2023.12.13

不動産投資のコツ

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の空室リスクとは 原因とリスク対策を徹底解説

  • 空室対策
  • 不動産投資

不動産投資を考える際、気になるのは空室リスクの問題です。しかし、具体的な情報が不足しているため、空室の影響や原因、対策について理解する機会が少ないかもしれません。この記事では、空室率やその原因、対策について解説します。

不動産投資の空室率は一般的にどのくらい?

不動産投資の空室率を知っておくことは、不動産投資の収支計画を立てる面で重要です。不動産投資の成功のカギを握るひとつの指標とも言えるでしょう。

全国の空室率は約20%

不動産投資の投資対象である賃貸住宅の全国主要都市の平成30年における空室率は以下のとおりです。

【平成30年全国主要都市別賃貸住宅空室率】

都市名 空室率
東京23区 約13.7%
名古屋市 約16.7%
大阪市 約20.7%
全国 約18.4%


この統計でいう「賃貸住宅」の定義は、「居住世帯のない住宅・空き家(賃貸用)」と「居住世帯のある住宅・借家」の合計とさせていただいています。それらを分母とし、「居住世帯のない住宅・空き家(賃貸用)」を分子として空室率を導き出しました。

全国の空室率が約18.4%です。関東圏の東京23区が13%台なのとは対照的に、大阪市は20%台という高い空室率となっています。

空室率の推移はほぼ横ばい

では、最新の統計結果からさかのぼって直近10年間の空室率はどのように推移しているのでしょうか。

【平成20年・25年・30年全国主要都市別賃貸住宅空室率】

都市名 平成20年 平成25年 平成30年
東京23区 約14.4% 約15.7% 約13.7%
名古屋市 約17.3% 約17.3% 約16.7%
大阪市 約19.4% 約20.7% 約20.7%
全国 約18.8% 約18.8% 約18.4%

            
全国的には、ほぼ横ばいという結果となっています。大阪市が若干上がっているものの、東京23区と名古屋市はやや減少しています。平成20年はリーマンショックが起きた年、そして平成25年はアベノミクス元年という、ともに経済にとって節目の年となっており注目すべき点でしたが、賃貸住宅需要に関しては大きな影響がなかったといえます。

空室期間の平均

平均募集期間は4〜5カ月

2023年2月における全国主要都府県の賃貸住宅の平均入居者募集期間の統計をみてみましょう。

【全国主要都府県2023年2月期賃貸住宅平均募集期間】

都府県名 募集期間
東京23区 4.75ヵ月
愛知県 5.42ヵ月
大阪府 5.01ヵ月
静岡県 6.61ヵ月
福岡県 4.69ヵ月

    
大都市に関しては、おおむね5ヵ月前後の空室期間があることが見て取れます。1度空室が出来ると約5ヵ月間は家賃収入が無いことを念頭に置いた方がよいでしょう。これら大都市は約5ヵ月間という統計結果ですが、静岡県など地方中核都市となると人の出入りが少ないことから、5ヵ月を上回る空室期間ができることを頭に置いておく必要があります。

平均入居期間は2~4年

では、賃貸住宅の入居者が同じ部屋に何年入居していたかを見てみましょう。

【2022年度主要圏 居住仕様別平均居住期間】

  単身 ファミリー 全体
首都圏 3年7ヵ月 5年5ヵ月 4年3ヵ月
関西圏 2年10ヵ月 5年1ヵ月 3年10ヵ月
上記のぞくエリア 3年2ヵ月 5年 4年
全国 3年3ヵ月 5年2ヵ月 4年1ヵ月

この期間はコロナ禍の影響がある可能性がありますが、単身者向けはおおむね3年前後、ファミリータイプは、ほぼ5年間同じ部屋に住み続けることがわかりました。単身者向けの平均入居期間は専門学生が2年制、大学は4年制が多いこともあり、この平均入居期間は納得でしょう。

