2024.05.31

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資のレバレッジ効果とは?その威力を具体例で解説

  • はじめ方・基礎知識
  • 不動産投資
  • レバレッジ
  • イールドギャップ

不動産投資には多くのメリットがありますが、その中の一つがレバレッジ効果です。レバレッジ効果のおかげで、多額の自己資金を持っていない人でも不動産投資に参入できる門戸が開かれているのです。また投資効率を高めることで短期間に資産形成を進めることもできます。

この記事では、これから不動産投資を始めたい人に向けて、他の投資におけるレバレッジと不動産投資におけるレバレッジの違いや不動産投資特有のメリットなどについて具体例を交えて解説します。

不動産投資におけるレバレッジ効果とは

まずは不動産投資の大きなメリットとなるレバレッジ効果の基本について説明します。

てこの原理

小さい力で大きなものや重いものを動かすことを可能にするのが「てこの原理」です。レバレッジ効果のレバレッジとは「てこの原理」の「てこ」を意味する言葉です。これを投資に置き換えると「少ない資金で大きな規模の運用ができること」となります。

レバレッジの概念は、不動産投資以外にもあり、株式投資では信用取引により資金に対して約3.3倍の運用が可能です。FXでは、最大25倍(国内業者の場合)のレバレッジをかけた取引ができるので、レバレッジの効果が非常に大きい投資といえるでしょう。投資戦略が成功すれば、少ない資金で大きな利益を得られる可能性があります。

不動産投資におけるレバレッジは、金融機関の融資を利用できることが大きな特徴です。
不動産を購入するための資金の全額を用意しなくても、一部を負担すれば、残りの必要資金を金融機関から調達して不動産を購入できます。融資を利用して不動産を購入しても、購入した物件から得られる家賃収入の全額が投資家のものになります。家賃収入を融資の返済に充当して最終的に完済すれば、晴れて不動産は自分のものとなり、毎月の家賃収入と所有不動産という資産を得ることができます。

レバレッジを活用することにより少ない資金で大きな利益を狙うことができる点は、株やFXも変わりません。しかし、他人資本を活用して自分の資産形成ができるというメリットは、不動産投資特有のものです。

融資を活用して少ない自己資金で不動産投資をする

もちろん融資を利用せず自己資金だけで不動産投資を始めることも可能です。借金をすることに対して抵抗がある人にとっては、安心な方法かもしれません。しかし、融資を受けない場合、不動産を購入するための資金が貯まるまで不動産投資を始めることができず、不動産投資のメリットを享受できるようになるまでに時間がかかります。

家賃収入を得ながら2件目、3件目と不動産投資の規模を拡大していくためには、ある程度のスピード感が必要です。そのためにも融資は強力な武器となります。限られた人生の時間の中でより大きな投資効果を得るには「時間」を無駄にしないことも重要です。

事例:レバレッジを効かせる場合

例えば、不動産投資で自己資金を500万円準備し、利回り5%の物件を購入するとしましょう。

レバレッジを効かせるために金融機関から3,000万円を借り入れると、自己資金と合わせて3,500万円の物件を購入できます。
修繕費などの諸経費を考慮しないものとすると、年間の収益は「3,500万円×5%=175万円」です。ただし、実質的な収入を算出するためには、銀行からの借入した分の利息を差し引く必要があります。
借入金利が2.5%と仮定すると、利息分は「3,000万円×2.5%=75万円」となります。つまり、実質的な年間収益は「175万円-75万円=100万円」になるのです。

ちなみに、3,500万円で購入できる物件は、新築の単身者向けや築浅のファミリー向けマンションなどがあります。また、都心部からは少し離れますが、エリアによって中古戸建という選択肢も視野に入れることができるでしょう。

事例:レバレッジを効かせない場合

同じ条件でレバレッジを効かせないとすると、収益効率はどのように変わるのでしょうか。

この場合、金融機関からの融資を利用しないので、500万円の物件を自己資金でそのまま現金購入することになります。
年間の収益は「500万円×5%=25万円」となり、レバレッジを効かせる場合と比較すると利益は4分の1しかありません。毎月に換算しても、レバレッジを効かせる場合は約8.3万円の収益があるのに対し、効かせない場合には約2万円と極めて少額になります。

また、500万円で購入できる物件は、地方の築古戸建などがありますが、エリア・築年数ともに需要や資産価値の面で心配です。そのため、一般的には都心部から少し離れた、築30年以上の単身向け区分マンションを購入することになるでしょう。不動産投資でレバレッジを効かせない運用は、収益性だけでなく資産価値の面でも不利になりやすいと言えます。
 

不動産投資でレバレッジ効果を得やすい理由

不動産投資においてレバレッジ効果を享受するには、「金融機関からの融資を受けることによって資産の取得・運用を拡大すること」が基本の構造です。このメカニズムを活用することによって、レバレッジによる収益の最大化を実現でき、実質的な利益効率が高まります。

不動産投資がレバレッジ効果を得やすい、つまり「融資を受けやすい」のには、その特性上に見られるさまざまな理由があります。以下で具体的に解説していきましょう。

実物資産なので融資が受けやすい

不動産投資が他の投資と大きく異なる点は、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けられることです。不動産投資で融資が利用できるのは、購入する不動産という実物資産があるからです。株式投資やFXも同じく投資ですが、株やFXの投資資金を借りたくても金融機関が融資をしてくれることはありません。

金融機関は、一般的に不動産投資向けの融資の場合、購入物件を担保にします。万が一融資を受けた投資家が返済困難の状況に陥っても、金融機関は担保から貸金の回収ができるため、リスクヘッジになるからです。

