2025.03.21

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の諸費用とは? 購入・運用・売却時それぞれの内訳を紹介

  • はじめ方・基礎知識

不動産投資における購入時・運用時・売却時のそれぞれの段階で発生する諸費用について詳しく解説します。物件価格だけでなく、登記費用、ローン関連費用、各種保険料、税金など、投資の各段階で予想される出費を網羅的に紹介しています。 

これらの諸費用を事前に把握して適切な資金計画を立てることが不動産投資成功の鍵となります。投資初心者が陥りがちな諸費用の見落としを防ぎ、リアルな収支計画を立てるための必読情報です。 

不動産投資の「諸費用」とは?

不動産投資では物件の購入価格だけでなく、さまざまな諸費用が発生します。物件購入時には、不動産取得税や登録免許税といった税金、司法書士への報酬、ローン事務手数料、不動産仲介手数料などが必要です。 

これらの費用は物件価格の概ね5〜10%程度になることが一般的です。物件によっては、リフォーム費用や家具・家電の購入費用なども考慮しなければなりません。 

運用段階では、固定資産税や都市計画税といった毎年の税金負担に加え、管理会社に支払う管理費、火災保険料、修繕積立金などが継続的に発生します。また突発的な設備トラブルへの修繕費用も見込んでおく必要があります。 

将来の売却時には、不動産仲介手数料、抵当権抹消費用、譲渡所得税、一括返済手数料(借入を行っている場合)などがかかります。これらの諸費用は物件購入時に融資対象とならないケースが多く、自己資金で準備することが求められます。 

不動産投資の成功には、こうした目に見えにくい諸費用をあらかじめ把握し、十分な資金計画を立てることが不可欠です。収支計画の際には物件価格だけでなく、これら諸費用も含めた総投資額を考慮して判断することが重要となります。 

この記事では、諸費用の発生するシーンを(1)購入時(2)運用時(3)売却時に分けて紹介します。 

1. 購入時の諸費用

不動産購入を検討する際には、物件価格だけでなく様々な諸費用が必要になります。具体的には、不動産登記費用、ローン事務手数料、火災保険料、不動産取得税などが含まれます。 

不動産登記に関する費用

不動産登記に必要な費用は、以下の2つです。 

  • 登録免許税 

  • 専門家への依頼費用 

登録免許税は、土地や建物の所有権移転、新築建物の保存登記、住宅ローンの抵当権設定などの際に課される税金です。 

税額は、不動産の固定資産税評価額や借入額に対して一定の税率を掛けて計算されます。例えば、土地の所有権移転登記では評価額の2.0%新築建物の所有権保存登記では0.4%の税率が適用されます。 

専門家に不動産登記を依頼する場合、司法書士や土地家屋調査士への報酬が必要となります。費用は物件の種類、面積、登記の複雑さによって変動しますが、一般的に7万円から15万円程度が相場です。 

不動産投資ローンに関する費用

不動産投資ローンを組むのに必要な費用は、以下の2つです。 

  • 事務手数料 

  • 保証料(金融機関により、かかる場合とかからない場合がある) 

不動産投資ローンを組む際には、融資を実行する金融機関に対して事務手数料を支払う必要があります。この手数料は、ローン申込みの審査や書類作成、契約手続きなどの事務的作業に対する対価として発生します。 

事務手数料には主に二つの計算方式があります。一つは定額制で、借入金額に関わらず一定額(通常3〜5万円程度)を支払う方式です。もう一つは定率制で、借入金額に対して一定の割合(一般的に1%〜3%)を支払う方式です。例えば、3,000万円の融資を受ける場合、定率2%であれば60万円の事務手数料が発生します。 

また、金融機関によっては、物件調査のための出張費や、繰り上げ返済時の手数料が別途かかる場合もありますので、契約前に詳細を確認することが重要です。 

不動産投資ローンでは、借り手の返済不能リスクをカバーするために、保証会社による保証が必要となることが多く、その対価としてローン保証料が発生します。保証料の支払い方法には主に二つの方式があります。 

一つ目は「一括払い方式(外枠方式)」で、融資実行時に保証料を一括で支払う方法です。融資総額の2%程度が一般的で、例えば3,000万円の融資なら約60万円の保証料が必要になります。初期費用は高くなりますが、金利に上乗せされないため長期的な総返済額は抑えられます。 

もう一つは「金利上乗せ方式(内枠方式)」で、保証料を金利に上乗せして毎月の返済額に含める方法です。通常0.2〜0.3%程度の金利上乗せとなり、初期費用を抑えられる反面、返済総額は増加します。 

保険関連の費用

保険関係の費用は、以下の3つに分けられます。 

  • 火災保険 

  • 地震保険 

  • 団体信用生命保険(団信) 

それぞれの内容を見てみましょう。 

火災保険

不動産購入時には火災保険の加入が必要となります。これは建物や家財を火災、落雷、風災などから守るための保険で、ローンを利用する場合は金融機関から加入を義務付けられます。 

保険料は建物の構造や築年数、地域、補償内容によって異なりますが、一般的に木造より鉄筋コンクリートの方が安くなります。火災以外にも水災や地震などのオプション補償を付けることも可能です。 

契約期間は通常1〜10年で、長期契約ほど割引率が大きくなる傾向があります。また、ローンを組む場合は融資期間中は火災保険への加入が必要です。不動産購入の諸費用として事前に計上しておきましょう。 

