2025.09.25

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

サラリーマンが不動産投資で経費として計上できる費用の詳細と注意点

  • はじめ方・基礎知識
  • 節税・税金
  • 会社員

会社員の場合、給与から引かれる税金は同じ収入ならほぼ一定であり「経費」を意識する機会はあまりないでしょう。 

しかし、不動産投資の利益は収入と経費のバランスで決まるため、経費も重要な要素です。不動産投資というと利回りだけに目がいきがちですが、経費をどう活用するかで手元に残るお金が大きく変わる可能性もあります。

本記事では、経費計上の機会が少ない会社員に向けて、不動産投資で経費計上ができる項目とその範囲、注意点について解説します。

不動産投資で経費計上できる項⽬と注意点

適切な経費計上は節税のために重要ですが、何でも経費にできるわけではありません。不動産投資において、経費計上できる代表的な項目は、以下のとおりです。

関連する費用との違いについても触れながら、次の項からひとつずつ具体的に見ていきましょう。

建物の減価償却費

減価償却とは、建物や設備などの固定資産に対する購入費用を取得時に全額経費計上するのではなく、「法定耐用年数」と呼ばれる定められた期間にわたって少しずつ経費として計上する制度です。

複数年にわたり収益を生み出す固定資産を分散して費用計上することで、各年度の費用対利益を正しく把握するために設けられています。

法定耐用年数は、建物なら「木造」や「RC造」などの構造によって異なり、そのほかも固定資産の種類や材質、用途によって定められています。 

注意したいのは、減価償却は固定資産の「時間経過によって価値が減少する分」を経費計上する仕組みです。したがって、土地のように時間経過で価値が減らないものは減価償却の対象になりません。 

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 建物本体の購入費用
  • 設備の購入費用
  • 土地の購入費用
  • 個人の住宅部分に対する購入費用

【勘定科目の例】減価償却費

管理費

保有物件の共用部分の清掃や設備の点検・保守、管理員の人件費など、建物全体の維持管理にかかる費用が「管理費」です。

関連する費用として、入居者募集や家賃集金、入居者対応などを管理会社に委託している場合に支払う「管理委託料」も経費として計上できます。このふたつは混同されがちですが、「管理費」は建物の維持管理に関する費用、「管理委託料」は賃貸経営の管理業務を管理会社に任せるための費用です。 

また、将来の大規模修繕のための積立金として、管理費とあわせて徴収されるマンションの修繕積立金は、一定の要件を満たした場合は、「修繕費」として経費計上します。 

 

<経費計上できるものの具体例>

できる
  • 管理会社への管理委託料
  • マンション管理組合への管理費
  • マンションの修繕積立金(※一定の要件を満たした場合)

【勘定科目の例】管理費・管理委託料

賃貸募集に際して⽀払う仲介⼿数料

入居者が決まったときに、間に入った不動産会社に報酬として支払う仲介手数料は、賃貸経営に必要な費用として経費計上できます。 

また、仲介手数料とは別に早く入居者を決めてもらえるように広告料を支払うケースもよくあり、同じく経費計上が可能です。こちらは「広告宣伝費」の勘定科目で計上するのが一般的です。 

注意点として、同じ仲介手数料でも投資対象の建物を購入したときに不動産会社に支払う仲介手数料は別の扱いとなります。購入費用の一部として資産扱いとなるため、「減価償却」の会計処理を行い経費化します。

 

<経費計上できる・できないものの具体例> 

できる できない
  • 賃貸募集の仲介手数料
  • 入居付け促進のための広告料(※勘定科目は「広告宣伝費」)
  • 不動産購入時の仲介手数料(※ただし、「減価償却費」として複数年にわたり経費計上が可能)

【勘定科目の例】支払手数料

⽕災保険や地震保険の保険料

火災保険や地震保険など、投資対象の不動産にかかる保険料は経費として計上できます。そのほか、孤独死保険や家賃補償保険などオーナーが負担する各種保険料も同様に経費計上が可能です。

また、団体信用生命保険(団信)の保険料がローン金利に含まれる場合、団信分も含めて金利部分を経費計上できます。

ただし、自宅と賃貸部分が混在している場合に経費として計上できるのは賃貸部分に対してのみです。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 火災保険料
  • 地震保険料
  • 孤独死保険料
  • 施設賠償責任保険料
  • 家賃補償保険料
  • 団体信用生命保険(※不動産投資ローンで団信保険料が金利に含まれている場合)
  • 自宅部分の保険料
  • 個人の団体信用生命保険(特約料)

【勘定科目の例】保険料(※前払いで支払った分は前払費用)

ローンの利息

不動産投資用のローンを利用した場合、毎月支払う利息部分は経費として計上できます。減価償却費と異なり、建物や設備だけでなく土地部分の利息も経費計上可能です。 

一方、元本部分は経費になりませんが、建物や設備については減価償却費として複数年にわたり経費化されます。そのため、毎月の返済で経費になるのは利息部分のみです。 

ただし例外として、「不動産所得が赤字の場合には土地部分の利息については損益通算(給与所得などのほかの所得と不動産所得の赤字を相殺する)の対象とならない」という特例があります。 

そのため、例えば不動産所得が350万円の赤字の場合、うち建物の利息が100万、土地の利息が200万なら給与所得と相殺できるのは土地の利息を除いた150万円分の赤字のみとなります。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 建物・設備・土地のローン利息
  • ローンの元金部分

【勘定科目の例】支払利息

不動産の修繕費

投資対象の建物の破損・劣化や設備の故障による修理、退去時の原状回復、定期的なメンテナンスなどにかかる費用は、経費として計上できます。 

ただし同じ建物や設備に対する工事でも、工事の性質によって経費としての処理方法が異なります。 

寿命を延ばしたりするための工事やグレードアップの費用などは「物件の価値を高めるための支出=資本的支出」として、減価償却の対象資産になります。一方で、修理や原状回復は元通りの状態に直すものであり、価値は変わらないため「修繕」にあたります。 

