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- 「保険料」払いすぎていませんか?不動産投資の「団信」で資産と保障を両取りする賢い選択
2025.12.19
長岡 理知
「保険料」払いすぎていませんか?不動産投資の「団信」で資産と保障を両取りする賢い選択
- はじめ方・基礎知識
あなたが支払う「生命保険料」の総額は?
まずは統計から見ていきましょう。生命保険文化センターの「令和6年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯年間払込保険料の平均は約35.3万円です。これを月額に換算すると、約29,000円になります。
もし、この金額を35年間払い続けると、総額は約1,218万円にもなります。この金額は、子ども1人の大学進学費用(私立理系など)に匹敵する水準です。
一般的に、生命保険は「死亡保険」「医療保険」「がん保険」を中心に加入します。しかし現実には、圧倒的多数の方が現役時代に亡くなることはなく、大病を患う確率も年齢とともに上がるとはいえ、若いうちは高くありません。もちろん、万が一の事態が起きた際には非常に頼もしい存在ですが、何事もなく過ごせた場合、支払った保険料の多くは「安心料」としての消費で終わります。
「お金がもったいないから保険には入らない」と割り切れる人は多くありません。確率は低くても、自分に万が一のことが絶対に起こらないとは断言できないからです。「家族にお金で苦労をかけたくない」。そう考えて多くの人が、毎月の支払いを「必要経費」と割り切って加入しているのが実情ではないでしょうか。
この「掛け捨てのコスト」、どうにか資産に変える方法はないのでしょうか。
不動産投資の「団信」とは?
生命保険の代替手段として注目されているのが、不動産投資における「団信(団体信用生命保険)」です。
住宅ローンを利用したことがある方には馴染みがあるかもしれません。これは、不動産投資ローンを組む際に加入する保険で、「契約者(投資家)が死亡、または高度障害状態になった場合、ローンの残債が保険金で弁済され、ゼロになる」という仕組みです。
一般的な生命保険がお金を「消費(支払い)」して保障を得るのに対し、団信付きの不動産投資は「資産運用」をして家賃収入を得ながら、同時に保障も確保できる点が大きな特徴です。
もしあなたに万が一のことがあった場合、ご家族には以下のものが残ります。
- 無借金の不動産(資産)
- 毎月入ってくる家賃収入(死亡保険金の代わり)
一般的な死亡保険は、一度に大きなお金が入って終わりですが、投資用不動産が残された場合、ご家族はそこから毎月の家賃収入を得ることができます。ローン返済のない「無借金」の状態であるため、焦って売却する必要もありません。建物が存続する限り、長期にわたって家賃を受け取り続けることが可能です。
まさに、万が一のときに家族へ「卵(家賃)を産み続けるニワトリ(不動産)」を残すような仕組みといえるでしょう。
FPがシミュレーション「掛け捨て保険」vs「団信付き不動産投資」
では、FPの視点で具体的な数字を比較してみましょう。「3,000万円の死亡保障」を確保する場合、家計への影響はどう変わるのでしょうか。
- 年齢:35歳(男性)
- 必要保障額:3,000万円
- 期間:30年間(65歳まで)
【パターンA 掛け捨て生命保険(定期保険)の場合】
3,000万円の保障を65歳まで維持する場合。
- 月額保険料:約 4,500円
- 30年間の総支払額:約 162万円
- 65歳時の資産価値:0円(契約終了により消滅)
毎月数千円が財布から出ていき、何もなければ支払った162万円は「安心料」として消えてなくなります。
【パターンB 不動産投資(ワンルームマンション)の場合】
3,000万円のマンションをフルローンで購入し、団信に加入する場合。
- ローン返済額(月):約 105,000円
- 家賃収入(月):約 110,000円
- 管理費・修繕積立金等(月):約 15,000円
- 実質手出し額(月):約 10,000円
- 30年後の資産価値:無借金の物件、および継続的な家賃収入
※金利や物件条件、空室期間、賃料の変化により変動します。
3,000万円の保障を30年間確保した後の比較です。生命保険(定期保険)では手元に何も残りませんが、不動産投資の場合は、ローン完済後の不動産という「実物資産」が手元に残ります。
毎月の手出し(実質負担)が多少発生したとしても、それは「掛け捨て」ではなく「資産形成への積立」です。死亡保障だけのコストパフォーマンス比較でいえば、将来資産が残る不動産投資に優位性があると言えます。