地震保険

地震保険は不動産購入時に検討すべき重要な保障の一つです。火災保険だけでは地震による被害はカバーされないため、別途加入が必要になります。地震保険は単独では契約できず、必ず火災保険とセットでの加入となります。 

保険料は建物の構造や所在地域の地震リスクによって異なり、火災保険の保険金額の30~50%が補償限度額となります。地震、噴火、津波による火災・損壊・埋没・流失などの被害を補償対象としています。 

不動産購入時の諸費用として予算に組み込む必要があり、長期的な資産保護の観点から加入を検討することが望ましいでしょう。

団体信用生命保険(団信)

団体信用生命保険とは、住宅ローンを組む際に加入する保険で、借入者が死亡または高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が保険金によって一括返済される仕組みです。不動産投資ローンを利用する際の借り入れ条件に含まれることがあります。 

加入は任意の場合と、金融機関によってはローン契約の必須条件となる場合があります。保険料は通常、住宅ローンの金利に含まれていますが、保障内容を充実させるオプションを選ぶと追加費用が発生することがあります。 

 

購入時の各種税金

投資用不動産を購入すると、各種の税金が発生します。主な税金は以下の3つです。 

  • 不動産取得税 

  • 登録免許税 

  • 印紙税 

各税の内容を確認しましょう。 

不動産取得税

不動産取得税とは不動産を購入した際に一度だけ課される地方税です。土地や建物を取得した時点で、その不動産の価値に応じて都道府県に納める税金となります。税率は原則4%ですが、住宅用の土地や建物については軽減措置があり、一定条件を満たせば3%に軽減されます。 

課税標準額は固定資産税評価額が基準となり、新築住宅や一定面積以下の土地には特例控除が適用されることもあります。 

納付時期は不動産取得後に都道府県から送付される納税通知書に従って支払います。購入予算を立てる際には、この税金も含めて計画することが重要です。 

登録免許税

登録免許税は、不動産取引で権利関係を公に証明するための登記手続きに課される国税です。所有権移転登記では、固定資産税評価額に税率を掛けて計算されます。所有権移転登記の税率は以下の通りです。 

  • 土地:1.5% 

  • 新築物件:0.4% 

  • 中古物件:2.0% 

また、不動産投資ローンを組んで物件を購入する場合の抵当権設定登記の場合は、0.4%の税率がかかります。 

印紙税

印紙税とは、不動産売買契約書や金銭消費貸借契約書などの契約書に課される国税です。不動産購入時には、売買契約書や住宅ローン契約書に印紙税が課税されます。税額は契約金額に応じて段階的に設定されており、高額になるほど税率も上がります。 

納税方法は収入印紙を契約書に貼付し消印することで完了します。契約書を複数部作成する場合は、それぞれに印紙の貼付が必要です。 

なお、電子契約の場合は電子納税も可能となっています。2027年3月末までは軽減税率が適用され、通常より安い税額となっています。 

なお、購入時の税金について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。 

購入時の費用については諸費用ローンを組むことができる

諸費用ローンとは、不動産購入時に発生する物件価格以外の諸費用(登記費用、印紙税、ローン事務手数料など)を賄うための融資商品です。 

通常の投資用ローンとは別枠で設定され、自己資金が少ない状況でも不動産取引を円滑に進められるメリットがあります。また、金利は基本的に、通常の投資マンションローンと同じものが設定されます。 

諸費用ローンを組むことができる費用には以下のようなものがあります。個々の条件は金融機関によって異なるため、不動産投資会社を通して確認しましょう。 

  • 不動産登記費用(登録免許税、司法書士報酬) 

  • 火災保険料や地震保険料 

  • 売買契約書に貼る印紙税 

  • 固定資産税や都市計画税の清算金 

  • 不動産投資ローンの事務手数料 

  • 不動産投資ローンの保証料 

2. 運用時の諸費用

運用時の諸費用として、不動産投資ローン、修繕・リフォーム、保険、入居募集費用、各種税金について解説します。 

不動産投資ローンの返済に関する費用

不動産投資ローンは、賃貸経営目的で不動産を購入する際に利用できる融資商品です。住宅ローンと比較すると、自己居住ではなく収益を目的とするため一般的に金利が高く設定されています。融資期間は基本的に35年~45年程度となり、この期間中に元本と金利を返済する必要があります。 

金利タイプには主に3種類があります。

全期間固定金利は借入期間中の金利が変わらないため返済額が予測しやすく計画が立てやすい反面、初期金利は高めです。選択型固定金利は当初の一定期間(3年・5年・10年など)は金利が固定され、その後は見直しが行われます。変動金利は市場金利に連動して定期的に金利が見直されるため、金利上昇リスクはありますが、初期金利が低く設定されていることが多いです。 

現在の金利相場は、金融機関によって異なりますが、都市銀行では年1.5〜2.5%程度地方銀行では年2.0〜3.5%程度ノンバンクでは年2.0〜5.0%程度となっています。審査の厳しさと金利は反比例する傾向があり、審査が厳しい金融機関ほど金利は低く設定されています。 

修繕・リフォームに関する費用

不動産投資において、物件の修繕・リフォーム費用は長期運用における重要なコスト要素です。築年数の浅い物件は初期の修繕費が抑えられますが、経年と共に必要な修繕は増加していきます。 

一般的に築10〜15年を経過すると、給湯器の交換や外壁塗装、屋根の防水工事など大規模な修繕が必要となり、費用負担が急増します。これにより家賃収入と修繕費のバランスが逆転する「デッドクロス」が発生することもあります。 

