2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンの年収目安はいくら?審査を有利に進めるポイントを解説

  • 年収・収入
  • 融資・ローン
  • 審査

年金問題や高齢化社会に関するニュースなどを見かけると、老後の資産形成を考える方も多いのではないでしょうか。老後、夫婦2人が生活するためには約2,000万円必要と言われています。ただし2,000万円を老後のために貯めようと思っていても、子育て世代には持ち家の住宅ローンや子供の教育費などの出費ばかりで先の貯金はなかなか計画しにくいものです。資産形成の手段のひとつとして、不動産投資がおすすめです。

この記事では不動産投資をこれから始める方がおさえておくべき不動産投資ローンのポイントや、年収の目安や審査についてご紹介します。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンは、持ち家の住宅ローンとは審査基準が異なります。本項では不動産投資ローンの種類や、住宅ローンをはじめとした他のローンとの違いについてご紹介します。

不動産のローンの種類

不動産関係のローンは、主に不動産投資ローン、住宅ローンに分かれます。不動産投資ローンは投資や事業目的のためのローンです。それに対し住宅ローンは自分が住む家に対するローンとなります。

不動産投資ローンの中にはアパートローンとプロパーローンがあります。アパートローンはアパート・マンションローンと呼ばれ、区分マンションの融資でよく組まれるローンです。
アパートローンは、パッケージ化された融資商品であり物件や投資家によって審査基準が変わらないのが特徴です。

それに対しプロパーローンは、アパートローンと比べ融資条件や借入額も異なります。プロパーローンでは億を超える借入金額にも対応でき、投資家の資産や事業実績を見て融資が決まります。

それぞれのローンによる違い

それぞれのローンの違いを詳しくみていきましょう。

【不動産投資ローンと住宅ローンの違い】

  対象 審査内容 金利(変動金利の場合)
不動産投資ローン 第三者に貸すための不動産 融資希望者の返済能力+物件の価値等 約年1.6%〜
住宅ローン 自分が住むための住居  融資希望者の返済能力等 約年0.3%〜

不動産投資ローンと住宅ローンは前述の通り審査基準が異なるほか、審査内容、金利も異なります。

住宅ローンは自分が住むための住居に対する融資であり、審査内容には個人の返済能力が必要です。そのため融資希望者それぞれの年収や職業などで融資限度額や金利が異なります。金利は住宅ローンの方が低い傾向があります。金利が低いからと言って、投資目的で購入する不動産では住宅ローンは組めないのでご注意ください。

不動産投資ローンは投資や事業を目的としたローンのため、審査内容には個人の返済能力の他に物件の価値が問われます。物件が継続的に生み出す収益性や事業性が審査対象となります。どちらのローンも、変動金利または固定金利を選べます。変動金利では市場に連動して金利が上下しますが、低い金利の間に返済できれば総支払額を抑えられます。

【アパートローンとプロパーローンの違い】

  対象 審査期間 借入金額
アパートローン 区分マンションなどが対象。パッケージ化された融資商品 短い 年収の7~8倍まで
プロパーローン 融資希望者の資産背景や、事業の実績などを総合的に判断する。 長い 億を超える金額にも対応

アパートローンもプロパーローンも不動産投資ローンの一種です。アパートローンとプロパーローンの違いは、融資商品の自由度です。

一般的にアパートローンは、サラリーマンなどが副業で不動産投資する場合によく組まれる融資商品です。商品はパッケージ化されており、ある程度の融資条件・審査基準が決まっています。アパートローンは不動産投資を目的としているため、住宅ローンに比べ融資限度が高いという特徴があります。

条件にもよりますが自己資金の頭金が少額からでも利用でき、不動産投資の初心者でもアパートローンを組めます。ただし、初心者でも組めるからと言って、審査が優しいわけではありません。不動産投資ローンは住宅ローンに比べ、審査が厳しいと言われています。審査の際には年収だけでなく、購入するマンションの経営でどれほど収益を上げられる見込みがあるかが問われます。

プロパーローンはアパートローンに比べ自由度が高く、オーダーメイド式です。融資希望者の資産背景や、事業の実績などを一人ひとりに合わせて総合的に判断します。プロパーローンの特徴は、保証会社を通さず、金融機関が資金を融資することです。そのため保証会社の基準を満たさなくても融資を受けられ、アパートローンより低い金利で借りられるというメリットがあります。

一般的に銀行はローンの際に保証会社を通すことで、万が一融資希望者がローンを払えなくなった場合は残債を保証会社が支払うようにリスクヘッジしています。プロパーローンは保証会社を通さないため、融資希望者が支払えない場合、銀行でリスクを背負うことになります。そのため回収できないリスクを考慮し、融資の基準はアパートローンに比べ高いです。確実に確保できる担保や連帯保証人の有無、融資実績を判断し融資を行います。

不動産投資ローンは年収いくらから取り組める?

