2025.03.21

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の売却益とは? 売却益にかかる税金などの諸費用、売却益を上げる方法を解説します!

  • 売却(出口戦略)

不動産の売却益とは?

不動産の売却益とは、不動産を売却した際に、売却価格が購入価格を上回った場合に得られる利益のことで、「キャピタルゲイン」ともいいます。反対に、売却価格が購入価格を下回った場合は、売却損(キャピタルロス)となります。 

売却益は、以下の計算式で求められます。 

売却益 = 売却価格 - 購入価格 - 売却に関連する費用 

売却価格は、不動産を売却した際に得られる金額です。購入価格には不動産の購入代金、購入時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などが含まれます。また、売却時には仲介手数料、印紙税、抵当権抹消費用などの費用が発生します。 

具体例を見てみましょう。 

購入価格が3,000万円で売却価格が4,000万円、関連費用が200万円の場合、先ほどの式にあてはめると、以下のようになります。 

4,000万円-3,000万円-200万円=800万円 

この800万円が売却益となります。 

次に、不動産の資産価格が年率2%で上昇した場合の利益を考えてみましょう。購入価格は3,000万円、売却費用は200万円として計算します。 

経過年数 

購入価格 

価値の上昇額 

売却費用 

売却益 

1年後 

3,000万円 

+60万円 

200万円 

-140万円 

3年後 

3,000万円 

+183.6万円 

200万円 

-16.4万円 

5年後 

3,000万円 

+312.1万円 

200万円 

+112.1万円 

10年後 

3,000万円 

+656.9万円 

200万円 

+456.9万円 

このように、不動産価格が上昇することで売却益も増えることがわかります。 

売却時にかかる税金

不動産を売却すると、印紙税・登録免許税・譲渡所得税・消費税の4つの税金がかかります。このうち、印紙税と登録免許税は売買契約の手続きに課税され、譲渡所得税は売却時に利益が出ていた場合に課税されます。 

また、個消費税の課税事業者が事業用の不動産を売却したり、消費税の課税事業者である不動産業者が不動産を売却した 場合や、不動産会社に払う仲介手数料の場合は消費税がかかります。 

印紙税

印紙税とは、契約書や領収書などを発行する際に課される税金です。文章の作成者が 

収入印紙を購入し、それを文章に貼り付けることで印紙税を納税します。売買契約書の印紙税額は以下の通りです。 

【売買契約書の印紙税額】 

契約金額 

印紙税額 

軽減税率 

1万円未満 

非課税 

非課税 

1万円以上10万円以下 

200円 

非課税 

10万円を超え50万円以下 

400円 

200円 

50万円を超え100万円以下 

1,000円 

500円 

100万円を超え500万円以下 

2,000円 

1,000円 

500万円を超え1,000万円以下 

10,000円 

5,000円 

1,000万円を超え5,000万円以下 

20,000円 

10,000円 

5,000万円を超え1億円以下 

60,000円 

30,000円 

1億円を超え5億円以下 

100,000円 

60,000円 

5億円を超え10億円以下 

200,000円 

160,000円 

10億円を超え50億円以下 

400,000円 

320,000円 

50億円を超えるもの 

600,000円 

480,000円 

【出典】 
国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」 2024年11月18日現在
国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 2024年8月1日現在

記載金額が10万円を超えるもので、2014(平成26)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に作成されるものは軽減税率が適用されます。 

登録免許税

登録免許税とは、不動産や会社の登記、特許、免許などを登録するときに課される税金です。主に不動産の登記の際に課されます。不動産関連で登録免許税が発生するのは以下のケースです。 

【登録免許税の税率】 

登記の種類 

内容 

税率 

土地の所有権移転登記(売買など) 

不動産を売買・贈与などしたとき 

1.5% 

土地の所有権移転登記(相続) 

不動産を相続したとき 

0.4% 

建物の所有権保存登記 

新築住宅を建てたとき 

0.4%  ※1 

建物の所有権移転登記(売買など) 

建物を売買・贈与などしたとき 

2% ※2 

建物の所有権移転登記(相続) 

