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- サラリーマンの「節税」はなぜ難しい?税理士が教える「所得の種類」と不動産所得の可能性
2026.01.07
木戸 真智子
サラリーマンの「節税」はなぜ難しい?税理士が教える「所得の種類」と不動産所得の可能性
- 節税・税金
- 税理士
- 執筆記事
なぜサラリーマンは節税が難しいのか?
一般的にサラリーマンができる節税といえば、「ふるさと納税」や「iDeCo」などが挙げられますが、それ以外には選択肢が少ないと感じている方も多いでしょう。その理由は、給与所得の仕組みにあります。
まず、「収入」と「所得」の違いから説明しましょう。税金の計算において、「収入」とは給与明細でいう額面金額(この1年間の合計が年収)を指します。一方、「所得」とは、この収入から“控除するべきもの”を差し引いたあとの金額になります。
この“控除するべきもの”の内容が、実は所得の「種類」によって大きく異なります。
たとえば、パン屋さんの「事業所得」の場合で考えてみましょう。食パンの売値が1,000円だったとします。これが「収入」です。このパンを売るためには、材料費、人件費、光熱費などの「経費」がかかります。もし経費が450円だとすると、儲けは550円。この550円がパン屋さんの「所得」になります。
一方、サラリーマンの「給与所得」の場合、パン屋さんのように毎月の給料から自由に差し引ける「経費」というものはありません。その代わりとして「給与所得控除」があります。しかし、その控除額は年収によってあらかじめ決まっており、パン屋さんのように赤字(マイナス)になることはありません。
税理士が解説「所得税」の基本構造
まとめると以下のようになります。
- パン屋さん(事業所得):売上 - 経費 = 所得
- サラリーマン(給与所得):収入 - 給与所得控除 = 所得
パン屋さんの経費は実費であり金額も変動しますが、給与所得は定められた計算式で控除額が決まるため、「ガラス張り」といわれるのです。
では、もしパン屋さんを営みながら、会社員としてお給料も受け取っている人がいたらどうなるでしょうか? 税金の計算では、「パン屋さんの所得 + 給与の所得」と、それぞれの所得を合算して考えることになります(所得の種類は総合課税)。
仮に、パン屋さんの所得が赤字だった場合、
パン屋さんの所得(▲50万円) + 給与の所得(450万円) = 400万円
このような計算になります。これが損益通算という仕組みです。
所得の合計が下がるので、当然税金は少なくなります。しかし、これを「節税」と呼べるでしょうか? 単純に事業で損をして手元のキャッシュが減っているだけなので、節税とはいえません。なにより会社員をしながらパン屋さんを営むのは大変です。
では、同じように損益通算を使って、現実的に節税ができる方法があるのでしょうか。そこで注目されるのが「不動産所得」です。
「不動産所得」が赤字になると税金が戻る?
不動産の賃貸収入がある場合も、計算式はパン屋さんと同じく 収入 - 経費 = 所得 となります。これが「不動産所得」です。
ここでも収入より経費が上回れば赤字となり、給与所得と損益通算することで税金を抑えることができます。しかし、不動産所得には、パン屋さんとは決定的に違う、ある特別な経費が存在します。それが「減価償却費」です。
減価償却費とは、建物の購入費用などを、耐用年数に応じて毎年分割して経費計上できるものです。たとえば、5,000万円でマンションを購入したとします。このうち「建物部分」の金額については、購入した年に一度に全額を経費にするのではなく、法律で定められた年数(耐用年数)にわたって分割し、毎年コツコツと経費として計上していきます。
建物の構造や築年数によっては、単年で計上できる減価償却費が数百万円単位と高額になるケースがあります。すると、
家賃収入(200万円) - 経費(減価償却費を含む250万円) = ▲50万円
このように、計算上の「赤字」を作ることができるのです。
重要なのは、減価償却費は「その年に実際にお金が出ていくわけではない」という点です。つまり、「手元のキャッシュは減っていないのに、帳簿上は赤字」という状態が起こり得ます。この「帳簿上の赤字」を給与所得と損益通算することで、給与から源泉徴収されていた税金が還付される(戻ってくる)。これが不動産投資における節税の正体なのです。
節税だけが目的では危険。税理士が釘を刺す注意点
節税といっても、減価償却費以外の経費(修繕費や金利など)がかさみ、実際にお金も減っているから税金が少なくなっただけ、というのは節税ではありません。それは単なる「損失」であり、本末転倒です。
あくまでも、「月々のキャッシュフローには問題がない(手元にお金は残る)」形での節税を考えることが重要になってきます。 ふるさと納税やiDeCoなども、日々の収支に無理のない範囲で取り入れていただくことも、もちろん有効な節税の一つです。
まとめ
サラリーマンの節税策は限られていますが、不動産所得を活用した「損益通算」は有効な手段の一つです。しかし、節税目的だけで赤字を垂れ流すのは本末転倒。あくまで「手元にしっかりお金が残る」健全なキャッシュフローを維持したうえでの節税を目指すべきです。将来のために、ご自身の状況に合わせ、無理のない範囲で検討してみましょう。
この記事を書いた人
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー 税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。
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木戸 真智子
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なぜサラリーマンは節税が難しいのか?