しかしファミリー向けは、転勤のスパンや、家族構成の変化、賃貸から持ち家への転居など、さまざまな要因はあるものの、全国的にほぼ5年であることは注目すべきです。

築年数での差

では、築年数で空室率に差が出るのでしょうか。東京23区の2022年10月における築年数別空室率のデータを見てみましょう。

【東京23区築年数別空室率(2022年10月)】

築年数 空室率
5年未満 13.78%
5~10年 6.85%
10~15年 7.04%
15~20年 7.02%
20~25年 8.69%
25~30年 12.75%
31年以降  12.16%

    
築年数が長くなるほど、空室率が高くなる結果となっています。しかし、一番空室率が高いのが「築5年未満」です。これは東京23区という特性があるかもしれません。現在の不動産市場の活況に乗じて賃貸住宅の家賃設定が高めとなっており、築年数が経つにつれて家賃は下がる傾向にあるので、比較的新しい物件よりも家賃の低い築年数が経過した物件に住む傾向があるのかもしれません。

不動産投資の空室が出る主な原因

空室が出る原因を把握することで事前に対策を立てられたり、空室が出始めた時に対応できたりします。

競合物件が周囲に増加

競合物件が周囲に増加すると空室が出る原因となります。

不動産投資をおこなう際、誰もが入居が見込める地域の物件を購入します。駅周辺や大学周辺、大規模商業地域近辺などは、利便性が良く人気のエリアです。
新築時は満室であっても、築年数が経過していくにつれて見た目や設備的にも新築物件と比較して劣る部分がある場合は、空室が起きる傾向があります。

ターゲット層の人口減少

ターゲット層の人口減少によって空室が起きることがあります。

大学周辺、そして駅や繁華街周辺には、大学生や、単身の社会人をターゲットとして多くの不動産物件が立ち並びます。しかし、大学の定員が減少したり、大学自体が移転する、繁華街が廃れていくなどして、ターゲットとしていた人口が減少すると空室が発生しやすくなります。
そして、郊外に多くあるファミリー向けマンションも、別エリアに新しい道路や商業施設が建つなどして新たに人気地区となれば、入居者がそのエリアに集中して、空室が出始めるということが起きかねません。

空室対策がされていない

空室が出る可能性がある、ないしは、空室が目立ち始めた時、対策を講じなければ、さらに空室を生む可能性があります。

入居者は、数多くの物件の中から1つの物件を選びます。空室が出てくるということは、そこに住むメリットを感じないからです。空室を生まないためには、それまでとは違う何かを追求する必要があるでしょう。

外壁の色を塗り替えて見栄えを良くしたり、設備を充実させたりするなどのリフォームをおこなって住むメリットを感じてもらうことで空室率が下がるかもしれません。また、家賃設定を低くすることも対策の1つとなります。ただし、一度下げた家賃は上げることが難しいでしょう。

不動産投資の空室リスクがもたらす損失とは

不動産投資の空室リスクは、投資家にどのような損失を与えるのでしょうか。2種類の損失が出る場合があります。

損失のシミュレーション

不動産投資をおこない、常に満室でローンの返済期間35年を迎えた場合と、5年に1度のペースで4ヵ月の空室がありつつ35年を迎えた場合で、35年間の収支状況を比較してみましょう。

<不動産投資物件の条件>


・物件価格・・・2,000万円
・頭金・・・10万円
・借入金利・・・1.65%
・借入期間・・・35年
・家賃収入・・・6万7,000円/月
・管理経費・建物管理費・・・7,540円/月
・修繕積立金・・・1,470円/月

【35年常に満室だった場合】
・家賃収入総額・・・2,814万円=6万7,000円×12ヵ月×35年
・借入金返済総額・・・2,620万9,040円=6万2,403円×12ヵ月×35年
・管理経費・建物管理費総額・・・316万6,800円=7,540円×12ヵ月×35年
・修繕積立金総額・・・61万7,400円=1,470円×12ヵ月×35年
35年間収支・・・-181万3,240円
※月々借入金6万2,403円は家賃収入で賄い、管理費等計9,010円は家賃収入と実費となる
※借入返済後は、建物2,000万円は自己資産になる
※築37年8ヵ月目より収支はプラス転換