建物を相続したとき 

0.4%  

抵当権設定登記 

抵当権を設定したとき 

0.4% 

抵当権抹消登記 

抵当権を抹消したとき 

1,000円 

※1住宅用家屋の所有権保存登記の場合軽減税率0.15%  

     省エネ住宅等はさらに税率が軽減される 

※2売買による土地の所有権移転登記の場合軽減税率1.5%  

   住宅用家屋の所有権保存登記の場合軽減税率0.3% 

     省エネ住宅等はさらに税率が軽減される 

【出典】国税庁「登録免許税の税額表」 2024年4月1日現在

不動産の取引で登録免許税を支払う必要があります。例えば、土地や建物を売り買いしたり、親から不動産を相続したりする場合です。また、住宅ローンを組む際に抵当権を設定するとき、あるいはローンを完済して抵当権を消すときにも登録免許税がかかります。 

譲渡所得税

譲渡所得税とは、資産を売却したときに得た利益に対して課せられる税金のことです。具体的には、以下のものを売却して得た利益が課税対象となります。 

  • 土地や建物などの不動産 

  • 株式 

  • ゴルフ会員権など 

不動産の譲渡所得の計算式は以下のとおりです。 

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額 

特別控除額は一定の要件を満たすことで適用されます。たとえば、居住用の住居を売却した場合の控除額は3,000万円です。 

譲渡所得税の税率は、所有期間によって税率が異なります。加えて、居住用か非居住用かによっても異なります。 

【出典】国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」 2024年4月1日現在

消費税

消費税は、私たちが普段買い物をする時やサービスを利用する時にかかる税金です。不動産の取引でも、場合によって消費税がかかることがあります。はじめに、不動産売却時に消費税が課されないケースを見てみましょう。 

土地は消費するものではないため、土地の売買には消費税がかかりません。同様に、個人が建物を売却する場合も消費税は発生しません。 

一方、消費税の課税事業者となっている個人事業主が事業用の建物を売却した際は、消費税の課税対象となります。また、不動産会社に売却の仲介を依頼していた場合、その仲介手数料には消費税が課税されます。 

売却益にかかる税金以外の費用

不動産を売却すると、税金以外にも必要な費用が発生します。ここでは、不動産会社に支払う売買仲介手数料と、抵当権を抹消する際の登記費用について解説します。 

売買仲介手数料

不動産売買における仲介手数料とは、不動産会社に支払う成功報酬のことです。不動産の購入や売却を仲介してもらった際に、物件案内から引き渡しまでの不動産会社の一連の活動に対して支払われます。 

売買契約が成立した場合にのみ発生し、契約時と引渡し時の2回に分けて支払うのが一般的です。売買価格が確定した時点で手数料が算出され、原則として現金での支払いが必要になります。 

仲介手数料の上限は、売買代金の額によって宅地建物取引業法で決められています。 

売買代金の額(税抜) 

仲介手数料(税込) 

400万円超 

3.3%(3%+6万円+消費税) 

200万円超~400万円以下 

4.4%(4%+2万円+消費税) 

200万円以下 

5.5%(売買代金×5%+消費税) 

【参考】国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」 2025年3月18日現在

抵当権抹消登記費用

抵当権抹消登記は、住宅ローンなどを完済した後に、不動産登記簿からその担保設定(抵当権)を消すための手続きです。ローンを返し終わっても、自動的に登記簿から抵当権が消えるわけではないので、所有者自身が手続きを行う必要があります。 

具体的な手続きとしては、法務局に登記申請書を提出する必要があります。その際、金融機関が発行する解除証書や弁済証書といった登記原因証明情報、金融機関からの委任状、登記識別情報または登記済証などの書類が必要となります。 

抵当権抹消の費用として、1件あたり1,000円の登録免許税が必要です。 

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う手数料が必要となります。各事務所で必要な金額は異なりますが、概ね1件あたり1万5,000円程度です。 

長期所有なら課税額を抑えやすい? 譲渡所得の短期譲渡・長期譲渡を解説

譲渡所得税は、短期譲渡所得か長期譲渡所得かによって課税額が異なります。短期譲渡所得と長期譲渡所得のどちらに該当するかは、保有している期間によって判断されます。 

区分 

内容 

税率 

短期譲渡所得 

譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下 

39% 

・所得税:30% 

・住民税:9% 

長期譲渡所得 

譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える 

20% 

・所得税:15% 

・住民税:5% 

【出典】国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」2024年4月1日現在
【出典】国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」2024年4月1日現在

