2023.12.25

不動産投資のコツ

ベルテックスコラム事務局

ワンルームマンション投資の赤字、損切りはベストな方法なのか?

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  • ワンルーム

ワンルームマンション投資における赤字や損失は、そのまま放置することはリスクの増大へ繋がってしまう可能性があります。赤字発生の要因はさまざまですが、損失を最小限に抑えるために、ときとして「損切り」は1つの重要な方法です。
この記事では、ワンルームマンション投資における「損切り」をテーマにその要因やメリット・デメリット、損切り前にやるべきことについて解説していきます。

ワンルームマンション投資における損切りの基本 

投資をしていない方にとっては聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、投資界で「損切り」は基本の「き」です。投資における1つの手として、ワンルームマンション投資においても適宜に損切りの実行が求められます。
まずはワンルームマンション投資における「損切り」の概要と必要性について、考えていきましょう。

そもそも「損切り」とは何か 

「損切り」とは、投資した金額が予想通りに増えなかった場合、これ以上の損失を避けるため、手元にある資産を売却し、損失を抑える行動を指します。投資界において「損切り=負け」と比喩されることがありますが、損切りは投資家が損失をコントロールするための重要な手法です。
ワンルームマンション投資でも同様に、キャッシュフローで赤字が続く場合など、損失が膨らみそうなタイミングで見切りをつけて損切りを実行します。損切りは限られた投資資金を守りぬくために重要な戦略であり、投資家や不動産オーナーには必須となるスキルです。

ワンルームマンション投資で損切りの必要性とは 

損切りの基本的な考え方は、「マイナスの予想よりも状況が悪くなる前に、損失から速やかに逃れること」です。これは自身が行った投資が思うような収益をあげなかった場合、精神的に受けるダメージを最小限に抑える上でも重要です。
また、損切りは自己防衛策の一つであり、大きな損失を避けるとともに新たな投資のチャンスにも繋げられます。損切りをせず赤字経営をしていると、マイナスが大きくなるだけではなく、2棟目や3棟目を購入するときの融資にもマイナスの影響が出てしまいます。
損切りは投資における重要な戦略であり、リスクをコントロールするために必要な行動といえるでしょう。

ワンルームマンション投資での損切りのタイミングは? 

ワンルームマンション投資の損切りを考えるとき、難しいのはそのタイミングです。損失が発生する具体的なタイミングは「運用中」と「売却時」の2つの局面に見られ、これらを総合的に判断しなくてはなりません。

①運用中のインカムゲインで考える 

最初に考えるのは、運用中にインカムゲインの収益があがらないとき、つまり「キャッシュフローが悪化しているとき」です。

家賃収入が減収 

キャッシュフローの悪化とは、つまり家賃収入が赤字になっている状況のことを指します。
運用中は退去や大規模修繕が発生し、一時的な赤字が発生する場合がありますが、損切りを考えるタイミングは「慢性的な赤字」が続くときです。どれだけリスク管理やローンシミュレーションを重ねても、実際の運用では想像していたような収益をもたらさないケースも多くあります。
しかし、慢性的な赤字であるからと言って、全てのパターンにおいて損切りを考えるべきであるとは言えません。例えば、下記のケースを考えてみましょう。

【物件A】

借入金額 2,820万円
金利 1.6%
家賃収入 92,223円
ローン返済額 87,420円
その他諸費用 8,290円
収支合計 -3,487円

上記が毎月のキャッシュフローの場合、一見するとマイナスですが、毎月数千円程度の日常生活に影響を与えない赤字であれば、損切りを急ぐ必要はありません。ただし、毎月何万円もの赤字となり、貯蓄からの切り崩しが必要な状況では、前向きに損切りを考えた方が良いでしょう。

キャッシュフローの赤字回復が見込めない 

また、「慢性的な赤字」でキャッシュフローの回復が見込めない場合は、早急な判断が求められます。
早急な判断をすべきタイミングとは、例えば、上記の物件Aに家賃下落の発生や、金利上昇、修繕積立金などの固定費に値上がりが起こり、毎月支出の占める割合が大きくなってしまうケースです。
最も怖いのはローン返済が滞ってしまうことで、車を買い替えるときなどに借り入れができなくなってしまったり、クレジットカードの審査が通らなかったりと今後の生活に影響します。最悪の場合には自己破産に陥ってしまうので、ときに素早い決断が必要になるでしょう。
ただし、ワンルームマンション投資は「リスク分散」が軸となるスタイルで、オーナーが複数の物件を所有している場合があります。
上述した物件Aの所有者が下記の物件Bも所有していたとします。2つの物件で出た黒字と赤字を相殺すると、結果的には黒字になります。

【物件B】

借入金額 2,010万円
金利 1.6%
家賃収入 77,223円
ローン返済額 62,221円
その他諸費用 10,910円
収支合計  4,092円

このような場合は、物件Aが慢性的な赤字であっても将来的な資産性を見込めるのであれば、損切りを即決しなくてもよいと考えられます。

②売却時のキャピタルゲインで考える 

次に考えるのは、売却時のリセールバリューです。

物件相場が下落している

「リセール=売る」「バリュー=価値」とは、「売却時の価値」のことです。
不動産投資ではリセールバリューをできるだけ高く維持できる物件が好ましいですが、資産価値が大きく下落してしまい、購入時と売却時の価格が見合わないケースがあります。
資産価値の下落には、下記のようなさまざまな社会的要因が関係します。

  • 金利の上昇
  • 需給バランスの変化
  • 再開発などのエリア環境
  • 政治の不安定性
  • 国際経済の変化

上記のような要素により、売却時に損失が発生しうるときは、損切りを考えましょう。特に不動産価格は金利との結びつきが強いとされていますので、金利動向にもアンテナを張っておきましょう。

