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2024.02.29
ベルテックスコラム事務局
サラリーマンが不動産投資で経費として計上できる費用の詳細と注意点
- はじめ方・基礎知識
- 節税・税金
- 会社員
最近は、将来の資産形成のために不動産投資を始めるサラリーマンが増えています。不動産投資は節税になると聞いたことがある方もいるかもしれませんが、企業に勤めているサラリーマンが不動産投資をする場合、どのような支出を経費として計上できるのでしょうか。また、経費を計上することで節税効果を得ることは可能なのでしょうか。
この記事では、サラリーマンが不動産投資の経費として計上できる費用の詳細と注意点、サラリーマンが不動産投資で節税できる理由と仕組みなどについて解説します。
サラリーマンが不動産投資で経費計上するために必要なこと
サラリーマンが不動産投資で経費計上するためには、確定申告をする必要があります。基本的な内容から見ていきましょう。
スムーズな確定申告のために
サラリーマンが不動産投資で経費計上するためには、確定申告をする必要があります。確定申告には、領収書の保管と経費の記録が必要になります。きちんと保管と記録をしておけば、確定申告をご自身で行うことも、税理士へ依頼することも、スムーズに行う事ができます。
領収書などは経費の証明のために必要
不動産投資において、物件の修繕費用や管理費用などが経費として計上されます。これらの経費を計上するためには、領収書や契約書、請求書などの経費を証明できる書類(以降、「領収書等」といいます)が必要です。領収書等の保管や経費の記録をしていないと、税務調査があった場合に、証明ができず、経費としての計上を認めてもらえないリスクがあります。
確定申告は必要
不動産投資による収入は、所得税の課税対象となります。しかし、サラリーマンとしての給与所得と異なり、源泉徴収や年末調整を通じた税金の計算がされていないことから収入や経費ひいては所得税の計算が行われておりません。この所得税等の額を計算し、確定させる手続きのことを確定申告と言います。
次に、確定申告をしないとどうなるか、についてです。確定申告の計算の結果、経費よりも収入が多ければ、黒字となり所得税がかかります。確定申告をしていなければ、所得税を納めることもしていないこととなり、法律違反になってしまいます。
対して、不動産投資の結果が赤字になることもあるでしょう。例えば、賃貸物件の空室期間が長引いた場合や、修繕費用が予想以上にかかった場合などが挙げられます。これらの場合には、赤字、すなわち損失を確定申告することができます。この損失は、給与所得と損益通算することができますし、青色申告をされている方であれば、損益通算後の損失を翌年以降の確定申告のために繰り越すこともできます。
もう一方で、不動産投資には様々な経費がかかります。例えば、不動産を購入する際の仲介手数料や登記費用、修繕費用、管理費用などがあります。これらの経費も、確定申告をしなければ、計上される機会がありません。経費を計上するためにも、確定申告が必要になります。
領収書の保管と経費の記録
確定申告が終わっても、領収書や経費の記録は、捨てないようにしましょう。もし、税務調査があった場合に、保管がされていないと、経費の証明ができなくなってしまうからです。
では、どれくらいの期間保管が必要なのでしょうか。
保管期間は法律で決まっており、経費の記録(帳簿)は7年間、領収書などは5年間とされています。
不動産投資で経費計上できる項目と注意点
それでは、不動産投資で経費計上できる項目と注意点について見ていきましょう。
建物の減価償却費
減価償却とは、物件の購入代金を取得時ではなく、使用期間に渡って少しずつ経費に計上する考え方です。減価償却費に相当するお金を購入後に支払う訳ではありませんが、このような考え方から、毎年の経費として扱われます。 なお、減価償却の方法や期間は、法律で定められていることから、適切な減価償却方法を選択し、法定の償却期間内に償却する必要があります。
管理費
次にあげる費用は管理費として計上できます。
・入居管理のために不動産会社に支払う費用
・マンションの管理組合に支払う建物管理費用
・マンションの修繕積立金
賃貸募集に際して支払う仲介手数料
入居者の募集後に不動産会社に支払う仲介手数料は、経費として計上できます。なお、購入に際して支払う仲介手数料は、購入代金と同様に扱われることに注意ください。
火災保険や地震保険の保険料
不動産の保険料は、経費として計上できます。不動産投資で加入する保険は一般的に火災保険、地震保険の2つがあります。
ローンの利息
