2023.12.15

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資をするなら都心と地方どっちがいい?それぞれを徹底比較

  • 不動産投資
  • 初心者

これから不動産投資を始めるにあたって、都心(東京)と地方、どちらの物件を選べばよいかで迷っている人も多いのではないでしょうか。結論から申し上げると、長期的な視点では、都心での不動産投資のほうが安定しているといえます。

都心のほうが安定経営をしやすい理由は、「空室リスクが低い」「将来性が期待できる」「資産価値が保てる」などのメリットがあるからです。一方で都心の不動産投資にもデメリットはありますし、地方の不動産投資にもいくつかのメリットがあります。

この記事では、上記について詳しく解説します。また、都心(東京)で不動産投資をする際のポイントも紹介します。

都心で不動産投資をするメリット・デメリット 

都心というと「東京都の中心部」を想像する人が少なくありませんが、都心とは主要な都市・都市圏の中心部のことを指します。一般的には人が多く集まる繁華街やオフィス街などを構える地域で、商業施設や交通網が集中している場所です。
まずは、都心で不動産投資を行うメリットとデメリットをご紹介します。

都心の収益物件にみるメリット

①空室リスクが低い 

都心で不動産投資を行う大きなメリットは、空室リスクが低いことでしょう。

不動産経営において共通する課題は「賃貸需要の維持」です。人口が減少している日本において賃貸需要を維持し続けるには、人の流れが絶えず、入居者のニーズを見込めるエリア選定が不可欠です。新幹線の停車駅があるなど、全国各地をみても都心は日本経済の中枢を担う場所で、転入者の流入が見込めます。

また、今後の日本は都心へ人口が集中する一極化が想定されていることからも、特に転入超過となっている東京都での不動産投資は人口確保の面で非常に有利と言えるでしょう。東京都の転入超過数の推移は、次の通りです。コロナ渦により2021年の転入超過数は約3万人まで減少しましたが、最近ではコロナ前の水準まで回復しつつあります。

東京都の転入人口推移

②今後も再開発で将来性が期待できる

人が集まるエリアにみる特徴として、「再開発」が活発であることが挙げられます。

今後も人口確保を見込めるエリアには再開発へ巨額の事業資金が投じられ、高い将来性が期待できるでしょう。現在、東京~名古屋~大阪間の三大都市圏がリニア中央新幹線の開業に伴い、三駅の周辺は大規模再開発が予定されています。これにより、転入者の増加などより一層地域の活性化が予測されます。

また、2023年現在「100年に一度の大規模開発の真っ只中」と言われているのをご存じでしょうか。バブル期に建てられた多くのマンションが、居住用マンションの法定耐用年数と言われる47年に迫っている時期だからです。
物件選定では毎月のキャッシュフローに目がいきがちですが、不動産投資は売却損益を含めて成功が決まるため、将来性の見込めるエリア選定が求められます。

③資産価値が保てる

再開発など将来性のあるエリアでは、物件の資産価値を保てることも大きなメリットです。

裏付けとして東京都の中古マンション相場は、2013年からの10年間で約1.7倍に上昇しています(下記参照)。通常、建物は経年劣化により築年数が古くなるほど価格も下落しますが、東京都の例では家賃収入を得たうえに購入時よりも高値で売却が可能なケースもあります。

東京都の中古マンション相場

都心の収益物件にみるデメリット

①建物取得費が高い 

デメリットとしては、まず「建物の取得費が高い」ことが挙げられます。特に地価・建築費ともに上昇している現在では、新築物件による不動産投資はハードルが上がっています。

例えば、RC造建築物の1m²あたりの工事費用を東京都と全国平均で比較すると、東京都のほうが6.3万円高い結果となっています。

・ 東京都のRC造工事費用:34.1万円
・ 全国平均のRC造工事費用:27.8万円

上記に基づき、区分マンション(延べ床面積25㎡と仮定)と一棟マンション(同500㎡と仮定)で工事費用を計算した場合、東京都と全国平均の工事費用の差は以下のようになります。

  区分マンション 一棟マンション
東京都 852万5,000円 1億7,050万円
全国平均 695万円 1億3,900万円

※実際の工事費用は、建築条件や施工会社で異なります。

②利回りが低い

全国の不動産に関するデータ収集を行う様々な企業・メディアの調査によると、都心の収益物件は実質利回りが低いことが明らかになっています。日本不動産研究所のレポートによると、東京(城南)のワンルームタイプとファミリータイプの期待利回りは次の通りです。

物件タイプ 期待利回り
ワンルームタイプ 3.8%
ファミリータイプ 3.9%

出所:(一財)日本不動産研究所「第48回不動産投資家調査(2023年4月)

