2023.10.12

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

登記とは何か?意味やメリット、不動産登記における基礎知識

  • はじめ方・基礎知識
  • 賃貸管理

会社を設立したり不動産を購入したりすると「登記」が必要になると聞いたことがある人は多いと思います。では、登記とは何をすることか正確に把握できていますか?

この記事では、登記をするメリットや反対に登記をしないとどうなるのか、登記費用についても詳しくお伝えしていきます。

なぜ登記をするのか

まずは、登記の概要についてみていきましょう。

登記とはつまり何をすること?  

登記とは、個人や法人の権利および義務を第三者へ示すため、行政が取り扱う「登記簿」と呼ばれる帳簿に記載(記録)をすることです。

例えば、親が亡くなり不動産を相続した場合には子が相続登記を行う必要があり、登記により所有者を明確にすることができます。万が一、トラブルが発生しても所有者が明確であれば、早期に解決することが可能です。登記簿は基本的に閲覧の制限がなく第三者が照会をして確認することができますが、管轄が法務省(法務局)であることから、なりすましによる改ざんが容易にできないよう保護されています。

登記の種類は2つある  

登記の種類は様々ですが、主に2つのカテゴリーに分類されます。冒頭で触れたように、会社を設立した時に行う「法人登記(商業登記)」と譲渡や相続、売買など不動産全般で使用する「不動産登記」です。

法人登記

法人登記は、会社名称や資本金、役員に関する情報、事業内容など定められた事項を会社設立時に行います。ただし、代表の交代および役員の変更、移転による住所変更など、設立時の登記事由と相違がみられたら、その都度変更の申請手続きを行わなくてはいけません。変更の申請には期間が設けられており、この期間内に申請を怠ると裁判所から法人の代表者に対して罰金などの罰則が科される場合があるので、注意が必要です。

不動産登記

不動産登記は、住宅の購入時や譲渡時、相続時などのシーンにおいて、所有者が変更となった場合に行うことが一般的です。対象不動産の概要(所在地、地積、延床面積など)を特定した上で、所有権・抵当権など権利に関する事項を公示しています。法人登記と同じく、登記簿の記載事項に変更があった際は、変更申請の手続きが必要です。正当な理由がなく申請を怠ると、こちらも登記名義人に対して罰金など罰則が定められています。

登記をするメリット

登記をすることで得られる最大のメリットは、権利の主張をするための効力があることです。宅地建物取引士の資格試験でも毎年必ず取り上げられる「権利」に関する項目ですが、勉強をしたことのある方の中ではポピュラーな二重売買のお話があります。

例えば、売主がXとYという二人の買主と二重で不動産売買契約をしてしまい、X・Yの両者ともに支払いまで済ませたとします。代金も支払っているため当然二人ともが買主と主張すべきですが、商品である不動産は1つしかないのです。さて、ここで重要ポイントである「登記」の出番となります。「Xが先に契約をした」「Yが先に支払いをした」などの時系列は関係なく、「先に登記を行った」方が所有権の主張ができるのです。つまり、早い者勝ちになります。

もちろん商品を受け取っていない買主は代金の返還や損害賠償を請求できますが、それとこれとは違う問題で必ず返還される補償はありません。「多額のお金を失い、家も手に入らない」という詐欺に遭遇することを防ぐためにも、不動産登記は引き渡しと登記を同時履行で行いましょう。

不動産登記の流れと登記をする人とは  

登記制度の重要性が理解できたところで、実際にあなたが新築で注文住宅を建てたと仮定し、不動産登記を行う流れや誰が行うのかを解説していきましょう。

前提として不動産登記は「土地」と「建物」それぞれで行う必要があり、自分で行うことも可能ですが、間に入るハウスメーカーなどが指定する士業へ依頼することが一般的です。

新築した建物の登記簿を作る  

不動産登記は大きく分けて「表題部」と「権利部」に分けられ、新築した建物では建物の所有者が完成後1ヵ月以内に「表題部」の申請を行うよう定められています。新築は造りや広さなどの建物に関する記録が存在していないので、土地家屋調査士によりはじめに「建物表題登記」をしなくてはなりません。建物表題登記では「建物の所在地」「地番」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「所有者の氏名・住所」などの情報を登録します。表題登記は義務化されているため、怠ると罰則があるので注意しましょう。

