2023.10.11

不動産投資のコツ

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の管理費の相場は?管理費を安く抑えすぎるリスクも解説

  • リスク
  • 修繕
  • 賃貸管理

不動産投資では、さまざまな費用が発生するため、それらを考慮した上で収支を見積もる必要があります。管理費は不動産投資で発生する費用の中でも重要ですが、管理費を支払うことでどのようなサービスが受けられるのか、誰に対して支払うお金なのか分かりにくいという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、不動産投資とは切っても切れない関係にある管理費の内容や相場、管理費を安く抑えすぎるリスク、管理会社を選ぶポイントなどについて解説します。

不動産投資における管理費とは

不動産投資において、管理費とは何をするための費用なのでしょうか。 ここでは、不動産投資の管理費を支払うことで受けられるサービスについて説明します。

入居者募集

管理費には、入居者の募集業務が含まれています。入居者の募集業務は、業界用語で「客付け」ともいいます。不動産投資は、入居者があってこそのビジネスです。家賃収入を前提にしている事業だけに入居者がいなければ収支に悪影響が及びます。空室期間が長引くとローンの返済ができなくなり、破綻してしまう可能性もあります。
そのため、常に入居者が付いていることは非常に重要です。多くの不動産投資家が管理会社に期待している部分でもあります。

入居者管理

所有している物件に入居者が付くと、さまざまな手続きや管理が必要になります。入居者が退去する意思表示をした場合は解約の手続きや原状回復のための確認業務、新たに入居してくる場合は入居時の手続きなど、入居者に関する各種手続きも管理費に含まれています。入居者からの要望やクレーム、入居者同士のトラブルなどについても管理会社が対応してくれます。
このような「人」に関する業務や対応は、経験やノウハウが求められる場面も多いため、管理費を支払ってでもプロに委託したいところです。

建物管理

建物や設備などの「モノ」に関する管理業務も管理会社の仕事です。「管理」と聞くと真っ先に思い浮かぶのが建物管理の分野ではないでしょうか。建物の管理は、安全性を確保するために重要です。そのため、建築基準法では、昇降機(エレベーター)や防火設備、建築設備などについて法定点検項目が定められています。法律で定められているということは、特にこれらの部分は建物を安全に利用していく上で重要だということです。

また、建物の共用部分や外観、外構部分などは常に清潔にしておく必要があります。そのための清掃業務も建物管理に含まれていることが一般的です。日常的に行う清掃に加えて、一定周期で高圧洗浄機を用いた本格的な清掃が行われます。

入金管理

入金管理とは、入居者からの家賃回収業務のことです。家賃を支払う方法は多岐にわたりますが、どの方法でも「入居者からの家賃がきちんと入金されているか」「入金されていない場合は督促を行う」など、家賃回収全般の業務を行います。家賃回収に関する業務は、手間がかかるだけではなく、精神的な負担にもなります。このような「お金」に関する業務を委託できるのは、管理委託の大きなメリットの一つです。
なお、家賃滞納は投資家にとって重大なリスク要因となるため、近年では管理会社ではなく家賃の管理を専門とする家賃保証会社を利用するケースも増えています。(家賃保証会社については後述)

管理費の相場はいくら?

管理費は、不動産管理会社に支払う費用です。その相場は、管理会社によってまちまちですが、業界全体の目安としては家賃に対して5%程度が相場とされています。例えば、家賃10万円の物件の場合、管理費は5,000円(10万円×5%)が目安となります。

専業の不動産投資家の中には、自主管理といって自分自身で管理業務をこなす人もいます。しかし、副業で不動産投資に取り組んでいる人や初心者は、管理業務に関するノウハウが少なく、管理業務に割く時間を捻出することも難しいでしょう。
不動産管理会社は、毎月5%程度の管理費で管理業務を代行してくれるので、委託した方が合理的といえます。

