2024.02.29

資産運用

ベルテックスコラム事務局

先物取引 vs 不動産投資、投資先ならどちらがお得か徹底検証

  • 資産形成
  • 金融商品VS不動産投資
  • 比較

資産運用における投資手法にはさまざまな選択肢があります。今回は、先物取引と不動産投資について解説します。どちらもハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、基本を理解すれば難しくないことがわかるでしょう。2つの商品の特徴を比較検証していきます。

先物取引とはどんな取引?

先物取引とは具体的にどのような取引なのでしょうか。わかりやすく解説していきます。

先物取引の概要

先物取引の基本(現物決済)

先物取引とは、あるモノ(原資産)を決められた日(期日)に受け渡しするための価格を事前に決めて売買をおこなうことです。

たとえば、とうもろこしが原資産であるとします。とうもろこしを受け渡す期日を6月1日とします。4月時点で、今年の5月は天候が悪いとの気候予測が出たので、不作になって収穫量が減り価格が上がるとの予想をしました。6月1日の期日の頃には値上がっている可能性があるので、まだ価格が上がっていない4月時点で先物取引を利用して購入することでお得にとうもろこしを手に入れることができるのです。

このように、受け渡しまでの間に有利にモノを購入することができるのが先物取引の基本的な考え方です。そして期日に現物を受け渡されることで取引を決済することを「現物決済」といいます。

先物取引でリスクを軽減するヘッジ取引(差金決済)

他の目的で先物取引をおこなうこともあります。ヘッジ取引をおこないリスクを軽減する方法です。

たとえば、あなたが大豆を卸す業者だったとします。大豆を在庫として所有しており、何かしらの原因で今後大豆価格が下がる予想が出ました。抱えている在庫の大豆は、大豆を欲しがっている豆腐屋などに販売していくのですが、このままでは大豆を購入した時点の価格より豆腐屋に販売する価格を下げないと売れない可能性があります。これだと損失を被ります。

このリスクを軽減するために、大豆の先物を利用します。先物取引は価格が下がると思ったら、売りから入って期日までに買い戻すことにより、その下がった価格分の利益を得ることができます。抱えた在庫の大豆で被った損失額は、先物取引で得た利益額で相殺され、損失が無かったようになるのです。これがヘッジ取引の基本的な考え方です。

そして、このように期日が来るまでに反対売買をおこなって価格の売り買いだけで決済することを「差金決済」といいます。

投資目的でおこなう先物取引(差金決済)

先物取引を金融商品という位置付けでおこなうことがよくあります。

たとえば原油の先物取引をおこないたいと思っているとします。ある日、原油の主要原産国であるサウジアラビアが原油を減産するという方針を打ち出したとします。減産すると市場に出回る原油量が減るので価格が上昇する傾向があります。その傾向を利用して原油の先物を購入して、予想通り値上がったところで売却することで利益を得ることができるのです。

逆に減産していることで価格が高く推移しているところに、急遽サウジアラビアが原油の増産を発表したとします。原油が増産されると原油価格は下がる傾向があります。先物取引は、価格が下がると思ったら売りから入って値下がったところで買い戻して利益を得ることができるので、原油を売りから入って、予想通り値下がったところで買い戻すことで利益を得ることができるのです。

先物取引には証拠金が必要で、証拠金の数倍分の取引が可能

先物取引は、金融機関や商品先物取引業者へ証拠金を預けて、証拠金額の何倍もの取引がおこなえます。基本的に差金決済での取引が多い先物取引は、価格の変動という数字のやり取りをおこないます。

たとえば証拠金100万円を商品先物取引業者へ預けて銀の先物取引をおこなうことにします。銀価格が上がると思い、300万円分の銀先物を購入しました。予想通り銀が1.5倍値上がりしたとしたら、銀価格が450万円になったところで反対売買することで150万円の利益を得ることができるのです。この場合、取引業者から150万円を得ることができます。

逆に予想に反して、価格が値下がりし、購入時の半分の価格まで下がったとします。その時点で反対売買することで150万円損失が出ました。この損失分の150万円を数日中に取引業者へ支払わなければなりません。