不動産投資を始める際、年収がいくらあれば不動産投資ローンを組めるのか気になるところです。本項では、不動産投資ローンを組むのに必要な年収の目安や審査に関してご紹介します。

不動産投資ローンを組むのに必要な年収の目安

不動産投資ローンを組むのに必要な年収の目安は500万円です。その理由は、一般的に不動産投資における融資限度額が年収の7〜10倍のためです。年収が500万円あれば、3,500万円〜5,000万円の融資が受けられます。

年収だけで審査されるわけではない

金融機関ごとに融資審査における年収の基準はありますが、前述したとおり、年収だけで判断されるわけではありません。融資審査では、融資申込者の属性を総合的に評価した上で融資の可否を決定します。属性とは、個人の信用度を測る際に重視される項目のことです。返済に影響を与える要素なので、金融機関が慎重に審査します。

不動産投資ローンでは物件の価値も審査されるので、優良物件を選ぶことで審査に有利になる場合があります。したがって、年収が基準より低いからといってあきらめる必要はないのです。

不動産投資ローンの審査で重視される属性

融資の可否は個人の属性で判断されると述べましたが、金融機関はどのような項目について審査するのでしょうか。不動産投資ローンの審査で重視される属性について具体的に説明します。

年収

年収は融資審査の基本になる項目です。不動産投資ローンは基本的に家賃収入で返済しますが、空室が発生した場合は給与から補填することがあります。そのため、給与から補填しても生活に影響が少ない程度の年収は求められます。前述したとおり、一般的な年収の目安は500万円程度ですが、金融機関によって異なり、物件の価格によっても変化します。年収の証明には、源泉徴収票、課税証明書、過去数年分の確定申告書(自営業者の場合)などの書類の提出が必要です。

勤務先

勤務先は収入の安定性を判断するために重要な項目です。上場企業や規模の大きい企業に勤務している人、または公務員であれば高く評価されるでしょう。創業して間もないベンチャー企業などは業績が大きく伸びているとしても、将来まで安定した業績が見込めるかは未知数です。長期間にわたって安定した業績をあげている企業の方が高く評価されやすいといえます。

勤続年数

勤務先の勤続年数も問われます。一つの会社に長く勤めていれば安定性が高く評価されます。逆に転職を頻繁に繰り返していると、退職や給与の低下でローン返済が滞るのでは、と判断されて不利になります。また、転職して日が浅い場合は勤続年数の基準に満たない可能性もあります。

他の借り入れ状況

ショッピングローンやキャッシングローンなどの借り入れ状況は厳密にチェックされます。収入が多くても多額の借り入れがあると、給与の多くが返済に充てられ、不動産投資で空室が出た場合にローンの返済が厳しくなると判断される可能性があります。余裕があるときに返済して、借入額を少なくしておいた方が審査に通りやすくなるでしょう。

自己資金

自己資金とは、物件購入代金の一部として充当する頭金と、購入するときにかかる初期費用を合わせた資金のことをいいます。「自己資金=頭金」ではないという点に注意が必要です。一般的には不動産売買契約時に手付金を売主に支払い、売買代金決済時に頭金を支払うという流れになります。頭金や手付金は購入代金から差し引かれ、月々のローン返済額が少なくなるので、自己資金が多いほど審査では有利になります。

資産状況

銀行融資を受けるのに資産が多いに越したことはありません。特に預貯金や株式・債券は現金化しやすいので、万一空室が長引き家賃収入が入らなくなっても、手持ちの資産を現金化することで容易に返済できます。年収が一定水準に届かなくても金融資産が多ければ審査に通る可能性もあります。また、金融資産が多ければ、金融機関から頭金の増額を提案された場合にも対応できるので評価が高くなります。

年齢

ローンの審査では金融機関ごとに借入時や完済時における年齢の上限が決められています。大手銀行の場合、借入時年齢が65~70歳程度、完済時年齢が80歳程度となっています。例えば60歳でローンを申し込む場合は最長でも20年までしかローンを組めないことになります。月々の返済を少なくするために35年の長期ローンを組むなら、なるべく若い年齢のときに申し込んだ方が有利です。

