2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の頭金はどの程度必要?頭金なしのフルローンの注意点も解説

  • 融資・ローン
  • 購入
  • 頭金

不動産投資を始める際に「頭金は多い方がいいか、少ない方がいいか分からない」という人もいるのではないでしょうか。不動産投資は、頭金以外にもさまざまな費用がかかるため、全体的にどのぐらいの費用がかかるのかを把握することが大切です。

この記事では、不動産投資で頭金以外にかかる費用、頭金なしのフルローンの注意点、金融機関が重視するポイントなど、頭金について投資家が知っておくべきことを解説します。

不動産投資はローンを組んで投資する

不動産投資は、金融機関からローンを借り入れて物件を購入することが一般的です。ローンと聞くと「返済できるだろうか」「リスクがあるのでは」と不安になる人もいるかもしれません。しかし、ローンには「レバレッジをかけて効率的に資産を増やせる」というメリットがあります。

レバレッジとは、小さな力で大きなものを動かす「てこの原理」のことです。投資においては、小さな元手で大きな投資効果を得ることをいいます。

不動産投資には、ローンを組むことで大きな投資効果を目指せるというメリットがあります。

必ずしも物件価格の100%ローンが出るわけではない

物件価格と同額のローンを組むことをフルローンといいますが、不動産投資でローンを組む際にフルローンを組めるとは限りません。物件価格の一部を自己資金でまかない、残りはローンを活用するのが一般的です。このとき物件の購入に充当する自己資金を「頭金」といいます。

ローン+自己資金(頭金)で投資するケースが多い

不動産投資では、多くの人が「ローン+自己資金(頭金)」で投資用物件を購入します。このときの頭金は、物件価格の10~20%程度が目安といわれていますが、頭金を50%以上用意する投資家もいれば頭金0円でフルローンを組む投資家もいます。

少しでも頭金を抑えて不動産投資を始めたいと考えているなら、頭金が少なくても不動産投資を始められるようにサポートしている不動産投資会社を選ぶとよいでしょう。

物件価格のローンを組めても諸費用はローンが組めないケースが多い

不動産投資を始める時に注意したいのが、物件購入時の諸費用はローンに含められないケースが多いという点です。諸費用というと少額に感じるかもしれませんが、物件価格によっては数十万円~数百万円の諸費用がかかることもあります。諸費用の例は、以下の通りです。

  • 不動産取得税
  • 登記で必要な登録免許税
  • 登記を司法書士へ依頼するときの報酬
  • 火災保険料や地震保険料
  • 売買契約書に貼る印紙税
  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 固定資産税や都市計画税の清算金
  • 不動産投資ローンの事務手数料
  • 不動産投資ローンの保証料
  • 団体信用生命保険料

不動産投資の諸費用は、物件価格の7~10%程度が目安といわれています。このうち税金や保険料などは減らすことが難しい項目です。諸費用の中でも差が出やすく、場合によっては減らせる項目は、不動産投資会社に支払う仲介手数料です。不動産投資を始める時は、仲介手数料の金額や計算方法にも注目して不動産投資会社を選びましょう。

かつてはオーバーローンを組みやすい時期もあった

フルローンの他に「オーバーローン」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。不動産投資業界におけるオーバーローンとは、物件価格だけでなく諸費用もローンでまかなうことをいいます。

<一般的なケース>
物件価格:2,000万円
ローン:1,800万円
諸費用:150万円
頭金(自己資金):350万円


<フルローン>
物件価格:2,000万円
ローン:2,000万円
諸費用:150万円
頭金(自己資金):150万円


<オーバーローン>
物件価格:2,000万円
ローン:2,150万円
諸費用:150万円
頭金(自己資金):0万円

オーバーローンなら諸費用を含めて元手0円で不動産投資を始めることが可能です。しかし、ローン総額が大きくなるオーバーローンには、返済の負担が重く資金繰りが悪化しやすいというデメリットがあります。また元金が大きいと金利が上昇した時に返済額が大きく増えることにもなりかねません。さらに売却時にローンの残債が売却額を上回る可能性も高くなります。

