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- 「空室」は法的リスクの温床?弁護士が「入居率の高さ」を法務・防犯面から重視する理由
2026.01.13
山村 暢彦
「空室」は法的リスクの温床?弁護士が「入居率の高さ」を法務・防犯面から重視する理由
- 弁護士
- 執筆記事
- 空室
「空室」が引き起こす収益以外のリスク
不動産投資における「空室リスク」は、単に家賃収入が得られないという経済的損失にとどまりません。実は、空室が長期化することで、建物そのものの劣化や防犯上のリスクが急速に高まります。たとえば、人が住んでいない部屋では換気や水回りの使用が途絶え、湿気によるダメージやカビ、配管の劣化が進みやすくなります。
さらに、夜間に灯りがつかない状態が続くと、不審者の侵入や不法占拠の標的になりやすく、場合によっては放火や犯罪の温床になることもあります。これらのトラブルは、建物の価値を下げるだけでなく、近隣トラブルや損害賠償の引き金にもなりかねません。空室を放置することは、「収益の欠如」に加え、「法的・防犯的リスクの蓄積」でもあるのです。
オーナーが問われる「法的責任」とは
空室を放置した結果、事故や被害が発生した場合には、オーナーが法的責任を問われる可能性があります。代表的なのが、民法717条に定められた「工作物責任」です。これは、建物や塀、設備などの欠陥が原因で他人に損害を与えた場合、所有者や占有者が損害賠償責任を負うというもの。たとえば、空室部分の外壁が剥がれて通行人に怪我をさせた場合や、換気不足による漏電・火災が隣家に延焼した場合などが典型的な例です。
また、管理会社に委託している場合でも、「管理状況の監督義務」を怠ると、オーナー自身の過失が問われることもあります。さらに、空室を狙った不法侵入や放火によって近隣住民に損害が出ると、「管理不全による過失」を主張されるリスクも否定できません。
このように、空室を放置することは、“何もしない”ことがリスクになるという法的な怖さがあります。所有者として定期的に点検・換気を行い、管理会社と情報を共有しておくことが、トラブル予防の基本となります。
なぜ「都心・駅近」物件はリスクが低いのか
空室リスクを最小限に抑えるには、まず「立地」の良さが重要です。特に都心部や駅近物件は入居需要が安定しており、退去後も短期間で次の入居者が決まる傾向があります。空室期間が短ければ、換気不足や配管の劣化といった建物への悪影響も小さく、結果として法的・防犯的なリスクが顕在化しにくくなります。
また、立地の良い物件は管理会社や清掃業者が定期的に巡回しやすい環境にあるため、建物の異常や設備不具合を早期に発見できる体制が整いやすいのも利点です。
これに対して、郊外や交通の便が悪いエリアでは、空室が長期化しやすく、管理の目が届きにくい分だけトラブルも起きやすくなります。したがって、利回りの高さだけでなく、「入居需要の安定性=空室リスクの低さ」という観点から立地を見極めることが、不動産投資における重要な防御策となります。
「入居率の高さ」が意味する「管理の質」
入居率の高さは、単に立地の人気を示すだけではありません。実はそれ自体が、管理体制の優秀さを映す指標でもあります。入居率が高い物件ほど、管理会社が適切な入居者審査を行い、トラブルの少ない入居者を選別しているケースが多いのです。また、退去が発生しても、すぐに清掃・リフォームを実施して再募集までの期間を短縮できるような、スピード感ある管理運営が行われていると考えられます。さらに、共用部の清掃や点検が定期的に実施されることで、防犯性が高まり、建物全体の印象や安全性も維持されます。これらの積み重ねが結果として「入居率の高さ」に表れているのです。
つまり、高い入居率とは「立地の良さ」だけでなく、「日常管理の質」と「法的トラブルの少なさ」を両立している証拠でもあります。オーナーが安心して長期保有できる物件には、必ず優れた管理体制が存在しているのです。
まとめ
空室は単なる「収益の空白期間」ではなく、放置することで法的責任や防犯リスクが高まり、近隣とのトラブルにも発展しかねません。入居率が高い物件は、建物が常に使用・点検され、自然と安全性や資産価値が維持されやすくなります。
今回紹介したような要素「立地の強さ」「管理体制の充実」「入居者層の安定」は、ひとつでも欠けると悪循環に陥りますが、逆にバランスよく整えば「好循環の不動産経営」が実現します。入居者が安心して暮らし、管理会社が機能し、オーナーが長期的に安定収益を得る。その仕組みを支えるのが、法的視点を踏まえた「入居率重視」の考え方です。
