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2024.02.29
ベルテックスコラム事務局
木造アパートのデメリットは?気になる耐震性・耐火性は?
- はじめ方・基礎知識
- メリット
- リスク
あなたは「木造アパート」と聞いて、どんな印象を思い浮かべますか? 「防音性が低い」「なんとなく古臭い」など敬遠されるイメージを思い浮かべる人が多いように見受けられます。しかし、最近はデザイン性の溢れる、まるで高級マンションのような木造アパートが多く存在しているのです。
本記事では、実は意外と知られていない木造アパートのメリット・デメリットや気になる耐震性・耐火性についてお伝えします。
木造アパートのデメリット
冒頭で挙げたマイナスイメージは賃貸物件を探す入居者の声として耳にすることがありますが、木造アパートのデメリットの本質は、オーナー目線からみた意見にあります。
鉄骨造より法定耐用年数が短い
1つ目のデメリットは、他の構造と比較して法定耐用年数が短いことが挙げられます。
法定耐用年数とは国税庁によって定められた「償却資産を使用するにあたり耐えられる年数」のことで、いわば寿命のようなものです。
居住用として使用する木造物件の法定耐用年数は22年で、同じ用途で鉄骨造(鉄筋コンクリート造)が47年と指定されているのに比較すると極端に短くなります。自然素材である木材は雨風などの影響を直に受けてしまうため、劣化のスピードが他よりも早いことが原因です。
法定耐用年数は、確定申告をする際の減価償却計算で帳尻合わせをするために用いる数値で、実際には、新築後22年を超えると居住できないわけではありません。
しかし、経年とともに資産価値が徐々に減少していき、法定耐用年数の残りが無くなった時点で減価償却の観点では資産価値が0となります。築23年以上となると資産価値が無いものと判断されてしまい、金融機関のローン審査が厳しくなるなど結果としてマイナスとなる影響を与えてしまうことがあります。
職人の技術により品質に差が生じやすい
2つ目のデメリットは、建築する職人の技量によって完成物件の品質が左右されることです。
木造建造物は、「匠の技」とも称されるように職人が建設現場で木材を加工することによって施工されます。そのため、職人の巧拙により鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べ、品質に差が生じやすくなることは免れません。
また、それ以外にも木造建築物を造るためには下記のとおり様々な職人が携わります。
・土木職人 ・鉄筋職人 ・型枠職人 ・基礎職人 ・建ち家職人 |
・足場職人 ・瓦職人 ・板金職人 ・サッシ職人 ・鍵職人 |
・サイディング職人 ・左官職人 ・タイル職人 ・塗装職人 |
1人の職人がいくつかの作業を兼任して行いますが、これらの職人全ての技術を駆使して1つの建造物が完成します。近年は建設技術も向上しつつありますが、いくつかの現場を抱えていると人手不足などの問題により、現実的に技術の差を埋めることは難しいでしょう。
害虫による被害が発生しやすい
3つ目のデメリットは、自然素材であるがゆえにシロアリなど害虫による被害が発生しやすいことです。木造物件を所有する人にとって天敵であるシロアリは、暗く湿った場所を好み家の枠組みである木材を食い荒らします。
シロアリは地中から蟻道を通って家の内部に到着するため、見えない場所で知らないうちに侵食が始まり、発見が遅れてしまいがちです。気付かずに放ってしまうと家を支える柱がスカスカになってしまい、自然災害などで倒壊してしまう恐れがあります。倒壊前に気付いても、被害の大きい柱を補修するには高額な費用負担となることもあるでしょう。
専門業者の薬剤散布による防蟻工事で未然に被害を防ぐことが可能ですが、面積が広域であればあるほど高額になります。また、5年程度で薬剤散布の更新が必要になるため、コスト面で大きな負担となってしまうでしょう。
木造アパートの耐震性・耐火性は?