【5年おきに4ヵ月空室があった場合】
・家賃収入総額・・・2,653万2,000円=6万7,000円×{(12ヵ月×35年)-4ヵ月×6回}
・借入金返済総額・・・2,620万9,040円=6万2,403円×12ヵ月×35年
・管理経費・建物管理費総額・・・316万6,800円=7,540円×12ヵ月×35年
・修繕積立金総額・・・61万7,400円=1,470円×12ヵ月×35年
35年収支・・・-346万1,240円
※空室がある月は、借入金返済6万2,403円のほか、管理費等計9,010円がキャッシュフローでマイナスとなり、全額実費払いとなる
※借入返済後は、建物2,000万円は資産になる
※築40年4ヵ月目より収支はプラス転換

シミュレーションの結果、いずれも借入金全額返済の35年目には、2,000万円の建物は自己資産となりますが、総収支がプラスになる時期に2年8ヵ月の差が出ることがわかりました。5年に1度のペースで4ヵ月間家賃収入が無くなることが、トータルでも響いてきます。

シミュレーションでは、借入金利は固定金利を採用しましたが、変動金利だった場合、当初の返済金額は固定金利と比較して少額で済みますが、市場金利が上昇した場合は、収支が悪化する懸念があります。

空室がもたらす更なる被害

空室がもたらす被害は、収支の悪化だけにとどまりません。

空室が続くと、もし売却したい場合になかなか買い手がつきません。不動産投資をおこなう場合、利回り計算をおこないます。満室の場合だと高利回りの数字が出たとしても、実際には空室が多い物件となると、実態に見合った空室率の高い場合の利回り計算をおこなうことになります。計算をおこなった場合、低利回りだったとしたら、その物件の購入は控えてしまうでしょう。

このような物件は、買い手から値引き交渉されやすくなります。空室が多少あることを前提としても、物件の購入価格が安ければ必然的に利回りは上がります。どうしても売却しなければならない状況だとしたら、その条件を飲まざるを得なくなるでしょう。

空室を放置しておくことは、収支リスクとともに、売却損を被るリスクもあるのです。このようなことを念頭に置きながら、日頃から空室リスクをおこなって、常に有利な展開となる不動産経営となるようにしましょう。

不動産空室リスク対策 これだけは抑えよう!

空室リスクを避けるために最低限押さえておきたいことについて解説します。

空室の原因を深掘りしよう

➀ターゲットを見直してみる

空室の原因の1つに、物件とターゲットのミスマッチがあげられます。大学周辺なのにファミリーにターゲットを絞った物件や、生活に車が必要な場所に単身者をターゲットとしたマンションを建てるとミスマッチが起きかねません。

この場合、ターゲット層を広げるイメージで対策を図りましょう。一度建築した物件だと、建物全体の中をターゲット向けに改築することは難しいでしょう。しかし、幅広いニーズに対応できる設備を設置するなどして、空室を埋める努力をしましょう。

②募集用写真の見直し

入居者を募集する際、不動産会社のみならず、ネットや雑誌に外観や、部屋・バストイレなどの募集用写真が掲載されます。この募集用写真を見直してみることも大切です。

入居者は物件を探す際、まずは募集用写真や間取り図でさまざまなイメージを膨らませます。部屋のどこに何を置こうか、動線はどのようにしようか、クツや服はどこに片づけようか、などを想像します。

写真でいかに物件に興味を持ってもらうかが重要なため、外観のみならず、部屋の中を撮影する際には、角度や光の入り方や明るさ、そして多くの情報を与えるため多くの方向から撮るなどの工夫をしてみるとよいでしょう。

③内見数を増やす

内見数を増やすことで、多くの入居希望者に物件を見てもらうことでき入居につながる確率が高まります。入居希望者は、募集用写真だけでは得られない情報を物件内で得ることができます。