また、ワンルームマンション投資ではインカムゲインとキャピタルゲインの両方で収益性が決まります。成功率を上げるためには、このような事態が発生した場合に備え、事前に損切り戦略を立てることが重要です。

建物の所有期間が5年経過

「運用中」「売却時」いずれの状況においても、売却時に物件の所有期間が5年を経過しているか否か、が1つの判断基準になります。
なぜなら、譲渡所得が発生した場合の課税税率が物件の所有期間において、「5年」を境に変わるからです。損切りを検討するということは収益性が乏しく、譲渡所得は出ないと考えるのが一般的かもしれません。
しかし、近年物価高とともに高騰している不動産は、思いもよらない価格で手放せる可能性があります。
稀なケースではありますが、所有期間が4年以上5年未満などの場合、短期譲渡所得となる5年を経過するまで待つ方が、手元に残る現金が多くなるかもしれません。

【参考】

  所得税 住民税 合計
短期譲渡所得 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 15.315% 5% 20.315%

※2013年~2037年までは、東日本大震災の復興特別所得税が組み込まれています。

短期譲渡所得と長期譲渡所得では2倍近く税率に差がありますので、不動産投資を行う人は覚えておきましょう。

ワンルームマンション投資における損切りの主な3つの要因

ワンルームマンション投資は1戸あたりの規模が小さく、収益性に関してもとりわけ高いわけではありません。空室が発生した際は、1棟アパートのように他の部屋で空室を補填するわけではありませんので、エリアによっては損切りに積極的になる方も多く見られます。
下記では、ワンルームマンション投資で損切りを決断する人に見られる、主な3つの要因を解説します。特にこれからワンルームマンション投資をスタートする方にとっては非常に大切な内容なので、弊社の関連記事もぜひ合わせてご覧ください。

要因1.空室や家賃下落による収入減少 

最も多い要因とも言えるのは、空室と家賃下落の発生で、これにより家賃収入が大幅に減少してしまいます。収支バランスが良好な家賃設定をしていれば、空室は長期化さえしなければ巻き返しを図れます。
怖いのが、空室の長期化と同時に押し寄せる、家賃下落の波です。一般的に家賃下落は入居者が入れ替わるタイミングで発生しますが、空室が長期化している部屋は、仲介会社から賃料の値下げ交渉をされやすくなります。
一棟アパートは他の部屋で空室リスクをフォローできますが、空室リスクが高い一室経営では、エリアの分散などで対処することが必要です。
また、オーナー側の心理としても、次にいつ入居者が入るか分からない精神的な不安から、値下げ交渉に応じてしまいます。一度下げてしまった家賃はなかなか戻りづらいので、値下げ交渉には慎重にならなくてはいけません。

要因2.想定外の修繕コストによる支出増加 

こちらもよく見られるケースで、突然の修繕負担です。
修繕リスクは事前のシミュレーションや、不測の事態に備えて毎月積み立てをしておくべきですが、それでも想定外の修繕は発生してしまいます。

【予想される突然の修繕】

・退去後のクリーニング
・壁紙張替などの原状回復
・設備の水漏れ、詰まり
・エアコン・給湯器の故障
・おいだき機能の故障
・TVモニターフォンの故障
・換気扇の故障
・浴室乾燥機の故障
・キッチン周りの故障 など

ワンルームマンション投資で物件購入前の頭金を用意する際、頭金とは分けて突然の修繕負担に備えた余剰資金を準備しておきましょう。
また、修繕積立金は将来に向かって上昇するのが一般的なので、その点を考慮して収支計画を立てなくてはなりません。修繕積立金の値上げ率はマンションに付帯するエレベーターの数や、機械式駐車場などの高額機器の有無によって大きく異なります。修繕リスクを軽減するためにも、購入前に建物全体の具体的な修繕要素を確認しておきましょう。
修繕積立金の額に関する目安は、国土交通省が公表している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で確認ができます。

要因3.周辺一帯の資産価値下落

上記の要因と比較すると事例は少ないですが、周辺一帯のエリア自体の価値が下落してしまうケースも損切りの要因にあります。
例えば、工場や大学の近くというような場所では一定数の人口の流れを確保できますが、工場の撤退やキャンパス移転などのリスクがあります。過去にはこのような事例が全国的に発生し、特に地方では不動産の市場相場が著しく下落したエリアもあります。
また、すでに居住中の入居者から即時に賃料値下げの声は少ないかもしれませんが、退去後には次の入居者が決まりづらくなるでしょう。また、その際には大幅な家賃下落が考えられます。
一定数の人口の流れを確保するためには、このような閉鎖・移転リスクのある施設の近くよりも、都心でのワンルームマンション投資を考えた方がよさそうです。

ワンルームマンション投資で損切りをするメリット・デメリット 

ワンルームマンション投資では、購入前にリスクシミュレーションとともに損切りの戦略を立てておくことも必要です。事前の戦略立てにより感情的な判断を排除し、客観的かつ冷静な決断ができるようになります。
損切りにおいてもやはりメリット・デメリットはどちらも存在しますので、これらを知っておくことで賢く戦略立てしましょう。

損切りのメリット 

1.損失を最小化できる

損切りの最も大きなメリットは、損失を最小限に抑えられることです。特に、相場が大きく変動する場合やリスクの高い投資では、損切りによりリスクを抑えることで、大きな損害から逃れることができます。いつまでもうまくいかない投資に固執するより、早い段階の損切りで手放すことがときに賢明な決断となるでしょう。