木造アパートで気になるところの1つが、耐震性と耐火性です。大規模な地震発生時の耐震性や火事発生時の耐火性は、鉄を用いた他の構造と比較するとやはり劣ってしまうでしょう。
しかし、同じ木造住宅でも下記でお伝えするポイント知っておくと耐震性・耐火性の強い造りを見抜くことができます。
新耐震基準を満たす木造住宅は耐震性が高い
耐震性が高い木造住宅を見極める大きなポイントは、新耐震基準を満たしているかどうかです。建築基準法により1950年に制定された「耐震基準」は、1978(昭和53)年に宮城県沖で発生した地震による倒壊被害が甚大であったことから、その基準が見直されました。
1981(昭和56年)5月31日以前の建造物が「旧耐震」、同年6月1日以降の建造物が「新耐震」と呼ばれています。また、1995(平成7)年に兵庫県で発生した阪神淡路大震災の被害では、新耐震基準の弱点が明るみになり2000(平成12)年にも建築基準法の改定が行われました。これを2000年基準と呼びます。
1981年6月1日以降の建造物は耐震性能が高く設計されており、2000年6月1日以降の建造物であればより高い耐震性能である建物と言えるでしょう。
注意しなければならないのは、これらが施行された起算日が新築年月日ではなく、確認申請の承認日で判断されることです。確認申請では、その土地にかかる法令や建築基準などのあらゆる制限をクリアした建物であるか、行政による細かい確認作業が行われます。そして、あらゆる基準を満たした建物であると判断され、建築許可が下りた後に正式な工事着工の流れとなるため、工事が完成した新築年月日が1981年6月1日の場合には新耐震基準を満たしているとは言えません。
工法により耐火性に差がある
木造住宅の耐火性能は、工法によって差があります。
一般的な木造住宅によく使われるのは、在来工法(木造軸組工法)とツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)の2種類で、後者の方が耐火性に優れているのが特徴です。
日本の伝統である在来工法では、柱と柱を合わせてフレームとなる枠組みを造り、そこに壁や屋根を張り付けていきます。従来から使われてきた方法で、日本では約8割の木造物件が在来工法による建築物です。
アメリカやカナダなどで多く普及しているツーバイフォー工法とは、2×4インチの断面サイズに加工した木材を壁や床・屋根にして、6面の壁構造にしていきます。ツーバイフォー工法のイメージ的にはサイコロと比喩すると分かり易いかもしれません。
通常ツーバイフォー工法では壁などの内側全面に石膏ボードを貼り付けます。石膏ボード自体が火災を遅らせる独特な性質を持っていることや、サイコロのような壁構造が熱の通り道を防ぐファイヤーストップの役割を果たしてくれることで火の燃え広がりを大幅に遅らせるのです。ただし、日本ではツーバイフォー工法を使った木造住宅は2割程度にとどまっています。
木造アパートのメリット
ここまでマイナス面に視点を当ててきましたが、もちろん悪いことばかりではありません。自然素材ならではと言える木造アパートのメリットについてお伝えしましょう。
建築費用を抑えられる
木造アパートで最大のメリットといえるのが、建築費用を安く抑えられることでしょう。枠組みで鉄を使わない木造は材料費だけでなく、重量が軽いことから地盤改良工事の手間も軽く済むため基礎工事の費用も抑えられます。
2020年に行われた国土交通省の調査では、木造にかかる建築費用の平均坪単価は57.1万円程度です。それに対して、鉄骨造は91.1万円、鉄筋コンクリート造は95.0万円となっており、建築費用が断トツで安いことが分かります。
気密性が低く、断熱性が高い
鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較すると、木造は気密性が劣ります。
デメリットと捉えられがちですが、実は木造のメリットでもあるのです。気密性のイメージとしては、隙間がたくさんあって外部からの風が侵入しやすいか、隙間が少なく風があまり侵入しないか、と言うと分かり易いでしょうか。気密性が高い家は、風通しが悪いことで室内に結露の発生や空気がこもりやすくハウスダストの対策が必要となります。
そして、断熱性が高いことも、木造住宅ならではのメリットです。鉄は熱伝導率が高く、夏の暑さや冬の寒さの影響を受けやすい性質があります。自然素材である木材は、素材の中にある細胞に空気が無数に含まれていることで、外部からの熱を伝えにくい特徴があります。