物件を実際に見ることは、入居する意欲を高めます。写真だけでは難しかった動線や配置などを具体的にイメージでき、思惑と一致すれば入居を決める可能性が高まります。

また、内見を通じて周辺の環境や景色、生活音の空気感など、これまで知りえなかった情報も得られます。

④物件の内観・外観の劣化がないか

内見に来られる方は、主に物件の間取りや外観を確認するために訪れますが、他にも気にする点があります。内見に来た方に対しては、スリッパを用意するとともに、ウェルカムボードを設置し、清潔な状態を保つことが重要です。これらの配慮は好印象を与え、気持ちをプラスに傾けるでしょう。

逆に、減点材料となりかねないのは、清掃が不十分な場合です。部屋やバストイレだけでなく、共用部分も清潔に保つことが重要です。廊下や階段にゴミや空き缶が散乱していたり、通行に妨げになるものがあると、印象は良くありません。また、ゴミ置き場やエントランス、駐輪場も清掃や整理を怠らず、印象を良く保つことが求められます。ポストや掲示板が乱れていると治安面での不安を感じさせる可能性があるため、細心の注意が必要です。

⑤周辺環境に問題はないか

周辺に騒音や悪臭などの元となる工場があったり、日当たりに影響する高層ビルの建設が予定されていたり、大型商業施設の閉鎖が決まっているなど、外部要因で入居者に敬遠されることがあります。このような場合は入居者のターゲットを変え、物件に付加価値を付けることで空室リスクの対策をおこなうべきでしょう。

全部屋にTVインターフォンを設置したり、エントランスをオートロックに、そして主要場所に防犯カメラを取り付けるなどして、治安の良さをアピールすることで女性をターゲットにした物件にするのもよいでしょう。全部屋にwi-fiを設置したり、宅配ボックスを取り付けるなどして、幅広い層を取り込むこともできます。

さらには、ペットを飼育可能にしたり、完全バリアフリー化したりしてペットを飼う人、そして高齢者をターゲットにするなど、ニーズの高い仕様にするためのリフォームをおこなうことで空室対策が可能となります。

⑥入居者の負担を見直す

入居者の負担を見直すことで空室が満室に変わる可能性もあります。更新料を上げないことで継続して入居し続けてもらうことや、敷金や礼金の見直しもよいでしょう。

しかし、それでも空室が続くようなら、家賃の改定も検討すべきかもしれません。今の家賃が利便性や築年数、設置設備に合っていないと多くの入居者が考えていたとすると、家賃を下げることは検討すべきだと考えます。ほかにも、水道代や電気代など光熱費は全額負担する、駐車場2台目の分は無料にするなど、家賃を下げる以外の方法で入居者の負担を見直す方法はあります。

信頼できる賃貸管理会社に依頼する

信頼できる賃貸管理会社に入居者募集などを依頼することは、空室リスクを防ぐのに有効でしょう。賃貸管理会社は、さまざまな物件の入居者募集や、入居者管理をおこなっている「不動産管理のプロ」です。入居者募集だけではなく、入居中の方の意見や要望、クレーム対応などを日常的におこなっています。そのノウハウは素人ではすぐにマネするのは難しいものです。

そのような不動産管理のプロの中でも信頼できる業者に依頼することで、安心して不動産投資をおこなうことができます。入居者募集だけでなく、良好な入居者管理は、入居者の入居期間を伸ばすことにもつながって結果的に空室対策につながります。

空室対策にはサブリース契約(空室保証)も有効ですが、契約する際の注意点や、しくみについては以下の記事も参考にしてみてください。

まとめ

今回は不動産投資の空室リスクについて、その原因と対策を解説しました。不動産投資の空室率の統計を見てきましたが、地域や築年数を考えても、ある程度の空室は避けられないのが現実です。しかし、空室をなるべき避けることは不動産投資の成功のカギを握ります。空室の原因や対策を理解していただき、空室率の低い状態を維持する努力をおこなって、不動産投資を成功させましょう。

ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.12.13

不動産投資のコツ

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の空室リスクとは 原因とリスク対策を徹底解説

  • 空室対策
  • 不動産投資

不動産投資を考える際、気になるのは空室リスクの問題です。しかし、具体的な情報が不足しているため、空室の影響や原因、対策について理解する機会が少ないかもしれません。この記事では、空室率やその原因、対策について解説します。

不動産投資の空室率は一般的にどのくらい?