判断に迷う場合は、物件価格(取得価格+それまでの資本的支出)の10%程度までを修繕費の目安とするとよいでしょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 同じグレードの壁紙張替え
  • 定期的な外壁塗装
  • 同等品への設備交換
  • 原状回復リフォーム
  • 壁紙のグレードアップ
  • 外壁のタイル張りへの変更
  • 機能が追加された設備交換・リフォーム

(※いずれも実施後は、「減価償却費」として複数年にわたり経費計上が可能)

【勘定科目の例】修繕費

専⾨家に⽀払う報酬

不動産投資に関して「登記手続き」「確定申告の書類作成」「家賃滞納などの法的対応の相談」などの専門業務を依頼した場合、司法書士や税理士、弁護士へ支払った報酬は費用計上できます。 

プライベートに関する相談など、個人的な依頼に関する費用は経費にならないため、「事業・個人両方の手続きをまるごとお願いしている」といった場合には全額計上しないように注意しましょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 司法書士への登記依頼
  • 税理士への確定申告依頼
  • 滞納などの入居者トラブルに関する弁護士への訴訟依頼
  • プライベートな相談費用

【勘定科目の例】支払報酬

不動産投資にかかる税⾦

不動産投資にかかる税金のうち、不動産取得税や固定資産税など投資物件に関する税金の多くは経費として計上できます。 

ただし所得税や法人税など、個人の所得や法人の利益に対して課される税金は経費になりません。経費計上できる税金かどうかは、「その税金が不動産の取得や管理・運営に直接必要な支出かどうか」で判断されます。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 固定資産税・都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • (不動産事業で使用分の)自動車税・重量税
  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税

【勘定科目の例】租税公課

旅費交通費

不動産投資に関する現地調査や、物件管理、契約・金融機関訪問など、事業に必要な移動や宿泊費は「旅費交通費」として経費計上が可能です。

電車やバス、タクシーなどの公共交通機関の運賃、自家用車を使用した場合の高速道路料金やガソリン代、駐車場代、ホテルの宿泊費などが該当します。 

自動車関連費用については、支払いの内容によって経費として計上する費目が変わるため、内容に応じて「車両費」「保険料」「租税公課」など、適切な勘定科目で計上します。 

自家用車をプライベートと兼用している場合は、業務で使った分だけを合理的に按分して計上しましょう。また、交通違反の反則金や罰金などは経費計上できないため注意が必要です。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 物件調査や物件管理などのための交通費・宿泊費
  • 車の高速道路料金(業務利用分のみ)
  • ガソリン代(業務利用分のみ)
  • 家族旅行や帰省など私的な移動
  • 交通違反の反則金や罰金
  • ICカードのチャージ(実際に使用していないため「仮払金」として記帳)

【勘定科目の例】旅費交通費

新聞図書費

不動産投資に関する情報収集や知識の習得を目的として購入した、不動産市況や法律改正、賃貸経営ノウハウなどが掲載された新聞や書籍の代金は経費として認められます。

また、業務に直接役立つ内容であれば、セミナー参加費やコンサルティング費用も経費計上が可能です。 

一方、宅建士やマンション管理士など、不動産投資に関連する資格でも、取得にかかる費用は経費として認められません。資格取得費用は「新たな資格や権利を得る=個人の価値が増えるための支出」とみなされるためです。 

一方で、すでに持っている「業務に必要な資格」に関する講習や資格更新のための費用などは経費になる場合があります。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 不動産投資に関する新聞・専門書・業界誌の購入費用
  • 不動産投資セミナー代
  • コンサルティング費用
  • 不動産投資と関係のない趣味や教養目的の新聞・書籍
  • 資格取得費用

【勘定科目の例】新聞図書費(※セミナー代・コンサル費用は研修費や支払手数料の場合もあり)

交際費

業務に関係する相手との関係構築・情報交換を目的とした会食などの飲食代や、お中元・お歳暮などの贈答品代は経費計上可能です。 

ただし、もちろん経費計上できるのは業務に直接関係する相手との飲食や贈答に限られ、個人事業として行う場合には「社会通念上、妥当な範囲の金額」でないと認められないことがあります。 

また、同じプレゼントでも入居申し込み促進のために配布するプレゼントは広告宣伝費や販売促進費として経費計上することが一般的です。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 管理会社や不動産会社との打ち合わせ・親睦会の飲食代
  • 取引先への贈答品代
  • 家族や友人との食事
  • 一人での飲食
  • 私的な贈り物

【勘定科目の例】交際費

消耗品費

不動産投資の業務や物件管理のために使う文房具、コピー用紙、プリンターインク、掃除用品、電球、10万円未満のパソコンやカメラなど、比較的少額で繰り返し消費されるものの購入費用が消耗品に該当します。 

ただし、パソコンなど高額なものは、取得価額が10万円(青色申告なら30万円)以上の場合は固定資産となるため、消耗品としてではなく減価償却の処理を行う必要がある点を理解しておきましょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • コピー用紙
  • 文房具
  • プリンターインク
  • 掃除用品
  • 電球
  • 10万円(青色申告なら30万円)未満のパソコン・カメラ類
  • 名刺
  • 業務と関係のない日用品や雑貨
  • 高額な備品(※固定資産となる)
  • スーツや時計などの服飾品
  • 10万円(青色申告なら30万円)以上のパソコン・カメラ類(※ただし、「減価償却費」として複数年にわたり経費計上が可能)

【勘定科目の例】消耗品費

通信費

不動産会社や管理会社との連絡、物件調査や情報収集などに使用する電話代やインターネット料金、業務用アプリやソフトの利用料などの事業に直接必要な通信費は経費計上可能です。 

パソコンやスマートフォンはプライベートと共用のことも多いため、業務利用分のみを適切に経費として計上しましょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できるものの例 できないものの例
  • 電話代
  • インターネット料金
  • 業務関連のアプリ・ソフトの利用料(主にサブスクタイプのもの)
  • 私的な通話・ネット利用分
  • 業務と無関係なアプリやサービスの費用

