2024.02.29

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

家賃下落リスクとは?その影響と5つの対策について徹底解説

  • 不動産投資
  • 家賃収入

不動産投資において、避けたいリスクの一つが家賃下落ではないでしょうか。新築の時は満室だった物件も、時が経つと、入居者がなかなか決まらず、空室を避けたいために家賃を下げて部屋を埋めるという事態は想定されることです。しかしこれでは収支が悪化してしまいます。今回は、そんな家賃下落の要因を追究して、家賃下落リスクを避ける方法を探っていきます。これを読んで、不動産投資を成功させましょう。

不動産投資における家賃下落リスクとは

不動産投資の家賃下落リスクとは、その名のとおり、家賃が下落するリスクです。不動産投資の収入源は「家賃」です。不動産投資を行う上でローンを組む方は多くいらっしゃいますが、ローンの借入返済は家賃から賄われます。そして、不動産投資を老後の生活資金充当という目的でおこなう方もいます。

ローン返済や老後資金を購入時点での家賃を当てにして、収支計画等を立てていると思います。しかし、何らかの理由で家賃が下落する場合があります。家賃が下落すると、ローン返済や老後資金に影響を与えかねません。

家賃の下落率の目安とは

不動産投資の家賃の下落率の目安は何%くらいなのでしょうか。家賃の下落率に影響を与える要素は以下のとおりです。

  • 築年数
  • 立地場所周辺の賃貸物件の地価や将来人口

これら2つの要素の内容を詳しく確認していきましょう。

築年数による家賃下落の目安

築年数が増すごとに家賃の下落リスクがあります。家賃は築年数が1年経過するごとに1%下落するといわれています。ここでは、築年数に応じた家賃下落率を実際のデータをもとにみてみましょう。

【築3~10年】

築3~10年が東京23区内の単身者向け賃貸住宅で最も下落率が大きい期間です。この期間の物件の家賃下落率は年換算で1.7%、築10年目の家賃は新築時と比較して約20%下落します。築10年未満の物件は、近隣新築物件との競合が激しいので下落率が大きくなりがちです。

【築10~20年】

築10年を超えてくると家賃下落率は年換算で約0.6%に減少します。築20年の物件は新築時より約30%下落することになります。築10年を経過した物件は、新築物件と競合しづらいので、家賃下落幅は緩やかになっていきます。

参考:三井住友トラスト基礎研究所「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」より

周辺の地価や将来人口の変動による家賃下落の目安

物件の立地により家賃下落率は異なります。

地価が高い場所にある賃貸住宅は、賃貸需要が高いため家賃下落率が小さい傾向にあります。地価が高い場所は、駅前や大規模商業施設がある場所、そして高級住宅街があるところなどです。

また、将来人口を把握しておくことも重要です。一般的に、将来人口が多い地域の家賃下落率は小さく、将来人口が少ない地域の家賃下落率は大きくなる傾向になります。

家賃が下落してしまう3つの要因

家賃が下落する要因は何なのでしょう。不動産投資を始めたい人は確認しておきましょう。

人口減少に対して過剰供給

不動産投資の対象となる地域の人口に対して、賃貸物件が供給過剰だと家賃が下落する傾向にあります。

賃貸物件が建てられる場所は、ある程度賃貸需要が見込まれる地域でしょう。しかし、そのような地域は多くの賃貸物件が建ち並びます。ですので、賃貸物件の供給が過剰となってしまうのです。

全国的に人口は減少傾向にありますが、東京都に関してはほかの地域と比較して大きな人口減少は起きていませんし、単身者の人口は増加傾向にあります。ウィズコロナの時代にあっても変わらずに増加傾向です。特に駅に近い単身者物件は人気があります。

経年劣化

建物は必ず時間が経過すると劣化していきます。外壁にヒビが入ったり、色が褪せてきたり、フローリングや部屋の壁に傷がついたりなど、さまざまな場所が劣化するのです。入居者は、それらがキレイな物件と比較して、新築物件に高い価値を見出します。その結果、築年数が経つ物件には高い価値を見出せず人気は下がり家賃が下落するのです。

市場の競合激化

家賃相場は地域の需要と供給のバランスで決まります。駅や商業施設、大学などができると、需要が確実にあるので家賃は高く設定できるでしょう。しかし、そのような地域は新たな物件が参入してきます。競争が激化してくると家賃を下げないと入居者が埋まらないといった現象がおきます。結果、家賃が下落していくのです。

家賃下落リスクを回避【物件選定のポイント】

不動産投資をおこなうなら、家賃下落リスクは回避したいところです。家賃が下落しない物件を選ぶポイントを押さえておきましょう。

利便性の高い物件

利便性の高い物件は家賃下落リスクの回避につながりやすいです。

特に家賃が下落しにくい場所は、通勤や通学、ショッピングに便利な駅近です。とくに複数路線が使える駅や始発駅、快速が停まる駅などの駅近物件は、賃貸ニーズが高い分、家賃下落リスクを回避しやすいです。