定期的な修繕には屋根や外壁の塗装・防水、給排水管のメンテナンス、各種設備の更新が含まれ、共用部分の補修も必要です。特に賃貸物件では入居者の入れ替わり時に室内のクリーニングやリフォームが発生するため、計画的な資金準備が不可欠です。 

修繕費は物件の構造や管理状態によって大きく変動しますが、10年目以降は1戸あたり100万円を超える修繕が必要になるケースも珍しくありません。 

保険関連の費用

購入時だけではなく、運用時にも保険関連の費用がかかります。具体的には、運用期間中に保険の契約が切れた場合に、保険契約の更新と保険に関する費用の支払いが必要です。主な保険は以下の通りです。 

  • 火災保険 

  • 地震保険 

  • 団体信用生命保険 

これらの保険の内容は、基本的に物件購入時と同じです。 

火災保険に施設賠償責任特約や家賃収入特約、家主費用特約などがついた保険を契約するという選択肢もあります。 

施設賠償責任特約は、アパート管理における不手際が要因となり、第三者に怪我を負わせた際の損害に対する補償を提供します。 

家賃収入特約では、火災などの災害により家賃収入が途絶えた場合に、その減収分を保障します。家主費用特約においては、自殺・事故・孤独死といった事象による建物の損傷が原因で生じる家賃収入の減少分や、必要となる清掃費用などをカバーします。 

運用の状況に合わせ、必要な保険を契約するとよいでしょう。 

入居者募集にかかる費用

不動産投資を行う際に考慮すべき重要な運用コストの一つが、入居者募集にかかる費用です。

まず、不動産仲介会社へ支払う仲介手数料があります。これは通常、賃料の1ヶ月分程度が相場で、法律上の上限も定められています。 

また、物件の魅力をアピールするための広告料も発生し、こちらも一般的には賃料1ヶ月分程度ですが、立地や条件によっては高額になることもあります。 

さらに、AD費用(アドバタイズメント費用)として、物件を積極的に紹介してもらうためのインセンティブを不動産会社に支払うケースも少なくありません。これらの費用は空室期間を短縮するための投資とも言えますが、収益計画に大きく影響するため、事前に十分な検討が必要です。 

運用時の各種税金

投資物件の運用中は、以下の税金がかかります。 

  • 固定資産税・都市計画税 

  • 所得税・住民税 

  • 個人事業税 

  • 消費税 

それぞれの内容について見てみましょう。 

固定資産税・都市計画税

投資物件の運用中に課される主要な税金として、固定資産税と都市計画税があります。固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している人に対して課される税金です。 

毎年1月1日時点で固定資産を所有している人が納税義務者となり、通常は年4回に分けて支払います。固定資産税の税額は、課税標準額に1.4%の税率を掛けて算出されます。  

一方、都市計画税は固定資産税と同時に課税される税金で、都市計画事業や土地区画整理事業のための財源として使用されます。都市計画税の税率は課税標準額の0.3%です。 

所得税・住民税

不動産投資による所得には所得税と住民税が課されます。所得税は国税で、不動産所得に対して累進課税されます。一方、住民税は地方税で、所得税とは別に課税されます。これらの税金は、総収入から必要経費を差し引いた課税所得に基づいて計算されます。 

所得税の税率は10%から45%まで段階的に上がり、住民税は一般的に課税所得の10%程度です。確定申告を通じて納税額が決定され、適切な経費計上により税負担を軽減できる可能性があります。 

 

個人事業税

個人事業税は、不動産投資が一定規模に達すると課される地方税です。主に、アパート・マンション賃貸は「不動産貸付業」として、おおむね10室以上の物件を所有する場合に課税対象となります。課税所得が290万円を超える場合、(所得金額-290万円)×5%の税率で計算されます。ただし、所得が290万円以下の場合は非課税です。 

3. 売却時の諸費用

売却時にかかる諸費用として、売買仲介手数料・抵当権抹消登記費用・各種税金について解説します。 

売買仲介手数料

仲介手数料は不動産会社が売主と買主の間に立ち、売買契約を成立させるサービスに対して支払う報酬です。仲介手数料は宅地建物取引業法によって上限額が定められており、取引価格に応じて段階的に設定されています。 

仲介手数料の上限は以下の通りです。 

取引価格(税抜き) 

仲介手数料上限額 

200万円以下 

売買価格×5%+消費税 

200万円~400万円以下 

(売買価格×4%+2万円)+消費税 

400万円超 

(売買価格×3%+6万円)+消費税 

売買価格が3,000万円だった場合の計算式は、以下の通りです。 

  • 仲介手数料=3,000万円×3%+6万円=96万円 

これに消費税が10%加わるため、仲介手数料の上限は105万6,000円となります。 

抵当権抹消登記費用

抵当権抹消登記とは、不動産投資ローンなどの債務を完済した際に、不動産登記簿に記載されている抵当権を消去するための手続きです。抵当権は、債務者が返済できなくなった場合に債権者が不動産を処分して優先的に債権回収できる権利として設定されます。 

ローン返済が完了すると抵当権の必要性はなくなりますが、この権利は自動的には消えないため、所有者が積極的に抹消手続きを行う必要があります。 

抵当権抹消登記の費用は主に以下の通りです。 

  • 登録免許税 

  • 司法書士への報酬 

  • 抵当権抹消の書類を取得するための費用 

まず登録免許税として不動産1件につき1,000円が必要です。土地と建物がある場合は2,000円となります。手続きを自分で行わない場合は、司法書士への依頼費用が発生し、一般的に10,000円から20,000円程度が相場となっています。 

