2023.12.13

資産運用

ベルテックスコラム事務局

40代から老後の資金を貯める方法とは|いくら用意すべきなのか

  • 老後資金

「40代から老後の資金づくりを本格的に始めたい」という人は多いでしょう。本稿では、40代の方々が老後の資金づくりの目標を設定しやすいよう、「老後にお金がいくら必要か」「老後資金を貯めるための心構えは何か」「具体的にどんな方法でお金を貯めればよいか」などについて詳しく解説します。

老後資金として最低限必要なお金とは

はじめに、一般的な老年世帯の平均的な生活費(実支出)を確認しましょう。これにより、老後資金として最低限必要なお金をイメージしやすくなります。

2022年の「家計調査年報(家計収支編)」によると、65歳以上の無職夫婦のみ世帯の平均実支出は26万8,508円でした。このデータから、ひと月の老後資金の目安は約27万円といえます。

この27万円に数十年の年数(生存期間)を掛けると、老後資金の最低限必要なお金を割り出せそうですが、実際にはインフレを考慮する必要があります。

例えば、前年の65歳以上の無職夫婦のみ世帯の平均実支出は25万5,100円でした。つまり、物価上昇によって1年間で1万3,408円も平均実支出が増えているのです。仮に物価上昇に伴って平均実支出が1.5倍または2倍になった場合、老後資金として最低限必要なお金は次のようになります。

1カ月に必要な老後資金の目安 最低限必要な老後資金(25年で計算)
27万円の場合  8,100万円
40.5万円の場合(①の1.5 倍) 1億2,150万円
54万円の場合(①の2倍) 1億6,200万円

実際に物価上昇がどこまで進むか分かりませんが、私たちは年金+金融資産(人によっては老年期の労働収入)でかなりの老後資金を準備しなければなりません。老後生活で必要なお金については、以下の記事も参考になります。

40代の人はいくら貯金している?

40代では、だいたいどのくらい貯金をしているのでしょうか。個人差はあるでしょうが、平均的な金額は知っておきたいところです。

単身世帯の場合

40代単身世帯の平均貯蓄額ならびにさまざまな金融商品の平均保有額は以下のとおりです。

【40代単身世帯 種類別金融商品保有額(令和4年)】

金融商品 平均保有額(万円)
金融資産保有額 657
  預貯金 250
  (うち定期性預貯金)   (85)
  金銭信託 5
  生命保険 47
  損害保険 7
  個人年金保険 31
  債券 43
  株式 158
  投資信託 86
  財形貯蓄 7
  その他金融商品 22

 

令和4年40代単身世帯の平均金融資産保有額は、全金融商品で657万円でした。うち、預貯金が250万円に対して、株式・投資信託計で244万円、債券を含めれば287万円と、有価証券保有額の方が預貯金を上回る結果となっています。

夫婦世帯の場合

40代夫婦世帯の平均貯蓄額ならびにさまざまな金融商品の平均保有額は以下のとおりです。

【40代二人以上世帯 種類別金融商品保有額(令和4年)】

金融商品 平均保有額(万円)
金融資産保有額 825
 預貯金  356
  (うち定期性預貯金) (125)
 金銭信託 11
 生命保険 101
 損害保険 12
 個人年金保険 51
 債券  20
 株式 149
 投資信託 70
 財形貯蓄 46
 その他金融商品 10

    
40代夫婦世帯は、単身世帯を比較して有価証券の保有額割合が低く、生命保険の保有額が高いことから、独身世帯と比べるとやや保守的であることがわかります。

40代が老後資金を貯めるためにまずすべきこと

40代が老後資金を貯めるためにすべきこと、心掛けておくべきことをあげてみました。以下を順番におこなうことで、老後に向けて準備をしやすくなります。

家計のキャッシュフローを見直す

老後資金を貯めるにあたって、すぐに実行しやすく効果的なのが「家計のキャッシュフローの見直し」です。キャッシュフローを増やすためには、次の3つの視点が大切です。

  • 収支を把握する
  • 収入を増やす
  • 支出を減らす

1つ目の視点の「収支を把握する」では、家計簿をつけるのが有効です。家計簿アプリを使うと少ない負担で収支を記録できます。

2つ目の「収入を増やす」については、具体策として副業や転職、資格取得などがあります。

3つ目の「支出を減らす」では、ムダ遣いを減らすことはもちろん、固定費を見直すことが効果的です(詳しくは後述)。

退職後に必要な生活費を計算する

生命保険文化センターが実施したアンケートによると、老後資金で理想とする生活費の平均額は約38万円です。この理想の生活費は、以下の項目を足して計算したものです。

  • 老後の最低日常生活費:平均23.2万円
  • 老後のゆとりのための上乗せ額:平均 14.8万円

出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査

とはいえ、本当に必要な老後の生活費は人それぞれです。以下のような要素で変わります。

●    保有資産
●    家族構成
●    ライフスタイル
●    老後の就労状況 など

リタイアする年齢や生活の変化などをイメージしながら、ご自身にとって本当に必要な生活費を計算してみましょう。その結果、老後資金の目標金額や、目標達成のために必要な毎月の貯金額が見えてきます。

保険などの固定費の見直し

毎月、あるいは毎年支払う固定費の見直しにより、支出を効果的に減らすことができます。見直しの対象となる固定費は、以下のようなものが挙げられます。

●    保険料
●    携帯代
●    インターネット代
●    新聞代
●    サブスクサービスの料金 など

固定費の中でも見直し効果が大きいのは、支払う金額が比較的大きい保険料です。以下のポイントを意識しながら、不要な保険に加入していないかを精査しましょう。

●    重複する内容の保険に入っていないか
●    付き合いなどで加入した不要な保険はないか
●    家族構成の変更などで不要になった保険はないか

ご自身で保険を見直すことが難しいなら、家計の専門家であるファイナンシャルプランナーや複数の保険会社の窓口となっているサービスの担当者などに相談してみましょう。

40代からでも資産運用をした方が良い理由

40代からでも資産運用は遅くありません。その理由を確認して、資産運用への一歩を踏み出していきましょう。

40-50代は支出のピーク

世帯主の年代別の消費支出額の統計が出ているので見てみましょう。

【世帯主の年代別にみた2人以上の勤労者世帯の消費支出(令和4年)】

年代 月消費支出(万円)
~29歳  24.16
30歳~39歳 27.41
40歳~49歳 32.64
50歳~59歳 36.26
60歳~69歳 30.87
70歳~ 26.00