季節によって温度差が大きい日本では、木造住宅は夏に涼しく、冬に暖かい快適さを保つことができるのです。
木のぬくもりが感じられる
五感的なメリットは、温かい木のぬくもりを感じられることです。加工がされていない木目模様や自然素材である木材の香りは、人間に癒しと安らぎを与えます。木の香りによる癒し効果は、近年の研究結果でも身体的・精神的ストレスの抑制や脳の活動を鎮静化させるなど人体への快調な影響を与えることが分かりました。樹木が持つ香り成分の「フィトンチッド」により、リラックス効果も期待できます。
間取りやデザインの自由度が高い
実は、木造住宅は間取りやデザインの自由度がとても高いのです。特に柱と柱を軸にしていく在来工法はより自在に設計することが可能で、法令や建築基準法などの規定を満たしていれば好みの間取りで建築ができます。デザイン性の高い注文住宅を建築したり、子供の成長に合わせてリノベーションをしやすいことが嬉しいポイントでしょう。
木造アパートの寿命を延ばす方法
ここまでの内容で木造アパートにも多くの魅力があることが理解できたことでしょう。木造アパートの法定耐用年数について先述のデメリットで触れましたが、実際には日々物件に手を掛けることで寿命を延ばすことは十分に可能です。
素材や工法にこだわる
もし、あなたが木造の新築物件を購入するのであれば、素材や工法を吟味しましょう。建物の建築で使われる木材などにもキッチンやお風呂などの設備と同様にランクがあります。「安かろう悪かろう」という言葉があるように格安で低品質素材を使っていれば、もちろんアパートの寿命も短くなるでしょう。
また、低い技術の工法で建築された物件は、やはりこちらも寿命が短くなってしまいます。素材と工法を慎重に選定することは、建物の延命に繋がるのです。
制振ダンパーを設置する
物件の新築着工やリフォームのシーンに立ち会えるなら、制振ダンパーを設置しておきましょう。制振ダンパーとは、地震発生時に揺れを吸収して建物への負担を軽減する装置のことです。あまり聞き馴染みのない言葉ですが、柱と柱の接続部に設置して、筋交い(柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の構造を補強する部材)が折れるのを防ぐ働きをしてくれます。
日本では度重なる地震により耐震基準が厳しくなってきましたが、それでもまだ耐震性能として十分ではないことが分かってきました。耐震性の高い建物でも制振ダンパーを併用することで、大規模な地震に備えられます。
こまめな掃除と換気を行う
他にも建物の延命のために日常的にできることがあります。まず、ささいなことと思うかもしれませんが、掃除と換気をこまめに行いましょう。木造住宅の劣化が早まる大きな原因の1つが、木に水分が貯まってしまうことです。つまり、劣化を防ぐためには、換気によって除湿することが必要不可欠になります。湿気の多い場所には雑菌が繁殖しやすく、「木材腐朽菌」などの木材を腐らせてしまう菌が発生することにより急速に劣化が進んでしまうこともあるのです。
定期的なメンテナンスを行う
次に木造アパート以外の建物にも共通して言えることですが、定期的なメンテナンスを欠かさず行いましょう。日頃からメンテナンスを行うことで、破損個所などを被害が小さいうちに気付くことができます。亀裂や水漏れを放置しておくと、結果的に大規模な修繕になってしまい高額な支出になりかねません。
屋根や配管、建物の内面に関する素人では判断ができない箇所は、専門業者へ点検を依頼するとよいでしょう。
【おすすめ関連記事】新築は鉄骨造と木造のどちらを選ぶべき? メリット・デメリットを解説
まとめ
本記事では、敬遠されがちな木造アパートのメリット・デメリット、耐震性や耐火性について解説しました。木造アパートは寿命が短く長期間の居住はできないと思われがちですが、建物を維持するための日常的な手入れ次第で、80年持つと言われています。木造が持つ特性を理解し、建物が長生きできるよう手を掛けることでデメリットを回避していきましょう。
ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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木造アパートのデメリットは?気になる耐震性・耐火性は?