【勘定科目の例】通信費

不動産投資で経費計上できない項⽬

不動産投資では多くの支出が経費になりますが、すべてが認められるわけではありません。

ここでは判断に迷いやすい、以下の「経費計上できない項目」について整理します。

不動産投資に無関係な費⽤

プライベートのための出費はもちろん、事業で使うものと個人用でまとめて買った消耗品やほかの事業に関連した出費など、不動産投資に直接関係のない支出は経費として計上できません。 

会社員と並行して不動産投資を行う場合、事業とプライベートの境目が曖昧になり意図せず無関係な費用まで計上しやすいので、記帳の際に事業に関連した出費であるか確認しましょう。

福利厚⽣費

企業などでは、社員旅行やジムの会費などを「福利厚生費」として計上するケースが一般的です。 

しかし、家族だけの経営や社長のみの一人会社、個人事業主の場合には、これらの費用を経費計上することはできません。

例外として、家族以外の従業員がいる法人で、その全員を対象とした福利厚生、かつ社会通念上適正な金額であれば経費として認められる場合があります。 

家族に⽀払う給与、報酬

生計を一にする家族に対して支払う給与や報酬は、原則として経費にできません。 

ただし青色申告の場合、「青色事業専従者給与」という制度により「事業期間の半分超、主にその事業に従事」していれば家族への給与を経費にできるケースがあります。 

スーツ代、コンタクトレンズ代

スーツやコンタクトレンズ、腕時計などのファッションアイテムは、不動産投資に関連する場面でしか使わないとしても原則経費にはできません。 

「被服は誰もが必要なもののため、個人的な家事消費に属する」という判例もあり、業務専用と私的利用の区別がつきにくいため経費にはできないとされています。

 

所得税‧住⺠税

前述の通り、固定資産税など事業で保有する不動産に関係する税金と異なり、所得税や住民税、法人税は経費として認められません。 

同じ税金なのに経費計上の可否が異なる理由は、それぞれの税金が持つ性質にあります。 

所得税や住民税、法人税は個人や法人の所得、つまり「事業などで『得た』利益」に対して課される税金であり、経費の定義である「事業の運営や収益を『得るために』直接必要な支出ではない」ためです。 

会社員が不動産投資で経費計上するために必要なこと

ここでは、会社員が不動産投資で経費を正しく計上するために知っておくべき税務上のルールや必要な手続き、日々の記録・証明書類の管理などのポイントについて解説します。 

確定申告は必要

会社が給与計算から年末調整まで行ってくれる会社員の場合、不動産投資による所得が年間20万円を超える際は、別途、自分で確定申告の手続きを行う必要があります。 

不動産所得について申告しないと「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが課されます。正しく経費計上した所得を申告し、必要に応じて損益通算や繰り越し控除を行い、節税メリットを活かしましょう。 

スムーズな確定申告のために

青色申告の場合、経費を帳簿に記録する際には、「仕訳」と呼ばれる会計処理が必要になります(白色申告では不要です)。 

仕訳とは、「どの費目で」「いくら」「どの資産から支払ったか」をセットで複式簿記として記録することです。これにより経費の内容や支払い状況が明確になり、確定申告書類の作成や収支状況の把握が容易になります。 

支払いの場合、左側(借方)に「○○費(経費の費目)」、右側(貸方)に「現金」や「普通預金」などの出金元を記載します。 

また、自宅の一部を不動産投資の事務作業などに使っている場合は、家賃や光熱費などをプライベート分と事業分に分けて計上する「家事按分(かじあんぶん)」という考え方が必要です。家事按分の割合や根拠も、帳簿やメモで残しておくと安心です。 

会計ソフトを使えば仕訳や家事按分の処理も簡単にできますが、基本的な会計処理の考え方を知っておくと日々の記録や確定申告書類の作成もスムーズに進みます。 

領収書などは経費の証明のために必要

不動産投資に関する出費を経費計上するためには、領収書や契約書、請求書などの支出を証明するための書類が欠かせません。 

これらがないと、税務調査で経費として認められないリスクがあります。そのため契約書などの関連書類と合わせて、必要に応じてすぐ提示できるように支出ごとに証明書類を整理・保管しておきましょう。 

領収書の保管と経費の記録

領収書などは5~7年、帳簿は7年の保管が法律で義務付けられています。証明書類は月ごとにファイリングしたり、デジタル化してクラウドやパソコンで管理するのもおすすめです。 

定期的に記録や保管状況を見直し、領収書類の紛失や記帳漏れを防ぐことも意識しましょう。 

会社員が不動産投資で節税できる理由と仕組み

会社員が不動産投資で節税できるのは、給与だけでは得られない税制上のメリットがあるためです。ここでは、その理由と仕組みについて解説します。 

減価償却費による節税

前述の通り、減価償却とは「固定資産の取得費用を法で定められた耐用年数で割った額を、時間経過により価値が減少する分として複数年をかけて経費化する」仕組みです。 

分割で計上しても一括で計上しても、計上する総額は同じです。しかし、実際には購入時に支払っている費用を毎年分割して計上することで、毎年の収益から差し引けるため帳簿上の利益を少なくできます。 

一例として木造のアパートは22年、RC造のマンションなら法定耐用年数は47年のため、長期間にわたり節税効果が続きます。 

給与所得との損益通算による節税

「会社員が不動産投資に向いている」といわれる大きな理由のひとつは、損益通算の仕組みを活用できる点にあります。

前述の通り、不動産投資などで発生した損失と、会社員として勤務先から受け取る給与所得などのほかの所得と相殺し、課税対象所得を減らせる仕組みが「損益通算」です。

不動産投資において、経費の中心となるのが投資金額が大きい建物に対する減価償却費です。減価償却費が大きければ帳簿上の利益を減らすだけでなく、赤字になると損益通算により所得税が大きく減ります。 

また、詳しい仕組みや具体的な節税方法について知りたい方は、以下の書籍がおすすめです。

賃貸経営でお金を残す!不動産オーナーの儲かる節税

賃貸経営の現状から、各種税金の説明、経費の使い方、減価償却の実践、修繕費の考え方、法人化や相続税対策まで幅広くカバーしており、初心者から長く役立つ内容です。

 