一棟と区分ではカバーする範囲が少し異なる

不動産投資には、アパート経営やマンション経営などいくつかの形態があります。また「一棟マンション」「区分マンション」など分類もさまざまです。一棟マンションとは、マンションを一棟丸ごと所有する投資形態、区分マンションはマンション物件を1戸単位で所有する投資形態を指します。

一棟物件の場合は、建物全体の管理を任せつつ入居者やお金に関する管理を一元化して委託することが可能です。しかし、区分マンションの場合は少し事情が異なります。区分マンション投資では、マンションを1戸単位で物件を所有し、マンションには全体の管理を任されている管理会社が存在するため、自身が所有している部屋の管理会社だけを変更することは原則としてできません。
多くのマンションでは、管理組合が結成され、その管理組合から管理会社に業務を委託する形になっているため、マンション全体の管理会社を変更しようと思うと管理組合で多数決をとる必要があります。
しかし、投資家の中には「家賃回収など一部の業務を管理会社に委託したい」という人もいるのではないでしょうか。
その場合は、家賃回収や督促業務だけを家賃保証会社に委託して、それ以外の建物管理などはマンション全体の管理を委託されている管理会社に任せることも可能です。こうした事情を考えると、区分投資よりも一棟投資の方が管理の面では自由度が高いといえます。

管理費の安さだけで依頼すると困ることも

不動産投資家にとって管理費は、毎月発生するコストなので、固定費のような位置付けです。管理費は経費として計上できますし、管理費を支払うことによって得られるサービスは多いため、支払うべきコストなのですが、毎月支払う必要がある費用なので「少しでも安く抑えたい」と思うのは多くの不動産投資家の本音でしょう。先ほど管理費の相場について解説しましたが、相場よりも安い管理費を設定している管理会社も存在します。
安さゆえについ選びたくなるところですが、以下のようなリスクがあることは、念頭に置いておきましょう。

管理がずさんでトラブルやクレームが頻発する

管理費の安さだけで管理会社を選ぶと「管理がずさんでトラブルやクレームが頻発する」といった不利益につながる可能性があるため、注意しましょう。管理業務は、管理会社にとっても人件費や材料費などのコストを伴う作業です。適切な管理費を受け取らないと適切な人員を配置できませんし、サービスの質の低下につながる可能性も否めません。

管理がずさんになり、入居者とのトラブルが発生したり、クレームが頻発したりするようでは管理を委託した意味がありません。入居者の満足度が低下すると退去につながる可能性も高まります。建物や内装の状態が悪いと次の入居者を見つけるのにも苦労するかもしれません。

適切な管理が行き届かず資産価値を低下させてしまう

不動産は、家賃収入を生み出す「金の卵」としての価値だけではなく、資産としての価値を持ちます。資産価値を維持することは、売却時の価格にも影響を及ぼします。新たに投資用の不動産を購入する際に融資を利用する場合は、その審査に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

建物は、適切に管理をしていないと劣化が早く進んでしまいます。劣化が進んでから対処すると、多大なコストを伴う可能性があるため、適切な管理によって少しでも劣化を遅らせることが重要です。管理費を節約しすぎたばかりに適切な管理が行われないと、資産価値の低下によって大きな損失を被るかもしれません。

管理会社が突然倒産してしまって業務が停止する

不動産の管理では、連続性の確保が不可欠です。「ある期間だけ誰も管理をしていない」といった空白期間ができてしまうと、入居者から「給湯器」などという申し出があっても対応することができず、重大な支障をきたします。「いつでも素早く対応する」というサービスがあるからこそ不動産投資家は安心して管理業務を委託できるのです。

安さだけを売りにしているような管理会社は、薄利で管理事業を運営している可能性が高く、財務基盤が脆弱な会社があっても不思議ではありません。突然倒産してしまったり、業務提供が困難な状況に陥ってしまったりすると、不動産管理において重要な連続性を確保できません。
これらのリスクを回避するためにも「管理費が安ければ安いほどよい」と考えるのではなく、サービスの内容や質で委託先を選ぶようにしましょう。