また駅周辺は、さまざまな商店や企業が立地しており、新たに物件を建てられる場所が少ないです。新規参入する余地があまりなく、競争相手が少なめなのも大きなメリットといえます。

同じように家賃が下落しにくい場所は、大学のキャンパス周辺です。大学付近のワンルームマンションは賃貸需要が旺盛です。大学生は車の所有率が低いですし、金銭的にも社会人ほど余裕がありません。ですので、車の維持費や電車代、バス代などが必要のない学校の近くに住む人が多いようです。

大学付近の場合、特にセキュリティー性能が高い物件や、家具、家電付きの物件は家賃下落リスクが低くなるでしょう。テレビモニター付きインターフォンが付いている物件や、玄関がオートロックの物件は、特に女性に人気があります。そして、大学生は、おおむね4年で卒業します。その短期間のために家具や家電を購入するよりは、それらが備え付けられている物件に入居するという学生は多くいます。

他にもスーパーやドラッグストア、コンビニが近くにある場所も人気です。食料品やヘルスケア商品などが徒歩2,3分で購入できると非常に便利です。料理中に食材や調味料などが足りなくなってもすぐに手に入ったり、病気を患っても治療薬をすぐに購入できたりなど何かと便利です。このような環境の物件の場合、長く住み続ける入居者は多いでしょう。

高需要な間取り物件

賃貸需要に合った間取りの物件は、家賃下落率が低い傾向にあります。住居者形態別でおもな人気の間取りを見ていきましょう。

【単身者に需要が高い間取り】

➀モノが多い方に収納重視の間取り
おしゃれ好きの方や趣味でモノが増える方などには、収納重視の間取りが人気です。玄関にシューズインクローゼットがある物件やウォークインクローゼットがある物件、収納スペースが大きい物件などが高い需要を示しています。

②プライベートな時間にしっかりくつろぎたい方に寝室重視の間取り
仕事が多忙で、昼間は忙しく時間が過ぎていくので、帰宅後だけはしっかりくつろぎたい方には、寝室が確保されている1DKの間取りに需要があります。ワンルームよりも広い空間は、心にも余裕を与えてくれます。

【二人暮らし世帯に需要が高い間取り】

➀プライベート重視のカップルには2LDK
お互いがプライベートな時間を持ちたいカップルや夫婦には間取りが2LDKのマンションに高い需要があります。2人で一緒にいたい時間にはリビングで過ごし、仕事や趣味などに没頭したい時にはお互いの部屋で過ごすことが可能です。生活にメリハリがついて、良い距離感を保つことができます。

②友人がよく訪ねるカップルには大きなリビングの間取り
交友関係が広く、よく友人が訪れて、ランチしたり、パーティーしたり、寝泊まりさせることもあるカップルや夫婦には、リビングが広い間取りの需要が高いです。またカウンターキッチンも人気が高いです。

【ファミリー世帯に人気の間取り】

日当たり・採光に重きを置いた間取り
不動産会社が行う「住みたい間取り」アンケートで必ずファミリー世帯に人気があるのが、リビングダイニングが横長であり、日当たりの良いバルコニーがある間取りです。この間取りでは、キッチンとリビングが繋がっていることが多く、料理をしながら、リビングで遊ぶ子どもを見守ることができるのも需要が高い理由です。

設備が充実している物件

設備が充実している物件は入居者の満足度が高いため、需要が高いです。以下のような設備があると特に需要が見込まれます。

【インターネット環境】

コロナの影響でリモートワークが増えている状況からインターネットが完備されている物件は賃貸需要が見込めます。

【オートロックなどセキュリティー】

セキュリティー対策が整っている物件は、特に女性に高い需要があります。物件玄関のオートロックは、物件に不審者が入る危険性が少なく安心して住むことができます。テレビモニター付きインターフォンや防犯カメラが付いている物件も人気です。防犯カメラがあると、不審者が入ることを防止でき、カギがディンプルキーやカードキーなどだと通常のカギと比較して空き巣が入る不安が減少します。

【クローゼット】

先述しましたが、収納が多い物件は人気が高いです。小さめの収納だけだと、部屋の中に収納スペースを確保しなければならず、生活スペースが狭くなってしまうのです。その点、大きめのクローゼットが設置されていると、生活スペースが有効に利用できてスッキリした部屋を実現できます。

【浴室乾燥機】

梅雨の時期や冬でも便利な浴室乾燥も人気です。部屋干しの匂いを気にしなくてよい点や浴室のカビ防止、女性だと防犯上メリットなどがあり需要が高いです。

下落率の差

築年数や、駅からの徒歩時間ごとに地域別家賃下落率を分析したデータをニッセイ基礎研究所が出しています。これは、東京23区の区ごとに築年数や駅からの徒歩時間などによって、どれほど家賃が下落するのかを示したものです。