これらに加え、2027年までは復興特別所得税(2.1%)が加算されます。 

区分 

加算される税率 

合計税率 

短期譲渡所得 

0.63%(0.3×0.021) 

39.63%(39%+0.63%) 

長期譲渡所得 

0.315%(0.15×0.021) 

20.315%(20%+0.315%) 

不動産の譲渡所得が長期か短期かの判定は、売却した年の1月1日時点での所有期間で決まります。 

具体例で説明しましょう。2018年6月1日に購入した不動産を2023年12月1日に売却するケースを考えてみます。この場合、売却時点では確かに所有期間が5年を超えています。しかし、2023年1月1日の時点では購入から5年が経過していないため、短期譲渡所得として扱われます。 

この不動産を長期譲渡所得として扱ってもらうためには、2024年1月1日以降まで待って売却する必要があります。つまり、売却年の元日に5年以上の所有期間があることが、長期譲渡所得の条件となるのです。 

ここで、先ほど取り上げた譲渡所得の式を再確認します。 

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額 

以下の条件で、短期譲渡所得と長期譲渡所得の税額を計算してみましょう。 

収入金額:5,000万円 

取得費:3,000万円 

譲渡費用:300万円 

特別控除額:0円 

【譲渡所得金額の計算】

譲渡所得金額 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 
= 5,000万円 - (3,000万円 + 300万円) - 0円 
= 1,700万円 

短期譲渡所得の場合 

税率: 39.63% (所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63%)税額 = 1,700万円 × 39.63% = 673.71万円 

長期譲渡所得の場合 

税率: 20.315% (所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)税額 = 1,700万円 × 20.315% = 345.355万円 

長期譲渡所得の場合、税額が短期譲渡所得の約半分になることがわかります。この差額は328.355万円となり、長期保有による税制優遇の効果が顕著に表れています。 

不動産の売却益を上げる5つのポイント

不動産を高く売り、売却益を上げるにはどうすればよいのでしょうか。 

ここでは、5つのポイントを紹介します。 

適切に管理し、物件の魅力を高める

不動産売却で利益を出すには、物件の魅力を最大限に引き出すことが重要です。購入希望者が内見に来た際に、良い印象を与えられるよう、清掃や整理整頓を徹底し、明るく清潔な空間を演出しましょう。不用品は処分し、換気をしっかり行うことも大切です。水回りや臭い対策を念入りに行い、必要であればハウスクリーニングも検討しましょう。 

適切な価格を設定する

適切な価格設定は、スムーズに売却するために必要なことです。事前に近隣の相場を把握し、適正な価格を設定しましょう。相場とかけ離れた価格では買い手が現れにくく、売却が長期化する恐れがあるからです。 

また、値引き交渉を想定して、売却価格には少し余裕を持たせるのがおすすめです。ギリギリの価格設定だと、値引き交渉に対応できず、売却機会を逃すかもしれません。不動産会社と相談しながら、適切な価格設定を心がけましょう。 

売却しやすい時期に売り出す

不動産売却で利益を最大化するには、売却時期が重要です。特に、新生活に向けて物件を探す人が増える2~3月や、不動産相場が上昇している時期は有利です。また、所有期間が5年を超えると税金が軽減される場合もあります。 

建物の築年数は6~15年が目安となりますが、すべての条件を満たすのは難しいでしょう。経済状況や地域の開発状況も価格に影響するため、これらの情報を参考に、ご自身の不動産に最適なタイミングを見極めることが大切です。価格が上がりそうな時期を逃さず、売却益を増やしましょう。 

効果的なマーケティングを行う

不動産売却で高値を実現するには、効果的なマーケティングが欠かせません。まず重要なのは、購入者層を具体的にイメージすることです。購入希望者の年齢、家族構成、年収、希望条件などを細かく想定することで、適切な販促方法が見えてきます。 