管理会社を選ぶポイント

それでは、どのような視点で管理会社を選ぶべきなのでしょうか。 ここでは、管理会社を選ぶ際に知っておくべき3つのポイントについて説明します。

入居付(客付け)が強いか

入居者の募集業務は、管理会社の重要な業務です。投資家自身に入居者を募集するノウハウがないのであれば、空室期間をいかに短くできるかは管理会社の力量によるところが大きくなります。客付けに強い管理会社を見極める方法として注目したいのは、ネットの活用です。近年では、不動産ポータルサイトなどネット上のサービスを使って部屋探しをする人が増えているからです。

不動産ポータルサイトなどを積極的に活用して物件情報を発信している管理会社は、結果を出しているところが多いので、判断材料の一つとなるでしょう。単に物件情報を登録しているだけではなく写真を多用して物件を魅力的に見せる工夫をしているような管理会社は、客付けが熱心と推測できます。

また管理会社の実績も注目したいポイントです。委託を検討している管理会社は、他の物件の管理も任されている可能性が高いため、「他の管理物件の入居率がどうなのか」について自分で調べるか、担当者に尋ねてみましょう。実績に自信がある管理会社であれば実績を提示してくれるはずです。

賃貸人からの依頼にスピーディに対応してくれるか

賃貸人(入居者)への対応力も管理会社選びの重要なポイントの一つです。入居者からの要望やクレーム、さらには入居者同士のトラブルなど「人」に関する対応は、時間との勝負という側面があります。迅速に対応していれば大きな問題にならないことでも待たせることで感情的になってしまい、問題の解決を遠のかせてしまうケースも少なくありません。

もちろんそのことは、プロの管理会社もよく心得ているため、優良な管理会社はスピード感を重視しています。では、スピーディな対応力がある管理会社かをどうやって見極めればよいのでしょうか。それを知るうえで指標となるのが以下の2点です。

  • 管理会社の支社や拠点が近くにあるか
  • 管理業務に関わっている人員が十分か

特に緊急を要するような対応が必要な場面では、この2点が求められます。

「大手」と「地域密着型」について

管理会社を選ぶ際によく比較されるのが、大手の管理会社と地域密着型の管理会社です。大手の管理会社は、マンションディベロッパーや大手不動産会社の関連会社などが有名で社名にブランド力があるため、安心して任せられる魅力があります。一方で地域密着型の管理会社には魅力がないのかというと、そんなことはありません。

先ほど迅速な対応力の重要性について述べたように地域密着型の管理会社であれば拠点が近くにある可能性が高いでしょう。また地域密着型の管理会社は、そのエリアに根差して営業しているため、悪い評判が立ってしまうととても不利な立場に置かれてしまいかねません。地域から信頼されることが企業としての生命線となるため、誠意ある対応が期待できます。

また地域密着型の管理会社は、当該地域の有力な地主などとのパイプを構築していることが多いため、近隣の不動産に関連する情報がいち早く入ってきやすいことも魅力の一つです。このように管理会社は大手だけにこだわるのではなく地域密着型の管理会社の中から信頼できる業者を探すのも選択肢の一つといえるでしょう。

担当者の対応の良さも重要なポイント

管理会社が法人組織であっても、実際に対応をするのは人です。そのため、担当者の対応の良さは信頼関係を構築する上で重要なポイントといえます。不動産投資家と管理会社は、長いスパンの付き合いになるため、長い付き合いにおいて信頼に足る相手であるかを見極めることは重要です。