元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書

元国税職員で不動産専門税理士、不動産投資家でもある著者が、所得税・法人税・相続税など不動産投資に関わる節税を“表も裏も”徹底解説した一冊。インボイス制度などの最新トピックも網羅しており詳しく知りたい人に向いています。

不動産投資による節税効果が⾼い会社員

特に不動産投資による節税効果が高い会社員の条件は、「年収が高い」「青色申告をしている」の2つです。 

以下で具体的に見ていきましょう。 

年収が⾼い会社員

日本の所得税は課税所得が高いほど税率が上がる「累進課税制度」を採用しています。 

しかし、不動産投資では減価償却費などの経費計上や損益通算などの仕組みの活用により、実際の総所得に対して申告上の所得を減らせます。 

特に所得税率が上がる課税所得900万円以上の会社員は、大きな節税効果を得ることも可能です。 

⻘⾊申告をしている会社員

年収にかかわらず、青色申告をしている会社員は節税効果が高くなります。 

その理由は、青色申告を行うことで以下のさまざまな優遇制度を利用できるためです。

30万円未満の固定資産は全額経費として計上可能

パソコンなどの10万円以上の固定資産は、原則として、減価償却により数年かけて計上するように定められています。しかし、青色申告の場合は「少額減価償却資産の特例」が利用可能です。 

この特例を使用すると、1つの資産の金額が30万円未満であれば、1年間に合計300万円までその年の経費として「全額」計上できます。 

通常は減価償却を行い数年に分けてしか経費にできない支出を、購入した年にまとめて経費計上できるため、税額計算の基となる課税所得を大きく圧縮でき節税につながります。 

最⼤3年間の⾚字の繰り越しが可能

青色申告をしていれば、不動産投資で出た赤字(純損失)は翌年以降最大3年間にわたって繰り越しが可能です。赤字が出た年だけでなく翌年以降の黒字についても繰り越した赤字分を差し引いて課税所得を減らせるため、長期的な節税につながります。 

⻘⾊申告特別控除を受けられる

青色申告を行うと、最大65万円(e-Tax利用の場合)、または55万円、10万円の青色申告特別控除を受けられます。控除額は所得から直接差し引かれるため、税負担を大きく減らせます。 

※事業的規模の目安は、独立家屋は5棟以上、アパートなどは10室以上。 

⻘⾊事業専従者給与を経費に算⼊できる

青色申告を行い、かつ事業的規模の不動産事業に対して、配偶者や家族を従業員という立場で雇用している場合、事前に届出をすればその給与の全額を経費計上可能です。不動産投資が軌道に乗り事業が拡大した場合には、節税効果がさらに高まります。 

会社員の不動産投資の経費に関するFAQ

最後に、会社員が不動産投資の経費に関して疑問に感じることが多い事項をQ&A形式でまとめました。 

⾞の購⼊費や維持費は経費として計上できる?

国税庁では、事業所得に関する必要経費の定義を、「収入や売上を得るために『直接要した』費用の額」としています。したがって、物件の視察・巡回や打ち合わせなど、自動車が事業に必要な場合は費用計上が可能になると考えられます。 

ただし、不動産投資で自家用車の保有・使用に合理性があると判断されるには、ある程度の事業規模が必要でしょう。また、自家用車と兼用する場合には関連した出費の全額ではなく、事業で使用した割合だけが費用計上可能です。 

【参考】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」2024年4月1日現在 

ゴルフ代は経費として計上できる?

関係者との信頼関係を築き、将来的な商談や取引につなげるなど「不動産投資の業務上として必要である」という正当性があれば、ゴルフのプレー代などを交際費として経費計上できると考えられます。 

経費計上する場合は、以下の内容を記載した書類を保存しておきましょう。 

  • 日付 
  • ゴルフ場の所在地 
  • 参加者の氏名と人数 
  • プレーにかかった金額 

ただし、不動産投資においてゴルフ代は「業務のために直接かかる費用」とは判断しにくく、税務調査の結果、認められない可能性もあります。 

通信費や光熱費の家事按分の適切な割合は?

会社員が不動産投資を行う場合、頭を悩ますのが自宅兼事務所の住居費や水道光熱費、共用の通信費などの「プライベートと事業両方にかかわりがある出費」の計上方法でしょう。 

国税庁では「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額」に限り経費計上できるとしており、その方法を家事按分(かじあんぶん)と呼びます。 

しかし、「実際に不動産投資にどのくらい使ったのか」を判断するのは難しいでしょう。そのため、住居費ならば「事業で使う面積の割合」、水道光熱費なら「事業で使用する時間の割合」など、合理的な根拠を基に「実際にどれだけ事業で使ったか」を説明できる割合で計上するのが一般的です。 

【参考】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」2024年4月1日現在 

雑費の上限の⽬安は?

交通費や通信費、消耗品費などの主要な勘定科目に当てはまらない、あるいは当てはまっていても少額の出費を処理するために「雑費」が使用されることがあります。 

雑費は便利な勘定科目ですが、使いすぎると出費が把握しにくくなるだけでなく帳簿の透明性が下がり税務調査で内容を詳しく確認されるリスクがあります。 

雑費は一般的な目安とされる経費全体の5〜10%程度に抑え、極力別の勘定科目で仕訳するようにしましょう。 

まとめ

不動産投資においては、経費計上による節税効果が収益にも大きく影響します。 

しかし、やみくもに経費を増やせばいいというものでもありません。節税を意識しすぎるあまり経費計上する出費を増やしすぎると、かえって手元に残る利益が減り運用が難しくなってしまう本末転倒な事態にもなりかねません。 

経費として認められる範囲や必要な費用について正しく理解したうえで、利益を確保できる適切なバランスにコントロールして不動産投資による安定した資産運用を目指しましょう。 

ベルテックスでは不動産にまつわる節税対策セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでもご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。 

