2026.01.13

物件の管理・運用

山村 暢彦

「家賃滞納」発生!弁護士が教える督促から「建物明渡し」までの法的手続きと絶対NGな対応

  • 初心者
  • 弁護士
  • 執筆記事

滞納発生〜1ヵ月:初期対応(電話・書面での確認)

家賃滞納が発生したら、まずは「初動の速さ」が何より大切です。1ヵ月分の滞納であっても、「今月は遅れます」といった一言の連絡があるかないかで、その後の展開は大きく変わります。管理会社がある場合は速やかに入居者へ連絡を取り、事情を確認しましょう。入居者が一時的な資金難であれば、支払日を明確に決めて、「いつまでに、いくら支払うか」という合意を文書やメールで残しておくことが重要です。 

この段階で多くの滞納は解決に向かいますが、曖昧なまま放置すると「遅れていることを容認している」と見なされるリスクが高まります。オーナーとして感情的にならず、事実を淡々と確認し、記録を残すことが法的にも有効な初期対応です。万一の訴訟になった場合でも、この時期のやりとりが「誠実な対応」として有利に働くことがあります。 

滞納2〜3ヵ月:「内容証明郵便」と「連帯保証人」への連絡

1〜2ヵ月の滞納が続く場合、単なる「うっかり」ではなく、支払い能力や意思に問題がある可能性が高まります。この段階では、口頭や電話での催促ではなく、内容証明郵便(または特定記録郵便等の送付したことが記録に残る郵便)による正式な請求に切り替えることが重要です。文面には「滞納額」「支払期限」「期限までに支払いがなければ契約を解除する可能性がある」ことを明記し、記録として残します。内容証明は後の訴訟で「支払いを求めた事実」を証拠化できるため、実務上極めて有効です。 

また、契約時に連帯保証人を設定している場合は、同時に通知を行いましょう。滞納が発生している事実を早期に伝えることで、保証人が介入して支払いを行うケースもあります。ここまで進んでも入居者に誠実な対応が見られない場合は、契約解除や訴訟を視野に入れる段階です。管理会社任せにせず、弁護士へ相談して次の手続きを検討するタイミングといえます。 

滞納3ヵ月〜:「信頼関係の破壊」と契約解除の法的判断

家賃滞納が3ヵ月を超えると、法的には「信頼関係の破壊」が推定され、オーナー側からの契約解除が認められる可能性が高まります。賃貸借契約は「継続的な信頼関係」を前提としていますが、賃料の不払いが続けば、その基盤が崩れたと判断されるのです。もっとも、裁判では「滞納の期間」「金額」「入居者の支払い意思」などを総合的に考慮して判断されます。たとえば3ヵ月分を超えても誠実に分割払いを続けている場合には、解除が認められないケースもあります。 

契約を解除する場合、オーナーは、まず「契約解除通知書」を内容証明郵便で送付し、期限までに支払いがなければ契約を正式に解除します。その後は、「建物明渡請求訴訟」を提起し、未払い家賃と建物の明渡しを同時に求めるのが一般的です。訴訟の期間はおおむね3〜6ヵ月、判決が確定した後に入居者が任意に退去しない場合は、強制執行(裁判所の執行官による立ち退き)が行われます。 

弁護士費用は事案によりますが、数十万円程度が目安です。時間もコストもかかるため、訴訟に至る前に専門家が介入して交渉することで、任意退去や分割弁済での解決を図るケースも少なくありません。重要なのは、感情的にならず、法に則って「段階を追って手続きを進める」ことです。これが、結果的に最短で安全な解決へとつながります。 

弁護士が警告!オーナーの「自力救済」は絶対

家賃滞納が長期化すると、「もう我慢できない」「自分の物件だから」と感情的に動いてしまうオーナーもいます。しかし、無断で鍵を交換したり、部屋に入って荷物を撤去したりする行為は、明確な違法行為です。入居者が居住している限り、そこは「他人の住居」とみなされ、無断入室は「住居侵入罪」、荷物の処分は「器物損壊罪」や「不法行為」に該当します。実際に、滞納者が留守の間にオーナーが室内に入り、私物を撤去した結果、損害賠償を命じられた判例もあります。 

「正当な怒り」であっても、法の手続きを踏まなければ、オーナー側が加害者とみなされるおそれがあります。明渡しを求める際は、必ず「裁判所を通じた手続き(明渡請求訴訟・強制執行)」を経る必要があります。弁護士に依頼すれば、内容証明の作成から訴訟・執行まで一貫して対応でき、感情的なトラブルを避けつつ法的に安全な解決を図れます。冷静な手続きを取ることこそが、最終的にオーナーの利益を守る近道です。 

まとめ

家賃滞納への対応は、「早期・冷静・法的」の3つが鍵です。初期段階での書面記録と内容証明による正式な請求を徹底し、支払いがない場合は契約解除・訴訟の手続きを順序立てて進めましょう。 焦って自力で解決しようとすると、思わぬ法的リスクを負うこともあります。弁護士に相談し、正しい手順で進めることが最短で安全な解決策です。 