不動産投資の空室率を知っておくことは、不動産投資の収支計画を立てる面で重要です。不動産投資の成功のカギを握るひとつの指標とも言えるでしょう。

全国の空室率は約20%

不動産投資の投資対象である賃貸住宅の全国主要都市の平成30年における空室率は以下のとおりです。

【平成30年全国主要都市別賃貸住宅空室率】

都市名 空室率
東京23区 約13.7%
名古屋市 約16.7%
大阪市 約20.7%
全国 約18.4%


この統計でいう「賃貸住宅」の定義は、「居住世帯のない住宅・空き家(賃貸用)」と「居住世帯のある住宅・借家」の合計とさせていただいています。それらを分母とし、「居住世帯のない住宅・空き家(賃貸用)」を分子として空室率を導き出しました。

全国の空室率が約18.4%です。関東圏の東京23区が13%台なのとは対照的に、大阪市は20%台という高い空室率となっています。

空室率の推移はほぼ横ばい

では、最新の統計結果からさかのぼって直近10年間の空室率はどのように推移しているのでしょうか。

【平成20年・25年・30年全国主要都市別賃貸住宅空室率】

都市名 平成20年 平成25年 平成30年
東京23区 約14.4% 約15.7% 約13.7%
名古屋市 約17.3% 約17.3% 約16.7%
大阪市 約19.4% 約20.7% 約20.7%
全国 約18.8% 約18.8% 約18.4%

            
全国的には、ほぼ横ばいという結果となっています。大阪市が若干上がっているものの、東京23区と名古屋市はやや減少しています。平成20年はリーマンショックが起きた年、そして平成25年はアベノミクス元年という、ともに経済にとって節目の年となっており注目すべき点でしたが、賃貸住宅需要に関しては大きな影響がなかったといえます。

空室期間の平均

平均募集期間は4〜5カ月

2023年2月における全国主要都府県の賃貸住宅の平均入居者募集期間の統計をみてみましょう。

【全国主要都府県2023年2月期賃貸住宅平均募集期間】

都府県名 募集期間
東京23区 4.75ヵ月
愛知県 5.42ヵ月
大阪府 5.01ヵ月
静岡県 6.61ヵ月
福岡県 4.69ヵ月

    
大都市に関しては、おおむね5ヵ月前後の空室期間があることが見て取れます。1度空室が出来ると約5ヵ月間は家賃収入が無いことを念頭に置いた方がよいでしょう。これら大都市は約5ヵ月間という統計結果ですが、静岡県など地方中核都市となると人の出入りが少ないことから、5ヵ月を上回る空室期間ができることを頭に置いておく必要があります。

平均入居期間は2~4年

では、賃貸住宅の入居者が同じ部屋に何年入居していたかを見てみましょう。

【2022年度主要圏 居住仕様別平均居住期間】

  単身 ファミリー 全体
首都圏 3年7ヵ月 5年5ヵ月 4年3ヵ月
関西圏 2年10ヵ月 5年1ヵ月 3年10ヵ月
上記のぞくエリア 3年2ヵ月 5年 4年
全国 3年3ヵ月 5年2ヵ月 4年1ヵ月

この期間はコロナ禍の影響がある可能性がありますが、単身者向けはおおむね3年前後、ファミリータイプは、ほぼ5年間同じ部屋に住み続けることがわかりました。単身者向けの平均入居期間は専門学生が2年制、大学は4年制が多いこともあり、この平均入居期間は納得でしょう。