審査に不利と考えられる場合の対処法

年収などの属性が審査に不利と考えられる場合、審査を通すためにはできる限りの対策を講じる必要があります。一例として以下のような方法が考えられます。

自己資金を用意する

審査に不利と考えられる属性をカバーするには、頭金を多く入れることが有効です。諸費用も含め自己資金が多ければ当然借入額が減るので、融資のハードルが低くなります。不動産投資の自己資金の目安は、一般的に物件価格の15~30%程度といわれていますが、可能な限り多めに用意した方が審査に通りやすくなるでしょう。

ローンの残債を減らす

ショッピングローンやキャッシングローンの残債が多いと審査では不利になるので、ローンの残債を減らしておくことが大切です。現在は超低金利なので、銀行の定期預金に預けておくよりも、高金利のローンを返済した方がはるかに得です。ショッピングローンやキャッシングローンの返済はATMでも手軽に行えるので、ローン申し込みの前までに可能な限り残債を減らしておきましょう。

不動産投資会社に相談する

審査に不利と考えられる属性の場合は、不動産投資会社に相談するのも有効な方法です。不動産投資会社は金融機関と提携していることが多く、提携先の金融機関を紹介してもらうことにより、融資の審査に通りやすくなる可能性があります。また、審査に通るために適切なアドバイスを受けられることもあります。ただし、不動産投資会社のなかには、審査を通すために虚偽記載を勧める会社も稀にあるので、業者選びは慎重に進めることが大切です。

金融機関への審査を検討する際の注意事項

金融機関への審査を検討する方は、以下の点に注意してください。

虚偽の申請をしないこと

審査の際に虚偽の申請をするのは絶対にやめましょう。個人の信用情報は全国銀行個人信用情報センターに登録されているため、申込書に虚偽の記載をすると確実に見抜かれます。カードローンではネット申し込みなどで虚偽の記載をすると仮審査の段階で落ちるといわれており、不動産投資ローンの場合も仮審査で落ちると考えてよいでしょう。万一、融資後に虚偽記載が発覚すると、一括返済を求められる場合もあるので注意が必要です。

転職は慎重に

不動産投資を検討しているのなら、転職も慎重に判断した方がよいでしょう。不動産投資ローンの審査では年収だけではなく勤続年数も評価の対象となるからです。大手銀行の審査基準では、最低でも1年以上の勤続年数が必要となります。中小企業で働いていた人が大企業に転職する、民間企業で働いていた人が公務員になるといったケースは別ですが、単に給与水準が高くなるだけではプラスに評価されない可能性があるので注意しましょう。

金融機関別、年収別の融資条件の違い

不動産投資ローンは金融機関や年収によって融資条件が異なります。ここでは金融機関別、年収別の融資条件について詳細をご紹介します。

金融機関別の融資条件の違い

金融機関によって融資条件は異なります。各金融機関の違いをご紹介します。

  三井住友銀行 オリックス銀行 スルガ銀行
金利 年1.0%~
(2022年11月1日現在)
*最新の金利は店舗に確認 
【3年固定特約型】
年2.3%~3.3%
【5年固定特約型】
年2.5%~3.5%
【変動金利】
年2.675%~3.675%
(2023年4月1日現在)
年1.8%~
(2021年7月27日現在)
*最新の金利は店舗に確認
団信 当行指定の団体信用生命保険に加入が可能(加入する場合、融資利率は年0.3%上乗せ) 通常の団信(死亡・所定の高度障害保障)の他、介護保障付団信や生活習慣病団信なども選択可能 団信あり(地方銀行協会またはカーディフ生命保険が対象)
融資可能額 200万円以上で当該賃貸物件の建築・購入価格等の範囲内(10万円きざみ) 1,000万円以上2億円以下 最高10億円まで利用可能(団体信用生命保険付きは最高4億円まで)
繰り上げ返済の手数料 店舗に問い合わせ 0.5%~2.0%(金利タイプ、借入れ期間によって異なる) 借入から5年以内:繰上返済額の2.0%
借入から5年以降:一部繰上返済の場合6,600円
全額繰上返済の場合11,000円
その他申込条件   *前年度の税込み年収(自営業の方は所得)が700万円以上
*借入時の年齢が55歳未満
*担保提供する購入不動産が首都圏・近畿圏・名古屋市・福岡市の居住用不動産
*借入期間が、購入不動産の建物耐用年数と築後経過年数により当社が定める期間内
*原則、借入金額が購入金額の90%以内
*借入時点の年齢が満20歳以上70歳未満で、 最終返済時の年齢が満85歳未満の方
*一定の資産背景を有している方
*その他当社所定の条件を満たす方(詳細は問い合わせが必要)