築年数

築年数が1年経過した場合の家賃下落率の低い(0.4%未満)区と、下落率の高い(1.2%を超える)区は以下のとおりです。

【築年数1年経過で家賃下落率の低い区・高い区】

低い区 高い区
・目黒区
・杉並区
・世田谷区
・江戸川区
・北区
・板橋区
・新宿区
・港区

家賃下落率の低い区は、もともと住宅地として人気が高く、賃貸物件の需要も高い地域です。そのため家賃を下げなくても入居者が確保できる状態となっています。一方、家賃下落率の高い区は、築年数の古い物件の評価が厳しく、築年数の経過とともに家賃が下がる傾向があります。

最寄り駅までの徒歩時間

最寄り駅までの徒歩時間が1分増加した場合の家賃下落率が小さい区(0.4%未満)と家賃下落率が大きい区(1.2%を超える区)は以下のとおりです。

【最寄り駅までの徒歩時間1分増加で家賃下落率が小さい区・大きい区】

小さい区 大きい区
・中野区
・板橋区
・練馬区
・葛飾区
・荒川区
・墨田区
・台東区
・江東区

家賃下落率の大きい区は、いずれも23区東部に位置します。これらの区は年齢層が低い単身者が多く、移動に電車への依存度が高いことから、駅からの距離を重視するため、このような結果が出たものと思われます。

最寄り駅から都心までの所要時間

最寄り駅から都心までの所要時間が1分増加した場合の家賃下落率が小さい区(0.4%未満)と家賃下落率が大きい区(1.2%を超える区)は以下のとおりです。

【最寄り駅から都心までの所要時間が1分増加で家賃下落率が小さい区・大きい区】

小さい区 大きい区
・港区 ・足立区
・荒川区
・世田谷区

下落率の大きい区は、比較的都心部へのアクセスを重視する居住者が多いが、鉄道で都心部へ向かうのに乗り換えを要する路線が通っていることが特徴となっています。

築年数(1年問わず)に家賃下落率の小さい区・大きい区

小さい区 大きい区
・目黒区
・世田谷区
・杉並区
・北区
・板橋区
・新宿区
・港区
・江戸川区

地域人口の増減をリサーチする

家賃下落リスクを回避するポイントとして、「賃貸ニーズのあるエリアを選ぶこと」が挙げられます。そこに住みたいという人が多ければ、エリア全体で強気の家賃を設定しやすいため、下落を抑えやすくなります。

現在から将来までの賃貸ニーズを簡単に調べる方法に、地域人口の増減(人口推計)のリサーチがあります。具体的には、各自治体が公表しているデータを閲覧するとよいでしょう。「自治体名+人口推計」などのキーワードで、ネット検索が手軽にできます。

さらに各自治体の人口推計では、年齢別(3区分別や5歳階級別)の変化も予測しています。例えば若い単身者向けの物件を検討しているなら、20代の人口推計にフォーカスするといった具合です。

家賃下落リスクを回避【既存物件の価値を維持または向上】

ここまで、家賃下落リスクを回避する「物件選定」をテーマに解説してきました。その他、「物件価値の維持・向上」も家賃の下落を緩やかにしたり、家賃を上昇させたりするのに有効です。3つの具体策をご紹介します。

物件のリフォームや修繕などを行って物件価値を高める

前述のとおり、不動産投資の物件は築年数が経つほど家賃が下落する傾向があります。しかし、以下のような施策で物件価値を高めれば、家賃下落リスクを回避することができます。

・ 修繕
・ 設備の入れ替え
・ リフォーム
・ リノベーション

ただし、これらの施策は賃貸ニーズに応える内容で行うことが重要です(下記参照)。オーナーの思い込みでリフォームなどを行っても、家賃下落が止まらない可能性があるので注意しましょう。

3点ユニットバス→バスとトイレを完全に分離
・ ベランダの洗濯機置き場→室内に洗濯機置き場を設置
・ チャイムだけのインターフォン→モニター付きインターフォンを設置
・ 畳敷きの和室→フローリングの洋室
無料Wi-Fiの設置 など

入居者に長期間入居してもらうことで空室率を下げる

長期間入居してもらうことは、家賃下落リスクの回避につながります。以下のように、長期間の空室と入居を比べると、その違いは歴然です。

  • 長期間空室が発生:オーナーが弱気になり、家賃を下げやすくなる
  • 長期間入居を実現:同じ家賃設定を続けやすい

長期間入居を実現するための経営手法として、「管理面」と「条件面」からのアプローチが考えられます。

管理面のアプローチ例 ・ トラブルや苦情に迅速に対応する
・ 入居者に人気の設備を採用する
・ 建物周りや共用部を清潔に保つ
条件面からのアプローチ例 ・ 長期入居者にプレゼントを贈る
・ 長期入居者に最新設備を提供する
・ 更新料をサービスする

いずれのアプローチも、オーナーの独自色を出しやすい部分です。入居者目線で魅力的なサービスの提供を考えてみましょう。

すばやく入居者を募集してくれる管理会社に委託する

家賃下落リスク回避の有効策として、「優秀な管理会社に物件を委託すること」も挙げられます。

管理会社は入居者管理や物件管理を担当する、オーナーのビジネスパートナーです。管理会社のサービスの質は入居者満足度に影響を与えやすく、前項でお伝えした「長期間入居」を実現するために重要な要素です。