滞納に対しては家賃保証会社で対応するケースが多い

賃貸経営において家賃滞納は、大きなリスク要因となります。せっかく入居者が付いても入居者が家賃を支払ってくれないのでは、空室よりも厄介な状況といえます。
賃貸住宅に関する業界団体の公益財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協総合研究所が定期的に調査、発表している「日管協短観」には、賃貸住宅の家賃滞納率に関するデータがあります。これによると2021年の1カ月滞納率は首都圏が0.5%、関西圏が1.7%、その他地域が2.3%でした。2カ月滞納率になるとそれぞれ半分もしくは3分の1程度に減りますが、滞納がゼロになることはなく一定数で発生していることがうかがえます。特に首都圏と関西圏以外の「その他」では、2.3%もの滞納が発生しており、これらの地域で不動産投資を検討している人は意識しておくことが必要です。

滞納に対する督促などについては、管理会社の業務と見なされてきましたが、近年では家賃保証会社を利用するケースが増えています。家賃保証会社は、万が一滞納が発生したときの督促や回収と立て替えが主な業務です。そのためオーナーにとっては、家賃回収できないリスクを回避できるというメリットがあります。

また家賃保証を行う立場となるため、入居の際には家賃保証会社による審査があります。審査の結果によっては保証人を求めるなどのノウハウも有しているため、滞納リスクへの備えとしてこれからは管理会社と家賃保証会社をすみ分けて利用するとよいでしょう。

まとめ

この記事では、不動産投資の管理費の内容や相場、管理費を安く抑えすぎるリスク、管理会社を選ぶポイントなどについて解説しました。

不動産投資では、管理会社が非常に大切な役割を担います。「不動産投資の成功には、優良な管理会社の存在が不可欠で、重要なパートナーである」という認識を持って管理会社選びをすることをおすすめします。また近年は、家賃滞納リスクに備えて専門の家賃保証会社を利用するケースが増えています。

これらの重要な役割を担う業者とうまく付き合い、味方につけていくことが、不動産投資を成功させるために重要なポイントとなります。アパートやマンションなどの入り口付近に管理会社の看板が掲げられている風景を見かけることは多いかもしれません。それらの管理会社は、単に建物の管理や清掃しているだけでなく、幅広い範囲で不動産投資家をサポートしているのです。

ベルテックスでは不動産にまつわるリスクセミナーを開催しています。ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.11

不動産投資のコツ

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の管理費の相場は?管理費を安く抑えすぎるリスクも解説

  • リスク
  • 修繕
  • 賃貸管理

不動産投資では、さまざまな費用が発生するため、それらを考慮した上で収支を見積もる必要があります。管理費は不動産投資で発生する費用の中でも重要ですが、管理費を支払うことでどのようなサービスが受けられるのか、誰に対して支払うお金なのか分かりにくいという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、不動産投資とは切っても切れない関係にある管理費の内容や相場、管理費を安く抑えすぎるリスク、管理会社を選ぶポイントなどについて解説します。

不動産投資における管理費とは

不動産投資において、管理費とは何をするための費用なのでしょうか。 ここでは、不動産投資の管理費を支払うことで受けられるサービスについて説明します。

入居者募集

管理費には、入居者の募集業務が含まれています。入居者の募集業務は、業界用語で「客付け」ともいいます。不動産投資は、入居者があってこそのビジネスです。家賃収入を前提にしている事業だけに入居者がいなければ収支に悪影響が及びます。空室期間が長引くとローンの返済ができなくなり、破綻してしまう可能性もあります。
そのため、常に入居者が付いていることは非常に重要です。多くの不動産投資家が管理会社に期待している部分でもあります。

入居者管理

所有している物件に入居者が付くと、さまざまな手続きや管理が必要になります。入居者が退去する意思表示をした場合は解約の手続きや原状回復のための確認業務、新たに入居してくる場合は入居時の手続きなど、入居者に関する各種手続きも管理費に含まれています。入居者からの要望やクレーム、入居者同士のトラブルなどについても管理会社が対応してくれます。
このような「人」に関する業務や対応は、経験やノウハウが求められる場面も多いため、管理費を支払ってでもプロに委託したいところです。