特に申込条件は各金融機関で詳細に設定されています。年収、購入する地域、建物耐用年数など各社規定があるため、ご注意ください。

【引用元】三井住友銀行「アパートローン(商品内容)」より
【引用元】オリックス銀行「不動産投資ローン」より
【引用元】スルガ銀行「投資用不動産ローン」より

一般的な年収別の融資条件の違い

一般的な年収別の融資条件の違いのイメージは以下のとおりです。年収によって借り入れられる金利や融資可能額が異なります。一般的に融資可能額は年収の7〜10倍です。

  おすすめの金融機関 金利 融資可能額
年収500万 日本政策金融公庫
ノンバンク系金融機関
年1.08%~2.35%(日本政策金融公庫)
年3.75%~4.55%
(ノンバンク系金融機関)
3,500万円~5,000万円
*日本政策金融公庫は4,800万円まで
年収700万 地方銀行 年0.85%~8.35%
(東京スター銀行変動金利)
年1.35%~9.05%
(東京スター銀行固定金利)
5,600万円~7,000万円
年収1,000万 都市銀行 年1.8%~
(スルガ銀行)
7,000万円~1億円

 年収によって不動産投資ローンを組める金融機関が異なります。大手銀行は金利が低いメリットがある一方、年収の条件が厳しい傾向にあります。

不動産投資ローンの融資までの流れ

最後に不動産投資ローンを組むにあたり、融資までの具体的な流れをご紹介します。(2023年4月1日現在)

必要書類を揃える

融資を受ける際には様々な書類が必要になります。必要書類は金融機関によってそれぞれ公式ホームページなどで紹介されています。ここでは三井住友銀行を例にご紹介します。。

【例 三井住友銀行】

融資希望者に関する必要書類 ご本人さま確認書類(運転免許証、パスポート等)
確定申告書・同付表(3期分)または源泉徴収票(直近分)
会社を経営されている方は、法人申告書(3期分)
所有資産に関する書類(固定資産税課税明細書等)
投資する不動産に関する必要書類 事業計画書
謄本(土地・建物)
公図・住宅地図
地積測量図
固定資産評価証明書・関係証明書
工事請負契約書
建築確認通知書
売買契約書
重要事項説明書
工事見積書
家賃保証契約書・家賃査定書
物件パンフレット

投資する不動産に関する物件概要書などの必要書類は、不動産業者に相談しましょう。登記情報や公図は法務局で取得できます。

以上の書類は銀行との面談前に揃える必要があります。すぐに揃えるのが難しいので、前もって段取りしておくことが大切です。

事前審査

融資審査には大きく分けて事前審査と本審査があります。事前審査の実施時期は物件を選定し、契約するまでの間です。事前審査は金融機関が行い、主に属性など返済能力があるか見極められます。

審査項目の一例は以下のとおりです。

  • 完済時年齢と借入時年齢
  • 健康状態
  • 担保評価
  • 勤続年数
  • 年収
  • 連帯保証
  • 金融機関の営業エリア
  • 返済負担率
  • 融資率
  • 雇用形態
  • 他の債務の状況と返済履歴
  • 国籍

返済負担率とは、1年間のローン返済額を年収で割った数字です。返済負担率が低いほど、金融機関の評価が高くなります。また融資率とは、購入予定の物件価格に対する借入金の割合です。融資率が少ないほど審査では有利になります。

本審査

本審査の実施時期は物件を契約してから金融機関との金銭消費貸借契約までの間です。本審査では金融機関以外に保証会社も審査に入ります。そのため本審査は事前審査と比べて結果が出るのに時間がかかります。本審査では1カ月ほどみておきましょう。

ローン契約

本審査に通過し融資が承認されると、つぎに金融機関とローン契約を結びます。具体的には、「金銭消費貸借契約兼抵当権設定契約」と呼ばれる契約を結び、金利や返済期間、借入額など詳細な条件を決めます。

さらに不動産投資ローンを組む場合、物件の所有権に関する登記とあわせて、抵当権設定登記を結びます。その理由は、融資希望者が返済できなくなった際金融機関が差し押さえできるように、別途登記が必要なためです。

これらの手続きを終えると、物件の引渡し日までに金融機関から不動産会社に対して融資が実行されます。

不動産投資の記事ならこちらもオススメの内容となっています。

まとめ

この記事では、不動産投資ローンについて年収の目安や、審査のポイントや流れについてご紹介しました。不動産投資ローンの年収目安は500万円となっており、年収に合わせて借入できる金融機関が異なります。少しでも条件の良い金利で借り入れるためには適切な金融機関で融資を受ける事が大切です。

不動産投資は始めやすく、管理に手間がかからないことからサラリーマンの副業で高い人気があります。老後の資産形成を考える手段の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

