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2024.02.29
ベルテックスコラム事務局
原状回復費用はいくらかかる?経年劣化との関係も解説
- 賃貸管理
原状回復は、不動産の賃貸物件において、入居者が借りた時の状態に修復することを指します。物件は時が経つにつれて劣化し、その劣化を経年劣化と呼びます。今回は、それぞれの違いについて詳しく解説します。
原状回復とは?経年劣化との関係
原状回復と経年劣化の関係について詳しく見ていきましょう。
原状回復とは
原状回復とは、賃貸物件の退去時に、借主が居住や使用によって生じた建物価値の減少を修復することを指します。借主の故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗・毀損の復旧が含まれ、その費用は借主の負担とされます。一方で、経年変化や通常の使用による損耗は、賃料に含まれるとされ、貸主の負担となります。
ガイドラインでは、「通常の使用」という概念を明確にしており、これは具体的な事例に基づいて賃貸人と賃借人の負担を区分します。例えば、通常の住まい方で発生する損耗は貸主負担、賃借人の管理不足による損耗拡大は借主負担とされます。
また、原状回復の範囲を毀損部分に限定し、補修工事は最低限度の施工単位を基本としています。しかし、毀損部分と補修部分の間に色合いや模様合わせなどのギャップがある場合の取り扱いについてもガイドラインは一定の判断基準を提供しています。
経過年数も原状回復の費用負担に影響を与え、建物や設備の経過年数が多いほど、借主の負担割合は減少します。これにより、賃借人が修繕費用全てを負担することになると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠く問題を防ぐことができます。
このガイドラインは、賃貸借契約の締結時に参考にされるべきものであり、賃貸借契約の「出口」である退去時だけでなく、「入口」である入居時の問題としても捉え、物件の状況を確認し、契約条件を明確にすることでトラブルを未然に防ぐための指針となっています。
経年劣化とは
経年劣化とは、賃貸物件が時間の経過に伴い、自然に生じる劣化や損耗のことを指します。この現象は、物件の通常使用によって避けられないものであり、借主の責任範囲外とされています。経年劣化には、日光の影響で壁紙が色褪せる、風雨による外壁の損傷、フローリングの自然な摩耗、水回りの設備の老朽化などがあります。
経年劣化の範囲は、物件の種類や建築年数、使用されている材料によって異なります。例えば、木造建築の場合、経年による木部の収縮や伸張が見られることがあります。また、経年劣化は、物件の価値を下げる要因となるため、定期的なメンテナンスやリフォームが必要となります。
賃貸契約においては、経年劣化による修繕は原則として貸主の責任とされています。これは、物件の通常の使用による自然な劣化は、賃料に含まれるものと考えられるためです。ただし、経年劣化と借主の故意・過失による損傷との区別は、場合によっては明確でないことがあり、トラブルの原因となることもあります。
このため、賃貸契約を結ぶ際には、物件の現状を正確に把握し、経年劣化に関する取り決めを明確にすることが重要です。また、物件の状態を定期的にチェックし、必要に応じてメンテナンスやリフォームを行うことで、経年劣化による問題を最小限に抑えることができます。
原状回復・経年劣化の判断基準
原状回復と経年劣化の判断基準に関して、国土交通省のガイドラインは賃貸物件における原状回復の定義と範囲を明確にしています。このガイドラインによると、原状回復は賃借人の故意や過失、通常の使用を超える使用によって発生した建物価値の減少を復旧することを指します。ここでの「通常の使用」とは、賃借人の日常的な住まい方や使い方によって生じる損耗や毀損を指し、これにより賃貸人と賃借人の負担の考え方が明確にされています。
また、建物や設備の経過年数も原状回復の判断に重要な要素とされており、経年変化や通常の損耗が含まれる場合、賃借人が修繕費用の全額を負担することは合理性を欠くとされています。そのため、経過年数が多いほど賃借人の負担割合が減少する仕組みになっています。
さらに、原状回復においては、毀損部分の復旧に限定されるべきであり、補修工事は可能な限り最低限度の施工単位を基本としています。毀損部分と補修を要する部分との間にギャップがある場合の取扱いについても、ガイドラインでは一定の判断基準を示しています。
