2024.02.29

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

マンション経営の利回りの計算方法や目安を解説!

  • はじめ方・基礎知識
  • マンション投資
  • 利回り
  • 計算

「マンション経営をしてみたい!」

そう思ったら、ぜひ、マンション経営を考えてみましょう。 マンションやアパートは入居者から家賃収入を得られますし、さらに土地活用することで相続税・固定資産税などの節税対策にもなるので手堅い投資のひとつとして人気です。 しかし、不動産経営は儲かる!と始めたものの利益が出ないといったこともあり得ます。投資にはリスクがつきもので、入居者が想定通り入らずに収支計画がかなり狂ってしまったという実例もあります。

不動産経営は軌道に乗れば、安定した賃料収入が期待できますが、どんな投資でも「いくら投資したら、どのくらい儲かるか」を常に意識する必要があります。 投資用物件のポータルサイトや広告物件情報に「満室時想定利回り○%」と書かれていますが、それが何を意味するのかがわからないと、マンション経営がうまくいくかどうかもわかりません。

この記事ではマンション経営の利回りに関する計算方法や目安を詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

マンション経営における利回りの計算方法

利回りは、マンション・アパート経営において、投資の判断指標として使用される数値です。利回りには以下の3種類があるので、実際の利回りを正しく判断するためにもしっかりと押さえておきましょう。

  • 表面利回り
  • 想定利回り
  • 実質利回り

表面利回り

表面利回りは、マンション経営においてよく使用される数値です。これは、物件を購入した価格に対する年間の家賃収入の割合になります。

「表面利回り(%)=年間の家賃収入÷物件の購入価格×100」

例えば、1,000万円で物件を購入し、その物件の年間家賃収入が100万円の場合は「100万円÷1,000万円×100=10%」となりますから、表面利回りは10%となります。

投資用物件のポータルサイトや広告物件情報に掲載されているのは、この表面利回りが一般的です。しかし、注意しなければいけないのは表面利回りには固定資産税や修繕費等の経費が入っていないことです。要するに物件の購入費用を1年間に何%回収できるかという目安でしかないのです。

想定利回り

想定利回りは、マンションが全室埋まって空室のない状態と想定した年間家賃収入の割合を表したものです。

「想定利回り(%)=満室の場合の年間家賃収入÷物件購入価格×100」

想定利回りは不動産広告で使用されることが多く、たくさんある候補物件をざっくりと比較するときには使えますが、実際の利益とはかけ離れていることもあります。

実質利回り

実質利回りは、物件の購入時にかかるさまざまな経費や固定資産税、火災保険料、物件を維持するための費用を含めた数値を使用するのが特徴です。

「実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間経費)÷(物件購入価格+取得時諸経費)×100」

「年間経費」はマンションを維持していくための費用で以下のものが含まれます。

  • 共用部分の水道光熱費
  • 修繕費
  • 損害保険料(火災保険など)
  • 不動産管理会社への管理費、仲介手数料など

「取得時諸経費」は物件購入費のほか、以下のような費用もかかります。

  • 整備費用
  • 不動産取得税や印紙税
  • 登記費用
  • ローンの手数料(保証料、事務手数料など)
  • 火災保険や地震保険などの保険料
  • 外注費(税理士、司法書士などに手続きを依頼する場合)
  • 不動産仲介会社への手数料など

利回りを考える際に把握しなければならないのは実質利回りの方ですが、検討段階では具体的な数値がわからないので、一般的に、以下の値を使います。

  • 物件購入時の経費=物件価格の7~10%
  • 必要経費=年間家賃収入の20%

一括プラン請求などを請求したときの見積もり書にはこの数値が使われています。

新築・中古マンションの利回りの違い

マンション経営には建物を丸ごと購入する「一棟所有」と一室を購入する「区分所有」があります。マンション経営のメリットは建物の立地や設備が整っていることが多いため、資産価値が下がりづらいという大きなメリットがあります。さらに大手のブランドマンションであれば、築年数が経っていても相場よりも高い価格で取引されることもあります

また、1室から始めることで初期費用だけでなく、管理費用も安く抑えることができます。さらにマンションは鉄骨造や鉄筋コンクリートで建てられているので、耐用年数が長いのも特徴です。

では、新築マンションと中古マンションの利回りの違いを見ていきましょう。

新築マンションの利回り

都内の新築マンションは高騰が続いていて、港区、品川区、目黒区、大田区といった城南での実利回りの相場は3~5%程度です。新築マンションの利回りが低くなるのは、購入価格が高くなるからです。しかし、その分、空室リスクも低くなります。

中古マンションの利回り

築20年くらいまでは4~5%半ば、築20年以上は7~10%と利回りが高い分、空室リスクも高くなっています。

築年数が高くなるほど、購入価格を抑えられるため、表面利回りも高くなります。しかし、築年数に比例して管理費や修繕費も高くなるため、家賃収入も少なくなります。さらに古くなるほど空室リスクも高くなるので、利回りだけでの比較は難しいといえます。

マンション経営の理想的な利回り・最低ラインの目安

マンション経営の利回りは立地や築年数などによって異なりますが、適正な経営判断ができるよう、一般的にいわれている「理想的な利回り」と「最低ライン」の目安は覚えておきましょう。

理想的な利回りの目安

不動産投資で人気のある、主要都市の新築マンションの場合、表面利回りで6%以上あれば、理想的といえるでしょう。ただし、これはあくまでも理想です。最近は不動産投資の注目度が高まっているため、現実的にこの利回りを超える物件は稀少です。

一方、人口が少ない地方都市のマンションになると、新築でも空室リスクが高いため6%以上の利回りは欲しいところです。また、地方の中古マンションだと、利回りが数十%といったケースもありますが、空室リスクと背中合わせということを忘れないようにしてください。