また、物件の特性に応じた宣伝戦略も必要です。マンションや一戸建て、投資用不動産など、物件タイプによって最適な告知方法は異なります。不動産ポータルサイトやSNSなどのオンライン媒体を効果的に活用し、物件の魅力を最大限アピールしましょう。 

ターゲットを明確にし、適切な販促活動を行うことで、より良い条件での売却が期待できます。 

信頼できる不動産業者を選ぶ

信頼できる不動産業者を選ぶことはとても重要です。まず、売却したい物件の取扱実績が豊富な業者を選びましょう。年間の取引件数や平均売却期間を参考に、得意な物件種別を見極めることが大切です。大手には広範なネットワークがあり、地域密着型の業者には地元ならではの情報があります。複数の業者を比較検討しましょう。 

また、担当者との相性も重要です。親身に相談に乗ってくれ、専門知識に基づいたアドバイスをしてくれる担当者を選ぶのもおすすめです。査定価格だけでなく、担当者の対応も考慮し、相性の良い業者と担当者を選ぶことで、より良い売却に繋がります。 

不動産を売却するときの注意点

不動産の売却は、人生で何度も経験するものではありません。多くの方にとって、一生に一度あるかないかの大きな決断になるでしょう。初めての売却では、さまざまな不安や戸惑いがあるのは当然のことです。 

しかし、適切な準備と知識があれば、スムーズに進めることができます。ここでは、売却を成功させるために必要な注意点をお伝えします。 

複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産を売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。なぜなら、不動産会社によって査定価格が異なり、1社だけでは適正な市場相場が分かりにくいためです。最低でも3社程度に査定を依頼することで、価格の妥当性を判断できます。 

また、査定を依頼する過程で、不動産会社の対応や、提案内容を比較検討できます。丁寧な説明をしてくれる会社なのか、売却後のアフターフォローは充実しているのかなど、各社の特徴を把握することができます。 

ただし、極端に高い査定価格を提示する会社には注意が必要です。実際の売却価格と大きく異なる可能性があり、売却までに時間がかかったり、最終的に値下げを強いられたりする恐れがあります。複数社の査定結果を総合的に判断し、信頼できる不動産会社を選びましょう。 

売却に関する法的手続きをもれなく行う

不動産の売却には、さまざまな法的手続きが必要不可欠です。まず重要なのは、不動産の登記手続きを正確に行うことです。所有権移転登記を怠ると、売買が無効になるリスクがあります。 

譲渡所得税の申告と納付も売却益であれば必須で、期限内に適切な手続きを取らなければなりません。 

また、居住用不動産を売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度である「3,000万円の特別控除の特例 」や、住んでいた住居を売り、売却した年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い替えた場合、売却時の譲渡益を繰り延べできる「買い換えの特例」など、特例を受ける場合も必要になります。 

【参考】国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」2024年4月1日現在
【参考】国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」2024年4月1日現在

さらに、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明や売買契約書の作成など、法律で定められた書類の準備も必要です。これらの手続きを円滑に進めるためには、不動産仲介業者や司法書士、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。 

専門家のサポートを受けることで、法的な不備を防ぎ、トラブルのない円滑な取引が実現できます。また、税制上の特例や控除についても適切なアドバイスを得られ、経済的なメリットも期待できます。 

まとめ

今回は不動産の売却益や税金などについて解説しました。不動産売却時には、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、消費税といったさまざまな税金が発生します。また、仲介手数料や抵当権抹消費用などの諸費用も必要となります。 

売却益を上げるためには、物件の適切な管理、価格設定、タイミング、効果的なマーケティング、信頼できる不動産業者の選定が重要です。複数の不動産会社に査定を依頼し、法的手続きを確実に行うことで、スムーズな売却が可能となります。 

この記事を監修した人

宮川 真一

税理士 税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表

岐阜県大垣市出身。一橋大学商学部を1996年に卒業後、1997年より税理士としてのキャリアをスタート。25年以上の経験を持ち、税務や財務に関する深い知識を生かし、1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士資格も取得。企業の取締役や監査役としても幅広く活躍し、財務コンサルティングや資産管理のエキスパートとして信頼を集めている。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2025.03.21

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の売却益とは? 売却益にかかる税金などの諸費用、売却益を上げる方法を解説します!