これらのガイドラインは、原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐために、賃貸借契約締結時に参考にされるべきものです。契約内容が不明確な場合や問題が生じた場合には、このガイドラインを基に話し合いを進めることが推奨されています。
経年劣化のチェックポイント
経年劣化のチェックポイントについて、賃貸物件における経年劣化は、時間の経過と共に自然に生じる劣化を指します。経年劣化は、主に壁紙やフローリングの色褪せ、風雨による外壁の損傷などが含まれます。特に、賃貸物件においては、経年劣化が顕著に現れやすい部分として、クロスやフローリング、水回りが挙げられます。
クロスの場合、日光による色褪せや経年による劣化が一般的です。フローリングでは、日常の歩行や家具の使用による摩耗や小傷が生じます。これらは経年劣化によるものと見なされ、通常、修繕費用は貸主が負担します。
水回りに関しては、キッチンやバスルーム、トイレなどが該当します。これらのエリアでは、水垢や湯垢、カビなどが発生しやすく、これらも経年劣化の一部と考えられます。ただし、これらの汚れが一般的な範囲を超える場合、入居者の負担になることがあります。例えば、普段の掃除を怠り、カビや水垢がひどい場合は、入居者が負担することになる可能性があります。
このように、経年劣化のチェックポイントは、賃貸物件の退去時における修繕費用の判断において重要な要素となります。入居者としては、物件を通常の方法で使用し、普段からの掃除やメンテナンスに注意を払うことが、退去時のトラブルを避けるためのポイントです。
原状回復費用の相場はどのくらい?
原状回復費用の相場は、物件の状態や修繕の範囲によって大きく変動します。一般的に、小規模な修繕から全体的なリノベーションまで、数万円から数百万円の範囲で費用が発生します。賃貸物件の場合、敷金から原状回復費用が差し引かれることが一般的ですが、これは契約内容によって異なります。また、2020年4月1日の民法改正により、敷金と原状回復に関するルールが明文化されました。これにより、家賃の滞納や故意・過失による損傷がない限り、敷金は原則として返還されることになります。
しかし、具体的な相場については、修繕する箇所の状態や地域、業者によって異なるため、正確な情報を得るには見積もりを取ることが重要です。
原状回復工事の種類と費用相場
原状回復工事には様々な種類があり、それぞれに費用相場が設定されています。例えば、壁や天井の穴補修は約3万円/箇所、フローリングの汚れ除去は約1万円/箇所、壁紙の張替えは約2千円/平方メートルあたり、フローリングの張替えは約8千円/平方メートルあたり、カーペットの張替えは約3千円/平方メートルあたり、畳の張替えは約6千円/畳あたりとされています。これらの費用はあくまで一般的な相場であり、実際の費用は物件の状態や業者の見積もりによって変わる可能性があります。
原状回復費用はどうやって回収するのか
原状回復費用の回収方法は、主に敷金からの差し引きによって行われます。2020年4月1日の民法改正により、敷金と原状回復に関するルールが明文化されたため、家賃の滞納や故意・過失による損傷がない場合、敷金は返還されるべきです。しかし、敷金が足りない場合や、敷金なしの物件の場合は、原状回復費用を入居者が別途用意する必要があります。これには、入居者と大家または管理会社との間での合意が必要となります。
敷金なし物件の場合
敷金なしの物件では、原状回復費用の回収方法が異なります。入居者は敷金を支払っていないため、退去時に発生する原状回復費用は、入居者が改めて用意する必要があります。これは通常、契約時に定められた条件に基づき、入居者と大家や管理会社が話し合いを行い、費用の支払いについて合意に至ることが一般的です。敷金がない場合の原状回復費用は、入居者にとって予期せぬ出費となる可能性があるため、契約前にはこの点を十分に検討し、必要に応じて貯蓄や保険などの対策を講じることが重要です。
原状回復に備えて
ここからは不動産投資を始めた際に、オーナーが原状回復に備えて準備しておくと良いことを解説します。
原状回復費用は、物件や広さ、築年数、入居者の居住期間などによって変わりますが、場合によっては非常に高額となる場合があります。
そのため、不動産投資を始める前から原状回復が必要になったときにどのように対応するのかを考えておく必要があります。
原状回復費用を積み立てる
原状回復費用の積み立ては、オーナーが入居者の退去時に発生する可能性のある修繕費用に備えるための重要な手段です。この積立金は、退去時に物件を元の状態に戻すために必要な費用として使用されるため、予期せぬ大きな出費を避けることができます。積立金の額は、物件の大きさ、設備の種類、建物の年数、さらには物件の立地や市場状況などに基づいて決定します。