最低利回りの目安

最低利回りの目安は、マンション経営をする目的によって違います。例えば、目的が相続税対策や老後資金の場合、現時点で収益を生み出さなくてよいので、3%以下の利回りなど手元に収益が残らなくても、マンション経営をする意味はあります。

一方、「現時点の収益にこだわる」「なるべく手出しをしたくない」という場合は、最低利回りの目安を4%程度と考えるのとよいでしょう。

参考までに、実際に各都市のマンションの利回りを見て見ると、3〜4%台が中心になっています。

・賃貸住宅一棟の期待利回り

地区 ワンルームタイプ  ファミリータイプ
東京 城南 3.9% 4.0%
札幌 5.0% 5.2%
仙台 5.1% 5.2%
横浜 4.5% 4.5%
名古屋 4.7% 4.8%
京都 4.8% 4.9%
大阪 4.5% 4.5%
神戸 4.8% 5.0%
広島 5.2% 5.5%
福岡 4.7% 4.8%

【参照元】日本不動産研究所「第47回 不動産投資家調査(2022年10月現在)」より

マンション経営の収入

収入の内訳

マンション経営でのメイン収入は家賃収入となりますが、他の収入は以下となります。

  • 家賃
  • 更新料
  • 礼金
  • 敷金や保証金
  • 駐車場代等

それぞれを詳しく見ていきましょう。

  • 家賃
    毎月決まった日に指定口座に振り込まれます。入居者が多ければ収入は増えますが、逆にいなければ当然収入はなくなります。
  • 更新料
    更新料は地域ごとに異なっています。関東では普通ですが、関西では設定していない物件が多くあります。
  • 礼金
    礼金は契約時に借主から貸主にお礼として支払われるお金のことです。もともと物件が少なかった時代に、家を貸してくれた感謝の気持ちとして渡していたものが今も残っていて、相場は家賃の1ヵ月~2ヵ月分ほどです。そのため、退去時には返還しなくていいことになっています。
  • 敷金や保証金
    敷金や保証金などの名目で入居者から受領したものでも、返却しないことが確定しているものは収入扱いにできます。
  • 駐車場代
    物件の敷地内や近隣にあり、入居者が使っている駐車場の代金も収入に含まれます。

家賃収入の計算法

家賃収入は以下の計算式で算出できます。

「家賃収入=マンションの戸数×稼働率×1戸あたりの賃料」

ただし、この額が全部収入になるわけではなく、月々のローン返済や、修繕費、管理費、火災保険代などが引かれることになります。退去時の礼金も収入になります。

国税庁「令和2年分申告所得税標本調査」によると、不動産所得者数は106万人、不動産所得者の年収入平均は540万円となっています。

マンション経営での必要経費とは?

マンション経営ではさまざまな経費がかかってきます。所得は家賃収入から必要経費を差し引いたものですから、確定申告をする場合は、所得がプラスになっているとその分の税金を払わなければならなくなります。

経営に必要な費用は経費として計上することが節税する上で大切になりますので、まず、どんなものが経費と認められるかを知ることが大切です。収入を申告し忘れたり、ごまかしたりすることは違法ですが、経費を申告しなくても罰せられることはなく、ただ税金を多く取られるだけです。

経費として認められるものは以下となります。

マンション経営にかかる経費一覧
・減価償却費
・租税公課
・損害保険料
・修繕費
・管理費
・接待交際費
・広告宣伝費
・借入金利息
・仲介手数料
・通信費
・弁護士や税理士への報酬
・新聞書籍代
・消耗品費
・交通費
・セミナー参加代

必要経費の中でもわかりにくい減価償却費と税金について次から詳しく見ていきましょう。

マンションの減価償却費とは?

減価償却とは

そもそも「減価償却」とは何なのでしょうか。

人が作った形あるものは、時間の経過や使用によって、価値が下がってきます。マンションやアパートのほか、自動車やパソコンなども減価償却資産になります。ただし、時間経過によって減少しないものは減価償却資産にはあてはまりません。不動産でいうと土地がこれにあてはまります。ですから、不動産での減価償却資産となるのは建物部分だけとなります。

アパートやマンションの法定耐用年数は、構造によって決まっていて以下となっています。ただし、これは建物の寿命を意味するものではありません。

  • 鉄筋コンクリート造 47年
  • 重量鉄骨造 34年
  • 木造 22年
  • 軽量鉄筋(骨格材の厚さ3mm超4mm以下) 27年
  • 軽量鉄筋(骨格材の厚さ3mm以下) 19年
・減価償却費の計算式
「建物の取得価額×償却率」

償却率は、1年にどれだけ価値が減少するかを税制上で定めたもので、対象となる物件の耐用年数によってあらかじめ決められています。償却率は国税庁「減価償却資産の償却率等表」で確認してください。

ただし、中古マンションを購入した場合は残りの耐用年数を計算し直す必要があります。

新築マンションの減価償却費の計算方法

新築マンション(RC造)の減価償却費は、本体(躯体)と設備を別々に計算する必要があります。それぞれの耐用年数は以下のとおりです。

  • 本体の耐用年数:47年
  • 住宅設備の耐用年数:15年

この耐用年数に合わせて、国税庁では減価償却資産の償却率を定めています。例えば、新築マンションを4,500万円(うち住宅設備500万円)で購入した場合の償却率や減価償却費は以下のようになります。

4,000万円×0.022(償却率)=88万円
500万円×0.067(償却率)=33.5万円

中古マンションの減価償却費の計算方法

・中古マンションの耐用年数
「(47年-経過年数)+経過年数×0.2」

たとえば、築20年の中古マンションを3,000万円で購入した場合の耐用年数と減価償却費は以下のようになります。

(47年-20年)+20年×0.2=31年
3,000万円×0.030(償却率)=90万円

毎年償却していかなければいけないのですが、わからずに計上しなかったり、間違って過小申告した場合は、結果として税金を多く払うことになってしまいます。不動産所得が発生した年からは確定申告で減価償却をしておく必要があるので、覚えておきましょう。