建物の所有者が自分であることを示す  

表題登記が完了したら、建物の所有者が自分であることを示すために「所有権保存登記」を行います。所有権保存登記は、法律による義務付けがなく登記をしなくても罰則等はありませんが、第三者に対抗するためには必ず行いましょう。

所有権保存登記は司法書士が行うもので、所有権を取得した者の氏名や住所、取得日、取得理由などが記載されます。ちなみに権利部には「甲区」と「乙区」に分類され、所有権保存登記は甲区にあたります。

建物を担保に入れる

金融機関からの借入を利用して建物を取得した場合には、乙区に「抵当権設定登記」が必要です。資金を貸与した金融機関と建物の所有者における権利関係ですが、一般的には所有者から依頼された司法書士が手続きをします。不動産は高額なので、取得のために長期ローンを組むことが一般的です。しかし、経済状況の変化などによりローン返済が不能となった時に備えて、金融機関は建物を担保に入れることで債権を確保しておく必要があります。つまり、抵当権設定登記をすることで「差し押さえ」できる状態にしておくのです。

建物の所有者による債務不履行で抵当権が実行(差し押さえ)されると、金融機関は建物を競売にかけ売却することによって資金を回収します。

不動産登記簿の見るべきポイント  

不動産登記簿を見慣れない方にとっては、内容を読み解くことが少し難しく感じるかもしれません。上記で解説した「表題部」と「権利部」の見方についてお伝えします。

不動産登記簿 表題部の見方  

表題部の見方は、権利部に対して比較的に分かり易くなっています。

【土地の表題部】

  1. 所在
    土地の所在が市町村字まで記載されています。
  2.  地番
    土地ごとに付与されている番号のことで、所在の後に続く番号です。住居表示(いわゆる住所)とは異なる場合があります。
  3. 地目
    「宅地」「田」「畑」「雑種地」など23項目のうちから1つ選ばれ、土地の用途を表すものです。
    土地の上に住宅が建築されている場合でも「宅地」でないケースもあります。
  4. 地積
    土地の面積が記載されています。
  5. 原因およびその日付〔登記の日付〕
    登記された日付およびその原因(理由)が記載されています。

【建物の表題部】

  1. 所在
    土地と同様に建物の所在を示しますが、番地まで記載されているのが相違点です。
  2. 家屋番号
    建物ごとに付与された番号のことで、稀に地番などと無関係の番号が付与されることもありますが、登記上管理する番号なので問題はありません。
  3. 種類
    建物の構造や屋根の種類、何階建てかが記載されています。
    ・建物の構造:木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など
    ・屋根の種類:切妻屋根、陸屋根など
  4. 床面積
    建物の床面積が階層ごとに記載されています。
    記載されている全ての床面積を合計したものを「延床面積」といいます。
  5. 原因およびその日付〔登記の日付〕
    登記された日付およびその原因(理由)が記載されています。

不動産登記簿 権利部の見方

権利部についても1つずつ紐解いていけば、難しいことは特にありません。

  1. 順位番号
    登記された順番を表しており、「1」が一番古く数字が大きくなるにつれて新しくなります。
  2. 登記の目的
    なぜ登記を行ったのか、理由が記載されています。
    「所有権保存」「所有権移転」「抵当権設定」「抵当権抹消」「差押」など理由は様々です。
  3. 受付年月日・受付番号
    登記を受け付けた年月日と、登記を管理するための受付番号が記載されています。
  4. 権利者その他の事項
    所有者の情報(住所・氏名など)や原因、金融機関による借入を行った場合には「債権者」として金融機関の名称や債権額、保証会社を利用している場合には抵当権者などが記載されています。対象の建物を購入するために、どこの金融機関でいくらのローンを組んだかなどの情報が分かるようになっているのです。

また、権利部には各項目に下線が引かれていることがありますが、これは「抹消」を意味しており、記載されている情報が有効でないことを表しています。

不動産登記をしないとどうなる?  