かつてはオーバーローンが組みやすい時期もありました。しかし、以下のような要因から近年はあまり一般的ではなくなっています。

・投資家と金融機関の双方にとってリスクが高い
・不正融資の多発に伴う審査の厳格化

物件価格を水増しするなど虚偽の申告をしてオーバーローンを組んだ場合、違法になる可能性があります。詳しい説明をせずオーバーローンを過剰に勧めてくる業者には注意しましょう。

フルローンが組めるケース

物件価格を全てローンでまかなうフルローンは、オーバーローンよりリスクが低いといえますが、頭金を支払う一般的なケースと比べるとリスクが高くなります。ただし、フルローンには「投資効率が良い」というメリットがあることも忘れてはいけません。ここでは、フルローンを組みやすくなる条件について詳しく見ていきましょう。

物件価格が金融機関評価を上回っている

金融機関は、不動産投資ローンを申し込み後に対象となる物件の評価を行います。そのため金融機関評価が高い物件を選べばフルローンを組みやすくなるでしょう。金融機関が物件評価する方法には、いくつか種類がありますが、ここでは代表的な評価方法である「積算評価法」と「収益還元法」の2つについて解説します。

積算評価法

積算評価法は、土地の評価額と建物の評価額を合算して不動産価値を評価する方法です。積算評価法は「今この土地を買って同じ建物を建てるとどのくらいお金がかかるか」という考え方をベースにしています。積算評価法における土地評価の計算式は「路線価×土地面積」です。路線価とは、道路に面した土地における1平方メートルあたりの評価額のことで毎年7月頃に国税庁が発表します。

例えば、路線価60万円の道路に面した100平方メートルの土地なら「60万円×100平方メートル」で評価額は6,000万円です。建物は「再調達価格×延床面積×(残存年数÷法定耐用年数)」で評価します。再調達価格とは、もう一度新しく立て直す場合にかかる金額のことです。建物の構造ごとに単価が決められています。これに経年劣化を加味して評価額を算出します。

残存年数は、法定耐用年数から築年数を引いて計算します。法定耐用年数とは、建物の構造や用途ごとに決められている使用可能期間のことです。こうしてそれぞれに求めた土地の評価額と建物の評価額を合算した金額が積算評価額となります。
※実際の土地の評価額は、面している道路の数や奥行き、形状によって補正して計算

収益還元法

収益還元法とは、将来見込める収益をベースに土地や建物を評価する方法です。収益還元法は、「直接還元法」と「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」に分けられます。

直接還元法では、1年間の利益を還元利回りで割って不動産を評価するのが特徴です。還元利回りは、キャップレートとも呼ばれ周辺の取引事例などをもとに計算します。

一方DCF法は、予測収益と予測売却価格を現在価値に換算して不動産を評価する方法です。直接還元法よりも計算が複雑な分、精度が高いことが特徴です。

個人の与信が高い

個人の与信が高いと金融機関のローン審査に通りやすいため、フルローンを組みやすくなります。与信とは、文字通り「金融機関が信用を与えること」です。以下のような属性は与信の高さにつながります。

所得が高い

金融機関が知りたいのは、貸したお金が滞りなく返済されるかどうかです。不動産投資では、家賃収入からローンを返済していくことになりますが、所得が高いと返済が滞るリスクが下がるため、金融機関からすると安心材料になります。不動産投資ローンを組める年収の目安は500万円といわれていますが、フルローンを組みたいならそれより高い年収が望ましいでしょう。

また過去3年程度の年収を確認することが一般的なため「成果給などでたまたま年収が高かった」という場合は、評価上あまりプラスになりません。さらに勤務先や勤続年数も影響します。一流企業で勤続年数が長ければ給与収入が維持される可能性が高いため、評価は高くなるでしょう。解雇リスクのない公務員や勤め先を見つけやすい国家資格なども評価上プラスに働くことがあります。

資産背景

不動産投資ローンでは、資産背景も考慮されます。預金残高が多く、他にローン等の借り入れがないとフルローンを組みやすくなるでしょう。住宅ローンを利用していても不動産投資ローンは組めますが、借り入れがない場合と比べると不利になります。また、住宅ローンを含む他のローンで返済が滞っているような場合は、フルローンどころか不動産投資ローン自体を組むことが難しくなるでしょう。

