け、既存のローン残債を一括返済で0にすることで、より低金利なローンへの変更が可能です。
借り換えの際のポイントは、新たなローンの金利が現実のローンよりも実質的に低くなることが前提ですが、これに加えて手数料など借り換えにおけるコストが、返済総額の削減に見合っているかを計算することです。緻密な計算を怠ってしまうと、借り換えしたのに返済総額が高くなってしまう可能性があります。
借り換えによる節約効果が大きいのであれば、長期間のローン返済における負担を軽減できるでしょう。

ローン返済シミュレーション

長期に渡るローンは、返済不能になってしまうと最悪のケースでは自己破産する恐れも出てきます。
滞りなく返済を行うためには、事前のシミュレーションがとても大切です。

毎月の返済額、総返済額、利息総額のシミュレーション

それでは、実際に諸条件を設定して返済シミュレーションをしてみましょう。
尚、借り換えとボーナス払いは行わないものとし、不動産投資初心者向けの元利均等方式を用いた計算結果で示します。

・仮定条件:新築、元本3,000万円、金利2.0%、返済期間20年
・結果:月々の返済額151,765円、総返済額36,423,600円(うち利息総額:6,423,600円)

シミュレーション数値を目の当たりにすると、利息総額に驚くとともに金利がいかに重要かを気付かされます。

金利の違いによる月々の返済額、総返済額の違い

諸条件を設定したシミュレーションで、金利が重要であることが改めて分かったかと思います。
次に同じ仮定条件として、金利の違いによる結果を確認してみましょう。

・パターンA:新築、元本3,000万円、金利1.8%、返済期間20年
・結果:月々の返済額148,939円、総返済額35,745,555円(うち利息総額:5,745,555円)

・パターンB:新築、元本3,000万円、金利2.3%、返済期間20年
・結果:月々の返済額:156,064円、総返済額37,455,383円(うち利息総額:7,455,383円)

・パターンC:新築、元本3,000万円、金利2.5%、返済期間20年
・結果:月々の返済額158,970円、総返済額38,153,008円(うち利息総額:8,153,008円)


仮定条件と比較するとわずかな金利差でも、総返済額には大きな影響を及ぼします。
また、パターンAとパターンCでは総返済額に230万円以上の差が生まれ、これでは不動産投資のキャッシュフローが全く別物になってしまうでしょう。
投資ローンを組む際には、手間と時間をかけてでも金融機関の審査を受け、慎重に比較しましょう。

住宅ローンとの違いは?

投資ローンと住宅ローンは、一見似たように思えますが内容は全くの別物です。
具体的な相違点とそれぞれの特性を挙げていきましょう。

  住宅ローン 投資ローン
借入目的 本人の居住用 不動産投資用
返済期間 25~35年 20~45年
返済原資 給与などによる所得が主となる 家賃収入が主となる
融資額 年収の5~8倍程度 年収の8~15倍程度
金利 0.5~2%程度 1.5~5%程度
融資基準  本人の属性を重視 本人の属性、物件の収益性を重視
契約名義 個人に限る 個人・法人ともに可

住宅ローンは自宅として自らが居住することが目的で、安定した暮らしを送ることができるよう投資ローンよりも金利が優遇されます。
ただし、給与などの所得から毎月のローン返済をするため、返済終了時が70歳前後となるよう制限されることが多いようです。反対に投資ローンは入居者からの家賃収入を返済に充てるため、物件の収益性や資産状況次第では、高齢者でも借り入れができる場合があります。

(まとめ)収入と支出をシミュレーションして不動産投資を成功させよう

本記事では、不動産投資における投資ローンについて解説しました。
不動産投資における融資は、年々厳格化されているのが現状で想像以上にハードルが高くなっています。
ポイントである「属性」や「物件力」の基準をしっかりクリアし、最終ゴールは収入と支出のバランスがとれたシミュレーションを重ねて不動産投資を成功させることです。

不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。