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2024.11.11
ベルテックスコラム事務局
法定耐用年数とは?物理的耐用年数や寿命との違いも解説
- 節税・税金
- 減価償却
不動産投資を行っていると、毎年の確定申告で「法定耐用年数」という言葉を目にします。名前から「法律で決められている年数なのだろう」と想像はついても、具体的にどのようなものなのかは理解できていない方も多いのではないでしょうか。
建物の耐用年数には「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的残存耐用年数」の3つの考え方が存在し、それぞれ使う場面が異なります。
この記事では、法定耐用年数のことを詳しく知りたい不動産投資家の方、不動産投資を勉強中の方に向け、3つの耐用年数の違いや減価償却の考え方などについて解説します。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とは、ある資産について通常の管理をしていた場合に、新品の状態から継続して使用できる年数として、国が法律で定めたもののことです。建物であれば、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造といった構造、住宅・店舗・事務所といった用途ごとに、耐用年数が定められています。
法定耐用年数が定められている根底には、資産は経年劣化によって価値が低下するという考え方があります。そのため、頑丈な構造で、躯体に負担のない用途の建物ほど、法定耐用年数は長めの設定です。
減価償却費を計算するための年数
確定申告で法定耐用年数が登場するのは、減価償却費を計算するために必要不可欠だからです。
減価償却とは、減価償却資産の取得にかかった費用を取得時に一括で経費計上するのではなく、所定の年数に基づいて配分して経費計上する会計処理のことをいいます。建物も減価償却の対象資産(減価償却資産といいます)であるため、取得費用を減価償却費として各年に配分して経費計上することになります。
この際、減価償却の根拠となる「所定の年数」というのが法定耐用年数に該当します。つまり、法定耐用年数とは、減価償却費を計算するために定められた年数といえるでしょう。
耐久性や寿命との違い
建物に限らず、世の中の「物」には耐久性や寿命が存在します。耐久性、寿命と法定耐用年数はどのように違うのでしょうか。
耐久性(耐久年数)は、商品を製造したメーカーによる性能試験やシミュレーションの結果、「これくらいの年数であれば支障なく使えるだろう」と判断した基準です。あくまでもメーカー側の独自判断に基づく数値であり、法定耐用年数のような法的な根拠はありません。
寿命は、文字どおり「対象となる製品が劣化して使えなくなる期間」のことです。法定耐用年数や耐久年数を迎えたからといって、必ずしもその製品が使えなくなるわけではありません。法定耐用年数は会計処理のために設定された数字であり、一般的な寿命を指すものではないのです。
実際、法定耐用年数を迎えた中古物件であっても、リフォームやリノベーションを施すことで問題なく使えている建物は数多くあります。
物理的耐用年数や経済的残存耐用年数との違い
続いて、3つの耐用年数の特徴と違いを解説しましょう。それぞれの特徴を簡単にまとめると次のとおりです。
法定耐用年数 |
会計処理における減価償却費を計算するため、法律で定められた耐用年数。 |
物理的耐用年数 |
建物の構造、建物に使われている建築資材や設備などが物理的に耐えられる年数。 |
経済的残存耐用年数 |
建物の経済的な価値がゼロになるまでの期間を表す年数。 |
3つの耐用年数には上のような性質の違いがあり、使うシーンも異なります。法定耐用年数は先述のとおり、税務や会計の処理で必要となる年数です。
これに対し、物理的耐用年数は物件の管理や運用の場面で考えなくてはならない年数であり、経済的残存耐用年数は建物の鑑定価格を算出するのに必要となる年数です。
資産別の法定耐用年数
法定耐用年数は、構造や用途によって個別に定められていると紹介しました。具体的にどれくらいの年数なのか、一覧で見ていきましょう。ここでは代表的なものを抜粋して紹介します。
建物の法定耐用年数
構造 |
用途 |
耐用年数(年) |
木造 |
事務所 |
24 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 |
事務所 |
50 |
鉄骨造 |
・事務所
|
|
なお、土地は経年劣化せず減価償却資産に当たらないため、法定耐用年数は定められていません。