このような低利回りが要因となり、継続的に家賃収入を得られてもローン返済負担額も大きく、毎月大きな利益を上げられるわけではありません。低利回りの不動産投資では突発的な修繕費を考慮すると、いざと言う時の現金の準備が必要となりそうです。

一方、利回りが低いということは、それだけ物件価格が高い(=物件の価値が高い)ということです。利回りだけでなく物件の価値や空室率なども加味して、不動産投資を都心と地方のどちらですべきかを検討しましょう。

地方で不動産投資をするメリット・デメリット 

次に、地方で不動産投資をするメリット・デメリットについて見ていきましょう。東京都以外にも、政令指定都市を中心に不動産投資で人気のエリアがあります。都心と地方、両方の特徴をしっかり把握した上で、どちらがご自身と相性がよいかを判断しましょう。

地方の収益物件にみるメリット

①建物取得費が安い 

地方で行う不動産投資は、建物取得費(建築費+土地代)が安いことが大きな特徴でありメリットです。まず、建築費については前述の「都心の収益物件にみるデメリット①」で確認したように、東京都に比べて地方を中心とする全国平均は割安でした。

また、地価で見ても地方は東京に比べて割安です。東京都の住宅地(㎡あたり)の平均価格38万円を100とした場合の主な地方の価格指数は以下の通りで、大きな差があります。

都道府県 住宅地の価格指数
東京都 100
北海道 5.5
宮城県 11.6
愛知県 27.6
京都府 28.7
大阪府 39.6
広島県 15.1
福岡県 14.9

出所:国土交通省「令和3年都道府県地価調査

土地の価格が高いということは必然的に建物取得費が高くなり、金融機関の融資審査のハードルが上がってしまいます。反対に建物取得費が安いと購入にあたり準備する頭金の用意が少なく済み、不動産投資を実現しやすいと言えるでしょう。

②高利回りを期待できる 

建物取得費と比例して、高利回りを期待できることも大きなメリットです。「都心の収益物件に見るデメリット① 」でお伝えしたように、東京都の賃貸住宅の期待利回りは3%台後半と低利回りでした。これに対して地方(主な政令指定都市)の期待利回りは、4%半ばから5%前半が中心です。

エリア 期待利回り
(ワンルームタイプ)
札幌 5.0%
仙台 5.1%
横浜 4.5%
名古屋 4.6%
京都 4.8%
大阪 4.4%
神戸 4.8%
広島 5.25%
福岡 4.7%

出所:(一財)日本不動産研究所「第48回不動産投資家調査(2023年4月)

利回りが高いということは、物件価格に対して家賃相場が高いということです。ただし、高利回りは空室や物件価値下落などのリスクと関連しているため(詳しくは後述します)、高利回りという理由だけで地方物件に飛びつくのは避けましょう。

③物件供給数が少ないエリアがある 

不動産投資において、地方は東京都心に比べて賃貸ニーズが低いといわれます。しかし、中には入居希望者に対して物件供給数が少なく、賃貸ニーズが高い地方のエリアも存在します。その一例が、沖縄県の宮古・石垣の離島エリアです。賃貸管理会社が行ったヒアリングでは、「物件が不足している」「物件がやや不足している」という声が目立ちます(下記参照)。

  物件が不足している 物件がやや不足している
1R-1LDK 33% 67%
2K-2LDK 100% -
3K-3LDK 100% -

物件供給数が少ないということは、ライバルが少なく入居付けで有利となる場合がありますが、建築戸数が多くなると物件供給数が過剰に転じるケースもあるので注意しましょう。

地方の収益物件にみるデメリット 

①空室リスクが高い 

一般的に地方の収益物件は入居率が低く、空室リスクが高い傾向があります。管理会社などの団体である日管協のデータによると、首都圏の入居率がその他(首都圏やと関西圏を除く地方)の入居率を約3%上回っていることから、「地方の空室リスクが高い」という事実が確認できます。

・ 首都圏:入居率95.8%
・ 関西圏:入居率94.9%
・ その他:入居率92.9%

出所:(公財)日本賃貸住宅管理協会他「第27回 賃貸住宅市場景況感調査 『日管協短観』

特に人口が急減している地方の収益物件は要注意です。人の流れがないエリアでは一度退去者が出ると、何ヵ月も入居の申し込みがなく、ローン返済に自分の貯蓄の切り崩しが必要となります。