  • 売却(出口戦略)

不動産の売却益とは?

不動産の売却益とは、不動産を売却した際に、売却価格が購入価格を上回った場合に得られる利益のことで、「キャピタルゲイン」ともいいます。反対に、売却価格が購入価格を下回った場合は、売却損(キャピタルロス)となります。 

売却益は、以下の計算式で求められます。 

売却益 = 売却価格 - 購入価格 - 売却に関連する費用 

売却価格は、不動産を売却した際に得られる金額です。購入価格には不動産の購入代金、購入時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などが含まれます。また、売却時には仲介手数料、印紙税、抵当権抹消費用などの費用が発生します。 

具体例を見てみましょう。 

購入価格が3,000万円で売却価格が4,000万円、関連費用が200万円の場合、先ほどの式にあてはめると、以下のようになります。 

4,000万円-3,000万円-200万円=800万円 

この800万円が売却益となります。 

次に、不動産の資産価格が年率2%で上昇した場合の利益を考えてみましょう。購入価格は3,000万円、売却費用は200万円として計算します。 

経過年数 

購入価格 

価値の上昇額 

売却費用 

売却益 

1年後 

3,000万円 

+60万円 

200万円 

-140万円 

3年後 

3,000万円 

+183.6万円 

200万円 

-16.4万円 

5年後 

3,000万円 

+312.1万円 

200万円 

+112.1万円 

10年後 

3,000万円 

+656.9万円 

200万円 

+456.9万円 

このように、不動産価格が上昇することで売却益も増えることがわかります。 

売却時にかかる税金

不動産を売却すると、印紙税・登録免許税・譲渡所得税・消費税の4つの税金がかかります。このうち、印紙税と登録免許税は売買契約の手続きに課税され、譲渡所得税は売却時に利益が出ていた場合に課税されます。 

また、個消費税の課税事業者が事業用の不動産を売却したり、消費税の課税事業者である不動産業者が不動産を売却した 場合や、不動産会社に払う仲介手数料の場合は消費税がかかります。 

印紙税

印紙税とは、契約書や領収書などを発行する際に課される税金です。文章の作成者が 

収入印紙を購入し、それを文章に貼り付けることで印紙税を納税します。売買契約書の印紙税額は以下の通りです。 

【売買契約書の印紙税額】 

契約金額 

印紙税額 

軽減税率 

1万円未満 

非課税 

非課税 

1万円以上10万円以下 

200円 

非課税 

10万円を超え50万円以下 

400円 

200円 

50万円を超え100万円以下 

1,000円 

500円 

100万円を超え500万円以下 

2,000円 

1,000円 

500万円を超え1,000万円以下 

10,000円 

5,000円 

1,000万円を超え5,000万円以下 

20,000円 

10,000円 

5,000万円を超え1億円以下 

60,000円 

30,000円 

1億円を超え5億円以下 

100,000円 

60,000円 

5億円を超え10億円以下 

200,000円 

160,000円 

10億円を超え50億円以下 

400,000円 

320,000円 

50億円を超えるもの 

600,000円 

480,000円 

【出典】 
国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」 2024年11月18日現在
国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 2024年8月1日現在

記載金額が10万円を超えるもので、2014(平成26)年4月1日から2027(令和9)年3月31日までの間に作成されるものは軽減税率が適用されます。 

登録免許税

登録免許税とは、不動産や会社の登記、特許、免許などを登録するときに課される税金です。主に不動産の登記の際に課されます。不動産関連で登録免許税が発生するのは以下のケースです。 

【登録免許税の税率】 

登記の種類 

内容 

税率 

土地の所有権移転登記(売買など) 

不動産を売買・贈与などしたとき 

1.5% 

土地の所有権移転登記(相続) 

不動産を相続したとき 

0.4% 

建物の所有権保存登記 

新築住宅を建てたとき 

0.4%  ※1 

建物の所有権移転登記(売買など) 

建物を売買・贈与などしたとき 

2% ※2 

建物の所有権移転登記(相続) 

