2025.03.24

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資で税理士に依頼するべき?費用の相場や税理士選びのポイントも解説

  • 節税・税金

不動産投資で得た収益に関して、ほとんどの場合は確定申告を提出する必要があります。確定申告は難しそう、時間が取れないなどの理由で、税理士に依頼しようか検討している人もいるでしょう。依頼すると費用がどのぐらいかかるか、相場も気になるところです。 

税理士に依頼するメリットは大きいですが、いくつか注意点もあります。この記事では不動産投資で税理士に依頼するメリット・デメリット、費用の相場、税理士選びのポイントなどについて解説します。 

不動産投資の確定申告は税理士に依頼すべき? 

確定申告を税理士に依頼すべきかどうかは、ご自身の状況や資質、投資の規模によって異なります。たとえば、これまで別の事業で確定申告をしていた場合は、不動産投資に関してもそれほど問題なく申告できるでしょう。 

一方で、確定申告を一度もしたことのない会社員の場合は、確定申告はハードルが高いと感じるかもしれません。加えて、不動産投資をしている会社員の方は、平日は本業が忙しくなかなか時間が取れないことも多いです。 

また、ワンルーム1部屋だけなど物件数が少なければ、何とか自分でも申告できるかもしれません。しかし、所有する不動産の数が多くなると、確定申告の作業量も増え、次第に対応が厳しくなります。 

いずれの場合も、自分では対応が難しいと感じたら、税理士に依頼するのがおすすめです。 

税理士に依頼するメリット 

税理士に依頼することで、以下のようなメリットを享受できます。 

確定申告がしやすくなる 

税理士に依頼することで、不動産オーナーの作業負担を大きく減らすことが可能です。通常では貸借対照表など各種申告書類を作成しなくてはなりませんが、税制や会計の知識がないと難解で、時間と労力がかかります。 

税理士に確定申告のサポートを依頼することで、面倒な書類作成の手間から解放されます。オーナーは必要書類を用意しておくだけで、あとは税理士に申告書の作成を任せることが可能です。 

節税のためのアドバイスを受けられる 

不動産投資で節税効果を最大限に高めたい方も、税理士に依頼することで実現できます。節税方法に関する情報はさまざまありますが、自分が使える節税方法なのかは、素人ではなかなか判断が難しいケースも多いです。 

税金の専門家である税理士を頼ることにより、節税に関する的確なアドバイスがもらえます。適用できる制度を判別し、所得税・相続税・贈与税などさまざまな節税の恩恵が受けられます。 

税務調査を受ける可能性が低くなる 

税理士が関与した確定申告書には、税理士による署名が残ります。税理士の署名があることで、申告書の信頼性が高まるのもメリットです。税理士によってチェックされている確定申告書であれば、内容に不備がある可能性は低いと判断されます。 

また、税理士の署名があることで、税務調査の対象になるリスクも低くなることが期待されます。たとえ税務調査の対象になったとしても、税理士に同席してもらうなど、対処してもらえる点もメリットです。 

税理士に依頼するデメリット 

税理士に依頼することはメリットが大きいですが、いくつか注意点もあります。 

費用が発生する 

確定申告を税理士に依頼すると、報酬を支払わなくてはなりません。単発の依頼の場合でも、顧問契約を結ぶ場合でも、コストが発生します。税理士の報酬は事務所や料金体系によってさまざまですが、確定申告に関する業務のみを依頼する場合は10万円~15万円程度が目安です。事務所によっては確定申告代行には顧問契約が必要な場合があり、その場合は月2万円~3万円が相場です。運用している物件の収支によっては、事業の収益を圧迫してしまうかもしれません。 

ただし、税理士への報酬は、不動産投資の「経費」として計上できます。税理士費用を経費として処理することで収益を減らし、節税効果につなげることも可能です。 

税理士によって対応のレベルが異なる 

一口に税金といっても法人税や相続税など数多くの種類があり、税理士によって得意としている領域は異なります。税金以外の分野では、資金調達やM&Aなどを得意とする税理士もいます。専門分野や得意領域が異なると、対応のレベルに差が生じる可能性があるので、不動産投資に詳しい税理士を選ぶことが大切です。 