返済原資が家賃収入なので安定しており融資が受けやすい

返済原資を確保しやすいことも金融機関から融資を受けられる理由の一つです。金融機関は、お金を貸す際にどうやって返済するのかを審査します。不動産投資の場合は、購入した不動産から得られる家賃収入が返済原資となるため、返済原資に明確な根拠があります。しかも、不動産投資の家賃収入は、人間が生活をしていくうえで欠かせない「衣食住」のうち「住」に関するもののため、需要が安定しています。
安定した収入があることは審査に通過するための大きなポイントですが、不動産投資の家賃収入がそれを裏付けてくれるというわけです。

会社員は与信があり融資が受けやすい

融資に向けた審査では「安定的な収入があるか」といった返済能力に関する部分が重視されます。また借入申込者の職業や年収などの属性情報も審査の対象です。家賃収入は返済原資とみなされますが、それだけで返済能力に問題なしと判断されるわけではありません。借入申込者の本業の収入の安定性や借り入れ状況なども審査の可否に大きく影響を及ぼします。

審査に通りやすいのは、お金持ちや資産家だけではありません。会社員(給与所得者)も融資の審査に通りやすい職業です。会社員は、毎月の給与収入が安定しているとみなされるからです。収入があることは大前提ですが、その収入が安定していることは融資の審査で有利に働くため、会社員は不動産投資を始めやすい属性といえます。

レバレッジ効果のメリット

レバレッジ効果は、会社員など標準的な年収クラスの人たちにとって大きな意味をもちます。
ここでは、具体的なシミュレーションを交えながらレバレッジ効果のメリットについて説明します。

不動産投資の開始を早め利益を最大化

不動産投資はレバレッジを活用することで、自己資金の必要額を減らし、早期に運用を開始できます。
例えば、購入を検討している物件の価格が1,000万円だとしましょう。レバレッジを効かせない場合には、現金で1,000万円を貯めなくてはなりませんが、その間に物件は売れてしまうでしょう。そもそも1,000万円の現金を貯めることは容易ではありません。
しかし、借入をすれば自己資金が200万円程度しかなくても、物件の購入ができます。コツコツ現金を貯めるよりも、不動産投資のスタート時期を圧倒的に早められます。また、開始時期を早めることによって、早期に複数の所有物件を持つことができ、将来的な利益の最大化にも繋がっていくでしょう。

団体信用生命に加入することによる安心感が得られる

アパートローンの借入では、多くの金融機関が「団体信用生命保険への加入」を融資承認の条件としています。団体信用生命保険へ加入すると、契約者が「死亡」もしくは「重度障害」を患った際、未返済分のローン残高が0円になり返済義務が免除されます。
最近では、団体信用生命保険に特約で「がん保障」などを付帯できるケースも多く、自身の状況に合わせて柔軟に内容を選択できるようになりました。死亡もしくは障害・病気によって働けなくなったとしても、ローン返済の心配をすることなく物件を手に入れられます。
また、同時に家族や相続人に金銭的な負担や迷惑をかけることはありませんので、その点でも安心感が得られるでしょう。
 

投資効率の高さ

不動産投資のレバレッジ効果の最大のメリットは、何といっても投資効率の高さです。
投資に必要な資金の全額ではなく一部を用意するだけで投資が可能なのは、レバレッジ効果の魅力です。投資効率の高さがどの程度なのか、3,000万円で利回り5%の物件を購入した場合を想定して、3通りのシミュレーションで解説していきます。自己資金が100万円、1,000万円、3,000万円という3つのパターンで、それぞれの投資効率を計算してみましょう。

例①:物件価格3,000万円、利回り5%、自己資金100万円

物件価格が3,000万円で自己資金が100万円となるため、レバレッジは30倍(3,000万円÷100万円)です。3つのシミュレーションのなかでは、最もレバレッジの高いパターンとなります。投資効率を知るための指標の一つがCCR(自己資金利回り)です。CCRは「Cash on Cash Return」の略で文字通り自己資金額に対してどれだけの利回りが得られているかを示しています。

CCRの計算式は、以下の通りです。

年間キャッシュフロー÷自己資金額×100=CCR(%)

物件価格が3,000万円で利回りが5%の場合、年間キャッシュフローは以下の計算式で求めることができます。

物件価格3,000万円×利回り5%=年間キャッシュフロー150万円

それでは、先ほどのCCR計算式に当てはめてみましょう。

・年間キャッシュフロー150万円÷自己資金100万円×100=150%(CCR)

自己資金が100万円の場合、CCRは150%になりました。わずか1年で自己資金を回収して、さらに50万円の利益が出ることになります。融資を2,900万円利用しているため、投資効率は最も高く、自己資金の回収期間も3つのシミュレーションの中では最短です。

例②:物件価格3,000万円、利回り5%、自己資金1,000万円

次に同じ条件で自己資金が1,000万円の場合もシミュレーションしてみましょう。必要資金に対して自己資金は3分の1なので、レバレッジは3倍(3,000万円÷1,000万円)です。年間キャッシュフローの金額は、150万円で同じとなるため、CCRを求める計算式は以下のようになります。

・年間キャッシュフロー150万円÷自己資金1,000万円×100=15%(CCR)

CCRは15%となり1年で回収できるのは、自己資金に対して15%です。同じ利回りが続くと仮定すると自己資金を回収するのに約6年半かかります。自己資金が多くなるとレバレッジ効果が低下し、自己資金を回収できるまでの年数が長くなったことが分かります。