建物附属設備の耐用年数
建物に付属する設備について、建物本体とは別に耐用年数が定められているものもあります。
設備の種類 | 細目 | 耐用年数(年) |
アーケード・日よけ設備 |
主として金属製のもの |
15 |
店用簡易装備 |
|
3 |
電気設備(照明設備を含む) |
蓄電池電源設備 |
6 |
給排水・衛生設備、ガス設備 |
|
15 |
法定耐用年数と節税の関係
法定耐用年数によって減価償却費を計上できる金額と年数が変わることから、不動産の取得時にその物件の法定耐用年数が何年なのかによって、期待できる節税効果も変わってきます。
そもそも減価償却費を計上することが、なぜ節税につながるのか簡単に解説しましょう。
減価償却期間中は、毎年減価償却費を経費として計上できるため、その年の不動産所得を圧縮することができます。所得にはさまざまな種類がありますが、不動産所得と給与所得は損益通算が可能です。減価償却費の計上によって不動産所得が赤字となれば、その年の給与所得による利益と通算することができ、所得税や住民税の課税所得を減らせるのです。
ただし、減価償却費を利用した節税は、厳密にいうと「減税」ではなく「繰り延べ」に過ぎません。一方で、一定以上の所得がある場合は、不動産を所有し、売却することで節税効果を得られる場合があります。
不動産売却時には、譲渡所得に対して「譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)」がかかります。
課税対象となる譲渡所得の計算式は次のとおりです。
- 譲渡所得 = 物件売却価格 − 物件取得費 – 譲渡にかかった費用
このとき「物件取得費」は簿価で計算されます。簿価とは、毎年計上した減価償却費を差し引いた後の建物価格のことです。つまり、減価償却費を計上した分だけ売却時の譲渡所得が増え、譲渡所得税が高くなります。言い換えれば、運用中に節税した分だけ、売却時に納める税金が増えるということです。
とはいえ、譲渡所得にかかる税率は、所有期間5年以内で39%(所得税30%+住民税9%)、所有期間5年超で20%(所得税15%+住民税5%)です(復興特別所得税を除く)。
対して、通常の所得税+住民税を納める場合の税率は、課税所得695万円〜900万円未満で33%、900万円〜1,800万円未満で43%、1,800万円〜4,000万円未満で53%ですから、一定以上の所得がある方は譲渡所得で納めたほうが節税になるといえます。
減価償却が節税になる仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【おすすめ関連記事】不動産投資の減価償却とは?計算方法と税金が安くなる仕組みを解説
耐用年数が短い方が1年に計上できる減価償却費は大きい
同じ価格で物件を購入する場合、残存耐用年数の短い物件の方が、1年あたりに計上できる減価償却費は大きくなります。
たとえば、木造アパートを投資物件として購入するケースで考えてみましょう。物件Aは新築、物件Bは築15年の中古物件、いずれも建物部分の価格は4,000万円とします。
木造アパートの法定耐用年数は22年なので、新築の物件Aの耐用年数は22年。減価償却費の計算で用いる償却率は0.046となります。新築物件の減価償却費は「建物価格×償却率」で計算できるため、4,000万円×0.046=184万円です。
これに対し、中古物件の耐用年数は「(法定耐用年数 − 築年数)+築年数×20%」で計算します。物件Bは築15年なので「(22年–15年)+15年×20%=10年」です。耐用年数10年のときの償却率は0.100なので、物件Bの減価償却費は4,000万円×0.100=400万円となります。
上記のとおり、築年数が古い中古物件では、短期集中型で課税所得を大きく圧縮することが可能です。
減価償却期間が終わると経費計上できない
当然のことながら、減価償却期間が終わると減価償却費を経費計上することができなくなります。そのため、減価償却費を大きく計上していた場合、終了とともに税負担が急増し、資産運用全体で見たときの収支が悪化したと感じる場合もあるでしょう。
特に節税目的で不動産投資を行うケースでは、償却期間終了にあわせて売却するなど、対策を考えておきたいところです。
定額法と定率法
減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があります。
ここまで紹介してきたのは「定額法」です。法定耐用年数に応じた減価償却期間中、毎年定額の減価償却費を計上します。