2.損切りによって他の投資ができる 

また、長期的に見れば、損切りは投資の成績向上に直接的に起因します。
早期に見切りをつけて損切りを行うことで、その分の投資資金を他の投資に転用することが可能になります。徐々に膨らむ損失を抱えることなく、新たなチャンスを逃さないための重要な措置であり、不動産投資に限らず成功している投資家の共通点です。賢明な損切りの判断は、全体的なパフォーマンスを向上させてくれるでしょう。

3.節税に繋がる場合がある 

先述の通り、損切りを決断するときは不動産経営が赤字の状況です。
ワンルームマンション投資において不動産所得が赤字になっている場合には、給与所得との差し引き(損益通算)が認められています。結果的に課税額が減少し、所得税・住民税の負担を少なくできます。
しかし、上記をメリットとして活かすには、毎月許容範囲である数千円程度の赤字に限る場合です。毎月数万円などの切り崩しが必要なケースでは、課税される所得税・住民税以上の現金が減っていることになります。その場合は、節税効果がメリットとして享受できる状態であるとは言えません。

損切りのデメリット 

1.貯蓄の切り崩しが必要となる

遅かれ早かれ損切りすることで、貯蓄の切り崩しなど手元にある現金の支出があります。
悩めば悩むほど損切りが遅くなり支出額は大きくなってしまいますので、デメリットとなるでしょう。
また、現金の支出は精神面にも影響を及ぼします。人は損をすると心情的にダメージを受け、何度も損切りを経験すると、心に疲労感が溜まってきます。その結果として、慎重さが過ぎることで新たな投資へのハードルを上げ、チャンスを逃してしまうことがあります。

2.赤字が回復する可能性がある

赤字が出ているにもかかわらず損切りを悩む要因の多くは、「赤字の回復」を期待していることにあります。キャッシュフローや売却価格がさらに悪化することを恐れ、早々と損切りをすると、その後状況が回復した場合には、肝心の利益を逃す可能性が高いのです。
例えば、サラリーマンのワンルームマンション投資は2013年頃にブームが過熱しましたが、そこから全国的な相場上昇により、10年後の現在では大きなキャピタルゲインを得た人が多くいます。
そうは言っても、待っても赤字経営が好転する保証はどこにもなく、損失が膨らんでしまうため、その境目となる判断が非常に難しいところです。

ワンルームマンション投資の損切りは必ずしも「吉」とは限らない 

ワンルームマンション投資では不動産会社などの専門家に相談し、売却を勧められたからと手放す人がいます。プロに相談するという選択は英断ですが、プロに勧められるがまま損切りをする行為が英断とは言えない場合があります。なぜなら、不動産会社の担当者の知識やスキル、培ってきた経験の違い、人それぞれの置かれた環境によって考え方が異なるからです。
「環境の違い」という観点で考え方が大きく分かれる1つの事案に、所有者が「個人」であるか「法人」であるかの問題があります。

個人の損切りは積極的に考える

先に個人の損切りについて言うと、赤字の状況次第では子供の教育資金など日常生活への影響や、リスタートの切りづらさなどから、積極的に考えた方がよいと言えます。資産形成を目的として明るい未来を思い描いていたのに、ワンルームマンション投資の赤字で子供の進学が限定されてはいけません。
また、サラリーマンは年齢を重ね、その属性や収入は有限です。住宅ローンと違い、主な返済源が家賃収入であるアパートローンは40歳を超えても金融機関の俎上に上がります。
しかし、ワンルームマンション投資の目的が定年後の私的年金代わりという場合には、赤字経営からの方向転換が必要です。
「融資枠」に限りがあることなどを考慮し、ワンルームマンション投資を個人で行っている場合は、損切りは前向きに検討すべきでしょう。

法人の損切りは戦略的に代替案も考える

次に法人の損切りですが、法人の場合は、例え代表者が亡くなったとしても会社は存続します。
会社の経営状況がうまく回っていれば金融機関は融資をしてくれるので、そういった違う目線から考えることも必要です。
個人には「定年後の私的年金代わり」というような目的があるのと同様、法人としての資産運用の目的を考え、事業の全体像から損切りの代替案を探してみましょう。
また、事業として不動産経営を行っている場合には、国からの給付金や補助金の対象となる場合があります。例えば、新型コロナウイルス時に出された「持続化給付金」などです。法人が不動産投資を行うメリットの1つでもありますので、損切りを実行する前に一度これらの対象になるかどうか調べてみて下さい。
ただし、給付金や補助金などの受給をすることにより、今後の事業で借入をする際の懸念点となりうる可能性があるため、慎重に行いましょう。

ワンルームマンション投資で損切りする前に考えること 

デメリットでお伝えした通り、ワンルームマンション投資での「損切り」は、多かれ少なかれ現金の支出が必要で、損をします。損失を生み出すことが必ずしもネガティブ要因であるとは限りませんが、今後の投資や将来に備え、できるだけ多く手元の現金は残しておきたいところです。
この章では、ワンルームマンション投資で損切りを回避するためにできることを考えてみましょう。

①適切に空室対策がされているか 

空室の発生時には長期化しないように早めに対策をしましょう。
ワンルームマンション投資の場合、多くのオーナーが不動産会社へ建物管理を委託しています。委託の場合、管理会社が行っている空室対策法や入居付けに関して把握しておくことが重要です。
最近は築古物件でも、コストを抑えたDIYなどちょっとした工夫や手を加えることで、物件を再生させるオーナーもたくさんいます。管理会社に一任するのではなく、自身でも空室対策について考えましょう。