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2025.09.25

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

サラリーマンが不動産投資で経費として計上できる費用の詳細と注意点

  • はじめ方・基礎知識
  • 節税・税金
  • 会社員

会社員の場合、給与から引かれる税金は同じ収入ならほぼ一定であり「経費」を意識する機会はあまりないでしょう。 

しかし、不動産投資の利益は収入と経費のバランスで決まるため、経費も重要な要素です。不動産投資というと利回りだけに目がいきがちですが、経費をどう活用するかで手元に残るお金が大きく変わる可能性もあります。

本記事では、経費計上の機会が少ない会社員に向けて、不動産投資で経費計上ができる項目とその範囲、注意点について解説します。

不動産投資で経費計上できる項⽬と注意点

適切な経費計上は節税のために重要ですが、何でも経費にできるわけではありません。不動産投資において、経費計上できる代表的な項目は、以下のとおりです。

関連する費用との違いについても触れながら、次の項からひとつずつ具体的に見ていきましょう。

建物の減価償却費

減価償却とは、建物や設備などの固定資産に対する購入費用を取得時に全額経費計上するのではなく、「法定耐用年数」と呼ばれる定められた期間にわたって少しずつ経費として計上する制度です。

複数年にわたり収益を生み出す固定資産を分散して費用計上することで、各年度の費用対利益を正しく把握するために設けられています。

法定耐用年数は、建物なら「木造」や「RC造」などの構造によって異なり、そのほかも固定資産の種類や材質、用途によって定められています。 

注意したいのは、減価償却は固定資産の「時間経過によって価値が減少する分」を経費計上する仕組みです。したがって、土地のように時間経過で価値が減らないものは減価償却の対象になりません。 

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 建物本体の購入費用
  • 設備の購入費用
  • 土地の購入費用
  • 個人の住宅部分に対する購入費用

【勘定科目の例】減価償却費

管理費

保有物件の共用部分の清掃や設備の点検・保守、管理員の人件費など、建物全体の維持管理にかかる費用が「管理費」です。

関連する費用として、入居者募集や家賃集金、入居者対応などを管理会社に委託している場合に支払う「管理委託料」も経費として計上できます。このふたつは混同されがちですが、「管理費」は建物の維持管理に関する費用、「管理委託料」は賃貸経営の管理業務を管理会社に任せるための費用です。 

また、将来の大規模修繕のための積立金として、管理費とあわせて徴収されるマンションの修繕積立金は、一定の要件を満たした場合は、「修繕費」として経費計上します。 

 

<経費計上できるものの具体例>

できる
  • 管理会社への管理委託料
  • マンション管理組合への管理費
  • マンションの修繕積立金(※一定の要件を満たした場合)

【勘定科目の例】管理費・管理委託料

賃貸募集に際して⽀払う仲介⼿数料

入居者が決まったときに、間に入った不動産会社に報酬として支払う仲介手数料は、賃貸経営に必要な費用として経費計上できます。 

また、仲介手数料とは別に早く入居者を決めてもらえるように広告料を支払うケースもよくあり、同じく経費計上が可能です。こちらは「広告宣伝費」の勘定科目で計上するのが一般的です。 

注意点として、同じ仲介手数料でも投資対象の建物を購入したときに不動産会社に支払う仲介手数料は別の扱いとなります。購入費用の一部として資産扱いとなるため、「減価償却」の会計処理を行い経費化します。

 

<経費計上できる・できないものの具体例> 

できる できない
  • 賃貸募集の仲介手数料
  • 入居付け促進のための広告料(※勘定科目は「広告宣伝費」)
  • 不動産購入時の仲介手数料(※ただし、「減価償却費」として複数年にわたり経費計上が可能)

【勘定科目の例】支払手数料

⽕災保険や地震保険の保険料

火災保険や地震保険など、投資対象の不動産にかかる保険料は経費として計上できます。そのほか、孤独死保険や家賃補償保険などオーナーが負担する各種保険料も同様に経費計上が可能です。

また、団体信用生命保険(団信)の保険料がローン金利に含まれる場合、団信分も含めて金利部分を経費計上できます。

ただし、自宅と賃貸部分が混在している場合に経費として計上できるのは賃貸部分に対してのみです。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 火災保険料
  • 地震保険料
  • 孤独死保険料
  • 施設賠償責任保険料
  • 家賃補償保険料
  • 団体信用生命保険(※不動産投資ローンで団信保険料が金利に含まれている場合)
  • 自宅部分の保険料
  • 個人の団体信用生命保険(特約料)

【勘定科目の例】保険料(※前払いで支払った分は前払費用)

ローンの利息

不動産投資用のローンを利用した場合、毎月支払う利息部分は経費として計上できます。減価償却費と異なり、建物や設備だけでなく土地部分の利息も経費計上可能です。 

一方、元本部分は経費になりませんが、建物や設備については減価償却費として複数年にわたり経費化されます。そのため、毎月の返済で経費になるのは利息部分のみです。 

ただし例外として、「不動産所得が赤字の場合には土地部分の利息については損益通算(給与所得などのほかの所得と不動産所得の赤字を相殺する)の対象とならない」という特例があります。 

そのため、例えば不動産所得が350万円の赤字の場合、うち建物の利息が100万、土地の利息が200万なら給与所得と相殺できるのは土地の利息を除いた150万円分の赤字のみとなります。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 建物・設備・土地のローン利息
  • ローンの元金部分

【勘定科目の例】支払利息

不動産の修繕費

投資対象の建物の破損・劣化や設備の故障による修理、退去時の原状回復、定期的なメンテナンスなどにかかる費用は、経費として計上できます。 

ただし同じ建物や設備に対する工事でも、工事の性質によって経費としての処理方法が異なります。 

寿命を延ばしたりするための工事やグレードアップの費用などは「物件の価値を高めるための支出=資本的支出」として、減価償却の対象資産になります。一方で、修理や原状回復は元通りの状態に直すものであり、価値は変わらないため「修繕」にあたります。 