現物取引では、出資した金額分までしか損失を被りませんが、先物取引では、このように100万円の元手で150万円の損失を被ってしまうようなことがあります。

先物取引ができる商品とは

先物取引がおこなえる商品を以下のとおりです。

商品先物 金融商品先物

・金

・銀

・原油

・とうもろこし

・大豆

・コーヒー

・株式

・債券

・為替

 

先物取引のメリット

先物取引の特徴・メリットを紹介します。

1.買いだけでなく売りからも入れる
先物取引は、買いからも売りからも入れます。現物取引だと買いからしか入れないのに対して、売りから入れる点は先物取引の大きな特徴といえます。つまり、価格が下がると思ったら、売りから入って価格が下がった時に買い戻すと、価格が下がった分利益を得られます。
例)日経平均先物が現在33,000円として、今後下がると予想。
  33,000円で売りから入る
   ↓
  32,000円に下がったので買い戻し
  33,000円-32,000円=1,000円の利益
このように相場が弱く、価格が下がる場面でも利益を得られる取引ができるのが先物取引の大きなメリットといえます。

2.少額から始められる
少額から始められることも大きな特徴です。利用する証券会社や商品先物取引業者に預けたお金(取引証拠金)の3~20倍ほどの取引がおこなえます。例えば、100万円の取引をしようと思えば10万円前後の資金があればおこなえるのです。10万円前後の取引証拠金を担保に100万円を証券会社や商品先物取引業者から借りる形になります。(※証拠金の何倍まで取引できるかは証券会社や商品先物取引業者により異なります)

3.短期間で利益が出やすい
先物取引の対象となる原資産は、値動きが激しいものが多いことが特徴です。原油やとうもろこし、株式や為替など、日々の社会情勢等で大きく値が動いていきます。その流れに乗れば、短期間で利益が得られます。そして少額預けるだけで大きな金額の取引がおこなえるので、さほど大きく値動きしなくても大きな利益を得ることも可能となるのです。

先物取引のデメリット

先物取引には次のようなデメリットがあります。

1.元本が保証されていない
先物取引は「ハイリスク・ハイリターン」商品です。元本は保証されていないため、価格が上がると思って買いで入り、予想に反して価格が下がると損失を被ります。そして価格が下がると思って売りから入り、予想に反して価格が上がると損失を被ります。

2.証拠金の追加が必要となる場合がある
先物取引は少額の取引証拠金を預ければ大きな金額の取引が可能になると前述しました。しかし、取引をおこなっていくなかで損失が拡大してしまうと、追加で証拠金を預けなければならなくなる可能性があります。先物取引では、証拠金に対する取引額の割合が決まっており、その割合を下回ると、最低の割合水準に達するまでの金額を追加で預けなければならなくなります。

3.取引金額が大きくなると、損失も大きくなる可能性がある
取引金額が大きくなると、価格が予想に反した動きをした場合、損失を被る金額も大きくなります。取引証拠金の数倍の金額の取引をおこなうことは、自身の金融資産以上の金額を取引する可能性も出てきます。もし損失を確定させた場合には、その損失額は証券会社や商品先物取引業者に支払わなければなりません。

先物取引と不動産投資の違い

先物取引と不動産投資の大きな違いは、長期的な展望で投資できるかどうかです。先物取引は、短期間で決済をおこなう商品です。取引をおこなう場合、どの先物取引も取引の期日はおおむね数ヶ月と決まっており、長期的な視点で行うことができません。一方、不動産投資は長期的に家賃収入やローン返済などの展望が見やすく、計画的に投資をおこなえます。

先物取引 VS 不動産投資を徹底比較

先物取引と不動産投資の特徴を踏まえ、さまざまな視点から比較してみましょう。

比較項目 先物取引 不動産投資
年金対策 ×
インフレ対策
節税効果
保険効果 ×
下落相場対策 ×
再現性
管理のしやすさ

 

年金対策

年金対策では不動産投資に軍配が上がります。年金対策で投資をおこなうならば、定年後に毎月定期的に安定収入を得られるのが理想です。

先物取引は、短期間で取引を終える商品です。商品を受け渡す期日が数か月後と決められており、その商品を購入するために事前にその時期の価格で購入予約を入れるといったイメージです。

