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2026.01.13
山村 暢彦
「騒音」「ゴミ出し」…入居者のトラブル、オーナーの責任はどこまで?【弁護士の解説】
- 賃貸管理
- 弁護士
- 執筆記事
オーナーは「トラブル解決」の当事者か?
基本的に、入居者同士や入居者と近隣住民とのトラブルは、当事者間の問題として扱われます。オーナー(賃貸人)が直接の加害者ではない以上、すぐに法的責任を問われるわけではありません。
しかし、だからといって「知らない」「自分には関係ない」と放置するのは危険です。民法上、オーナーには入居者に「物件を適切な方法で使用させる義務(用法遵守義務)」があり、建物の使用状況を一定程度管理する立場にあります。 近隣から苦情が寄せられたにもかかわらず、注意喚起や確認を怠った場合、「管理を怠った」と評価されるおそれがあります。特に、繰り返しの騒音やゴミ出しルール違反を放置すると、周囲との信頼関係が崩れ、物件の評判にも影響します。
オーナーに求められるのは、「問題を知ったときにどう動くか」。管理会社との連携体制を整え、報告が上がった際には早めに対応方針を示すことが、長期的な賃貸経営の安定につながります。
事例別:オーナーがすべき「法的対応」
入居者トラブルが発生したとき、まず大切なのは「感情的に動かないこと」と「記録を残すこと」です。どのような苦情が、いつ、誰から寄せられたのかを整理し、管理会社や入居者とのやりとりを文書やメールで残しておくことが、後の対応を左右します。
① 騒音トラブルの場合
最初の段階では、管理会社を通じて注意文書を送るか、掲示板などに一般的な注意喚起を行います。それでも改善しない場合は、対象の入居者に個別の聞き取りや警告を行い、「使用方法が適切でない」と判断される場合には、契約解除を検討することもあります。
もっとも、建物の賃貸借契約は、借地借家法に守られているため、簡単には解除できません。軽微な契約違反ではなく、「信頼関係破壊を破壊するような」重大な契約違反が必要となります。騒音トラブルの場合には、非常にハードルが高いですが、いずれも慎重な証拠収集が前提となります。近隣住民の発言の記録や、騒音の録音データなど、客観的な記録を残しておくと、後のトラブル防止になります。
② ゴミ出し・共用部マナー違反の場合
ゴミ出しのルール違反や共用廊下への私物放置などは、「小さな迷惑」と軽視されがちですが、実際には建物全体の印象を悪化させ、他の入居者の退去を招く原因にもなります。
このような場合は、まず防犯カメラや管理人の報告をもとに入居者を特定し、注意文書や面談で改善を促します。それでも改善が見られない場合には、警告文を送付し、賃貸借契約上の「用法違反」として是正を求める対応を取ります。
特に、再三の注意にも従わない悪質なケースでは、契約解除や明渡請求を検討することも視野に入ります。オーナーが毅然とした姿勢を見せることで、他の入居者の安心感や物件の信頼性を守ることにつながります。
オーナーの「責任」が問われるケース
入居者同士のトラブルであっても、オーナーが「問題を知りながら放置した」場合には、責任を問われる可能性があります。たとえば、繰り返し騒音の苦情が寄せられているのに注意を怠ったり、管理会社からの報告を無視したりすると、「管理を怠った」と評価されかねません。
特に、トラブルが長期化して他の住民に健康被害や財産的損害(壁の破損、共用部の汚損など)を与えた場合、民法上の「不法行為責任」や「使用者責任(民法715条の類推)」を問われるリスクもゼロではありません。
もっとも、通常のオーナーが入居者の行動を完全に監視することは不可能です。そのため、法的責任を防ぐためには、「知った時点でどう対応したか」が重要になります。 管理会社を通じて注意喚起を行った記録、報告書、メールの履歴などを残しておくことで、「適切に対応した」と主張でき、万一のトラブルにも備えることができます。
「優良な管理会社」の重要性
入居者トラブルを防ぐうえで、最も頼りになるのは「管理会社の初動対応力」です。苦情が入った際、すぐに入居者へ注意喚起を行い、記録を残す。この一連の動きが速い会社ほど、トラブルの拡大を防ぐことができます。 逆に、報告が遅かったり、注意が形だけだったりする会社では、問題が長期化し、結果的にオーナーが矢面に立たされることもあります。
また、サブリース契約など一括管理方式では、「誰が最終的な責任を負うのか」を契約段階で明確にしておくことが欠かせません。
近年では、弁護士と連携して対応を行う管理会社も増えています。法律面のサポートが得られる管理体制を選ぶことが、安心して長期保有できる物件運営の第一歩になります。
まとめ
入居者トラブルは、放置すればオーナーの信頼や物件価値にも影響します。 法的責任を避けるには、早めの対応と、信頼できる管理会社との連携が不可欠です。「問題を知った時点でどう動くか」が、安定した賃貸経営を続ける最大のポイントです。
この記事を書いた人
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。
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オーナーは「トラブル解決」の当事者か?