例③:物件価格3,000万円、利回り5%、自己資金3,000万円

最後は、自己資金が3,000万円、つまり融資を利用せず全額を自己資金で不動産を購入した場合のシミュレーションです。自己資金と必要資金が同額となるため、あえてレバレッジを提示するなら1倍(3,000万円÷3,000万円)となります。この場合のCCRを求める計算式は以下の通りです。

・年間キャッシュフロー150万円÷自己資金3,000万円×100=5%(CCR)

CCRは5%となり物件の利回りと同じです。レバレッジがかかっていないため、利回りも同じになります。CCRが5%の場合、自己資金を回収するために20年かかります。自己資金が100万円のパターンと比べると30倍以上の差があるため、レバレッジ効果を味方につけることによる威力の大きさを実感できるのではないでしょうか。

レバレッジを効かせることのリスク

 

レバレッジ効果には、多くのメリットがありますが、リスクもあります。投資効率を高めるということはその分リスクも高くなるため、リスクについてもしっかり理解しておくことが大切です。
レバレッジ効果を効かせることによるリスクについて具体的に説明します。

金利上昇リスク

不動産投資では、アパートローン を利用する人の過半数以上が変動金利を選択しているため、金利の上昇で毎月の返済額が増え、キャッシュフローが悪化する可能性があります。特に最近の日本では、低金利時代からの脱却で金利の見直しが指摘されており、より現実味を帯びてきています。
また、これにより借入金利が物件の利回りを上回り、融資を利用したことで収益が下がってしまう「逆レバレッジ」の可能性も懸念されます。
例えば、実質利回りが3.0%の物件で、借入金利が3.5%まで上昇したとしましょう。自己資金500万円とし、3,000万円の借入を「レバレッジ無し」と「レバレッジ有り」 の収益は以下のようになります。

  レバレッジ無し レバレッジ有り
物件価格 500万円 3,500万円
年間の収益 15万円 105万円
年間借入金額 0円 105万円
差引後の利益 15万円 0円

借入をしない場合には年間15万円あった利益が、借入をすることで0円になっています。物件価格や実質利回り、借入金利次第では、差引後の利益がマイナスになるケースもあるため、注意が必要です。

家賃などが減少したときの返済リスク

金融機関から借入をおこなう場合、たとえ空室が発生して家賃収入が0になっても、毎月継続的にローン返済をしなくてはなりません。建物は経費計算で「減価償却」が用いられるように、経年劣化によってその価値は当然に下落していくものです。事前の収益シミュレーションで描いたよりも早い段階で賃料の値下げをせざるを得ず、収益率が下がる可能性があります。

また、建物の価値だけではなく、エリア環境の変化によって周辺一帯の家賃相場が下落する可能性もあります。このような事態が発生して賃料設定に影響を及ぼしたとしても、契約期間中のローン返済は変わらず続きますので、本業の給与所得や貯蓄からの切り崩しが必要です。

レバレッジ効果を得る際は、「空室リスク」や「家賃下落リスク」の影響を特に受けやすいため、長期スパンで計画を立てることが重要です。

イールドギャップを確認して適切なレバレッジを

レバレッジ効果を活かして健全な不動産投資をするために知っておくべきなのがイールドギャップです。イールドギャップが健全であれば不動産投資の健全性や収益性を保てるため、しっかりと理解しておきましょう。

イールドギャップとは

イールドギャップの「イールド」とは、金利、利回りのことです。不動産投資におけるイールドギャップとは、融資の金利と投資利回りの差のことを指します。例えば、融資金利が2%で家賃収入から算出される投資利回りが5%であれば、イールドギャップは3%です。このイールドギャップが不動産投資家の手残りになるため、イールドギャップが高いほど収益性が高いことになります。逆にイールドギャップが低い場合は、収益性が低いと判断できるでしょう。

イールドギャップを算出する際は、表面利回りではなく実質利回りを用いて計算することが大切です。実質利回りは、購入時の経費や年間の諸経費も加味して算出するため、より精度の高い計算が可能です。
なお、家賃収入が減少して投資利回りが低下すると、融資金利と逆転してしまい、イールドギャップがマイナスになることもあります。この場合は、キャッシュフローも赤字になります。

イールドギャップを高くするには

イールドギャップを高くするためには、以下の2つの方法があります。

  • 融資金利を低くする
  • 投資利回りを高くする

投資利回りを高くするには、物件選びや集客力のある不動産会社を選ぶことが基本ですが、融資金利を低くするために工夫できるポイントは多岐にわたります。

融資金利を低くするためには、少しでも有利な条件で審査を受けることが必要です。融資の審査を有利にするためにできることとして、以下の5つの対策があります。

  1. 物件を購入する不動産会社から金融機関の紹介を受ける
    不動産会社の信用を味方につけることができるため、有利な審査が期待できます。
  2. 属性を高くする
    属性とは、職業や年収、勤続年数、家族構成といった「人」に関する情報です。安定性のある職業の方や年収が高い方はプラス評価になります。また勤続年数は長い方が有利です。家族構成は、既婚で子どもがいる人の方が返済に対する責任能力があるとみなされます。属性を簡単に変えることはできませんが、近い将来に転職の予定があるのであれば転職の前に審査を受けた方がよいでしょう。また結婚する予定がある場合は、結婚後に申し込みを検討した方がよいかもしれません。
  3. 自己資金を多めに用意する
    自己資金を多めに用意することで融資による調達分の比率を下げることが可能です。必要な金額を少なくすることで融資を引きやすくなるため、有利な条件も期待できます。
  4. 収益性の高い物件を選ぶ
    不動産投資向けの融資では、申込者本人の信用状態に加えて購入する物件の収益性も重視されます。なぜなら物件の収益性が高ければ返済原資が確保しやすくなるからです。収益性を伝えるための事業計画、収支計画をしっかりと立てて金融機関に提出することで融資の条件を有利にできる可能性があります。
  5. 他の借り入れを整理しておく
    融資の審査では、返済能力が重視されるため、他に借金があるとその分返済能力が低くなると見なされます。消費者金融やカードローンなどの利用がある場合、可能であればそれらを完済しておくことをおすすめします。