たとえば、原油を6ヶ月先に購入したいが、世界的に景気が上向きそうなので原油の需要がまだ高まっておらず、価格が安い今のうちに先物取引を利用して買っておこうという場合は、先物取引を現物決済としておこなうべきです。そして、景気が上向きだしたら価格が上昇するので、投資目的の人はその価格変動を利用して差金決済で儲けようと投資するのです。

これが30年先の受け渡しだとしたら、どうでしょう。30年先の世界景気など全く予想できません。先物取引は長期投資という概念が存在せず、年金対策をおこなうことができないのです。

一方、不動産投資は年金対策に向いています。不動産投資は毎月定期的に一定額の家賃収入を得られます。そして不動産の耐用年数は建物の構造によります鉄筋コンクリート造だと47年、木造でも22年で、実際にはさらに長期間所有できます。そのため、長い老後の年金の不足分を補ってくれます。

インフレ対策

インフレとは物価の上昇のことをいいます。物価が上昇すると貨幣価値が下がります。そのため、現金を他の資産に換えて物価の上昇率と同等、またはそれ以上に上昇するものを所有しておくことでインフレ対策ができます。

先物取引は、インフレ対策にやや適しています。物価が上昇するタイミングでは金や原油価格も上昇する傾向があります。現金資産を金や原油などの先物取引に投資することはインフレ対策になります。しかし、先物取引は短期間で決済しなければならないので、その効果は一時的なものです。

不動産投資もインフレ対策になります。物価が上がりだすと不動産価格も家賃も上げやすくなります。インフレの局面では不動産のような実物資産を持つことが効果的です。

節税効果

先物取引は節税効果があります。先物取引をおこなう上で、ある単年で損失が出たら、確定申告をおこなうことで翌年以降3年間は利益が出ても損失の繰越控除をおこなうことで相殺できます。その結果、課税所得を抑えることができるのです。

そして、日経225先物やFX取引などとの損益通算もできます。たとえば、ある商品先物をおこなった結果1年間で利益が出ていたとしても、日経225先物やFX取引で損失が出ていたら、損益通算で利益額を圧縮でき、それに伴い課税所得とて納めるべき税金が減るのです。

一方、不動産投資も節税効果があります。不動産投資で発生した損失額は給与所得と損益通算できます。たとえば会社員が不動産投資をおこなっている場合、不動産投資で会計上損失が出たとき、給与所得で出た利益を相殺することにより、課税所得が減り、納めるべき税額が減少します。

保険効果

先物取引に保険効果は期待できません。

一方、不動産投資はローンを組んでおこなっている場合、生命保険代わりに投資できます。不動産投資をおこなう際に金融機関でローンを組むとき、金融機関は団体信用生命保険への加入が必要になります。この団体信用生命保険は、保険の被保険者に万が一のことがあった場合、ローン残債全額を返済してくれるものです。

この場合、不動産に対する借入れは無くなるため、相続人には借入のない不動産が相続され、不動産からの毎月の家賃を100%受け取ることができるのです。

下落相場対策

先物取引は下落相場対策に適しています。先物取引の原資産である原油や金、大豆、そして株式、債券などの相場が下落しそうなとき、売りから入ることにより、予想どおりに下落すれば買い戻すことで利益を得ることができます。

このように先物取引は上げ相場だけでなく、下げ相場でも利益を出すことが可能なため、上手く運用できれば、どのような相場でも利益を出すことができるのです。

一方、不動産投資は不動産相場の下落の対策ができません。家賃が下落しそうな場合の対策としては、リフォームをおこなったり、人気の設備を導入するなどにとどまります。根本的な対策ではないため、効果は限定的です。

再現性

先物取引は再現性がない場合が多いです。刻一刻と変動する先物価格は、随時変化する社会情勢や金利水準、気候など、さまざまな要因が相まって価格が決まっています。その時点での環境に臨機応変に対応することが必要となります。ただ、金利が上がるときは金価格が、原油が世界的に増産されるときは原油価格が下落するなど、各原資産によって価格上昇要因や下落要因があるため、このような場合は再現性があるといえます。