マンション経営で支払う税金

マンションを所有すると、「不動産取得税」「固定資産税」「登録免許税」「都市計画税」などがかかってきます。これらは租税公課として計上できます。

不動産取得税とは

名前通り、マンションなど不動産を取得したときに課税される税金のことです。購入したときに1度だけ払えばすみます。

「不動産取得税=建物の固定資産税評価額×税率4%」

ただし、2024年3月31日までに「住宅」として取得した場合は、3%の軽減税率が適用されます。

【参照元】東京都主税局「不動産取得税」より

固定資産税とは

固定資産税は、毎年1月1日時点で住宅やマンション、土地などの固定資産を所有する人が支払う税金です。地方税ですから、納付先は住んでいる自治体になります。東京23区では都が課税します。

マンションの固定資産税は「土地」と「家屋」の両方に課税されます。家屋部分は経年劣化が考慮され、税額は年々下がっていくのが一般的ですから、新築が最も評価が高くなります。

また、マンションの場合は鉄筋コンクリート造が多いので耐用年数が長くなり、評価額が高くなる傾向があります。

・固定資産税の計算方法
「固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準)×1.4%(標準税率)」

【参照元】総務省「固定資産税の概要」より

登録免許税とは

登録免許税は購入したマンションの登記をする際にかかる税金です。不動産を購入したときは、所在地や面積、所有者の住所・氏名などを公の「登記簿に記載し、権利関係などをわかるようにすることを「登記」といいます。

登記された情報は、法務局で「全部事項証明書」等を入手することで誰でも確認することができるようになります。この登記をする際にかかる税金が「登録免許税」です。

・登録免許税の税率と軽減措置

区分 標準税率 軽減税率
所有権保存登記(新築賃貸住宅の建築) 0.4%
所有権移転登記(中古賃貸住宅の売買) 2.0%
所有権移転登記(土地) 2.0% 1.5%(2023年3月まで)

都市計画税とは

都市計画税は、都市開発を積極的に行う市街化区域に土地・建物を所有する人に課される税金のことです。そのため、土地と建物のそれぞれに評価額が決められているため、別々に計算する必要があります。

・都市計画税の計算方法
「都市計画税額=固定資産税評価額×制限税率(0.3%)」

なかなか税金はわかりづらいものですが、基礎知識だけ押さえておくだけでも投資の成功率も高まります。

マンション経営の実質利回りシミュレーション事例

マンション経営での収入は、「総収入-総費用」で求められますが、しかし、実際は税金や減価償却、ローンの返済金額によっても違ってきます。

そこで、運用シミュレーションをすることが不可欠になってきます。単純に物件価格や想定年間家賃収入から表面利回りだけを計算しても、実態とはかけ離れることも少なくありません。

一般的にマンション経営で費用や税金を差し引くと、手元に残る金額は家賃収入総額の約15%程度といわれています。

ですから、簡単な目安で計算する方法は以下になります。

「手取り収入の目安=年間家賃収入×15%」

シミュレーションに必要な項目

  • 物件価格
  • 想定家賃収入
  • 想定空室率
  • 諸経費率
  • 自己資金
  • 借入金額
  • 借入期間
  • 金利

これらをメモしておけば、ネット上で「収支シミュレーション」「経営シミュレーション」を探し出せばかんたんに無料で試算ができるのでぜひ、試してみましょう。

異なる物件タイプの実質利回りシミュレーションの例をいくつか紹介します。

都内の新築マンション(1R)の実質利回り例

物件条件
・所在地:東京都太田区
・物件価格:3,000万円
・家賃:10万円/月

実質の年間家賃収入 84万円
年間家賃収入 120万円
−年間管理費(家賃収入の5%) -6万円
−固定資産税+都市計画税 -30万円
実質の物件価格 3,150万円
購入価格 3,000万円
+諸費用(物件価格の5%) 150万円 

→ 実質利回り2.66%=実質の年間家賃収入84万円÷実質の物件価格3,150万円

神奈川県の中古マンション(1R/築15年)の例

物件条件
・所在地:神奈川県横浜市
・物件価格:1,800万円
・家賃:6.5万円/月

実質の年間家賃収入 54万円
年間家賃収入 78万円
−年間管理費(家賃収入の5%) -4万円
−固定資産税+都市計画税 -20万円
実質の物件価格 1,926万円
購入価格 1,800万円
+諸費用(物件価格の5%) 126万円 

→ 実質利回り2.80%=実質の年間家賃収入54万円÷実質の物件価格1,926万円

長野県の一棟アパート(築15年)の例

物件条件
・所在地:長野県長野市
・物件価格:7,800万円
・家賃:50万円/月

実質の年間家賃収入 478万円
年間家賃収入 600万円
−年間管理費(家賃収入の5%) -30万円
−固定資産税+都市計画税 -92万円
実質の物件価格 8,346万円
購入価格 7,800万円
+諸費用(物件価格の5%) 546万円 

→ 実質利回り5.72%=実質の年間家賃収入478万円÷実質の物件価格8,346万円

※いずれも、自己資金、ローン金利、想定空室率、家賃下落率などを省いた簡易的な実質利回り計算になります。

マンション経営の利回りに関する注意点

マンション経営の利回りを考えるときには注意も必要になります。

高い表面利回りにつられない

広告やネット上の物件情報は表面利回りが書かれています。ですから、単に「利回り」と書かれていたら、表面利回りの確率が大です。利回りが高いと魅力的ですが、だからといって高い収益が見込めるとは限りません。しっかりと見極める必要があります。