一方の「定率法」では、耐用年数に応じて定められた一定の償却率を用います。減価償却が済んでいない残高に対して償却率をかけることで、その年の減価償却費を算出。年を経るごとに未償却の残高が減っていくので、経費計上できる減価償却費も低減していきます。
定額法の計算方法と適用対象
定額法で減価償却する場合、先ほど紹介したとおり、建物の取得金額に償却率を掛けあわせて減価償却費を算出します。これを計算式で表すと次のとおりです。
1年ごとの減価償却費 = 建物の取得金額 × 償却率(定額法のもの)
個人事業主が減価償却するときは、原則として定額法を使うよう定められています。ただし、「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することで、償却方法を変更できる可能性もあります。
また、新たに取得する建物および建物付属設備に関しては、法人・個人を問わず定額法を用いるのが決まりです。
定率法の計算方法と適用対象
一方の定率法を選択した場合、次の計算式で減価償却費を求めることができます。
1年ごとの減価償却費 = 未償却残高(減価償却が済んでいない価格)× 償却率(定率法のもの)
法人における減価償却では定率法を用いるのが基本ですが、上で説明した建物、建物付属設備に加え、構築物、ソフトウェアに関しては定額法を用いる決まりです。
中古物件の法定耐用年数
新築物件の場合、法定耐用年数をそのまま減価償却の計算に使用できますが、中古物件ではどのように考えればよいのでしょうか。中古物件における法定耐用年数の計算方法や計算事例を紹介します。
中古物件の法定耐用年数の計算方法
中古物件の法定耐用年数は、その物件の築年数が法定耐用年数を超過しているかどうかで計算方法が変わってきます。それぞれの計算式をまとめると以下のとおりです
築年数が法定耐用年数以内 |
耐用年数=(法定耐用年数 − 築年数)+築年数×20% |
築年数が法定耐用年数超 |
耐用年数= 法定耐用年数×20% |
上記の計算方法は「簡便法」と呼ばれるものであり、使用可能期間を見積もることが困難な場合に使用することが認められています。建物や建物付属設備の使用可能期間を正確に見積もるのは困難なため、簡便法で計算するのが一般的です。
計算した結果、1年未満の端数が生じた場合には切り捨て、2年未満となった場合には「2年」を適用します。
中古物件の法定耐用年数の計算事例
それでは、実際に中古物件の耐用年数を計算してみましょう。
まず、築20年の鉄筋コンクリート造マンション(法定耐用年数47年)の一室を取得したとき、耐用年数はどれくらいになるのでしょうか。この場合、築年数が法定耐用年数に達していないので「(法定耐用年数 − 築年数)+築年数×20%」より、「(47年–20年)+20年×20%」で「31年」となります。
では、築50年の鉄筋コンクリート造マンションを取得したケースではどうでしょうか。築年数が法定耐用年数を超過している場合「法定耐用年数×20%」で計算するので、1年未満の端数を切り捨てて「9年」となります。
なお、築10年の木造アパート(法定耐用年数22年)であれば、耐用年数は「(22年 – 10年)+10年×20%」で「14年」です。築30年を超える木造アパートなら1年未満の端数を切り捨てて「4年」となります。
資本的支出と法定耐用年数
不動産投資を行っていると、所有物件や付属設備の交換・リフォームなどを実施することがあります。このときにかかる費用は「資本的支出」と「修繕費」に分けられます。前者の資本的支出に該当する改修を行った場合、あらためて減価償却費を経費計上することが可能です。
資本的支出とはどのようなものなのか、資本的支出をしたときの法定耐用年数や減価償却費はどのように考えればよいのか、ポイントを解説します。
資本的支出とは
資本的支出について、国税庁は次のような見解を示しています。
“一般に修繕費といわれるものでも資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価値を高めたりする部分の支出は資本的支出とされ、修繕費とは区別されます。資本的支出とされた金額は、事業所得や不動産所得の計算上、減価償却の方法により各年分の必要経費に算入します”
要するに、資産価値や耐久性を向上する効果のある修理や改良のためにかかる費用が、「資本的支出」ということです。具体的には、大規模な間取り変更、水回りの最新設備への交換やグレードアップなどが挙げられます。
一方、外壁塗装や網戸の張り替え、水回りの修理など、原状回復のために行う修繕に関しては「修繕費」の扱いとなり、資本的支出とする必要はありません。
資本的支出に該当する場合、資本的支出の対象となる減価償却資産と同じ種類の資産を新たに取得したものとして、減価償却を行う必要があります。