建物管理

建物や設備などの「モノ」に関する管理業務も管理会社の仕事です。「管理」と聞くと真っ先に思い浮かぶのが建物管理の分野ではないでしょうか。建物の管理は、安全性を確保するために重要です。そのため、建築基準法では、昇降機(エレベーター)や防火設備、建築設備などについて法定点検項目が定められています。法律で定められているということは、特にこれらの部分は建物を安全に利用していく上で重要だということです。

また、建物の共用部分や外観、外構部分などは常に清潔にしておく必要があります。そのための清掃業務も建物管理に含まれていることが一般的です。日常的に行う清掃に加えて、一定周期で高圧洗浄機を用いた本格的な清掃が行われます。

入金管理

入金管理とは、入居者からの家賃回収業務のことです。家賃を支払う方法は多岐にわたりますが、どの方法でも「入居者からの家賃がきちんと入金されているか」「入金されていない場合は督促を行う」など、家賃回収全般の業務を行います。家賃回収に関する業務は、手間がかかるだけではなく、精神的な負担にもなります。このような「お金」に関する業務を委託できるのは、管理委託の大きなメリットの一つです。
なお、家賃滞納は投資家にとって重大なリスク要因となるため、近年では管理会社ではなく家賃の管理を専門とする家賃保証会社を利用するケースも増えています。(家賃保証会社については後述)

管理費の相場はいくら?

管理費は、不動産管理会社に支払う費用です。その相場は、管理会社によってまちまちですが、業界全体の目安としては家賃に対して5%程度が相場とされています。例えば、家賃10万円の物件の場合、管理費は5,000円(10万円×5%)が目安となります。

専業の不動産投資家の中には、自主管理といって自分自身で管理業務をこなす人もいます。しかし、副業で不動産投資に取り組んでいる人や初心者は、管理業務に関するノウハウが少なく、管理業務に割く時間を捻出することも難しいでしょう。
不動産管理会社は、毎月5%程度の管理費で管理業務を代行してくれるので、委託した方が合理的といえます。

一棟と区分ではカバーする範囲が少し異なる

不動産投資には、アパート経営やマンション経営などいくつかの形態があります。また「一棟マンション」「区分マンション」など分類もさまざまです。一棟マンションとは、マンションを一棟丸ごと所有する投資形態、区分マンションはマンション物件を1戸単位で所有する投資形態を指します。

一棟物件の場合は、建物全体の管理を任せつつ入居者やお金に関する管理を一元化して委託することが可能です。しかし、区分マンションの場合は少し事情が異なります。区分マンション投資では、マンションを1戸単位で物件を所有し、マンションには全体の管理を任されている管理会社が存在するため、自身が所有している部屋の管理会社だけを変更することは原則としてできません。
多くのマンションでは、管理組合が結成され、その管理組合から管理会社に業務を委託する形になっているため、マンション全体の管理会社を変更しようと思うと管理組合で多数決をとる必要があります。
しかし、投資家の中には「家賃回収など一部の業務を管理会社に委託したい」という人もいるのではないでしょうか。
その場合は、家賃回収や督促業務だけを家賃保証会社に委託して、それ以外の建物管理などはマンション全体の管理を委託されている管理会社に任せることも可能です。こうした事情を考えると、区分投資よりも一棟投資の方が管理の面では自由度が高いといえます。

管理費の安さだけで依頼すると困ることも

不動産投資家にとって管理費は、毎月発生するコストなので、固定費のような位置付けです。管理費は経費として計上できますし、管理費を支払うことによって得られるサービスは多いため、支払うべきコストなのですが、毎月支払う必要がある費用なので「少しでも安く抑えたい」と思うのは多くの不動産投資家の本音でしょう。先ほど管理費の相場について解説しましたが、相場よりも安い管理費を設定している管理会社も存在します。
安さゆえについ選びたくなるところですが、以下のようなリスクがあることは、念頭に置いておきましょう。