また、抹消手続きには債権者から抵当権抹消のための書類(抵当権抹消登記承諾書や登記済証など)を取得する必要があります。金融機関によっては、この書類発行のための手数料を徴収することがあります。手続き完了後に新しい登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する場合は、別途600円程度の費用がかかります。 

さらに、抵当権抹消を行うことでローンを一括返済する場合は、繰り上げ返済手数料が発生することがあります。主要都市銀行では10,000円前後ですが、金融機関によっては返済額の数%と、高額になるケースもあります。一般的にこの手数料は売主が負担します。 

売却時の各種税金

保有している物件を売却すると、以下の税金を支払う必要があります。 

  • 譲渡所得税 

  • 印紙税 

  • 登録免許税 

  • 消費税 

それぞれの内容を詳しく見てみましょう。 

譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産売却による利益(譲渡所得)に課される税金で、所得税と住民税を合算したものです。譲渡所得は売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いて計算され、利益が発生した場合に課税対象となります。 

この税率は所有期間に応じて異なり、5年以下の場合は「短期譲渡所得」5年超の場合は「長期譲渡所得」として扱われます。短期譲渡所得の税率は39%で、内訳は所得税30%、住民税9%です。 

一方、長期譲渡所得の税率は20%で、所得税15%、住民税5%が含まれます。さらに、両者には2037年まで復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が上乗せされます。 

所有期間の判定は譲渡した年の1月1日時点で行われるため、売却タイミングによって短期・長期の区分が変わる点に注意が必要です。 

【出典】国税庁「土地や建物を売ったとき」2024年4月1日現在 

印紙税

印紙税は、不動産売却時に作成される売買契約書に課される国税です。この税金は、契約書に記載された取引金額に応じて変動し、収入印紙を購入して契約書に貼付することで納付が完了します。 

例えば、売却代金が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、印紙税額は10,000円となります。なお、2027年3月31日までの軽減措置が適用されるため、通常より低い税率で計算されます。 

登録免許税

登録免許税は、不動産売却時に所有権移転登記を行う際に課される国税です。この税金は、土地や建物の固定資産税評価額を基準に計算され、通常の税率は評価額の2.0%です。例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地の場合、登録免許税額は20万円となります。ただし、評価額の1000円未満は切り捨てられます。 

不動産投資で諸費用を抑えるには?

不動産投資を行う際には、さまざまな諸費用が発生します。これらの費用を抑えるための3つの方法について説明します。 

仲介手数料を抑える

仲介手数料を抑える方法として、交渉や条件の工夫が重要です。まず、仲介手数料は法律で上限が定められているものの、値引き交渉は可能です。 

また、仲介手数料割引キャンペーンを実施している不動産会社や、定額制の手数料を採用している会社を選ぶことで、費用を節約することも可能です。ただし、割引対象となる物件に条件がある場合があるため、事前に確認が必要です。 

さらに、中小規模の不動産会社に依頼したり、管理会社と直接契約することで仲介手数料を抑えられる場合もあります。これらの方法を活用することで、不動産投資の諸費用を効果的に削減できます。 

小額投資の物件を選ぶ

少額投資の物件を選ぶことも費用抑制に効果的です。具体的には、マンションの区分所有中古の区分マンションへの投資が挙げられます。これらの物件は比較的低価格で購入でき、初期投資を抑えることができます。 

区分マンションの場合、物件の共用部分の管理を専門の管理会社に任せられるため、管理の手間も少なくなります。また、中古物件を選ぶことで、新築と比べて購入価格を抑えられます。ただし、中古物件の場合は管理状態の確認が重要で、定期的なメンテナンスが行われているかを事前にチェックする必要があります。 

さらに、不動産クラウドファンディングやREITなどの少額から始められる投資方法も選択肢として考えられます。これらの方法を活用することで、初期費用を抑えつつ不動産投資を始めることができます。

適切なシミュレーションを行う

不動産投資において諸費用を抑制するには、事前の適切なシミュレーションが不可欠です。投資前に物件の購入費用だけでなく、固定資産税、管理費、修繕費、保険料などの運営コストを正確に見積もることで、予想外の出費を防ぎます。 

特に重要なのは、空室リスクを考慮した収益計算です。平均的な空室率を組み込んだシミュレーションにより、現実的な収支予測が可能になります。 

また、将来的な修繕計画を含めた長期シミュレーションを行うことで、大規模修繕時の資金不足を回避できます。税金面では、減価償却費の正確な計算により節税効果を最大化するシミュレーションが有効です。 

融資条件の比較シミュレーションも、金利負担の軽減に貢献します。これらの多角的シミュレーションにより、投資効率を高めながら諸費用を最適化できるのです。 

 

まとめ

今回は、不動産投資の諸費用について解説しました。不動産投資では物件価格以外にも多くの費用が発生します。購入時には不動産取得税や登録免許税、司法書士報酬、ローン事務手数料、仲介手数料などが必要で、通常は物件価格の5~10%程度になります。 

運用時には固定資産税、都市計画税、管理委託費用、火災保険料、修繕費などが継続的に発生します。 

売却時には仲介手数料、抵当権抹消費用、譲渡所得税が必要です。これらの諸費用は多くの場合、融資対象とならず自己資金での準備が求められます。 

成功するためには、これらの費用を事前に把握し、十分な資金計画を立てることが不可欠です。適切なシミュレーションを行い、物件選びや仲介手数料の交渉など、諸費用を抑える工夫をすることも重要です。 

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2025.03.21

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の諸費用とは? 購入・運用・売却時それぞれの内訳を紹介

  • はじめ方・基礎知識

不動産投資における購入時・運用時・売却時のそれぞれの段階で発生する諸費用について詳しく解説します。物件価格だけでなく、登記費用、ローン関連費用、各種保険料、税金など、投資の各段階で予想される出費を網羅的に紹介しています。 

これらの諸費用を事前に把握して適切な資金計画を立てることが不動産投資成功の鍵となります。投資初心者が陥りがちな諸費用の見落としを防ぎ、リアルな収支計画を立てるための必読情報です。 

不動産投資の「諸費用」とは?