②周辺のライバル調査をしているか

定期的な周辺のライバル調査も求められます。
周辺の物件と比較して適正な家賃設定をしているか、また周辺のライバル物件はどれほどの空室があるか、などです。特に地方で周辺の物件に空室が目立つようであれば、将来的な資産価値も心配なところです。
定期的なライバル調査をすることによって「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」双方の状況が把握できます。

③エリア環境の確認をする 

ライバル調査と並行して、人口流入数やエリアにおける将来の人口見込み、再開発や大型商業施設の建築など、エリア環境の確認も定期的に行いましょう。
ワンルームマンションのターゲットである「単身者」にみられる特徴に適したエリアであるか、移り変わる街並みへの敏感なリサーチが必要です。

③火災保険が適用対象の修繕であるか 

修繕リスクの発生時、ぜひとも活用したいのが火災保険です。
火災保険は、事故や災害など突発的に起こる不測の事態に備えた保険で、建物や家財に被った損害を補償してくれます。そのため、退去時のルームクリーニング費用や設備故障には適用できません。
しかし、給水設備の事故や他室からの漏水などは、状況次第で保険がおりる場合があります。火災保険を適用するには、保険会社へ事故発生時の状況報告や事故箇所の写真提出が求められます。後から「実は火災保険がおりる事故だった」とならないよう、適宜対応していきましょう。

④ワンルームマンション投資の原点に戻る 

損切りを実行する前に、立ち止まって自分がワンルームマンション投資を始めた目的を考えてみましょう。

【ワンルームマンション投資の主なメリット】

・少額で投資ができる
・ほったらかし投資で手間がかからない
・節税効果がある
・レバレッジ効果を得られる
・私的年金代わりになる

例えば、一番の目的を「私的年金」とするなら、毎月赤字があったとしてもローン返済後について考えることも大切です。ローン完済まで資金を捻出し続けるのは大変ですが、目先の利益だけではなく一度原点に戻り、長期的な目線で見てみましょう。

⑥専門家に相談する 

投資に精通している人で次の目的や目標、また投資対象が明確であれば、自身で判断してもかまいません。
しかし、不動産投資やワンルームマンション投資そのものが初めての場合、損切りを自分だけで判断してしまうのは危険を伴います。まずは専門家に相談してみましょう。違う角度からの意見やアドバイスをもらうことで、選択肢の幅を増やすことができます。
固定費を下げる面で言えば、金利条件の見直しなど、日頃から不動産会社が金融機関と連携しているからこそ優遇されるメリットもあるでしょう。

ワンルームマンション投資で損切りしないためには事前プランニングが重要 

人生の中で行う投資において、「振り返ると損切りが成功の鍵だった」ということもあります。
しかし、これまでに述べてきたようにワンルームマンション投資において、損切りのタイミングを見極めることは容易ではありません。だからこそ事前のプランニングが不可欠なのです。不動産運用を開始する前に目標利回りを決めておくなど、具体的な損失限度を決めておきましょう。

需要のあるエリアを選定する 

不動産投資では「立地が決め手」と言われています。特にターゲットが単身者となると、状況としては多くの方が就労者でしょう。不動産ポータルサイトなどで「駅徒歩〇分」という検索に引っかかるよう、意識して下さい。出勤時に利用する電車状況も重要です。座れず混雑した車内で1時間近く立ちっぱなしとなると、敬遠されてしまう可能性があります。
また、将来的な高齢化という日本の情勢もふまえ、物件の周辺に歩いて行けるスーパーや薬局といった日用品を購入できる店舗や、病院の有無についても確認するとよいでしょう。

適正価格で物件購入をする 

損切りをしないためには、物件価格が適正であるかどうか見極めることも重要です。適正価格で購入をするということは、適正な家賃設定、また適正な売却価格へと繋がります。
中古のワンルームマンションは売主が高値売却を希望しており、相場よりも高く売られている場合があります。これは単純に高く売りたいだけではなく、背景に「売却によってローンの残債を完済しなくてはいけない」という切実な理由があるからです。
他にも「まとまった資金が必要」など、売主の私情が価格に反映されている物件は、買主側の損失が大きくなるので上手に見極めましょう。

将来を見越した家賃設定をする

損切りの要因として挙げたように、将来的な家賃下落を考慮して家賃設定しましょう。
事前シミュレーションでは年率1%程度の下落率を1つの指標としますが、下落率が2%に上昇した場合などの試算もしてみてください。
また、下落してしまった家賃を再度上昇させるためには、室内のリノベーションが有効です。フルリノベーションとなると多額なコストを要するので、水回りなど劣化が目立つ設備交換など、ゆくゆくの検討事項として念頭に置きましょう。

運営シミュレーションを入念に行う 

ワンルームマンション投資だけでなく、不動産投資では入念な運営シミュレーションで成功が左右します。損切りをしなくてはならない状況にしないよう、まずは家賃収入とローン返済、その他の諸経費に関する適正な収支バランスの設定をしてください。
実例シミュレーションでは、具体的な収入や支出、借入金や借入期間、金利などさまざまな条件で算出することが重要です。20年と30年で借入期間の比較や、途中で金利上昇が起こった場合の試算も行うとよいでしょう。

まとめ 

この記事では、ワンルームマンション投資における「損切り」がベストな方法であるかどうか、また事前戦略の重要性について解説しました。
投資における「損切り」はネガティブに捉えられてしまいがちですが、新たな投資へチャレンジや成功には不可欠な1つの手法です。インカムゲインとキャピタルゲイン、またメリット・デメリットを考えながら、そのタイミングを見極めましょう。
また、弊社では「損切り」を検討している方へのアドバイスやご支援も行っております。自分一人での判断がご不安な方は、ぜひ一度弊社までご相談ください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.12.25

不動産投資のコツ

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ワンルームマンション投資の赤字、損切りはベストな方法なのか?