ベルテックスでは不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお申し込みください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンの年収目安はいくら?審査を有利に進めるポイントを解説

  • 年収・収入
  • 融資・ローン
  • 審査

年金問題や高齢化社会に関するニュースなどを見かけると、老後の資産形成を考える方も多いのではないでしょうか。老後、夫婦2人が生活するためには約2,000万円必要と言われています。ただし2,000万円を老後のために貯めようと思っていても、子育て世代には持ち家の住宅ローンや子供の教育費などの出費ばかりで先の貯金はなかなか計画しにくいものです。資産形成の手段のひとつとして、不動産投資がおすすめです。

この記事では不動産投資をこれから始める方がおさえておくべき不動産投資ローンのポイントや、年収の目安や審査についてご紹介します。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンは、持ち家の住宅ローンとは審査基準が異なります。本項では不動産投資ローンの種類や、住宅ローンをはじめとした他のローンとの違いについてご紹介します。

不動産のローンの種類

不動産関係のローンは、主に不動産投資ローン、住宅ローンに分かれます。不動産投資ローンは投資や事業目的のためのローンです。それに対し住宅ローンは自分が住む家に対するローンとなります。

不動産投資ローンの中にはアパートローンとプロパーローンがあります。アパートローンはアパート・マンションローンと呼ばれ、区分マンションの融資でよく組まれるローンです。
アパートローンは、パッケージ化された融資商品であり物件や投資家によって審査基準が変わらないのが特徴です。

それに対しプロパーローンは、アパートローンと比べ融資条件や借入額も異なります。プロパーローンでは億を超える借入金額にも対応でき、投資家の資産や事業実績を見て融資が決まります。

それぞれのローンによる違い

それぞれのローンの違いを詳しくみていきましょう。

【不動産投資ローンと住宅ローンの違い】

  対象 審査内容 金利(変動金利の場合)
不動産投資ローン 第三者に貸すための不動産 融資希望者の返済能力+物件の価値等 約年1.6%〜
住宅ローン 自分が住むための住居  融資希望者の返済能力等 約年0.3%〜

不動産投資ローンと住宅ローンは前述の通り審査基準が異なるほか、審査内容、金利も異なります。

住宅ローンは自分が住むための住居に対する融資であり、審査内容には個人の返済能力が必要です。そのため融資希望者それぞれの年収や職業などで融資限度額や金利が異なります。金利は住宅ローンの方が低い傾向があります。金利が低いからと言って、投資目的で購入する不動産では住宅ローンは組めないのでご注意ください。

不動産投資ローンは投資や事業を目的としたローンのため、審査内容には個人の返済能力の他に物件の価値が問われます。物件が継続的に生み出す収益性や事業性が審査対象となります。どちらのローンも、変動金利または固定金利を選べます。変動金利では市場に連動して金利が上下しますが、低い金利の間に返済できれば総支払額を抑えられます。

【アパートローンとプロパーローンの違い】

  対象 審査期間 借入金額
アパートローン 区分マンションなどが対象。パッケージ化された融資商品 短い 年収の7~8倍まで
プロパーローン 融資希望者の資産背景や、事業の実績などを総合的に判断する。 長い 億を超える金額にも対応

アパートローンもプロパーローンも不動産投資ローンの一種です。アパートローンとプロパーローンの違いは、融資商品の自由度です。

一般的にアパートローンは、サラリーマンなどが副業で不動産投資する場合によく組まれる融資商品です。商品はパッケージ化されており、ある程度の融資条件・審査基準が決まっています。アパートローンは不動産投資を目的としているため、住宅ローンに比べ融資限度が高いという特徴があります。

条件にもよりますが自己資金の頭金が少額からでも利用でき、不動産投資の初心者でもアパートローンを組めます。ただし、初心者でも組めるからと言って、審査が優しいわけではありません。不動産投資ローンは住宅ローンに比べ、審査が厳しいと言われています。審査の際には年収だけでなく、購入するマンションの経営でどれほど収益を上げられる見込みがあるかが問われます。

プロパーローンはアパートローンに比べ自由度が高く、オーダーメイド式です。融資希望者の資産背景や、事業の実績などを一人ひとりに合わせて総合的に判断します。プロパーローンの特徴は、保証会社を通さず、金融機関が資金を融資することです。そのため保証会社の基準を満たさなくても融資を受けられ、アパートローンより低い金利で借りられるというメリットがあります。

一般的に銀行はローンの際に保証会社を通すことで、万が一融資希望者がローンを払えなくなった場合は残債を保証会社が支払うようにリスクヘッジしています。プロパーローンは保証会社を通さないため、融資希望者が支払えない場合、銀行でリスクを背負うことになります。そのため回収できないリスクを考慮し、融資の基準はアパートローンに比べ高いです。確実に確保できる担保や連帯保証人の有無、融資実績を判断し融資を行います。

不動産投資ローンは年収いくらから取り組める?