空室リスクを考慮する

ネット上の物件情報などでは、「満室を想定した利回り」を表示しているケースが目立ちます。しかし、実際には転勤や就職、ほかの住民とのトラブル、騒音問題など、さまざまな理由で空室が発生します。

空室の間は家賃収入がなくなるため、オーナーがローンの返済分を負担しなければなりません。こういった負担を回避できるよう、空室リスク対策を事前にしておくことが重要です。対策例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 適正な家賃を設定する
  • サブリース(満室保証)契約をする
  • 空室が発生しても耐えられるよう貯蓄をする

家賃下落リスクを考慮する

マンションなどの賃貸物件は、築年数が古くなるほど家賃が下落していきます。一般的に、家賃は年間1%ずつ下落していくといわれています。これを加味して、家賃がある程度下がっても、安定したマンション経営を続けられるかシミュレーションすることも重要です。

また、家賃下落のペースが緩やかな物件を選ぶという視点も欠かせません。一例では、入居者ニーズのある外観・間取り・住宅設備の物件にする、あるいは、土地の価格が上昇・安定しているエリアの物件を選ぶなどの視点が必要です。

利回りが高くても注意が必要な物件とは

マンション経営においては、利回りが高くても慎重な判断が求められる物件もあります。具体的には「築年数が古い物件」と「地方の物件」です。それぞれの内容について説明します。

築年数が古い物件

この記事の前半でも触れましたが、相場よりも高利回りということは、リスクが高いことの裏返しでもあります。特に築古物件の場合、現時点では空室なのに、それが埋まれば高利回りを得られるという想定利回りを表記しているケースも目立ちます。

もし、このような物件で空室が埋まらなければ、ローン返済をオーナーが負担することになります。たしかに、物件選びで利回りをチェックすることも大切です。しかし、高利回りだけを求めてしまえば、結果的にリスクの高い物件を探していることになる場合もあるので注意しましょう。

人口減少が進んでいる地方の物件

首都圏や近畿圏などを除いた地方のマンションは、土地価格が安い分、高利回りになる傾向があります。その反面、人口減少が進んでいる地方のマンションは、借り手が少なくなっているため、高い空室リスクを抱えているともいえます。

また、地方都市は大都市に比べて、そのエリアの物件を狙う不動産投資家が少ないため、物件を売却しようと思ったときに買い手が見つからないケースもあります。売り抜けるために物件価格を下げているうちに売却損が膨らんでいくというリスクもあります。地方の物件は、このようなマイナス材料があるため、金融機関の融資がつきにくいというデメリットもあります。
ただし、地方の物件でも、地価が安定・上昇しているエリアなら、これらのリスクやデメリットは限定的です。

マンション経営を成功させるために重要なこと

最後に、マンション経営を成功させるために重要ないくつかのポイントを確認しましょう。

空室リスクが低い物件を選ぶ

安定したマンション経営をしていくには、空室リスクの低い物件選びが必須です。これを実現するには、いつかのことを意識する必要があるでしょう。例えば、最寄り駅が人気の駅・快速の停車駅・始発駅など電車通勤がしやすい物件です。これらの駅からの距離が近いほど、賃貸ニーズが高いため空室リスクを軽減できると考えられます。

周辺施設(スーパーマーケット、コンビニ、規模のある病院、保育所など)が充実している物件も生活がしやすいため空室リスクを軽減しやすいです。このようにマンション経営では、利回りだけでは測れない物件の潜在価値に着目することも大切です。

実質利回りのシミュレーションを慎重に行う

前述したとおり、 ひと口にマンション経営の利回りといっても「表面利回り」と「実質利回り」では、本質的な意味が変わってきます。端的にいえば「表面利回り=おおざっぱな指標」「実質利回り=現実の経営に近い指標」なので、両者の特徴に合わせて使い分ける必要があります。

一例としては、物件を比較する段階では「表面利回り」を使い、物件を絞り込んだ段階では「実質利回り」で購入すべきか否かを判断するといった使い方が考えられます。ただし、実質利回りを計算するときは、費用を多めに見積もるなど、慎重なシミュレーションを重ねることが大切です。

イールドギャップのシミュレーションも行う

マンション経営を成功させるには、利回り以外の指標を知っておくことも大切です。その代表格がイールドギャップです。不動産投資のイールドギャップとは、実質利回りと借入金利(ローン金利)の差のことで、計算式で表すと以下のようになります。

イールドギャップ=実質利回り−借入金利(ローン金利)

イールドギャップが大きいほど、安定経営をしやすいといえます。一般的に、3%以上のイールドギャップがあるのが理想といわれています。

急な出費に備えて資金を確保しておく

実質利回りやイールドギャップが高い物件を手に入れても、それだけで「これでマンション経営が成功する」と考えるのは危険です。いくら空室リスクの低い物件を購入しても、入居者の退去はありますし、ある程度の空室期間が空くこともあります。

また、新築物件や築浅物件は住宅設備が故障しにくいとはいえ、可能性がゼロなわけではありません。故障などのトラブルによる急な出費に備えて、いつでも使える手元資金をストックしておくこともマンションオーナーの責務です。特に手元資金があまりない状態でマンション経営を始める場合は、毎月一定額を積み立てるようにしましょう。

不動産は利回りも重要ですが出口戦略も大切です。こちらの記事も参考にしてみて下さいね。

まとめ

マンション経営は長期的に安定した利回りが期待できる投資方法です。経営を考えたときに利回りを気にするのは当然のことですが、利回りが高いからといって収益が保証されるわけではありません。利回りだけに気を取られると失敗の原因になってしまうので、利回りだけにとらわれず、エリアや使い勝手などの条件を考え、幅広い視点で判断して、マンション経営を成功させましょう。

不動産投資で成功するためには、セミナーに参加するなどして不動産投資に関する知識を習得することが大切です。ベルテックスでは不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお申し込みください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.02.29

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

マンション経営の利回りの計算方法や目安を解説!