判断に迷う場合は、物件価格(取得価格+それまでの資本的支出)の10%程度までを修繕費の目安とするとよいでしょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 同じグレードの壁紙張替え
  • 定期的な外壁塗装
  • 同等品への設備交換
  • 原状回復リフォーム
  • 壁紙のグレードアップ
  • 外壁のタイル張りへの変更
  • 機能が追加された設備交換・リフォーム

(※いずれも実施後は、「減価償却費」として複数年にわたり経費計上が可能)

【勘定科目の例】修繕費

専⾨家に⽀払う報酬

不動産投資に関して「登記手続き」「確定申告の書類作成」「家賃滞納などの法的対応の相談」などの専門業務を依頼した場合、司法書士や税理士、弁護士へ支払った報酬は費用計上できます。 

プライベートに関する相談など、個人的な依頼に関する費用は経費にならないため、「事業・個人両方の手続きをまるごとお願いしている」といった場合には全額計上しないように注意しましょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 司法書士への登記依頼
  • 税理士への確定申告依頼
  • 滞納などの入居者トラブルに関する弁護士への訴訟依頼
  • プライベートな相談費用

【勘定科目の例】支払報酬

不動産投資にかかる税⾦

不動産投資にかかる税金のうち、不動産取得税や固定資産税など投資物件に関する税金の多くは経費として計上できます。 

ただし所得税や法人税など、個人の所得や法人の利益に対して課される税金は経費になりません。経費計上できる税金かどうかは、「その税金が不動産の取得や管理・運営に直接必要な支出かどうか」で判断されます。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 固定資産税・都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • (不動産事業で使用分の)自動車税・重量税
  • 所得税
  • 住民税
  • 法人税

【勘定科目の例】租税公課

旅費交通費

不動産投資に関する現地調査や、物件管理、契約・金融機関訪問など、事業に必要な移動や宿泊費は「旅費交通費」として経費計上が可能です。

電車やバス、タクシーなどの公共交通機関の運賃、自家用車を使用した場合の高速道路料金やガソリン代、駐車場代、ホテルの宿泊費などが該当します。 

自動車関連費用については、支払いの内容によって経費として計上する費目が変わるため、内容に応じて「車両費」「保険料」「租税公課」など、適切な勘定科目で計上します。 

自家用車をプライベートと兼用している場合は、業務で使った分だけを合理的に按分して計上しましょう。また、交通違反の反則金や罰金などは経費計上できないため注意が必要です。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 物件調査や物件管理などのための交通費・宿泊費
  • 車の高速道路料金(業務利用分のみ)
  • ガソリン代(業務利用分のみ)
  • 家族旅行や帰省など私的な移動
  • 交通違反の反則金や罰金
  • ICカードのチャージ(実際に使用していないため「仮払金」として記帳)

【勘定科目の例】旅費交通費

新聞図書費

不動産投資に関する情報収集や知識の習得を目的として購入した、不動産市況や法律改正、賃貸経営ノウハウなどが掲載された新聞や書籍の代金は経費として認められます。

また、業務に直接役立つ内容であれば、セミナー参加費やコンサルティング費用も経費計上が可能です。 

一方、宅建士やマンション管理士など、不動産投資に関連する資格でも、取得にかかる費用は経費として認められません。資格取得費用は「新たな資格や権利を得る=個人の価値が増えるための支出」とみなされるためです。 

一方で、すでに持っている「業務に必要な資格」に関する講習や資格更新のための費用などは経費になる場合があります。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 不動産投資に関する新聞・専門書・業界誌の購入費用
  • 不動産投資セミナー代
  • コンサルティング費用
  • 不動産投資と関係のない趣味や教養目的の新聞・書籍
  • 資格取得費用

【勘定科目の例】新聞図書費(※セミナー代・コンサル費用は研修費や支払手数料の場合もあり)

交際費

業務に関係する相手との関係構築・情報交換を目的とした会食などの飲食代や、お中元・お歳暮などの贈答品代は経費計上可能です。 

ただし、もちろん経費計上できるのは業務に直接関係する相手との飲食や贈答に限られ、個人事業として行う場合には「社会通念上、妥当な範囲の金額」でないと認められないことがあります。 

また、同じプレゼントでも入居申し込み促進のために配布するプレゼントは広告宣伝費や販売促進費として経費計上することが一般的です。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • 管理会社や不動産会社との打ち合わせ・親睦会の飲食代
  • 取引先への贈答品代
  • 家族や友人との食事
  • 一人での飲食
  • 私的な贈り物

【勘定科目の例】交際費

消耗品費

不動産投資の業務や物件管理のために使う文房具、コピー用紙、プリンターインク、掃除用品、電球、10万円未満のパソコンやカメラなど、比較的少額で繰り返し消費されるものの購入費用が消耗品に該当します。 

ただし、パソコンなど高額なものは、取得価額が10万円(青色申告なら30万円)以上の場合は固定資産となるため、消耗品としてではなく減価償却の処理を行う必要がある点を理解しておきましょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できる できない
  • コピー用紙
  • 文房具
  • プリンターインク
  • 掃除用品
  • 電球
  • 10万円(青色申告なら30万円)未満のパソコン・カメラ類
  • 名刺
  • 業務と関係のない日用品や雑貨
  • 高額な備品(※固定資産となる)
  • スーツや時計などの服飾品
  • 10万円(青色申告なら30万円)以上のパソコン・カメラ類(※ただし、「減価償却費」として複数年にわたり経費計上が可能)

【勘定科目の例】消耗品費

通信費

不動産会社や管理会社との連絡、物件調査や情報収集などに使用する電話代やインターネット料金、業務用アプリやソフトの利用料などの事業に直接必要な通信費は経費計上可能です。 

パソコンやスマートフォンはプライベートと共用のことも多いため、業務利用分のみを適切に経費として計上しましょう。

 

<経費計上できる・できないものの具体例>

できるものの例 できないものの例
  • 電話代
  • インターネット料金
  • 業務関連のアプリ・ソフトの利用料(主にサブスクタイプのもの)
  • 私的な通話・ネット利用分
  • 業務と無関係なアプリやサービスの費用