- はじめ方・基礎知識
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- リスク
あなたは「木造アパート」と聞いて、どんな印象を思い浮かべますか? 「防音性が低い」「なんとなく古臭い」など敬遠されるイメージを思い浮かべる人が多いように見受けられます。しかし、最近はデザイン性の溢れる、まるで高級マンションのような木造アパートが多く存在しているのです。
本記事では、実は意外と知られていない木造アパートのメリット・デメリットや気になる耐震性・耐火性についてお伝えします。
木造アパートのデメリット
冒頭で挙げたマイナスイメージは賃貸物件を探す入居者の声として耳にすることがありますが、木造アパートのデメリットの本質は、オーナー目線からみた意見にあります。
鉄骨造より法定耐用年数が短い
1つ目のデメリットは、他の構造と比較して法定耐用年数が短いことが挙げられます。
法定耐用年数とは国税庁によって定められた「償却資産を使用するにあたり耐えられる年数」のことで、いわば寿命のようなものです。
居住用として使用する木造物件の法定耐用年数は22年で、同じ用途で鉄骨造(鉄筋コンクリート造)が47年と指定されているのに比較すると極端に短くなります。自然素材である木材は雨風などの影響を直に受けてしまうため、劣化のスピードが他よりも早いことが原因です。
法定耐用年数は、確定申告をする際の減価償却計算で帳尻合わせをするために用いる数値で、実際には、新築後22年を超えると居住できないわけではありません。
しかし、経年とともに資産価値が徐々に減少していき、法定耐用年数の残りが無くなった時点で減価償却の観点では資産価値が0となります。築23年以上となると資産価値が無いものと判断されてしまい、金融機関のローン審査が厳しくなるなど結果としてマイナスとなる影響を与えてしまうことがあります。
職人の技術により品質に差が生じやすい
2つ目のデメリットは、建築する職人の技量によって完成物件の品質が左右されることです。
木造建造物は、「匠の技」とも称されるように職人が建設現場で木材を加工することによって施工されます。そのため、職人の巧拙により鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べ、品質に差が生じやすくなることは免れません。
また、それ以外にも木造建築物を造るためには下記のとおり様々な職人が携わります。
・土木職人 ・鉄筋職人 ・型枠職人 ・基礎職人 ・建ち家職人 |
・足場職人 ・瓦職人 ・板金職人 ・サッシ職人 ・鍵職人 |
・サイディング職人 ・左官職人 ・タイル職人 ・塗装職人 |
1人の職人がいくつかの作業を兼任して行いますが、これらの職人全ての技術を駆使して1つの建造物が完成します。近年は建設技術も向上しつつありますが、いくつかの現場を抱えていると人手不足などの問題により、現実的に技術の差を埋めることは難しいでしょう。
害虫による被害が発生しやすい
3つ目のデメリットは、自然素材であるがゆえにシロアリなど害虫による被害が発生しやすいことです。木造物件を所有する人にとって天敵であるシロアリは、暗く湿った場所を好み家の枠組みである木材を食い荒らします。
シロアリは地中から蟻道を通って家の内部に到着するため、見えない場所で知らないうちに侵食が始まり、発見が遅れてしまいがちです。気付かずに放ってしまうと家を支える柱がスカスカになってしまい、自然災害などで倒壊してしまう恐れがあります。倒壊前に気付いても、被害の大きい柱を補修するには高額な費用負担となることもあるでしょう。
専門業者の薬剤散布による防蟻工事で未然に被害を防ぐことが可能ですが、面積が広域であればあるほど高額になります。また、5年程度で薬剤散布の更新が必要になるため、コスト面で大きな負担となってしまうでしょう。
木造アパートの耐震性・耐火性は?