不動産投資に必要な資金を借り入れた場合に支払う利息は、経費として計上します。不動産所得が赤字だった場合には、土地に関わる利息は経費計上できない点に注意が必要です。
不動産の修繕費
不動産の修繕費は経費として計上できますが、備品の交換や、大規模なリフォームなどは、修繕ではなく、取得として、減価償却資産として取り扱われる場合があります。
専門家に支払う報酬
登記に関する手続きや確定申告など、不動産投資に関する専門的な業務を委託する場合に支払う報酬は、経費として計上できます。司法書士や税理士に支払う報酬などがあります。
不動産投資にかかる税金
不動産投資に関する税金は、経費として計上できます。具体的には固定資産税及び都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などがあります。
旅費交通費
不動産投資に関連する旅費や交通費は、経費として計上できますが、目的や内容が明確でない場合や、私的な旅行や交通費である場合は、経費として計上できません。
新聞図書費
不動産投資に関する情報収集や研究に必要な新聞や図書の購入費用は、経費として計上できますが、私的な目的のための購入や、一般的な教養や趣味嗜好に関連するものは、経費として計上できません。
交際費
不動産投資に関連する交際費は、業務上必要な範囲内である場合に限り、経費として計上できます。ただし、交際費の内容が業務上必要なものであるかどうかは判断が難しいため、注意が必要です。
消耗品費
不動産投資に関連する消耗品費は、業務に必要な範囲内である場合に限り、経費として計上できます。ただし、消耗品費の内容が業務上必要なものであるかどうかは判断が難しいため、注意が必要です。
通信費
不動産投資に関する通信費は、業務に必要な範囲内である場合に限り、経費として計上できます。ただし、通信費の内容が業務上必要なものであるかどうかは判断が難しいため、注意が必要です。また、私的な通信費は、経費として計上できません。
不動産投資で経費計上できない項目
不動産投資に無関係な費用
不動産投資に関係のない費用は、業務上必要な経費ではないため、経費計上ができません。例えば、趣味やプライベートでの費用や、他の事業やビジネスに関連する費用は、不動産投資の経費として計上することができません。
福利厚生費
福利厚生費は、従業員の雇用に当たって事業主が負担する社会保険料や、社員旅行などの雇用者が従業員のために支出する費用を言います。このため、従業員を雇用していない場合、社長のみの1人会社の場合、役員だけで行う旅行など、私的なもの、一部の人だけを対象とするものは、経費として認められにくいです。
家族に支払う給与、報酬
生計を一にする家族に対して支払う費用は、給与、報酬、家賃のいずれであっても経費に計上することができません。また、家族との用事で支払った費用は、私的なものとして経費計上が認められないことが多いです。
ただし、青色申告をしている場合には、青色事業専従者給与という制度の要件を満たせば、家族に対する給与を経費にすることができます。なお、専ら従事する者とありますので、少しの手伝い程度で認められる制度ではありません。
サラリーマンが不動産投資で節税できる理由と仕組み
サラリーマンが不動産投資で節税できる理由と仕組みについて説明します。
減価償却費による節税
不動産などの固定資産を購入した金額は、その資産が使用可能な期間に合わせて毎年一部を経費として計上することができます。
この計上できる経費を「減価償却費」と呼びます。どれくらいの期間、減価償却費を計上できるかは固定資産の種類によって異なり、例えば、木造のアパートは22年、RC造のマンションは47年、これらの附属設備は15年となっています。
このように減価償却費には、「実際には支出をしていないのに経費として計上できる」という特徴があります。
また所得税の対象になる「不動産所得」は、家賃収入からこれを得るためにかかった経費を差し引くことで算出できます。つまり、サラリーマン大家が不動産投資で節税をするためには、経費を積み上げて「不動産所得」を減らすことが重要となります。実際は支出しないのに経費として計上できる減価償却はこれに貢献するといえるでしょう。
給与所得との損益通算による節税
不動産所得が赤字になった場合、その赤字分と会社員として勤務先から受け取る給与所得を損益通算(相殺)することが可能です。その結果、課税所得が減って節税できます。これが不動産投資の損益通算による節税です。
注目したいのは、減価償却費を経費計上することで、実際は黒字なのに帳簿上は赤字にできるケースもあることです。これにより、経営の健全性を保ちながら給与所得に対する所得税の課税を減らすことが可能です。
また、赤字にならなくても、黒字を圧縮できているので節税効果はあります。