税理士を選ぶポイントについては後述しますが、信頼できる不動産投資会社を通じて、専門性の高い税理士を探すとよいでしょう。 

税金の知識を身に付けにくい 

確定申告に関するすべての作業を税理士に任せきりにすると、税金の知識が身に付きにくいのもデメリットです。税理士に任せたとしても、自分の事業に関する申告をしていることに変わりはありません。 

そのため、税理士に依頼しながら、ご自身でも税金や確定申告に関する知識を習得していくのがおすすめです。不動産会社のセミナーや投資家の勉強会に参加するなど、ご自身でも税務の知識を身に付ける方法は複数あります。 

税理士に依頼して節税を実現した事例 

税理士に依頼することで、節税につながったケースを2つ紹介します。 

青色申告特別控除の適用 

青色申告特別控除とは、最大65万円を所得から差し引ける控除のことです。不動産投資で青色申告控除の適用を受けるには、オーナー業が事業として認められることが必要で、具体的には賃貸できる物件5棟もしくは10室有していれば、原則として事業と認められます。 

基準に満たないある物件のオーナーは、以前は青色申告特別控除の申告をしていませんでした。しかし、税理士に相談したところ、基準には満たないものの事業的規模であると判断され、特別控除の適用を受けられました。この結果、所得税や住民税の軽減につながりました。 

法人の活用 

あるオーナーは所有する物件が増えて売上が大きくなり、税金が高くなってきたのが悩みでした。法人を設立したほうがいいかもしれないと考えたことはありましたが、費用がかかることが気になり、設立方法もわかりませんでした。 

税理士に相談したところ、法人を設立したほうが節税につながるとわかり、法人設立の支援も受けられました。物件を法人の所有にすることにより、経費計上できる項目が増える、不動産購入時に建物にかかる消費税の還付を受けられるなどのメリットを享受できました。 

不動産投資を税理士に依頼する場合の費用相場 

税理士に依頼するには費用を支払う必要があります。ここでは税理士にどの程度支払う必要があるか、目安・相場を解説します。 

相談のみの場合 

多くの税理士事務所では、初回の相談は無料としています。無料である以上は相談できる領域や相談時間には限りがあると考えられますが、最初からお金を支払わなくてもよいことで相談のハードルが低く感じる方もいるでしょう。 

2回目以降の相談に関しては時間単位での料金体系を取っているケースが多く、1時間あたり5,000円~1万円程度の事務所が多いです。 

単発で依頼する場合 

不動産の譲渡による売却益が出る場合など、不動産投資の確定申告を単発で依頼するケースがあります。この場合、特例を適用しない一般的な案件であれば10万~20万円程度が相場です。特例を適用する場合、料金が上乗せされます。 

売却益が出る場合の確定申告では、取得時の費用、所有期間、耐用年数、特例の適用可否など、さまざまな要素を考慮する必要があります。計算も複雑になるため、税理士にはそれなりの報酬を支払うことが必要です。 

顧問契約を結ぶ場合 

税理士に継続的に関与してもらう場合、顧問契約を締結することが必要です。顧問契約を締結すると、税務指導や経営サポートなどを定期的に受けられるようになります。 

顧問契約の費用は、物件の規模や数、資料の提出頻度などによって変動します。たとえば資料作成は年に1度の確定申告のみ、投資物件も1棟であれば、5万円前後が相場です。これに対して、物件が複数あり、月次・四半期で資料を提出する場合、月額1万円~5万円程度かかります。 

なお、税理士事務所が法人の場合はやや高額で、個人事業主の場合はやや安くなる傾向です。 

税理士に依頼するほうがよいのはこんな人 

不動産投資で税理士に依頼するのがおすすめなのは、以下のいずれかに当てはまる方です。 

  • 節税効果を高めたい方 

  • 本業が多忙で時間が取れない方 

  • 規模の大きい不動産投資をしたい方 

1つずつ解説します。 

節税効果を高めたい方 

節税を重視したい方は、税理士に相談することが必要です。知識のない素人が節税について調べるのは限界があるため、税金や控除などの制度に熟知している税理士は大いに力になります。 

素人が勝手に判断・実行すると、節税ではなく脱税になってしまうおそれも。税理士が関与することにより、法的に問題のない適切な節税ができます。 

本業が多忙で時間が取れない方 

不動産投資をしている会社員の方は、日中は本業で忙しいため確定申告の作業の手間が取れないケースも多いです。 

ですが、確定申告の作業的負担は重く、フリー株式会社の調査によると約4割の人が10時間以上確定申告にかけており、2割以上は実に20時間以上を経理作業に費やしています。 