融資期間もイールドギャップに深く関係する

イールドギャップは、融資期間とも深い関わりがあります。融資期間を長くすると毎月の返済額が少なくなるため、イールドギャップは拡大します。逆に融資期間が短くなると毎月の返済額が大きくなるため、イールドギャップは縮小します。融資を利用する際には、融資期間も意識して少しでも長い融資期間の確保を目指しましょう。

レバレッジ効果が得られる利回り一覧

レバレッジに対する理解度をさらに深めるために、より具体的なケーススタディを取り入れてみましょう。借入金利1~4%の場合において、融資条件を固定し、それぞれ返済後の年間手残りが自己資金に対してどのような結果となるかを確認していきます 。

借入金利が1 %

  • 物件価格:1億円
  • 自己資金:1,000万円
  • 借入期間:35年(元利均等返済・固定)

上記条件を基準として、利回り3~5%でどれほどの収益が得られるのか計算してみましょう。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 1% 1% 1%
年間返済額 305万円 305万円 305万円
返済後の手残り -5万円 95万円 195万円
自己資金利回り -0.5% 9.5% 19.5%
  • 利回り3%の場合

借入金9,000万円に対して借入金利が1%だった場合、毎年の返済金額は約305万円です。利益は1億円(物件価格)×3%(利回り)で300万円なので、収益としては-5万円、自己資金利回りは-0.5%です。

  • 利回り4%の場合

上記と同様に計算すると、毎月の返済金額は305万円に対して年間収益は400万円なので、返済後の手残りは95万円です。レバレッジを効かせない場合の手残りは1,000万円×4%で40万円ですから、高いレバレッジ効果を得られることになります。

  • 利回り5%の場合

さらに同条件で利回り5%だった場合、毎月の返済額305万円に対して年間収益は500万円、返済後の手残りは195万円です。自己資金利回りは、19.5%と非常に高いレバレッジ効果があるようです。

借入金利が2%

次に借入金利が2%だった場合の試算をしてみましょう。このケースでは、年間返済額は約358万円になります。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 2% 2% 2%
年間返済額 358万円 358万円 358万円
返済後の手残り -58万円 42万円 142万円
自己資金利回り -5.8% 4.2% 14.2%
  • 利回り3%の場合

この場合、差し引きすると収益は-58万円、自己資金利回りは-5.8%です。

  • 利回り4%の場合

さらに同条件で利回り4%とすると、返済後の手残りは42万円、自己資金利回りは4.2%ということになります。借入をすることによって2万円利益が増加し、わずかなレバレッジ効果を得られます。

  • 利回り5%の場合

利回りが5%まで上昇した場合、返済後の手残りは142万円で自己資金利回りは14.2%です。非常に高いレバレッジ効果があるでしょう。

借入金利が3%

次は、借入金利が3%だった場合の試算です。このケースでは、年間返済額は約415万円です。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 3% 3% 3%
年間返済額 415万円 415万円 415万円
返済後の手残り -115万円 -15万円 85万円
自己資金利回り -11.5% -1.5% 8.5%
  • 利回り3%の場合

このケースで収益を差し引きすると利益は-115万円、自己資金利回りは-11.5%とレバレッジのリスクについてより理解が深まる結果となります。

  • 利回り4%の場合

利回りを借入金利より高い4%に設定しても、返済後の手残りは-15万円、自己資金利回りは-1.5%で赤字となってしまいます。

  • 利回り5%の場合

利回りが5%まで上昇すると、返済後の手残りは85万円となり、ようやくレバレッジ効果がない場合の手残り額50万円を上回ることができます。

借入金利が4%

最後は、借入金利が4%だった場合の試算をします。ここまでの高金利はバブル期以降、あまり現実的な数値ではありませんが、高金利が不動産投資に与える影響が理解できる結果でしょう。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 4% 4% 4%
年間返済額 478万円 478万円 478万円
返済後の手残り -178万円 -78万円 22万円
自己資金利回り -17.8% -7.8% 2.2%

 

  • 利回り3%の場合

借入金利が4%となると、年間の返済額はおおよそ478万円です。利回り3%ではマイナスがなんと178万円にまで膨らみ、これではもはや不動産投資として成り立ちません。

  • 利回り4%の場合

利回りを借入金利と同じ4%とした場合においても借入金利の負担分は大きく、年間78万円もの赤字となってしまいます。

  • 利回り5%の場合

利回りが5%まで上昇しても、返済後の手残りはプラスに転じるものの22万円の利益です。レバレッジ効果を活用しない場合の年間の手残りは40万円ですので、いずれにしてもレバレッジ効果は得られません。
 

まとめ

この記事では、不動産投資のレバレッジ効果の概要やメリット、リスクなどについて解説しました。レバレッジ効果は、うまく活用できると非常に大きな威力を発揮します。ただし、リスクが顕在化すると危険な部分もある諸刃の剣です。

レバレッジ効果のメリットとリスクの両方をしっかりと理解した上で、適切な自己資本比率でイールドギャップの拡大と安定化を目指しましょう。それが不動産の健全経営につながり長期間にわたってメリットを享受するためのポイントとなります。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.05.31