木造アパートで気になるところの1つが、耐震性と耐火性です。大規模な地震発生時の耐震性や火事発生時の耐火性は、鉄を用いた他の構造と比較するとやはり劣ってしまうでしょう。
しかし、同じ木造住宅でも下記でお伝えするポイント知っておくと耐震性・耐火性の強い造りを見抜くことができます。
新耐震基準を満たす木造住宅は耐震性が高い
耐震性が高い木造住宅を見極める大きなポイントは、新耐震基準を満たしているかどうかです。建築基準法により1950年に制定された「耐震基準」は、1978(昭和53)年に宮城県沖で発生した地震による倒壊被害が甚大であったことから、その基準が見直されました。
1981(昭和56年)5月31日以前の建造物が「旧耐震」、同年6月1日以降の建造物が「新耐震」と呼ばれています。また、1995(平成7)年に兵庫県で発生した阪神淡路大震災の被害では、新耐震基準の弱点が明るみになり2000(平成12)年にも建築基準法の改定が行われました。これを2000年基準と呼びます。
1981年6月1日以降の建造物は耐震性能が高く設計されており、2000年6月1日以降の建造物であればより高い耐震性能である建物と言えるでしょう。
注意しなければならないのは、これらが施行された起算日が新築年月日ではなく、確認申請の承認日で判断されることです。確認申請では、その土地にかかる法令や建築基準などのあらゆる制限をクリアした建物であるか、行政による細かい確認作業が行われます。そして、あらゆる基準を満たした建物であると判断され、建築許可が下りた後に正式な工事着工の流れとなるため、工事が完成した新築年月日が1981年6月1日の場合には新耐震基準を満たしているとは言えません。
工法により耐火性に差がある
木造住宅の耐火性能は、工法によって差があります。
一般的な木造住宅によく使われるのは、在来工法(木造軸組工法)とツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)の2種類で、後者の方が耐火性に優れているのが特徴です。
日本の伝統である在来工法では、柱と柱を合わせてフレームとなる枠組みを造り、そこに壁や屋根を張り付けていきます。従来から使われてきた方法で、日本では約8割の木造物件が在来工法による建築物です。
アメリカやカナダなどで多く普及しているツーバイフォー工法とは、2×4インチの断面サイズに加工した木材を壁や床・屋根にして、6面の壁構造にしていきます。ツーバイフォー工法のイメージ的にはサイコロと比喩すると分かり易いかもしれません。
通常ツーバイフォー工法では壁などの内側全面に石膏ボードを貼り付けます。石膏ボード自体が火災を遅らせる独特な性質を持っていることや、サイコロのような壁構造が熱の通り道を防ぐファイヤーストップの役割を果たしてくれることで火の燃え広がりを大幅に遅らせるのです。ただし、日本ではツーバイフォー工法を使った木造住宅は2割程度にとどまっています。
木造アパートのメリット
ここまでマイナス面に視点を当ててきましたが、もちろん悪いことばかりではありません。自然素材ならではと言える木造アパートのメリットについてお伝えしましょう。
建築費用を抑えられる
木造アパートで最大のメリットといえるのが、建築費用を安く抑えられることでしょう。枠組みで鉄を使わない木造は材料費だけでなく、重量が軽いことから地盤改良工事の手間も軽く済むため基礎工事の費用も抑えられます。
2020年に行われた国土交通省の調査では、木造にかかる建築費用の平均坪単価は57.1万円程度です。それに対して、鉄骨造は91.1万円、鉄筋コンクリート造は95.0万円となっており、建築費用が断トツで安いことが分かります。
気密性が低く、断熱性が高い
鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較すると、木造は気密性が劣ります。
デメリットと捉えられがちですが、実は木造のメリットでもあるのです。気密性のイメージとしては、隙間がたくさんあって外部からの風が侵入しやすいか、隙間が少なく風があまり侵入しないか、と言うと分かり易いでしょうか。気密性が高い家は、風通しが悪いことで室内に結露の発生や空気がこもりやすくハウスダストの対策が必要となります。
そして、断熱性が高いことも、木造住宅ならではのメリットです。鉄は熱伝導率が高く、夏の暑さや冬の寒さの影響を受けやすい性質があります。自然素材である木材は、素材の中にある細胞に空気が無数に含まれていることで、外部からの熱を伝えにくい特徴があります。