  
年代別の消費支出額を見ると、40代、50代が支出のピークを迎えることがわかります。

50代以降は収入減の可能性

50代以降は収入減可能性が否めません。

50代になると、第二の人生を早めにスタートさせるために早期退職制度を利用する方や会社内でも役職定年を迎えるなど、さまざまな理由で収入が減る場合があります。

年金問題

老後の収入の柱となる年金が、いくらもらえるのか予測しにくくなっています。日本は、少子高齢化が今まで以上進むことが見込まれています。

老後に受給することになる年金ですが、年金を負担する現役世代の人口が年々減少するため、受給出来る年金額も減ることが考えられます。現に国民年金受給額は、約20年前と比較して月2,000円強減っています。年金問題と現状についての詳細は、こちらのサイトをご参照ください。

状来の年金に不安が残る現状では、年金以外にも収入源を作っておき、老後生活にゆとりを持つ必要があります。

40代からでも簡単に始められる資産運用

40代からでも簡単に始められる資産運用の方法を挙げてみました。参考にしてみてください。

先取り貯蓄

「先取り貯蓄」とは、給与が入ったらすぐに決めた金額を貯蓄にまわしてしまうことです。そうすることで、必ず決めた金額が月々貯まっていくので、自然と増えていきます。

安全資産として、積立式の定期預金は身近で始めやすいでしょう。わざわざ新たな金融機関の口座を開設しなくても、給与振込口座を利用できます。ただ、超低金利が続くと利息は当てにできません。

ほかに先取り貯蓄に充てられるものでは、個人年金保険もいいでしょう。毎月決まった日に自動的に引き落とされ、年金保険の保険料として充当されます。

生命保険の個人年金保険は、国内外の株式や債券、不動産などに投資して利回りが良くなるように運用するので、銀行等の定期預金の利息よりは、配当金は多くなる可能性があります。

外貨建ての個人年金保険というものもありますが、為替レートや運用先の株式、債券等の価格により、利回りが変わってきます。 

節税対策

節税対策にもなる資産形成をご紹介します。

<iDeCo>
iDeCoは、「個人型確定拠出年金」の愛称です。さまざまな金融商品の中から自らの方針で商品を選んで運用していく年金のことです。税制で多くの恩恵を受ける制度として、近年利用者が増加しています。

20歳以上65歳未満の方が利用でき、65歳まで拠出(積立)が可能となっており、60歳以降に、一時金か年金かいずれかの方法で受給できます。

iDeCoを始めるには、銀行や証券会社等の金融機関にiDeCo口座を開設します。口座開設した金融機関が指定する投資信託の中から、投資したい投資信託(1つでも複数でも可)と、各投資信託への投資配分を決めます。月々の掛金は、銀行等の個人口座からの支払いのほか、勤務先の給与から天引きも可能です。

【iDeCoの税制優遇策】

拠出時(積立購入時) 毎月の掛け金は、全額所得控除の対象になります。
運用時 投資した商品から得られる分配金や運用益にかかる通常20.315%の課税が、非課税となります。
受取時 ・ 年金形式で受け取る場合・・・「公的年金控除」が利用できます。
・ 一時金で受け取る場合・・・「退職所得控除」が利用できます。

<NISA>
NISAは、イギリスの「ISA」という制度をモデルとして2014年から開始されました。購入した投資商品の配当金や分配金、値上がり益に対して20.315%の源泉分離課税がかかるところが非課税になる制度です。

NISAを利用する場合は、証券会社や銀行などの金融機関の中から、いずれか1社を選んでNISA口座を開設する必要があります。金融機関の通常の口座を開設したのち、その金融機関を通して税務署へ書類を送るなどの手続きがあるので、実際にNISAで取引が可能となるまで時間を要します。

2014年から一般NISAが、そして2018年からつみたてNISAが始まって年々口座数が増加していますが、2024年から「新NISA」がスタートします。新NISAは、既存のNISAをバージョンアップさせた内容となっています。

【2024年以降のNISA】

  つみたて投資枠 成長投資枠
対象年齢 18歳以上 18歳以上
口座開設期間 恒久化  恒久化
非課税保有限度額
(生涯で利用できる額)
1,800万円  
1,800万円の内1,200万円
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有期間 無期限 無期限
投資対象商品  長期・積立・分散投資に適した金融機関が指定する投資信託 ・ 上場株式
・  REIT
・ ETF
・ 公募株式投信等
現行制度との関係 2023年までの制度を利用している商品は、その制度の仕組みが適用され、2024年以降制度と別枠で継続
※2023年までの制度から2024年制度へのロールオーバーは不可


<不動産投資>
不動産投資でも節税が可能です。

不動産投資では、給与所得や事業所得と不動産所得を損益通算することで所得額が減った場合、所得税・住民税を減らすことができるのです。
また相続税対策にも有効とされています。税制に関しては変更があるので、必ず最新の税制を確認しておきましょう。

利益重視

利益を最優先に資産形成をおこなう場合に適した商品をご紹介します。

<株式>
株式は、投資した企業が利益を株主に還元する配当金(インカムゲイン)や、株価が値上がりした結果得られる売却益(キャピタルゲイン)が得られます。

株式は、業績÷金利=株価という考え方を念頭に置いておけば、理解しやすいでしょう。

  • 業績が良く、金利が高い→金利以上に利回りが得られる業績なら株価上昇
  • 業績が良く、金利が低い→株価上昇
  • 業績が悪く、金利が高い→株価下落
  • 業績が悪く、金利が低い→株価上昇しやすいが、業績による