基本的に、入居者同士や入居者と近隣住民とのトラブルは、当事者間の問題として扱われます。オーナー(賃貸人)が直接の加害者ではない以上、すぐに法的責任を問われるわけではありません。
しかし、だからといって「知らない」「自分には関係ない」と放置するのは危険です。民法上、オーナーには入居者に「物件を適切な方法で使用させる義務(用法遵守義務)」があり、建物の使用状況を一定程度管理する立場にあります。 近隣から苦情が寄せられたにもかかわらず、注意喚起や確認を怠った場合、「管理を怠った」と評価されるおそれがあります。特に、繰り返しの騒音やゴミ出しルール違反を放置すると、周囲との信頼関係が崩れ、物件の評判にも影響します。
オーナーに求められるのは、「問題を知ったときにどう動くか」。管理会社との連携体制を整え、報告が上がった際には早めに対応方針を示すことが、長期的な賃貸経営の安定につながります。
事例別:オーナーがすべき「法的対応」
入居者トラブルが発生したとき、まず大切なのは「感情的に動かないこと」と「記録を残すこと」です。どのような苦情が、いつ、誰から寄せられたのかを整理し、管理会社や入居者とのやりとりを文書やメールで残しておくことが、後の対応を左右します。
① 騒音トラブルの場合
最初の段階では、管理会社を通じて注意文書を送るか、掲示板などに一般的な注意喚起を行います。それでも改善しない場合は、対象の入居者に個別の聞き取りや警告を行い、「使用方法が適切でない」と判断される場合には、契約解除を検討することもあります。
もっとも、建物の賃貸借契約は、借地借家法に守られているため、簡単には解除できません。軽微な契約違反ではなく、「信頼関係破壊を破壊するような」重大な契約違反が必要となります。騒音トラブルの場合には、非常にハードルが高いですが、いずれも慎重な証拠収集が前提となります。近隣住民の発言の記録や、騒音の録音データなど、客観的な記録を残しておくと、後のトラブル防止になります。
② ゴミ出し・共用部マナー違反の場合
ゴミ出しのルール違反や共用廊下への私物放置などは、「小さな迷惑」と軽視されがちですが、実際には建物全体の印象を悪化させ、他の入居者の退去を招く原因にもなります。
このような場合は、まず防犯カメラや管理人の報告をもとに入居者を特定し、注意文書や面談で改善を促します。それでも改善が見られない場合には、警告文を送付し、賃貸借契約上の「用法違反」として是正を求める対応を取ります。
特に、再三の注意にも従わない悪質なケースでは、契約解除や明渡請求を検討することも視野に入ります。オーナーが毅然とした姿勢を見せることで、他の入居者の安心感や物件の信頼性を守ることにつながります。
オーナーの「責任」が問われるケース
入居者同士のトラブルであっても、オーナーが「問題を知りながら放置した」場合には、責任を問われる可能性があります。たとえば、繰り返し騒音の苦情が寄せられているのに注意を怠ったり、管理会社からの報告を無視したりすると、「管理を怠った」と評価されかねません。
特に、トラブルが長期化して他の住民に健康被害や財産的損害(壁の破損、共用部の汚損など)を与えた場合、民法上の「不法行為責任」や「使用者責任(民法715条の類推)」を問われるリスクもゼロではありません。
もっとも、通常のオーナーが入居者の行動を完全に監視することは不可能です。そのため、法的責任を防ぐためには、「知った時点でどう対応したか」が重要になります。 管理会社を通じて注意喚起を行った記録、報告書、メールの履歴などを残しておくことで、「適切に対応した」と主張でき、万一のトラブルにも備えることができます。
「優良な管理会社」の重要性
入居者トラブルを防ぐうえで、最も頼りになるのは「管理会社の初動対応力」です。苦情が入った際、すぐに入居者へ注意喚起を行い、記録を残す。この一連の動きが速い会社ほど、トラブルの拡大を防ぐことができます。 逆に、報告が遅かったり、注意が形だけだったりする会社では、問題が長期化し、結果的にオーナーが矢面に立たされることもあります。
また、サブリース契約など一括管理方式では、「誰が最終的な責任を負うのか」を契約段階で明確にしておくことが欠かせません。
近年では、弁護士と連携して対応を行う管理会社も増えています。法律面のサポートが得られる管理体制を選ぶことが、安心して長期保有できる物件運営の第一歩になります。
まとめ
入居者トラブルは、放置すればオーナーの信頼や物件価値にも影響します。 法的責任を避けるには、早めの対応と、信頼できる管理会社との連携が不可欠です。「問題を知った時点でどう動くか」が、安定した賃貸経営を続ける最大のポイントです。
この記事を書いた人
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。