一般的に、月額家賃の1〜2%が積立額の目安とされていますが、具体的な金額は物件ごとに異なります。例えば、新築物件や高級物件では、より高額な積立金が必要になる場合があります。また、物件が古い場合や特別な設備が備わっている場合には、将来的により高額な修繕が必要になる可能性があるため、積立金の額を増やすことが考慮されるでしょう。
積み立てはオーナーが個人で積み立てをおこなうパターンと管理会社が積み立てをおこなうパターンがあります。
管理会社が積み立てをおこなう場合は、積立金をどのように管理しているか、どのようなシステムを使用しているかを確認することが重要です。管理会社は、積立金の使用状況に関する定期的な報告を提供することが望ましいでしょう。
さらに、積立金の設定にあたっては、オーナーと管理会社間での明確な合意が必要です。これにより、将来的に発生する可能性のある誤解や紛争を防ぐことができます。また、積立金の額や使用方法に関するルールが変更される場合は、オーナーに対して適切な通知が行われる必要があります。
【おすすめ関連記事】013 - 不動産投資の修繕費と資本的支出の違いがわかる判断基準とフローチャート
保証プランがある会社を選ぶ
保証プランを提供する管理会社を選択することも、賃貸物件のオーナーにとって原状回復に関する財務的リスクを軽減する有効な手段です。これらのプランは、原状回復や設備交換が必要になったときに保証がうけられるものが多く、オーナーにとって大きな経済的負担を軽減することができます。
保証プランの内容は、提供する管理会社によって大きく異なります。一部のプランでは、壁紙の張り替えやフローリングの修理など、基本的な修繕作業をカバーしていますが、より包括的なプランでは、水回りの設備や電気設備の修理など、より広範なサービスを提供することもあります。
保証プランに加入する際の初期費用や月々の保証料は、プランの内容や提供する会社によって異なります。保証料の額は、物件の大きさや立地、プランの内容によって異なります。保証の範囲については、契約前に詳細を確認し、どのような修繕が含まれるのか、どの程度の費用がカバーされるのかを明確に理解することが重要です。
また、保証プランには一定の制限があることも理解しておく必要があります。例えば、〇万円までの費用に対して保証するという制限の場合、一定金額を超えた部分はオーナーが支払う必要があります。保証プランの詳細を理解し、自分のニーズに合ったプランを選択することが、安心した不動産投資をおこなうための鍵となります。
物件選びにも注意
不動産投資で購入する物件を選ぶ際、特に中古物件や築年数が経過した物件には注意が必要です。新築物件と比べて、原状回復にかかる費用が高くなることが多いからです。経年劣化が進んだ物件では、壁紙の全面張り替えやフローリングの大規模な修理、水回りの設備更新など、退去時に広範囲な修繕が必要になることがあります。
物件選びでは、建物の築年数やメンテナンスの状況を確認することが大切です。築年数が長い物件や定期的なメンテナンスが行われていない物件は、将来的に大規模な修繕が必要になるリスクが高まります。また、物件の過去の修繕履歴をチェックすることで、将来的に必要となる修繕の種類や規模を予測できます。
オーナーチェンジの中古物件は入居済みの物件もあり、購入前に部屋の中を確認することができません。入居者の部屋の利用の仕方によっては、購入してすぐに高額の修繕費用がかかる場合もあります。
中古物件を購入する場合には、このようなリスクも考慮しておくことが大切です。
まとめ
賃貸物件の原状回復は、退去時に避けて通れません。原状回復費用は、物件を入居時の状態に戻すために必要な修繕費用であり、壁紙の張り替えやフローリングの修理などが含まれます。これらの費用は、敷金から差し引かれることが一般的ですが、2020年の民法改正により、敷金と原状回復のルールがより明確になりました。そのため、故意や過失による損傷がない限り、敷金は原則として返還されます。
不動産投資において、原状回復費用はキャッシュフローに影響を与える重要な要素です。
購入を検討している段階からシミュレーションをおこない、将来的なキャッシュフローを理解しておく必要があります。
また原状回復費用を考えずに不動産投資をおこないたい場合には、保証プランを提供している管理会社を選ぶのが良いでしょう。プラン内容は管理会社によって異なるので、契約内容を十分に確認する必要があります。