また、優秀な管理会社は空室が発生した際に次の入居者をスピーディーに決めてくれるため、「家賃を下げて入居者を強引に決める」という状況を避けやすくなります。優秀な管理会社を見極めるポイントは、次の通りです。

・ 自社やグループ会社で賃貸仲介をしている
・ 主要駅の駅前などに店舗を構えている
・ 自社で充実した賃貸サイトを運営している
・ 入居者募集から決定までのノウハウが確立している など

家賃下落リスクの高いエリア 一都三県版

前項では東京23区内における家賃下落率についてまとめましたが、ここでは、東京都と周辺三県(埼玉県・千葉県・神奈川県)における家賃下落率の高い自治体をまとめてみました。

【一都三県における家賃下落率の高い自治体】

行政区 家賃下落率 人口減少率
東京都青梅市 -33.3% -24.1%
東京都羽村市 -28.6% -14.3%
埼玉県熊谷市 -28.1% -19.6%
神奈川県秦野市 -25.7% -11.9%
埼玉県入間市 -25.6% -15.4%
神奈川県伊勢原市 -24.1% -13.9%
神奈川県厚木市 -23.9% -13.3%
千葉県我孫子市 -23.7% -21.4%
埼玉県久喜市 -23.5% -20.4%
千葉県千葉市若葉区 -23.5% -17.9%

※家賃下落率は、現在10万円の家賃を得ている築5年物件の30年後の想定家賃
※人口下落率は、国立社会保障・人口問題研究所の推計による2015年を基点とした25年後の減少率

家賃下落リスクについてよくある質問とその回答

家賃の下落率は平均でどのくらい?

家賃は築年数が1年増えるごとに、平均1%ずつ下落していくといわれています。ただし、家賃の下落率は以下のような要因によって変わります。

・ エリア内の人口推移
・ 賃貸市場の競合状態
・ 駅からの徒歩分数
・ 築年数 など

そのため、不動産投資を始める前の段階で、対象エリアの家賃動向をリサーチするのが賢明です。

例えば競合状態(物件数)が変わらず、人口が減少しているエリアでは、家賃が平均以上に下落する可能性があります。また人口が一定でも、物件数が急増して市場が飽和状態になれば、家賃が平均以上に下落する可能性があります。

築年数で見ると、一般的に築3年〜築10年の平均家賃下落率は大きく、築10年を超えると下落が緩やかになります。

インフレになると家賃はどうなる?

インフレ局面になると物価上昇率とともに、家賃が上がりやすくなります。とはいえ、インフレになると全ての物件の家賃が自動的に上がるわけではありません。

賃貸ニーズが高いエリア(首都圏や政令都市など)の家賃は上がりやすいのですが、賃貸ニーズが低い中小規模の地方都市では、インフレ局面でも家賃が停滞・下落することがあります。

参考に、不動産投資プラットフォーム「楽待」を運営する株式会社ファーストロジックの調査では、インフレ圧力が強まっている2022年6月〜2023年6月頃に「家賃を上げた」と回答した大家は全体の26%でした。

そして、家賃を上げたと回答した大家の大半(74%)は、1都3県または政令都市に物件を所有していました。

家賃が下がる築年数はどれくらい?

通常、家賃下落率は築浅の時期に大きく下がり、築10年を超えると下落率が緩やかになります。そして築古になると、一般的には家賃下落率が下げ止まります。

どのくらいの築年数になると家賃下落率が下げ止まるかは、エリアや立地条件、建物の種類などによって変わります。例えば東京23区のワンルームマンション(シングルマンション)の場合、築31年を過ぎると家賃下落率がマイナス0.5%と下落幅が小さくなります。

家賃下落が下げ止まっているからという理由だけで、築古物件に手を出すのは早計です。確かに家賃下落リスクは回避しやすくなるかもしれませんが、築古物件は空室リスクが高まる傾向があるからです。

参考:三井住友トラスト基礎研究所「賃貸マンションと比較した賃貸アパートの実態分析

アパートの築年数の限界はどれくらい?

ひと口にアパートの築年数といっても、その構造によって寿命は変わります。例えば、構造に鉄骨軸組、外壁などに独自のコンクリート材を採用している大手ハウスメーカーは、アパートの耐用年数を60年以上とアナウンスしています。

また、国土交通省のレポート「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」では、アパートで採用されることの多い木造構造の耐用期間の目安は、劣化対策等級2(フラット35基準程度)で50〜60年となっています。

これらの情報を踏まえると、品質の良いアパートの築年数の限界は50〜60年以上と考えられますが、新築時からメンテナンスに力を入れることで、建物の寿命をさらに延ばすことができるでしょう。

まとめ

今回は、家賃下落リスクの影響と対策などについてお話してきました。家賃が下落する要因は、主に経年劣化と立地条件であることがわかりました。経年劣化は避けることができないので、いかに立地条件が良い場所を選んで物件を購入するか、そして、入居者に需要がある設備を備えるかが家賃下落リスクを避ける大きなポイントとなってきます。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.02.29