不動産投資では物件の購入価格だけでなく、さまざまな諸費用が発生します。物件購入時には、不動産取得税や登録免許税といった税金、司法書士への報酬、ローン事務手数料、不動産仲介手数料などが必要です。 

これらの費用は物件価格の概ね5〜10%程度になることが一般的です。物件によっては、リフォーム費用や家具・家電の購入費用なども考慮しなければなりません。 

運用段階では、固定資産税や都市計画税といった毎年の税金負担に加え、管理会社に支払う管理費、火災保険料、修繕積立金などが継続的に発生します。また突発的な設備トラブルへの修繕費用も見込んでおく必要があります。 

将来の売却時には、不動産仲介手数料、抵当権抹消費用、譲渡所得税、一括返済手数料(借入を行っている場合)などがかかります。これらの諸費用は物件購入時に融資対象とならないケースが多く、自己資金で準備することが求められます。 

不動産投資の成功には、こうした目に見えにくい諸費用をあらかじめ把握し、十分な資金計画を立てることが不可欠です。収支計画の際には物件価格だけでなく、これら諸費用も含めた総投資額を考慮して判断することが重要となります。 

この記事では、諸費用の発生するシーンを(1)購入時(2)運用時(3)売却時に分けて紹介します。 

1. 購入時の諸費用

不動産購入を検討する際には、物件価格だけでなく様々な諸費用が必要になります。具体的には、不動産登記費用、ローン事務手数料、火災保険料、不動産取得税などが含まれます。 

不動産登記に関する費用

不動産登記に必要な費用は、以下の2つです。 

  • 登録免許税 

  • 専門家への依頼費用 

登録免許税は、土地や建物の所有権移転、新築建物の保存登記、住宅ローンの抵当権設定などの際に課される税金です。 

税額は、不動産の固定資産税評価額や借入額に対して一定の税率を掛けて計算されます。例えば、土地の所有権移転登記では評価額の2.0%新築建物の所有権保存登記では0.4%の税率が適用されます。 

専門家に不動産登記を依頼する場合、司法書士や土地家屋調査士への報酬が必要となります。費用は物件の種類、面積、登記の複雑さによって変動しますが、一般的に7万円から15万円程度が相場です。 

不動産投資ローンに関する費用

不動産投資ローンを組むのに必要な費用は、以下の2つです。 

  • 事務手数料 

  • 保証料(金融機関により、かかる場合とかからない場合がある) 

不動産投資ローンを組む際には、融資を実行する金融機関に対して事務手数料を支払う必要があります。この手数料は、ローン申込みの審査や書類作成、契約手続きなどの事務的作業に対する対価として発生します。 

事務手数料には主に二つの計算方式があります。一つは定額制で、借入金額に関わらず一定額(通常3〜5万円程度)を支払う方式です。もう一つは定率制で、借入金額に対して一定の割合(一般的に1%〜3%)を支払う方式です。例えば、3,000万円の融資を受ける場合、定率2%であれば60万円の事務手数料が発生します。 

また、金融機関によっては、物件調査のための出張費や、繰り上げ返済時の手数料が別途かかる場合もありますので、契約前に詳細を確認することが重要です。 

不動産投資ローンでは、借り手の返済不能リスクをカバーするために、保証会社による保証が必要となることが多く、その対価としてローン保証料が発生します。保証料の支払い方法には主に二つの方式があります。 

一つ目は「一括払い方式(外枠方式)」で、融資実行時に保証料を一括で支払う方法です。融資総額の2%程度が一般的で、例えば3,000万円の融資なら約60万円の保証料が必要になります。初期費用は高くなりますが、金利に上乗せされないため長期的な総返済額は抑えられます。 

もう一つは「金利上乗せ方式(内枠方式)」で、保証料を金利に上乗せして毎月の返済額に含める方法です。通常0.2〜0.3%程度の金利上乗せとなり、初期費用を抑えられる反面、返済総額は増加します。 

保険関連の費用

保険関係の費用は、以下の3つに分けられます。 

  • 火災保険 

  • 地震保険 

  • 団体信用生命保険(団信) 

それぞれの内容を見てみましょう。 

火災保険

不動産購入時には火災保険の加入が必要となります。これは建物や家財を火災、落雷、風災などから守るための保険で、ローンを利用する場合は金融機関から加入を義務付けられます。 

保険料は建物の構造や築年数、地域、補償内容によって異なりますが、一般的に木造より鉄筋コンクリートの方が安くなります。火災以外にも水災や地震などのオプション補償を付けることも可能です。 

契約期間は通常1〜10年で、長期契約ほど割引率が大きくなる傾向があります。また、ローンを組む場合は融資期間中は火災保険への加入が必要です。不動産購入の諸費用として事前に計上しておきましょう。 