※相場環境などによってさまざまなケースが想定されます

<投資信託>
投資信託は、運用のプロが不特定多数の投資家からお金を集めて、さまざまな株式や債券などに分散投資をおこないます。商品ごとにテーマが決まっており、そのテーマに沿った銘柄へ分散投資します。(例:「グロース株(成長株)投信」という商品のテーマは、今後大きく成長が期待できる分野の株式を対象として運用する投資信託で、半導体やスマートフォン、AIなどさまざまな先端技術関連の株式に分散投資する商品)。

投資信託もキャピタルゲインとインカムゲインの2種類の利益を得る方法があります。そして投資対象によりリスク分類があります。

リスク分類 投資対象
ローリスク・ローリターン ・ 国内債券のみ
ミドルリスク・ミドルリターン  ・ 国内債券+国内株式
・ 不動産投資信託
・ 海外債券(為替ヘッジ有り)
ハイリスク・ハイリターン  ・ 国内株式のみ
・ 海外株式のみ
・ 国内株式+海外株式
・ 国内株式・債券+海外株式・債券
・ 海外債券(為替ヘッジなし)

万が一用の保険

<積立保険>

積立保険は、毎月一定額を払込み、満期には満期保険金が得られます。おもに債券等で運用されるため、満期保険金は払込総額よりは多めの金額となります。そして満期までに死亡すると死亡保険金が支払われ、保険期間の途中で解約すると解約返戻金を受け取ることができます。

貯蓄性の高い保険ですが、国内金利が低金利だと、利回りも低くなる傾向があります。「学資保険」、「こども保険」は、この保険が基本として設計されています。

40代から始められる資産形成例

40代から始められる資産形成のシミュレーションを3パターン挙げてみました。

●    シミュレーション①:iDeCoのみの資産運用
●    シミュレーション②:iDeCoと不動産投資を組み合わせた資産運用
●    シミュレーション③:iDeCo、不動産投資、新NISAを組み合わせた資産運用

それぞれの内容や運用成果などを詳しく見ていきましょう。

シミュレーション①iDeCoを活用して資産運用

会社に企業年金がない会社員の場合、iDeCoの掛金の上限(拠出限度額)は月額2万3,000円です。ここでは、上限額を25年間運用するシミュレーションを行いました。

iDeCoは、「許容できるリスク」や「目標利回り」をご自身で設定して投資商品を選べる資産運用の仕組みです。今回は、3%と5%の利回りを想定しました。両者の利益の差は、25年間で約344万円となりました。

<おもな条件>
●    毎月2万3,000円積立
●    25年間運用
●    運用利回り3%と5%の場合(ともに複利)


<25年後の運用成果>
●    積立総額(投資元本)・・・690万円
●    運用利回り3%の場合・・・1,025万8,180円:335万8,180円の利益
●    運用利回り5%の場合・・・1,369万6,723円:679万6,723円の利益

運用利回りを高く設定するということは、それだけリスクを取るということです。このことを踏まえて、ご自身にとってベストな目標利回りを設定することが大切です。

シミュレーション②iDeCoを活用しつつ、不動産投資をして資産運用

次に、「シミュレーション①のiDeCo(運用利回り3%)」に不動産投資を加えて資産運用を行った場合の運用成果を試算してみましょう。運用期間はiDeCo、不動産投資ともに35年とします。
なお、物件価格は2,000万円としました。これはワンルームマンション1戸の物件価格を想定した金額です。

<おもな条件・iDeCo>
●    毎月2万3,000円積立
●    35年間運用
●    運用利回り3%(複利)


<35年後の運用成果・iDeCo>
●    積立総額(投資元本)・・・966万円
●    運用結果・・・1,705万5,964円 739万5,964円の利益

<おもな条件・不動産投資>
●    物件価格2,000万円
●    頭金10万円
●    借入金額1,990万円
●    借入期間35年
●    借入金利1.65%
●    家賃収入 月6万7,000円
●    管理経費 月7,540円
●    修繕積立金 月1,470円


<35年後の運用成果・不動産投資>
●    35年間総額家賃収入・・・2,814万円
●    35年間借入金返済総額・・・2,620万9,040円
●    年表面利回り・・・4%
●    35年間管理費総額・・・378万4,200円
●    35年間収支・・・―185万3,240円
※36年目以降
毎年収支・・・69万5,880円
38年目・・・208万7,640円で、35年間収支を回収し、39年目以降は黒字
そして不動産資産2,000万円取得(ローン完済時)

シミュレーション③iDeCoと新NISAを活用しつつ、不動産投資をして資産運用

さらに「シミュレーション②のiDeCo(運用利回り3%)と不動産投資」に、新NISAを加えて資産運用を行った場合の運用成果を試算してみましょう。シミュレーション②との違いは、不動産投資の物件価格を2,000万円から4,000万円(ワンルームマンション2戸のイメージ)に拡大している点です。

運用期間はiDeCo25年、不動産投資35年、新NISA10年とします。なお、新NISAでは利回り3%の比較的低リスクの投資信託を、毎月3万円ずつ積み立てていくイメージです。

ここでご紹介した3パターンのシミュレーションにより、複数の種類の資産運用をするほど、より多くの運用成果を出しやすいことがわかります。だからといって、複数の種類の資産運用をすれば、必ず利益が得られるわけではありません。

<おもな条件・iDeCo>
●    毎月2万3,000円積立
●    35年間運用
●    運用利回り3%(複利)


<おもな条件・不動産投資>
●    物件価格4,000万円
●    頭金20万円
●    借入金額3,980万円
●    借入期間35年
●    借入金利1.65%
●    家賃収入 月13万4,000円
●    管理経費 月1万5,080円
●    修繕積立金 月2.940円