不動産投資を始める際、年収がいくらあれば不動産投資ローンを組めるのか気になるところです。本項では、不動産投資ローンを組むのに必要な年収の目安や審査に関してご紹介します。

不動産投資ローンを組むのに必要な年収の目安

不動産投資ローンを組むのに必要な年収の目安は500万円です。その理由は、一般的に不動産投資における融資限度額が年収の7〜10倍のためです。年収が500万円あれば、3,500万円〜5,000万円の融資が受けられます。

年収だけで審査されるわけではない

金融機関ごとに融資審査における年収の基準はありますが、前述したとおり、年収だけで判断されるわけではありません。融資審査では、融資申込者の属性を総合的に評価した上で融資の可否を決定します。属性とは、個人の信用度を測る際に重視される項目のことです。返済に影響を与える要素なので、金融機関が慎重に審査します。

不動産投資ローンでは物件の価値も審査されるので、優良物件を選ぶことで審査に有利になる場合があります。したがって、年収が基準より低いからといってあきらめる必要はないのです。

不動産投資ローンの審査で重視される属性

融資の可否は個人の属性で判断されると述べましたが、金融機関はどのような項目について審査するのでしょうか。不動産投資ローンの審査で重視される属性について具体的に説明します。

年収

年収は融資審査の基本になる項目です。不動産投資ローンは基本的に家賃収入で返済しますが、空室が発生した場合は給与から補填することがあります。そのため、給与から補填しても生活に影響が少ない程度の年収は求められます。前述したとおり、一般的な年収の目安は500万円程度ですが、金融機関によって異なり、物件の価格によっても変化します。年収の証明には、源泉徴収票、課税証明書、過去数年分の確定申告書(自営業者の場合)などの書類の提出が必要です。

勤務先

勤務先は収入の安定性を判断するために重要な項目です。上場企業や規模の大きい企業に勤務している人、または公務員であれば高く評価されるでしょう。創業して間もないベンチャー企業などは業績が大きく伸びているとしても、将来まで安定した業績が見込めるかは未知数です。長期間にわたって安定した業績をあげている企業の方が高く評価されやすいといえます。

勤続年数

勤務先の勤続年数も問われます。一つの会社に長く勤めていれば安定性が高く評価されます。逆に転職を頻繁に繰り返していると、退職や給与の低下でローン返済が滞るのでは、と判断されて不利になります。また、転職して日が浅い場合は勤続年数の基準に満たない可能性もあります。

他の借り入れ状況

ショッピングローンやキャッシングローンなどの借り入れ状況は厳密にチェックされます。収入が多くても多額の借り入れがあると、給与の多くが返済に充てられ、不動産投資で空室が出た場合にローンの返済が厳しくなると判断される可能性があります。余裕があるときに返済して、借入額を少なくしておいた方が審査に通りやすくなるでしょう。

自己資金

自己資金とは、物件購入代金の一部として充当する頭金と、購入するときにかかる初期費用を合わせた資金のことをいいます。「自己資金=頭金」ではないという点に注意が必要です。一般的には不動産売買契約時に手付金を売主に支払い、売買代金決済時に頭金を支払うという流れになります。頭金や手付金は購入代金から差し引かれ、月々のローン返済額が少なくなるので、自己資金が多いほど審査では有利になります。

資産状況

銀行融資を受けるのに資産が多いに越したことはありません。特に預貯金や株式・債券は現金化しやすいので、万一空室が長引き家賃収入が入らなくなっても、手持ちの資産を現金化することで容易に返済できます。年収が一定水準に届かなくても金融資産が多ければ審査に通る可能性もあります。また、金融資産が多ければ、金融機関から頭金の増額を提案された場合にも対応できるので評価が高くなります。

年齢

ローンの審査では金融機関ごとに借入時や完済時における年齢の上限が決められています。大手銀行の場合、借入時年齢が65~70歳程度、完済時年齢が80歳程度となっています。例えば60歳でローンを申し込む場合は最長でも20年までしかローンを組めないことになります。月々の返済を少なくするために35年の長期ローンを組むなら、なるべく若い年齢のときに申し込んだ方が有利です。