管理がずさんでトラブルやクレームが頻発する

管理費の安さだけで管理会社を選ぶと「管理がずさんでトラブルやクレームが頻発する」といった不利益につながる可能性があるため、注意しましょう。管理業務は、管理会社にとっても人件費や材料費などのコストを伴う作業です。適切な管理費を受け取らないと適切な人員を配置できませんし、サービスの質の低下につながる可能性も否めません。

管理がずさんになり、入居者とのトラブルが発生したり、クレームが頻発したりするようでは管理を委託した意味がありません。入居者の満足度が低下すると退去につながる可能性も高まります。建物や内装の状態が悪いと次の入居者を見つけるのにも苦労するかもしれません。

適切な管理が行き届かず資産価値を低下させてしまう

不動産は、家賃収入を生み出す「金の卵」としての価値だけではなく、資産としての価値を持ちます。資産価値を維持することは、売却時の価格にも影響を及ぼします。新たに投資用の不動産を購入する際に融資を利用する場合は、その審査に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

建物は、適切に管理をしていないと劣化が早く進んでしまいます。劣化が進んでから対処すると、多大なコストを伴う可能性があるため、適切な管理によって少しでも劣化を遅らせることが重要です。管理費を節約しすぎたばかりに適切な管理が行われないと、資産価値の低下によって大きな損失を被るかもしれません。

管理会社が突然倒産してしまって業務が停止する

不動産の管理では、連続性の確保が不可欠です。「ある期間だけ誰も管理をしていない」といった空白期間ができてしまうと、入居者から「給湯器」などという申し出があっても対応することができず、重大な支障をきたします。「いつでも素早く対応する」というサービスがあるからこそ不動産投資家は安心して管理業務を委託できるのです。

安さだけを売りにしているような管理会社は、薄利で管理事業を運営している可能性が高く、財務基盤が脆弱な会社があっても不思議ではありません。突然倒産してしまったり、業務提供が困難な状況に陥ってしまったりすると、不動産管理において重要な連続性を確保できません。
これらのリスクを回避するためにも「管理費が安ければ安いほどよい」と考えるのではなく、サービスの内容や質で委託先を選ぶようにしましょう。

管理会社を選ぶポイント

それでは、どのような視点で管理会社を選ぶべきなのでしょうか。 ここでは、管理会社を選ぶ際に知っておくべき3つのポイントについて説明します。

入居付(客付け)が強いか

入居者の募集業務は、管理会社の重要な業務です。投資家自身に入居者を募集するノウハウがないのであれば、空室期間をいかに短くできるかは管理会社の力量によるところが大きくなります。客付けに強い管理会社を見極める方法として注目したいのは、ネットの活用です。近年では、不動産ポータルサイトなどネット上のサービスを使って部屋探しをする人が増えているからです。

不動産ポータルサイトなどを積極的に活用して物件情報を発信している管理会社は、結果を出しているところが多いので、判断材料の一つとなるでしょう。単に物件情報を登録しているだけではなく写真を多用して物件を魅力的に見せる工夫をしているような管理会社は、客付けが熱心と推測できます。

また管理会社の実績も注目したいポイントです。委託を検討している管理会社は、他の物件の管理も任されている可能性が高いため、「他の管理物件の入居率がどうなのか」について自分で調べるか、担当者に尋ねてみましょう。実績に自信がある管理会社であれば実績を提示してくれるはずです。

賃貸人からの依頼にスピーディに対応してくれるか

賃貸人(入居者)への対応力も管理会社選びの重要なポイントの一つです。入居者からの要望やクレーム、さらには入居者同士のトラブルなど「人」に関する対応は、時間との勝負という側面があります。迅速に対応していれば大きな問題にならないことでも待たせることで感情的になってしまい、問題の解決を遠のかせてしまうケースも少なくありません。

もちろんそのことは、プロの管理会社もよく心得ているため、優良な管理会社はスピード感を重視しています。では、スピーディな対応力がある管理会社かをどうやって見極めればよいのでしょうか。それを知るうえで指標となるのが以下の2点です。