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

家賃下落リスクとは?その影響と5つの対策について徹底解説

  • 不動産投資
  • 家賃収入

不動産投資において、避けたいリスクの一つが家賃下落ではないでしょうか。新築の時は満室だった物件も、時が経つと、入居者がなかなか決まらず、空室を避けたいために家賃を下げて部屋を埋めるという事態は想定されることです。しかしこれでは収支が悪化してしまいます。今回は、そんな家賃下落の要因を追究して、家賃下落リスクを避ける方法を探っていきます。これを読んで、不動産投資を成功させましょう。

不動産投資における家賃下落リスクとは

不動産投資の家賃下落リスクとは、その名のとおり、家賃が下落するリスクです。不動産投資の収入源は「家賃」です。不動産投資を行う上でローンを組む方は多くいらっしゃいますが、ローンの借入返済は家賃から賄われます。そして、不動産投資を老後の生活資金充当という目的でおこなう方もいます。

ローン返済や老後資金を購入時点での家賃を当てにして、収支計画等を立てていると思います。しかし、何らかの理由で家賃が下落する場合があります。家賃が下落すると、ローン返済や老後資金に影響を与えかねません。

家賃の下落率の目安とは

不動産投資の家賃の下落率の目安は何%くらいなのでしょうか。家賃の下落率に影響を与える要素は以下のとおりです。

  • 築年数
  • 立地場所周辺の賃貸物件の地価や将来人口

これら2つの要素の内容を詳しく確認していきましょう。

築年数による家賃下落の目安

築年数が増すごとに家賃の下落リスクがあります。家賃は築年数が1年経過するごとに1%下落するといわれています。ここでは、築年数に応じた家賃下落率を実際のデータをもとにみてみましょう。

【築3~10年】

築3~10年が東京23区内の単身者向け賃貸住宅で最も下落率が大きい期間です。この期間の物件の家賃下落率は年換算で1.7%、築10年目の家賃は新築時と比較して約20%下落します。築10年未満の物件は、近隣新築物件との競合が激しいので下落率が大きくなりがちです。

【築10~20年】

築10年を超えてくると家賃下落率は年換算で約0.6%に減少します。築20年の物件は新築時より約30%下落することになります。築10年を経過した物件は、新築物件と競合しづらいので、家賃下落幅は緩やかになっていきます。

参考:三井住友トラスト基礎研究所「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」より

周辺の地価や将来人口の変動による家賃下落の目安

物件の立地により家賃下落率は異なります。

地価が高い場所にある賃貸住宅は、賃貸需要が高いため家賃下落率が小さい傾向にあります。地価が高い場所は、駅前や大規模商業施設がある場所、そして高級住宅街があるところなどです。

また、将来人口を把握しておくことも重要です。一般的に、将来人口が多い地域の家賃下落率は小さく、将来人口が少ない地域の家賃下落率は大きくなる傾向になります。

家賃が下落してしまう3つの要因

家賃が下落する要因は何なのでしょう。不動産投資を始めたい人は確認しておきましょう。

人口減少に対して過剰供給

不動産投資の対象となる地域の人口に対して、賃貸物件が供給過剰だと家賃が下落する傾向にあります。

賃貸物件が建てられる場所は、ある程度賃貸需要が見込まれる地域でしょう。しかし、そのような地域は多くの賃貸物件が建ち並びます。ですので、賃貸物件の供給が過剰となってしまうのです。

全国的に人口は減少傾向にありますが、東京都に関してはほかの地域と比較して大きな人口減少は起きていませんし、単身者の人口は増加傾向にあります。ウィズコロナの時代にあっても変わらずに増加傾向です。特に駅に近い単身者物件は人気があります。

経年劣化

建物は必ず時間が経過すると劣化していきます。外壁にヒビが入ったり、色が褪せてきたり、フローリングや部屋の壁に傷がついたりなど、さまざまな場所が劣化するのです。入居者は、それらがキレイな物件と比較して、新築物件に高い価値を見出します。その結果、築年数が経つ物件には高い価値を見出せず人気は下がり家賃が下落するのです。

市場の競合激化

家賃相場は地域の需要と供給のバランスで決まります。駅や商業施設、大学などができると、需要が確実にあるので家賃は高く設定できるでしょう。しかし、そのような地域は新たな物件が参入してきます。競争が激化してくると家賃を下げないと入居者が埋まらないといった現象がおきます。結果、家賃が下落していくのです。

家賃下落リスクを回避【物件選定のポイント】

不動産投資をおこなうなら、家賃下落リスクは回避したいところです。家賃が下落しない物件を選ぶポイントを押さえておきましょう。

利便性の高い物件

利便性の高い物件は家賃下落リスクの回避につながりやすいです。

特に家賃が下落しにくい場所は、通勤や通学、ショッピングに便利な駅近です。とくに複数路線が使える駅や始発駅、快速が停まる駅などの駅近物件は、賃貸ニーズが高い分、家賃下落リスクを回避しやすいです。