<おもな条件・新NISA>
不動産投資で保険効果が得られるため、生命保険を減額して新NISAにあてる
●    毎月3万円積立
●    運用利回り3%(複利)
●    運用期間10年


<35年後の運用成果・iDeCo>
●    積立総額(投資元本)・・・966万円
●    運用結果・・・1,705万5,964円 739万5,964円の利益


<35年後の運用成果・不動産投資>
●    35年間総額家賃収入・・・5,628万円
●    35年間借入金返済総額・・・5,241万8,080円
●    年表面利回り・・・4%
●    35年間管理費総額・・・756万8,400円
●    35年間収支・・・―370万6,480円
※36年目以降
毎年収支・・・139万1,760円
38年目・・・417万5,280円で、35年間収支を回収し、39年目以降は黒字
そして不動産資産4,000万円取得(ローン完済時)


<10年後の運用成果・新NISA>
●    積立総額(投資元本)・・・360万円
●    運用成果・・・419万2,243円 59万2,243円の利益

不動産投資の注意点

ここまでの内容で、iDeCoや新NISAに不動産投資を加えると、より効率的な資産運用をしやすくなることが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

ただし、40代からの老後資金のための資産運用では老後までの期間があまりないため、失敗は許されません。失敗しないための不動産投資の注意点としては、以下の内容が挙げられます。

借入額に上限がある

不動産投資で物件を購入する際は、ローンを利用するのが一般的です。しかし、借入額に上限があったり、融資審査に通らなかったりするケースもあります。不動産投資に対して「いくら融資をしてもらえるか」については、以下の条件で変わります。

●    利用する金融機関(各行で評価基準が異なる)
●    申込者の属性評価(年収、保有資産、勤務先、勤続年数、信用情報など)
●    物件の条件(資産価値と将来得られる家賃収入など)
●    年収に対する借入額の倍率 など

40代の方は、保有資産・年収・勤続年数などで有利なケースが多いのではないでしょうか。これらの条件を最大限に活用して、老後資金づくりを進めましょう。

空室が出てしまうと安定した収益が得られない

不動産投資は、家賃収入を主体にした資産運用です。空室が発生すると家賃収入がなくなり、ローンを組んでいる場合は手持ち資金で返済しなければなりません。この空室リスクを軽減するためには、以下のようなポイントを意識する必要があります。

●    物件の種類(例:入居者に好まれるデザインのマンションを選ぶ)
●    築年数(例:新築や築浅の物件を選ぶ)
●    立地(例:複数路線が使える駅近物件を選ぶ)
●    管理会社(例:評判の良い管理会社を選ぶ)
●    需要と供給のバランス など

初心者に向いているのは、経営に手間がかからないワンルームマンションです。

収支計画を立てずにはじめるのは危険

お金の動きを把握しないまま不動産投資を始めてしまうと、想定外の費用を負担することになったり、経営が破綻したりするおそれがあります。これを防ぐには、物件を購入する前に収支計画を立てる必要があります。

不動産投資における収支計画とは、以下のような計算を事前に行い、適正な経営ができるかを確認することです。

●    物件取得にいくらかかるか
●    家賃収入や経費がいくらになるか
●    税金がいくらかかるか
●    上記の結果、利益がいくらになるか など

区分マンション投資などの場合は、収支計画を不動産会社が作成してくれるケースもあります。しかし、その内容を鵜呑みにするのではなく、実際の経営と差がないかを確認することが大切です。

事前に災害リスクがあることを把握する

不動産投資にはいくつものリスクがありますが、その一つが災害リスクです。災害リスクとは、火災・地震・土砂崩れ・水害などによって物件が使えなくなったり、修復するのに時間や費用がかかったりすることです。

災害で物件が使えなくなれば家賃収入が途絶え、ローンの返済だけが残ります。しかし、事前に対策を講じておけば、災害リスクを軽減できます。以下のような対策が考えられます。

●    新耐震基準を満たした物件を選ぶ
●    地盤が強い土地を選ぶ
●    耐火性の高い構造(鉄筋コンクリート造など)を選ぶ
●    火災保険、地震保険に加入する

40代からの不動産投資は、失敗が許されません。だからこそ、事前対策が欠かせません。災害以外のリスクにも同じことがいえます。それぞれのリスクに対して、どのような事前対策があるかを学びましょう。

40代が注意したい投資のポイント

40代が注意したい投資のポイントです。最低限、これらを念頭において資産形成を考えてみましょう。

貯金と運用資金は別に考える

貯金と運用資金は別で考えましょう。貯金は突発的な出費が発生した際に使えるようにしておきます。運用資金は、生活防衛資金を除いたお金から捻出しましょう。

分散投資をする

資産運用の際、分散投資を心掛けましょう。40代になるとリスクを抑えた運用をすべきです。老後に備えて、失敗を恐れるべき年代となっているのです。分散投資はリスク回避の方法の1つです。同じ商品、同じ動きをする商品のみで運用すると、失敗した場合、取り返しのつかない状態に陥りかねません。しかし分散投資をおこなっていれば、一部が失敗しても、それ以外の資産は生き続けられるのです。

リスク度合いは低めに設定する

先程もお話しましたが、40代はリスクに恐れるべき年代です。老後に備えたお金を大きく減らすわけにはいきません。よってリスク度合いは低めに設定するべきでしょう。

まとめ

今回は、40代から老後資金を貯める方法を解説してきました。40代は収入面でも支出面でもピークに近づく時期です。そして老後に向けて充実した資産運用を始めるにはラストチャンスに近いタイミングでもあります。さまざまな資産運用の方法を紹介してきましたが、老後にいくら必要なのかを個人で把握して目標金額として設定し、それに向けた資産形成をおこなっていきましょう。