建物を相続したとき 

0.4%  

抵当権設定登記 

抵当権を設定したとき 

0.4% 

抵当権抹消登記 

抵当権を抹消したとき 

1,000円 

※1住宅用家屋の所有権保存登記の場合軽減税率0.15%  

     省エネ住宅等はさらに税率が軽減される 

※2売買による土地の所有権移転登記の場合軽減税率1.5%  

   住宅用家屋の所有権保存登記の場合軽減税率0.3% 

     省エネ住宅等はさらに税率が軽減される 

【出典】国税庁「登録免許税の税額表」 2024年4月1日現在

不動産の取引で登録免許税を支払う必要があります。例えば、土地や建物を売り買いしたり、親から不動産を相続したりする場合です。また、住宅ローンを組む際に抵当権を設定するとき、あるいはローンを完済して抵当権を消すときにも登録免許税がかかります。 

譲渡所得税

譲渡所得税とは、資産を売却したときに得た利益に対して課せられる税金のことです。具体的には、以下のものを売却して得た利益が課税対象となります。 

  • 土地や建物などの不動産 

  • 株式 

  • ゴルフ会員権など 

不動産の譲渡所得の計算式は以下のとおりです。 

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額 

特別控除額は一定の要件を満たすことで適用されます。たとえば、居住用の住居を売却した場合の控除額は3,000万円です。 

譲渡所得税の税率は、所有期間によって税率が異なります。加えて、居住用か非居住用かによっても異なります。 

【出典】国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」 2024年4月1日現在

消費税

消費税は、私たちが普段買い物をする時やサービスを利用する時にかかる税金です。不動産の取引でも、場合によって消費税がかかることがあります。はじめに、不動産売却時に消費税が課されないケースを見てみましょう。 

土地は消費するものではないため、土地の売買には消費税がかかりません。同様に、個人が建物を売却する場合も消費税は発生しません。 

一方、消費税の課税事業者となっている個人事業主が事業用の建物を売却した際は、消費税の課税対象となります。また、不動産会社に売却の仲介を依頼していた場合、その仲介手数料には消費税が課税されます。 

売却益にかかる税金以外の費用

不動産を売却すると、税金以外にも必要な費用が発生します。ここでは、不動産会社に支払う売買仲介手数料と、抵当権を抹消する際の登記費用について解説します。 

売買仲介手数料

不動産売買における仲介手数料とは、不動産会社に支払う成功報酬のことです。不動産の購入や売却を仲介してもらった際に、物件案内から引き渡しまでの不動産会社の一連の活動に対して支払われます。 

売買契約が成立した場合にのみ発生し、契約時と引渡し時の2回に分けて支払うのが一般的です。売買価格が確定した時点で手数料が算出され、原則として現金での支払いが必要になります。 

仲介手数料の上限は、売買代金の額によって宅地建物取引業法で決められています。 

売買代金の額(税抜) 

仲介手数料(税込) 

400万円超 

3.3%(3%+6万円+消費税) 

200万円超~400万円以下 

4.4%(4%+2万円+消費税) 

200万円以下 

5.5%(売買代金×5%+消費税) 

【参考】国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」 2025年3月18日現在

抵当権抹消登記費用

抵当権抹消登記は、住宅ローンなどを完済した後に、不動産登記簿からその担保設定(抵当権)を消すための手続きです。ローンを返し終わっても、自動的に登記簿から抵当権が消えるわけではないので、所有者自身が手続きを行う必要があります。 

具体的な手続きとしては、法務局に登記申請書を提出する必要があります。その際、金融機関が発行する解除証書や弁済証書といった登記原因証明情報、金融機関からの委任状、登記識別情報または登記済証などの書類が必要となります。 

抵当権抹消の費用として、1件あたり1,000円の登録免許税が必要です。 

抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士に支払う手数料が必要となります。各事務所で必要な金額は異なりますが、概ね1件あたり1万5,000円程度です。 

長期所有なら課税額を抑えやすい? 譲渡所得の短期譲渡・長期譲渡を解説

譲渡所得税は、短期譲渡所得か長期譲渡所得かによって課税額が異なります。短期譲渡所得と長期譲渡所得のどちらに該当するかは、保有している期間によって判断されます。 

区分 

内容 

税率 

短期譲渡所得 

譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下 

39% 

・所得税:30% 

・住民税:9% 

長期譲渡所得 

譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える 

20% 

・所得税:15% 

・住民税:5% 

【出典】国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」2024年4月1日現在
【出典】国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」2024年4月1日現在