地震保険

地震保険は不動産購入時に検討すべき重要な保障の一つです。火災保険だけでは地震による被害はカバーされないため、別途加入が必要になります。地震保険は単独では契約できず、必ず火災保険とセットでの加入となります。 

保険料は建物の構造や所在地域の地震リスクによって異なり、火災保険の保険金額の30~50%が補償限度額となります。地震、噴火、津波による火災・損壊・埋没・流失などの被害を補償対象としています。 

不動産購入時の諸費用として予算に組み込む必要があり、長期的な資産保護の観点から加入を検討することが望ましいでしょう。

団体信用生命保険(団信)

団体信用生命保険とは、住宅ローンを組む際に加入する保険で、借入者が死亡または高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が保険金によって一括返済される仕組みです。不動産投資ローンを利用する際の借り入れ条件に含まれることがあります。 

加入は任意の場合と、金融機関によってはローン契約の必須条件となる場合があります。保険料は通常、住宅ローンの金利に含まれていますが、保障内容を充実させるオプションを選ぶと追加費用が発生することがあります。 

 

購入時の各種税金

投資用不動産を購入すると、各種の税金が発生します。主な税金は以下の3つです。 

  • 不動産取得税 

  • 登録免許税 

  • 印紙税 

各税の内容を確認しましょう。 

不動産取得税

不動産取得税とは不動産を購入した際に一度だけ課される地方税です。土地や建物を取得した時点で、その不動産の価値に応じて都道府県に納める税金となります。税率は原則4%ですが、住宅用の土地や建物については軽減措置があり、一定条件を満たせば3%に軽減されます。 

課税標準額は固定資産税評価額が基準となり、新築住宅や一定面積以下の土地には特例控除が適用されることもあります。 

納付時期は不動産取得後に都道府県から送付される納税通知書に従って支払います。購入予算を立てる際には、この税金も含めて計画することが重要です。 

登録免許税

登録免許税は、不動産取引で権利関係を公に証明するための登記手続きに課される国税です。所有権移転登記では、固定資産税評価額に税率を掛けて計算されます。所有権移転登記の税率は以下の通りです。 

  • 土地:1.5% 

  • 新築物件:0.4% 

  • 中古物件:2.0% 

また、不動産投資ローンを組んで物件を購入する場合の抵当権設定登記の場合は、0.4%の税率がかかります。 

印紙税

印紙税とは、不動産売買契約書や金銭消費貸借契約書などの契約書に課される国税です。不動産購入時には、売買契約書や住宅ローン契約書に印紙税が課税されます。税額は契約金額に応じて段階的に設定されており、高額になるほど税率も上がります。 

納税方法は収入印紙を契約書に貼付し消印することで完了します。契約書を複数部作成する場合は、それぞれに印紙の貼付が必要です。 

なお、電子契約の場合は電子納税も可能となっています。2027年3月末までは軽減税率が適用され、通常より安い税額となっています。 

なお、購入時の税金について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。 

購入時の費用については諸費用ローンを組むことができる

諸費用ローンとは、不動産購入時に発生する物件価格以外の諸費用(登記費用、印紙税、ローン事務手数料など)を賄うための融資商品です。 

通常の投資用ローンとは別枠で設定され、自己資金が少ない状況でも不動産取引を円滑に進められるメリットがあります。また、金利は基本的に、通常の投資マンションローンと同じものが設定されます。 

諸費用ローンを組むことができる費用には以下のようなものがあります。個々の条件は金融機関によって異なるため、不動産投資会社を通して確認しましょう。 

  • 不動産登記費用(登録免許税、司法書士報酬) 

  • 火災保険料や地震保険料 

  • 売買契約書に貼る印紙税 

  • 固定資産税や都市計画税の清算金 

  • 不動産投資ローンの事務手数料 

  • 不動産投資ローンの保証料 

2. 運用時の諸費用

運用時の諸費用として、不動産投資ローン、修繕・リフォーム、保険、入居募集費用、各種税金について解説します。 

不動産投資ローンの返済に関する費用

不動産投資ローンは、賃貸経営目的で不動産を購入する際に利用できる融資商品です。住宅ローンと比較すると、自己居住ではなく収益を目的とするため一般的に金利が高く設定されています。融資期間は基本的に35年~45年程度となり、この期間中に元本と金利を返済する必要があります。 

金利タイプには主に3種類があります。

全期間固定金利は借入期間中の金利が変わらないため返済額が予測しやすく計画が立てやすい反面、初期金利は高めです。選択型固定金利は当初の一定期間(3年・5年・10年など)は金利が固定され、その後は見直しが行われます。変動金利は市場金利に連動して定期的に金利が見直されるため、金利上昇リスクはありますが、初期金利が低く設定されていることが多いです。 

現在の金利相場は、金融機関によって異なりますが、都市銀行では年1.5〜2.5%程度地方銀行では年2.0〜3.5%程度ノンバンクでは年2.0〜5.0%程度となっています。審査の厳しさと金利は反比例する傾向があり、審査が厳しい金融機関ほど金利は低く設定されています。 

修繕・リフォームに関する費用

不動産投資において、物件の修繕・リフォーム費用は長期運用における重要なコスト要素です。築年数の浅い物件は初期の修繕費が抑えられますが、経年と共に必要な修繕は増加していきます。 

一般的に築10〜15年を経過すると、給湯器の交換や外壁塗装、屋根の防水工事など大規模な修繕が必要となり、費用負担が急増します。これにより家賃収入と修繕費のバランスが逆転する「デッドクロス」が発生することもあります。 