不動産投資による節税効果が高いサラリーマン
不動産投資を行うことにより高い節税効果を得られるのは、どのようなサラリーマンなのでしょうか。
年収が高いサラリーマン
年収が高いサラリーマンは不動産投資により課税所得を減らすことで、高い節税効果を得られる可能性があります。日本の所得税は、課税所得が高いほど税率が上がる累進課税という方式が適用されているため、課税所得が高いほど税金の負担が大きいからです。
特に課税所得金額が900万円を超えているサラリーマンは33%という高い所得税率が適用されるので、不動産投資で減価償却費や損益通算などの仕組みを活用することにより、大きな節税効果を得られる可能性があります。
青色申告をしているサラリーマン
サラリーマンでも不動産所得を得ている場合は青色申告をすることが可能です。青色申告には以下のようなメリットがあり、上手に活用することで節税効果を高めることができます。
30万円未満の固定資産は全額経費として計上可能
パソコンなどの10万円以上の固定資産は、原則として減価償却により数年かけて計上する必要がありますが、青色申告をすると「少額減価償却資産の特例」が適用され、30万円未満の固定資産はその年の経費として全額を計上できます。年間300万円まで認められるため、賢く活用すれば大きな節税効果を得られる可能性があります。
最大3年間の赤字の繰り越しが可能
損益通算でその年の赤字分を消化しきれなかった場合、その部分は「純損失」として、翌年以降最大3年間にわたって繰り越すことができます。
青色申告特別控除を受けられる
事業的規模の不動産投資をしている場合は最大65万円、それ以外の場合は10万円の青色申告特別控除を受けることができます。事業的規模とは、「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」のことで、目安として5棟10室(独立家屋は5棟以上、アパート等は10室以上)という基準が設けられています。なお、青色申告特別控除は、所得から差し引くものですので、収入から他の経費を差し引いた時点で赤字である場合には、控除額は無いこととなります。
青色事業専従者給与を経費に算入できる
事業的規模の不動産投資をしていて配偶者や同居している親族を従業員として雇用している場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出することにより、専従者給与を経費に算入できます。
サラリーマンの不動産投資の経費に関するFAQ
サラリーマンが不動産投資の経費に関して疑問に感じることが多い事項をQ&A形式でまとめました。
車の購入費や維持費は経費として計上できる?
国税庁では、不動産所得などの必要経費の定義を、収入や売上を得るために「直接要した費用の額」としています。
つまり、車の購入費や維持費が不動産投資に関するものであれば経費計上できる、そうでない場合は経費計上できないということになります。不動産投資をしていて事業用の車両が必要となるのは、かなりの数の物件を所有していて、自主管理をしているような場合に限られます。マイカーの費用を経費として計上すると、税務調査が入った場合に否認される可能性が高いため注意しましょう。
【参照元】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」より
ゴルフ代は経費として計上できる?
仲介会社や管理会社の担当者などとゴルフを通じて親交を深めるなど、「不動産投資の業務上必要であれば」ゴルフ代を交際費として計上することは可能でしょう。ただし、税務調査が入った場合、「ゴルフをすることが業務上必要だった」と認められなければ否認される可能性があります。ゴルフ代を交際費として経費計上する場合は、以下の内容を記載した書類を保存する必要があります。
・ゴルフをプレーした年月日
・一緒にプレーした参加者の氏名と人数
・プレーにかかった金額、施設の名称、所在地など
通信費や光熱費の家事按分の適切な割合は?
家事按分(かじあんぶん)とは、事業用と家事用(プライベート)にまたがる支出を区分けすることです。対象となる経費としては、自宅兼事務所の住居費、通信費、水道光熱費などが挙げられます。家事按分は、適当に「事業用の費用50:家事用の費用50」などと決めているケースも多いようです。しかし、国税庁では「取引の記録などに基づいて」事業用と家事用を明らかに区分できる金額だけを経費計上できるとしています。
この考え方に従うと、家事按分には適切な割合があるわけではなく、事業で使った分だけを計上するのが正しいということになります。例えば、90%を事業で使った場合は90%、10%を事業で使った場合は10%を計上しましょう。
雑費の上限の目安は?