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  • ワンルーム

ワンルームマンション投資における赤字や損失は、そのまま放置することはリスクの増大へ繋がってしまう可能性があります。赤字発生の要因はさまざまですが、損失を最小限に抑えるために、ときとして「損切り」は1つの重要な方法です。
この記事では、ワンルームマンション投資における「損切り」をテーマにその要因やメリット・デメリット、損切り前にやるべきことについて解説していきます。

ワンルームマンション投資における損切りの基本 

投資をしていない方にとっては聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、投資界で「損切り」は基本の「き」です。投資における1つの手として、ワンルームマンション投資においても適宜に損切りの実行が求められます。
まずはワンルームマンション投資における「損切り」の概要と必要性について、考えていきましょう。

そもそも「損切り」とは何か 

「損切り」とは、投資した金額が予想通りに増えなかった場合、これ以上の損失を避けるため、手元にある資産を売却し、損失を抑える行動を指します。投資界において「損切り=負け」と比喩されることがありますが、損切りは投資家が損失をコントロールするための重要な手法です。
ワンルームマンション投資でも同様に、キャッシュフローで赤字が続く場合など、損失が膨らみそうなタイミングで見切りをつけて損切りを実行します。損切りは限られた投資資金を守りぬくために重要な戦略であり、投資家や不動産オーナーには必須となるスキルです。

ワンルームマンション投資で損切りの必要性とは 

損切りの基本的な考え方は、「マイナスの予想よりも状況が悪くなる前に、損失から速やかに逃れること」です。これは自身が行った投資が思うような収益をあげなかった場合、精神的に受けるダメージを最小限に抑える上でも重要です。
また、損切りは自己防衛策の一つであり、大きな損失を避けるとともに新たな投資のチャンスにも繋げられます。損切りをせず赤字経営をしていると、マイナスが大きくなるだけではなく、2棟目や3棟目を購入するときの融資にもマイナスの影響が出てしまいます。
損切りは投資における重要な戦略であり、リスクをコントロールするために必要な行動といえるでしょう。

ワンルームマンション投資での損切りのタイミングは? 

ワンルームマンション投資の損切りを考えるとき、難しいのはそのタイミングです。損失が発生する具体的なタイミングは「運用中」と「売却時」の2つの局面に見られ、これらを総合的に判断しなくてはなりません。

①運用中のインカムゲインで考える 

最初に考えるのは、運用中にインカムゲインの収益があがらないとき、つまり「キャッシュフローが悪化しているとき」です。

家賃収入が減収 

キャッシュフローの悪化とは、つまり家賃収入が赤字になっている状況のことを指します。
運用中は退去や大規模修繕が発生し、一時的な赤字が発生する場合がありますが、損切りを考えるタイミングは「慢性的な赤字」が続くときです。どれだけリスク管理やローンシミュレーションを重ねても、実際の運用では想像していたような収益をもたらさないケースも多くあります。
しかし、慢性的な赤字であるからと言って、全てのパターンにおいて損切りを考えるべきであるとは言えません。例えば、下記のケースを考えてみましょう。

【物件A】

借入金額 2,820万円
金利 1.6%
家賃収入 92,223円
ローン返済額 87,420円
その他諸費用 8,290円
収支合計 -3,487円

上記が毎月のキャッシュフローの場合、一見するとマイナスですが、毎月数千円程度の日常生活に影響を与えない赤字であれば、損切りを急ぐ必要はありません。ただし、毎月何万円もの赤字となり、貯蓄からの切り崩しが必要な状況では、前向きに損切りを考えた方が良いでしょう。

キャッシュフローの赤字回復が見込めない 

また、「慢性的な赤字」でキャッシュフローの回復が見込めない場合は、早急な判断が求められます。
早急な判断をすべきタイミングとは、例えば、上記の物件Aに家賃下落の発生や、金利上昇、修繕積立金などの固定費に値上がりが起こり、毎月支出の占める割合が大きくなってしまうケースです。
最も怖いのはローン返済が滞ってしまうことで、車を買い替えるときなどに借り入れができなくなってしまったり、クレジットカードの審査が通らなかったりと今後の生活に影響します。最悪の場合には自己破産に陥ってしまうので、ときに素早い決断が必要になるでしょう。
ただし、ワンルームマンション投資は「リスク分散」が軸となるスタイルで、オーナーが複数の物件を所有している場合があります。
上述した物件Aの所有者が下記の物件Bも所有していたとします。2つの物件で出た黒字と赤字を相殺すると、結果的には黒字になります。

【物件B】

借入金額 2,010万円
金利 1.6%
家賃収入 77,223円
ローン返済額 62,221円
その他諸費用 10,910円
収支合計  4,092円

このような場合は、物件Aが慢性的な赤字であっても将来的な資産性を見込めるのであれば、損切りを即決しなくてもよいと考えられます。

②売却時のキャピタルゲインで考える 

次に考えるのは、売却時のリセールバリューです。

物件相場が下落している

「リセール=売る」「バリュー=価値」とは、「売却時の価値」のことです。
不動産投資ではリセールバリューをできるだけ高く維持できる物件が好ましいですが、資産価値が大きく下落してしまい、購入時と売却時の価格が見合わないケースがあります。
資産価値の下落には、下記のようなさまざまな社会的要因が関係します。

  • 金利の上昇
  • 需給バランスの変化
  • 再開発などのエリア環境
  • 政治の不安定性
  • 国際経済の変化

上記のような要素により、売却時に損失が発生しうるときは、損切りを考えましょう。特に不動産価格は金利との結びつきが強いとされていますので、金利動向にもアンテナを張っておきましょう。