不動産投資における修繕費と資本的支出の判断基準については、こちらの記事を参照してください。
【おすすめ関連記事】不動産投資の修繕費と資本的支出の違いがわかる判断基準とフローチャート
資本的支出をした場合の減価償却費の計算例
築20年の鉄筋コンクリート造のマンション(法定耐用年数47年)の一室(時価1,600万円)を所有していて、800万円でフルリノベーションしたケースを考えてみます。このとき、800万円はすべてバリューアップのために投資したと考えてください。
資本的支出800万円に関しては、中古物件本体と同じ資産を新たに取得したものとして減価償却費を計上しなければなりません。中古物件の見積もり耐用年数が31年の場合の償却率は0.033なので、800万円×0.033=26.4万円を1年ごとに経費計上することになります。
リノベーション費用が900万円だった場合は、資本的支出が時価の50%を超えるため、簡便法の適用除外となり、通常の減価償却計算方法にしたがって計算します。
年間減価償却費=900万円(資本的支出額)÷47年(法定耐用年数)=約19.15万円
なお、実際は原状回復にあたる(修繕費相当)工事もあると考えられるため、リノベーションのすべてが資本的支出になるわけではありません。
まとめ
法定耐用年数は減価償却費を計算するために必要なものであり、不動産投資で節税効果を得るために大切な要素です。築年数の長短によって減価償却による節税効果が変わってくるため、物件選びの際には投資の目的にマッチする築年数の物件を選ぶようにしましょう。
物件価格が高くなるほど、減価償却による大きな節税効果が期待できるものの、大きな投資は初心者にとってハードルが高いものです。そこでおすすめしたいのが、比較的少ない自己資金で始められる区分マンション投資です。これから不動産投資にチャレンジしたいと考えている方は、ぜひ区分マンション投資から始めてみてはいかがでしょうか。
ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問いあわせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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2024.11.11
ベルテックスコラム事務局
法定耐用年数とは?物理的耐用年数や寿命との違いも解説
- 節税・税金
- 減価償却
不動産投資を行っていると、毎年の確定申告で「法定耐用年数」という言葉を目にします。名前から「法律で決められている年数なのだろう」と想像はついても、具体的にどのようなものなのかは理解できていない方も多いのではないでしょうか。
建物の耐用年数には「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的残存耐用年数」の3つの考え方が存在し、それぞれ使う場面が異なります。
この記事では、法定耐用年数のことを詳しく知りたい不動産投資家の方、不動産投資を勉強中の方に向け、3つの耐用年数の違いや減価償却の考え方などについて解説します。
法定耐用年数とは
法定耐用年数とは、ある資産について通常の管理をしていた場合に、新品の状態から継続して使用できる年数として、国が法律で定めたもののことです。建物であれば、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造といった構造、住宅・店舗・事務所といった用途ごとに、耐用年数が定められています。
法定耐用年数が定められている根底には、資産は経年劣化によって価値が低下するという考え方があります。そのため、頑丈な構造で、躯体に負担のない用途の建物ほど、法定耐用年数は長めの設定です。
減価償却費を計算するための年数
確定申告で法定耐用年数が登場するのは、減価償却費を計算するために必要不可欠だからです。
減価償却とは、減価償却資産の取得にかかった費用を取得時に一括で経費計上するのではなく、所定の年数に基づいて配分して経費計上する会計処理のことをいいます。建物も減価償却の対象資産(減価償却資産といいます)であるため、取得費用を減価償却費として各年に配分して経費計上することになります。
この際、減価償却の根拠となる「所定の年数」というのが法定耐用年数に該当します。つまり、法定耐用年数とは、減価償却費を計算するために定められた年数といえるでしょう。
耐久性や寿命との違い
建物に限らず、世の中の「物」には耐久性や寿命が存在します。耐久性、寿命と法定耐用年数はどのように違うのでしょうか。