  • 管理会社の支社や拠点が近くにあるか
  • 管理業務に関わっている人員が十分か

特に緊急を要するような対応が必要な場面では、この2点が求められます。

「大手」と「地域密着型」について

管理会社を選ぶ際によく比較されるのが、大手の管理会社と地域密着型の管理会社です。大手の管理会社は、マンションディベロッパーや大手不動産会社の関連会社などが有名で社名にブランド力があるため、安心して任せられる魅力があります。一方で地域密着型の管理会社には魅力がないのかというと、そんなことはありません。

先ほど迅速な対応力の重要性について述べたように地域密着型の管理会社であれば拠点が近くにある可能性が高いでしょう。また地域密着型の管理会社は、そのエリアに根差して営業しているため、悪い評判が立ってしまうととても不利な立場に置かれてしまいかねません。地域から信頼されることが企業としての生命線となるため、誠意ある対応が期待できます。

また地域密着型の管理会社は、当該地域の有力な地主などとのパイプを構築していることが多いため、近隣の不動産に関連する情報がいち早く入ってきやすいことも魅力の一つです。このように管理会社は大手だけにこだわるのではなく地域密着型の管理会社の中から信頼できる業者を探すのも選択肢の一つといえるでしょう。

担当者の対応の良さも重要なポイント

管理会社が法人組織であっても、実際に対応をするのは人です。そのため、担当者の対応の良さは信頼関係を構築する上で重要なポイントといえます。不動産投資家と管理会社は、長いスパンの付き合いになるため、長い付き合いにおいて信頼に足る相手であるかを見極めることは重要です。

滞納に対しては家賃保証会社で対応するケースが多い

賃貸経営において家賃滞納は、大きなリスク要因となります。せっかく入居者が付いても入居者が家賃を支払ってくれないのでは、空室よりも厄介な状況といえます。
賃貸住宅に関する業界団体の公益財団法人日本賃貸住宅管理協会日管協総合研究所が定期的に調査、発表している「日管協短観」には、賃貸住宅の家賃滞納率に関するデータがあります。これによると2021年の1カ月滞納率は首都圏が0.5%、関西圏が1.7%、その他地域が2.3%でした。2カ月滞納率になるとそれぞれ半分もしくは3分の1程度に減りますが、滞納がゼロになることはなく一定数で発生していることがうかがえます。特に首都圏と関西圏以外の「その他」では、2.3%もの滞納が発生しており、これらの地域で不動産投資を検討している人は意識しておくことが必要です。

滞納に対する督促などについては、管理会社の業務と見なされてきましたが、近年では家賃保証会社を利用するケースが増えています。家賃保証会社は、万が一滞納が発生したときの督促や回収と立て替えが主な業務です。そのためオーナーにとっては、家賃回収できないリスクを回避できるというメリットがあります。

また家賃保証を行う立場となるため、入居の際には家賃保証会社による審査があります。審査の結果によっては保証人を求めるなどのノウハウも有しているため、滞納リスクへの備えとしてこれからは管理会社と家賃保証会社をすみ分けて利用するとよいでしょう。

まとめ

この記事では、不動産投資の管理費の内容や相場、管理費を安く抑えすぎるリスク、管理会社を選ぶポイントなどについて解説しました。

不動産投資では、管理会社が非常に大切な役割を担います。「不動産投資の成功には、優良な管理会社の存在が不可欠で、重要なパートナーである」という認識を持って管理会社選びをすることをおすすめします。また近年は、家賃滞納リスクに備えて専門の家賃保証会社を利用するケースが増えています。

これらの重要な役割を担う業者とうまく付き合い、味方につけていくことが、不動産投資を成功させるために重要なポイントとなります。アパートやマンションなどの入り口付近に管理会社の看板が掲げられている風景を見かけることは多いかもしれません。それらの管理会社は、単に建物の管理や清掃しているだけでなく、幅広い範囲で不動産投資家をサポートしているのです。

ベルテックスでは不動産にまつわるリスクセミナーを開催しています。ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。