不動産登記をしないことによるデメリットは、すでに触れてきた内容以外にもあります。
未登記のままではどのような影響を与えるのか、改めて挙げてみましょう。

権利を主張できない  

先述のトラブル事例にもあったように、不動産登記を行わないと権利を主張できません。
他にも、未登記のまま放置していると不動産を売却したくなっても、本当に自分が所有者であるかどうかの証明ができないため、所有権移転登記を行ってからでなくては不動産会社へ売却の依頼ができません。
また、親が亡くなり相続人である兄弟が複数いるケースでは、全員分の登記が必要であり作業も大変になりますので、早めに行っておくことが重要です。

銀行融資が受けられない  

建物を金融機関の担保とすることについて解説しましたが、そもそも建物が未登記では取得するために銀行の融資が受けられません。
また、不動産取得の目的以外でも、事業による借入などで銀行融資を利用する機会があります。
担保に入れることで融資承認を得られるケースがみられますが、そのような場合でも同じく金融機関の抵当権を付けることができないため、融資をしてもらえません。

売買や賃貸ができない

権利の主張や銀行融資が難しいことから不動産売買には登記が必要ですが、実は未登記では賃貸でも影響があります。
未登記物件を賃貸に出すこと自体は違法ではありませんが、非常にリスクがあるのです。
部屋探しで間に入る仲介業者は借主に重要事項説明を行う義務があり、所有者の説明をしなくてはなりません。しかし、未登記物件では所有者不明のため仲介業者にも借主にも敬遠されてしまいます。

未登記不動産の登記には費用がかかる  

未登記における様々なデメリットや問題点がありますが、古くからある建物など未だに未登記不動産は多く存在しています。その理由として挙げられるのが、登記費用がかかることです。
では、実際に不動産の登記費用はいくらかかるのか、確認していきましょう。

表題部登記の費用  

表題登記を土地家屋調査士へ依頼する際の費用についてみていきましょう。
表題部の登記費用相場を調べてみると、土地家屋調査士事務所によって様々な金額が提示されています。
後述しますが、表題部登記は権利部登記と異なり「登録免許税」と呼ばれる税金を納める必要はありませんので、費用としては土地家屋調査士への報酬のみです。

日本土地家屋調査士会連合会により令和元年に行われた業務報酬統計資料があります。
資料によると、木造ストレート屋根2階建ての一般的な戸建てを対象とした業務報酬額が算出されています。
報酬額として最も低いのは中国圏で平均値79,405円、最も高いのは近畿圏で平均値90,239円、全国平均値は83,659円という結果になりました。
おおよその目安となりますが、居宅が3、4階以上のケースや床面積が広いケースでは更に報酬額も高くなる可能性があるので、一概にいくらであると判断することはできません。

実際依頼をする際には10~15万円程度と高く想定しておき、土地家屋調査士事務所の見積もりを比較してみるとよいでしょう。

権利部登記の費用

権利部登記をする際には「登録免許税」と呼ばれる税金を国に納めなくてはいけません。
表題登記の費用として挙げられるのは、「登録免許税」と「司法書士」へ支払う報酬です。
登録免許税の税率は、下記の計算方法により算出されます。

登記における種類 登録免許税の税率
土地の所有権移転登記 評価額×2.0%
新築建物の所有権移転登記 評価額×0.4%
中古建物の所有権移転登記 評価額×2.0%
抵当権設定登記 借入金額×0.4%

ただし、それぞれの不動産ごとに軽減措置が設けられており、要件を満たす場合には税率は低くなります。

司法書士への報酬は、表題部費用と同様に司法書士事務所ごとに異なる計算方法で報酬が定められているため、費用を断定することはできません。平成30年に日本司法書士会連合会が司法書士へ実施した報酬アンケートによると、一般的な売買における所有権移転登記の報酬額は、最も低いのは東北地区で平均値42,585円、最も高いのは近畿地方で64,090円でした。

また、抵当権設定登記の報酬額は、最も低いのはこちらも東北地方で平均値35,377円、最も高いのは同じく近畿地方で平均値46,219円です。

しかし、司法書士が決済で金融機関へ出向く場合には出張費の加算、売主が登記識別情報(登記済証)を紛失などで提供できない場合には代理作成費の加算など、登記費用は条件によって様々です。表題部登記と同様、売主による司法書士事務所の指定がない場合には、相見積もりをとるとよいでしょう。

まとめ

今回は「登記」にまつわる内容について解説しました。
日本国内では、現在でも未登記であったり、所有権移転登記が未完了であるために所有者不明の不動産が数多く存在しており、登記に関する規制や罰則も厳しくなってきています。
不動産登記をしていないままでは、その不動産が自分の所有物であるという権利を主張することができません。登記をすることは何かトラブルが生じた際に自分の資産を守ることへ繋がるので、忘れずに登記をしておきましょう。

ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.12

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

登記とは何か?意味やメリット、不動産登記における基礎知識

  • はじめ方・基礎知識
  • 賃貸管理

会社を設立したり不動産を購入したりすると「登記」が必要になると聞いたことがある人は多いと思います。では、登記とは何をすることか正確に把握できていますか?