このような失敗をしないよう、地方の物件を検討する際は今後の人口推移を確認・予測立てがとても重要です。

②資産価値が下落しやすい 

人口減少が顕著な地域では不動産の資産価値が下落しやすいため、期待していた家賃や売却益が得られない可能性があります。その結果、手持ちのお金でマイナス分を埋めなければならないケースもあります。

例えば、2023年の都道府県地価調査で人口減少率が全国で最も大きかった秋田県の住宅地価は、1999年から25年連続で下落しています。2023年の地価下落率はマイナス0.8%でした(参照:秋田県建設部「令和5年地価調査結果の概要」)。東京23区の地価上昇とは対照的です。

③不動産管理会社の数が少ない

地方では不動産管理会社の数が少なく、信頼できるパートナー会社と出会えない可能性があります。
管理会社は、購入後のフォローやアドバイス、問い合わせに対するレスポンス、キャッシュフローへの影響など、不動産投資をするうえで共同体の存在です。ほったらかし投資をするためには、安心できる不動産管理会社を慎重に見つけなくてはなりません。
不動産管理会社の重要性については、下記の記事でも解説しておりますのでご覧下さい。

不動産投資は東京がおすすめの理由 

不動産投資において何十年後も生き残れる収益物件でいるためには、入居者を永続的に見込めるエリア選定が非常に重要です。その中でも、この章では東京がおすすめの理由をご紹介します。

人が集まり需要がある 

日本の首都、さらに経済の中心地である東京は、人が集まります。
リニア中央新幹線の開業により、東京~名古屋~大阪の三大都市圏が一つの都市化することで、今後ますます東京の一極化が予想されているほどです。

また、現時点における総務省の統計においても、日本全国で人口が増加しているのは東京都のみです。他県では人口減少だけでなく減少幅も増大していることから、東京都での不動産投資は需要面での安定が期待できます。

家賃相場が上昇しているから 

ここ最近、東京での賃貸物件において家賃が上昇していることも、東京での不動産投資をおすすめする理由の1つです。一般的に地価やマンション価格の相場上昇に伴って賃貸物件の家賃も上昇する傾向にありますが、東京都は23区、都下いずれも上昇が見られます。

特に東京23区で家賃上昇率が堅調なのは、次の3タイプのマンションです。

・ 30㎡以下のマンション(単身者向き)
・ 30〜50㎡のマンション(カップル向き)
・  50〜70㎡のマンション(ファミリー向き)

これらのタイプの物件は、首都圏ほか5つの地方都市を対象にした家賃上昇率ランキングで1位または2位となっています。

順位 30㎡以下 30〜50㎡ 50〜70㎡
1位 東京都下 東京23区  大阪市
2位 東京23区 埼玉県 東京23区
3位 札幌市 大阪市 埼玉県

単身者世帯が増えているから 

東京都では、単身者世帯の割合が増え続けています。この流れを生かして収益物件としてワンルームマンションを選ぶと、空室リスクを軽減しながら不動産投資を行うことができます。

以下のように、2000年から2040年までの間に単身者世帯(単独)の割合は約10%も上昇すると予測されています。

・ 2000年:40.9%
・ 2010年:45.8%
・ 2020年:48.3%
・ 2030年:49.6%
・ 2040年:51.2%

出所:東京都「東京都世帯数の予測の概要
※2000年、2010年は実績値

東京の物件で不動産投資を始めるときの選び方

ここまでの内容で、「東京の物件は不動産投資で安定している」ということはご理解いただけたでしょう。ただし、一口に「東京の物件」といっても、さまざまなエリアがあります。不動産投資を始めるときのエリア・物件選びのポイントは、次の通りです。

利用客数の多い路線・駅から選ぶ

入居者が住まいを決めるときは、通勤や通学に便利な沿線にある物件を選ぶのが一般的です。そのため、物件の最寄り駅の利用者数が多い場合は、不動産投資で有利と考えられます。例えば、JRで乗降客数の多い路線(利用者が東京に住んでいる割合50%以上)は次の通りです。

路線 延べ利用者数 利用者が東京に住んでいる割合
山手線 1,581万人 58.4%
中央線快速 933万人 75.3%
中央総武線各駅停車 1027万人 53.8%

出所:JR東日本「首都圏路線利用者データ

また、都営地下鉄はいずれも利用者数の多い人気路線です。

路線 1日あたりの乗車人員
浅草線 52.2万人
三田線 48.3万人
新宿線 58.4万人
大江戸線 67.7万人

出所:都営地下鉄「TOEI AD MEDIA GUIDE2023

路線に加えて、乗降客の多い駅も注目すべきです。東京メトロの乗降人員ランキング(2022年度)の上位5駅は、次の通りです。

路線 1日あたりの乗降人員
池袋駅 46万人
大手町駅 28万人
北千住駅 22万人
銀座駅 19万人
新宿駅 18万人

※万人以下、四捨五入

家賃相場が高いエリアを選ぶ

2つ目は「家賃相場が高いエリアを選ぶ」です。家賃相場を高く設定できるということは、 それだけ賃貸ニーズが強い(= そのエリアに住みたいという人が多い)といえます。