これらに加え、2027年までは復興特別所得税(2.1%)が加算されます。 

区分 

加算される税率 

合計税率 

短期譲渡所得 

0.63%(0.3×0.021) 

39.63%(39%+0.63%) 

長期譲渡所得 

0.315%(0.15×0.021) 

20.315%(20%+0.315%) 

不動産の譲渡所得が長期か短期かの判定は、売却した年の1月1日時点での所有期間で決まります。 

具体例で説明しましょう。2018年6月1日に購入した不動産を2023年12月1日に売却するケースを考えてみます。この場合、売却時点では確かに所有期間が5年を超えています。しかし、2023年1月1日の時点では購入から5年が経過していないため、短期譲渡所得として扱われます。 

この不動産を長期譲渡所得として扱ってもらうためには、2024年1月1日以降まで待って売却する必要があります。つまり、売却年の元日に5年以上の所有期間があることが、長期譲渡所得の条件となるのです。 

ここで、先ほど取り上げた譲渡所得の式を再確認します。 

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額 

以下の条件で、短期譲渡所得と長期譲渡所得の税額を計算してみましょう。 

収入金額:5,000万円 

取得費:3,000万円 

譲渡費用:300万円 

特別控除額:0円 

【譲渡所得金額の計算】

譲渡所得金額 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 
= 5,000万円 - (3,000万円 + 300万円) - 0円 
= 1,700万円 

短期譲渡所得の場合 

税率: 39.63% (所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63%)税額 = 1,700万円 × 39.63% = 673.71万円 

長期譲渡所得の場合 

税率: 20.315% (所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)税額 = 1,700万円 × 20.315% = 345.355万円 

長期譲渡所得の場合、税額が短期譲渡所得の約半分になることがわかります。この差額は328.355万円となり、長期保有による税制優遇の効果が顕著に表れています。 

不動産の売却益を上げる5つのポイント

不動産を高く売り、売却益を上げるにはどうすればよいのでしょうか。 

ここでは、5つのポイントを紹介します。 

適切に管理し、物件の魅力を高める

不動産売却で利益を出すには、物件の魅力を最大限に引き出すことが重要です。購入希望者が内見に来た際に、良い印象を与えられるよう、清掃や整理整頓を徹底し、明るく清潔な空間を演出しましょう。不用品は処分し、換気をしっかり行うことも大切です。水回りや臭い対策を念入りに行い、必要であればハウスクリーニングも検討しましょう。 

適切な価格を設定する

適切な価格設定は、スムーズに売却するために必要なことです。事前に近隣の相場を把握し、適正な価格を設定しましょう。相場とかけ離れた価格では買い手が現れにくく、売却が長期化する恐れがあるからです。 

また、値引き交渉を想定して、売却価格には少し余裕を持たせるのがおすすめです。ギリギリの価格設定だと、値引き交渉に対応できず、売却機会を逃すかもしれません。不動産会社と相談しながら、適切な価格設定を心がけましょう。 

売却しやすい時期に売り出す

不動産売却で利益を最大化するには、売却時期が重要です。特に、新生活に向けて物件を探す人が増える2~3月や、不動産相場が上昇している時期は有利です。また、所有期間が5年を超えると税金が軽減される場合もあります。 

建物の築年数は6~15年が目安となりますが、すべての条件を満たすのは難しいでしょう。経済状況や地域の開発状況も価格に影響するため、これらの情報を参考に、ご自身の不動産に最適なタイミングを見極めることが大切です。価格が上がりそうな時期を逃さず、売却益を増やしましょう。 

効果的なマーケティングを行う

不動産売却で高値を実現するには、効果的なマーケティングが欠かせません。まず重要なのは、購入者層を具体的にイメージすることです。購入希望者の年齢、家族構成、年収、希望条件などを細かく想定することで、適切な販促方法が見えてきます。 