この記事では、登記をするメリットや反対に登記をしないとどうなるのか、登記費用についても詳しくお伝えしていきます。

なぜ登記をするのか

まずは、登記の概要についてみていきましょう。

登記とはつまり何をすること?  

登記とは、個人や法人の権利および義務を第三者へ示すため、行政が取り扱う「登記簿」と呼ばれる帳簿に記載(記録)をすることです。

例えば、親が亡くなり不動産を相続した場合には子が相続登記を行う必要があり、登記により所有者を明確にすることができます。万が一、トラブルが発生しても所有者が明確であれば、早期に解決することが可能です。登記簿は基本的に閲覧の制限がなく第三者が照会をして確認することができますが、管轄が法務省(法務局)であることから、なりすましによる改ざんが容易にできないよう保護されています。

登記の種類は2つある  

登記の種類は様々ですが、主に2つのカテゴリーに分類されます。冒頭で触れたように、会社を設立した時に行う「法人登記(商業登記)」と譲渡や相続、売買など不動産全般で使用する「不動産登記」です。

法人登記

法人登記は、会社名称や資本金、役員に関する情報、事業内容など定められた事項を会社設立時に行います。ただし、代表の交代および役員の変更、移転による住所変更など、設立時の登記事由と相違がみられたら、その都度変更の申請手続きを行わなくてはいけません。変更の申請には期間が設けられており、この期間内に申請を怠ると裁判所から法人の代表者に対して罰金などの罰則が科される場合があるので、注意が必要です。

不動産登記

不動産登記は、住宅の購入時や譲渡時、相続時などのシーンにおいて、所有者が変更となった場合に行うことが一般的です。対象不動産の概要(所在地、地積、延床面積など)を特定した上で、所有権・抵当権など権利に関する事項を公示しています。法人登記と同じく、登記簿の記載事項に変更があった際は、変更申請の手続きが必要です。正当な理由がなく申請を怠ると、こちらも登記名義人に対して罰金など罰則が定められています。

登記をするメリット

登記をすることで得られる最大のメリットは、権利の主張をするための効力があることです。宅地建物取引士の資格試験でも毎年必ず取り上げられる「権利」に関する項目ですが、勉強をしたことのある方の中ではポピュラーな二重売買のお話があります。

例えば、売主がXとYという二人の買主と二重で不動産売買契約をしてしまい、X・Yの両者ともに支払いまで済ませたとします。代金も支払っているため当然二人ともが買主と主張すべきですが、商品である不動産は1つしかないのです。さて、ここで重要ポイントである「登記」の出番となります。「Xが先に契約をした」「Yが先に支払いをした」などの時系列は関係なく、「先に登記を行った」方が所有権の主張ができるのです。つまり、早い者勝ちになります。

もちろん商品を受け取っていない買主は代金の返還や損害賠償を請求できますが、それとこれとは違う問題で必ず返還される補償はありません。「多額のお金を失い、家も手に入らない」という詐欺に遭遇することを防ぐためにも、不動産登記は引き渡しと登記を同時履行で行いましょう。

不動産登記の流れと登記をする人とは  

登記制度の重要性が理解できたところで、実際にあなたが新築で注文住宅を建てたと仮定し、不動産登記を行う流れや誰が行うのかを解説していきましょう。

前提として不動産登記は「土地」と「建物」それぞれで行う必要があり、自分で行うことも可能ですが、間に入るハウスメーカーなどが指定する士業へ依頼することが一般的です。

新築した建物の登記簿を作る  

不動産登記は大きく分けて「表題部」と「権利部」に分けられ、新築した建物では建物の所有者が完成後1ヵ月以内に「表題部」の申請を行うよう定められています。新築は造りや広さなどの建物に関する記録が存在していないので、土地家屋調査士によりはじめに「建物表題登記」をしなくてはなりません。建物表題登記では「建物の所在地」「地番」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「所有者の氏名・住所」などの情報を登録します。表題登記は義務化されているため、怠ると罰則があるので注意しましょう。