ただし、家賃相場が高いエリアは物件価格も高めです。そのため、最終的には「家賃相場・物件価格・利回り」のバランスを見てエリアを選定するのがおすすめです。なお、東京でワンルームの家賃相場の高いエリアは次の通りです。

エリア ワンルームの家賃相場
港区 11.21万円
渋谷区 11.13万円
中央区 10.92万円
千代田区 9.77万円
台東区 7.96万円

(公社)全国宅地建物取引業協会連合会「賃料相場:東京都(2023年11月22日更新)

部屋の間取りから選ぶ

3つ目は「入居者のニーズに合った部屋の間取りから選ぶ」です。

どのような属性の人が多いのかは、エリアによって変わります。例えば、注目しているエリアに独身の人が多いならワンルームマンションを選ぶ、ファミリー層が多いなら2DK以上を選ぶといった具合です。

国税調査によると、東京23区のうち「夫婦と子供」で構成される世帯が多い区は次の通りです。これらの区は、「部屋数の多い間取り」という入居者ニーズが一定程度あると考えられます。

総世帯数に占めるファミリーの割合
江戸川区 48.0%
文京区 47.6%
世田谷区  47.2%

一方、単身者(単独世帯)の多い区は以下の通りです。これらの区は、ワンルームマンションの入居者ニーズが高いと考えられます。

総世帯数に占める単身者の割合
新宿区 67.8%
渋谷区 64.5%
豊島区 64.0%

東京で選んではいけない収益物件のポイント3つ

魅力的な投資市場である東京でも、避けるべきエリアや物件があります。都内で比較的安価だからといって選んでしまうと、エリアや物件が持つ潜在的リスクによって、不動産投資の失敗を招いてしまいます。
最後の章では、東京で選んではいけない収益物件の特徴を3つご紹介しましょう。

歓楽街から近すぎる

1つ目は、歓楽街から近すぎるエリアです。
特に夜遅くまで栄えている歌舞伎町の位置する「新宿」や、コリアンタウンの位置する「新大久保」などは、深夜の騒音・治安が懸念されます。実際にそのエリアに住んだことのある女性からは、警察がよく見張っているので意外と危なくなかった、といった好意的な声も上がっています。しかし、良くないイメージが先行してしまい、需要が低くなってしまう可能性があります。

アクセスが悪い 

次に、交通利便性が悪い物件です。企業数が多く、働く年代が多く住んでいる東京では、駅までの距離と都心までのアクセスをとても重視する傾向にあります。不動産ポータルサイトで検索に出やすい、駅まで「徒歩5分以内」「徒歩7分以内」といった場所にすることで需要を確保しやすくなります。

同時に東京都心までの所要時間も大切です。エリア決めの際は、都心3区や5区までの距離を考えながら物件選定をしましょう。また、都心までの所要時間が同じ場所でも、千葉方面のエリアは人気が高くなっています。

部屋の形が悪い 

3つ目は、東京での物件取得価格が高いからといって、部屋の形が良くない物件は選ばないようにしましょう。入居希望者が部屋を探す際、決めていた予算より少し高くなってもレイアウトや生活がしやすい家を好んで申し込む傾向にあります。

部屋の形が悪い物件は家賃を相場より低くすることとなり、結果的に安さに魅力を感じた入居者から申し込みが入ります。つまり、属性が良くない入居者を自ら引き寄せてしまうのです。
また、部屋の形が悪い物件は売却時にも売れづらいデメリットがあります。特に初心者が購入始めの一件目は、誰からも好まれるような間取りの部屋を選ぶことが無難でしょう。

まとめ 

この記事では、「都心で行う不動産投資」と「地方で行う不動産投資」について、それぞれ比較をしながらメリット・デメリットを解説しました。比較をしていく中で、不動産投資の大きな課題である「需要面」において都心の東京に軍配が上がり、マーケット市場として安定していることが分かったかと思います。

購入から売却までの総合的な結果で判断する不動産投資では、毎月の家賃収入はもちろん、手放すときの売却益もキャッシュフローに大きな影響を及ぼします。資産価値の見込めるマーケット市場の選定をすることで、安定した不動産経営と堅実な資産形成を実現することができるでしょう。

ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.12.15

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資をするなら都心と地方どっちがいい?それぞれを徹底比較

  • 不動産投資
  • 初心者

これから不動産投資を始めるにあたって、都心(東京)と地方、どちらの物件を選べばよいかで迷っている人も多いのではないでしょうか。結論から申し上げると、長期的な視点では、都心での不動産投資のほうが安定しているといえます。

都心のほうが安定経営をしやすい理由は、「空室リスクが低い」「将来性が期待できる」「資産価値が保てる」などのメリットがあるからです。一方で都心の不動産投資にもデメリットはありますし、地方の不動産投資にもいくつかのメリットがあります。

この記事では、上記について詳しく解説します。また、都心(東京)で不動産投資をする際のポイントも紹介します。

都心で不動産投資をするメリット・デメリット 

都心というと「東京都の中心部」を想像する人が少なくありませんが、都心とは主要な都市・都市圏の中心部のことを指します。一般的には人が多く集まる繁華街やオフィス街などを構える地域で、商業施設や交通網が集中している場所です。
まずは、都心で不動産投資を行うメリットとデメリットをご紹介します。

都心の収益物件にみるメリット

①空室リスクが低い 

都心で不動産投資を行う大きなメリットは、空室リスクが低いことでしょう。

不動産経営において共通する課題は「賃貸需要の維持」です。人口が減少している日本において賃貸需要を維持し続けるには、人の流れが絶えず、入居者のニーズを見込めるエリア選定が不可欠です。新幹線の停車駅があるなど、全国各地をみても都心は日本経済の中枢を担う場所で、転入者の流入が見込めます。

また、今後の日本は都心へ人口が集中する一極化が想定されていることからも、特に転入超過となっている東京都での不動産投資は人口確保の面で非常に有利と言えるでしょう。東京都の転入超過数の推移は、次の通りです。コロナ渦により2021年の転入超過数は約3万人まで減少しましたが、最近ではコロナ前の水準まで回復しつつあります。

東京都の転入人口推移

②今後も再開発で将来性が期待できる

人が集まるエリアにみる特徴として、「再開発」が活発であることが挙げられます。

今後も人口確保を見込めるエリアには再開発へ巨額の事業資金が投じられ、高い将来性が期待できるでしょう。現在、東京~名古屋~大阪間の三大都市圏がリニア中央新幹線の開業に伴い、三駅の周辺は大規模再開発が予定されています。これにより、転入者の増加などより一層地域の活性化が予測されます。

また、2023年現在「100年に一度の大規模開発の真っ只中」と言われているのをご存じでしょうか。バブル期に建てられた多くのマンションが、居住用マンションの法定耐用年数と言われる47年に迫っている時期だからです。
物件選定では毎月のキャッシュフローに目がいきがちですが、不動産投資は売却損益を含めて成功が決まるため、将来性の見込めるエリア選定が求められます。

③資産価値が保てる

再開発など将来性のあるエリアでは、物件の資産価値を保てることも大きなメリットです。

裏付けとして東京都の中古マンション相場は、2013年からの10年間で約1.7倍に上昇しています(下記参照)。通常、建物は経年劣化により築年数が古くなるほど価格も下落しますが、東京都の例では家賃収入を得たうえに購入時よりも高値で売却が可能なケースもあります。

東京都の中古マンション相場

都心の収益物件にみるデメリット

①建物取得費が高い 

デメリットとしては、まず「建物の取得費が高い」ことが挙げられます。特に地価・建築費ともに上昇している現在では、新築物件による不動産投資はハードルが上がっています。

例えば、RC造建築物の1m²あたりの工事費用を東京都と全国平均で比較すると、東京都のほうが6.3万円高い結果となっています。

・ 東京都のRC造工事費用:34.1万円
・ 全国平均のRC造工事費用:27.8万円

上記に基づき、区分マンション(延べ床面積25㎡と仮定)と一棟マンション(同500㎡と仮定)で工事費用を計算した場合、東京都と全国平均の工事費用の差は以下のようになります。

  区分マンション 一棟マンション
東京都 852万5,000円 1億7,050万円
全国平均 695万円 1億3,900万円

※実際の工事費用は、建築条件や施工会社で異なります。

②利回りが低い

全国の不動産に関するデータ収集を行う様々な企業・メディアの調査によると、都心の収益物件は実質利回りが低いことが明らかになっています。日本不動産研究所のレポートによると、東京(城南)のワンルームタイプとファミリータイプの期待利回りは次の通りです。

物件タイプ 期待利回り
ワンルームタイプ 3.8%
ファミリータイプ 3.9%

出所:(一財)日本不動産研究所「第48回不動産投資家調査(2023年4月)