一方、不動産投資には再現性があります。さらには、セキュリティ機能が整備されている物件は女性に人気があったり、インターネット環境が整っている物件が人気だったりと、空室が出にくい物件の傾向が不動産にはあります。そのため、そのような物件を購入したりリフォームしたりすることで、不動産投資の成功率が高まるでしょう。

管理のしやすさ

先物取引は、現物を所有するわけではないため管理しやすいでしょう。証券会社や先物取引業者の口座で取引を管理するため、特におこなうことはありません。ただ、先物取引は価格変動が激しいため、社会情勢の把握や価格の確認をしていないと気づいたときには大損する可能性があります。

一方、不動産投資は、物件や入居者の管理が必要です。物件の管理では、切れた電球の取り換えや、屋根や外壁の修繕、入居者の管理は、入居者の募集や苦情、要望への対応などをおこないます。ただし、委託料を支払うことで管理は不動産管理会社に一任できます。

先物取引と不動産投資を組み合わる

目的が長期運用のみならば、不動産投資一択となります。

ただ、資金と時間に余裕がある場合は、先物取引と不動産投資の組み合わせ運用をおこなうことも選択肢の1つです。先物取引で数ヶ月単位の短期運用をこまめにおこないつつ、資産運用の軸として不動産投資をおこなって毎月安定収入を得るというスタイルです。

その際、先物取引はハイリスク・ハイリターン商品のため、生活に支障のない余裕資金のみでおこなうことが大切です。
そして、一定額を損切ラインに設定しておくと、大きな損失を被らずに済むでしょう。

まとめ

今回は、先物取引と不動産投資、投資先ならどちらがお得なのかを検証しました。先物取引と不動産取引は性格がまったく異なります。先物取引や短期運用、不動産取引は長期運用に適しています。そしてリスク分類も先物取引がハイリスク・ハイリターンなのに対し、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンです。
それぞれの商品特性と自身の投資スタイルを勘案して商品を選択し、賢く資産運用をおこないましょう。
ベルテックスでは不動産投資やその他の資産運用にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.02.29

資産運用

ベルテックスコラム事務局

先物取引 vs 不動産投資、投資先ならどちらがお得か徹底検証

  • 資産形成
  • 金融商品VS不動産投資
  • 比較

資産運用における投資手法にはさまざまな選択肢があります。今回は、先物取引と不動産投資について解説します。どちらもハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、基本を理解すれば難しくないことがわかるでしょう。2つの商品の特徴を比較検証していきます。

先物取引とはどんな取引?

先物取引とは具体的にどのような取引なのでしょうか。わかりやすく解説していきます。

先物取引の概要

先物取引の基本(現物決済)

先物取引とは、あるモノ(原資産)を決められた日(期日)に受け渡しするための価格を事前に決めて売買をおこなうことです。

たとえば、とうもろこしが原資産であるとします。とうもろこしを受け渡す期日を6月1日とします。4月時点で、今年の5月は天候が悪いとの気候予測が出たので、不作になって収穫量が減り価格が上がるとの予想をしました。6月1日の期日の頃には値上がっている可能性があるので、まだ価格が上がっていない4月時点で先物取引を利用して購入することでお得にとうもろこしを手に入れることができるのです。

このように、受け渡しまでの間に有利にモノを購入することができるのが先物取引の基本的な考え方です。そして期日に現物を受け渡されることで取引を決済することを「現物決済」といいます。

先物取引でリスクを軽減するヘッジ取引(差金決済)

他の目的で先物取引をおこなうこともあります。ヘッジ取引をおこないリスクを軽減する方法です。

たとえば、あなたが大豆を卸す業者だったとします。大豆を在庫として所有しており、何かしらの原因で今後大豆価格が下がる予想が出ました。抱えている在庫の大豆は、大豆を欲しがっている豆腐屋などに販売していくのですが、このままでは大豆を購入した時点の価格より豆腐屋に販売する価格を下げないと売れない可能性があります。これだと損失を被ります。