ベルテックスでは不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお申し込みください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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原状回復費用はいくらかかる?経年劣化との関係も解説
- 賃貸管理
原状回復は、不動産の賃貸物件において、入居者が借りた時の状態に修復することを指します。物件は時が経つにつれて劣化し、その劣化を経年劣化と呼びます。今回は、それぞれの違いについて詳しく解説します。
原状回復とは?経年劣化との関係
原状回復と経年劣化の関係について詳しく見ていきましょう。
原状回復とは
原状回復とは、賃貸物件の退去時に、借主が居住や使用によって生じた建物価値の減少を修復することを指します。借主の故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗・毀損の復旧が含まれ、その費用は借主の負担とされます。一方で、経年変化や通常の使用による損耗は、賃料に含まれるとされ、貸主の負担となります。
ガイドラインでは、「通常の使用」という概念を明確にしており、これは具体的な事例に基づいて賃貸人と賃借人の負担を区分します。例えば、通常の住まい方で発生する損耗は貸主負担、賃借人の管理不足による損耗拡大は借主負担とされます。
また、原状回復の範囲を毀損部分に限定し、補修工事は最低限度の施工単位を基本としています。しかし、毀損部分と補修部分の間に色合いや模様合わせなどのギャップがある場合の取り扱いについてもガイドラインは一定の判断基準を提供しています。
経過年数も原状回復の費用負担に影響を与え、建物や設備の経過年数が多いほど、借主の負担割合は減少します。これにより、賃借人が修繕費用全てを負担することになると、契約当事者間の費用配分の合理性を欠く問題を防ぐことができます。
このガイドラインは、賃貸借契約の締結時に参考にされるべきものであり、賃貸借契約の「出口」である退去時だけでなく、「入口」である入居時の問題としても捉え、物件の状況を確認し、契約条件を明確にすることでトラブルを未然に防ぐための指針となっています。
経年劣化とは
経年劣化とは、賃貸物件が時間の経過に伴い、自然に生じる劣化や損耗のことを指します。この現象は、物件の通常使用によって避けられないものであり、借主の責任範囲外とされています。経年劣化には、日光の影響で壁紙が色褪せる、風雨による外壁の損傷、フローリングの自然な摩耗、水回りの設備の老朽化などがあります。
経年劣化の範囲は、物件の種類や建築年数、使用されている材料によって異なります。例えば、木造建築の場合、経年による木部の収縮や伸張が見られることがあります。また、経年劣化は、物件の価値を下げる要因となるため、定期的なメンテナンスやリフォームが必要となります。
賃貸契約においては、経年劣化による修繕は原則として貸主の責任とされています。これは、物件の通常の使用による自然な劣化は、賃料に含まれるものと考えられるためです。ただし、経年劣化と借主の故意・過失による損傷との区別は、場合によっては明確でないことがあり、トラブルの原因となることもあります。
このため、賃貸契約を結ぶ際には、物件の現状を正確に把握し、経年劣化に関する取り決めを明確にすることが重要です。また、物件の状態を定期的にチェックし、必要に応じてメンテナンスやリフォームを行うことで、経年劣化による問題を最小限に抑えることができます。
原状回復・経年劣化の判断基準
原状回復と経年劣化の判断基準に関して、国土交通省のガイドラインは賃貸物件における原状回復の定義と範囲を明確にしています。このガイドラインによると、原状回復は賃借人の故意や過失、通常の使用を超える使用によって発生した建物価値の減少を復旧することを指します。ここでの「通常の使用」とは、賃借人の日常的な住まい方や使い方によって生じる損耗や毀損を指し、これにより賃貸人と賃借人の負担の考え方が明確にされています。
また、建物や設備の経過年数も原状回復の判断に重要な要素とされており、経年変化や通常の損耗が含まれる場合、賃借人が修繕費用の全額を負担することは合理性を欠くとされています。そのため、経過年数が多いほど賃借人の負担割合が減少する仕組みになっています。
さらに、原状回復においては、毀損部分の復旧に限定されるべきであり、補修工事は可能な限り最低限度の施工単位を基本としています。毀損部分と補修を要する部分との間にギャップがある場合の取扱いについても、ガイドラインでは一定の判断基準を示しています。
これらのガイドラインは、原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐために、賃貸借契約締結時に参考にされるべきものです。契約内容が不明確な場合や問題が生じた場合には、このガイドラインを基に話し合いを進めることが推奨されています。