このように、確定申告作業は時間がかかるため、税理士に依頼するのも合理的な選択です。 

自分で申告作業をするには、夜間や休日を使うことになりますが、税理士に依頼すれば時間的な負担だけでなく、心身の負担を減らすことができます。 

規模の大きい不動産投資をしたい方 

不動産投資でさらに多くの収益を得たいと考える場合、規模の拡大は避けて通れません。 

今後、不動産投資の規模を拡大したいと考えている方も、税理士に依頼するのがおすすめです。 

1棟や2棟だけなら自分で何とか対応できるとしても、4棟・5棟など規模が大きくなるほど確定申告の作業が大変になります。対象となる物件が増えるほど記帳や計算を間違えやすくなり、事業が大きくなると税務署からのチェックも厳しくなる可能性があるため、注意しなくてはなりません。 

不動産投資で規模を拡大しながらも、万全な状態で確定申告をしたいなら、税理士に依頼しないと難しいでしょう。 

不動産投資で依頼する税理士を選ぶポイント 

税理士を選ぶ際には、以下5つのポイントに当てはまるかを判断しましょう。 

  • 不動産に強い・得意分野である 

  • 実績や経験が豊富である 

  • 料金設定が適切である 

  • 口コミや評判がよい 

  • 対応の品質が優れている 

不動産に強い・得意分野である 

税理士選びでまず重視すべき要素は、不動産投資に精通し、関連法規や会計知識に長けているかどうかです。税理士はさまざまな分野に特化しており、所得税の確定申告、記帳代行、税務調査対応などの分野があります。 

得意分野以外でも対応できないわけではありませんが、ご自身が重視するジャンルに詳しい税理士を探すのが基本です。不動産投資に詳しい税理士を選ぶうえでは、以下のポイントをチェックしましょう。 

  • ホームページに「不動産投資専門」「不動産に強い」などの文言がある 

  • 過去に対応した具体的な事例が紹介されている 

また、可能であれば税理士自身でも実際に不動産投資をしているとなおよいです。実際に投資をしたうえで確定申告をしてみることで分かることも多くあり、最良の節税方法を選べるようになります。実際に投資をしている税理士であれば、確定申告や税金の手続きに詳しいことはもちろん、自らの投資経験から税務以外の領域の助言をもらうこともできます。 

ただし、不動産投資をしていないと依頼できないわけではありません。不動産投資をしていることは、税理士選びにおける必須条件ではなく、加点要素と考えるのがおすすめです。 

実績や経験が豊富である 

ホームページに「不動産に強い」などの表記があったとしても、実際はそうではない可能性も考えられます。そこで、本当に不動産を得意としているか、他の情報もチェックしましょう。 

たとえば不動産会社は定期的に無料相談会を実施しており、相談員として参加している税理士なら、不動産関連の税務に詳しいと考えられます。また、証券会社や金融機関でも不動産をテーマとしてセミナーを開催していますので、参加した実績があるか調べてみましょう。 

さらに、税理士が過去に執筆した書籍やオンラインの記事などがないかも要チェックです。不動産投資に関連した執筆の実績があると、実績・経験を裏打ちしていると考えられます。 

また、不動産投資以外も含め、税理士としての実績や経験が豊富であるかも重要なポイントです。年間の相談件数などをアピールしている事務所もありますので、比較してみましょう。 

料金設定が適切である 

先ほど解説したとおり、税理士の報酬には一定の相場があります。単発の依頼でも顧問契約でも、相場からかけ離れた料金設定になっていないかを確認しましょう。たとえば顧問契約で毎月40万円かかるというのは明らかに多すぎます。 

基本料金は安くても、オプションを付けると高額になるケースもあります。ホームページから判断できないことがある場合、相談の場で直接税理士に確認することがおすすめです。料金体系に関して明確な説明がされない場合、その税理士を選ぶのは避けたほうがよいでしょう。 

税理士業界の相場を把握したうえで、サービスの内容と料金のバランスが取れている事務所を選びましょう。 

口コミや評判がよい 

税理士を選ぶ際には、口コミや評判も参考にしましょう。ネット上などでよい評判を得ている税理士のほうが、よいサポートを受けられる可能性が高くなります。 

ネットはさまざまな人の意見を閲覧できて便利ですが、偽の情報が混じっているおそれがあります。口コミを絶対視することなく、あくまで参考として捉えましょう。また、実際に依頼したことのある方から話を聞くのもよい方法です。 