雑費とは、ほかの勘定科目に振り分けられない費用に使われる項目です。一例では、各種手数料、有料コンテンツの課金、クレジットの年会費などで使われます。勘定科目が分からないときに「とりあえず雑費にしておくか」といった具合で使われるケースも多いようです。
国税庁では雑費の上限を明確に決めていないものの、一般的に、理想的な雑費の目安は経費全体の5〜10%程度といわれています。雑費の割合が極端に増えると、金融機関の融資審査の際に経営の健全性を疑われます。税務調査で雑費の中身を重点的にチェックされる可能性があるので十分注意しましょう。雑費の割合が極端に高い場合は、「消耗品費」や「事務用品費」など別の勘定項目に振り替えられないか検討するとよいでしょう。
節税効果を得るためには法人化した方が良い?
サラリーマン大家の場合、不動産投資で赤字の状態であれば、法人化する必要はないと考えられます。なぜなら、不動産投資の赤字分は個人であれば給与所得と損益通算できますが、法人としての赤字を、個人の給与所得と損益通算することは出来ないからです。
一方で、まとまった不動産所得(家賃収入−経費)がある人は、法人化を検討されたほうがよいかもしれません。一般的に、法人化した方が良いといわれている不動産所得の目安は、600〜800万円を超えてきたあたりです。理由は、所得が600万円あたりになると個人の表面税率(所得税・住民税・事業税)と法人の表面税率がほぼ同じになるからです。そして、700万円、800万円と所得が増えるごとに個人の表面税率が高くなっていきます。
ただし、法人化の判断は不動産所得だけでなく「利益を分散できる家族がいるか」「将来、相続が発生しそうか」なども絡んできます。そのため、信頼できる税理士に相談した上で、慎重に判断することをおすすめします。
【おすすめ関連記事】010 - 不動産投資は節税にならない?税金が安くなる仕組みや注意点を解説
まとめ
この記事では、サラリーマンが不動産投資を取り入れた場合の確定申告の必要性や、申告をする際に必要な領収証と申告ができない内容について解説しました。サラリーマンにとっても不動産投資は魅力的な投資です。経費計上による節税効果や安定した収益、将来の資産形成など多くのメリットがあります。実際に投資をおこなう際には、メリットのみを見るのではなく、リスクを理解し、慎重に判断することが重要です。
ベルテックスでは不動産にまつわる節税対策セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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ベルテックスコラム事務局
サラリーマンが不動産投資で経費として計上できる費用の詳細と注意点
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- 節税・税金
- 会社員
最近は、将来の資産形成のために不動産投資を始めるサラリーマンが増えています。不動産投資は節税になると聞いたことがある方もいるかもしれませんが、企業に勤めているサラリーマンが不動産投資をする場合、どのような支出を経費として計上できるのでしょうか。また、経費を計上することで節税効果を得ることは可能なのでしょうか。
この記事では、サラリーマンが不動産投資の経費として計上できる費用の詳細と注意点、サラリーマンが不動産投資で節税できる理由と仕組みなどについて解説します。
サラリーマンが不動産投資で経費計上するために必要なこと
サラリーマンが不動産投資で経費計上するためには、確定申告をする必要があります。基本的な内容から見ていきましょう。
スムーズな確定申告のために
サラリーマンが不動産投資で経費計上するためには、確定申告をする必要があります。確定申告には、領収書の保管と経費の記録が必要になります。きちんと保管と記録をしておけば、確定申告をご自身で行うことも、税理士へ依頼することも、スムーズに行う事ができます。
領収書などは経費の証明のために必要
不動産投資において、物件の修繕費用や管理費用などが経費として計上されます。これらの経費を計上するためには、領収書や契約書、請求書などの経費を証明できる書類(以降、「領収書等」といいます)が必要です。領収書等の保管や経費の記録をしていないと、税務調査があった場合に、証明ができず、経費としての計上を認めてもらえないリスクがあります。
確定申告は必要
不動産投資による収入は、所得税の課税対象となります。しかし、サラリーマンとしての給与所得と異なり、源泉徴収や年末調整を通じた税金の計算がされていないことから収入や経費ひいては所得税の計算が行われておりません。この所得税等の額を計算し、確定させる手続きのことを確定申告と言います。
次に、確定申告をしないとどうなるか、についてです。確定申告の計算の結果、経費よりも収入が多ければ、黒字となり所得税がかかります。確定申告をしていなければ、所得税を納めることもしていないこととなり、法律違反になってしまいます。