審査に不利と考えられる場合の対処法

年収などの属性が審査に不利と考えられる場合、審査を通すためにはできる限りの対策を講じる必要があります。一例として以下のような方法が考えられます。

自己資金を用意する

審査に不利と考えられる属性をカバーするには、頭金を多く入れることが有効です。諸費用も含め自己資金が多ければ当然借入額が減るので、融資のハードルが低くなります。不動産投資の自己資金の目安は、一般的に物件価格の15~30%程度といわれていますが、可能な限り多めに用意した方が審査に通りやすくなるでしょう。

ローンの残債を減らす

ショッピングローンやキャッシングローンの残債が多いと審査では不利になるので、ローンの残債を減らしておくことが大切です。現在は超低金利なので、銀行の定期預金に預けておくよりも、高金利のローンを返済した方がはるかに得です。ショッピングローンやキャッシングローンの返済はATMでも手軽に行えるので、ローン申し込みの前までに可能な限り残債を減らしておきましょう。

不動産投資会社に相談する

審査に不利と考えられる属性の場合は、不動産投資会社に相談するのも有効な方法です。不動産投資会社は金融機関と提携していることが多く、提携先の金融機関を紹介してもらうことにより、融資の審査に通りやすくなる可能性があります。また、審査に通るために適切なアドバイスを受けられることもあります。ただし、不動産投資会社のなかには、審査を通すために虚偽記載を勧める会社も稀にあるので、業者選びは慎重に進めることが大切です。

金融機関への審査を検討する際の注意事項

金融機関への審査を検討する方は、以下の点に注意してください。

虚偽の申請をしないこと

審査の際に虚偽の申請をするのは絶対にやめましょう。個人の信用情報は全国銀行個人信用情報センターに登録されているため、申込書に虚偽の記載をすると確実に見抜かれます。カードローンではネット申し込みなどで虚偽の記載をすると仮審査の段階で落ちるといわれており、不動産投資ローンの場合も仮審査で落ちると考えてよいでしょう。万一、融資後に虚偽記載が発覚すると、一括返済を求められる場合もあるので注意が必要です。

転職は慎重に

不動産投資を検討しているのなら、転職も慎重に判断した方がよいでしょう。不動産投資ローンの審査では年収だけではなく勤続年数も評価の対象となるからです。大手銀行の審査基準では、最低でも1年以上の勤続年数が必要となります。中小企業で働いていた人が大企業に転職する、民間企業で働いていた人が公務員になるといったケースは別ですが、単に給与水準が高くなるだけではプラスに評価されない可能性があるので注意しましょう。

金融機関別、年収別の融資条件の違い

不動産投資ローンは金融機関や年収によって融資条件が異なります。ここでは金融機関別、年収別の融資条件について詳細をご紹介します。

金融機関別の融資条件の違い

金融機関によって融資条件は異なります。各金融機関の違いをご紹介します。

  三井住友銀行 オリックス銀行 スルガ銀行
金利 年1.0%~
(2022年11月1日現在)
*最新の金利は店舗に確認 
【3年固定特約型】
年2.3%~3.3%
【5年固定特約型】
年2.5%~3.5%
【変動金利】
年2.675%~3.675%
(2023年4月1日現在)
年1.8%~
(2021年7月27日現在)
*最新の金利は店舗に確認
団信 当行指定の団体信用生命保険に加入が可能(加入する場合、融資利率は年0.3%上乗せ) 通常の団信(死亡・所定の高度障害保障)の他、介護保障付団信や生活習慣病団信なども選択可能 団信あり(地方銀行協会またはカーディフ生命保険が対象)
融資可能額 200万円以上で当該賃貸物件の建築・購入価格等の範囲内(10万円きざみ) 1,000万円以上2億円以下 最高10億円まで利用可能(団体信用生命保険付きは最高4億円まで)
繰り上げ返済の手数料 店舗に問い合わせ 0.5%~2.0%(金利タイプ、借入れ期間によって異なる) 借入から5年以内:繰上返済額の2.0%
借入から5年以降:一部繰上返済の場合6,600円
全額繰上返済の場合11,000円
その他申込条件   *前年度の税込み年収(自営業の方は所得)が700万円以上
*借入時の年齢が55歳未満
*担保提供する購入不動産が首都圏・近畿圏・名古屋市・福岡市の居住用不動産
*借入期間が、購入不動産の建物耐用年数と築後経過年数により当社が定める期間内
*原則、借入金額が購入金額の90%以内
*借入時点の年齢が満20歳以上70歳未満で、 最終返済時の年齢が満85歳未満の方
*一定の資産背景を有している方
*その他当社所定の条件を満たす方(詳細は問い合わせが必要)