また駅周辺は、さまざまな商店や企業が立地しており、新たに物件を建てられる場所が少ないです。新規参入する余地があまりなく、競争相手が少なめなのも大きなメリットといえます。

同じように家賃が下落しにくい場所は、大学のキャンパス周辺です。大学付近のワンルームマンションは賃貸需要が旺盛です。大学生は車の所有率が低いですし、金銭的にも社会人ほど余裕がありません。ですので、車の維持費や電車代、バス代などが必要のない学校の近くに住む人が多いようです。

大学付近の場合、特にセキュリティー性能が高い物件や、家具、家電付きの物件は家賃下落リスクが低くなるでしょう。テレビモニター付きインターフォンが付いている物件や、玄関がオートロックの物件は、特に女性に人気があります。そして、大学生は、おおむね4年で卒業します。その短期間のために家具や家電を購入するよりは、それらが備え付けられている物件に入居するという学生は多くいます。

他にもスーパーやドラッグストア、コンビニが近くにある場所も人気です。食料品やヘルスケア商品などが徒歩2,3分で購入できると非常に便利です。料理中に食材や調味料などが足りなくなってもすぐに手に入ったり、病気を患っても治療薬をすぐに購入できたりなど何かと便利です。このような環境の物件の場合、長く住み続ける入居者は多いでしょう。

高需要な間取り物件

賃貸需要に合った間取りの物件は、家賃下落率が低い傾向にあります。住居者形態別でおもな人気の間取りを見ていきましょう。

【単身者に需要が高い間取り】

➀モノが多い方に収納重視の間取り
おしゃれ好きの方や趣味でモノが増える方などには、収納重視の間取りが人気です。玄関にシューズインクローゼットがある物件やウォークインクローゼットがある物件、収納スペースが大きい物件などが高い需要を示しています。

②プライベートな時間にしっかりくつろぎたい方に寝室重視の間取り
仕事が多忙で、昼間は忙しく時間が過ぎていくので、帰宅後だけはしっかりくつろぎたい方には、寝室が確保されている1DKの間取りに需要があります。ワンルームよりも広い空間は、心にも余裕を与えてくれます。

【二人暮らし世帯に需要が高い間取り】

➀プライベート重視のカップルには2LDK
お互いがプライベートな時間を持ちたいカップルや夫婦には間取りが2LDKのマンションに高い需要があります。2人で一緒にいたい時間にはリビングで過ごし、仕事や趣味などに没頭したい時にはお互いの部屋で過ごすことが可能です。生活にメリハリがついて、良い距離感を保つことができます。

②友人がよく訪ねるカップルには大きなリビングの間取り
交友関係が広く、よく友人が訪れて、ランチしたり、パーティーしたり、寝泊まりさせることもあるカップルや夫婦には、リビングが広い間取りの需要が高いです。またカウンターキッチンも人気が高いです。

【ファミリー世帯に人気の間取り】

日当たり・採光に重きを置いた間取り
不動産会社が行う「住みたい間取り」アンケートで必ずファミリー世帯に人気があるのが、リビングダイニングが横長であり、日当たりの良いバルコニーがある間取りです。この間取りでは、キッチンとリビングが繋がっていることが多く、料理をしながら、リビングで遊ぶ子どもを見守ることができるのも需要が高い理由です。

設備が充実している物件

設備が充実している物件は入居者の満足度が高いため、需要が高いです。以下のような設備があると特に需要が見込まれます。

【インターネット環境】

コロナの影響でリモートワークが増えている状況からインターネットが完備されている物件は賃貸需要が見込めます。

【オートロックなどセキュリティー】

セキュリティー対策が整っている物件は、特に女性に高い需要があります。物件玄関のオートロックは、物件に不審者が入る危険性が少なく安心して住むことができます。テレビモニター付きインターフォンや防犯カメラが付いている物件も人気です。防犯カメラがあると、不審者が入ることを防止でき、カギがディンプルキーやカードキーなどだと通常のカギと比較して空き巣が入る不安が減少します。

【クローゼット】

先述しましたが、収納が多い物件は人気が高いです。小さめの収納だけだと、部屋の中に収納スペースを確保しなければならず、生活スペースが狭くなってしまうのです。その点、大きめのクローゼットが設置されていると、生活スペースが有効に利用できてスッキリした部屋を実現できます。

【浴室乾燥機】

梅雨の時期や冬でも便利な浴室乾燥も人気です。部屋干しの匂いを気にしなくてよい点や浴室のカビ防止、女性だと防犯上メリットなどがあり需要が高いです。

下落率の差

築年数や、駅からの徒歩時間ごとに地域別家賃下落率を分析したデータをニッセイ基礎研究所が出しています。これは、東京23区の区ごとに築年数や駅からの徒歩時間などによって、どれほど家賃が下落するのかを示したものです。