このリスクを軽減するために、大豆の先物を利用します。先物取引は価格が下がると思ったら、売りから入って期日までに買い戻すことにより、その下がった価格分の利益を得ることができます。抱えた在庫の大豆で被った損失額は、先物取引で得た利益額で相殺され、損失が無かったようになるのです。これがヘッジ取引の基本的な考え方です。

そして、このように期日が来るまでに反対売買をおこなって価格の売り買いだけで決済することを「差金決済」といいます。

投資目的でおこなう先物取引(差金決済)

先物取引を金融商品という位置付けでおこなうことがよくあります。

たとえば原油の先物取引をおこないたいと思っているとします。ある日、原油の主要原産国であるサウジアラビアが原油を減産するという方針を打ち出したとします。減産すると市場に出回る原油量が減るので価格が上昇する傾向があります。その傾向を利用して原油の先物を購入して、予想通り値上がったところで売却することで利益を得ることができるのです。

逆に減産していることで価格が高く推移しているところに、急遽サウジアラビアが原油の増産を発表したとします。原油が増産されると原油価格は下がる傾向があります。先物取引は、価格が下がると思ったら売りから入って値下がったところで買い戻して利益を得ることができるので、原油を売りから入って、予想通り値下がったところで買い戻すことで利益を得ることができるのです。

先物取引には証拠金が必要で、証拠金の数倍分の取引が可能

先物取引は、金融機関や商品先物取引業者へ証拠金を預けて、証拠金額の何倍もの取引がおこなえます。基本的に差金決済での取引が多い先物取引は、価格の変動という数字のやり取りをおこないます。

たとえば証拠金100万円を商品先物取引業者へ預けて銀の先物取引をおこなうことにします。銀価格が上がると思い、300万円分の銀先物を購入しました。予想通り銀が1.5倍値上がりしたとしたら、銀価格が450万円になったところで反対売買することで150万円の利益を得ることができるのです。この場合、取引業者から150万円を得ることができます。

逆に予想に反して、価格が値下がりし、購入時の半分の価格まで下がったとします。その時点で反対売買することで150万円損失が出ました。この損失分の150万円を数日中に取引業者へ支払わなければなりません。

現物取引では、出資した金額分までしか損失を被りませんが、先物取引では、このように100万円の元手で150万円の損失を被ってしまうようなことがあります。

先物取引ができる商品とは

先物取引がおこなえる商品を以下のとおりです。

商品先物 金融商品先物

・金

・銀

・原油

・とうもろこし

・大豆

・コーヒー

・株式

・債券

・為替

 

先物取引のメリット

先物取引の特徴・メリットを紹介します。

1.買いだけでなく売りからも入れる
先物取引は、買いからも売りからも入れます。現物取引だと買いからしか入れないのに対して、売りから入れる点は先物取引の大きな特徴といえます。つまり、価格が下がると思ったら、売りから入って価格が下がった時に買い戻すと、価格が下がった分利益を得られます。
例)日経平均先物が現在33,000円として、今後下がると予想。
  33,000円で売りから入る
   ↓
  32,000円に下がったので買い戻し
  33,000円-32,000円=1,000円の利益
このように相場が弱く、価格が下がる場面でも利益を得られる取引ができるのが先物取引の大きなメリットといえます。

2.少額から始められる
少額から始められることも大きな特徴です。利用する証券会社や商品先物取引業者に預けたお金(取引証拠金)の3~20倍ほどの取引がおこなえます。例えば、100万円の取引をしようと思えば10万円前後の資金があればおこなえるのです。10万円前後の取引証拠金を担保に100万円を証券会社や商品先物取引業者から借りる形になります。(※証拠金の何倍まで取引できるかは証券会社や商品先物取引業者により異なります)

3.短期間で利益が出やすい
先物取引の対象となる原資産は、値動きが激しいものが多いことが特徴です。原油やとうもろこし、株式や為替など、日々の社会情勢等で大きく値が動いていきます。その流れに乗れば、短期間で利益が得られます。そして少額預けるだけで大きな金額の取引がおこなえるので、さほど大きく値動きしなくても大きな利益を得ることも可能となるのです。