しかしファミリー向けは、転勤のスパンや、家族構成の変化、賃貸から持ち家への転居など、さまざまな要因はあるものの、全国的にほぼ5年であることは注目すべきです。

築年数での差

では、築年数で空室率に差が出るのでしょうか。東京23区の2022年10月における築年数別空室率のデータを見てみましょう。

【東京23区築年数別空室率(2022年10月)】

築年数 空室率
5年未満 13.78%
5~10年 6.85%
10~15年 7.04%
15~20年 7.02%
20~25年 8.69%
25~30年 12.75%
31年以降  12.16%

    
築年数が長くなるほど、空室率が高くなる結果となっています。しかし、一番空室率が高いのが「築5年未満」です。これは東京23区という特性があるかもしれません。現在の不動産市場の活況に乗じて賃貸住宅の家賃設定が高めとなっており、築年数が経つにつれて家賃は下がる傾向にあるので、比較的新しい物件よりも家賃の低い築年数が経過した物件に住む傾向があるのかもしれません。

不動産投資の空室が出る主な原因

空室が出る原因を把握することで事前に対策を立てられたり、空室が出始めた時に対応できたりします。

競合物件が周囲に増加

競合物件が周囲に増加すると空室が出る原因となります。

不動産投資をおこなう際、誰もが入居が見込める地域の物件を購入します。駅周辺や大学周辺、大規模商業地域近辺などは、利便性が良く人気のエリアです。
新築時は満室であっても、築年数が経過していくにつれて見た目や設備的にも新築物件と比較して劣る部分がある場合は、空室が起きる傾向があります。

ターゲット層の人口減少

ターゲット層の人口減少によって空室が起きることがあります。

大学周辺、そして駅や繁華街周辺には、大学生や、単身の社会人をターゲットとして多くの不動産物件が立ち並びます。しかし、大学の定員が減少したり、大学自体が移転する、繁華街が廃れていくなどして、ターゲットとしていた人口が減少すると空室が発生しやすくなります。
そして、郊外に多くあるファミリー向けマンションも、別エリアに新しい道路や商業施設が建つなどして新たに人気地区となれば、入居者がそのエリアに集中して、空室が出始めるということが起きかねません。

空室対策がされていない

空室が出る可能性がある、ないしは、空室が目立ち始めた時、対策を講じなければ、さらに空室を生む可能性があります。

入居者は、数多くの物件の中から1つの物件を選びます。空室が出てくるということは、そこに住むメリットを感じないからです。空室を生まないためには、それまでとは違う何かを追求する必要があるでしょう。

外壁の色を塗り替えて見栄えを良くしたり、設備を充実させたりするなどのリフォームをおこなって住むメリットを感じてもらうことで空室率が下がるかもしれません。また、家賃設定を低くすることも対策の1つとなります。ただし、一度下げた家賃は上げることが難しいでしょう。

不動産投資の空室リスクがもたらす損失とは

不動産投資の空室リスクは、投資家にどのような損失を与えるのでしょうか。2種類の損失が出る場合があります。

損失のシミュレーション

不動産投資をおこない、常に満室でローンの返済期間35年を迎えた場合と、5年に1度のペースで4ヵ月の空室がありつつ35年を迎えた場合で、35年間の収支状況を比較してみましょう。

<不動産投資物件の条件>


・物件価格・・・2,000万円
・頭金・・・10万円
・借入金利・・・1.65%
・借入期間・・・35年
・家賃収入・・・6万7,000円/月
・管理経費・建物管理費・・・7,540円/月
・修繕積立金・・・1,470円/月

【35年常に満室だった場合】
・家賃収入総額・・・2,814万円=6万7,000円×12ヵ月×35年
・借入金返済総額・・・2,620万9,040円=6万2,403円×12ヵ月×35年
・管理経費・建物管理費総額・・・316万6,800円=7,540円×12ヵ月×35年
・修繕積立金総額・・・61万7,400円=1,470円×12ヵ月×35年
35年間収支・・・-181万3,240円
※月々借入金6万2,403円は家賃収入で賄い、管理費等計9,010円は家賃収入と実費となる
※借入返済後は、建物2,000万円は自己資産になる
※築37年8ヵ月目より収支はプラス転換