ベルテックスでは資産形成にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.12.13

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40代から老後の資金を貯める方法とは|いくら用意すべきなのか

  • 老後資金

「40代から老後の資金づくりを本格的に始めたい」という人は多いでしょう。本稿では、40代の方々が老後の資金づくりの目標を設定しやすいよう、「老後にお金がいくら必要か」「老後資金を貯めるための心構えは何か」「具体的にどんな方法でお金を貯めればよいか」などについて詳しく解説します。

老後資金として最低限必要なお金とは

はじめに、一般的な老年世帯の平均的な生活費(実支出)を確認しましょう。これにより、老後資金として最低限必要なお金をイメージしやすくなります。

2022年の「家計調査年報(家計収支編)」によると、65歳以上の無職夫婦のみ世帯の平均実支出は26万8,508円でした。このデータから、ひと月の老後資金の目安は約27万円といえます。

この27万円に数十年の年数(生存期間)を掛けると、老後資金の最低限必要なお金を割り出せそうですが、実際にはインフレを考慮する必要があります。

例えば、前年の65歳以上の無職夫婦のみ世帯の平均実支出は25万5,100円でした。つまり、物価上昇によって1年間で1万3,408円も平均実支出が増えているのです。仮に物価上昇に伴って平均実支出が1.5倍または2倍になった場合、老後資金として最低限必要なお金は次のようになります。

1カ月に必要な老後資金の目安 最低限必要な老後資金(25年で計算)
27万円の場合  8,100万円
40.5万円の場合(①の1.5 倍) 1億2,150万円
54万円の場合(①の2倍) 1億6,200万円

実際に物価上昇がどこまで進むか分かりませんが、私たちは年金+金融資産(人によっては老年期の労働収入)でかなりの老後資金を準備しなければなりません。老後生活で必要なお金については、以下の記事も参考になります。

40代の人はいくら貯金している?

40代では、だいたいどのくらい貯金をしているのでしょうか。個人差はあるでしょうが、平均的な金額は知っておきたいところです。

単身世帯の場合

40代単身世帯の平均貯蓄額ならびにさまざまな金融商品の平均保有額は以下のとおりです。

【40代単身世帯 種類別金融商品保有額(令和4年)】

金融商品 平均保有額(万円)
金融資産保有額 657
  預貯金 250
  (うち定期性預貯金)   (85)
  金銭信託 5
  生命保険 47
  損害保険 7
  個人年金保険 31
  債券 43
  株式 158
  投資信託 86
  財形貯蓄 7
  その他金融商品 22

 

令和4年40代単身世帯の平均金融資産保有額は、全金融商品で657万円でした。うち、預貯金が250万円に対して、株式・投資信託計で244万円、債券を含めれば287万円と、有価証券保有額の方が預貯金を上回る結果となっています。

夫婦世帯の場合

40代夫婦世帯の平均貯蓄額ならびにさまざまな金融商品の平均保有額は以下のとおりです。

【40代二人以上世帯 種類別金融商品保有額(令和4年)】

金融商品 平均保有額(万円)
金融資産保有額 825
 預貯金  356
  (うち定期性預貯金) (125)
 金銭信託 11
 生命保険 101
 損害保険 12
 個人年金保険 51
 債券  20
 株式 149
 投資信託 70
 財形貯蓄 46
 その他金融商品 10

    
40代夫婦世帯は、単身世帯を比較して有価証券の保有額割合が低く、生命保険の保有額が高いことから、独身世帯と比べるとやや保守的であることがわかります。

40代が老後資金を貯めるためにまずすべきこと

40代が老後資金を貯めるためにすべきこと、心掛けておくべきことをあげてみました。以下を順番におこなうことで、老後に向けて準備をしやすくなります。

家計のキャッシュフローを見直す

老後資金を貯めるにあたって、すぐに実行しやすく効果的なのが「家計のキャッシュフローの見直し」です。キャッシュフローを増やすためには、次の3つの視点が大切です。

  • 収支を把握する
  • 収入を増やす
  • 支出を減らす

1つ目の視点の「収支を把握する」では、家計簿をつけるのが有効です。家計簿アプリを使うと少ない負担で収支を記録できます。

2つ目の「収入を増やす」については、具体策として副業や転職、資格取得などがあります。

3つ目の「支出を減らす」では、ムダ遣いを減らすことはもちろん、固定費を見直すことが効果的です(詳しくは後述)。

退職後に必要な生活費を計算する

生命保険文化センターが実施したアンケートによると、老後資金で理想とする生活費の平均額は約38万円です。この理想の生活費は、以下の項目を足して計算したものです。

  • 老後の最低日常生活費:平均23.2万円
  • 老後のゆとりのための上乗せ額:平均 14.8万円

出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査

とはいえ、本当に必要な老後の生活費は人それぞれです。以下のような要素で変わります。

●    保有資産
●    家族構成
●    ライフスタイル
●    老後の就労状況 など

リタイアする年齢や生活の変化などをイメージしながら、ご自身にとって本当に必要な生活費を計算してみましょう。その結果、老後資金の目標金額や、目標達成のために必要な毎月の貯金額が見えてきます。

保険などの固定費の見直し

毎月、あるいは毎年支払う固定費の見直しにより、支出を効果的に減らすことができます。見直しの対象となる固定費は、以下のようなものが挙げられます。

●    保険料
●    携帯代
●    インターネット代
●    新聞代
●    サブスクサービスの料金 など

固定費の中でも見直し効果が大きいのは、支払う金額が比較的大きい保険料です。以下のポイントを意識しながら、不要な保険に加入していないかを精査しましょう。

●    重複する内容の保険に入っていないか
●    付き合いなどで加入した不要な保険はないか
●    家族構成の変更などで不要になった保険はないか

ご自身で保険を見直すことが難しいなら、家計の専門家であるファイナンシャルプランナーや複数の保険会社の窓口となっているサービスの担当者などに相談してみましょう。

40代からでも資産運用をした方が良い理由

40代からでも資産運用は遅くありません。その理由を確認して、資産運用への一歩を踏み出していきましょう。

40-50代は支出のピーク

世帯主の年代別の消費支出額の統計が出ているので見てみましょう。

【世帯主の年代別にみた2人以上の勤労者世帯の消費支出(令和4年)】

年代 月消費支出(万円)
~29歳  24.16
30歳~39歳 27.41
40歳~49歳 32.64
50歳~59歳 36.26
60歳~69歳 30.87
70歳~ 26.00

