2025.12.19

ライフプランと資産形成

長岡 理知

なぜFPは「ワンルーム投資はやめておけ」と忠告するのか? 多くの投資家が陥る「失敗物件」の共通点

  • 不動産投資

FPが「本当に」やめておけと忠告する物件3つの特徴

知識のない初心者が営業マンに勧められて、つい手を出してしまう「典型的な失敗物件」には、3つの特徴があります。 

1.「地方」や「郊外」の物件

営業マンから「都心は価格が高騰していて利回りが低い。それに比べてこの地方都市の物件は、価格も安く高利回りです!」と勧められるケースがあります。これに手を出すと、失敗に繋がる可能性が高いです。 

ワンルームマンションの主な入居者ターゲットは、学生や単身赴任者、独身の社会人です。日本の総人口は減少していますが、その内訳をみると、単身世帯はむしろ増加傾向にあります。しかし、それは企業や大学が集中し、交通利便性の高い大都市圏、それも東京の都心の話です。地方では人口だけではなく、世帯数自体が減少している傾向にあります。 

購入時は満室で高い利回り(表面利回り)が出ていても、5年後、10年後に空室が目立ちはじめ、家賃を下げなければ入居者が決まらなくなるのです。表面利回りが8〜10%あっても、稼働率が70%を下回れば、実質利回りは4%台に落ち込むでしょう。赤字を垂れ流したあげく、売却しようにも買い手がつかないという最悪のシナリオに陥りやすいのが、地方の物件です。 

2.利回りだけが高い物件

「表面利回り10%超え!」といった謳い文句には裏があることに要注意です。

不動産投資には「表面利回り(年間家賃収入 ÷ 物件価格)」「実質利回り((年間家賃収入 - 諸経費) ÷ 物件価格)」があります。利回り“だけ”が高い物件は、多くの場合、この「諸経費」に問題を抱えています。 

たとえば築古物件は価格が安いため、表面利回りは高くなりがちです。しかし、近い将来に大規模修繕が控えていれば、修繕のために一時金として数十万円を徴収されたり、修繕ができずに建物が劣化し続けたりするリスクがあります。逆に管理費、修繕積立金が非常に高く設定されているために、利回りが著しく下がるケースも少なくありません。 

表面利回りの数字だけに踊らされず、その物件の「管理状態」と「修繕計画」を精査することが不可欠です。 

3.サブリース(家賃保証)前提の物件

「30年間、空室があっても家賃を保証します」というサブリース契約。一見、オーナーにとって非常に安心な仕組みにみえますが、FPとしてはかなり慎重になりたい契約形態の一つです。 

サブリース業者は、オーナーから物件を借り上げ、それを入居者に又貸しします。オーナーへの「保証家賃」は、本来の相場家賃から業者のマージン(通常10%~20%)を引いた額になるため、当然ながらこれが利回りの低下を招きます。 

さらに、この「保証家賃」は30年間一定ではありません。契約書には必ず、「数年ごとに家賃を見直すことができる」という条項が含まれています。近隣の家賃相場が下落したり、空室が続いたりすれば、業者はオーナーに対し、保証家賃の引き下げを要求してきます。 

オーナーがそれを拒否すれば、業者は「では契約を解除します」と通告できるのです(借地借家法上、業者側の権利が強い)。結局、オーナーは家賃引き下げをのむか、サブリース契約を解除されて自分で入居者を探すかの選択を迫られます。 

業者が提示する甘いシミュレーションを鵜呑みにし、サブリースありきで高額なローンを組んでしまうと、数年後の家賃引き下げによって一気に赤字転落するリスクがあることに注意しましょう。 

ワンルーム投資、成功のための「2つの最低条件」

FPが「やめておけ」と忠告するのは、上記のような「失敗物件」の場合です。逆に、将来のライフプランを支える有力な資産となる可能性がある「成功物件」も存在します。 

では、成功物件の条件とはなんでしょうか。 

まず、「東京都心・駅近」であることです。人口が減少する日本においても、特に東京23区への人口流入は続いています。外国人も増えているため、東京都心での不動産の需要は今後も高まっていくと考えられるでしょう。駅近で利便性の高い立地。これは資産価値と入居率を維持するために、ほとんど必須の条件といっていいでしょう。 

次に、管理体制がしっかりしていること。管理体制が崩壊していると、どんなに立地がよくても、入居率は下がり、住民の質が低下していきます。エントランスが汚い、ゴミ捨て場が荒れている、修繕がまったく行われない、雑草が伸び放題……。そんな物件でも構わず借りるのはあまり歓迎される人物ではないかもしれません。管理会社・管理組合がしっかりと機能し、清掃や修繕計画が適切に行われているか。これが、長期にわたって高い入居率を維持し、資産価値を下げないための必須条件です。 

ワンルーム投資で成功した人であれば当たり前に思うこの2つの条件を、初心者は無視してしまう傾向があります。 

投資の「目的」と「出口戦略」から逆算する

この最低条件2つが揃ったからといって、FPがすぐにワンルーム投資をおすすめするかというと、そうではありません。 

より大切なのは、「その投資が自分のライフプランの上でどのような目的を持つのか?」という視点です。転売を繰り返して売却益を狙うのか、長期で保有し家賃収入を得るのか、高収入サラリーマンが節税をするためなのか、生命保険代わりのリスクヘッジに使うのか、など、ワンルーム投資には目的の設定が不可欠となります。