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資のレバレッジ効果とは?その威力を具体例で解説

  • はじめ方・基礎知識
  • 不動産投資
  • レバレッジ
  • イールドギャップ

不動産投資には多くのメリットがありますが、その中の一つがレバレッジ効果です。レバレッジ効果のおかげで、多額の自己資金を持っていない人でも不動産投資に参入できる門戸が開かれているのです。また投資効率を高めることで短期間に資産形成を進めることもできます。

この記事では、これから不動産投資を始めたい人に向けて、他の投資におけるレバレッジと不動産投資におけるレバレッジの違いや不動産投資特有のメリットなどについて具体例を交えて解説します。

不動産投資におけるレバレッジ効果とは

まずは不動産投資の大きなメリットとなるレバレッジ効果の基本について説明します。

てこの原理

小さい力で大きなものや重いものを動かすことを可能にするのが「てこの原理」です。レバレッジ効果のレバレッジとは「てこの原理」の「てこ」を意味する言葉です。これを投資に置き換えると「少ない資金で大きな規模の運用ができること」となります。

レバレッジの概念は、不動産投資以外にもあり、株式投資では信用取引により資金に対して約3.3倍の運用が可能です。FXでは、最大25倍(国内業者の場合)のレバレッジをかけた取引ができるので、レバレッジの効果が非常に大きい投資といえるでしょう。投資戦略が成功すれば、少ない資金で大きな利益を得られる可能性があります。

不動産投資におけるレバレッジは、金融機関の融資を利用できることが大きな特徴です。
不動産を購入するための資金の全額を用意しなくても、一部を負担すれば、残りの必要資金を金融機関から調達して不動産を購入できます。融資を利用して不動産を購入しても、購入した物件から得られる家賃収入の全額が投資家のものになります。家賃収入を融資の返済に充当して最終的に完済すれば、晴れて不動産は自分のものとなり、毎月の家賃収入と所有不動産という資産を得ることができます。

レバレッジを活用することにより少ない資金で大きな利益を狙うことができる点は、株やFXも変わりません。しかし、他人資本を活用して自分の資産形成ができるというメリットは、不動産投資特有のものです。

融資を活用して少ない自己資金で不動産投資をする

もちろん融資を利用せず自己資金だけで不動産投資を始めることも可能です。借金をすることに対して抵抗がある人にとっては、安心な方法かもしれません。しかし、融資を受けない場合、不動産を購入するための資金が貯まるまで不動産投資を始めることができず、不動産投資のメリットを享受できるようになるまでに時間がかかります。

家賃収入を得ながら2件目、3件目と不動産投資の規模を拡大していくためには、ある程度のスピード感が必要です。そのためにも融資は強力な武器となります。限られた人生の時間の中でより大きな投資効果を得るには「時間」を無駄にしないことも重要です。

事例:レバレッジを効かせる場合

例えば、不動産投資で自己資金を500万円準備し、利回り5%の物件を購入するとしましょう。

レバレッジを効かせるために金融機関から3,000万円を借り入れると、自己資金と合わせて3,500万円の物件を購入できます。
修繕費などの諸経費を考慮しないものとすると、年間の収益は「3,500万円×5%=175万円」です。ただし、実質的な収入を算出するためには、銀行からの借入した分の利息を差し引く必要があります。
借入金利が2.5%と仮定すると、利息分は「3,000万円×2.5%=75万円」となります。つまり、実質的な年間収益は「175万円-75万円=100万円」になるのです。

ちなみに、3,500万円で購入できる物件は、新築の単身者向けや築浅のファミリー向けマンションなどがあります。また、都心部からは少し離れますが、エリアによって中古戸建という選択肢も視野に入れることができるでしょう。

事例:レバレッジを効かせない場合

同じ条件でレバレッジを効かせないとすると、収益効率はどのように変わるのでしょうか。

この場合、金融機関からの融資を利用しないので、500万円の物件を自己資金でそのまま現金購入することになります。
年間の収益は「500万円×5%=25万円」となり、レバレッジを効かせる場合と比較すると利益は4分の1しかありません。毎月に換算しても、レバレッジを効かせる場合は約8.3万円の収益があるのに対し、効かせない場合には約2万円と極めて少額になります。

また、500万円で購入できる物件は、地方の築古戸建などがありますが、エリア・築年数ともに需要や資産価値の面で心配です。そのため、一般的には都心部から少し離れた、築30年以上の単身向け区分マンションを購入することになるでしょう。不動産投資でレバレッジを効かせない運用は、収益性だけでなく資産価値の面でも不利になりやすいと言えます。
 

不動産投資でレバレッジ効果を得やすい理由

不動産投資においてレバレッジ効果を享受するには、「金融機関からの融資を受けることによって資産の取得・運用を拡大すること」が基本の構造です。このメカニズムを活用することによって、レバレッジによる収益の最大化を実現でき、実質的な利益効率が高まります。

不動産投資がレバレッジ効果を得やすい、つまり「融資を受けやすい」のには、その特性上に見られるさまざまな理由があります。以下で具体的に解説していきましょう。

実物資産なので融資が受けやすい

不動産投資が他の投資と大きく異なる点は、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けられることです。不動産投資で融資が利用できるのは、購入する不動産という実物資産があるからです。株式投資やFXも同じく投資ですが、株やFXの投資資金を借りたくても金融機関が融資をしてくれることはありません。

金融機関は、一般的に不動産投資向けの融資の場合、購入物件を担保にします。万が一融資を受けた投資家が返済困難の状況に陥っても、金融機関は担保から貸金の回収ができるため、リスクヘッジになるからです。