  • はじめ方・基礎知識
  • マンション投資
  • 利回り
  • 計算

「マンション経営をしてみたい!」

そう思ったら、ぜひ、マンション経営を考えてみましょう。 マンションやアパートは入居者から家賃収入を得られますし、さらに土地活用することで相続税・固定資産税などの節税対策にもなるので手堅い投資のひとつとして人気です。 しかし、不動産経営は儲かる!と始めたものの利益が出ないといったこともあり得ます。投資にはリスクがつきもので、入居者が想定通り入らずに収支計画がかなり狂ってしまったという実例もあります。

不動産経営は軌道に乗れば、安定した賃料収入が期待できますが、どんな投資でも「いくら投資したら、どのくらい儲かるか」を常に意識する必要があります。 投資用物件のポータルサイトや広告物件情報に「満室時想定利回り○%」と書かれていますが、それが何を意味するのかがわからないと、マンション経営がうまくいくかどうかもわかりません。

この記事ではマンション経営の利回りに関する計算方法や目安を詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

マンション経営における利回りの計算方法

利回りは、マンション・アパート経営において、投資の判断指標として使用される数値です。利回りには以下の3種類があるので、実際の利回りを正しく判断するためにもしっかりと押さえておきましょう。

  • 表面利回り
  • 想定利回り
  • 実質利回り

表面利回り

表面利回りは、マンション経営においてよく使用される数値です。これは、物件を購入した価格に対する年間の家賃収入の割合になります。

「表面利回り(%)=年間の家賃収入÷物件の購入価格×100」

例えば、1,000万円で物件を購入し、その物件の年間家賃収入が100万円の場合は「100万円÷1,000万円×100=10%」となりますから、表面利回りは10%となります。

投資用物件のポータルサイトや広告物件情報に掲載されているのは、この表面利回りが一般的です。しかし、注意しなければいけないのは表面利回りには固定資産税や修繕費等の経費が入っていないことです。要するに物件の購入費用を1年間に何%回収できるかという目安でしかないのです。

想定利回り

想定利回りは、マンションが全室埋まって空室のない状態と想定した年間家賃収入の割合を表したものです。

「想定利回り(%)=満室の場合の年間家賃収入÷物件購入価格×100」

想定利回りは不動産広告で使用されることが多く、たくさんある候補物件をざっくりと比較するときには使えますが、実際の利益とはかけ離れていることもあります。

実質利回り

実質利回りは、物件の購入時にかかるさまざまな経費や固定資産税、火災保険料、物件を維持するための費用を含めた数値を使用するのが特徴です。

「実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間経費)÷(物件購入価格+取得時諸経費)×100」

「年間経費」はマンションを維持していくための費用で以下のものが含まれます。

  • 共用部分の水道光熱費
  • 修繕費
  • 損害保険料(火災保険など)
  • 不動産管理会社への管理費、仲介手数料など

「取得時諸経費」は物件購入費のほか、以下のような費用もかかります。

  • 整備費用
  • 不動産取得税や印紙税
  • 登記費用
  • ローンの手数料(保証料、事務手数料など)
  • 火災保険や地震保険などの保険料
  • 外注費(税理士、司法書士などに手続きを依頼する場合)
  • 不動産仲介会社への手数料など

利回りを考える際に把握しなければならないのは実質利回りの方ですが、検討段階では具体的な数値がわからないので、一般的に、以下の値を使います。

  • 物件購入時の経費=物件価格の7~10%
  • 必要経費=年間家賃収入の20%

一括プラン請求などを請求したときの見積もり書にはこの数値が使われています。

新築・中古マンションの利回りの違い

マンション経営には建物を丸ごと購入する「一棟所有」と一室を購入する「区分所有」があります。マンション経営のメリットは建物の立地や設備が整っていることが多いため、資産価値が下がりづらいという大きなメリットがあります。さらに大手のブランドマンションであれば、築年数が経っていても相場よりも高い価格で取引されることもあります

また、1室から始めることで初期費用だけでなく、管理費用も安く抑えることができます。さらにマンションは鉄骨造や鉄筋コンクリートで建てられているので、耐用年数が長いのも特徴です。

では、新築マンションと中古マンションの利回りの違いを見ていきましょう。

新築マンションの利回り

都内の新築マンションは高騰が続いていて、港区、品川区、目黒区、大田区といった城南での実利回りの相場は3~5%程度です。新築マンションの利回りが低くなるのは、購入価格が高くなるからです。しかし、その分、空室リスクも低くなります。

中古マンションの利回り

築20年くらいまでは4~5%半ば、築20年以上は7~10%と利回りが高い分、空室リスクも高くなっています。

築年数が高くなるほど、購入価格を抑えられるため、表面利回りも高くなります。しかし、築年数に比例して管理費や修繕費も高くなるため、家賃収入も少なくなります。さらに古くなるほど空室リスクも高くなるので、利回りだけでの比較は難しいといえます。

マンション経営の理想的な利回り・最低ラインの目安

マンション経営の利回りは立地や築年数などによって異なりますが、適正な経営判断ができるよう、一般的にいわれている「理想的な利回り」と「最低ライン」の目安は覚えておきましょう。

理想的な利回りの目安

不動産投資で人気のある、主要都市の新築マンションの場合、表面利回りで6%以上あれば、理想的といえるでしょう。ただし、これはあくまでも理想です。最近は不動産投資の注目度が高まっているため、現実的にこの利回りを超える物件は稀少です。

一方、人口が少ない地方都市のマンションになると、新築でも空室リスクが高いため6%以上の利回りは欲しいところです。また、地方の中古マンションだと、利回りが数十%といったケースもありますが、空室リスクと背中合わせということを忘れないようにしてください。