対して、不動産投資の結果が赤字になることもあるでしょう。例えば、賃貸物件の空室期間が長引いた場合や、修繕費用が予想以上にかかった場合などが挙げられます。これらの場合には、赤字、すなわち損失を確定申告することができます。この損失は、給与所得と損益通算することができますし、青色申告をされている方であれば、損益通算後の損失を翌年以降の確定申告のために繰り越すこともできます。
もう一方で、不動産投資には様々な経費がかかります。例えば、不動産を購入する際の仲介手数料や登記費用、修繕費用、管理費用などがあります。これらの経費も、確定申告をしなければ、計上される機会がありません。経費を計上するためにも、確定申告が必要になります。
領収書の保管と経費の記録
確定申告が終わっても、領収書や経費の記録は、捨てないようにしましょう。もし、税務調査があった場合に、保管がされていないと、経費の証明ができなくなってしまうからです。
では、どれくらいの期間保管が必要なのでしょうか。
保管期間は法律で決まっており、経費の記録(帳簿)は7年間、領収書などは5年間とされています。
不動産投資で経費計上できる項目と注意点
それでは、不動産投資で経費計上できる項目と注意点について見ていきましょう。
建物の減価償却費
減価償却とは、物件の購入代金を取得時ではなく、使用期間に渡って少しずつ経費に計上する考え方です。減価償却費に相当するお金を購入後に支払う訳ではありませんが、このような考え方から、毎年の経費として扱われます。 なお、減価償却の方法や期間は、法律で定められていることから、適切な減価償却方法を選択し、法定の償却期間内に償却する必要があります。
管理費
次にあげる費用は管理費として計上できます。
・入居管理のために不動産会社に支払う費用
・マンションの管理組合に支払う建物管理費用
・マンションの修繕積立金
賃貸募集に際して支払う仲介手数料
入居者の募集後に不動産会社に支払う仲介手数料は、経費として計上できます。なお、購入に際して支払う仲介手数料は、購入代金と同様に扱われることに注意ください。
火災保険や地震保険の保険料
不動産の保険料は、経費として計上できます。不動産投資で加入する保険は一般的に火災保険、地震保険の2つがあります。
ローンの利息
不動産投資に必要な資金を借り入れた場合に支払う利息は、経費として計上します。不動産所得が赤字だった場合には、土地に関わる利息は経費計上できない点に注意が必要です。
不動産の修繕費
不動産の修繕費は経費として計上できますが、備品の交換や、大規模なリフォームなどは、修繕ではなく、取得として、減価償却資産として取り扱われる場合があります。
専門家に支払う報酬
登記に関する手続きや確定申告など、不動産投資に関する専門的な業務を委託する場合に支払う報酬は、経費として計上できます。司法書士や税理士に支払う報酬などがあります。
不動産投資にかかる税金
不動産投資に関する税金は、経費として計上できます。具体的には固定資産税及び都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などがあります。
旅費交通費
不動産投資に関連する旅費や交通費は、経費として計上できますが、目的や内容が明確でない場合や、私的な旅行や交通費である場合は、経費として計上できません。
新聞図書費
不動産投資に関する情報収集や研究に必要な新聞や図書の購入費用は、経費として計上できますが、私的な目的のための購入や、一般的な教養や趣味嗜好に関連するものは、経費として計上できません。
交際費
不動産投資に関連する交際費は、業務上必要な範囲内である場合に限り、経費として計上できます。ただし、交際費の内容が業務上必要なものであるかどうかは判断が難しいため、注意が必要です。
消耗品費
不動産投資に関連する消耗品費は、業務に必要な範囲内である場合に限り、経費として計上できます。ただし、消耗品費の内容が業務上必要なものであるかどうかは判断が難しいため、注意が必要です。
通信費
不動産投資に関する通信費は、業務に必要な範囲内である場合に限り、経費として計上できます。ただし、通信費の内容が業務上必要なものであるかどうかは判断が難しいため、注意が必要です。また、私的な通信費は、経費として計上できません。
不動産投資で経費計上できない項目
不動産投資に無関係な費用
不動産投資に関係のない費用は、業務上必要な経費ではないため、経費計上ができません。例えば、趣味やプライベートでの費用や、他の事業やビジネスに関連する費用は、不動産投資の経費として計上することができません。
福利厚生費
福利厚生費は、従業員の雇用に当たって事業主が負担する社会保険料や、社員旅行などの雇用者が従業員のために支出する費用を言います。このため、従業員を雇用していない場合、社長のみの1人会社の場合、役員だけで行う旅行など、私的なもの、一部の人だけを対象とするものは、経費として認められにくいです。
