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2024.09.18
ベルテックスコラム事務局
不動産投資で損しないためには?失敗例や知っておくべきリスクを解説!
- リスク
「サラリーマン大家」という言葉が広く使われているように、近年、不動産投資は多くの人々に豊かな人生・老後を与える1つの手段となっています。しかし、一部では不動産投資で思ったような収益性を得られず、「割に合わない」と嘆く声があがっています。地価やマンション価格の上昇により資産価値の増加も期待できる「不動産投資」において、なぜそのように言われるのでしょうか。
この記事では、不動産投資が「割に合わない」という声について、その理由や背後に潜むリスク・失敗例について解説していきます。
不動産投資が「割に合わない」「やめとけ」と言われる主な3つの理由
多様な投資ジャンルがある中で、「不動産投資はやめておけ」という投資家が一定層の割合で存在します。理由は様々ですが、その意図としては「他の投資と比較すると割に合わないから」という意見が多いです。
不動産投資の否定派から聞かれる理由は、主に「リスク」「収益性」「手間」の3つに見られます。
理由1:リスクが高い、かつ多様である
どんな投資においてもリスクは付きものですが、不動産投資は投じる金額の大きさゆえに「高リスク」と捉えられてしまいます。また、金融機関からの借入を行う信用取引に関わるのも、敬遠されてしまう大きな理由でしょう。
しかし、実際にはこの他にも多くのリスクがあり、運用中もアンテナを張っておかなければなりません。
常時隣り合わせの空室リスク
不動産投資の最大の課題・リスクは「空室」です。
不動産投資は入居者からの家賃収入がなくても、毎月待ったなしでローン返済が必要です。空室中のローン返済には給与・貯蓄の切り崩しが必要で、保有する現金がどんどん減ってしまうのです。このような状況が続くと、その後に入居者が入っても「いつ退去してしまうのか」という不安が勝り、精神的に落ち着かないかもしれません。
また、先を見据えている投資家からは「不動産投資は将来性が見込みづらい」と指摘されているのも大きな要因です。
総務省が5年ごとに調査・公表している「住宅・土地統計調査」によれば、全国の賃貸用住宅における空室率の推移は右肩上がりの状況で、平成30年には「18.5%」と過去最高を記録しています。1,000万円以上の資金を金融機関から借入するにもかかわらず、空室率が将来に向かって上昇の一途を辿っているとなれば「割に合わない」という気持ちは分からなくもありません。
突発的な発生で資金不足となる修繕リスク
同様に不動産投資における大きなリスク要因とされるのが「修繕リスク」です。
修繕リスクには、経年により老朽化する建物のメンテナンス、突発的な故障による設備修理・交換、退去者の原状回復など、様々な内容があります。マンション全体の大規模修繕の費用が足りず、毎月の固定費である「修繕積立金」が値上がり、キャッシュフローへ打撃を与えることもあり得ます。
予見できない修繕が突発的に発生し、かかる修繕コストが高額であるため計画性がないと資金不足に陥りがちです。ただし、修繕費は毎月の積み立てが必要ですが、中古物件で購入直後に修繕が発生したり、積み立てた金額以上の出費になったりすることもあります。
また、オーナーが資金不足で修繕を怠ることにより、入居者が怪我など被害に合うケースが全国的に続出しています。被害による損害賠償を請求されてしまえば、資産形成の目的でスタートした不動産投資も本末転倒です。
入居者へ安全・快適な住居の提供、資産価値の下落防止のためにも、オーナーは物件の修繕が不可欠です。
キャッシュフローの悪化に繋がる家賃下落リスク
不動産投資で忘れてはいけないのが、経年とともに潜む「家賃下落リスク」です。
不動産には「新築プレミアム」という言葉があるように、新築物件は「誰も使っていない」という特別な付加価値があり、プレミアム価格(高額)が設定されています。「居住した瞬間に下がる価値」とも言われており、新築から数年は家賃の下落率が特に高くなり、築20年程度から緩やかな下落の推移を辿ります。
株式会社三井住友トラスト基礎研究所の「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」の調査結果によれば、賃貸物件は長期的に換算すると年間1%程度の家賃下落が見られているようです。
事前のシミュレーションに用いるには有効的な値ですが、周辺に競合物件が多くあるエリアや、資産価値の下落が著しいエリアなどでは1%以上となることも容易に想像できます。
一度下がってしまった家賃を上げることは難しくキャッシュフローが悪化してしまい、採算が合わない、つまり「割に合わない」と言われてしまうのでしょう。
赤字に転落する資産価値下落リスク