最低利回りの目安

最低利回りの目安は、マンション経営をする目的によって違います。例えば、目的が相続税対策や老後資金の場合、現時点で収益を生み出さなくてよいので、3%以下の利回りなど手元に収益が残らなくても、マンション経営をする意味はあります。

一方、「現時点の収益にこだわる」「なるべく手出しをしたくない」という場合は、最低利回りの目安を4%程度と考えるのとよいでしょう。

参考までに、実際に各都市のマンションの利回りを見て見ると、3〜4%台が中心になっています。

・賃貸住宅一棟の期待利回り

地区 ワンルームタイプ  ファミリータイプ
東京 城南 3.9% 4.0%
札幌 5.0% 5.2%
仙台 5.1% 5.2%
横浜 4.5% 4.5%
名古屋 4.7% 4.8%
京都 4.8% 4.9%
大阪 4.5% 4.5%
神戸 4.8% 5.0%
広島 5.2% 5.5%
福岡 4.7% 4.8%

【参照元】日本不動産研究所「第47回 不動産投資家調査(2022年10月現在)」より

マンション経営の収入

収入の内訳

マンション経営でのメイン収入は家賃収入となりますが、他の収入は以下となります。

  • 家賃
  • 更新料
  • 礼金
  • 敷金や保証金
  • 駐車場代等

それぞれを詳しく見ていきましょう。

  • 家賃
    毎月決まった日に指定口座に振り込まれます。入居者が多ければ収入は増えますが、逆にいなければ当然収入はなくなります。
  • 更新料
    更新料は地域ごとに異なっています。関東では普通ですが、関西では設定していない物件が多くあります。
  • 礼金
    礼金は契約時に借主から貸主にお礼として支払われるお金のことです。もともと物件が少なかった時代に、家を貸してくれた感謝の気持ちとして渡していたものが今も残っていて、相場は家賃の1ヵ月~2ヵ月分ほどです。そのため、退去時には返還しなくていいことになっています。
  • 敷金や保証金
    敷金や保証金などの名目で入居者から受領したものでも、返却しないことが確定しているものは収入扱いにできます。
  • 駐車場代
    物件の敷地内や近隣にあり、入居者が使っている駐車場の代金も収入に含まれます。

家賃収入の計算法

家賃収入は以下の計算式で算出できます。

「家賃収入=マンションの戸数×稼働率×1戸あたりの賃料」

ただし、この額が全部収入になるわけではなく、月々のローン返済や、修繕費、管理費、火災保険代などが引かれることになります。退去時の礼金も収入になります。

国税庁「令和2年分申告所得税標本調査」によると、不動産所得者数は106万人、不動産所得者の年収入平均は540万円となっています。

マンション経営での必要経費とは?

マンション経営ではさまざまな経費がかかってきます。所得は家賃収入から必要経費を差し引いたものですから、確定申告をする場合は、所得がプラスになっているとその分の税金を払わなければならなくなります。

経営に必要な費用は経費として計上することが節税する上で大切になりますので、まず、どんなものが経費と認められるかを知ることが大切です。収入を申告し忘れたり、ごまかしたりすることは違法ですが、経費を申告しなくても罰せられることはなく、ただ税金を多く取られるだけです。

経費として認められるものは以下となります。

マンション経営にかかる経費一覧
・減価償却費
・租税公課
・損害保険料
・修繕費
・管理費
・接待交際費
・広告宣伝費
・借入金利息
・仲介手数料
・通信費
・弁護士や税理士への報酬
・新聞書籍代
・消耗品費
・交通費
・セミナー参加代

必要経費の中でもわかりにくい減価償却費と税金について次から詳しく見ていきましょう。

マンションの減価償却費とは?

減価償却とは

そもそも「減価償却」とは何なのでしょうか。

人が作った形あるものは、時間の経過や使用によって、価値が下がってきます。マンションやアパートのほか、自動車やパソコンなども減価償却資産になります。ただし、時間経過によって減少しないものは減価償却資産にはあてはまりません。不動産でいうと土地がこれにあてはまります。ですから、不動産での減価償却資産となるのは建物部分だけとなります。

アパートやマンションの法定耐用年数は、構造によって決まっていて以下となっています。ただし、これは建物の寿命を意味するものではありません。

  • 鉄筋コンクリート造 47年
  • 重量鉄骨造 34年
  • 木造 22年
  • 軽量鉄筋(骨格材の厚さ3mm超4mm以下) 27年
  • 軽量鉄筋(骨格材の厚さ3mm以下) 19年
・減価償却費の計算式
「建物の取得価額×償却率」

償却率は、1年にどれだけ価値が減少するかを税制上で定めたもので、対象となる物件の耐用年数によってあらかじめ決められています。償却率は国税庁「減価償却資産の償却率等表」で確認してください。

ただし、中古マンションを購入した場合は残りの耐用年数を計算し直す必要があります。

新築マンションの減価償却費の計算方法

新築マンション(RC造)の減価償却費は、本体(躯体)と設備を別々に計算する必要があります。それぞれの耐用年数は以下のとおりです。

  • 本体の耐用年数:47年
  • 住宅設備の耐用年数:15年

この耐用年数に合わせて、国税庁では減価償却資産の償却率を定めています。例えば、新築マンションを4,500万円(うち住宅設備500万円)で購入した場合の償却率や減価償却費は以下のようになります。

4,000万円×0.022(償却率)=88万円
500万円×0.067(償却率)=33.5万円

中古マンションの減価償却費の計算方法

・中古マンションの耐用年数
「(47年-経過年数)+経過年数×0.2」

たとえば、築20年の中古マンションを3,000万円で購入した場合の耐用年数と減価償却費は以下のようになります。

(47年-20年)+20年×0.2=31年
3,000万円×0.030(償却率)=90万円

毎年償却していかなければいけないのですが、わからずに計上しなかったり、間違って過小申告した場合は、結果として税金を多く払うことになってしまいます。不動産所得が発生した年からは確定申告で減価償却をしておく必要があるので、覚えておきましょう。