対応の品質が優れている 

よい税理士事務所であれば、最初からサービスの質が優れている可能性が高いです。最初のメールや電話での問い合わせに対応してもらえたか、初回の相談で親身になって話を聞いてくれたかなど、対応の品質をチェックしましょう。 

税理士の探し方 

不動産投資に強い税理士をどのように探せばいいか、迷う方もいるでしょう。主な探し方を3つ紹介します。 

不動産投資会社に紹介してもらう 

不動産投資会社は税理士とコネクションのあるケースが多いです。取引をする会社に相談すると、その地域での活動実績が長い、事業所の規模が大きいなど、信頼性の高い税理士を紹介してもらえる可能性が高くなります。 

税務面以外にも、不動産経営のコンサルティングや事業承継対策など、幅広い領域に対応できる高レベルな税理士を紹介してもらえる可能性があります。ただし、自分のニーズに合致する税理士であるとは限らないため、実際に契約をするかは自身で判断することが必要です。 

不動産投資の仲間に紹介してもらう 

知人ですでに不動産投資をしていて税理士に依頼しているという方がいる場合、契約している税理士事務所を紹介してもらう方法があります。税理士探しの労力がかからず、一定のスキル・経験をもった税理士であることが期待できます。 

連絡頻度は適切かなど気になる情報をあらかじめ知人に聞けるため、失敗しにくい方法です。ただし、人柄などが合わないと感じた時に契約を断りたいと思っても、知人との関係から断りにくさを感じるかもしれません。 

税理士の検索サイトで調べる 

日本税理士会連合会では、「税理士情報検索サイト」を公開しています。地域・依頼内容から、税理士や税理士法人を検索できる仕組みです。サイト内で自分の希望分野や住んでいるエリアに合った税理士を探せます。 

「詳細から探す」のメニューの検索項目には「主要取扱業種」があり、「不動産取引(売買・仲介等)業」と「不動産賃貸業・管理業」を選べるようになっています。これらの項目を活用して検索してみるとよいでしょう。 

なお、税理士や税理士法人は、必ず日本税理士会連合会に登録される決まりになっています。知り合いの紹介などで知った税理士がきちんと登録されているかを確認するために、利用するのもおすすめです。 

ただし、こちらのサイトには各税理士に関する細かな情報はないため、別途詳しく調べる必要があります。 

税理士に依頼するまでの主な流れ 

税理士に依頼するまでは、以下の流れで進めていきます。 

1.問い合わせ 

2.初回相談 

3.提案・見積もり 

4.契約の締結 

相談してみたいと思う税理士が見つかったら、ホームページの問い合わせ・申し込みフォームなどで連絡を取ります。日時を調整して、初回相談に臨みましょう。オンライン面談を実施している税理士事務所もあります。 

相談内容を踏まえて、税理士事務所から提案や費用の見積もりを受け取ります。複数のプランで見積もりをもらうのもよいでしょう。内容に納得できたら契約の締結に進みます。 

なお、1人の税理士だけで判断するのではなく、複数の税理士と面談するようにしましょう。1人の税理士と面談しただけでは、料金やサービス内容などの比較ができません。できれば3~4人程度を目安に話を聞くことをおすすめします。 

まとめ 

不動産投資の確定申告を税理士に依頼すると、確定申告作業が楽になり、節税のアドバイスをもらえるなどのメリットがあります。一定の費用はかかるものの、本業で多忙な方や投資規模を拡大させたい方にとって、依頼するメリットはかなり大きいです。 

ベルテックスでは、不動産投資のプロフェッショナルによる無料のセミナーを開催しており、不動産関連の知識・経験に優れた税理士とも連携しています。オンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にご利用ください。 

この記事を監修した人

宮川 真一

税理士 税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表

岐阜県大垣市出身。一橋大学商学部を1996年に卒業後、1997年より税理士としてのキャリアをスタート。25年以上の経験を持ち、税務や財務に関する深い知識を生かし、1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士資格も取得。企業の取締役や監査役としても幅広く活躍し、財務コンサルティングや資産管理のエキスパートとして信頼を集めている。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2025.03.24