  
年代別の消費支出額を見ると、40代、50代が支出のピークを迎えることがわかります。

50代以降は収入減の可能性

50代以降は収入減可能性が否めません。

50代になると、第二の人生を早めにスタートさせるために早期退職制度を利用する方や会社内でも役職定年を迎えるなど、さまざまな理由で収入が減る場合があります。

年金問題

老後の収入の柱となる年金が、いくらもらえるのか予測しにくくなっています。日本は、少子高齢化が今まで以上進むことが見込まれています。

老後に受給することになる年金ですが、年金を負担する現役世代の人口が年々減少するため、受給出来る年金額も減ることが考えられます。現に国民年金受給額は、約20年前と比較して月2,000円強減っています。年金問題と現状についての詳細は、こちらのサイトをご参照ください。

状来の年金に不安が残る現状では、年金以外にも収入源を作っておき、老後生活にゆとりを持つ必要があります。

40代からでも簡単に始められる資産運用

40代からでも簡単に始められる資産運用の方法を挙げてみました。参考にしてみてください。

先取り貯蓄

「先取り貯蓄」とは、給与が入ったらすぐに決めた金額を貯蓄にまわしてしまうことです。そうすることで、必ず決めた金額が月々貯まっていくので、自然と増えていきます。

安全資産として、積立式の定期預金は身近で始めやすいでしょう。わざわざ新たな金融機関の口座を開設しなくても、給与振込口座を利用できます。ただ、超低金利が続くと利息は当てにできません。

ほかに先取り貯蓄に充てられるものでは、個人年金保険もいいでしょう。毎月決まった日に自動的に引き落とされ、年金保険の保険料として充当されます。

生命保険の個人年金保険は、国内外の株式や債券、不動産などに投資して利回りが良くなるように運用するので、銀行等の定期預金の利息よりは、配当金は多くなる可能性があります。

外貨建ての個人年金保険というものもありますが、為替レートや運用先の株式、債券等の価格により、利回りが変わってきます。 

節税対策

節税対策にもなる資産形成をご紹介します。

<iDeCo>
iDeCoは、「個人型確定拠出年金」の愛称です。さまざまな金融商品の中から自らの方針で商品を選んで運用していく年金のことです。税制で多くの恩恵を受ける制度として、近年利用者が増加しています。

20歳以上65歳未満の方が利用でき、65歳まで拠出(積立)が可能となっており、60歳以降に、一時金か年金かいずれかの方法で受給できます。

iDeCoを始めるには、銀行や証券会社等の金融機関にiDeCo口座を開設します。口座開設した金融機関が指定する投資信託の中から、投資したい投資信託(1つでも複数でも可)と、各投資信託への投資配分を決めます。月々の掛金は、銀行等の個人口座からの支払いのほか、勤務先の給与から天引きも可能です。

【iDeCoの税制優遇策】

拠出時(積立購入時) 毎月の掛け金は、全額所得控除の対象になります。
運用時 投資した商品から得られる分配金や運用益にかかる通常20.315%の課税が、非課税となります。
受取時 ・ 年金形式で受け取る場合・・・「公的年金控除」が利用できます。
・ 一時金で受け取る場合・・・「退職所得控除」が利用できます。

<NISA>
NISAは、イギリスの「ISA」という制度をモデルとして2014年から開始されました。購入した投資商品の配当金や分配金、値上がり益に対して20.315%の源泉分離課税がかかるところが非課税になる制度です。

NISAを利用する場合は、証券会社や銀行などの金融機関の中から、いずれか1社を選んでNISA口座を開設する必要があります。金融機関の通常の口座を開設したのち、その金融機関を通して税務署へ書類を送るなどの手続きがあるので、実際にNISAで取引が可能となるまで時間を要します。

2014年から一般NISAが、そして2018年からつみたてNISAが始まって年々口座数が増加していますが、2024年から「新NISA」がスタートします。新NISAは、既存のNISAをバージョンアップさせた内容となっています。

【2024年以降のNISA】

  つみたて投資枠 成長投資枠
対象年齢 18歳以上 18歳以上
口座開設期間 恒久化  恒久化
非課税保有限度額
(生涯で利用できる額)
1,800万円  
1,800万円の内1,200万円
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有期間 無期限 無期限
投資対象商品  長期・積立・分散投資に適した金融機関が指定する投資信託 ・ 上場株式
・  REIT
・ ETF
・ 公募株式投信等
現行制度との関係 2023年までの制度を利用している商品は、その制度の仕組みが適用され、2024年以降制度と別枠で継続
※2023年までの制度から2024年制度へのロールオーバーは不可


<不動産投資>
不動産投資でも節税が可能です。

不動産投資では、給与所得や事業所得と不動産所得を損益通算することで所得額が減った場合、所得税・住民税を減らすことができるのです。
また相続税対策にも有効とされています。税制に関しては変更があるので、必ず最新の税制を確認しておきましょう。

利益重視

利益を最優先に資産形成をおこなう場合に適した商品をご紹介します。

<株式>
株式は、投資した企業が利益を株主に還元する配当金(インカムゲイン)や、株価が値上がりした結果得られる売却益(キャピタルゲイン)が得られます。

株式は、業績÷金利=株価という考え方を念頭に置いておけば、理解しやすいでしょう。

  • 業績が良く、金利が高い→金利以上に利回りが得られる業績なら株価上昇
  • 業績が良く、金利が低い→株価上昇
  • 業績が悪く、金利が高い→株価下落
  • 業績が悪く、金利が低い→株価上昇しやすいが、業績による