不動産投資は一見すると「家賃収入」による不労所得がメリットとして表に立ちますが、収益性を図るうえでは「売却益」も非常に重要な要素になります。
売却価格を下落させないためには、資産価値を維持しなくてはなりません。資産価値を維持するための大きなポイントは購入時のエリア選定に見られますが、国内外の社会情勢や金利変動、建物のメンテナンス状況など様々な要因で資産価値が決まります。
毎月の家賃収入を得られていても、修繕コストの増加・建物の資産価値下落によってトータル赤字もあり得ることを覚えておきましょう。
代表例として大分県では大手電機メーカーキャノンの工場撤退により需要が下落し、周辺一帯の家賃相場が急落した事例があります。昨今、インフレによるコストの増加や人手不足により、全国各地でこのような工場閉鎖が相次いでいます。
また、出生率の低下から、今までは人の流れを確保できていた「大学の近く」という立地も考えものになってきました。購入時の不動産価格が上昇している状況からも、売却益を考えると今後ますます割に合わないと言われるかもしれません。
定期的につきまとう金利変動リスク
不動産投資の醍醐味である家賃収入をプラスにするには、良好なキャッシュフローの定着が必要です。より良いキャッシュフローにするため、不動産投資でローンを組む際には大多数が変動金利を選択しています。
変動金利は半年に一度の見直しがあり、「次は金利の上昇が起こらないか」と定期的に不安がつきまといます。特に不動産価格の高騰中に発生した新型コロナウイルスの影響や、近年の不安定な世界情勢を鑑みると、金利はいつどのように上昇するのか予測もつきません。
一度上昇した変動金利は半年間変わらないこと、また半年後にはさらに上昇するリスクもあることで不動産投資を投資候補から除外してしまう人もいると考えられます。
予測できない災害リスク
上記で解説したリスクよりも可能性こそ高くないものの、「予想外の災害に見舞われること」で大きな損失を生んでしまうケースもあります。
通常、台風や豪雨による災害で建物に影響があると、火災保険の要件を満たしている場合には損害部分の修繕費用は保険金がおります。総合的なバランスを計算しながらなるべく手厚い保険への加入が必要ですが、不運にも保険金がすぐにおりないケースもあるのです。
例えば、2019年9月に発生した「市原ゴルフガーデン鉄柱倒壊事故」では、関東地方に上陸した台風15号の強風により、千葉県市原市でゴルフ練習場のネットを支えていた鉄柱が倒壊しました。鉄柱の倒壊により周辺の住宅が破壊され、負傷する住民が出るなど大きな被害を与えています。
当時ニュースでも注目を浴びた事件ですが、ゴルフ場運営側の賠償責任の有無や対象範囲が問題となり、弁護士が介入する大きな問題で修繕までに時間を要しました。
稀ではありますが、この事件を投資用物件に置き換えて考えると、入居者は退去もしくは修繕中ホテル住まいなどを余儀なくされ、その間の家賃収入はありません。
また、ホテル住まいなど別宅の用意費用に関しては補償対象でない可能性もあり、オーナー側に負担が強いられるなど災害リスクは大きな不安要素となります。
法律の知識を要する入居者トラブルリスク
理由3でも後述しますが、不動産投資は専門的な知識を要するため常に学習の姿勢が大切です。
近年、家賃保証会社の普及により滞納に関するオーナー負担は大きく減少しましたが、それでも良い入居者ばかりではなく様々なトラブルに直面します。
一般的に建物の管理委託をしている場合、不動産管理会社がトラブル解決に向けて中立の立場で施策してくれますが、それでも解決が難しい場合は裁判へ発展してしまいます。
弁護士に依頼するにしても、入居者とのトラブルには多くの法律の知識がもとめられ、調査や資料の用意に時間が必要です。
これらの理由から「ほったらかし投資」で手間がかからないはずなのに「割に合わない」と言われてしまいます。
【おすすめ関連記事】不動産投資における10つのリスクと失敗しないための対策を解説
理由2:取得費用が高く利益回収までが長期戦
次の理由は、不動産投資は「収益性」が悪いと考えられていることです。そもそも株式やFXと運用の趣旨そのものが違うため、不動産投資のメカニズムを知ることが必要です。
長期の投資期間が必要
まず、不動産投資のスタイルは「長期運用」が基本スタンスとなります。毎月コツコツと地道に実績を積み上げることで、成功へと近づいていきます。
「投資」というと一攫千金をイメージする人が多くいますが、投資の運用法や収益性は様々です。しいて言えば、不動産投資は「つみたてNISA」や「iDeCo」と類似していると考えておきましょう。
売却益については、バブル期こそ「土地ころがし」という言葉が生まれたように短期所有でも上手く儲けられました。しかし、規制が厳しくなった現在では一般の消費者が購入できる物件において、そう簡単に短期間での売却益は狙えません。
収益物件購入までに時間・労力がかかる
収益物件の購入には意外と多くの時間を要し、もちろんそれに対する労力もかかります。