先物取引のデメリット

先物取引には次のようなデメリットがあります。

1.元本が保証されていない
先物取引は「ハイリスク・ハイリターン」商品です。元本は保証されていないため、価格が上がると思って買いで入り、予想に反して価格が下がると損失を被ります。そして価格が下がると思って売りから入り、予想に反して価格が上がると損失を被ります。

2.証拠金の追加が必要となる場合がある
先物取引は少額の取引証拠金を預ければ大きな金額の取引が可能になると前述しました。しかし、取引をおこなっていくなかで損失が拡大してしまうと、追加で証拠金を預けなければならなくなる可能性があります。先物取引では、証拠金に対する取引額の割合が決まっており、その割合を下回ると、最低の割合水準に達するまでの金額を追加で預けなければならなくなります。

3.取引金額が大きくなると、損失も大きくなる可能性がある
取引金額が大きくなると、価格が予想に反した動きをした場合、損失を被る金額も大きくなります。取引証拠金の数倍の金額の取引をおこなうことは、自身の金融資産以上の金額を取引する可能性も出てきます。もし損失を確定させた場合には、その損失額は証券会社や商品先物取引業者に支払わなければなりません。

先物取引と不動産投資の違い

先物取引と不動産投資の大きな違いは、長期的な展望で投資できるかどうかです。先物取引は、短期間で決済をおこなう商品です。取引をおこなう場合、どの先物取引も取引の期日はおおむね数ヶ月と決まっており、長期的な視点で行うことができません。一方、不動産投資は長期的に家賃収入やローン返済などの展望が見やすく、計画的に投資をおこなえます。

先物取引 VS 不動産投資を徹底比較

先物取引と不動産投資の特徴を踏まえ、さまざまな視点から比較してみましょう。

比較項目 先物取引 不動産投資
年金対策 ×
インフレ対策
節税効果
保険効果 ×
下落相場対策 ×
再現性
管理のしやすさ

 

年金対策

年金対策では不動産投資に軍配が上がります。年金対策で投資をおこなうならば、定年後に毎月定期的に安定収入を得られるのが理想です。

先物取引は、短期間で取引を終える商品です。商品を受け渡す期日が数か月後と決められており、その商品を購入するために事前にその時期の価格で購入予約を入れるといったイメージです。

たとえば、原油を6ヶ月先に購入したいが、世界的に景気が上向きそうなので原油の需要がまだ高まっておらず、価格が安い今のうちに先物取引を利用して買っておこうという場合は、先物取引を現物決済としておこなうべきです。そして、景気が上向きだしたら価格が上昇するので、投資目的の人はその価格変動を利用して差金決済で儲けようと投資するのです。

これが30年先の受け渡しだとしたら、どうでしょう。30年先の世界景気など全く予想できません。先物取引は長期投資という概念が存在せず、年金対策をおこなうことができないのです。

一方、不動産投資は年金対策に向いています。不動産投資は毎月定期的に一定額の家賃収入を得られます。そして不動産の耐用年数は建物の構造によります鉄筋コンクリート造だと47年、木造でも22年で、実際にはさらに長期間所有できます。そのため、長い老後の年金の不足分を補ってくれます。

インフレ対策

インフレとは物価の上昇のことをいいます。物価が上昇すると貨幣価値が下がります。そのため、現金を他の資産に換えて物価の上昇率と同等、またはそれ以上に上昇するものを所有しておくことでインフレ対策ができます。

先物取引は、インフレ対策にやや適しています。物価が上昇するタイミングでは金や原油価格も上昇する傾向があります。現金資産を金や原油などの先物取引に投資することはインフレ対策になります。しかし、先物取引は短期間で決済しなければならないので、その効果は一時的なものです。

不動産投資もインフレ対策になります。物価が上がりだすと不動産価格も家賃も上げやすくなります。インフレの局面では不動産のような実物資産を持つことが効果的です。

節税効果

先物取引は節税効果があります。先物取引をおこなう上で、ある単年で損失が出たら、確定申告をおこなうことで翌年以降3年間は利益が出ても損失の繰越控除をおこなうことで相殺できます。その結果、課税所得を抑えることができるのです。