このような低利回りが要因となり、継続的に家賃収入を得られてもローン返済負担額も大きく、毎月大きな利益を上げられるわけではありません。低利回りの不動産投資では突発的な修繕費を考慮すると、いざと言う時の現金の準備が必要となりそうです。

一方、利回りが低いということは、それだけ物件価格が高い(=物件の価値が高い)ということです。利回りだけでなく物件の価値や空室率なども加味して、不動産投資を都心と地方のどちらですべきかを検討しましょう。

地方で不動産投資をするメリット・デメリット 

次に、地方で不動産投資をするメリット・デメリットについて見ていきましょう。東京都以外にも、政令指定都市を中心に不動産投資で人気のエリアがあります。都心と地方、両方の特徴をしっかり把握した上で、どちらがご自身と相性がよいかを判断しましょう。

地方の収益物件にみるメリット

①建物取得費が安い 

地方で行う不動産投資は、建物取得費(建築費+土地代)が安いことが大きな特徴でありメリットです。まず、建築費については前述の「都心の収益物件にみるデメリット①」で確認したように、東京都に比べて地方を中心とする全国平均は割安でした。

また、地価で見ても地方は東京に比べて割安です。東京都の住宅地(㎡あたり)の平均価格38万円を100とした場合の主な地方の価格指数は以下の通りで、大きな差があります。

都道府県 住宅地の価格指数
東京都 100
北海道 5.5
宮城県 11.6
愛知県 27.6
京都府 28.7
大阪府 39.6
広島県 15.1
福岡県 14.9

出所:国土交通省「令和3年都道府県地価調査

土地の価格が高いということは必然的に建物取得費が高くなり、金融機関の融資審査のハードルが上がってしまいます。反対に建物取得費が安いと購入にあたり準備する頭金の用意が少なく済み、不動産投資を実現しやすいと言えるでしょう。

②高利回りを期待できる 

建物取得費と比例して、高利回りを期待できることも大きなメリットです。「都心の収益物件に見るデメリット① 」でお伝えしたように、東京都の賃貸住宅の期待利回りは3%台後半と低利回りでした。これに対して地方(主な政令指定都市)の期待利回りは、4%半ばから5%前半が中心です。

エリア 期待利回り
(ワンルームタイプ)
札幌 5.0%
仙台 5.1%
横浜 4.5%
名古屋 4.6%
京都 4.8%
大阪 4.4%
神戸 4.8%
広島 5.25%
福岡 4.7%

出所:(一財)日本不動産研究所「第48回不動産投資家調査(2023年4月)

利回りが高いということは、物件価格に対して家賃相場が高いということです。ただし、高利回りは空室や物件価値下落などのリスクと関連しているため(詳しくは後述します)、高利回りという理由だけで地方物件に飛びつくのは避けましょう。

③物件供給数が少ないエリアがある 

不動産投資において、地方は東京都心に比べて賃貸ニーズが低いといわれます。しかし、中には入居希望者に対して物件供給数が少なく、賃貸ニーズが高い地方のエリアも存在します。その一例が、沖縄県の宮古・石垣の離島エリアです。賃貸管理会社が行ったヒアリングでは、「物件が不足している」「物件がやや不足している」という声が目立ちます(下記参照)。

  物件が不足している 物件がやや不足している
1R-1LDK 33% 67%
2K-2LDK 100% -
3K-3LDK 100% -

物件供給数が少ないということは、ライバルが少なく入居付けで有利となる場合がありますが、建築戸数が多くなると物件供給数が過剰に転じるケースもあるので注意しましょう。

地方の収益物件にみるデメリット 

①空室リスクが高い 

一般的に地方の収益物件は入居率が低く、空室リスクが高い傾向があります。管理会社などの団体である日管協のデータによると、首都圏の入居率がその他(首都圏やと関西圏を除く地方)の入居率を約3%上回っていることから、「地方の空室リスクが高い」という事実が確認できます。

・ 首都圏:入居率95.8%
・ 関西圏:入居率94.9%
・ その他:入居率92.9%

出所:(公財)日本賃貸住宅管理協会他「第27回 賃貸住宅市場景況感調査 『日管協短観』

特に人口が急減している地方の収益物件は要注意です。人の流れがないエリアでは一度退去者が出ると、何ヵ月も入居の申し込みがなく、ローン返済に自分の貯蓄の切り崩しが必要となります。