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資で税理士に依頼するべき?費用の相場や税理士選びのポイントも解説

  • 節税・税金

不動産投資で得た収益に関して、ほとんどの場合は確定申告を提出する必要があります。確定申告は難しそう、時間が取れないなどの理由で、税理士に依頼しようか検討している人もいるでしょう。依頼すると費用がどのぐらいかかるか、相場も気になるところです。 

税理士に依頼するメリットは大きいですが、いくつか注意点もあります。この記事では不動産投資で税理士に依頼するメリット・デメリット、費用の相場、税理士選びのポイントなどについて解説します。 

不動産投資の確定申告は税理士に依頼すべき? 

確定申告を税理士に依頼すべきかどうかは、ご自身の状況や資質、投資の規模によって異なります。たとえば、これまで別の事業で確定申告をしていた場合は、不動産投資に関してもそれほど問題なく申告できるでしょう。 

一方で、確定申告を一度もしたことのない会社員の場合は、確定申告はハードルが高いと感じるかもしれません。加えて、不動産投資をしている会社員の方は、平日は本業が忙しくなかなか時間が取れないことも多いです。 

また、ワンルーム1部屋だけなど物件数が少なければ、何とか自分でも申告できるかもしれません。しかし、所有する不動産の数が多くなると、確定申告の作業量も増え、次第に対応が厳しくなります。 

いずれの場合も、自分では対応が難しいと感じたら、税理士に依頼するのがおすすめです。 

税理士に依頼するメリット 

税理士に依頼することで、以下のようなメリットを享受できます。 

確定申告がしやすくなる 

税理士に依頼することで、不動産オーナーの作業負担を大きく減らすことが可能です。通常では貸借対照表など各種申告書類を作成しなくてはなりませんが、税制や会計の知識がないと難解で、時間と労力がかかります。 

税理士に確定申告のサポートを依頼することで、面倒な書類作成の手間から解放されます。オーナーは必要書類を用意しておくだけで、あとは税理士に申告書の作成を任せることが可能です。 

節税のためのアドバイスを受けられる 

不動産投資で節税効果を最大限に高めたい方も、税理士に依頼することで実現できます。節税方法に関する情報はさまざまありますが、自分が使える節税方法なのかは、素人ではなかなか判断が難しいケースも多いです。 

税金の専門家である税理士を頼ることにより、節税に関する的確なアドバイスがもらえます。適用できる制度を判別し、所得税・相続税・贈与税などさまざまな節税の恩恵が受けられます。 

税務調査を受ける可能性が低くなる 

税理士が関与した確定申告書には、税理士による署名が残ります。税理士の署名があることで、申告書の信頼性が高まるのもメリットです。税理士によってチェックされている確定申告書であれば、内容に不備がある可能性は低いと判断されます。 

また、税理士の署名があることで、税務調査の対象になるリスクも低くなることが期待されます。たとえ税務調査の対象になったとしても、税理士に同席してもらうなど、対処してもらえる点もメリットです。 

税理士に依頼するデメリット 

税理士に依頼することはメリットが大きいですが、いくつか注意点もあります。 

費用が発生する 

確定申告を税理士に依頼すると、報酬を支払わなくてはなりません。単発の依頼の場合でも、顧問契約を結ぶ場合でも、コストが発生します。税理士の報酬は事務所や料金体系によってさまざまですが、確定申告に関する業務のみを依頼する場合は10万円~15万円程度が目安です。事務所によっては確定申告代行には顧問契約が必要な場合があり、その場合は月2万円~3万円が相場です。運用している物件の収支によっては、事業の収益を圧迫してしまうかもしれません。 

ただし、税理士への報酬は、不動産投資の「経費」として計上できます。税理士費用を経費として処理することで収益を減らし、節税効果につなげることも可能です。 

税理士によって対応のレベルが異なる 

一口に税金といっても法人税や相続税など数多くの種類があり、税理士によって得意としている領域は異なります。税金以外の分野では、資金調達やM&Aなどを得意とする税理士もいます。専門分野や得意領域が異なると、対応のレベルに差が生じる可能性があるので、不動産投資に詳しい税理士を選ぶことが大切です。 