マイホーム購入と同じで、不動産は巡り合いです。「フィーリングによる自分が気に入った物件である」かつ「立地や収益性も重要である」となると、希望に合う物件はほんの一握りしかありません。
一般的に収益物件を探す多くの人は「投資物件専用のポータルサイト」を利用しますが、日本全国の顧客がターゲットとなるため、本当に良い物件は掲載後の数時間で売却が決まります。心を決めて買付を入れても2番手だった、という状況もよくあります。
物件を探しているうちに目的を見失ってしまったり、疲れて機会を逃してしまったりする人もいますので、すぐに物件を購入できるという考えは誤りです。
【おすすめ関連記事】不動産投資で優良物件に出会うには?具体的な探し方と6つのポイント
一度に大きな利益が出づらい
不動産投資は一度に大きな利益が出せる投資法ではありません。
金額が大きいため勘違いされやすいですが、家賃収入で毎月利益が発生していても突発的な修繕に備えた積み立てが必要です。不動産投資の広告などでは簡易的な値で算出される「表面利回り」で記載されることが多く、ある程度の利益を確保できると勘違いしてしまう人がいます。
実際には、不動産経営にかかる「経費」を差し引いた「実質利回り」を軸に考えることが大切で、毎月の儲けは意外と少ないのが不動産投資の仕組みです。
実質利回りの数値を見て、初期費用が高いわりに毎月の収益性が低いことも「割に合わない」と思われる要因になっています。
理由3:不動産投資における日々の学習が必要
不動産投資はプロでも日常のニュースなどアンテナを張り、情報収集をしています。不動産に関する知識付けが大変だから、不動産投資には手を出したくないという投資家もいるようです。
税金や確定申告の知識が求められる
家賃収入として得た「不動産所得」は毎年確定申告が必要となります。
確定申告に慣れない会社員はそれだけでハードルが高いですが、建物の減価償却計算など申告内容も少し複雑です。また、給与所得との損益通算についても、不動産投資のメリットでありながら実際の申告になると事務的な手間が煩わしいと感じるでしょう。
税金に関しては、相続税が安いなどのメリットを享受できる反面、毎年行われる改正でその都度新たな情報を更新する必要があります。確定申告を税理士へ依頼すれば素早く解決できますが、小さい規模の物件でも3~4万円程度の余計な出費となってしまい一概に良策とは言えません。
ネット検索や税務署へ赴く時間・手間が割に合わないのかどうか、判断が分かれるところです。
【おすすめ関連記事】不動産投資の減価償却とは?計算方法と税金が安くなる仕組みを解説
管理会社がいても管理面の知識は必要
税金や確定申告よりも難易度は低めですが、管理面の勉強もしなくてはなりません。
不動産会社に管理を委託する場合でも、例えば管理会社からの修繕提案に対する見積もり・費用が妥当かどうか判断するのはオーナー業の務めです。実績豊富で良心的な管理会社であればとりわけ問題はありませんが、中には修繕で入居者やオーナーから高い利益を得ようとする管理会社もあります。
また、火災保険の適用範囲となる修繕が発生した場合、保険会社に修繕金額が適正でないと判断されてしまうと、その後の保険適用事案にも影響を与えかねません。
自分の身は自分で守るために、任せきりではなく正しい知識を付けることが必要です。
失敗例について学ぶことも大切
不動産投資の運用開始後に「割に合わない」と言う人は、リスク・失敗に対する事前シミュレーションが甘いことが特徴の1つに挙げられます。
メリットや前向きなシミュレーションよりも、不動産投資はリスク・失敗例からあらかじめ入念に対策を練っておくことが重要です。よくある失敗例の事案を後述しますので、これから不動産投資を検討している方は参考にしてみてください。
不動産投資が「割に合わないと感じる人」「向いていない人」の特徴
不動産投資を「割に合わない」と感じる人は、そもそも選択する投資法として向いていない恐れがあります。以下で解説する特徴に当てはまるかどうか、一度自己分析してみると良いでしょう。
投資で短期間に大きな儲けを出したい人
1つ目は、「短期間に大きな儲けを出す」ことを目的として投資を始める人です。
そもそも不動産投資は短期間に大きな利益を出す手法ではなく、売却で得られる譲渡所得においても、5年を境とする短期譲渡より長期譲渡の方が税率は安くなります。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期間で儲けたいと考える人は、傾向として株式やFXの方が投資法として向いています。
不動産投資にまわせる自己資金が少ない人
2つ目は、運用中の十分な資金を準備していない人です。
物件購入で融資を受けるためには、物件価格のおおよそ2~3割にあたる現金の準備が必要となります。ただし、その額が貯まったからスタートではありません。