この記事を書いた人

山村 暢彦

弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士

実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。

2026.01.13

物件の管理・運用

山村 暢彦

「家賃滞納」発生!弁護士が教える督促から「建物明渡し」までの法的手続きと絶対NGな対応

  • 初心者
  • 弁護士
  • 執筆記事

滞納発生〜1ヵ月:初期対応(電話・書面での確認)

家賃滞納が発生したら、まずは「初動の速さ」が何より大切です。1ヵ月分の滞納であっても、「今月は遅れます」といった一言の連絡があるかないかで、その後の展開は大きく変わります。管理会社がある場合は速やかに入居者へ連絡を取り、事情を確認しましょう。入居者が一時的な資金難であれば、支払日を明確に決めて、「いつまでに、いくら支払うか」という合意を文書やメールで残しておくことが重要です。 

この段階で多くの滞納は解決に向かいますが、曖昧なまま放置すると「遅れていることを容認している」と見なされるリスクが高まります。オーナーとして感情的にならず、事実を淡々と確認し、記録を残すことが法的にも有効な初期対応です。万一の訴訟になった場合でも、この時期のやりとりが「誠実な対応」として有利に働くことがあります。 

滞納2〜3ヵ月:「内容証明郵便」と「連帯保証人」への連絡

1〜2ヵ月の滞納が続く場合、単なる「うっかり」ではなく、支払い能力や意思に問題がある可能性が高まります。この段階では、口頭や電話での催促ではなく、内容証明郵便(または特定記録郵便等の送付したことが記録に残る郵便)による正式な請求に切り替えることが重要です。文面には「滞納額」「支払期限」「期限までに支払いがなければ契約を解除する可能性がある」ことを明記し、記録として残します。内容証明は後の訴訟で「支払いを求めた事実」を証拠化できるため、実務上極めて有効です。 

また、契約時に連帯保証人を設定している場合は、同時に通知を行いましょう。滞納が発生している事実を早期に伝えることで、保証人が介入して支払いを行うケースもあります。ここまで進んでも入居者に誠実な対応が見られない場合は、契約解除や訴訟を視野に入れる段階です。管理会社任せにせず、弁護士へ相談して次の手続きを検討するタイミングといえます。 

滞納3ヵ月〜:「信頼関係の破壊」と契約解除の法的判断

家賃滞納が3ヵ月を超えると、法的には「信頼関係の破壊」が推定され、オーナー側からの契約解除が認められる可能性が高まります。賃貸借契約は「継続的な信頼関係」を前提としていますが、賃料の不払いが続けば、その基盤が崩れたと判断されるのです。もっとも、裁判では「滞納の期間」「金額」「入居者の支払い意思」などを総合的に考慮して判断されます。たとえば3ヵ月分を超えても誠実に分割払いを続けている場合には、解除が認められないケースもあります。 

契約を解除する場合、オーナーは、まず「契約解除通知書」を内容証明郵便で送付し、期限までに支払いがなければ契約を正式に解除します。その後は、「建物明渡請求訴訟」を提起し、未払い家賃と建物の明渡しを同時に求めるのが一般的です。訴訟の期間はおおむね3〜6ヵ月、判決が確定した後に入居者が任意に退去しない場合は、強制執行(裁判所の執行官による立ち退き)が行われます。 

弁護士費用は事案によりますが、数十万円程度が目安です。時間もコストもかかるため、訴訟に至る前に専門家が介入して交渉することで、任意退去や分割弁済での解決を図るケースも少なくありません。重要なのは、感情的にならず、法に則って「段階を追って手続きを進める」ことです。これが、結果的に最短で安全な解決へとつながります。 

弁護士が警告!オーナーの「自力救済」は絶対

家賃滞納が長期化すると、「もう我慢できない」「自分の物件だから」と感情的に動いてしまうオーナーもいます。しかし、無断で鍵を交換したり、部屋に入って荷物を撤去したりする行為は、明確な違法行為です。入居者が居住している限り、そこは「他人の住居」とみなされ、無断入室は「住居侵入罪」、荷物の処分は「器物損壊罪」や「不法行為」に該当します。実際に、滞納者が留守の間にオーナーが室内に入り、私物を撤去した結果、損害賠償を命じられた判例もあります。 

「正当な怒り」であっても、法の手続きを踏まなければ、オーナー側が加害者とみなされるおそれがあります。明渡しを求める際は、必ず「裁判所を通じた手続き(明渡請求訴訟・強制執行)」を経る必要があります。弁護士に依頼すれば、内容証明の作成から訴訟・執行まで一貫して対応でき、感情的なトラブルを避けつつ法的に安全な解決を図れます。冷静な手続きを取ることこそが、最終的にオーナーの利益を守る近道です。 

まとめ

家賃滞納への対応は、「早期・冷静・法的」の3つが鍵です。初期段階での書面記録と内容証明による正式な請求を徹底し、支払いがない場合は契約解除・訴訟の手続きを順序立てて進めましょう。 焦って自力で解決しようとすると、思わぬ法的リスクを負うこともあります。弁護士に相談し、正しい手順で進めることが最短で安全な解決策です。 

この記事を書いた人

山村 暢彦

弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士

実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。