建物の所有者が自分であることを示す  

表題登記が完了したら、建物の所有者が自分であることを示すために「所有権保存登記」を行います。所有権保存登記は、法律による義務付けがなく登記をしなくても罰則等はありませんが、第三者に対抗するためには必ず行いましょう。

所有権保存登記は司法書士が行うもので、所有権を取得した者の氏名や住所、取得日、取得理由などが記載されます。ちなみに権利部には「甲区」と「乙区」に分類され、所有権保存登記は甲区にあたります。

建物を担保に入れる

金融機関からの借入を利用して建物を取得した場合には、乙区に「抵当権設定登記」が必要です。資金を貸与した金融機関と建物の所有者における権利関係ですが、一般的には所有者から依頼された司法書士が手続きをします。不動産は高額なので、取得のために長期ローンを組むことが一般的です。しかし、経済状況の変化などによりローン返済が不能となった時に備えて、金融機関は建物を担保に入れることで債権を確保しておく必要があります。つまり、抵当権設定登記をすることで「差し押さえ」できる状態にしておくのです。

建物の所有者による債務不履行で抵当権が実行(差し押さえ)されると、金融機関は建物を競売にかけ売却することによって資金を回収します。

不動産登記簿の見るべきポイント  

不動産登記簿を見慣れない方にとっては、内容を読み解くことが少し難しく感じるかもしれません。上記で解説した「表題部」と「権利部」の見方についてお伝えします。

不動産登記簿 表題部の見方  

表題部の見方は、権利部に対して比較的に分かり易くなっています。

【土地の表題部】

  1. 所在
    土地の所在が市町村字まで記載されています。
  2.  地番
    土地ごとに付与されている番号のことで、所在の後に続く番号です。住居表示(いわゆる住所)とは異なる場合があります。
  3. 地目
    「宅地」「田」「畑」「雑種地」など23項目のうちから1つ選ばれ、土地の用途を表すものです。
    土地の上に住宅が建築されている場合でも「宅地」でないケースもあります。
  4. 地積
    土地の面積が記載されています。
  5. 原因およびその日付〔登記の日付〕
    登記された日付およびその原因(理由)が記載されています。

【建物の表題部】

  1. 所在
    土地と同様に建物の所在を示しますが、番地まで記載されているのが相違点です。
  2. 家屋番号
    建物ごとに付与された番号のことで、稀に地番などと無関係の番号が付与されることもありますが、登記上管理する番号なので問題はありません。
  3. 種類
    建物の構造や屋根の種類、何階建てかが記載されています。
    ・建物の構造:木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など
    ・屋根の種類:切妻屋根、陸屋根など
  4. 床面積
    建物の床面積が階層ごとに記載されています。
    記載されている全ての床面積を合計したものを「延床面積」といいます。
  5. 原因およびその日付〔登記の日付〕
    登記された日付およびその原因(理由)が記載されています。

不動産登記簿 権利部の見方

権利部についても1つずつ紐解いていけば、難しいことは特にありません。

  1. 順位番号
    登記された順番を表しており、「1」が一番古く数字が大きくなるにつれて新しくなります。
  2. 登記の目的
    なぜ登記を行ったのか、理由が記載されています。
    「所有権保存」「所有権移転」「抵当権設定」「抵当権抹消」「差押」など理由は様々です。
  3. 受付年月日・受付番号
    登記を受け付けた年月日と、登記を管理するための受付番号が記載されています。
  4. 権利者その他の事項
    所有者の情報(住所・氏名など)や原因、金融機関による借入を行った場合には「債権者」として金融機関の名称や債権額、保証会社を利用している場合には抵当権者などが記載されています。対象の建物を購入するために、どこの金融機関でいくらのローンを組んだかなどの情報が分かるようになっているのです。

また、権利部には各項目に下線が引かれていることがありますが、これは「抹消」を意味しており、記載されている情報が有効でないことを表しています。

不動産登記をしないとどうなる?  