季節によって温度差が大きい日本では、木造住宅は夏に涼しく、冬に暖かい快適さを保つことができるのです。
木のぬくもりが感じられる
五感的なメリットは、温かい木のぬくもりを感じられることです。加工がされていない木目模様や自然素材である木材の香りは、人間に癒しと安らぎを与えます。木の香りによる癒し効果は、近年の研究結果でも身体的・精神的ストレスの抑制や脳の活動を鎮静化させるなど人体への快調な影響を与えることが分かりました。樹木が持つ香り成分の「フィトンチッド」により、リラックス効果も期待できます。
間取りやデザインの自由度が高い
実は、木造住宅は間取りやデザインの自由度がとても高いのです。特に柱と柱を軸にしていく在来工法はより自在に設計することが可能で、法令や建築基準法などの規定を満たしていれば好みの間取りで建築ができます。デザイン性の高い注文住宅を建築したり、子供の成長に合わせてリノベーションをしやすいことが嬉しいポイントでしょう。
木造アパートの寿命を延ばす方法
ここまでの内容で木造アパートにも多くの魅力があることが理解できたことでしょう。木造アパートの法定耐用年数について先述のデメリットで触れましたが、実際には日々物件に手を掛けることで寿命を延ばすことは十分に可能です。
素材や工法にこだわる
もし、あなたが木造の新築物件を購入するのであれば、素材や工法を吟味しましょう。建物の建築で使われる木材などにもキッチンやお風呂などの設備と同様にランクがあります。「安かろう悪かろう」という言葉があるように格安で低品質素材を使っていれば、もちろんアパートの寿命も短くなるでしょう。
また、低い技術の工法で建築された物件は、やはりこちらも寿命が短くなってしまいます。素材と工法を慎重に選定することは、建物の延命に繋がるのです。
制振ダンパーを設置する
物件の新築着工やリフォームのシーンに立ち会えるなら、制振ダンパーを設置しておきましょう。制振ダンパーとは、地震発生時に揺れを吸収して建物への負担を軽減する装置のことです。あまり聞き馴染みのない言葉ですが、柱と柱の接続部に設置して、筋交い(柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の構造を補強する部材)が折れるのを防ぐ働きをしてくれます。
日本では度重なる地震により耐震基準が厳しくなってきましたが、それでもまだ耐震性能として十分ではないことが分かってきました。耐震性の高い建物でも制振ダンパーを併用することで、大規模な地震に備えられます。
こまめな掃除と換気を行う
他にも建物の延命のために日常的にできることがあります。まず、ささいなことと思うかもしれませんが、掃除と換気をこまめに行いましょう。木造住宅の劣化が早まる大きな原因の1つが、木に水分が貯まってしまうことです。つまり、劣化を防ぐためには、換気によって除湿することが必要不可欠になります。湿気の多い場所には雑菌が繁殖しやすく、「木材腐朽菌」などの木材を腐らせてしまう菌が発生することにより急速に劣化が進んでしまうこともあるのです。
定期的なメンテナンスを行う
次に木造アパート以外の建物にも共通して言えることですが、定期的なメンテナンスを欠かさず行いましょう。日頃からメンテナンスを行うことで、破損個所などを被害が小さいうちに気付くことができます。亀裂や水漏れを放置しておくと、結果的に大規模な修繕になってしまい高額な支出になりかねません。
屋根や配管、建物の内面に関する素人では判断ができない箇所は、専門業者へ点検を依頼するとよいでしょう。
【おすすめ関連記事】新築は鉄骨造と木造のどちらを選ぶべき? メリット・デメリットを解説
まとめ
本記事では、敬遠されがちな木造アパートのメリット・デメリット、耐震性や耐火性について解説しました。木造アパートは寿命が短く長期間の居住はできないと思われがちですが、建物を維持するための日常的な手入れ次第で、80年持つと言われています。木造が持つ特性を理解し、建物が長生きできるよう手を掛けることでデメリットを回避していきましょう。
ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
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