返済原資が家賃収入なので安定しており融資が受けやすい

返済原資を確保しやすいことも金融機関から融資を受けられる理由の一つです。金融機関は、お金を貸す際にどうやって返済するのかを審査します。不動産投資の場合は、購入した不動産から得られる家賃収入が返済原資となるため、返済原資に明確な根拠があります。しかも、不動産投資の家賃収入は、人間が生活をしていくうえで欠かせない「衣食住」のうち「住」に関するもののため、需要が安定しています。
安定した収入があることは審査に通過するための大きなポイントですが、不動産投資の家賃収入がそれを裏付けてくれるというわけです。

会社員は与信があり融資が受けやすい

融資に向けた審査では「安定的な収入があるか」といった返済能力に関する部分が重視されます。また借入申込者の職業や年収などの属性情報も審査の対象です。家賃収入は返済原資とみなされますが、それだけで返済能力に問題なしと判断されるわけではありません。借入申込者の本業の収入の安定性や借り入れ状況なども審査の可否に大きく影響を及ぼします。

審査に通りやすいのは、お金持ちや資産家だけではありません。会社員(給与所得者)も融資の審査に通りやすい職業です。会社員は、毎月の給与収入が安定しているとみなされるからです。収入があることは大前提ですが、その収入が安定していることは融資の審査で有利に働くため、会社員は不動産投資を始めやすい属性といえます。

レバレッジ効果のメリット

レバレッジ効果は、会社員など標準的な年収クラスの人たちにとって大きな意味をもちます。
ここでは、具体的なシミュレーションを交えながらレバレッジ効果のメリットについて説明します。

不動産投資の開始を早め利益を最大化

不動産投資はレバレッジを活用することで、自己資金の必要額を減らし、早期に運用を開始できます。
例えば、購入を検討している物件の価格が1,000万円だとしましょう。レバレッジを効かせない場合には、現金で1,000万円を貯めなくてはなりませんが、その間に物件は売れてしまうでしょう。そもそも1,000万円の現金を貯めることは容易ではありません。
しかし、借入をすれば自己資金が200万円程度しかなくても、物件の購入ができます。コツコツ現金を貯めるよりも、不動産投資のスタート時期を圧倒的に早められます。また、開始時期を早めることによって、早期に複数の所有物件を持つことができ、将来的な利益の最大化にも繋がっていくでしょう。

団体信用生命に加入することによる安心感が得られる

アパートローンの借入では、多くの金融機関が「団体信用生命保険への加入」を融資承認の条件としています。団体信用生命保険へ加入すると、契約者が「死亡」もしくは「重度障害」を患った際、未返済分のローン残高が0円になり返済義務が免除されます。
最近では、団体信用生命保険に特約で「がん保障」などを付帯できるケースも多く、自身の状況に合わせて柔軟に内容を選択できるようになりました。死亡もしくは障害・病気によって働けなくなったとしても、ローン返済の心配をすることなく物件を手に入れられます。
また、同時に家族や相続人に金銭的な負担や迷惑をかけることはありませんので、その点でも安心感が得られるでしょう。
 

投資効率の高さ

不動産投資のレバレッジ効果の最大のメリットは、何といっても投資効率の高さです。
投資に必要な資金の全額ではなく一部を用意するだけで投資が可能なのは、レバレッジ効果の魅力です。投資効率の高さがどの程度なのか、3,000万円で利回り5%の物件を購入した場合を想定して、3通りのシミュレーションで解説していきます。自己資金が100万円、1,000万円、3,000万円という3つのパターンで、それぞれの投資効率を計算してみましょう。

例①:物件価格3,000万円、利回り5%、自己資金100万円

物件価格が3,000万円で自己資金が100万円となるため、レバレッジは30倍(3,000万円÷100万円)です。3つのシミュレーションのなかでは、最もレバレッジの高いパターンとなります。投資効率を知るための指標の一つがCCR(自己資金利回り)です。CCRは「Cash on Cash Return」の略で文字通り自己資金額に対してどれだけの利回りが得られているかを示しています。

CCRの計算式は、以下の通りです。

年間キャッシュフロー÷自己資金額×100=CCR(%)

物件価格が3,000万円で利回りが5%の場合、年間キャッシュフローは以下の計算式で求めることができます。

物件価格3,000万円×利回り5%=年間キャッシュフロー150万円

それでは、先ほどのCCR計算式に当てはめてみましょう。

・年間キャッシュフロー150万円÷自己資金100万円×100=150%(CCR)

自己資金が100万円の場合、CCRは150%になりました。わずか1年で自己資金を回収して、さらに50万円の利益が出ることになります。融資を2,900万円利用しているため、投資効率は最も高く、自己資金の回収期間も3つのシミュレーションの中では最短です。

例②:物件価格3,000万円、利回り5%、自己資金1,000万円

次に同じ条件で自己資金が1,000万円の場合もシミュレーションしてみましょう。必要資金に対して自己資金は3分の1なので、レバレッジは3倍(3,000万円÷1,000万円)です。年間キャッシュフローの金額は、150万円で同じとなるため、CCRを求める計算式は以下のようになります。

・年間キャッシュフロー150万円÷自己資金1,000万円×100=15%(CCR)

CCRは15%となり1年で回収できるのは、自己資金に対して15%です。同じ利回りが続くと仮定すると自己資金を回収するのに約6年半かかります。自己資金が多くなるとレバレッジ効果が低下し、自己資金を回収できるまでの年数が長くなったことが分かります。

例③:物件価格3,000万円、利回り5%、自己資金3,000万円

最後は、自己資金が3,000万円、つまり融資を利用せず全額を自己資金で不動産を購入した場合のシミュレーションです。自己資金と必要資金が同額となるため、あえてレバレッジを提示するなら1倍(3,000万円÷3,000万円)となります。この場合のCCRを求める計算式は以下の通りです。