この記事を書いた人
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。
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「空室」が引き起こす収益以外のリスク
不動産投資における「空室リスク」は、単に家賃収入が得られないという経済的損失にとどまりません。実は、空室が長期化することで、建物そのものの劣化や防犯上のリスクが急速に高まります。たとえば、人が住んでいない部屋では換気や水回りの使用が途絶え、湿気によるダメージやカビ、配管の劣化が進みやすくなります。
さらに、夜間に灯りがつかない状態が続くと、不審者の侵入や不法占拠の標的になりやすく、場合によっては放火や犯罪の温床になることもあります。これらのトラブルは、建物の価値を下げるだけでなく、近隣トラブルや損害賠償の引き金にもなりかねません。空室を放置することは、「収益の欠如」に加え、「法的・防犯的リスクの蓄積」でもあるのです。
オーナーが問われる「法的責任」とは
空室を放置した結果、事故や被害が発生した場合には、オーナーが法的責任を問われる可能性があります。代表的なのが、民法717条に定められた「工作物責任」です。これは、建物や塀、設備などの欠陥が原因で他人に損害を与えた場合、所有者や占有者が損害賠償責任を負うというもの。たとえば、空室部分の外壁が剥がれて通行人に怪我をさせた場合や、換気不足による漏電・火災が隣家に延焼した場合などが典型的な例です。
また、管理会社に委託している場合でも、「管理状況の監督義務」を怠ると、オーナー自身の過失が問われることもあります。さらに、空室を狙った不法侵入や放火によって近隣住民に損害が出ると、「管理不全による過失」を主張されるリスクも否定できません。
このように、空室を放置することは、“何もしない”ことがリスクになるという法的な怖さがあります。所有者として定期的に点検・換気を行い、管理会社と情報を共有しておくことが、トラブル予防の基本となります。
なぜ「都心・駅近」物件はリスクが低いのか
空室リスクを最小限に抑えるには、まず「立地」の良さが重要です。特に都心部や駅近物件は入居需要が安定しており、退去後も短期間で次の入居者が決まる傾向があります。空室期間が短ければ、換気不足や配管の劣化といった建物への悪影響も小さく、結果として法的・防犯的なリスクが顕在化しにくくなります。
また、立地の良い物件は管理会社や清掃業者が定期的に巡回しやすい環境にあるため、建物の異常や設備不具合を早期に発見できる体制が整いやすいのも利点です。
これに対して、郊外や交通の便が悪いエリアでは、空室が長期化しやすく、管理の目が届きにくい分だけトラブルも起きやすくなります。したがって、利回りの高さだけでなく、「入居需要の安定性=空室リスクの低さ」という観点から立地を見極めることが、不動産投資における重要な防御策となります。
「入居率の高さ」が意味する「管理の質」
入居率の高さは、単に立地の人気を示すだけではありません。実はそれ自体が、管理体制の優秀さを映す指標でもあります。入居率が高い物件ほど、管理会社が適切な入居者審査を行い、トラブルの少ない入居者を選別しているケースが多いのです。また、退去が発生しても、すぐに清掃・リフォームを実施して再募集までの期間を短縮できるような、スピード感ある管理運営が行われていると考えられます。さらに、共用部の清掃や点検が定期的に実施されることで、防犯性が高まり、建物全体の印象や安全性も維持されます。これらの積み重ねが結果として「入居率の高さ」に表れているのです。
つまり、高い入居率とは「立地の良さ」だけでなく、「日常管理の質」と「法的トラブルの少なさ」を両立している証拠でもあります。オーナーが安心して長期保有できる物件には、必ず優れた管理体制が存在しているのです。
まとめ
空室は単なる「収益の空白期間」ではなく、放置することで法的責任や防犯リスクが高まり、近隣とのトラブルにも発展しかねません。入居率が高い物件は、建物が常に使用・点検され、自然と安全性や資産価値が維持されやすくなります。
今回紹介したような要素「立地の強さ」「管理体制の充実」「入居者層の安定」は、ひとつでも欠けると悪循環に陥りますが、逆にバランスよく整えば「好循環の不動産経営」が実現します。入居者が安心して暮らし、管理会社が機能し、オーナーが長期的に安定収益を得る。その仕組みを支えるのが、法的視点を踏まえた「入居率重視」の考え方です。
この記事を書いた人
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。