マンション経営で支払う税金

マンションを所有すると、「不動産取得税」「固定資産税」「登録免許税」「都市計画税」などがかかってきます。これらは租税公課として計上できます。

不動産取得税とは

名前通り、マンションなど不動産を取得したときに課税される税金のことです。購入したときに1度だけ払えばすみます。

「不動産取得税=建物の固定資産税評価額×税率4%」

ただし、2024年3月31日までに「住宅」として取得した場合は、3%の軽減税率が適用されます。

【参照元】東京都主税局「不動産取得税」より

固定資産税とは

固定資産税は、毎年1月1日時点で住宅やマンション、土地などの固定資産を所有する人が支払う税金です。地方税ですから、納付先は住んでいる自治体になります。東京23区では都が課税します。

マンションの固定資産税は「土地」と「家屋」の両方に課税されます。家屋部分は経年劣化が考慮され、税額は年々下がっていくのが一般的ですから、新築が最も評価が高くなります。

また、マンションの場合は鉄筋コンクリート造が多いので耐用年数が長くなり、評価額が高くなる傾向があります。

・固定資産税の計算方法
「固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準)×1.4%(標準税率)」

【参照元】総務省「固定資産税の概要」より

登録免許税とは

登録免許税は購入したマンションの登記をする際にかかる税金です。不動産を購入したときは、所在地や面積、所有者の住所・氏名などを公の「登記簿に記載し、権利関係などをわかるようにすることを「登記」といいます。

登記された情報は、法務局で「全部事項証明書」等を入手することで誰でも確認することができるようになります。この登記をする際にかかる税金が「登録免許税」です。

・登録免許税の税率と軽減措置

区分 標準税率 軽減税率
所有権保存登記(新築賃貸住宅の建築) 0.4%
所有権移転登記(中古賃貸住宅の売買) 2.0%
所有権移転登記(土地) 2.0% 1.5%(2023年3月まで)

都市計画税とは

都市計画税は、都市開発を積極的に行う市街化区域に土地・建物を所有する人に課される税金のことです。そのため、土地と建物のそれぞれに評価額が決められているため、別々に計算する必要があります。

・都市計画税の計算方法
「都市計画税額=固定資産税評価額×制限税率(0.3%)」

なかなか税金はわかりづらいものですが、基礎知識だけ押さえておくだけでも投資の成功率も高まります。

マンション経営の実質利回りシミュレーション事例

マンション経営での収入は、「総収入-総費用」で求められますが、しかし、実際は税金や減価償却、ローンの返済金額によっても違ってきます。

そこで、運用シミュレーションをすることが不可欠になってきます。単純に物件価格や想定年間家賃収入から表面利回りだけを計算しても、実態とはかけ離れることも少なくありません。

一般的にマンション経営で費用や税金を差し引くと、手元に残る金額は家賃収入総額の約15%程度といわれています。

ですから、簡単な目安で計算する方法は以下になります。

「手取り収入の目安=年間家賃収入×15%」

シミュレーションに必要な項目

  • 物件価格
  • 想定家賃収入
  • 想定空室率
  • 諸経費率
  • 自己資金
  • 借入金額
  • 借入期間
  • 金利

これらをメモしておけば、ネット上で「収支シミュレーション」「経営シミュレーション」を探し出せばかんたんに無料で試算ができるのでぜひ、試してみましょう。

異なる物件タイプの実質利回りシミュレーションの例をいくつか紹介します。

都内の新築マンション(1R)の実質利回り例

物件条件
・所在地:東京都太田区
・物件価格:3,000万円
・家賃:10万円/月

実質の年間家賃収入 84万円
年間家賃収入 120万円
−年間管理費(家賃収入の5%) -6万円
−固定資産税+都市計画税 -30万円
実質の物件価格 3,150万円
購入価格 3,000万円
+諸費用(物件価格の5%) 150万円 

→ 実質利回り2.66%=実質の年間家賃収入84万円÷実質の物件価格3,150万円

神奈川県の中古マンション(1R/築15年)の例

物件条件
・所在地:神奈川県横浜市
・物件価格:1,800万円
・家賃:6.5万円/月

実質の年間家賃収入 54万円
年間家賃収入 78万円
−年間管理費(家賃収入の5%) -4万円
−固定資産税+都市計画税 -20万円
実質の物件価格 1,926万円
購入価格 1,800万円
+諸費用(物件価格の5%) 126万円 

→ 実質利回り2.80%=実質の年間家賃収入54万円÷実質の物件価格1,926万円

長野県の一棟アパート(築15年)の例

物件条件
・所在地:長野県長野市
・物件価格:7,800万円
・家賃:50万円/月

実質の年間家賃収入 478万円
年間家賃収入 600万円
−年間管理費(家賃収入の5%) -30万円
−固定資産税+都市計画税 -92万円
実質の物件価格 8,346万円
購入価格 7,800万円
+諸費用(物件価格の5%) 546万円 

→ 実質利回り5.72%=実質の年間家賃収入478万円÷実質の物件価格8,346万円

※いずれも、自己資金、ローン金利、想定空室率、家賃下落率などを省いた簡易的な実質利回り計算になります。

マンション経営の利回りに関する注意点

マンション経営の利回りを考えるときには注意も必要になります。

高い表面利回りにつられない

広告やネット上の物件情報は表面利回りが書かれています。ですから、単に「利回り」と書かれていたら、表面利回りの確率が大です。利回りが高いと魅力的ですが、だからといって高い収益が見込めるとは限りません。しっかりと見極める必要があります。