築年数

築年数が1年経過した場合の家賃下落率の低い(0.4%未満)区と、下落率の高い(1.2%を超える)区は以下のとおりです。

【築年数1年経過で家賃下落率の低い区・高い区】

低い区 高い区
・目黒区
・杉並区
・世田谷区
・江戸川区
・北区
・板橋区
・新宿区
・港区

家賃下落率の低い区は、もともと住宅地として人気が高く、賃貸物件の需要も高い地域です。そのため家賃を下げなくても入居者が確保できる状態となっています。一方、家賃下落率の高い区は、築年数の古い物件の評価が厳しく、築年数の経過とともに家賃が下がる傾向があります。

最寄り駅までの徒歩時間

最寄り駅までの徒歩時間が1分増加した場合の家賃下落率が小さい区(0.4%未満)と家賃下落率が大きい区(1.2%を超える区)は以下のとおりです。

【最寄り駅までの徒歩時間1分増加で家賃下落率が小さい区・大きい区】

小さい区 大きい区
・中野区
・板橋区
・練馬区
・葛飾区
・荒川区
・墨田区
・台東区
・江東区

家賃下落率の大きい区は、いずれも23区東部に位置します。これらの区は年齢層が低い単身者が多く、移動に電車への依存度が高いことから、駅からの距離を重視するため、このような結果が出たものと思われます。

最寄り駅から都心までの所要時間

最寄り駅から都心までの所要時間が1分増加した場合の家賃下落率が小さい区(0.4%未満)と家賃下落率が大きい区(1.2%を超える区)は以下のとおりです。

【最寄り駅から都心までの所要時間が1分増加で家賃下落率が小さい区・大きい区】

小さい区 大きい区
・港区 ・足立区
・荒川区
・世田谷区

下落率の大きい区は、比較的都心部へのアクセスを重視する居住者が多いが、鉄道で都心部へ向かうのに乗り換えを要する路線が通っていることが特徴となっています。

築年数(1年問わず)に家賃下落率の小さい区・大きい区

小さい区 大きい区
・目黒区
・世田谷区
・杉並区
・北区
・板橋区
・新宿区
・港区
・江戸川区

地域人口の増減をリサーチする

家賃下落リスクを回避するポイントとして、「賃貸ニーズのあるエリアを選ぶこと」が挙げられます。そこに住みたいという人が多ければ、エリア全体で強気の家賃を設定しやすいため、下落を抑えやすくなります。

現在から将来までの賃貸ニーズを簡単に調べる方法に、地域人口の増減(人口推計)のリサーチがあります。具体的には、各自治体が公表しているデータを閲覧するとよいでしょう。「自治体名+人口推計」などのキーワードで、ネット検索が手軽にできます。

さらに各自治体の人口推計では、年齢別(3区分別や5歳階級別)の変化も予測しています。例えば若い単身者向けの物件を検討しているなら、20代の人口推計にフォーカスするといった具合です。

家賃下落リスクを回避【既存物件の価値を維持または向上】

ここまで、家賃下落リスクを回避する「物件選定」をテーマに解説してきました。その他、「物件価値の維持・向上」も家賃の下落を緩やかにしたり、家賃を上昇させたりするのに有効です。3つの具体策をご紹介します。

物件のリフォームや修繕などを行って物件価値を高める

前述のとおり、不動産投資の物件は築年数が経つほど家賃が下落する傾向があります。しかし、以下のような施策で物件価値を高めれば、家賃下落リスクを回避することができます。

・ 修繕
・ 設備の入れ替え
・ リフォーム
・ リノベーション

ただし、これらの施策は賃貸ニーズに応える内容で行うことが重要です(下記参照)。オーナーの思い込みでリフォームなどを行っても、家賃下落が止まらない可能性があるので注意しましょう。

3点ユニットバス→バスとトイレを完全に分離
・ ベランダの洗濯機置き場→室内に洗濯機置き場を設置
・ チャイムだけのインターフォン→モニター付きインターフォンを設置
・ 畳敷きの和室→フローリングの洋室
無料Wi-Fiの設置 など

入居者に長期間入居してもらうことで空室率を下げる

長期間入居してもらうことは、家賃下落リスクの回避につながります。以下のように、長期間の空室と入居を比べると、その違いは歴然です。

  • 長期間空室が発生:オーナーが弱気になり、家賃を下げやすくなる
  • 長期間入居を実現:同じ家賃設定を続けやすい

長期間入居を実現するための経営手法として、「管理面」と「条件面」からのアプローチが考えられます。

管理面のアプローチ例 ・ トラブルや苦情に迅速に対応する
・ 入居者に人気の設備を採用する
・ 建物周りや共用部を清潔に保つ
条件面からのアプローチ例 ・ 長期入居者にプレゼントを贈る
・ 長期入居者に最新設備を提供する
・ 更新料をサービスする

いずれのアプローチも、オーナーの独自色を出しやすい部分です。入居者目線で魅力的なサービスの提供を考えてみましょう。

すばやく入居者を募集してくれる管理会社に委託する

家賃下落リスク回避の有効策として、「優秀な管理会社に物件を委託すること」も挙げられます。

管理会社は入居者管理や物件管理を担当する、オーナーのビジネスパートナーです。管理会社のサービスの質は入居者満足度に影響を与えやすく、前項でお伝えした「長期間入居」を実現するために重要な要素です。