家族に支払う給与、報酬
生計を一にする家族に対して支払う費用は、給与、報酬、家賃のいずれであっても経費に計上することができません。また、家族との用事で支払った費用は、私的なものとして経費計上が認められないことが多いです。
ただし、青色申告をしている場合には、青色事業専従者給与という制度の要件を満たせば、家族に対する給与を経費にすることができます。なお、専ら従事する者とありますので、少しの手伝い程度で認められる制度ではありません。
サラリーマンが不動産投資で節税できる理由と仕組み
サラリーマンが不動産投資で節税できる理由と仕組みについて説明します。
減価償却費による節税
不動産などの固定資産を購入した金額は、その資産が使用可能な期間に合わせて毎年一部を経費として計上することができます。
この計上できる経費を「減価償却費」と呼びます。どれくらいの期間、減価償却費を計上できるかは固定資産の種類によって異なり、例えば、木造のアパートは22年、RC造のマンションは47年、これらの附属設備は15年となっています。
このように減価償却費には、「実際には支出をしていないのに経費として計上できる」という特徴があります。
また所得税の対象になる「不動産所得」は、家賃収入からこれを得るためにかかった経費を差し引くことで算出できます。つまり、サラリーマン大家が不動産投資で節税をするためには、経費を積み上げて「不動産所得」を減らすことが重要となります。実際は支出しないのに経費として計上できる減価償却はこれに貢献するといえるでしょう。
給与所得との損益通算による節税
不動産所得が赤字になった場合、その赤字分と会社員として勤務先から受け取る給与所得を損益通算(相殺)することが可能です。その結果、課税所得が減って節税できます。これが不動産投資の損益通算による節税です。
注目したいのは、減価償却費を経費計上することで、実際は黒字なのに帳簿上は赤字にできるケースもあることです。これにより、経営の健全性を保ちながら給与所得に対する所得税の課税を減らすことが可能です。
また、赤字にならなくても、黒字を圧縮できているので節税効果はあります。
不動産投資による節税効果が高いサラリーマン
不動産投資を行うことにより高い節税効果を得られるのは、どのようなサラリーマンなのでしょうか。
年収が高いサラリーマン
年収が高いサラリーマンは不動産投資により課税所得を減らすことで、高い節税効果を得られる可能性があります。日本の所得税は、課税所得が高いほど税率が上がる累進課税という方式が適用されているため、課税所得が高いほど税金の負担が大きいからです。
特に課税所得金額が900万円を超えているサラリーマンは33%という高い所得税率が適用されるので、不動産投資で減価償却費や損益通算などの仕組みを活用することにより、大きな節税効果を得られる可能性があります。
青色申告をしているサラリーマン
サラリーマンでも不動産所得を得ている場合は青色申告をすることが可能です。青色申告には以下のようなメリットがあり、上手に活用することで節税効果を高めることができます。
30万円未満の固定資産は全額経費として計上可能
パソコンなどの10万円以上の固定資産は、原則として減価償却により数年かけて計上する必要がありますが、青色申告をすると「少額減価償却資産の特例」が適用され、30万円未満の固定資産はその年の経費として全額を計上できます。年間300万円まで認められるため、賢く活用すれば大きな節税効果を得られる可能性があります。
最大3年間の赤字の繰り越しが可能
損益通算でその年の赤字分を消化しきれなかった場合、その部分は「純損失」として、翌年以降最大3年間にわたって繰り越すことができます。
青色申告特別控除を受けられる
事業的規模の不動産投資をしている場合は最大65万円、それ以外の場合は10万円の青色申告特別控除を受けることができます。事業的規模とは、「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」のことで、目安として5棟10室(独立家屋は5棟以上、アパート等は10室以上)という基準が設けられています。なお、青色申告特別控除は、所得から差し引くものですので、収入から他の経費を差し引いた時点で赤字である場合には、控除額は無いこととなります。
青色事業専従者給与を経費に算入できる
事業的規模の不動産投資をしていて配偶者や同居している親族を従業員として雇用している場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出することにより、専従者給与を経費に算入できます。
サラリーマンの不動産投資の経費に関するFAQ
サラリーマンが不動産投資の経費に関して疑問に感じることが多い事項をQ&A形式でまとめました。
車の購入費や維持費は経費として計上できる?