【5年おきに4ヵ月空室があった場合】
・家賃収入総額・・・2,653万2,000円=6万7,000円×{(12ヵ月×35年)-4ヵ月×6回}
・借入金返済総額・・・2,620万9,040円=6万2,403円×12ヵ月×35年
・管理経費・建物管理費総額・・・316万6,800円=7,540円×12ヵ月×35年
・修繕積立金総額・・・61万7,400円=1,470円×12ヵ月×35年
35年収支・・・-346万1,240円
※空室がある月は、借入金返済6万2,403円のほか、管理費等計9,010円がキャッシュフローでマイナスとなり、全額実費払いとなる
※借入返済後は、建物2,000万円は資産になる
※築40年4ヵ月目より収支はプラス転換

シミュレーションの結果、いずれも借入金全額返済の35年目には、2,000万円の建物は自己資産となりますが、総収支がプラスになる時期に2年8ヵ月の差が出ることがわかりました。5年に1度のペースで4ヵ月間家賃収入が無くなることが、トータルでも響いてきます。

シミュレーションでは、借入金利は固定金利を採用しましたが、変動金利だった場合、当初の返済金額は固定金利と比較して少額で済みますが、市場金利が上昇した場合は、収支が悪化する懸念があります。

空室がもたらす更なる被害

空室がもたらす被害は、収支の悪化だけにとどまりません。

空室が続くと、もし売却したい場合になかなか買い手がつきません。不動産投資をおこなう場合、利回り計算をおこないます。満室の場合だと高利回りの数字が出たとしても、実際には空室が多い物件となると、実態に見合った空室率の高い場合の利回り計算をおこなうことになります。計算をおこなった場合、低利回りだったとしたら、その物件の購入は控えてしまうでしょう。

このような物件は、買い手から値引き交渉されやすくなります。空室が多少あることを前提としても、物件の購入価格が安ければ必然的に利回りは上がります。どうしても売却しなければならない状況だとしたら、その条件を飲まざるを得なくなるでしょう。

空室を放置しておくことは、収支リスクとともに、売却損を被るリスクもあるのです。このようなことを念頭に置きながら、日頃から空室リスクをおこなって、常に有利な展開となる不動産経営となるようにしましょう。

不動産空室リスク対策 これだけは抑えよう!

空室リスクを避けるために最低限押さえておきたいことについて解説します。

空室の原因を深掘りしよう

➀ターゲットを見直してみる

空室の原因の1つに、物件とターゲットのミスマッチがあげられます。大学周辺なのにファミリーにターゲットを絞った物件や、生活に車が必要な場所に単身者をターゲットとしたマンションを建てるとミスマッチが起きかねません。

この場合、ターゲット層を広げるイメージで対策を図りましょう。一度建築した物件だと、建物全体の中をターゲット向けに改築することは難しいでしょう。しかし、幅広いニーズに対応できる設備を設置するなどして、空室を埋める努力をしましょう。

②募集用写真の見直し

入居者を募集する際、不動産会社のみならず、ネットや雑誌に外観や、部屋・バストイレなどの募集用写真が掲載されます。この募集用写真を見直してみることも大切です。

入居者は物件を探す際、まずは募集用写真や間取り図でさまざまなイメージを膨らませます。部屋のどこに何を置こうか、動線はどのようにしようか、クツや服はどこに片づけようか、などを想像します。

写真でいかに物件に興味を持ってもらうかが重要なため、外観のみならず、部屋の中を撮影する際には、角度や光の入り方や明るさ、そして多くの情報を与えるため多くの方向から撮るなどの工夫をしてみるとよいでしょう。

③内見数を増やす

内見数を増やすことで、多くの入居希望者に物件を見てもらうことでき入居につながる確率が高まります。入居希望者は、募集用写真だけでは得られない情報を物件内で得ることができます。