このような失敗をしないよう、地方の物件を検討する際は今後の人口推移を確認・予測立てがとても重要です。

②資産価値が下落しやすい 

人口減少が顕著な地域では不動産の資産価値が下落しやすいため、期待していた家賃や売却益が得られない可能性があります。その結果、手持ちのお金でマイナス分を埋めなければならないケースもあります。

例えば、2023年の都道府県地価調査で人口減少率が全国で最も大きかった秋田県の住宅地価は、1999年から25年連続で下落しています。2023年の地価下落率はマイナス0.8%でした(参照:秋田県建設部「令和5年地価調査結果の概要」)。東京23区の地価上昇とは対照的です。

③不動産管理会社の数が少ない

地方では不動産管理会社の数が少なく、信頼できるパートナー会社と出会えない可能性があります。
管理会社は、購入後のフォローやアドバイス、問い合わせに対するレスポンス、キャッシュフローへの影響など、不動産投資をするうえで共同体の存在です。ほったらかし投資をするためには、安心できる不動産管理会社を慎重に見つけなくてはなりません。
不動産管理会社の重要性については、下記の記事でも解説しておりますのでご覧下さい。

不動産投資は東京がおすすめの理由 

不動産投資において何十年後も生き残れる収益物件でいるためには、入居者を永続的に見込めるエリア選定が非常に重要です。その中でも、この章では東京がおすすめの理由をご紹介します。

人が集まり需要がある 

日本の首都、さらに経済の中心地である東京は、人が集まります。
リニア中央新幹線の開業により、東京~名古屋~大阪の三大都市圏が一つの都市化することで、今後ますます東京の一極化が予想されているほどです。

また、現時点における総務省の統計においても、日本全国で人口が増加しているのは東京都のみです。他県では人口減少だけでなく減少幅も増大していることから、東京都での不動産投資は需要面での安定が期待できます。

家賃相場が上昇しているから 

ここ最近、東京での賃貸物件において家賃が上昇していることも、東京での不動産投資をおすすめする理由の1つです。一般的に地価やマンション価格の相場上昇に伴って賃貸物件の家賃も上昇する傾向にありますが、東京都は23区、都下いずれも上昇が見られます。

特に東京23区で家賃上昇率が堅調なのは、次の3タイプのマンションです。

・ 30㎡以下のマンション(単身者向き)
・ 30〜50㎡のマンション(カップル向き)
・  50〜70㎡のマンション(ファミリー向き)

これらのタイプの物件は、首都圏ほか5つの地方都市を対象にした家賃上昇率ランキングで1位または2位となっています。

順位 30㎡以下 30〜50㎡ 50〜70㎡
1位 東京都下 東京23区  大阪市
2位 東京23区 埼玉県 東京23区
3位 札幌市 大阪市 埼玉県

単身者世帯が増えているから 

東京都では、単身者世帯の割合が増え続けています。この流れを生かして収益物件としてワンルームマンションを選ぶと、空室リスクを軽減しながら不動産投資を行うことができます。

以下のように、2000年から2040年までの間に単身者世帯(単独)の割合は約10%も上昇すると予測されています。

・ 2000年:40.9%
・ 2010年:45.8%
・ 2020年:48.3%
・ 2030年:49.6%
・ 2040年:51.2%

出所:東京都「東京都世帯数の予測の概要
※2000年、2010年は実績値

東京の物件で不動産投資を始めるときの選び方

ここまでの内容で、「東京の物件は不動産投資で安定している」ということはご理解いただけたでしょう。ただし、一口に「東京の物件」といっても、さまざまなエリアがあります。不動産投資を始めるときのエリア・物件選びのポイントは、次の通りです。

利用客数の多い路線・駅から選ぶ

入居者が住まいを決めるときは、通勤や通学に便利な沿線にある物件を選ぶのが一般的です。そのため、物件の最寄り駅の利用者数が多い場合は、不動産投資で有利と考えられます。例えば、JRで乗降客数の多い路線(利用者が東京に住んでいる割合50%以上)は次の通りです。

路線 延べ利用者数 利用者が東京に住んでいる割合
山手線 1,581万人 58.4%
中央線快速 933万人 75.3%
中央総武線各駅停車 1027万人 53.8%

出所:JR東日本「首都圏路線利用者データ

また、都営地下鉄はいずれも利用者数の多い人気路線です。

路線 1日あたりの乗車人員
浅草線 52.2万人
三田線 48.3万人
新宿線 58.4万人
大江戸線 67.7万人

出所:都営地下鉄「TOEI AD MEDIA GUIDE2023

路線に加えて、乗降客の多い駅も注目すべきです。東京メトロの乗降人員ランキング(2022年度)の上位5駅は、次の通りです。

路線 1日あたりの乗降人員
池袋駅 46万人
大手町駅 28万人
北千住駅 22万人
銀座駅 19万人
新宿駅 18万人

※万人以下、四捨五入

家賃相場が高いエリアを選ぶ

2つ目は「家賃相場が高いエリアを選ぶ」です。家賃相場を高く設定できるということは、 それだけ賃貸ニーズが強い(= そのエリアに住みたいという人が多い)といえます。