特に申込条件は各金融機関で詳細に設定されています。年収、購入する地域、建物耐用年数など各社規定があるため、ご注意ください。

【引用元】三井住友銀行「アパートローン(商品内容)」より
【引用元】オリックス銀行「不動産投資ローン」より
【引用元】スルガ銀行「投資用不動産ローン」より

一般的な年収別の融資条件の違い

一般的な年収別の融資条件の違いのイメージは以下のとおりです。年収によって借り入れられる金利や融資可能額が異なります。一般的に融資可能額は年収の7〜10倍です。

  おすすめの金融機関 金利 融資可能額
年収500万 日本政策金融公庫
ノンバンク系金融機関
年1.08%~2.35%(日本政策金融公庫)
年3.75%~4.55%
(ノンバンク系金融機関)
3,500万円~5,000万円
*日本政策金融公庫は4,800万円まで
年収700万 地方銀行 年0.85%~8.35%
(東京スター銀行変動金利)
年1.35%~9.05%
(東京スター銀行固定金利)
5,600万円~7,000万円
年収1,000万 都市銀行 年1.8%~
(スルガ銀行)
7,000万円~1億円

 年収によって不動産投資ローンを組める金融機関が異なります。大手銀行は金利が低いメリットがある一方、年収の条件が厳しい傾向にあります。

不動産投資ローンの融資までの流れ

最後に不動産投資ローンを組むにあたり、融資までの具体的な流れをご紹介します。(2023年4月1日現在)

必要書類を揃える

融資を受ける際には様々な書類が必要になります。必要書類は金融機関によってそれぞれ公式ホームページなどで紹介されています。ここでは三井住友銀行を例にご紹介します。。

【例 三井住友銀行】

融資希望者に関する必要書類 ご本人さま確認書類(運転免許証、パスポート等)
確定申告書・同付表(3期分)または源泉徴収票(直近分)
会社を経営されている方は、法人申告書(3期分)
所有資産に関する書類(固定資産税課税明細書等)
投資する不動産に関する必要書類 事業計画書
謄本(土地・建物)
公図・住宅地図
地積測量図
固定資産評価証明書・関係証明書
工事請負契約書
建築確認通知書
売買契約書
重要事項説明書
工事見積書
家賃保証契約書・家賃査定書
物件パンフレット

投資する不動産に関する物件概要書などの必要書類は、不動産業者に相談しましょう。登記情報や公図は法務局で取得できます。

以上の書類は銀行との面談前に揃える必要があります。すぐに揃えるのが難しいので、前もって段取りしておくことが大切です。

事前審査

融資審査には大きく分けて事前審査と本審査があります。事前審査の実施時期は物件を選定し、契約するまでの間です。事前審査は金融機関が行い、主に属性など返済能力があるか見極められます。

審査項目の一例は以下のとおりです。

  • 完済時年齢と借入時年齢
  • 健康状態
  • 担保評価
  • 勤続年数
  • 年収
  • 連帯保証
  • 金融機関の営業エリア
  • 返済負担率
  • 融資率
  • 雇用形態
  • 他の債務の状況と返済履歴
  • 国籍

返済負担率とは、1年間のローン返済額を年収で割った数字です。返済負担率が低いほど、金融機関の評価が高くなります。また融資率とは、購入予定の物件価格に対する借入金の割合です。融資率が少ないほど審査では有利になります。

本審査

本審査の実施時期は物件を契約してから金融機関との金銭消費貸借契約までの間です。本審査では金融機関以外に保証会社も審査に入ります。そのため本審査は事前審査と比べて結果が出るのに時間がかかります。本審査では1カ月ほどみておきましょう。

ローン契約

本審査に通過し融資が承認されると、つぎに金融機関とローン契約を結びます。具体的には、「金銭消費貸借契約兼抵当権設定契約」と呼ばれる契約を結び、金利や返済期間、借入額など詳細な条件を決めます。

さらに不動産投資ローンを組む場合、物件の所有権に関する登記とあわせて、抵当権設定登記を結びます。その理由は、融資希望者が返済できなくなった際金融機関が差し押さえできるように、別途登記が必要なためです。

これらの手続きを終えると、物件の引渡し日までに金融機関から不動産会社に対して融資が実行されます。

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まとめ

この記事では、不動産投資ローンについて年収の目安や、審査のポイントや流れについてご紹介しました。不動産投資ローンの年収目安は500万円となっており、年収に合わせて借入できる金融機関が異なります。少しでも条件の良い金利で借り入れるためには適切な金融機関で融資を受ける事が大切です。

不動産投資は始めやすく、管理に手間がかからないことからサラリーマンの副業で高い人気があります。老後の資産形成を考える手段の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

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