物件を実際に見ることは、入居する意欲を高めます。写真だけでは難しかった動線や配置などを具体的にイメージでき、思惑と一致すれば入居を決める可能性が高まります。

また、内見を通じて周辺の環境や景色、生活音の空気感など、これまで知りえなかった情報も得られます。

④物件の内観・外観の劣化がないか

内見に来られる方は、主に物件の間取りや外観を確認するために訪れますが、他にも気にする点があります。内見に来た方に対しては、スリッパを用意するとともに、ウェルカムボードを設置し、清潔な状態を保つことが重要です。これらの配慮は好印象を与え、気持ちをプラスに傾けるでしょう。

逆に、減点材料となりかねないのは、清掃が不十分な場合です。部屋やバストイレだけでなく、共用部分も清潔に保つことが重要です。廊下や階段にゴミや空き缶が散乱していたり、通行に妨げになるものがあると、印象は良くありません。また、ゴミ置き場やエントランス、駐輪場も清掃や整理を怠らず、印象を良く保つことが求められます。ポストや掲示板が乱れていると治安面での不安を感じさせる可能性があるため、細心の注意が必要です。

⑤周辺環境に問題はないか

周辺に騒音や悪臭などの元となる工場があったり、日当たりに影響する高層ビルの建設が予定されていたり、大型商業施設の閉鎖が決まっているなど、外部要因で入居者に敬遠されることがあります。このような場合は入居者のターゲットを変え、物件に付加価値を付けることで空室リスクの対策をおこなうべきでしょう。

全部屋にTVインターフォンを設置したり、エントランスをオートロックに、そして主要場所に防犯カメラを取り付けるなどして、治安の良さをアピールすることで女性をターゲットにした物件にするのもよいでしょう。全部屋にwi-fiを設置したり、宅配ボックスを取り付けるなどして、幅広い層を取り込むこともできます。

さらには、ペットを飼育可能にしたり、完全バリアフリー化したりしてペットを飼う人、そして高齢者をターゲットにするなど、ニーズの高い仕様にするためのリフォームをおこなうことで空室対策が可能となります。

⑥入居者の負担を見直す

入居者の負担を見直すことで空室が満室に変わる可能性もあります。更新料を上げないことで継続して入居し続けてもらうことや、敷金や礼金の見直しもよいでしょう。

しかし、それでも空室が続くようなら、家賃の改定も検討すべきかもしれません。今の家賃が利便性や築年数、設置設備に合っていないと多くの入居者が考えていたとすると、家賃を下げることは検討すべきだと考えます。ほかにも、水道代や電気代など光熱費は全額負担する、駐車場2台目の分は無料にするなど、家賃を下げる以外の方法で入居者の負担を見直す方法はあります。

信頼できる賃貸管理会社に依頼する

信頼できる賃貸管理会社に入居者募集などを依頼することは、空室リスクを防ぐのに有効でしょう。賃貸管理会社は、さまざまな物件の入居者募集や、入居者管理をおこなっている「不動産管理のプロ」です。入居者募集だけではなく、入居中の方の意見や要望、クレーム対応などを日常的におこなっています。そのノウハウは素人ではすぐにマネするのは難しいものです。

そのような不動産管理のプロの中でも信頼できる業者に依頼することで、安心して不動産投資をおこなうことができます。入居者募集だけでなく、良好な入居者管理は、入居者の入居期間を伸ばすことにもつながって結果的に空室対策につながります。

空室対策にはサブリース契約(空室保証)も有効ですが、契約する際の注意点や、しくみについては以下の記事も参考にしてみてください。

まとめ

今回は不動産投資の空室リスクについて、その原因と対策を解説しました。不動産投資の空室率の統計を見てきましたが、地域や築年数を考えても、ある程度の空室は避けられないのが現実です。しかし、空室をなるべき避けることは不動産投資の成功のカギを握ります。空室の原因や対策を理解していただき、空室率の低い状態を維持する努力をおこなって、不動産投資を成功させましょう。

ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。