空室リスクを考慮する

ネット上の物件情報などでは、「満室を想定した利回り」を表示しているケースが目立ちます。しかし、実際には転勤や就職、ほかの住民とのトラブル、騒音問題など、さまざまな理由で空室が発生します。

空室の間は家賃収入がなくなるため、オーナーがローンの返済分を負担しなければなりません。こういった負担を回避できるよう、空室リスク対策を事前にしておくことが重要です。対策例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 適正な家賃を設定する
  • サブリース(満室保証)契約をする
  • 空室が発生しても耐えられるよう貯蓄をする

家賃下落リスクを考慮する

マンションなどの賃貸物件は、築年数が古くなるほど家賃が下落していきます。一般的に、家賃は年間1%ずつ下落していくといわれています。これを加味して、家賃がある程度下がっても、安定したマンション経営を続けられるかシミュレーションすることも重要です。

また、家賃下落のペースが緩やかな物件を選ぶという視点も欠かせません。一例では、入居者ニーズのある外観・間取り・住宅設備の物件にする、あるいは、土地の価格が上昇・安定しているエリアの物件を選ぶなどの視点が必要です。

利回りが高くても注意が必要な物件とは

マンション経営においては、利回りが高くても慎重な判断が求められる物件もあります。具体的には「築年数が古い物件」と「地方の物件」です。それぞれの内容について説明します。

築年数が古い物件

この記事の前半でも触れましたが、相場よりも高利回りということは、リスクが高いことの裏返しでもあります。特に築古物件の場合、現時点では空室なのに、それが埋まれば高利回りを得られるという想定利回りを表記しているケースも目立ちます。

もし、このような物件で空室が埋まらなければ、ローン返済をオーナーが負担することになります。たしかに、物件選びで利回りをチェックすることも大切です。しかし、高利回りだけを求めてしまえば、結果的にリスクの高い物件を探していることになる場合もあるので注意しましょう。

人口減少が進んでいる地方の物件

首都圏や近畿圏などを除いた地方のマンションは、土地価格が安い分、高利回りになる傾向があります。その反面、人口減少が進んでいる地方のマンションは、借り手が少なくなっているため、高い空室リスクを抱えているともいえます。

また、地方都市は大都市に比べて、そのエリアの物件を狙う不動産投資家が少ないため、物件を売却しようと思ったときに買い手が見つからないケースもあります。売り抜けるために物件価格を下げているうちに売却損が膨らんでいくというリスクもあります。地方の物件は、このようなマイナス材料があるため、金融機関の融資がつきにくいというデメリットもあります。
ただし、地方の物件でも、地価が安定・上昇しているエリアなら、これらのリスクやデメリットは限定的です。

マンション経営を成功させるために重要なこと

最後に、マンション経営を成功させるために重要ないくつかのポイントを確認しましょう。

空室リスクが低い物件を選ぶ

安定したマンション経営をしていくには、空室リスクの低い物件選びが必須です。これを実現するには、いつかのことを意識する必要があるでしょう。例えば、最寄り駅が人気の駅・快速の停車駅・始発駅など電車通勤がしやすい物件です。これらの駅からの距離が近いほど、賃貸ニーズが高いため空室リスクを軽減できると考えられます。

周辺施設(スーパーマーケット、コンビニ、規模のある病院、保育所など)が充実している物件も生活がしやすいため空室リスクを軽減しやすいです。このようにマンション経営では、利回りだけでは測れない物件の潜在価値に着目することも大切です。

実質利回りのシミュレーションを慎重に行う

前述したとおり、 ひと口にマンション経営の利回りといっても「表面利回り」と「実質利回り」では、本質的な意味が変わってきます。端的にいえば「表面利回り=おおざっぱな指標」「実質利回り=現実の経営に近い指標」なので、両者の特徴に合わせて使い分ける必要があります。

一例としては、物件を比較する段階では「表面利回り」を使い、物件を絞り込んだ段階では「実質利回り」で購入すべきか否かを判断するといった使い方が考えられます。ただし、実質利回りを計算するときは、費用を多めに見積もるなど、慎重なシミュレーションを重ねることが大切です。

イールドギャップのシミュレーションも行う

マンション経営を成功させるには、利回り以外の指標を知っておくことも大切です。その代表格がイールドギャップです。不動産投資のイールドギャップとは、実質利回りと借入金利(ローン金利)の差のことで、計算式で表すと以下のようになります。

イールドギャップ=実質利回り−借入金利(ローン金利)

イールドギャップが大きいほど、安定経営をしやすいといえます。一般的に、3%以上のイールドギャップがあるのが理想といわれています。

急な出費に備えて資金を確保しておく

実質利回りやイールドギャップが高い物件を手に入れても、それだけで「これでマンション経営が成功する」と考えるのは危険です。いくら空室リスクの低い物件を購入しても、入居者の退去はありますし、ある程度の空室期間が空くこともあります。

また、新築物件や築浅物件は住宅設備が故障しにくいとはいえ、可能性がゼロなわけではありません。故障などのトラブルによる急な出費に備えて、いつでも使える手元資金をストックしておくこともマンションオーナーの責務です。特に手元資金があまりない状態でマンション経営を始める場合は、毎月一定額を積み立てるようにしましょう。

不動産は利回りも重要ですが出口戦略も大切です。こちらの記事も参考にしてみて下さいね。

まとめ

マンション経営は長期的に安定した利回りが期待できる投資方法です。経営を考えたときに利回りを気にするのは当然のことですが、利回りが高いからといって収益が保証されるわけではありません。利回りだけに気を取られると失敗の原因になってしまうので、利回りだけにとらわれず、エリアや使い勝手などの条件を考え、幅広い視点で判断して、マンション経営を成功させましょう。

不動産投資で成功するためには、セミナーに参加するなどして不動産投資に関する知識を習得することが大切です。ベルテックスでは不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお申し込みください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。