経年劣化のチェックポイント
経年劣化のチェックポイントについて、賃貸物件における経年劣化は、時間の経過と共に自然に生じる劣化を指します。経年劣化は、主に壁紙やフローリングの色褪せ、風雨による外壁の損傷などが含まれます。特に、賃貸物件においては、経年劣化が顕著に現れやすい部分として、クロスやフローリング、水回りが挙げられます。
クロスの場合、日光による色褪せや経年による劣化が一般的です。フローリングでは、日常の歩行や家具の使用による摩耗や小傷が生じます。これらは経年劣化によるものと見なされ、通常、修繕費用は貸主が負担します。
水回りに関しては、キッチンやバスルーム、トイレなどが該当します。これらのエリアでは、水垢や湯垢、カビなどが発生しやすく、これらも経年劣化の一部と考えられます。ただし、これらの汚れが一般的な範囲を超える場合、入居者の負担になることがあります。例えば、普段の掃除を怠り、カビや水垢がひどい場合は、入居者が負担することになる可能性があります。
このように、経年劣化のチェックポイントは、賃貸物件の退去時における修繕費用の判断において重要な要素となります。入居者としては、物件を通常の方法で使用し、普段からの掃除やメンテナンスに注意を払うことが、退去時のトラブルを避けるためのポイントです。
原状回復費用の相場はどのくらい?
原状回復費用の相場は、物件の状態や修繕の範囲によって大きく変動します。一般的に、小規模な修繕から全体的なリノベーションまで、数万円から数百万円の範囲で費用が発生します。賃貸物件の場合、敷金から原状回復費用が差し引かれることが一般的ですが、これは契約内容によって異なります。また、2020年4月1日の民法改正により、敷金と原状回復に関するルールが明文化されました。これにより、家賃の滞納や故意・過失による損傷がない限り、敷金は原則として返還されることになります。
しかし、具体的な相場については、修繕する箇所の状態や地域、業者によって異なるため、正確な情報を得るには見積もりを取ることが重要です。
原状回復工事の種類と費用相場
原状回復工事には様々な種類があり、それぞれに費用相場が設定されています。例えば、壁や天井の穴補修は約3万円/箇所、フローリングの汚れ除去は約1万円/箇所、壁紙の張替えは約2千円/平方メートルあたり、フローリングの張替えは約8千円/平方メートルあたり、カーペットの張替えは約3千円/平方メートルあたり、畳の張替えは約6千円/畳あたりとされています。これらの費用はあくまで一般的な相場であり、実際の費用は物件の状態や業者の見積もりによって変わる可能性があります。
原状回復費用はどうやって回収するのか
原状回復費用の回収方法は、主に敷金からの差し引きによって行われます。2020年4月1日の民法改正により、敷金と原状回復に関するルールが明文化されたため、家賃の滞納や故意・過失による損傷がない場合、敷金は返還されるべきです。しかし、敷金が足りない場合や、敷金なしの物件の場合は、原状回復費用を入居者が別途用意する必要があります。これには、入居者と大家または管理会社との間での合意が必要となります。
敷金なし物件の場合
敷金なしの物件では、原状回復費用の回収方法が異なります。入居者は敷金を支払っていないため、退去時に発生する原状回復費用は、入居者が改めて用意する必要があります。これは通常、契約時に定められた条件に基づき、入居者と大家や管理会社が話し合いを行い、費用の支払いについて合意に至ることが一般的です。敷金がない場合の原状回復費用は、入居者にとって予期せぬ出費となる可能性があるため、契約前にはこの点を十分に検討し、必要に応じて貯蓄や保険などの対策を講じることが重要です。
原状回復に備えて
ここからは不動産投資を始めた際に、オーナーが原状回復に備えて準備しておくと良いことを解説します。
原状回復費用は、物件や広さ、築年数、入居者の居住期間などによって変わりますが、場合によっては非常に高額となる場合があります。
そのため、不動産投資を始める前から原状回復が必要になったときにどのように対応するのかを考えておく必要があります。
原状回復費用を積み立てる
原状回復費用の積み立ては、オーナーが入居者の退去時に発生する可能性のある修繕費用に備えるための重要な手段です。この積立金は、退去時に物件を元の状態に戻すために必要な費用として使用されるため、予期せぬ大きな出費を避けることができます。積立金の額は、物件の大きさ、設備の種類、建物の年数、さらには物件の立地や市場状況などに基づいて決定します。