・年間キャッシュフロー150万円÷自己資金3,000万円×100=5%(CCR)

CCRは5%となり物件の利回りと同じです。レバレッジがかかっていないため、利回りも同じになります。CCRが5%の場合、自己資金を回収するために20年かかります。自己資金が100万円のパターンと比べると30倍以上の差があるため、レバレッジ効果を味方につけることによる威力の大きさを実感できるのではないでしょうか。

レバレッジを効かせることのリスク

 

レバレッジ効果には、多くのメリットがありますが、リスクもあります。投資効率を高めるということはその分リスクも高くなるため、リスクについてもしっかり理解しておくことが大切です。
レバレッジ効果を効かせることによるリスクについて具体的に説明します。

金利上昇リスク

不動産投資では、アパートローン を利用する人の過半数以上が変動金利を選択しているため、金利の上昇で毎月の返済額が増え、キャッシュフローが悪化する可能性があります。特に最近の日本では、低金利時代からの脱却で金利の見直しが指摘されており、より現実味を帯びてきています。
また、これにより借入金利が物件の利回りを上回り、融資を利用したことで収益が下がってしまう「逆レバレッジ」の可能性も懸念されます。
例えば、実質利回りが3.0%の物件で、借入金利が3.5%まで上昇したとしましょう。自己資金500万円とし、3,000万円の借入を「レバレッジ無し」と「レバレッジ有り」 の収益は以下のようになります。

  レバレッジ無し レバレッジ有り
物件価格 500万円 3,500万円
年間の収益 15万円 105万円
年間借入金額 0円 105万円
差引後の利益 15万円 0円

借入をしない場合には年間15万円あった利益が、借入をすることで0円になっています。物件価格や実質利回り、借入金利次第では、差引後の利益がマイナスになるケースもあるため、注意が必要です。

家賃などが減少したときの返済リスク

金融機関から借入をおこなう場合、たとえ空室が発生して家賃収入が0になっても、毎月継続的にローン返済をしなくてはなりません。建物は経費計算で「減価償却」が用いられるように、経年劣化によってその価値は当然に下落していくものです。事前の収益シミュレーションで描いたよりも早い段階で賃料の値下げをせざるを得ず、収益率が下がる可能性があります。

また、建物の価値だけではなく、エリア環境の変化によって周辺一帯の家賃相場が下落する可能性もあります。このような事態が発生して賃料設定に影響を及ぼしたとしても、契約期間中のローン返済は変わらず続きますので、本業の給与所得や貯蓄からの切り崩しが必要です。

レバレッジ効果を得る際は、「空室リスク」や「家賃下落リスク」の影響を特に受けやすいため、長期スパンで計画を立てることが重要です。

イールドギャップを確認して適切なレバレッジを

レバレッジ効果を活かして健全な不動産投資をするために知っておくべきなのがイールドギャップです。イールドギャップが健全であれば不動産投資の健全性や収益性を保てるため、しっかりと理解しておきましょう。

イールドギャップとは

イールドギャップの「イールド」とは、金利、利回りのことです。不動産投資におけるイールドギャップとは、融資の金利と投資利回りの差のことを指します。例えば、融資金利が2%で家賃収入から算出される投資利回りが5%であれば、イールドギャップは3%です。このイールドギャップが不動産投資家の手残りになるため、イールドギャップが高いほど収益性が高いことになります。逆にイールドギャップが低い場合は、収益性が低いと判断できるでしょう。

イールドギャップを算出する際は、表面利回りではなく実質利回りを用いて計算することが大切です。実質利回りは、購入時の経費や年間の諸経費も加味して算出するため、より精度の高い計算が可能です。
なお、家賃収入が減少して投資利回りが低下すると、融資金利と逆転してしまい、イールドギャップがマイナスになることもあります。この場合は、キャッシュフローも赤字になります。

イールドギャップを高くするには

イールドギャップを高くするためには、以下の2つの方法があります。

  • 融資金利を低くする
  • 投資利回りを高くする

投資利回りを高くするには、物件選びや集客力のある不動産会社を選ぶことが基本ですが、融資金利を低くするために工夫できるポイントは多岐にわたります。

融資金利を低くするためには、少しでも有利な条件で審査を受けることが必要です。融資の審査を有利にするためにできることとして、以下の5つの対策があります。

  1. 物件を購入する不動産会社から金融機関の紹介を受ける
    不動産会社の信用を味方につけることができるため、有利な審査が期待できます。
  2. 属性を高くする
    属性とは、職業や年収、勤続年数、家族構成といった「人」に関する情報です。安定性のある職業の方や年収が高い方はプラス評価になります。また勤続年数は長い方が有利です。家族構成は、既婚で子どもがいる人の方が返済に対する責任能力があるとみなされます。属性を簡単に変えることはできませんが、近い将来に転職の予定があるのであれば転職の前に審査を受けた方がよいでしょう。また結婚する予定がある場合は、結婚後に申し込みを検討した方がよいかもしれません。
  3. 自己資金を多めに用意する
    自己資金を多めに用意することで融資による調達分の比率を下げることが可能です。必要な金額を少なくすることで融資を引きやすくなるため、有利な条件も期待できます。
  4. 収益性の高い物件を選ぶ
    不動産投資向けの融資では、申込者本人の信用状態に加えて購入する物件の収益性も重視されます。なぜなら物件の収益性が高ければ返済原資が確保しやすくなるからです。収益性を伝えるための事業計画、収支計画をしっかりと立てて金融機関に提出することで融資の条件を有利にできる可能性があります。
  5. 他の借り入れを整理しておく
    融資の審査では、返済能力が重視されるため、他に借金があるとその分返済能力が低くなると見なされます。消費者金融やカードローンなどの利用がある場合、可能であればそれらを完済しておくことをおすすめします。