税理士を選ぶポイントについては後述しますが、信頼できる不動産投資会社を通じて、専門性の高い税理士を探すとよいでしょう。 

税金の知識を身に付けにくい 

確定申告に関するすべての作業を税理士に任せきりにすると、税金の知識が身に付きにくいのもデメリットです。税理士に任せたとしても、自分の事業に関する申告をしていることに変わりはありません。 

そのため、税理士に依頼しながら、ご自身でも税金や確定申告に関する知識を習得していくのがおすすめです。不動産会社のセミナーや投資家の勉強会に参加するなど、ご自身でも税務の知識を身に付ける方法は複数あります。 

税理士に依頼して節税を実現した事例 

税理士に依頼することで、節税につながったケースを2つ紹介します。 

青色申告特別控除の適用 

青色申告特別控除とは、最大65万円を所得から差し引ける控除のことです。不動産投資で青色申告控除の適用を受けるには、オーナー業が事業として認められることが必要で、具体的には賃貸できる物件5棟もしくは10室有していれば、原則として事業と認められます。 

基準に満たないある物件のオーナーは、以前は青色申告特別控除の申告をしていませんでした。しかし、税理士に相談したところ、基準には満たないものの事業的規模であると判断され、特別控除の適用を受けられました。この結果、所得税や住民税の軽減につながりました。 

法人の活用 

あるオーナーは所有する物件が増えて売上が大きくなり、税金が高くなってきたのが悩みでした。法人を設立したほうがいいかもしれないと考えたことはありましたが、費用がかかることが気になり、設立方法もわかりませんでした。 

税理士に相談したところ、法人を設立したほうが節税につながるとわかり、法人設立の支援も受けられました。物件を法人の所有にすることにより、経費計上できる項目が増える、不動産購入時に建物にかかる消費税の還付を受けられるなどのメリットを享受できました。 

不動産投資を税理士に依頼する場合の費用相場 

税理士に依頼するには費用を支払う必要があります。ここでは税理士にどの程度支払う必要があるか、目安・相場を解説します。 

相談のみの場合 

多くの税理士事務所では、初回の相談は無料としています。無料である以上は相談できる領域や相談時間には限りがあると考えられますが、最初からお金を支払わなくてもよいことで相談のハードルが低く感じる方もいるでしょう。 

2回目以降の相談に関しては時間単位での料金体系を取っているケースが多く、1時間あたり5,000円~1万円程度の事務所が多いです。 

単発で依頼する場合 

不動産の譲渡による売却益が出る場合など、不動産投資の確定申告を単発で依頼するケースがあります。この場合、特例を適用しない一般的な案件であれば10万~20万円程度が相場です。特例を適用する場合、料金が上乗せされます。 

売却益が出る場合の確定申告では、取得時の費用、所有期間、耐用年数、特例の適用可否など、さまざまな要素を考慮する必要があります。計算も複雑になるため、税理士にはそれなりの報酬を支払うことが必要です。 

顧問契約を結ぶ場合 

税理士に継続的に関与してもらう場合、顧問契約を締結することが必要です。顧問契約を締結すると、税務指導や経営サポートなどを定期的に受けられるようになります。 

顧問契約の費用は、物件の規模や数、資料の提出頻度などによって変動します。たとえば資料作成は年に1度の確定申告のみ、投資物件も1棟であれば、5万円前後が相場です。これに対して、物件が複数あり、月次・四半期で資料を提出する場合、月額1万円~5万円程度かかります。 

なお、税理士事務所が法人の場合はやや高額で、個人事業主の場合はやや安くなる傾向です。 

税理士に依頼するほうがよいのはこんな人 

不動産投資で税理士に依頼するのがおすすめなのは、以下のいずれかに当てはまる方です。 

  • 節税効果を高めたい方 

  • 本業が多忙で時間が取れない方 

  • 規模の大きい不動産投資をしたい方 

1つずつ解説します。 

節税効果を高めたい方 

節税を重視したい方は、税理士に相談することが必要です。知識のない素人が節税について調べるのは限界があるため、税金や控除などの制度に熟知している税理士は大いに力になります。 

素人が勝手に判断・実行すると、節税ではなく脱税になってしまうおそれも。税理士が関与することにより、法的に問題のない適切な節税ができます。 

本業が多忙で時間が取れない方 

不動産投資をしている会社員の方は、日中は本業で忙しいため確定申告の作業の手間が取れないケースも多いです。 

ですが、確定申告の作業的負担は重く、フリー株式会社の調査によると約4割の人が10時間以上確定申告にかけており、2割以上は実に20時間以上を経理作業に費やしています。 