もちろん、固定資産税や空室リスク、修繕費などのランニングコストを考慮する必要はありますが、立地選定や管理運営を適切に行えば、30年後に価値がゼロになることはまずありません。
団信を活用した「保険見直し」の具体的手順と注意点
では、実際にどのように見直しを進めればよいのでしょうか。具体的な手順を紹介します。
まず注意すべき点は、不動産投資の団信が生命保険の完全な代替となるのは、主に「死亡保障」の分野であるということです。たとえば、入院や手術に備える「医療保険」や「がん保険」の代わりにはなりません。あくまで「死亡時に家族へ資産を残す手段」として捉えてください。
1.必要保障額を算出する
最初に、FPに依頼して自分の「必要保障額」を算出しましょう。万が一の際、遺族年金はいくら支給されるか、死亡退職金や現在の預貯金はどれくらいあるかなどを考慮し、本当に必要な金額を割り出します。
2.現在の保険を棚卸しする
現在加入している死亡保険の内容を確認します。掛け捨て型の定期保険だけでなく、外貨建て終身保険や変額保険、個人年金保険なども含めて整理します。
3.不動産投資の収益力を確認し、保険を調整する
購入する物件の「売却可能価格(資産価値)」や、そこから得られる「将来の家賃収入」を算出します。この不動産という資産が、①で算出した「必要保障額」をカバーできるのであれば、既存の死亡保険を減額、または解約します。もし不足する場合は、足りない分だけ生命保険を残すという「組み合わせ」が最適解です。
シンプルに見えますが、「必要保障額の算出」と「不動産収益の予測」を組み合わせるには、専門的な知識が必要です。信頼できるFPや、リスク説明をしっかり行う不動産会社に相談することをお勧めします。
まとめ
「とりあえず保険に入っておけば安心」という時代は終わりました。人生100年時代においては、守り(保障)と攻め(資産形成)を同時に行う効率的なマネープランが求められます。
- 掛け捨て保険:コストは安く見えるが、何もなければ資産は残らない。
- 団信付き不動産投資:資産運用しながら保障も確保し、将来に「家賃収入」という不労所得を残せる。
毎月支払っている保険料の一部を、不動産投資という「資産形成」に振り替えることで、将来の安心感は大きく変わります。まずは、ご自身が加入している保険証券を確認し、「この保険料は、将来何になって戻ってくるのか?」を問い直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
長岡 理知
長岡FP事務所合同会社 代表社員
2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。
住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。
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長岡 理知
「保険料」払いすぎていませんか?不動産投資の「団信」で資産と保障を両取りする賢い選択
- はじめ方・基礎知識
あなたが支払う「生命保険料」の総額は?
まずは統計から見ていきましょう。生命保険文化センターの「令和6年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯年間払込保険料の平均は約35.3万円です。これを月額に換算すると、約29,000円になります。
もし、この金額を35年間払い続けると、総額は約1,218万円にもなります。この金額は、子ども1人の大学進学費用(私立理系など)に匹敵する水準です。
一般的に、生命保険は「死亡保険」「医療保険」「がん保険」を中心に加入します。しかし現実には、圧倒的多数の方が現役時代に亡くなることはなく、大病を患う確率も年齢とともに上がるとはいえ、若いうちは高くありません。もちろん、万が一の事態が起きた際には非常に頼もしい存在ですが、何事もなく過ごせた場合、支払った保険料の多くは「安心料」としての消費で終わります。
「お金がもったいないから保険には入らない」と割り切れる人は多くありません。確率は低くても、自分に万が一のことが絶対に起こらないとは断言できないからです。「家族にお金で苦労をかけたくない」。そう考えて多くの人が、毎月の支払いを「必要経費」と割り切って加入しているのが実情ではないでしょうか。
この「掛け捨てのコスト」、どうにか資産に変える方法はないのでしょうか。
不動産投資の「団信」とは?