定期的な修繕には屋根や外壁の塗装・防水、給排水管のメンテナンス、各種設備の更新が含まれ、共用部分の補修も必要です。特に賃貸物件では入居者の入れ替わり時に室内のクリーニングやリフォームが発生するため、計画的な資金準備が不可欠です。 

修繕費は物件の構造や管理状態によって大きく変動しますが、10年目以降は1戸あたり100万円を超える修繕が必要になるケースも珍しくありません。 

保険関連の費用

購入時だけではなく、運用時にも保険関連の費用がかかります。具体的には、運用期間中に保険の契約が切れた場合に、保険契約の更新と保険に関する費用の支払いが必要です。主な保険は以下の通りです。 

  • 火災保険 

  • 地震保険 

  • 団体信用生命保険 

これらの保険の内容は、基本的に物件購入時と同じです。 

火災保険に施設賠償責任特約や家賃収入特約、家主費用特約などがついた保険を契約するという選択肢もあります。 

施設賠償責任特約は、アパート管理における不手際が要因となり、第三者に怪我を負わせた際の損害に対する補償を提供します。 

家賃収入特約では、火災などの災害により家賃収入が途絶えた場合に、その減収分を保障します。家主費用特約においては、自殺・事故・孤独死といった事象による建物の損傷が原因で生じる家賃収入の減少分や、必要となる清掃費用などをカバーします。 

運用の状況に合わせ、必要な保険を契約するとよいでしょう。 

入居者募集にかかる費用

不動産投資を行う際に考慮すべき重要な運用コストの一つが、入居者募集にかかる費用です。

まず、不動産仲介会社へ支払う仲介手数料があります。これは通常、賃料の1ヶ月分程度が相場で、法律上の上限も定められています。 

また、物件の魅力をアピールするための広告料も発生し、こちらも一般的には賃料1ヶ月分程度ですが、立地や条件によっては高額になることもあります。 

さらに、AD費用(アドバタイズメント費用)として、物件を積極的に紹介してもらうためのインセンティブを不動産会社に支払うケースも少なくありません。これらの費用は空室期間を短縮するための投資とも言えますが、収益計画に大きく影響するため、事前に十分な検討が必要です。 

運用時の各種税金

投資物件の運用中は、以下の税金がかかります。 

  • 固定資産税・都市計画税 

  • 所得税・住民税 

  • 個人事業税 

  • 消費税 

それぞれの内容について見てみましょう。 

固定資産税・都市計画税

投資物件の運用中に課される主要な税金として、固定資産税と都市計画税があります。固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している人に対して課される税金です。 

毎年1月1日時点で固定資産を所有している人が納税義務者となり、通常は年4回に分けて支払います。固定資産税の税額は、課税標準額に1.4%の税率を掛けて算出されます。  

一方、都市計画税は固定資産税と同時に課税される税金で、都市計画事業や土地区画整理事業のための財源として使用されます。都市計画税の税率は課税標準額の0.3%です。 

所得税・住民税

不動産投資による所得には所得税と住民税が課されます。所得税は国税で、不動産所得に対して累進課税されます。一方、住民税は地方税で、所得税とは別に課税されます。これらの税金は、総収入から必要経費を差し引いた課税所得に基づいて計算されます。 

所得税の税率は10%から45%まで段階的に上がり、住民税は一般的に課税所得の10%程度です。確定申告を通じて納税額が決定され、適切な経費計上により税負担を軽減できる可能性があります。 

 

個人事業税

個人事業税は、不動産投資が一定規模に達すると課される地方税です。主に、アパート・マンション賃貸は「不動産貸付業」として、おおむね10室以上の物件を所有する場合に課税対象となります。課税所得が290万円を超える場合、(所得金額-290万円)×5%の税率で計算されます。ただし、所得が290万円以下の場合は非課税です。 

3. 売却時の諸費用

売却時にかかる諸費用として、売買仲介手数料・抵当権抹消登記費用・各種税金について解説します。 

売買仲介手数料

仲介手数料は不動産会社が売主と買主の間に立ち、売買契約を成立させるサービスに対して支払う報酬です。仲介手数料は宅地建物取引業法によって上限額が定められており、取引価格に応じて段階的に設定されています。 

仲介手数料の上限は以下の通りです。 

取引価格(税抜き) 

仲介手数料上限額 

200万円以下 

売買価格×5%+消費税 

200万円~400万円以下 

(売買価格×4%+2万円)+消費税 

400万円超 

(売買価格×3%+6万円)+消費税 

売買価格が3,000万円だった場合の計算式は、以下の通りです。 

  • 仲介手数料=3,000万円×3%+6万円=96万円 

これに消費税が10%加わるため、仲介手数料の上限は105万6,000円となります。 

抵当権抹消登記費用

抵当権抹消登記とは、不動産投資ローンなどの債務を完済した際に、不動産登記簿に記載されている抵当権を消去するための手続きです。抵当権は、債務者が返済できなくなった場合に債権者が不動産を処分して優先的に債権回収できる権利として設定されます。 

ローン返済が完了すると抵当権の必要性はなくなりますが、この権利は自動的には消えないため、所有者が積極的に抹消手続きを行う必要があります。 

抵当権抹消登記の費用は主に以下の通りです。 

  • 登録免許税 

  • 司法書士への報酬 

  • 抵当権抹消の書類を取得するための費用 

まず登録免許税として不動産1件につき1,000円が必要です。土地と建物がある場合は2,000円となります。手続きを自分で行わない場合は、司法書士への依頼費用が発生し、一般的に10,000円から20,000円程度が相場となっています。 