また、ワンルームマンション投資ではインカムゲインとキャピタルゲインの両方で収益性が決まります。成功率を上げるためには、このような事態が発生した場合に備え、事前に損切り戦略を立てることが重要です。

建物の所有期間が5年経過

「運用中」「売却時」いずれの状況においても、売却時に物件の所有期間が5年を経過しているか否か、が1つの判断基準になります。
なぜなら、譲渡所得が発生した場合の課税税率が物件の所有期間において、「5年」を境に変わるからです。損切りを検討するということは収益性が乏しく、譲渡所得は出ないと考えるのが一般的かもしれません。
しかし、近年物価高とともに高騰している不動産は、思いもよらない価格で手放せる可能性があります。
稀なケースではありますが、所有期間が4年以上5年未満などの場合、短期譲渡所得となる5年を経過するまで待つ方が、手元に残る現金が多くなるかもしれません。

【参考】

  所得税 住民税 合計
短期譲渡所得 30.63% 9% 39.63%
長期譲渡所得 15.315% 5% 20.315%

※2013年~2037年までは、東日本大震災の復興特別所得税が組み込まれています。

短期譲渡所得と長期譲渡所得では2倍近く税率に差がありますので、不動産投資を行う人は覚えておきましょう。

ワンルームマンション投資における損切りの主な3つの要因

ワンルームマンション投資は1戸あたりの規模が小さく、収益性に関してもとりわけ高いわけではありません。空室が発生した際は、1棟アパートのように他の部屋で空室を補填するわけではありませんので、エリアによっては損切りに積極的になる方も多く見られます。
下記では、ワンルームマンション投資で損切りを決断する人に見られる、主な3つの要因を解説します。特にこれからワンルームマンション投資をスタートする方にとっては非常に大切な内容なので、弊社の関連記事もぜひ合わせてご覧ください。

要因1.空室や家賃下落による収入減少 

最も多い要因とも言えるのは、空室と家賃下落の発生で、これにより家賃収入が大幅に減少してしまいます。収支バランスが良好な家賃設定をしていれば、空室は長期化さえしなければ巻き返しを図れます。
怖いのが、空室の長期化と同時に押し寄せる、家賃下落の波です。一般的に家賃下落は入居者が入れ替わるタイミングで発生しますが、空室が長期化している部屋は、仲介会社から賃料の値下げ交渉をされやすくなります。
一棟アパートは他の部屋で空室リスクをフォローできますが、空室リスクが高い一室経営では、エリアの分散などで対処することが必要です。
また、オーナー側の心理としても、次にいつ入居者が入るか分からない精神的な不安から、値下げ交渉に応じてしまいます。一度下げてしまった家賃はなかなか戻りづらいので、値下げ交渉には慎重にならなくてはいけません。

要因2.想定外の修繕コストによる支出増加 

こちらもよく見られるケースで、突然の修繕負担です。
修繕リスクは事前のシミュレーションや、不測の事態に備えて毎月積み立てをしておくべきですが、それでも想定外の修繕は発生してしまいます。

【予想される突然の修繕】

・退去後のクリーニング
・壁紙張替などの原状回復
・設備の水漏れ、詰まり
・エアコン・給湯器の故障
・おいだき機能の故障
・TVモニターフォンの故障
・換気扇の故障
・浴室乾燥機の故障
・キッチン周りの故障 など

ワンルームマンション投資で物件購入前の頭金を用意する際、頭金とは分けて突然の修繕負担に備えた余剰資金を準備しておきましょう。
また、修繕積立金は将来に向かって上昇するのが一般的なので、その点を考慮して収支計画を立てなくてはなりません。修繕積立金の値上げ率はマンションに付帯するエレベーターの数や、機械式駐車場などの高額機器の有無によって大きく異なります。修繕リスクを軽減するためにも、購入前に建物全体の具体的な修繕要素を確認しておきましょう。
修繕積立金の額に関する目安は、国土交通省が公表している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で確認ができます。

要因3.周辺一帯の資産価値下落

上記の要因と比較すると事例は少ないですが、周辺一帯のエリア自体の価値が下落してしまうケースも損切りの要因にあります。
例えば、工場や大学の近くというような場所では一定数の人口の流れを確保できますが、工場の撤退やキャンパス移転などのリスクがあります。過去にはこのような事例が全国的に発生し、特に地方では不動産の市場相場が著しく下落したエリアもあります。
また、すでに居住中の入居者から即時に賃料値下げの声は少ないかもしれませんが、退去後には次の入居者が決まりづらくなるでしょう。また、その際には大幅な家賃下落が考えられます。
一定数の人口の流れを確保するためには、このような閉鎖・移転リスクのある施設の近くよりも、都心でのワンルームマンション投資を考えた方がよさそうです。

ワンルームマンション投資で損切りをするメリット・デメリット 

ワンルームマンション投資では、購入前にリスクシミュレーションとともに損切りの戦略を立てておくことも必要です。事前の戦略立てにより感情的な判断を排除し、客観的かつ冷静な決断ができるようになります。
損切りにおいてもやはりメリット・デメリットはどちらも存在しますので、これらを知っておくことで賢く戦略立てしましょう。

損切りのメリット 

1.損失を最小化できる

損切りの最も大きなメリットは、損失を最小限に抑えられることです。特に、相場が大きく変動する場合やリスクの高い投資では、損切りによりリスクを抑えることで、大きな損害から逃れることができます。いつまでもうまくいかない投資に固執するより、早い段階の損切りで手放すことがときに賢明な決断となるでしょう。