耐久性(耐久年数)は、商品を製造したメーカーによる性能試験やシミュレーションの結果、「これくらいの年数であれば支障なく使えるだろう」と判断した基準です。あくまでもメーカー側の独自判断に基づく数値であり、法定耐用年数のような法的な根拠はありません。
寿命は、文字どおり「対象となる製品が劣化して使えなくなる期間」のことです。法定耐用年数や耐久年数を迎えたからといって、必ずしもその製品が使えなくなるわけではありません。法定耐用年数は会計処理のために設定された数字であり、一般的な寿命を指すものではないのです。
実際、法定耐用年数を迎えた中古物件であっても、リフォームやリノベーションを施すことで問題なく使えている建物は数多くあります。
物理的耐用年数や経済的残存耐用年数との違い
続いて、3つの耐用年数の特徴と違いを解説しましょう。それぞれの特徴を簡単にまとめると次のとおりです。
法定耐用年数 |
会計処理における減価償却費を計算するため、法律で定められた耐用年数。 |
物理的耐用年数 |
建物の構造、建物に使われている建築資材や設備などが物理的に耐えられる年数。 |
経済的残存耐用年数 |
建物の経済的な価値がゼロになるまでの期間を表す年数。 |
3つの耐用年数には上のような性質の違いがあり、使うシーンも異なります。法定耐用年数は先述のとおり、税務や会計の処理で必要となる年数です。
これに対し、物理的耐用年数は物件の管理や運用の場面で考えなくてはならない年数であり、経済的残存耐用年数は建物の鑑定価格を算出するのに必要となる年数です。
資産別の法定耐用年数
法定耐用年数は、構造や用途によって個別に定められていると紹介しました。具体的にどれくらいの年数なのか、一覧で見ていきましょう。ここでは代表的なものを抜粋して紹介します。
建物の法定耐用年数
構造 |
用途 |
耐用年数(年) |
木造 |
事務所 |
24 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 |
事務所 |
50 |
鉄骨造 |
・事務所
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なお、土地は経年劣化せず減価償却資産に当たらないため、法定耐用年数は定められていません。
建物附属設備の耐用年数
建物に付属する設備について、建物本体とは別に耐用年数が定められているものもあります。
設備の種類 | 細目 | 耐用年数(年) |
アーケード・日よけ設備 |
主として金属製のもの |
15 |
店用簡易装備 |
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3 |
電気設備(照明設備を含む) |
蓄電池電源設備 |
6 |
給排水・衛生設備、ガス設備 |
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15 |
法定耐用年数と節税の関係
法定耐用年数によって減価償却費を計上できる金額と年数が変わることから、不動産の取得時にその物件の法定耐用年数が何年なのかによって、期待できる節税効果も変わってきます。
そもそも減価償却費を計上することが、なぜ節税につながるのか簡単に解説しましょう。
減価償却期間中は、毎年減価償却費を経費として計上できるため、その年の不動産所得を圧縮することができます。所得にはさまざまな種類がありますが、不動産所得と給与所得は損益通算が可能です。減価償却費の計上によって不動産所得が赤字となれば、その年の給与所得による利益と通算することができ、所得税や住民税の課税所得を減らせるのです。
ただし、減価償却費を利用した節税は、厳密にいうと「減税」ではなく「繰り延べ」に過ぎません。一方で、一定以上の所得がある場合は、不動産を所有し、売却することで節税効果を得られる場合があります。
不動産売却時には、譲渡所得に対して「譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)」がかかります。
課税対象となる譲渡所得の計算式は次のとおりです。
- 譲渡所得 = 物件売却価格 − 物件取得費 – 譲渡にかかった費用
このとき「物件取得費」は簿価で計算されます。簿価とは、毎年計上した減価償却費を差し引いた後の建物価格のことです。つまり、減価償却費を計上した分だけ売却時の譲渡所得が増え、譲渡所得税が高くなります。言い換えれば、運用中に節税した分だけ、売却時に納める税金が増えるということです。
とはいえ、譲渡所得にかかる税率は、所有期間5年以内で39%(所得税30%+住民税9%)、所有期間5年超で20%(所得税15%+住民税5%)です(復興特別所得税を除く)。