また、物件の特性に応じた宣伝戦略も必要です。マンションや一戸建て、投資用不動産など、物件タイプによって最適な告知方法は異なります。不動産ポータルサイトやSNSなどのオンライン媒体を効果的に活用し、物件の魅力を最大限アピールしましょう。 

ターゲットを明確にし、適切な販促活動を行うことで、より良い条件での売却が期待できます。 

信頼できる不動産業者を選ぶ

信頼できる不動産業者を選ぶことはとても重要です。まず、売却したい物件の取扱実績が豊富な業者を選びましょう。年間の取引件数や平均売却期間を参考に、得意な物件種別を見極めることが大切です。大手には広範なネットワークがあり、地域密着型の業者には地元ならではの情報があります。複数の業者を比較検討しましょう。 

また、担当者との相性も重要です。親身に相談に乗ってくれ、専門知識に基づいたアドバイスをしてくれる担当者を選ぶのもおすすめです。査定価格だけでなく、担当者の対応も考慮し、相性の良い業者と担当者を選ぶことで、より良い売却に繋がります。 

不動産を売却するときの注意点

不動産の売却は、人生で何度も経験するものではありません。多くの方にとって、一生に一度あるかないかの大きな決断になるでしょう。初めての売却では、さまざまな不安や戸惑いがあるのは当然のことです。 

しかし、適切な準備と知識があれば、スムーズに進めることができます。ここでは、売却を成功させるために必要な注意点をお伝えします。 

複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産を売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼することが大切です。なぜなら、不動産会社によって査定価格が異なり、1社だけでは適正な市場相場が分かりにくいためです。最低でも3社程度に査定を依頼することで、価格の妥当性を判断できます。 

また、査定を依頼する過程で、不動産会社の対応や、提案内容を比較検討できます。丁寧な説明をしてくれる会社なのか、売却後のアフターフォローは充実しているのかなど、各社の特徴を把握することができます。 

ただし、極端に高い査定価格を提示する会社には注意が必要です。実際の売却価格と大きく異なる可能性があり、売却までに時間がかかったり、最終的に値下げを強いられたりする恐れがあります。複数社の査定結果を総合的に判断し、信頼できる不動産会社を選びましょう。 

売却に関する法的手続きをもれなく行う

不動産の売却には、さまざまな法的手続きが必要不可欠です。まず重要なのは、不動産の登記手続きを正確に行うことです。所有権移転登記を怠ると、売買が無効になるリスクがあります。 

譲渡所得税の申告と納付も売却益であれば必須で、期限内に適切な手続きを取らなければなりません。 

また、居住用不動産を売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度である「3,000万円の特別控除の特例 」や、住んでいた住居を売り、売却した年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い替えた場合、売却時の譲渡益を繰り延べできる「買い換えの特例」など、特例を受ける場合も必要になります。 

【参考】国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」2024年4月1日現在
【参考】国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」2024年4月1日現在

さらに、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明や売買契約書の作成など、法律で定められた書類の準備も必要です。これらの手続きを円滑に進めるためには、不動産仲介業者や司法書士、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。 

専門家のサポートを受けることで、法的な不備を防ぎ、トラブルのない円滑な取引が実現できます。また、税制上の特例や控除についても適切なアドバイスを得られ、経済的なメリットも期待できます。 

まとめ

今回は不動産の売却益や税金などについて解説しました。不動産売却時には、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、消費税といったさまざまな税金が発生します。また、仲介手数料や抵当権抹消費用などの諸費用も必要となります。 

売却益を上げるためには、物件の適切な管理、価格設定、タイミング、効果的なマーケティング、信頼できる不動産業者の選定が重要です。複数の不動産会社に査定を依頼し、法的手続きを確実に行うことで、スムーズな売却が可能となります。 

この記事を監修した人

宮川 真一

税理士 税理士法人みらいサクセスパートナーズ 代表

岐阜県大垣市出身。一橋大学商学部を1996年に卒業後、1997年より税理士としてのキャリアをスタート。25年以上の経験を持ち、税務や財務に関する深い知識を生かし、1級FP技能士、CFP®、宅地建物取引士資格も取得。企業の取締役や監査役としても幅広く活躍し、財務コンサルティングや資産管理のエキスパートとして信頼を集めている。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。