保有物件に担保余力がある

担保余力とは、担保の残存価値のことです。すでに保有している物件を担保にしてローンを組む場合に考慮されます。例えば、物件評価額3,000万円の不動産を所有しており、それを担保に2,000万円のローンを組むと担保余力は1,000万円です。担保余力は、所有している不動産の資産価値によって異なりますが、担保余力があることは審査ではプラスに働きます。

フルローンの特徴

フルローンを組めるかどうかは、物件評価や借入申込者の属性によって変わってきます。上述したように属性で影響を及ぼす項目も年収や勤務先、他のローンの状況などさまざまです。「厳しそうなのでフルローンは無理」と感じる人もいるかもしれませんが、最初から諦めずに選択肢の一つとして検討しておくとよいでしょう。

ここでは、頭金0円のフルローンの特徴を解説します。

自己資金を温存できる

頭金0円のフルローンなら自己資金の温存が可能です。自己資金を手元に残しておくことで良い物件が出たときなど投資のチャンスを逃しにくくなります。自己資金を全て頭金と諸費用に充当してローンを組んだ場合、ローン総額が少なくなり毎月の返済の負担が減ることはメリットといえます。しかし、自己資金がないと、魅力的な物件を見つけても見送ることになるかもしれません。
フルローンを利用すれば自己資金を温存できて追加融資を受けられる可能性が高くなるため、チャンスを見逃さずに次の物件を購入しやすくなるでしょう。

毎月の返済額が大きくなるので保有中のキャッシュフローは減少

フルローンは、ローン総額が高額になるため、毎月の返済の負担が増える点も忘れてはいけません。不動産投資をしている間のキャッシュフロー(お金の流れ)の計算は、家賃収入から経費や返済額を差し引くことで算出可能です。フルローンは、頭金は0円で済むものの返済額が増えることで毎月のキャッシュフローは減少します。

また、ローンの利息は、元金に利率をかけて計算する点も押さえておきましょう。フルローンで元金が大きくなるとトータルで負担する利息の金額も増えます。フルローンには、レバレッジを効かせることで投資効率が高まるというメリットがありますが、リスクもあるので注意が必要です。しっかりと返済計画を立て、問題なく不動産投資を続けられるかをチェックした上でフルローンを選択しましょう。

頭金を多く入れるメリット

フルローンとは対照的に少しでも頭金を多く入れてローンの割合を減らしたい人もいるかもしれません。ここでは、頭金を多く入れるメリットを2つの視点から解説します。

物件を購入しやすい

頭金を多く入れると借入金額を減らすことができるため、金融機関の審査にも通りやすくなり物件を購入しやすくなります。また投資する物件の選択肢が広がる点もメリットの一つです。

毎月の返済額が少なくなるので、運営が安定する

頭金を多く入れるとローンの総額が少なくなるため、毎月の返済額の負担も減ります。フルローンと比べて不動産投資をしている間のキャッシュフローが増加するため、資金的に余裕を持って不動産経営を続けられるでしょう。またローンの元金を減らせるため、トータルで支払う利息額を減らすことができます。

ただし、頭金を多く入れすぎて自己資金が不足すると「空室によるキャッシュフローの減少」「病気や失業による家計の悪化」といったリスクに対応しきれなくなる可能性があります。そのため、できる限り自己資金に余力を残した上で、妥当な金額を頭金として入れることを考えましょう。また頭金が増えるほどレバレッジ効果は低くなり投資効率が下がるという点にも注意が必要です。

レバレッジを効かせて投資効果を高められるのは不動産投資の魅力でもあるため、投資効率も踏まえて頭金とローンの割合を決めるとよいでしょう。

どちらが良い、悪いではないので、シミュレーションして把握することが重要

不動産投資で大切なのは、しっかりとシミュレーションした上で自分に合った方法を選択することです。必ずしもフルローンやオーバーローンが悪いわけではなく、また「頭金が少ないほどいい」「多いほどいい」というわけでもありません。「投資効率を追求したい」「追加投資も検討している」という場合はフルローンを検討してもよいでしょう。