対して、通常の所得税+住民税を納める場合の税率は、課税所得695万円〜900万円未満で33%、900万円〜1,800万円未満で43%、1,800万円〜4,000万円未満で53%ですから、一定以上の所得がある方は譲渡所得で納めたほうが節税になるといえます。
減価償却が節税になる仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【おすすめ関連記事】不動産投資の減価償却とは?計算方法と税金が安くなる仕組みを解説
耐用年数が短い方が1年に計上できる減価償却費は大きい
同じ価格で物件を購入する場合、残存耐用年数の短い物件の方が、1年あたりに計上できる減価償却費は大きくなります。
たとえば、木造アパートを投資物件として購入するケースで考えてみましょう。物件Aは新築、物件Bは築15年の中古物件、いずれも建物部分の価格は4,000万円とします。
木造アパートの法定耐用年数は22年なので、新築の物件Aの耐用年数は22年。減価償却費の計算で用いる償却率は0.046となります。新築物件の減価償却費は「建物価格×償却率」で計算できるため、4,000万円×0.046=184万円です。
これに対し、中古物件の耐用年数は「(法定耐用年数 − 築年数)+築年数×20%」で計算します。物件Bは築15年なので「(22年–15年)+15年×20%=10年」です。耐用年数10年のときの償却率は0.100なので、物件Bの減価償却費は4,000万円×0.100=400万円となります。
上記のとおり、築年数が古い中古物件では、短期集中型で課税所得を大きく圧縮することが可能です。
減価償却期間が終わると経費計上できない
当然のことながら、減価償却期間が終わると減価償却費を経費計上することができなくなります。そのため、減価償却費を大きく計上していた場合、終了とともに税負担が急増し、資産運用全体で見たときの収支が悪化したと感じる場合もあるでしょう。
特に節税目的で不動産投資を行うケースでは、償却期間終了にあわせて売却するなど、対策を考えておきたいところです。
定額法と定率法
減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があります。
ここまで紹介してきたのは「定額法」です。法定耐用年数に応じた減価償却期間中、毎年定額の減価償却費を計上します。
一方の「定率法」では、耐用年数に応じて定められた一定の償却率を用います。減価償却が済んでいない残高に対して償却率をかけることで、その年の減価償却費を算出。年を経るごとに未償却の残高が減っていくので、経費計上できる減価償却費も低減していきます。
定額法の計算方法と適用対象
定額法で減価償却する場合、先ほど紹介したとおり、建物の取得金額に償却率を掛けあわせて減価償却費を算出します。これを計算式で表すと次のとおりです。
1年ごとの減価償却費 = 建物の取得金額 × 償却率(定額法のもの)
個人事業主が減価償却するときは、原則として定額法を使うよう定められています。ただし、「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出することで、償却方法を変更できる可能性もあります。
また、新たに取得する建物および建物付属設備に関しては、法人・個人を問わず定額法を用いるのが決まりです。
定率法の計算方法と適用対象
一方の定率法を選択した場合、次の計算式で減価償却費を求めることができます。
1年ごとの減価償却費 = 未償却残高(減価償却が済んでいない価格)× 償却率(定率法のもの)
法人における減価償却では定率法を用いるのが基本ですが、上で説明した建物、建物付属設備に加え、構築物、ソフトウェアに関しては定額法を用いる決まりです。
中古物件の法定耐用年数
新築物件の場合、法定耐用年数をそのまま減価償却の計算に使用できますが、中古物件ではどのように考えればよいのでしょうか。中古物件における法定耐用年数の計算方法や計算事例を紹介します。
中古物件の法定耐用年数の計算方法
中古物件の法定耐用年数は、その物件の築年数が法定耐用年数を超過しているかどうかで計算方法が変わってきます。それぞれの計算式をまとめると以下のとおりです
築年数が法定耐用年数以内 |
耐用年数=(法定耐用年数 − 築年数)+築年数×20% |
築年数が法定耐用年数超 |
耐用年数= 法定耐用年数×20% |
上記の計算方法は「簡便法」と呼ばれるものであり、使用可能期間を見積もることが困難な場合に使用することが認められています。建物や建物付属設備の使用可能期間を正確に見積もるのは困難なため、簡便法で計算するのが一般的です。