生命保険の代替手段として注目されているのが、不動産投資における「団信(団体信用生命保険)」です。
住宅ローンを利用したことがある方には馴染みがあるかもしれません。これは、不動産投資ローンを組む際に加入する保険で、「契約者(投資家)が死亡、または高度障害状態になった場合、ローンの残債が保険金で弁済され、ゼロになる」という仕組みです。
一般的な生命保険がお金を「消費(支払い)」して保障を得るのに対し、団信付きの不動産投資は「資産運用」をして家賃収入を得ながら、同時に保障も確保できる点が大きな特徴です。
もしあなたに万が一のことがあった場合、ご家族には以下のものが残ります。
- 無借金の不動産(資産)
- 毎月入ってくる家賃収入(死亡保険金の代わり)
一般的な死亡保険は、一度に大きなお金が入って終わりですが、投資用不動産が残された場合、ご家族はそこから毎月の家賃収入を得ることができます。ローン返済のない「無借金」の状態であるため、焦って売却する必要もありません。建物が存続する限り、長期にわたって家賃を受け取り続けることが可能です。
まさに、万が一のときに家族へ「卵(家賃)を産み続けるニワトリ(不動産)」を残すような仕組みといえるでしょう。
FPがシミュレーション「掛け捨て保険」vs「団信付き不動産投資」
では、FPの視点で具体的な数字を比較してみましょう。「3,000万円の死亡保障」を確保する場合、家計への影響はどう変わるのでしょうか。
- 年齢:35歳(男性)
- 必要保障額:3,000万円
- 期間:30年間(65歳まで)
【パターンA 掛け捨て生命保険(定期保険)の場合】
3,000万円の保障を65歳まで維持する場合。
- 月額保険料:約 4,500円
- 30年間の総支払額:約 162万円
- 65歳時の資産価値:0円(契約終了により消滅)
毎月数千円が財布から出ていき、何もなければ支払った162万円は「安心料」として消えてなくなります。
【パターンB 不動産投資(ワンルームマンション)の場合】
3,000万円のマンションをフルローンで購入し、団信に加入する場合。
- ローン返済額(月):約 105,000円
- 家賃収入(月):約 110,000円
- 管理費・修繕積立金等(月):約 15,000円
- 実質手出し額(月):約 10,000円
- 30年後の資産価値:無借金の物件、および継続的な家賃収入
※金利や物件条件、空室期間、賃料の変化により変動します。
3,000万円の保障を30年間確保した後の比較です。生命保険(定期保険)では手元に何も残りませんが、不動産投資の場合は、ローン完済後の不動産という「実物資産」が手元に残ります。
毎月の手出し(実質負担)が多少発生したとしても、それは「掛け捨て」ではなく「資産形成への積立」です。死亡保障だけのコストパフォーマンス比較でいえば、将来資産が残る不動産投資に優位性があると言えます。
もちろん、固定資産税や空室リスク、修繕費などのランニングコストを考慮する必要はありますが、立地選定や管理運営を適切に行えば、30年後に価値がゼロになることはまずありません。
団信を活用した「保険見直し」の具体的手順と注意点
では、実際にどのように見直しを進めればよいのでしょうか。具体的な手順を紹介します。
まず注意すべき点は、不動産投資の団信が生命保険の完全な代替となるのは、主に「死亡保障」の分野であるということです。たとえば、入院や手術に備える「医療保険」や「がん保険」の代わりにはなりません。あくまで「死亡時に家族へ資産を残す手段」として捉えてください。
1.必要保障額を算出する
最初に、FPに依頼して自分の「必要保障額」を算出しましょう。万が一の際、遺族年金はいくら支給されるか、死亡退職金や現在の預貯金はどれくらいあるかなどを考慮し、本当に必要な金額を割り出します。
2.現在の保険を棚卸しする
現在加入している死亡保険の内容を確認します。掛け捨て型の定期保険だけでなく、外貨建て終身保険や変額保険、個人年金保険なども含めて整理します。
3.不動産投資の収益力を確認し、保険を調整する
購入する物件の「売却可能価格(資産価値)」や、そこから得られる「将来の家賃収入」を算出します。この不動産という資産が、①で算出した「必要保障額」をカバーできるのであれば、既存の死亡保険を減額、または解約します。もし不足する場合は、足りない分だけ生命保険を残すという「組み合わせ」が最適解です。
シンプルに見えますが、「必要保障額の算出」と「不動産収益の予測」を組み合わせるには、専門的な知識が必要です。信頼できるFPや、リスク説明をしっかり行う不動産会社に相談することをお勧めします。
まとめ
「とりあえず保険に入っておけば安心」という時代は終わりました。人生100年時代においては、守り(保障)と攻め(資産形成)を同時に行う効率的なマネープランが求められます。
- 掛け捨て保険:コストは安く見えるが、何もなければ資産は残らない。
- 団信付き不動産投資:資産運用しながら保障も確保し、将来に「家賃収入」という不労所得を残せる。
毎月支払っている保険料の一部を、不動産投資という「資産形成」に振り替えることで、将来の安心感は大きく変わります。まずは、ご自身が加入している保険証券を確認し、「この保険料は、将来何になって戻ってくるのか?」を問い直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
長岡 理知
長岡FP事務所合同会社 代表社員
2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。
住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。