2.損切りによって他の投資ができる 

また、長期的に見れば、損切りは投資の成績向上に直接的に起因します。
早期に見切りをつけて損切りを行うことで、その分の投資資金を他の投資に転用することが可能になります。徐々に膨らむ損失を抱えることなく、新たなチャンスを逃さないための重要な措置であり、不動産投資に限らず成功している投資家の共通点です。賢明な損切りの判断は、全体的なパフォーマンスを向上させてくれるでしょう。

3.節税に繋がる場合がある 

先述の通り、損切りを決断するときは不動産経営が赤字の状況です。
ワンルームマンション投資において不動産所得が赤字になっている場合には、給与所得との差し引き(損益通算)が認められています。結果的に課税額が減少し、所得税・住民税の負担を少なくできます。
しかし、上記をメリットとして活かすには、毎月許容範囲である数千円程度の赤字に限る場合です。毎月数万円などの切り崩しが必要なケースでは、課税される所得税・住民税以上の現金が減っていることになります。その場合は、節税効果がメリットとして享受できる状態であるとは言えません。

損切りのデメリット 

1.貯蓄の切り崩しが必要となる

遅かれ早かれ損切りすることで、貯蓄の切り崩しなど手元にある現金の支出があります。
悩めば悩むほど損切りが遅くなり支出額は大きくなってしまいますので、デメリットとなるでしょう。
また、現金の支出は精神面にも影響を及ぼします。人は損をすると心情的にダメージを受け、何度も損切りを経験すると、心に疲労感が溜まってきます。その結果として、慎重さが過ぎることで新たな投資へのハードルを上げ、チャンスを逃してしまうことがあります。

2.赤字が回復する可能性がある

赤字が出ているにもかかわらず損切りを悩む要因の多くは、「赤字の回復」を期待していることにあります。キャッシュフローや売却価格がさらに悪化することを恐れ、早々と損切りをすると、その後状況が回復した場合には、肝心の利益を逃す可能性が高いのです。
例えば、サラリーマンのワンルームマンション投資は2013年頃にブームが過熱しましたが、そこから全国的な相場上昇により、10年後の現在では大きなキャピタルゲインを得た人が多くいます。
そうは言っても、待っても赤字経営が好転する保証はどこにもなく、損失が膨らんでしまうため、その境目となる判断が非常に難しいところです。

ワンルームマンション投資の損切りは必ずしも「吉」とは限らない 

ワンルームマンション投資では不動産会社などの専門家に相談し、売却を勧められたからと手放す人がいます。プロに相談するという選択は英断ですが、プロに勧められるがまま損切りをする行為が英断とは言えない場合があります。なぜなら、不動産会社の担当者の知識やスキル、培ってきた経験の違い、人それぞれの置かれた環境によって考え方が異なるからです。
「環境の違い」という観点で考え方が大きく分かれる1つの事案に、所有者が「個人」であるか「法人」であるかの問題があります。

個人の損切りは積極的に考える

先に個人の損切りについて言うと、赤字の状況次第では子供の教育資金など日常生活への影響や、リスタートの切りづらさなどから、積極的に考えた方がよいと言えます。資産形成を目的として明るい未来を思い描いていたのに、ワンルームマンション投資の赤字で子供の進学が限定されてはいけません。
また、サラリーマンは年齢を重ね、その属性や収入は有限です。住宅ローンと違い、主な返済源が家賃収入であるアパートローンは40歳を超えても金融機関の俎上に上がります。
しかし、ワンルームマンション投資の目的が定年後の私的年金代わりという場合には、赤字経営からの方向転換が必要です。
「融資枠」に限りがあることなどを考慮し、ワンルームマンション投資を個人で行っている場合は、損切りは前向きに検討すべきでしょう。

法人の損切りは戦略的に代替案も考える

次に法人の損切りですが、法人の場合は、例え代表者が亡くなったとしても会社は存続します。
会社の経営状況がうまく回っていれば金融機関は融資をしてくれるので、そういった違う目線から考えることも必要です。
個人には「定年後の私的年金代わり」というような目的があるのと同様、法人としての資産運用の目的を考え、事業の全体像から損切りの代替案を探してみましょう。
また、事業として不動産経営を行っている場合には、国からの給付金や補助金の対象となる場合があります。例えば、新型コロナウイルス時に出された「持続化給付金」などです。法人が不動産投資を行うメリットの1つでもありますので、損切りを実行する前に一度これらの対象になるかどうか調べてみて下さい。
ただし、給付金や補助金などの受給をすることにより、今後の事業で借入をする際の懸念点となりうる可能性があるため、慎重に行いましょう。

ワンルームマンション投資で損切りする前に考えること 

デメリットでお伝えした通り、ワンルームマンション投資での「損切り」は、多かれ少なかれ現金の支出が必要で、損をします。損失を生み出すことが必ずしもネガティブ要因であるとは限りませんが、今後の投資や将来に備え、できるだけ多く手元の現金は残しておきたいところです。
この章では、ワンルームマンション投資で損切りを回避するためにできることを考えてみましょう。

①適切に空室対策がされているか 

空室の発生時には長期化しないように早めに対策をしましょう。
ワンルームマンション投資の場合、多くのオーナーが不動産会社へ建物管理を委託しています。委託の場合、管理会社が行っている空室対策法や入居付けに関して把握しておくことが重要です。
最近は築古物件でも、コストを抑えたDIYなどちょっとした工夫や手を加えることで、物件を再生させるオーナーもたくさんいます。管理会社に一任するのではなく、自身でも空室対策について考えましょう。