目的設定や出口戦略から逆算して、ライフプランに組み込んで考えることで、自分が「買ってはいけないワンルーム」、「買ってもいいワンルーム」がみてくるはずです。 

この記事を書いた人

長岡 理知

長岡FP事務所合同会社 代表社員

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。

住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。

2025.12.19

ライフプランと資産形成

長岡 理知

なぜFPは「ワンルーム投資はやめておけ」と忠告するのか? 多くの投資家が陥る「失敗物件」の共通点

  • 不動産投資

FPが「本当に」やめておけと忠告する物件3つの特徴

知識のない初心者が営業マンに勧められて、つい手を出してしまう「典型的な失敗物件」には、3つの特徴があります。 

1.「地方」や「郊外」の物件

営業マンから「都心は価格が高騰していて利回りが低い。それに比べてこの地方都市の物件は、価格も安く高利回りです!」と勧められるケースがあります。これに手を出すと、失敗に繋がる可能性が高いです。 

ワンルームマンションの主な入居者ターゲットは、学生や単身赴任者、独身の社会人です。日本の総人口は減少していますが、その内訳をみると、単身世帯はむしろ増加傾向にあります。しかし、それは企業や大学が集中し、交通利便性の高い大都市圏、それも東京の都心の話です。地方では人口だけではなく、世帯数自体が減少している傾向にあります。 

購入時は満室で高い利回り(表面利回り)が出ていても、5年後、10年後に空室が目立ちはじめ、家賃を下げなければ入居者が決まらなくなるのです。表面利回りが8〜10%あっても、稼働率が70%を下回れば、実質利回りは4%台に落ち込むでしょう。赤字を垂れ流したあげく、売却しようにも買い手がつかないという最悪のシナリオに陥りやすいのが、地方の物件です。 

2.利回りだけが高い物件

「表面利回り10%超え!」といった謳い文句には裏があることに要注意です。

不動産投資には「表面利回り(年間家賃収入 ÷ 物件価格)」「実質利回り((年間家賃収入 - 諸経費) ÷ 物件価格)」があります。利回り“だけ”が高い物件は、多くの場合、この「諸経費」に問題を抱えています。 

たとえば築古物件は価格が安いため、表面利回りは高くなりがちです。しかし、近い将来に大規模修繕が控えていれば、修繕のために一時金として数十万円を徴収されたり、修繕ができずに建物が劣化し続けたりするリスクがあります。逆に管理費、修繕積立金が非常に高く設定されているために、利回りが著しく下がるケースも少なくありません。 

表面利回りの数字だけに踊らされず、その物件の「管理状態」と「修繕計画」を精査することが不可欠です。 

3.サブリース(家賃保証)前提の物件

「30年間、空室があっても家賃を保証します」というサブリース契約。一見、オーナーにとって非常に安心な仕組みにみえますが、FPとしてはかなり慎重になりたい契約形態の一つです。 

サブリース業者は、オーナーから物件を借り上げ、それを入居者に又貸しします。オーナーへの「保証家賃」は、本来の相場家賃から業者のマージン(通常10%~20%)を引いた額になるため、当然ながらこれが利回りの低下を招きます。 

さらに、この「保証家賃」は30年間一定ではありません。契約書には必ず、「数年ごとに家賃を見直すことができる」という条項が含まれています。近隣の家賃相場が下落したり、空室が続いたりすれば、業者はオーナーに対し、保証家賃の引き下げを要求してきます。 

オーナーがそれを拒否すれば、業者は「では契約を解除します」と通告できるのです(借地借家法上、業者側の権利が強い)。結局、オーナーは家賃引き下げをのむか、サブリース契約を解除されて自分で入居者を探すかの選択を迫られます。 

業者が提示する甘いシミュレーションを鵜呑みにし、サブリースありきで高額なローンを組んでしまうと、数年後の家賃引き下げによって一気に赤字転落するリスクがあることに注意しましょう。 

ワンルーム投資、成功のための「2つの最低条件」

FPが「やめておけ」と忠告するのは、上記のような「失敗物件」の場合です。逆に、将来のライフプランを支える有力な資産となる可能性がある「成功物件」も存在します。 

では、成功物件の条件とはなんでしょうか。 

まず、「東京都心・駅近」であることです。人口が減少する日本においても、特に東京23区への人口流入は続いています。外国人も増えているため、東京都心での不動産の需要は今後も高まっていくと考えられるでしょう。駅近で利便性の高い立地。これは資産価値と入居率を維持するために、ほとんど必須の条件といっていいでしょう。 

次に、管理体制がしっかりしていること。管理体制が崩壊していると、どんなに立地がよくても、入居率は下がり、住民の質が低下していきます。エントランスが汚い、ゴミ捨て場が荒れている、修繕がまったく行われない、雑草が伸び放題……。そんな物件でも構わず借りるのはあまり歓迎される人物ではないかもしれません。管理会社・管理組合がしっかりと機能し、清掃や修繕計画が適切に行われているか。これが、長期にわたって高い入居率を維持し、資産価値を下げないための必須条件です。 

ワンルーム投資で成功した人であれば当たり前に思うこの2つの条件を、初心者は無視してしまう傾向があります。 

投資の「目的」と「出口戦略」から逆算する

この最低条件2つが揃ったからといって、FPがすぐにワンルーム投資をおすすめするかというと、そうではありません。 

より大切なのは、「その投資が自分のライフプランの上でどのような目的を持つのか?」という視点です。転売を繰り返して売却益を狙うのか、長期で保有し家賃収入を得るのか、高収入サラリーマンが節税をするためなのか、生命保険代わりのリスクヘッジに使うのか、など、ワンルーム投資には目的の設定が不可欠となります。

目的設定や出口戦略から逆算して、ライフプランに組み込んで考えることで、自分が「買ってはいけないワンルーム」、「買ってもいいワンルーム」がみてくるはずです。 

この記事を書いた人

長岡 理知

長岡FP事務所合同会社 代表社員

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。

住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。