また、抹消手続きには債権者から抵当権抹消のための書類(抵当権抹消登記承諾書や登記済証など)を取得する必要があります。金融機関によっては、この書類発行のための手数料を徴収することがあります。手続き完了後に新しい登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する場合は、別途600円程度の費用がかかります。 

さらに、抵当権抹消を行うことでローンを一括返済する場合は、繰り上げ返済手数料が発生することがあります。主要都市銀行では10,000円前後ですが、金融機関によっては返済額の数%と、高額になるケースもあります。一般的にこの手数料は売主が負担します。 

売却時の各種税金

保有している物件を売却すると、以下の税金を支払う必要があります。 

  • 譲渡所得税 

  • 印紙税 

  • 登録免許税 

  • 消費税 

それぞれの内容を詳しく見てみましょう。 

譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産売却による利益(譲渡所得)に課される税金で、所得税と住民税を合算したものです。譲渡所得は売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いて計算され、利益が発生した場合に課税対象となります。 

この税率は所有期間に応じて異なり、5年以下の場合は「短期譲渡所得」5年超の場合は「長期譲渡所得」として扱われます。短期譲渡所得の税率は39%で、内訳は所得税30%、住民税9%です。 

一方、長期譲渡所得の税率は20%で、所得税15%、住民税5%が含まれます。さらに、両者には2037年まで復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が上乗せされます。 

所有期間の判定は譲渡した年の1月1日時点で行われるため、売却タイミングによって短期・長期の区分が変わる点に注意が必要です。 

【出典】国税庁「土地や建物を売ったとき」2024年4月1日現在 

印紙税

印紙税は、不動産売却時に作成される売買契約書に課される国税です。この税金は、契約書に記載された取引金額に応じて変動し、収入印紙を購入して契約書に貼付することで納付が完了します。 

例えば、売却代金が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、印紙税額は10,000円となります。なお、2027年3月31日までの軽減措置が適用されるため、通常より低い税率で計算されます。 

登録免許税

登録免許税は、不動産売却時に所有権移転登記を行う際に課される国税です。この税金は、土地や建物の固定資産税評価額を基準に計算され、通常の税率は評価額の2.0%です。例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地の場合、登録免許税額は20万円となります。ただし、評価額の1000円未満は切り捨てられます。 

不動産投資で諸費用を抑えるには?

不動産投資を行う際には、さまざまな諸費用が発生します。これらの費用を抑えるための3つの方法について説明します。 

仲介手数料を抑える

仲介手数料を抑える方法として、交渉や条件の工夫が重要です。まず、仲介手数料は法律で上限が定められているものの、値引き交渉は可能です。 

また、仲介手数料割引キャンペーンを実施している不動産会社や、定額制の手数料を採用している会社を選ぶことで、費用を節約することも可能です。ただし、割引対象となる物件に条件がある場合があるため、事前に確認が必要です。 

さらに、中小規模の不動産会社に依頼したり、管理会社と直接契約することで仲介手数料を抑えられる場合もあります。これらの方法を活用することで、不動産投資の諸費用を効果的に削減できます。 

小額投資の物件を選ぶ

少額投資の物件を選ぶことも費用抑制に効果的です。具体的には、マンションの区分所有中古の区分マンションへの投資が挙げられます。これらの物件は比較的低価格で購入でき、初期投資を抑えることができます。 

区分マンションの場合、物件の共用部分の管理を専門の管理会社に任せられるため、管理の手間も少なくなります。また、中古物件を選ぶことで、新築と比べて購入価格を抑えられます。ただし、中古物件の場合は管理状態の確認が重要で、定期的なメンテナンスが行われているかを事前にチェックする必要があります。 

さらに、不動産クラウドファンディングやREITなどの少額から始められる投資方法も選択肢として考えられます。これらの方法を活用することで、初期費用を抑えつつ不動産投資を始めることができます。

適切なシミュレーションを行う

不動産投資において諸費用を抑制するには、事前の適切なシミュレーションが不可欠です。投資前に物件の購入費用だけでなく、固定資産税、管理費、修繕費、保険料などの運営コストを正確に見積もることで、予想外の出費を防ぎます。 

特に重要なのは、空室リスクを考慮した収益計算です。平均的な空室率を組み込んだシミュレーションにより、現実的な収支予測が可能になります。 

また、将来的な修繕計画を含めた長期シミュレーションを行うことで、大規模修繕時の資金不足を回避できます。税金面では、減価償却費の正確な計算により節税効果を最大化するシミュレーションが有効です。 

融資条件の比較シミュレーションも、金利負担の軽減に貢献します。これらの多角的シミュレーションにより、投資効率を高めながら諸費用を最適化できるのです。 

 

まとめ

今回は、不動産投資の諸費用について解説しました。不動産投資では物件価格以外にも多くの費用が発生します。購入時には不動産取得税や登録免許税、司法書士報酬、ローン事務手数料、仲介手数料などが必要で、通常は物件価格の5~10%程度になります。 

運用時には固定資産税、都市計画税、管理委託費用、火災保険料、修繕費などが継続的に発生します。 

売却時には仲介手数料、抵当権抹消費用、譲渡所得税が必要です。これらの諸費用は多くの場合、融資対象とならず自己資金での準備が求められます。 

成功するためには、これらの費用を事前に把握し、十分な資金計画を立てることが不可欠です。適切なシミュレーションを行い、物件選びや仲介手数料の交渉など、諸費用を抑える工夫をすることも重要です。 

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。