※相場環境などによってさまざまなケースが想定されます

<投資信託>
投資信託は、運用のプロが不特定多数の投資家からお金を集めて、さまざまな株式や債券などに分散投資をおこないます。商品ごとにテーマが決まっており、そのテーマに沿った銘柄へ分散投資します。(例:「グロース株(成長株)投信」という商品のテーマは、今後大きく成長が期待できる分野の株式を対象として運用する投資信託で、半導体やスマートフォン、AIなどさまざまな先端技術関連の株式に分散投資する商品)。

投資信託もキャピタルゲインとインカムゲインの2種類の利益を得る方法があります。そして投資対象によりリスク分類があります。

リスク分類 投資対象
ローリスク・ローリターン ・ 国内債券のみ
ミドルリスク・ミドルリターン  ・ 国内債券+国内株式
・ 不動産投資信託
・ 海外債券(為替ヘッジ有り)
ハイリスク・ハイリターン  ・ 国内株式のみ
・ 海外株式のみ
・ 国内株式+海外株式
・ 国内株式・債券+海外株式・債券
・ 海外債券(為替ヘッジなし)

万が一用の保険

<積立保険>

積立保険は、毎月一定額を払込み、満期には満期保険金が得られます。おもに債券等で運用されるため、満期保険金は払込総額よりは多めの金額となります。そして満期までに死亡すると死亡保険金が支払われ、保険期間の途中で解約すると解約返戻金を受け取ることができます。

貯蓄性の高い保険ですが、国内金利が低金利だと、利回りも低くなる傾向があります。「学資保険」、「こども保険」は、この保険が基本として設計されています。

40代から始められる資産形成例

40代から始められる資産形成のシミュレーションを3パターン挙げてみました。

●    シミュレーション①:iDeCoのみの資産運用
●    シミュレーション②:iDeCoと不動産投資を組み合わせた資産運用
●    シミュレーション③:iDeCo、不動産投資、新NISAを組み合わせた資産運用

それぞれの内容や運用成果などを詳しく見ていきましょう。

シミュレーション①iDeCoを活用して資産運用

会社に企業年金がない会社員の場合、iDeCoの掛金の上限(拠出限度額)は月額2万3,000円です。ここでは、上限額を25年間運用するシミュレーションを行いました。

iDeCoは、「許容できるリスク」や「目標利回り」をご自身で設定して投資商品を選べる資産運用の仕組みです。今回は、3%と5%の利回りを想定しました。両者の利益の差は、25年間で約344万円となりました。

<おもな条件>
●    毎月2万3,000円積立
●    25年間運用
●    運用利回り3%と5%の場合(ともに複利)


<25年後の運用成果>
●    積立総額(投資元本)・・・690万円
●    運用利回り3%の場合・・・1,025万8,180円:335万8,180円の利益
●    運用利回り5%の場合・・・1,369万6,723円:679万6,723円の利益

運用利回りを高く設定するということは、それだけリスクを取るということです。このことを踏まえて、ご自身にとってベストな目標利回りを設定することが大切です。

シミュレーション②iDeCoを活用しつつ、不動産投資をして資産運用

次に、「シミュレーション①のiDeCo(運用利回り3%)」に不動産投資を加えて資産運用を行った場合の運用成果を試算してみましょう。運用期間はiDeCo、不動産投資ともに35年とします。
なお、物件価格は2,000万円としました。これはワンルームマンション1戸の物件価格を想定した金額です。

<おもな条件・iDeCo>
●    毎月2万3,000円積立
●    35年間運用
●    運用利回り3%(複利)


<35年後の運用成果・iDeCo>
●    積立総額(投資元本)・・・966万円
●    運用結果・・・1,705万5,964円 739万5,964円の利益

<おもな条件・不動産投資>
●    物件価格2,000万円
●    頭金10万円
●    借入金額1,990万円
●    借入期間35年
●    借入金利1.65%
●    家賃収入 月6万7,000円
●    管理経費 月7,540円
●    修繕積立金 月1,470円


<35年後の運用成果・不動産投資>
●    35年間総額家賃収入・・・2,814万円
●    35年間借入金返済総額・・・2,620万9,040円
●    年表面利回り・・・4%
●    35年間管理費総額・・・378万4,200円
●    35年間収支・・・―185万3,240円
※36年目以降
毎年収支・・・69万5,880円
38年目・・・208万7,640円で、35年間収支を回収し、39年目以降は黒字
そして不動産資産2,000万円取得(ローン完済時)

シミュレーション③iDeCoと新NISAを活用しつつ、不動産投資をして資産運用

さらに「シミュレーション②のiDeCo(運用利回り3%)と不動産投資」に、新NISAを加えて資産運用を行った場合の運用成果を試算してみましょう。シミュレーション②との違いは、不動産投資の物件価格を2,000万円から4,000万円(ワンルームマンション2戸のイメージ)に拡大している点です。

運用期間はiDeCo25年、不動産投資35年、新NISA10年とします。なお、新NISAでは利回り3%の比較的低リスクの投資信託を、毎月3万円ずつ積み立てていくイメージです。

ここでご紹介した3パターンのシミュレーションにより、複数の種類の資産運用をするほど、より多くの運用成果を出しやすいことがわかります。だからといって、複数の種類の資産運用をすれば、必ず利益が得られるわけではありません。

<おもな条件・iDeCo>
●    毎月2万3,000円積立
●    35年間運用
●    運用利回り3%(複利)


<おもな条件・不動産投資>
●    物件価格4,000万円
●    頭金20万円
●    借入金額3,980万円
●    借入期間35年
●    借入金利1.65%
●    家賃収入 月13万4,000円
●    管理経費 月1万5,080円
●    修繕積立金 月2.940円