フルローンを組むと、キャッシュフローが悪化するリスクがあるため、不動産投資に時間を割いてキャッシュフローをチェックする時間的な余裕が必要です。またフルローンを組めるかどうかは、投資する物件や借入申込者の属性によって大きく変わります。そのため自分自身の属性をチェックするとともに、フルローンを組める物件を紹介してくれる不動産投資会社を探しておくことも大切です。

投資効率がやや下がっても返済リスクを減らしたい場合は、頭金を多めに入れることを検討しましょう。頭金を多めに入れるとキャッシュフローが悪化しにくくなるため、「最初にまとまった資金を投じて、後はある程度ほったらかしにしたい」という人にも向いています。ただし、頭金を入れすぎて自己資金が不足すると逆にリスクが高まる点も忘れてはいけません。

そのため「自己資金のうちいくらを頭金に充当するか」については、専門家のアドバイスを受けながら判断することが重要です。頭金をどの程度入れるのが適切なのか、投資を決断する前にしっかりとシミュレーションしておくことが求められます。周辺の家賃相場や駅周辺の開発状況などの情報にアンテナを張るだけでなく、賃貸経営や税金について最低限の知識を身につけることを意識しましょう。

また空室リスクや家賃下落リスクについても十分に理解し、キャッシュフローが悪化する事態も想定した上で投資判断を行うことが大切です。

まとめ

「頭金をたくさん入れるか」「頭金0円のフルローンを選ぶか」についてどちらが良いかは、一概には言えません。リスクに対する考え方、不動産投資に割ける時間、年収や預金残高などを総合的に考慮して自分に合う選択をすることが大切です。

不動産投資では、頭金以外にも諸費用がかかり、諸費用は自己資金から出すことが一般的です。そのため、頭金と諸費用の両方を考慮して自己資金を用意しましょう。
頭金をどのくらい入れるか決める際は、不動産投資をスタートした後のシミュレーションを行い、しっかりと事業計画を立てることが大切です。賃貸経営にかかる経費や税金、返済予定を踏まえて何度も事業計画を見直し、納得した上で決断しましょう。

不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の頭金はどの程度必要?頭金なしのフルローンの注意点も解説

  • 融資・ローン
  • 購入
  • 頭金

不動産投資を始める際に「頭金は多い方がいいか、少ない方がいいか分からない」という人もいるのではないでしょうか。不動産投資は、頭金以外にもさまざまな費用がかかるため、全体的にどのぐらいの費用がかかるのかを把握することが大切です。

この記事では、不動産投資で頭金以外にかかる費用、頭金なしのフルローンの注意点、金融機関が重視するポイントなど、頭金について投資家が知っておくべきことを解説します。

不動産投資はローンを組んで投資する

不動産投資は、金融機関からローンを借り入れて物件を購入することが一般的です。ローンと聞くと「返済できるだろうか」「リスクがあるのでは」と不安になる人もいるかもしれません。しかし、ローンには「レバレッジをかけて効率的に資産を増やせる」というメリットがあります。

レバレッジとは、小さな力で大きなものを動かす「てこの原理」のことです。投資においては、小さな元手で大きな投資効果を得ることをいいます。

不動産投資には、ローンを組むことで大きな投資効果を目指せるというメリットがあります。

必ずしも物件価格の100%ローンが出るわけではない

物件価格と同額のローンを組むことをフルローンといいますが、不動産投資でローンを組む際にフルローンを組めるとは限りません。物件価格の一部を自己資金でまかない、残りはローンを活用するのが一般的です。このとき物件の購入に充当する自己資金を「頭金」といいます。

ローン+自己資金(頭金)で投資するケースが多い

不動産投資では、多くの人が「ローン+自己資金(頭金)」で投資用物件を購入します。このときの頭金は、物件価格の10~20%程度が目安といわれていますが、頭金を50%以上用意する投資家もいれば頭金0円でフルローンを組む投資家もいます。

少しでも頭金を抑えて不動産投資を始めたいと考えているなら、頭金が少なくても不動産投資を始められるようにサポートしている不動産投資会社を選ぶとよいでしょう。

物件価格のローンを組めても諸費用はローンが組めないケースが多い

不動産投資を始める時に注意したいのが、物件購入時の諸費用はローンに含められないケースが多いという点です。諸費用というと少額に感じるかもしれませんが、物件価格によっては数十万円~数百万円の諸費用がかかることもあります。諸費用の例は、以下の通りです。