また、優秀な管理会社は空室が発生した際に次の入居者をスピーディーに決めてくれるため、「家賃を下げて入居者を強引に決める」という状況を避けやすくなります。優秀な管理会社を見極めるポイントは、次の通りです。

・ 自社やグループ会社で賃貸仲介をしている
・ 主要駅の駅前などに店舗を構えている
・ 自社で充実した賃貸サイトを運営している
・ 入居者募集から決定までのノウハウが確立している など

家賃下落リスクの高いエリア 一都三県版

前項では東京23区内における家賃下落率についてまとめましたが、ここでは、東京都と周辺三県(埼玉県・千葉県・神奈川県)における家賃下落率の高い自治体をまとめてみました。

【一都三県における家賃下落率の高い自治体】

行政区 家賃下落率 人口減少率
東京都青梅市 -33.3% -24.1%
東京都羽村市 -28.6% -14.3%
埼玉県熊谷市 -28.1% -19.6%
神奈川県秦野市 -25.7% -11.9%
埼玉県入間市 -25.6% -15.4%
神奈川県伊勢原市 -24.1% -13.9%
神奈川県厚木市 -23.9% -13.3%
千葉県我孫子市 -23.7% -21.4%
埼玉県久喜市 -23.5% -20.4%
千葉県千葉市若葉区 -23.5% -17.9%

※家賃下落率は、現在10万円の家賃を得ている築5年物件の30年後の想定家賃
※人口下落率は、国立社会保障・人口問題研究所の推計による2015年を基点とした25年後の減少率

家賃下落リスクについてよくある質問とその回答

家賃の下落率は平均でどのくらい?

家賃は築年数が1年増えるごとに、平均1%ずつ下落していくといわれています。ただし、家賃の下落率は以下のような要因によって変わります。

・ エリア内の人口推移
・ 賃貸市場の競合状態
・ 駅からの徒歩分数
・ 築年数 など

そのため、不動産投資を始める前の段階で、対象エリアの家賃動向をリサーチするのが賢明です。

例えば競合状態(物件数)が変わらず、人口が減少しているエリアでは、家賃が平均以上に下落する可能性があります。また人口が一定でも、物件数が急増して市場が飽和状態になれば、家賃が平均以上に下落する可能性があります。

築年数で見ると、一般的に築3年〜築10年の平均家賃下落率は大きく、築10年を超えると下落が緩やかになります。

インフレになると家賃はどうなる?

インフレ局面になると物価上昇率とともに、家賃が上がりやすくなります。とはいえ、インフレになると全ての物件の家賃が自動的に上がるわけではありません。

賃貸ニーズが高いエリア(首都圏や政令都市など)の家賃は上がりやすいのですが、賃貸ニーズが低い中小規模の地方都市では、インフレ局面でも家賃が停滞・下落することがあります。

参考に、不動産投資プラットフォーム「楽待」を運営する株式会社ファーストロジックの調査では、インフレ圧力が強まっている2022年6月〜2023年6月頃に「家賃を上げた」と回答した大家は全体の26%でした。

そして、家賃を上げたと回答した大家の大半(74%)は、1都3県または政令都市に物件を所有していました。

家賃が下がる築年数はどれくらい?

通常、家賃下落率は築浅の時期に大きく下がり、築10年を超えると下落率が緩やかになります。そして築古になると、一般的には家賃下落率が下げ止まります。

どのくらいの築年数になると家賃下落率が下げ止まるかは、エリアや立地条件、建物の種類などによって変わります。例えば東京23区のワンルームマンション(シングルマンション)の場合、築31年を過ぎると家賃下落率がマイナス0.5%と下落幅が小さくなります。

家賃下落が下げ止まっているからという理由だけで、築古物件に手を出すのは早計です。確かに家賃下落リスクは回避しやすくなるかもしれませんが、築古物件は空室リスクが高まる傾向があるからです。

参考:三井住友トラスト基礎研究所「賃貸マンションと比較した賃貸アパートの実態分析

アパートの築年数の限界はどれくらい?

ひと口にアパートの築年数といっても、その構造によって寿命は変わります。例えば、構造に鉄骨軸組、外壁などに独自のコンクリート材を採用している大手ハウスメーカーは、アパートの耐用年数を60年以上とアナウンスしています。

また、国土交通省のレポート「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」では、アパートで採用されることの多い木造構造の耐用期間の目安は、劣化対策等級2(フラット35基準程度)で50〜60年となっています。

これらの情報を踏まえると、品質の良いアパートの築年数の限界は50〜60年以上と考えられますが、新築時からメンテナンスに力を入れることで、建物の寿命をさらに延ばすことができるでしょう。

まとめ

今回は、家賃下落リスクの影響と対策などについてお話してきました。家賃が下落する要因は、主に経年劣化と立地条件であることがわかりました。経年劣化は避けることができないので、いかに立地条件が良い場所を選んで物件を購入するか、そして、入居者に需要がある設備を備えるかが家賃下落リスクを避ける大きなポイントとなってきます。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。