<おもな条件・新NISA>
不動産投資で保険効果が得られるため、生命保険を減額して新NISAにあてる
●    毎月3万円積立
●    運用利回り3%(複利)
●    運用期間10年


<35年後の運用成果・iDeCo>
●    積立総額(投資元本)・・・966万円
●    運用結果・・・1,705万5,964円 739万5,964円の利益


<35年後の運用成果・不動産投資>
●    35年間総額家賃収入・・・5,628万円
●    35年間借入金返済総額・・・5,241万8,080円
●    年表面利回り・・・4%
●    35年間管理費総額・・・756万8,400円
●    35年間収支・・・―370万6,480円
※36年目以降
毎年収支・・・139万1,760円
38年目・・・417万5,280円で、35年間収支を回収し、39年目以降は黒字
そして不動産資産4,000万円取得(ローン完済時)


<10年後の運用成果・新NISA>
●    積立総額(投資元本)・・・360万円
●    運用成果・・・419万2,243円 59万2,243円の利益

不動産投資の注意点

ここまでの内容で、iDeCoや新NISAに不動産投資を加えると、より効率的な資産運用をしやすくなることが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

ただし、40代からの老後資金のための資産運用では老後までの期間があまりないため、失敗は許されません。失敗しないための不動産投資の注意点としては、以下の内容が挙げられます。

借入額に上限がある

不動産投資で物件を購入する際は、ローンを利用するのが一般的です。しかし、借入額に上限があったり、融資審査に通らなかったりするケースもあります。不動産投資に対して「いくら融資をしてもらえるか」については、以下の条件で変わります。

●    利用する金融機関(各行で評価基準が異なる)
●    申込者の属性評価(年収、保有資産、勤務先、勤続年数、信用情報など)
●    物件の条件(資産価値と将来得られる家賃収入など)
●    年収に対する借入額の倍率 など

40代の方は、保有資産・年収・勤続年数などで有利なケースが多いのではないでしょうか。これらの条件を最大限に活用して、老後資金づくりを進めましょう。

空室が出てしまうと安定した収益が得られない

不動産投資は、家賃収入を主体にした資産運用です。空室が発生すると家賃収入がなくなり、ローンを組んでいる場合は手持ち資金で返済しなければなりません。この空室リスクを軽減するためには、以下のようなポイントを意識する必要があります。

●    物件の種類(例:入居者に好まれるデザインのマンションを選ぶ)
●    築年数(例:新築や築浅の物件を選ぶ)
●    立地(例:複数路線が使える駅近物件を選ぶ)
●    管理会社(例:評判の良い管理会社を選ぶ)
●    需要と供給のバランス など

初心者に向いているのは、経営に手間がかからないワンルームマンションです。

収支計画を立てずにはじめるのは危険

お金の動きを把握しないまま不動産投資を始めてしまうと、想定外の費用を負担することになったり、経営が破綻したりするおそれがあります。これを防ぐには、物件を購入する前に収支計画を立てる必要があります。

不動産投資における収支計画とは、以下のような計算を事前に行い、適正な経営ができるかを確認することです。

●    物件取得にいくらかかるか
●    家賃収入や経費がいくらになるか
●    税金がいくらかかるか
●    上記の結果、利益がいくらになるか など

区分マンション投資などの場合は、収支計画を不動産会社が作成してくれるケースもあります。しかし、その内容を鵜呑みにするのではなく、実際の経営と差がないかを確認することが大切です。

事前に災害リスクがあることを把握する

不動産投資にはいくつものリスクがありますが、その一つが災害リスクです。災害リスクとは、火災・地震・土砂崩れ・水害などによって物件が使えなくなったり、修復するのに時間や費用がかかったりすることです。

災害で物件が使えなくなれば家賃収入が途絶え、ローンの返済だけが残ります。しかし、事前に対策を講じておけば、災害リスクを軽減できます。以下のような対策が考えられます。

●    新耐震基準を満たした物件を選ぶ
●    地盤が強い土地を選ぶ
●    耐火性の高い構造(鉄筋コンクリート造など)を選ぶ
●    火災保険、地震保険に加入する

40代からの不動産投資は、失敗が許されません。だからこそ、事前対策が欠かせません。災害以外のリスクにも同じことがいえます。それぞれのリスクに対して、どのような事前対策があるかを学びましょう。

40代が注意したい投資のポイント

40代が注意したい投資のポイントです。最低限、これらを念頭において資産形成を考えてみましょう。

貯金と運用資金は別に考える

貯金と運用資金は別で考えましょう。貯金は突発的な出費が発生した際に使えるようにしておきます。運用資金は、生活防衛資金を除いたお金から捻出しましょう。

分散投資をする

資産運用の際、分散投資を心掛けましょう。40代になるとリスクを抑えた運用をすべきです。老後に備えて、失敗を恐れるべき年代となっているのです。分散投資はリスク回避の方法の1つです。同じ商品、同じ動きをする商品のみで運用すると、失敗した場合、取り返しのつかない状態に陥りかねません。しかし分散投資をおこなっていれば、一部が失敗しても、それ以外の資産は生き続けられるのです。

リスク度合いは低めに設定する

先程もお話しましたが、40代はリスクに恐れるべき年代です。老後に備えたお金を大きく減らすわけにはいきません。よってリスク度合いは低めに設定するべきでしょう。

まとめ

今回は、40代から老後資金を貯める方法を解説してきました。40代は収入面でも支出面でもピークに近づく時期です。そして老後に向けて充実した資産運用を始めるにはラストチャンスに近いタイミングでもあります。さまざまな資産運用の方法を紹介してきましたが、老後にいくら必要なのかを個人で把握して目標金額として設定し、それに向けた資産形成をおこなっていきましょう。

ベルテックスでは資産形成にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。