ただし、家賃相場が高いエリアは物件価格も高めです。そのため、最終的には「家賃相場・物件価格・利回り」のバランスを見てエリアを選定するのがおすすめです。なお、東京でワンルームの家賃相場の高いエリアは次の通りです。

エリア ワンルームの家賃相場
港区 11.21万円
渋谷区 11.13万円
中央区 10.92万円
千代田区 9.77万円
台東区 7.96万円

(公社)全国宅地建物取引業協会連合会「賃料相場:東京都(2023年11月22日更新)

部屋の間取りから選ぶ

3つ目は「入居者のニーズに合った部屋の間取りから選ぶ」です。

どのような属性の人が多いのかは、エリアによって変わります。例えば、注目しているエリアに独身の人が多いならワンルームマンションを選ぶ、ファミリー層が多いなら2DK以上を選ぶといった具合です。

国税調査によると、東京23区のうち「夫婦と子供」で構成される世帯が多い区は次の通りです。これらの区は、「部屋数の多い間取り」という入居者ニーズが一定程度あると考えられます。

総世帯数に占めるファミリーの割合
江戸川区 48.0%
文京区 47.6%
世田谷区  47.2%

一方、単身者(単独世帯)の多い区は以下の通りです。これらの区は、ワンルームマンションの入居者ニーズが高いと考えられます。

総世帯数に占める単身者の割合
新宿区 67.8%
渋谷区 64.5%
豊島区 64.0%

東京で選んではいけない収益物件のポイント3つ

魅力的な投資市場である東京でも、避けるべきエリアや物件があります。都内で比較的安価だからといって選んでしまうと、エリアや物件が持つ潜在的リスクによって、不動産投資の失敗を招いてしまいます。
最後の章では、東京で選んではいけない収益物件の特徴を3つご紹介しましょう。

歓楽街から近すぎる

1つ目は、歓楽街から近すぎるエリアです。
特に夜遅くまで栄えている歌舞伎町の位置する「新宿」や、コリアンタウンの位置する「新大久保」などは、深夜の騒音・治安が懸念されます。実際にそのエリアに住んだことのある女性からは、警察がよく見張っているので意外と危なくなかった、といった好意的な声も上がっています。しかし、良くないイメージが先行してしまい、需要が低くなってしまう可能性があります。

アクセスが悪い 

次に、交通利便性が悪い物件です。企業数が多く、働く年代が多く住んでいる東京では、駅までの距離と都心までのアクセスをとても重視する傾向にあります。不動産ポータルサイトで検索に出やすい、駅まで「徒歩5分以内」「徒歩7分以内」といった場所にすることで需要を確保しやすくなります。

同時に東京都心までの所要時間も大切です。エリア決めの際は、都心3区や5区までの距離を考えながら物件選定をしましょう。また、都心までの所要時間が同じ場所でも、千葉方面のエリアは人気が高くなっています。

部屋の形が悪い 

3つ目は、東京での物件取得価格が高いからといって、部屋の形が良くない物件は選ばないようにしましょう。入居希望者が部屋を探す際、決めていた予算より少し高くなってもレイアウトや生活がしやすい家を好んで申し込む傾向にあります。

部屋の形が悪い物件は家賃を相場より低くすることとなり、結果的に安さに魅力を感じた入居者から申し込みが入ります。つまり、属性が良くない入居者を自ら引き寄せてしまうのです。
また、部屋の形が悪い物件は売却時にも売れづらいデメリットがあります。特に初心者が購入始めの一件目は、誰からも好まれるような間取りの部屋を選ぶことが無難でしょう。

まとめ 

この記事では、「都心で行う不動産投資」と「地方で行う不動産投資」について、それぞれ比較をしながらメリット・デメリットを解説しました。比較をしていく中で、不動産投資の大きな課題である「需要面」において都心の東京に軍配が上がり、マーケット市場として安定していることが分かったかと思います。

購入から売却までの総合的な結果で判断する不動産投資では、毎月の家賃収入はもちろん、手放すときの売却益もキャッシュフローに大きな影響を及ぼします。資産価値の見込めるマーケット市場の選定をすることで、安定した不動産経営と堅実な資産形成を実現することができるでしょう。

ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。