一般的に、月額家賃の1〜2%が積立額の目安とされていますが、具体的な金額は物件ごとに異なります。例えば、新築物件や高級物件では、より高額な積立金が必要になる場合があります。また、物件が古い場合や特別な設備が備わっている場合には、将来的により高額な修繕が必要になる可能性があるため、積立金の額を増やすことが考慮されるでしょう。
積み立てはオーナーが個人で積み立てをおこなうパターンと管理会社が積み立てをおこなうパターンがあります。
管理会社が積み立てをおこなう場合は、積立金をどのように管理しているか、どのようなシステムを使用しているかを確認することが重要です。管理会社は、積立金の使用状況に関する定期的な報告を提供することが望ましいでしょう。
さらに、積立金の設定にあたっては、オーナーと管理会社間での明確な合意が必要です。これにより、将来的に発生する可能性のある誤解や紛争を防ぐことができます。また、積立金の額や使用方法に関するルールが変更される場合は、オーナーに対して適切な通知が行われる必要があります。
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保証プランがある会社を選ぶ
保証プランを提供する管理会社を選択することも、賃貸物件のオーナーにとって原状回復に関する財務的リスクを軽減する有効な手段です。これらのプランは、原状回復や設備交換が必要になったときに保証がうけられるものが多く、オーナーにとって大きな経済的負担を軽減することができます。
保証プランの内容は、提供する管理会社によって大きく異なります。一部のプランでは、壁紙の張り替えやフローリングの修理など、基本的な修繕作業をカバーしていますが、より包括的なプランでは、水回りの設備や電気設備の修理など、より広範なサービスを提供することもあります。
保証プランに加入する際の初期費用や月々の保証料は、プランの内容や提供する会社によって異なります。保証料の額は、物件の大きさや立地、プランの内容によって異なります。保証の範囲については、契約前に詳細を確認し、どのような修繕が含まれるのか、どの程度の費用がカバーされるのかを明確に理解することが重要です。
また、保証プランには一定の制限があることも理解しておく必要があります。例えば、〇万円までの費用に対して保証するという制限の場合、一定金額を超えた部分はオーナーが支払う必要があります。保証プランの詳細を理解し、自分のニーズに合ったプランを選択することが、安心した不動産投資をおこなうための鍵となります。
物件選びにも注意
不動産投資で購入する物件を選ぶ際、特に中古物件や築年数が経過した物件には注意が必要です。新築物件と比べて、原状回復にかかる費用が高くなることが多いからです。経年劣化が進んだ物件では、壁紙の全面張り替えやフローリングの大規模な修理、水回りの設備更新など、退去時に広範囲な修繕が必要になることがあります。
物件選びでは、建物の築年数やメンテナンスの状況を確認することが大切です。築年数が長い物件や定期的なメンテナンスが行われていない物件は、将来的に大規模な修繕が必要になるリスクが高まります。また、物件の過去の修繕履歴をチェックすることで、将来的に必要となる修繕の種類や規模を予測できます。
オーナーチェンジの中古物件は入居済みの物件もあり、購入前に部屋の中を確認することができません。入居者の部屋の利用の仕方によっては、購入してすぐに高額の修繕費用がかかる場合もあります。
中古物件を購入する場合には、このようなリスクも考慮しておくことが大切です。
まとめ
賃貸物件の原状回復は、退去時に避けて通れません。原状回復費用は、物件を入居時の状態に戻すために必要な修繕費用であり、壁紙の張り替えやフローリングの修理などが含まれます。これらの費用は、敷金から差し引かれることが一般的ですが、2020年の民法改正により、敷金と原状回復のルールがより明確になりました。そのため、故意や過失による損傷がない限り、敷金は原則として返還されます。
不動産投資において、原状回復費用はキャッシュフローに影響を与える重要な要素です。
購入を検討している段階からシミュレーションをおこない、将来的なキャッシュフローを理解しておく必要があります。
また原状回復費用を考えずに不動産投資をおこないたい場合には、保証プランを提供している管理会社を選ぶのが良いでしょう。プラン内容は管理会社によって異なるので、契約内容を十分に確認する必要があります。
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この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。