②周辺のライバル調査をしているか

定期的な周辺のライバル調査も求められます。
周辺の物件と比較して適正な家賃設定をしているか、また周辺のライバル物件はどれほどの空室があるか、などです。特に地方で周辺の物件に空室が目立つようであれば、将来的な資産価値も心配なところです。
定期的なライバル調査をすることによって「インカムゲイン」「キャピタルゲイン」双方の状況が把握できます。

③エリア環境の確認をする 

ライバル調査と並行して、人口流入数やエリアにおける将来の人口見込み、再開発や大型商業施設の建築など、エリア環境の確認も定期的に行いましょう。
ワンルームマンションのターゲットである「単身者」にみられる特徴に適したエリアであるか、移り変わる街並みへの敏感なリサーチが必要です。

③火災保険が適用対象の修繕であるか 

修繕リスクの発生時、ぜひとも活用したいのが火災保険です。
火災保険は、事故や災害など突発的に起こる不測の事態に備えた保険で、建物や家財に被った損害を補償してくれます。そのため、退去時のルームクリーニング費用や設備故障には適用できません。
しかし、給水設備の事故や他室からの漏水などは、状況次第で保険がおりる場合があります。火災保険を適用するには、保険会社へ事故発生時の状況報告や事故箇所の写真提出が求められます。後から「実は火災保険がおりる事故だった」とならないよう、適宜対応していきましょう。

④ワンルームマンション投資の原点に戻る 

損切りを実行する前に、立ち止まって自分がワンルームマンション投資を始めた目的を考えてみましょう。

【ワンルームマンション投資の主なメリット】

・少額で投資ができる
・ほったらかし投資で手間がかからない
・節税効果がある
・レバレッジ効果を得られる
・私的年金代わりになる

例えば、一番の目的を「私的年金」とするなら、毎月赤字があったとしてもローン返済後について考えることも大切です。ローン完済まで資金を捻出し続けるのは大変ですが、目先の利益だけではなく一度原点に戻り、長期的な目線で見てみましょう。

⑥専門家に相談する 

投資に精通している人で次の目的や目標、また投資対象が明確であれば、自身で判断してもかまいません。
しかし、不動産投資やワンルームマンション投資そのものが初めての場合、損切りを自分だけで判断してしまうのは危険を伴います。まずは専門家に相談してみましょう。違う角度からの意見やアドバイスをもらうことで、選択肢の幅を増やすことができます。
固定費を下げる面で言えば、金利条件の見直しなど、日頃から不動産会社が金融機関と連携しているからこそ優遇されるメリットもあるでしょう。

ワンルームマンション投資で損切りしないためには事前プランニングが重要 

人生の中で行う投資において、「振り返ると損切りが成功の鍵だった」ということもあります。
しかし、これまでに述べてきたようにワンルームマンション投資において、損切りのタイミングを見極めることは容易ではありません。だからこそ事前のプランニングが不可欠なのです。不動産運用を開始する前に目標利回りを決めておくなど、具体的な損失限度を決めておきましょう。

需要のあるエリアを選定する 

不動産投資では「立地が決め手」と言われています。特にターゲットが単身者となると、状況としては多くの方が就労者でしょう。不動産ポータルサイトなどで「駅徒歩〇分」という検索に引っかかるよう、意識して下さい。出勤時に利用する電車状況も重要です。座れず混雑した車内で1時間近く立ちっぱなしとなると、敬遠されてしまう可能性があります。
また、将来的な高齢化という日本の情勢もふまえ、物件の周辺に歩いて行けるスーパーや薬局といった日用品を購入できる店舗や、病院の有無についても確認するとよいでしょう。

適正価格で物件購入をする 

損切りをしないためには、物件価格が適正であるかどうか見極めることも重要です。適正価格で購入をするということは、適正な家賃設定、また適正な売却価格へと繋がります。
中古のワンルームマンションは売主が高値売却を希望しており、相場よりも高く売られている場合があります。これは単純に高く売りたいだけではなく、背景に「売却によってローンの残債を完済しなくてはいけない」という切実な理由があるからです。
他にも「まとまった資金が必要」など、売主の私情が価格に反映されている物件は、買主側の損失が大きくなるので上手に見極めましょう。

将来を見越した家賃設定をする

損切りの要因として挙げたように、将来的な家賃下落を考慮して家賃設定しましょう。
事前シミュレーションでは年率1%程度の下落率を1つの指標としますが、下落率が2%に上昇した場合などの試算もしてみてください。
また、下落してしまった家賃を再度上昇させるためには、室内のリノベーションが有効です。フルリノベーションとなると多額なコストを要するので、水回りなど劣化が目立つ設備交換など、ゆくゆくの検討事項として念頭に置きましょう。

運営シミュレーションを入念に行う 

ワンルームマンション投資だけでなく、不動産投資では入念な運営シミュレーションで成功が左右します。損切りをしなくてはならない状況にしないよう、まずは家賃収入とローン返済、その他の諸経費に関する適正な収支バランスの設定をしてください。
実例シミュレーションでは、具体的な収入や支出、借入金や借入期間、金利などさまざまな条件で算出することが重要です。20年と30年で借入期間の比較や、途中で金利上昇が起こった場合の試算も行うとよいでしょう。

まとめ 

この記事では、ワンルームマンション投資における「損切り」がベストな方法であるかどうか、また事前戦略の重要性について解説しました。
投資における「損切り」はネガティブに捉えられてしまいがちですが、新たな投資へチャレンジや成功には不可欠な1つの手法です。インカムゲインとキャピタルゲイン、またメリット・デメリットを考えながら、そのタイミングを見極めましょう。
また、弊社では「損切り」を検討している方へのアドバイスやご支援も行っております。自分一人での判断がご不安な方は、ぜひ一度弊社までご相談ください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。