不動産登記をしないことによるデメリットは、すでに触れてきた内容以外にもあります。
未登記のままではどのような影響を与えるのか、改めて挙げてみましょう。

権利を主張できない  

先述のトラブル事例にもあったように、不動産登記を行わないと権利を主張できません。
他にも、未登記のまま放置していると不動産を売却したくなっても、本当に自分が所有者であるかどうかの証明ができないため、所有権移転登記を行ってからでなくては不動産会社へ売却の依頼ができません。
また、親が亡くなり相続人である兄弟が複数いるケースでは、全員分の登記が必要であり作業も大変になりますので、早めに行っておくことが重要です。

銀行融資が受けられない  

建物を金融機関の担保とすることについて解説しましたが、そもそも建物が未登記では取得するために銀行の融資が受けられません。
また、不動産取得の目的以外でも、事業による借入などで銀行融資を利用する機会があります。
担保に入れることで融資承認を得られるケースがみられますが、そのような場合でも同じく金融機関の抵当権を付けることができないため、融資をしてもらえません。

売買や賃貸ができない

権利の主張や銀行融資が難しいことから不動産売買には登記が必要ですが、実は未登記では賃貸でも影響があります。
未登記物件を賃貸に出すこと自体は違法ではありませんが、非常にリスクがあるのです。
部屋探しで間に入る仲介業者は借主に重要事項説明を行う義務があり、所有者の説明をしなくてはなりません。しかし、未登記物件では所有者不明のため仲介業者にも借主にも敬遠されてしまいます。

未登記不動産の登記には費用がかかる  

未登記における様々なデメリットや問題点がありますが、古くからある建物など未だに未登記不動産は多く存在しています。その理由として挙げられるのが、登記費用がかかることです。
では、実際に不動産の登記費用はいくらかかるのか、確認していきましょう。

表題部登記の費用  

表題登記を土地家屋調査士へ依頼する際の費用についてみていきましょう。
表題部の登記費用相場を調べてみると、土地家屋調査士事務所によって様々な金額が提示されています。
後述しますが、表題部登記は権利部登記と異なり「登録免許税」と呼ばれる税金を納める必要はありませんので、費用としては土地家屋調査士への報酬のみです。

日本土地家屋調査士会連合会により令和元年に行われた業務報酬統計資料があります。
資料によると、木造ストレート屋根2階建ての一般的な戸建てを対象とした業務報酬額が算出されています。
報酬額として最も低いのは中国圏で平均値79,405円、最も高いのは近畿圏で平均値90,239円、全国平均値は83,659円という結果になりました。
おおよその目安となりますが、居宅が3、4階以上のケースや床面積が広いケースでは更に報酬額も高くなる可能性があるので、一概にいくらであると判断することはできません。

実際依頼をする際には10~15万円程度と高く想定しておき、土地家屋調査士事務所の見積もりを比較してみるとよいでしょう。

権利部登記の費用

権利部登記をする際には「登録免許税」と呼ばれる税金を国に納めなくてはいけません。
表題登記の費用として挙げられるのは、「登録免許税」と「司法書士」へ支払う報酬です。
登録免許税の税率は、下記の計算方法により算出されます。

登記における種類 登録免許税の税率
土地の所有権移転登記 評価額×2.0%
新築建物の所有権移転登記 評価額×0.4%
中古建物の所有権移転登記 評価額×2.0%
抵当権設定登記 借入金額×0.4%

ただし、それぞれの不動産ごとに軽減措置が設けられており、要件を満たす場合には税率は低くなります。

司法書士への報酬は、表題部費用と同様に司法書士事務所ごとに異なる計算方法で報酬が定められているため、費用を断定することはできません。平成30年に日本司法書士会連合会が司法書士へ実施した報酬アンケートによると、一般的な売買における所有権移転登記の報酬額は、最も低いのは東北地区で平均値42,585円、最も高いのは近畿地方で64,090円でした。

また、抵当権設定登記の報酬額は、最も低いのはこちらも東北地方で平均値35,377円、最も高いのは同じく近畿地方で平均値46,219円です。

しかし、司法書士が決済で金融機関へ出向く場合には出張費の加算、売主が登記識別情報(登記済証)を紛失などで提供できない場合には代理作成費の加算など、登記費用は条件によって様々です。表題部登記と同様、売主による司法書士事務所の指定がない場合には、相見積もりをとるとよいでしょう。

まとめ

今回は「登記」にまつわる内容について解説しました。
日本国内では、現在でも未登記であったり、所有権移転登記が未完了であるために所有者不明の不動産が数多く存在しており、登記に関する規制や罰則も厳しくなってきています。
不動産登記をしていないままでは、その不動産が自分の所有物であるという権利を主張することができません。登記をすることは何かトラブルが生じた際に自分の資産を守ることへ繋がるので、忘れずに登記をしておきましょう。

ベルテックスでは、不動産投資の専門家による無料オンラインセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。