融資期間もイールドギャップに深く関係する

イールドギャップは、融資期間とも深い関わりがあります。融資期間を長くすると毎月の返済額が少なくなるため、イールドギャップは拡大します。逆に融資期間が短くなると毎月の返済額が大きくなるため、イールドギャップは縮小します。融資を利用する際には、融資期間も意識して少しでも長い融資期間の確保を目指しましょう。

レバレッジ効果が得られる利回り一覧

レバレッジに対する理解度をさらに深めるために、より具体的なケーススタディを取り入れてみましょう。借入金利1~4%の場合において、融資条件を固定し、それぞれ返済後の年間手残りが自己資金に対してどのような結果となるかを確認していきます 。

借入金利が1 %

  • 物件価格:1億円
  • 自己資金:1,000万円
  • 借入期間:35年(元利均等返済・固定)

上記条件を基準として、利回り3~5%でどれほどの収益が得られるのか計算してみましょう。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 1% 1% 1%
年間返済額 305万円 305万円 305万円
返済後の手残り -5万円 95万円 195万円
自己資金利回り -0.5% 9.5% 19.5%
  • 利回り3%の場合

借入金9,000万円に対して借入金利が1%だった場合、毎年の返済金額は約305万円です。利益は1億円(物件価格)×3%(利回り)で300万円なので、収益としては-5万円、自己資金利回りは-0.5%です。

  • 利回り4%の場合

上記と同様に計算すると、毎月の返済金額は305万円に対して年間収益は400万円なので、返済後の手残りは95万円です。レバレッジを効かせない場合の手残りは1,000万円×4%で40万円ですから、高いレバレッジ効果を得られることになります。

  • 利回り5%の場合

さらに同条件で利回り5%だった場合、毎月の返済額305万円に対して年間収益は500万円、返済後の手残りは195万円です。自己資金利回りは、19.5%と非常に高いレバレッジ効果があるようです。

借入金利が2%

次に借入金利が2%だった場合の試算をしてみましょう。このケースでは、年間返済額は約358万円になります。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 2% 2% 2%
年間返済額 358万円 358万円 358万円
返済後の手残り -58万円 42万円 142万円
自己資金利回り -5.8% 4.2% 14.2%
  • 利回り3%の場合

この場合、差し引きすると収益は-58万円、自己資金利回りは-5.8%です。

  • 利回り4%の場合

さらに同条件で利回り4%とすると、返済後の手残りは42万円、自己資金利回りは4.2%ということになります。借入をすることによって2万円利益が増加し、わずかなレバレッジ効果を得られます。

  • 利回り5%の場合

利回りが5%まで上昇した場合、返済後の手残りは142万円で自己資金利回りは14.2%です。非常に高いレバレッジ効果があるでしょう。

借入金利が3%

次は、借入金利が3%だった場合の試算です。このケースでは、年間返済額は約415万円です。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 3% 3% 3%
年間返済額 415万円 415万円 415万円
返済後の手残り -115万円 -15万円 85万円
自己資金利回り -11.5% -1.5% 8.5%
  • 利回り3%の場合

このケースで収益を差し引きすると利益は-115万円、自己資金利回りは-11.5%とレバレッジのリスクについてより理解が深まる結果となります。

  • 利回り4%の場合

利回りを借入金利より高い4%に設定しても、返済後の手残りは-15万円、自己資金利回りは-1.5%で赤字となってしまいます。

  • 利回り5%の場合

利回りが5%まで上昇すると、返済後の手残りは85万円となり、ようやくレバレッジ効果がない場合の手残り額50万円を上回ることができます。

借入金利が4%

最後は、借入金利が4%だった場合の試算をします。ここまでの高金利はバブル期以降、あまり現実的な数値ではありませんが、高金利が不動産投資に与える影響が理解できる結果でしょう。

利回り 3% 4% 5%
自己資金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
借入金 9,000万円 9,000万円 9,000万円
物件価格 1億円 1億円 1億円
年間収益 300万円 400万円 500万円
借入金利 4% 4% 4%
年間返済額 478万円 478万円 478万円
返済後の手残り -178万円 -78万円 22万円
自己資金利回り -17.8% -7.8% 2.2%

 

  • 利回り3%の場合

借入金利が4%となると、年間の返済額はおおよそ478万円です。利回り3%ではマイナスがなんと178万円にまで膨らみ、これではもはや不動産投資として成り立ちません。

  • 利回り4%の場合

利回りを借入金利と同じ4%とした場合においても借入金利の負担分は大きく、年間78万円もの赤字となってしまいます。

  • 利回り5%の場合

利回りが5%まで上昇しても、返済後の手残りはプラスに転じるものの22万円の利益です。レバレッジ効果を活用しない場合の年間の手残りは40万円ですので、いずれにしてもレバレッジ効果は得られません。
 

まとめ

この記事では、不動産投資のレバレッジ効果の概要やメリット、リスクなどについて解説しました。レバレッジ効果は、うまく活用できると非常に大きな威力を発揮します。ただし、リスクが顕在化すると危険な部分もある諸刃の剣です。

レバレッジ効果のメリットとリスクの両方をしっかりと理解した上で、適切な自己資本比率でイールドギャップの拡大と安定化を目指しましょう。それが不動産の健全経営につながり長期間にわたってメリットを享受するためのポイントとなります。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。