そして、日経225先物やFX取引などとの損益通算もできます。たとえば、ある商品先物をおこなった結果1年間で利益が出ていたとしても、日経225先物やFX取引で損失が出ていたら、損益通算で利益額を圧縮でき、それに伴い課税所得とて納めるべき税金が減るのです。

一方、不動産投資も節税効果があります。不動産投資で発生した損失額は給与所得と損益通算できます。たとえば会社員が不動産投資をおこなっている場合、不動産投資で会計上損失が出たとき、給与所得で出た利益を相殺することにより、課税所得が減り、納めるべき税額が減少します。

保険効果

先物取引に保険効果は期待できません。

一方、不動産投資はローンを組んでおこなっている場合、生命保険代わりに投資できます。不動産投資をおこなう際に金融機関でローンを組むとき、金融機関は団体信用生命保険への加入が必要になります。この団体信用生命保険は、保険の被保険者に万が一のことがあった場合、ローン残債全額を返済してくれるものです。

この場合、不動産に対する借入れは無くなるため、相続人には借入のない不動産が相続され、不動産からの毎月の家賃を100%受け取ることができるのです。

下落相場対策

先物取引は下落相場対策に適しています。先物取引の原資産である原油や金、大豆、そして株式、債券などの相場が下落しそうなとき、売りから入ることにより、予想どおりに下落すれば買い戻すことで利益を得ることができます。

このように先物取引は上げ相場だけでなく、下げ相場でも利益を出すことが可能なため、上手く運用できれば、どのような相場でも利益を出すことができるのです。

一方、不動産投資は不動産相場の下落の対策ができません。家賃が下落しそうな場合の対策としては、リフォームをおこなったり、人気の設備を導入するなどにとどまります。根本的な対策ではないため、効果は限定的です。

再現性

先物取引は再現性がない場合が多いです。刻一刻と変動する先物価格は、随時変化する社会情勢や金利水準、気候など、さまざまな要因が相まって価格が決まっています。その時点での環境に臨機応変に対応することが必要となります。ただ、金利が上がるときは金価格が、原油が世界的に増産されるときは原油価格が下落するなど、各原資産によって価格上昇要因や下落要因があるため、このような場合は再現性があるといえます。

一方、不動産投資には再現性があります。さらには、セキュリティ機能が整備されている物件は女性に人気があったり、インターネット環境が整っている物件が人気だったりと、空室が出にくい物件の傾向が不動産にはあります。そのため、そのような物件を購入したりリフォームしたりすることで、不動産投資の成功率が高まるでしょう。

管理のしやすさ

先物取引は、現物を所有するわけではないため管理しやすいでしょう。証券会社や先物取引業者の口座で取引を管理するため、特におこなうことはありません。ただ、先物取引は価格変動が激しいため、社会情勢の把握や価格の確認をしていないと気づいたときには大損する可能性があります。

一方、不動産投資は、物件や入居者の管理が必要です。物件の管理では、切れた電球の取り換えや、屋根や外壁の修繕、入居者の管理は、入居者の募集や苦情、要望への対応などをおこないます。ただし、委託料を支払うことで管理は不動産管理会社に一任できます。

先物取引と不動産投資を組み合わる

目的が長期運用のみならば、不動産投資一択となります。

ただ、資金と時間に余裕がある場合は、先物取引と不動産投資の組み合わせ運用をおこなうことも選択肢の1つです。先物取引で数ヶ月単位の短期運用をこまめにおこないつつ、資産運用の軸として不動産投資をおこなって毎月安定収入を得るというスタイルです。

その際、先物取引はハイリスク・ハイリターン商品のため、生活に支障のない余裕資金のみでおこなうことが大切です。
そして、一定額を損切ラインに設定しておくと、大きな損失を被らずに済むでしょう。

まとめ

今回は、先物取引と不動産投資、投資先ならどちらがお得なのかを検証しました。先物取引と不動産取引は性格がまったく異なります。先物取引や短期運用、不動産取引は長期運用に適しています。そしてリスク分類も先物取引がハイリスク・ハイリターンなのに対し、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンです。
それぞれの商品特性と自身の投資スタイルを勘案して商品を選択し、賢く資産運用をおこないましょう。
ベルテックスでは不動産投資やその他の資産運用にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。