このように、確定申告作業は時間がかかるため、税理士に依頼するのも合理的な選択です。 

自分で申告作業をするには、夜間や休日を使うことになりますが、税理士に依頼すれば時間的な負担だけでなく、心身の負担を減らすことができます。 

規模の大きい不動産投資をしたい方 

不動産投資でさらに多くの収益を得たいと考える場合、規模の拡大は避けて通れません。 

今後、不動産投資の規模を拡大したいと考えている方も、税理士に依頼するのがおすすめです。 

1棟や2棟だけなら自分で何とか対応できるとしても、4棟・5棟など規模が大きくなるほど確定申告の作業が大変になります。対象となる物件が増えるほど記帳や計算を間違えやすくなり、事業が大きくなると税務署からのチェックも厳しくなる可能性があるため、注意しなくてはなりません。 

不動産投資で規模を拡大しながらも、万全な状態で確定申告をしたいなら、税理士に依頼しないと難しいでしょう。 

不動産投資で依頼する税理士を選ぶポイント 

税理士を選ぶ際には、以下5つのポイントに当てはまるかを判断しましょう。 

  • 不動産に強い・得意分野である 

  • 実績や経験が豊富である 

  • 料金設定が適切である 

  • 口コミや評判がよい 

  • 対応の品質が優れている 

不動産に強い・得意分野である 

税理士選びでまず重視すべき要素は、不動産投資に精通し、関連法規や会計知識に長けているかどうかです。税理士はさまざまな分野に特化しており、所得税の確定申告、記帳代行、税務調査対応などの分野があります。 

得意分野以外でも対応できないわけではありませんが、ご自身が重視するジャンルに詳しい税理士を探すのが基本です。不動産投資に詳しい税理士を選ぶうえでは、以下のポイントをチェックしましょう。 

  • ホームページに「不動産投資専門」「不動産に強い」などの文言がある 

  • 過去に対応した具体的な事例が紹介されている 

また、可能であれば税理士自身でも実際に不動産投資をしているとなおよいです。実際に投資をしたうえで確定申告をしてみることで分かることも多くあり、最良の節税方法を選べるようになります。実際に投資をしている税理士であれば、確定申告や税金の手続きに詳しいことはもちろん、自らの投資経験から税務以外の領域の助言をもらうこともできます。 

ただし、不動産投資をしていないと依頼できないわけではありません。不動産投資をしていることは、税理士選びにおける必須条件ではなく、加点要素と考えるのがおすすめです。 

実績や経験が豊富である 

ホームページに「不動産に強い」などの表記があったとしても、実際はそうではない可能性も考えられます。そこで、本当に不動産を得意としているか、他の情報もチェックしましょう。 

たとえば不動産会社は定期的に無料相談会を実施しており、相談員として参加している税理士なら、不動産関連の税務に詳しいと考えられます。また、証券会社や金融機関でも不動産をテーマとしてセミナーを開催していますので、参加した実績があるか調べてみましょう。 

さらに、税理士が過去に執筆した書籍やオンラインの記事などがないかも要チェックです。不動産投資に関連した執筆の実績があると、実績・経験を裏打ちしていると考えられます。 

また、不動産投資以外も含め、税理士としての実績や経験が豊富であるかも重要なポイントです。年間の相談件数などをアピールしている事務所もありますので、比較してみましょう。 

料金設定が適切である 

先ほど解説したとおり、税理士の報酬には一定の相場があります。単発の依頼でも顧問契約でも、相場からかけ離れた料金設定になっていないかを確認しましょう。たとえば顧問契約で毎月40万円かかるというのは明らかに多すぎます。 

基本料金は安くても、オプションを付けると高額になるケースもあります。ホームページから判断できないことがある場合、相談の場で直接税理士に確認することがおすすめです。料金体系に関して明確な説明がされない場合、その税理士を選ぶのは避けたほうがよいでしょう。 

税理士業界の相場を把握したうえで、サービスの内容と料金のバランスが取れている事務所を選びましょう。 

口コミや評判がよい 

税理士を選ぶ際には、口コミや評判も参考にしましょう。ネット上などでよい評判を得ている税理士のほうが、よいサポートを受けられる可能性が高くなります。 

ネットはさまざまな人の意見を閲覧できて便利ですが、偽の情報が混じっているおそれがあります。口コミを絶対視することなく、あくまで参考として捉えましょう。また、実際に依頼したことのある方から話を聞くのもよい方法です。 