  • 不動産取得税
  • 登記で必要な登録免許税
  • 登記を司法書士へ依頼するときの報酬
  • 火災保険料や地震保険料
  • 売買契約書に貼る印紙税
  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 固定資産税や都市計画税の清算金
  • 不動産投資ローンの事務手数料
  • 不動産投資ローンの保証料
  • 団体信用生命保険料

不動産投資の諸費用は、物件価格の7~10%程度が目安といわれています。このうち税金や保険料などは減らすことが難しい項目です。諸費用の中でも差が出やすく、場合によっては減らせる項目は、不動産投資会社に支払う仲介手数料です。不動産投資を始める時は、仲介手数料の金額や計算方法にも注目して不動産投資会社を選びましょう。

かつてはオーバーローンを組みやすい時期もあった

フルローンの他に「オーバーローン」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。不動産投資業界におけるオーバーローンとは、物件価格だけでなく諸費用もローンでまかなうことをいいます。

<一般的なケース>
物件価格:2,000万円
ローン:1,800万円
諸費用:150万円
頭金(自己資金):350万円


<フルローン>
物件価格:2,000万円
ローン:2,000万円
諸費用:150万円
頭金(自己資金):150万円


<オーバーローン>
物件価格:2,000万円
ローン:2,150万円
諸費用:150万円
頭金(自己資金):0万円

オーバーローンなら諸費用を含めて元手0円で不動産投資を始めることが可能です。しかし、ローン総額が大きくなるオーバーローンには、返済の負担が重く資金繰りが悪化しやすいというデメリットがあります。また元金が大きいと金利が上昇した時に返済額が大きく増えることにもなりかねません。さらに売却時にローンの残債が売却額を上回る可能性も高くなります。

かつてはオーバーローンが組みやすい時期もありました。しかし、以下のような要因から近年はあまり一般的ではなくなっています。

・投資家と金融機関の双方にとってリスクが高い
・不正融資の多発に伴う審査の厳格化

物件価格を水増しするなど虚偽の申告をしてオーバーローンを組んだ場合、違法になる可能性があります。詳しい説明をせずオーバーローンを過剰に勧めてくる業者には注意しましょう。

フルローンが組めるケース

物件価格を全てローンでまかなうフルローンは、オーバーローンよりリスクが低いといえますが、頭金を支払う一般的なケースと比べるとリスクが高くなります。ただし、フルローンには「投資効率が良い」というメリットがあることも忘れてはいけません。ここでは、フルローンを組みやすくなる条件について詳しく見ていきましょう。

物件価格が金融機関評価を上回っている

金融機関は、不動産投資ローンを申し込み後に対象となる物件の評価を行います。そのため金融機関評価が高い物件を選べばフルローンを組みやすくなるでしょう。金融機関が物件評価する方法には、いくつか種類がありますが、ここでは代表的な評価方法である「積算評価法」と「収益還元法」の2つについて解説します。

積算評価法

積算評価法は、土地の評価額と建物の評価額を合算して不動産価値を評価する方法です。積算評価法は「今この土地を買って同じ建物を建てるとどのくらいお金がかかるか」という考え方をベースにしています。積算評価法における土地評価の計算式は「路線価×土地面積」です。路線価とは、道路に面した土地における1平方メートルあたりの評価額のことで毎年7月頃に国税庁が発表します。

例えば、路線価60万円の道路に面した100平方メートルの土地なら「60万円×100平方メートル」で評価額は6,000万円です。建物は「再調達価格×延床面積×(残存年数÷法定耐用年数)」で評価します。再調達価格とは、もう一度新しく立て直す場合にかかる金額のことです。建物の構造ごとに単価が決められています。これに経年劣化を加味して評価額を算出します。

残存年数は、法定耐用年数から築年数を引いて計算します。法定耐用年数とは、建物の構造や用途ごとに決められている使用可能期間のことです。こうしてそれぞれに求めた土地の評価額と建物の評価額を合算した金額が積算評価額となります。
※実際の土地の評価額は、面している道路の数や奥行き、形状によって補正して計算