一般的にサラリーマンができる節税といえば、「ふるさと納税」や「iDeCo」などが挙げられますが、それ以外には選択肢が少ないと感じている方も多いでしょう。その理由は、給与所得の仕組みにあります。
まず、「収入」と「所得」の違いから説明しましょう。税金の計算において、「収入」とは給与明細でいう額面金額(この1年間の合計が年収)を指します。一方、「所得」とは、この収入から“控除するべきもの”を差し引いたあとの金額になります。
この“控除するべきもの”の内容が、実は所得の「種類」によって大きく異なります。
たとえば、パン屋さんの「事業所得」の場合で考えてみましょう。食パンの売値が1,000円だったとします。これが「収入」です。このパンを売るためには、材料費、人件費、光熱費などの「経費」がかかります。もし経費が450円だとすると、儲けは550円。この550円がパン屋さんの「所得」になります。
一方、サラリーマンの「給与所得」の場合、パン屋さんのように毎月の給料から自由に差し引ける「経費」というものはありません。その代わりとして「給与所得控除」があります。しかし、その控除額は年収によってあらかじめ決まっており、パン屋さんのように赤字(マイナス)になることはありません。
税理士が解説「所得税」の基本構造
まとめると以下のようになります。
- パン屋さん(事業所得):売上 - 経費 = 所得
- サラリーマン(給与所得):収入 - 給与所得控除 = 所得
パン屋さんの経費は実費であり金額も変動しますが、給与所得は定められた計算式で控除額が決まるため、「ガラス張り」といわれるのです。
では、もしパン屋さんを営みながら、会社員としてお給料も受け取っている人がいたらどうなるでしょうか? 税金の計算では、「パン屋さんの所得 + 給与の所得」と、それぞれの所得を合算して考えることになります(所得の種類は総合課税)。
仮に、パン屋さんの所得が赤字だった場合、
パン屋さんの所得(▲50万円) + 給与の所得(450万円) = 400万円
このような計算になります。これが損益通算という仕組みです。
所得の合計が下がるので、当然税金は少なくなります。しかし、これを「節税」と呼べるでしょうか? 単純に事業で損をして手元のキャッシュが減っているだけなので、節税とはいえません。なにより会社員をしながらパン屋さんを営むのは大変です。
では、同じように損益通算を使って、現実的に節税ができる方法があるのでしょうか。そこで注目されるのが「不動産所得」です。
「不動産所得」が赤字になると税金が戻る?
不動産の賃貸収入がある場合も、計算式はパン屋さんと同じく 収入 - 経費 = 所得 となります。これが「不動産所得」です。
ここでも収入より経費が上回れば赤字となり、給与所得と損益通算することで税金を抑えることができます。しかし、不動産所得には、パン屋さんとは決定的に違う、ある特別な経費が存在します。それが「減価償却費」です。
減価償却費とは、建物の購入費用などを、耐用年数に応じて毎年分割して経費計上できるものです。たとえば、5,000万円でマンションを購入したとします。このうち「建物部分」の金額については、購入した年に一度に全額を経費にするのではなく、法律で定められた年数(耐用年数)にわたって分割し、毎年コツコツと経費として計上していきます。
建物の構造や築年数によっては、単年で計上できる減価償却費が数百万円単位と高額になるケースがあります。すると、
家賃収入(200万円) - 経費(減価償却費を含む250万円) = ▲50万円
このように、計算上の「赤字」を作ることができるのです。
重要なのは、減価償却費は「その年に実際にお金が出ていくわけではない」という点です。つまり、「手元のキャッシュは減っていないのに、帳簿上は赤字」という状態が起こり得ます。この「帳簿上の赤字」を給与所得と損益通算することで、給与から源泉徴収されていた税金が還付される(戻ってくる)。これが不動産投資における節税の正体なのです。
節税だけが目的では危険。税理士が釘を刺す注意点
節税といっても、減価償却費以外の経費(修繕費や金利など)がかさみ、実際にお金も減っているから税金が少なくなっただけ、というのは節税ではありません。それは単なる「損失」であり、本末転倒です。
あくまでも、「月々のキャッシュフローには問題がない(手元にお金は残る)」形での節税を考えることが重要になってきます。 ふるさと納税やiDeCoなども、日々の収支に無理のない範囲で取り入れていただくことも、もちろん有効な節税の一つです。
まとめ
サラリーマンの節税策は限られていますが、不動産所得を活用した「損益通算」は有効な手段の一つです。しかし、節税目的だけで赤字を垂れ流すのは本末転倒。あくまで「手元にしっかりお金が残る」健全なキャッシュフローを維持したうえでの節税を目指すべきです。将来のために、ご自身の状況に合わせ、無理のない範囲で検討してみましょう。
この記事を書いた人
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー 税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。