国税庁では、不動産所得などの必要経費の定義を、収入や売上を得るために「直接要した費用の額」としています。
つまり、車の購入費や維持費が不動産投資に関するものであれば経費計上できる、そうでない場合は経費計上できないということになります。不動産投資をしていて事業用の車両が必要となるのは、かなりの数の物件を所有していて、自主管理をしているような場合に限られます。マイカーの費用を経費として計上すると、税務調査が入った場合に否認される可能性が高いため注意しましょう。
【参照元】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」より
ゴルフ代は経費として計上できる?
仲介会社や管理会社の担当者などとゴルフを通じて親交を深めるなど、「不動産投資の業務上必要であれば」ゴルフ代を交際費として計上することは可能でしょう。ただし、税務調査が入った場合、「ゴルフをすることが業務上必要だった」と認められなければ否認される可能性があります。ゴルフ代を交際費として経費計上する場合は、以下の内容を記載した書類を保存する必要があります。
・ゴルフをプレーした年月日
・一緒にプレーした参加者の氏名と人数
・プレーにかかった金額、施設の名称、所在地など
通信費や光熱費の家事按分の適切な割合は?
家事按分(かじあんぶん)とは、事業用と家事用(プライベート)にまたがる支出を区分けすることです。対象となる経費としては、自宅兼事務所の住居費、通信費、水道光熱費などが挙げられます。家事按分は、適当に「事業用の費用50:家事用の費用50」などと決めているケースも多いようです。しかし、国税庁では「取引の記録などに基づいて」事業用と家事用を明らかに区分できる金額だけを経費計上できるとしています。
この考え方に従うと、家事按分には適切な割合があるわけではなく、事業で使った分だけを計上するのが正しいということになります。例えば、90%を事業で使った場合は90%、10%を事業で使った場合は10%を計上しましょう。
雑費の上限の目安は?
雑費とは、ほかの勘定科目に振り分けられない費用に使われる項目です。一例では、各種手数料、有料コンテンツの課金、クレジットの年会費などで使われます。勘定科目が分からないときに「とりあえず雑費にしておくか」といった具合で使われるケースも多いようです。
国税庁では雑費の上限を明確に決めていないものの、一般的に、理想的な雑費の目安は経費全体の5〜10%程度といわれています。雑費の割合が極端に増えると、金融機関の融資審査の際に経営の健全性を疑われます。税務調査で雑費の中身を重点的にチェックされる可能性があるので十分注意しましょう。雑費の割合が極端に高い場合は、「消耗品費」や「事務用品費」など別の勘定項目に振り替えられないか検討するとよいでしょう。
節税効果を得るためには法人化した方が良い?
サラリーマン大家の場合、不動産投資で赤字の状態であれば、法人化する必要はないと考えられます。なぜなら、不動産投資の赤字分は個人であれば給与所得と損益通算できますが、法人としての赤字を、個人の給与所得と損益通算することは出来ないからです。
一方で、まとまった不動産所得(家賃収入−経費)がある人は、法人化を検討されたほうがよいかもしれません。一般的に、法人化した方が良いといわれている不動産所得の目安は、600〜800万円を超えてきたあたりです。理由は、所得が600万円あたりになると個人の表面税率(所得税・住民税・事業税)と法人の表面税率がほぼ同じになるからです。そして、700万円、800万円と所得が増えるごとに個人の表面税率が高くなっていきます。
ただし、法人化の判断は不動産所得だけでなく「利益を分散できる家族がいるか」「将来、相続が発生しそうか」なども絡んできます。そのため、信頼できる税理士に相談した上で、慎重に判断することをおすすめします。
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まとめ
この記事では、サラリーマンが不動産投資を取り入れた場合の確定申告の必要性や、申告をする際に必要な領収証と申告ができない内容について解説しました。サラリーマンにとっても不動産投資は魅力的な投資です。経費計上による節税効果や安定した収益、将来の資産形成など多くのメリットがあります。実際に投資をおこなう際には、メリットのみを見るのではなく、リスクを理解し、慎重に判断することが重要です。
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この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
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