計算した結果、1年未満の端数が生じた場合には切り捨て、2年未満となった場合には「2年」を適用します。
中古物件の法定耐用年数の計算事例
それでは、実際に中古物件の耐用年数を計算してみましょう。
まず、築20年の鉄筋コンクリート造マンション(法定耐用年数47年)の一室を取得したとき、耐用年数はどれくらいになるのでしょうか。この場合、築年数が法定耐用年数に達していないので「(法定耐用年数 − 築年数)+築年数×20%」より、「(47年–20年)+20年×20%」で「31年」となります。
では、築50年の鉄筋コンクリート造マンションを取得したケースではどうでしょうか。築年数が法定耐用年数を超過している場合「法定耐用年数×20%」で計算するので、1年未満の端数を切り捨てて「9年」となります。
なお、築10年の木造アパート(法定耐用年数22年)であれば、耐用年数は「(22年 – 10年)+10年×20%」で「14年」です。築30年を超える木造アパートなら1年未満の端数を切り捨てて「4年」となります。
資本的支出と法定耐用年数
不動産投資を行っていると、所有物件や付属設備の交換・リフォームなどを実施することがあります。このときにかかる費用は「資本的支出」と「修繕費」に分けられます。前者の資本的支出に該当する改修を行った場合、あらためて減価償却費を経費計上することが可能です。
資本的支出とはどのようなものなのか、資本的支出をしたときの法定耐用年数や減価償却費はどのように考えればよいのか、ポイントを解説します。
資本的支出とは
資本的支出について、国税庁は次のような見解を示しています。
“一般に修繕費といわれるものでも資産の使用可能期間を延長させたり、資産の価値を高めたりする部分の支出は資本的支出とされ、修繕費とは区別されます。資本的支出とされた金額は、事業所得や不動産所得の計算上、減価償却の方法により各年分の必要経費に算入します”
要するに、資産価値や耐久性を向上する効果のある修理や改良のためにかかる費用が、「資本的支出」ということです。具体的には、大規模な間取り変更、水回りの最新設備への交換やグレードアップなどが挙げられます。
一方、外壁塗装や網戸の張り替え、水回りの修理など、原状回復のために行う修繕に関しては「修繕費」の扱いとなり、資本的支出とする必要はありません。
資本的支出に該当する場合、資本的支出の対象となる減価償却資産と同じ種類の資産を新たに取得したものとして、減価償却を行う必要があります。
不動産投資における修繕費と資本的支出の判断基準については、こちらの記事を参照してください。
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資本的支出をした場合の減価償却費の計算例
築20年の鉄筋コンクリート造のマンション(法定耐用年数47年)の一室(時価1,600万円)を所有していて、800万円でフルリノベーションしたケースを考えてみます。このとき、800万円はすべてバリューアップのために投資したと考えてください。
資本的支出800万円に関しては、中古物件本体と同じ資産を新たに取得したものとして減価償却費を計上しなければなりません。中古物件の見積もり耐用年数が31年の場合の償却率は0.033なので、800万円×0.033=26.4万円を1年ごとに経費計上することになります。
リノベーション費用が900万円だった場合は、資本的支出が時価の50%を超えるため、簡便法の適用除外となり、通常の減価償却計算方法にしたがって計算します。
年間減価償却費=900万円(資本的支出額)÷47年(法定耐用年数)=約19.15万円
なお、実際は原状回復にあたる(修繕費相当)工事もあると考えられるため、リノベーションのすべてが資本的支出になるわけではありません。
まとめ
法定耐用年数は減価償却費を計算するために必要なものであり、不動産投資で節税効果を得るために大切な要素です。築年数の長短によって減価償却による節税効果が変わってくるため、物件選びの際には投資の目的にマッチする築年数の物件を選ぶようにしましょう。
物件価格が高くなるほど、減価償却による大きな節税効果が期待できるものの、大きな投資は初心者にとってハードルが高いものです。そこでおすすめしたいのが、比較的少ない自己資金で始められる区分マンション投資です。これから不動産投資にチャレンジしたいと考えている方は、ぜひ区分マンション投資から始めてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
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