収益還元法

収益還元法とは、将来見込める収益をベースに土地や建物を評価する方法です。収益還元法は、「直接還元法」と「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」に分けられます。

直接還元法では、1年間の利益を還元利回りで割って不動産を評価するのが特徴です。還元利回りは、キャップレートとも呼ばれ周辺の取引事例などをもとに計算します。

一方DCF法は、予測収益と予測売却価格を現在価値に換算して不動産を評価する方法です。直接還元法よりも計算が複雑な分、精度が高いことが特徴です。

個人の与信が高い

個人の与信が高いと金融機関のローン審査に通りやすいため、フルローンを組みやすくなります。与信とは、文字通り「金融機関が信用を与えること」です。以下のような属性は与信の高さにつながります。

所得が高い

金融機関が知りたいのは、貸したお金が滞りなく返済されるかどうかです。不動産投資では、家賃収入からローンを返済していくことになりますが、所得が高いと返済が滞るリスクが下がるため、金融機関からすると安心材料になります。不動産投資ローンを組める年収の目安は500万円といわれていますが、フルローンを組みたいならそれより高い年収が望ましいでしょう。

また過去3年程度の年収を確認することが一般的なため「成果給などでたまたま年収が高かった」という場合は、評価上あまりプラスになりません。さらに勤務先や勤続年数も影響します。一流企業で勤続年数が長ければ給与収入が維持される可能性が高いため、評価は高くなるでしょう。解雇リスクのない公務員や勤め先を見つけやすい国家資格なども評価上プラスに働くことがあります。

資産背景

不動産投資ローンでは、資産背景も考慮されます。預金残高が多く、他にローン等の借り入れがないとフルローンを組みやすくなるでしょう。住宅ローンを利用していても不動産投資ローンは組めますが、借り入れがない場合と比べると不利になります。また、住宅ローンを含む他のローンで返済が滞っているような場合は、フルローンどころか不動産投資ローン自体を組むことが難しくなるでしょう。

保有物件に担保余力がある

担保余力とは、担保の残存価値のことです。すでに保有している物件を担保にしてローンを組む場合に考慮されます。例えば、物件評価額3,000万円の不動産を所有しており、それを担保に2,000万円のローンを組むと担保余力は1,000万円です。担保余力は、所有している不動産の資産価値によって異なりますが、担保余力があることは審査ではプラスに働きます。

フルローンの特徴

フルローンを組めるかどうかは、物件評価や借入申込者の属性によって変わってきます。上述したように属性で影響を及ぼす項目も年収や勤務先、他のローンの状況などさまざまです。「厳しそうなのでフルローンは無理」と感じる人もいるかもしれませんが、最初から諦めずに選択肢の一つとして検討しておくとよいでしょう。

ここでは、頭金0円のフルローンの特徴を解説します。

自己資金を温存できる

頭金0円のフルローンなら自己資金の温存が可能です。自己資金を手元に残しておくことで良い物件が出たときなど投資のチャンスを逃しにくくなります。自己資金を全て頭金と諸費用に充当してローンを組んだ場合、ローン総額が少なくなり毎月の返済の負担が減ることはメリットといえます。しかし、自己資金がないと、魅力的な物件を見つけても見送ることになるかもしれません。
フルローンを利用すれば自己資金を温存できて追加融資を受けられる可能性が高くなるため、チャンスを見逃さずに次の物件を購入しやすくなるでしょう。

毎月の返済額が大きくなるので保有中のキャッシュフローは減少

フルローンは、ローン総額が高額になるため、毎月の返済の負担が増える点も忘れてはいけません。不動産投資をしている間のキャッシュフロー(お金の流れ)の計算は、家賃収入から経費や返済額を差し引くことで算出可能です。フルローンは、頭金は0円で済むものの返済額が増えることで毎月のキャッシュフローは減少します。

また、ローンの利息は、元金に利率をかけて計算する点も押さえておきましょう。フルローンで元金が大きくなるとトータルで負担する利息の金額も増えます。フルローンには、レバレッジを効かせることで投資効率が高まるというメリットがありますが、リスクもあるので注意が必要です。しっかりと返済計画を立て、問題なく不動産投資を続けられるかをチェックした上でフルローンを選択しましょう。