【勘定科目の例】通信費

不動産投資で経費計上できない項⽬

不動産投資では多くの支出が経費になりますが、すべてが認められるわけではありません。

ここでは判断に迷いやすい、以下の「経費計上できない項目」について整理します。

不動産投資に無関係な費⽤

プライベートのための出費はもちろん、事業で使うものと個人用でまとめて買った消耗品やほかの事業に関連した出費など、不動産投資に直接関係のない支出は経費として計上できません。 

会社員と並行して不動産投資を行う場合、事業とプライベートの境目が曖昧になり意図せず無関係な費用まで計上しやすいので、記帳の際に事業に関連した出費であるか確認しましょう。

福利厚⽣費

企業などでは、社員旅行やジムの会費などを「福利厚生費」として計上するケースが一般的です。 

しかし、家族だけの経営や社長のみの一人会社、個人事業主の場合には、これらの費用を経費計上することはできません。

例外として、家族以外の従業員がいる法人で、その全員を対象とした福利厚生、かつ社会通念上適正な金額であれば経費として認められる場合があります。 

家族に⽀払う給与、報酬

生計を一にする家族に対して支払う給与や報酬は、原則として経費にできません。 

ただし青色申告の場合、「青色事業専従者給与」という制度により「事業期間の半分超、主にその事業に従事」していれば家族への給与を経費にできるケースがあります。 

スーツ代、コンタクトレンズ代

スーツやコンタクトレンズ、腕時計などのファッションアイテムは、不動産投資に関連する場面でしか使わないとしても原則経費にはできません。 

「被服は誰もが必要なもののため、個人的な家事消費に属する」という判例もあり、業務専用と私的利用の区別がつきにくいため経費にはできないとされています。

 

所得税‧住⺠税

前述の通り、固定資産税など事業で保有する不動産に関係する税金と異なり、所得税や住民税、法人税は経費として認められません。 

同じ税金なのに経費計上の可否が異なる理由は、それぞれの税金が持つ性質にあります。 

所得税や住民税、法人税は個人や法人の所得、つまり「事業などで『得た』利益」に対して課される税金であり、経費の定義である「事業の運営や収益を『得るために』直接必要な支出ではない」ためです。 

会社員が不動産投資で経費計上するために必要なこと

ここでは、会社員が不動産投資で経費を正しく計上するために知っておくべき税務上のルールや必要な手続き、日々の記録・証明書類の管理などのポイントについて解説します。 

確定申告は必要

会社が給与計算から年末調整まで行ってくれる会社員の場合、不動産投資による所得が年間20万円を超える際は、別途、自分で確定申告の手続きを行う必要があります。 

不動産所得について申告しないと「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが課されます。正しく経費計上した所得を申告し、必要に応じて損益通算や繰り越し控除を行い、節税メリットを活かしましょう。 

スムーズな確定申告のために

青色申告の場合、経費を帳簿に記録する際には、「仕訳」と呼ばれる会計処理が必要になります(白色申告では不要です)。 

仕訳とは、「どの費目で」「いくら」「どの資産から支払ったか」をセットで複式簿記として記録することです。これにより経費の内容や支払い状況が明確になり、確定申告書類の作成や収支状況の把握が容易になります。 

支払いの場合、左側(借方)に「○○費(経費の費目)」、右側(貸方)に「現金」や「普通預金」などの出金元を記載します。 

また、自宅の一部を不動産投資の事務作業などに使っている場合は、家賃や光熱費などをプライベート分と事業分に分けて計上する「家事按分(かじあんぶん)」という考え方が必要です。家事按分の割合や根拠も、帳簿やメモで残しておくと安心です。 

会計ソフトを使えば仕訳や家事按分の処理も簡単にできますが、基本的な会計処理の考え方を知っておくと日々の記録や確定申告書類の作成もスムーズに進みます。 

領収書などは経費の証明のために必要

不動産投資に関する出費を経費計上するためには、領収書や契約書、請求書などの支出を証明するための書類が欠かせません。 

これらがないと、税務調査で経費として認められないリスクがあります。そのため契約書などの関連書類と合わせて、必要に応じてすぐ提示できるように支出ごとに証明書類を整理・保管しておきましょう。 

領収書の保管と経費の記録

領収書などは5~7年、帳簿は7年の保管が法律で義務付けられています。証明書類は月ごとにファイリングしたり、デジタル化してクラウドやパソコンで管理するのもおすすめです。 

定期的に記録や保管状況を見直し、領収書類の紛失や記帳漏れを防ぐことも意識しましょう。 

会社員が不動産投資で節税できる理由と仕組み

会社員が不動産投資で節税できるのは、給与だけでは得られない税制上のメリットがあるためです。ここでは、その理由と仕組みについて解説します。 

減価償却費による節税

前述の通り、減価償却とは「固定資産の取得費用を法で定められた耐用年数で割った額を、時間経過により価値が減少する分として複数年をかけて経費化する」仕組みです。 

分割で計上しても一括で計上しても、計上する総額は同じです。しかし、実際には購入時に支払っている費用を毎年分割して計上することで、毎年の収益から差し引けるため帳簿上の利益を少なくできます。 

一例として木造のアパートは22年、RC造のマンションなら法定耐用年数は47年のため、長期間にわたり節税効果が続きます。 

給与所得との損益通算による節税

「会社員が不動産投資に向いている」といわれる大きな理由のひとつは、損益通算の仕組みを活用できる点にあります。

前述の通り、不動産投資などで発生した損失と、会社員として勤務先から受け取る給与所得などのほかの所得と相殺し、課税対象所得を減らせる仕組みが「損益通算」です。

不動産投資において、経費の中心となるのが投資金額が大きい建物に対する減価償却費です。減価償却費が大きければ帳簿上の利益を減らすだけでなく、赤字になると損益通算により所得税が大きく減ります。 

また、詳しい仕組みや具体的な節税方法について知りたい方は、以下の書籍がおすすめです。

賃貸経営でお金を残す!不動産オーナーの儲かる節税

賃貸経営の現状から、各種税金の説明、経費の使い方、減価償却の実践、修繕費の考え方、法人化や相続税対策まで幅広くカバーしており、初心者から長く役立つ内容です。

 