対応の品質が優れている 

よい税理士事務所であれば、最初からサービスの質が優れている可能性が高いです。最初のメールや電話での問い合わせに対応してもらえたか、初回の相談で親身になって話を聞いてくれたかなど、対応の品質をチェックしましょう。 

税理士の探し方 

不動産投資に強い税理士をどのように探せばいいか、迷う方もいるでしょう。主な探し方を3つ紹介します。 

不動産投資会社に紹介してもらう 

不動産投資会社は税理士とコネクションのあるケースが多いです。取引をする会社に相談すると、その地域での活動実績が長い、事業所の規模が大きいなど、信頼性の高い税理士を紹介してもらえる可能性が高くなります。 

税務面以外にも、不動産経営のコンサルティングや事業承継対策など、幅広い領域に対応できる高レベルな税理士を紹介してもらえる可能性があります。ただし、自分のニーズに合致する税理士であるとは限らないため、実際に契約をするかは自身で判断することが必要です。 

不動産投資の仲間に紹介してもらう 

知人ですでに不動産投資をしていて税理士に依頼しているという方がいる場合、契約している税理士事務所を紹介してもらう方法があります。税理士探しの労力がかからず、一定のスキル・経験をもった税理士であることが期待できます。 

連絡頻度は適切かなど気になる情報をあらかじめ知人に聞けるため、失敗しにくい方法です。ただし、人柄などが合わないと感じた時に契約を断りたいと思っても、知人との関係から断りにくさを感じるかもしれません。 

税理士の検索サイトで調べる 

日本税理士会連合会では、「税理士情報検索サイト」を公開しています。地域・依頼内容から、税理士や税理士法人を検索できる仕組みです。サイト内で自分の希望分野や住んでいるエリアに合った税理士を探せます。 

「詳細から探す」のメニューの検索項目には「主要取扱業種」があり、「不動産取引(売買・仲介等)業」と「不動産賃貸業・管理業」を選べるようになっています。これらの項目を活用して検索してみるとよいでしょう。 

なお、税理士や税理士法人は、必ず日本税理士会連合会に登録される決まりになっています。知り合いの紹介などで知った税理士がきちんと登録されているかを確認するために、利用するのもおすすめです。 

ただし、こちらのサイトには各税理士に関する細かな情報はないため、別途詳しく調べる必要があります。 

税理士に依頼するまでの主な流れ 

税理士に依頼するまでは、以下の流れで進めていきます。 

1.問い合わせ 

2.初回相談 

3.提案・見積もり 

4.契約の締結 

相談してみたいと思う税理士が見つかったら、ホームページの問い合わせ・申し込みフォームなどで連絡を取ります。日時を調整して、初回相談に臨みましょう。オンライン面談を実施している税理士事務所もあります。 

相談内容を踏まえて、税理士事務所から提案や費用の見積もりを受け取ります。複数のプランで見積もりをもらうのもよいでしょう。内容に納得できたら契約の締結に進みます。 

なお、1人の税理士だけで判断するのではなく、複数の税理士と面談するようにしましょう。1人の税理士と面談しただけでは、料金やサービス内容などの比較ができません。できれば3~4人程度を目安に話を聞くことをおすすめします。 

まとめ 

不動産投資の確定申告を税理士に依頼すると、確定申告作業が楽になり、節税のアドバイスをもらえるなどのメリットがあります。一定の費用はかかるものの、本業で多忙な方や投資規模を拡大させたい方にとって、依頼するメリットはかなり大きいです。 

ベルテックスでは、不動産投資のプロフェッショナルによる無料のセミナーを開催しており、不動産関連の知識・経験に優れた税理士とも連携しています。オンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にご利用ください。 

この記事を監修した人

宮川 真一

税理士 税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表

岐阜県大垣市出身。一橋大学商学部を1996年に卒業後、1997年より税理士としてのキャリアをスタート。25年以上の経験を持ち、税務や財務に関する深い知識を生かし、1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士資格も取得。企業の取締役や監査役としても幅広く活躍し、財務コンサルティングや資産管理のエキスパートとして信頼を集めている。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。