頭金を多く入れるメリット

フルローンとは対照的に少しでも頭金を多く入れてローンの割合を減らしたい人もいるかもしれません。ここでは、頭金を多く入れるメリットを2つの視点から解説します。

物件を購入しやすい

頭金を多く入れると借入金額を減らすことができるため、金融機関の審査にも通りやすくなり物件を購入しやすくなります。また投資する物件の選択肢が広がる点もメリットの一つです。

毎月の返済額が少なくなるので、運営が安定する

頭金を多く入れるとローンの総額が少なくなるため、毎月の返済額の負担も減ります。フルローンと比べて不動産投資をしている間のキャッシュフローが増加するため、資金的に余裕を持って不動産経営を続けられるでしょう。またローンの元金を減らせるため、トータルで支払う利息額を減らすことができます。

ただし、頭金を多く入れすぎて自己資金が不足すると「空室によるキャッシュフローの減少」「病気や失業による家計の悪化」といったリスクに対応しきれなくなる可能性があります。そのため、できる限り自己資金に余力を残した上で、妥当な金額を頭金として入れることを考えましょう。また頭金が増えるほどレバレッジ効果は低くなり投資効率が下がるという点にも注意が必要です。

レバレッジを効かせて投資効果を高められるのは不動産投資の魅力でもあるため、投資効率も踏まえて頭金とローンの割合を決めるとよいでしょう。

どちらが良い、悪いではないので、シミュレーションして把握することが重要

不動産投資で大切なのは、しっかりとシミュレーションした上で自分に合った方法を選択することです。必ずしもフルローンやオーバーローンが悪いわけではなく、また「頭金が少ないほどいい」「多いほどいい」というわけでもありません。「投資効率を追求したい」「追加投資も検討している」という場合はフルローンを検討してもよいでしょう。

フルローンを組むと、キャッシュフローが悪化するリスクがあるため、不動産投資に時間を割いてキャッシュフローをチェックする時間的な余裕が必要です。またフルローンを組めるかどうかは、投資する物件や借入申込者の属性によって大きく変わります。そのため自分自身の属性をチェックするとともに、フルローンを組める物件を紹介してくれる不動産投資会社を探しておくことも大切です。

投資効率がやや下がっても返済リスクを減らしたい場合は、頭金を多めに入れることを検討しましょう。頭金を多めに入れるとキャッシュフローが悪化しにくくなるため、「最初にまとまった資金を投じて、後はある程度ほったらかしにしたい」という人にも向いています。ただし、頭金を入れすぎて自己資金が不足すると逆にリスクが高まる点も忘れてはいけません。

そのため「自己資金のうちいくらを頭金に充当するか」については、専門家のアドバイスを受けながら判断することが重要です。頭金をどの程度入れるのが適切なのか、投資を決断する前にしっかりとシミュレーションしておくことが求められます。周辺の家賃相場や駅周辺の開発状況などの情報にアンテナを張るだけでなく、賃貸経営や税金について最低限の知識を身につけることを意識しましょう。

また空室リスクや家賃下落リスクについても十分に理解し、キャッシュフローが悪化する事態も想定した上で投資判断を行うことが大切です。

まとめ

「頭金をたくさん入れるか」「頭金0円のフルローンを選ぶか」についてどちらが良いかは、一概には言えません。リスクに対する考え方、不動産投資に割ける時間、年収や預金残高などを総合的に考慮して自分に合う選択をすることが大切です。

不動産投資では、頭金以外にも諸費用がかかり、諸費用は自己資金から出すことが一般的です。そのため、頭金と諸費用の両方を考慮して自己資金を用意しましょう。
頭金をどのくらい入れるか決める際は、不動産投資をスタートした後のシミュレーションを行い、しっかりと事業計画を立てることが大切です。賃貸経営にかかる経費や税金、返済予定を踏まえて何度も事業計画を見直し、納得した上で決断しましょう。

不動産投資をご検討の際にはぜひベルテックスにご相談ください!

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。