元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書

元国税職員で不動産専門税理士、不動産投資家でもある著者が、所得税・法人税・相続税など不動産投資に関わる節税を“表も裏も”徹底解説した一冊。インボイス制度などの最新トピックも網羅しており詳しく知りたい人に向いています。

不動産投資による節税効果が⾼い会社員

特に不動産投資による節税効果が高い会社員の条件は、「年収が高い」「青色申告をしている」の2つです。 

以下で具体的に見ていきましょう。 

年収が⾼い会社員

日本の所得税は課税所得が高いほど税率が上がる「累進課税制度」を採用しています。 

しかし、不動産投資では減価償却費などの経費計上や損益通算などの仕組みの活用により、実際の総所得に対して申告上の所得を減らせます。 

特に所得税率が上がる課税所得900万円以上の会社員は、大きな節税効果を得ることも可能です。 

⻘⾊申告をしている会社員

年収にかかわらず、青色申告をしている会社員は節税効果が高くなります。 

その理由は、青色申告を行うことで以下のさまざまな優遇制度を利用できるためです。

30万円未満の固定資産は全額経費として計上可能

パソコンなどの10万円以上の固定資産は、原則として、減価償却により数年かけて計上するように定められています。しかし、青色申告の場合は「少額減価償却資産の特例」が利用可能です。 

この特例を使用すると、1つの資産の金額が30万円未満であれば、1年間に合計300万円までその年の経費として「全額」計上できます。 

通常は減価償却を行い数年に分けてしか経費にできない支出を、購入した年にまとめて経費計上できるため、税額計算の基となる課税所得を大きく圧縮でき節税につながります。 

最⼤3年間の⾚字の繰り越しが可能

青色申告をしていれば、不動産投資で出た赤字(純損失)は翌年以降最大3年間にわたって繰り越しが可能です。赤字が出た年だけでなく翌年以降の黒字についても繰り越した赤字分を差し引いて課税所得を減らせるため、長期的な節税につながります。 

⻘⾊申告特別控除を受けられる

青色申告を行うと、最大65万円(e-Tax利用の場合)、または55万円、10万円の青色申告特別控除を受けられます。控除額は所得から直接差し引かれるため、税負担を大きく減らせます。 

※事業的規模の目安は、独立家屋は5棟以上、アパートなどは10室以上。 

⻘⾊事業専従者給与を経費に算⼊できる

青色申告を行い、かつ事業的規模の不動産事業に対して、配偶者や家族を従業員という立場で雇用している場合、事前に届出をすればその給与の全額を経費計上可能です。不動産投資が軌道に乗り事業が拡大した場合には、節税効果がさらに高まります。 

会社員の不動産投資の経費に関するFAQ

最後に、会社員が不動産投資の経費に関して疑問に感じることが多い事項をQ&A形式でまとめました。 

⾞の購⼊費や維持費は経費として計上できる?

国税庁では、事業所得に関する必要経費の定義を、「収入や売上を得るために『直接要した』費用の額」としています。したがって、物件の視察・巡回や打ち合わせなど、自動車が事業に必要な場合は費用計上が可能になると考えられます。 

ただし、不動産投資で自家用車の保有・使用に合理性があると判断されるには、ある程度の事業規模が必要でしょう。また、自家用車と兼用する場合には関連した出費の全額ではなく、事業で使用した割合だけが費用計上可能です。 

【参考】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」2024年4月1日現在 

ゴルフ代は経費として計上できる?

関係者との信頼関係を築き、将来的な商談や取引につなげるなど「不動産投資の業務上として必要である」という正当性があれば、ゴルフのプレー代などを交際費として経費計上できると考えられます。 

経費計上する場合は、以下の内容を記載した書類を保存しておきましょう。 

  • 日付 
  • ゴルフ場の所在地 
  • 参加者の氏名と人数 
  • プレーにかかった金額 

ただし、不動産投資においてゴルフ代は「業務のために直接かかる費用」とは判断しにくく、税務調査の結果、認められない可能性もあります。 

通信費や光熱費の家事按分の適切な割合は?

会社員が不動産投資を行う場合、頭を悩ますのが自宅兼事務所の住居費や水道光熱費、共用の通信費などの「プライベートと事業両方にかかわりがある出費」の計上方法でしょう。 

国税庁では「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額」に限り経費計上できるとしており、その方法を家事按分(かじあんぶん)と呼びます。 

しかし、「実際に不動産投資にどのくらい使ったのか」を判断するのは難しいでしょう。そのため、住居費ならば「事業で使う面積の割合」、水道光熱費なら「事業で使用する時間の割合」など、合理的な根拠を基に「実際にどれだけ事業で使ったか」を説明できる割合で計上するのが一般的です。 

【参考】国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」2024年4月1日現在 

雑費の上限の⽬安は?

交通費や通信費、消耗品費などの主要な勘定科目に当てはまらない、あるいは当てはまっていても少額の出費を処理するために「雑費」が使用されることがあります。 

雑費は便利な勘定科目ですが、使いすぎると出費が把握しにくくなるだけでなく帳簿の透明性が下がり税務調査で内容を詳しく確認されるリスクがあります。 

雑費は一般的な目安とされる経費全体の5〜10%程度に抑え、極力別の勘定科目で仕訳するようにしましょう。 

まとめ

不動産投資においては、経費計上による節税効果が収益にも大きく影響します。 

しかし、やみくもに経費を増やせばいいというものでもありません。節税を意識しすぎるあまり経費計上する出費を増やしすぎると、かえって手元に残る利益が減り運用が難しくなってしまう本末転倒な事態にもなりかねません。 

経費として認められる範囲や必要な費用について正しく理解したうえで、利益を確保できる適切なバランスにコントロールして不動産投資による安定した資産運用を目指しましょう。 

ベルテックスでは不動産にまつわる節税対策セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでもご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。 

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。