不動産投資は空室や修繕など緊急事態に対応しなくてはならず、融資の頭金とは別枠として資金の用意が必要です。緊急事態に備えた金額は一概にいくらという基準はありませんが、この考え無しに運用を開始してしまうと資金繰りの悪化に陥ります。
不動産投資に関するリスクに理解がない人
3つ目は、不動産投資のリスクシミュレーションをしていない人です。
不動産投資はリスクが高いと言われますが、多くのリスクは事前に予想することができます。購入前に様々なシーンに直面したときの予測立てやリスクの払拭が非常に大切で、これによりリスク許容度を大幅に軽減できます。
しかし、この予測立てを怠る人があまりに多く、不動産投資は失敗すると言われる要因になっているようです。
勉強・情報収集が苦手で他人任せの人
最後は、自分で知識付け・情報収集をしない人です。
不動産投資会社の勧誘広告・DMなどで「管理が一任できる」「毎月の収支確認だけ」と、オーナーの負担がほとんどないといった内容が見られます。この記載は間違いではありませんが、誤解を生む文言です。
成功している不動産オーナーは勉強家の人が非常に多く、自ら積極的に学び情報収集の時間や手間を惜しみません。実際に購入前に昼夜10回以上物件を見に行く人もいます。
この考えに反する人は、不動産投資にはあまり向いていないと言えそうです。
本当に「割に合わない」?不動産投資独自のメリットや強み
ここまで不動産投資に関する否定的な意見を中心に述べましたが、実際のところ「割に合わない」というのは本当なのでしょうか。検証材料として、不動産投資独自にみられるメリット・強みを5つご紹介します。
インフレ対策
昨今まさに問題になっている物価上昇によってお金の価値が低下していくインフレ下で、現物資産である不動産は物価とともに価格が上昇する傾向にあります。
また、不動産価格の高騰が著しい東京都においては、ワンルームマンション・ファミリーマンションともに家賃が上昇している状況です。インフレによりキャッシュフローが好転する可能性もあり、心強いインフレ対策となります。
生命保険代わりになる
金融機関から融資を受ける際に加入する「団体信用生命保険」の効果で、生命保険代わりにもなります。団体信用生命保険とはローン契約者が死亡、もしくは高度障害状態でローン返済能力がなくなった場合、残りのローン返済を保険でまかなえる制度です。
自分が死亡した後に不動産を相続することで、「毎月継続的な家賃収入」もしくは「売却によるまとまった現金」いずれかを遺すことができます。
不動産は現金よりも相続税の税率が低いので、不動産投資に限らず賢く選択していきたいものです。
レバレッジ効果を得られる
不動産投資の大きな特徴として、レバレッジ効果があります。
普段あまり聞き馴染みのない言葉ですが、金融機関からの融資を利用して自己資金だけでは得られなかった高い収益性をあげられることです。融資を活用しリスク分散しながら複数の物件を所有していくと、より高いレバレッジ効果が得られます。
金融機関からの借入に消極的な意見がある反面、借入によって高い効果があることを念頭に置いておきましょう。
節税効果を期待できる
不動産投資には税負担の軽減が期待できます。節税効果を得られる税金の種類は主に下記の5つです。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税
- 法人税
節税効果を得られるかどうかは、人それぞれの置かれている状況次第で一概に「絶対」ではありません。節税に関してはおおまかに「メリット」として効果を期待するのではなく、自分の状況ではどのような節税効果があるのか知っておくことが重要です。
私的年金代わりになる
不動産投資を始める理由として多いのが「私的年金」を目的とする声です。
運用に行き詰っている人からローン返済中の空室リスクに苦しむ声も聞かれますが、ローン完済後は毎月の家賃収入をまるまる手元に残すことができます。退職金代わりとしたい場合は、売却することで一括現金化も可能です。
ローン返済中、毎月の収支にマイナスが出ているから「割に合わない」ではなく、売却益や将来を見据えた総合的な判断をしましょう。
不動産投資のよくある失敗例とは?
先に解説した不動産投資が割に合わないと言われる理由を抑えている人といない人では、賃貸経営成功の可否が明確に分かれます。失敗する人によくある例を下記にピックアップしました。
失敗例1:不動産会社や他人の話を鵜呑みにする
失敗する人の代表例として多いのが、人の話を精査せず鵜呑みにするケースです。
特に「すでに成功している人がおすすめした物件だから購入した」というパターンが多く見受けられます。例えば、大家の交流会などで出会った成功者からの情報提供です。貴重な情報源である一方、本当に優良物件であれば赤の他人に教えず自分で購入するはずで、不動産会社の紹介制度による報酬欲しさに勧めている可能性もあります。
また、不動産会社にとってこれから不動産投資の購入を検討している初心者投資家は、まさに格好の餌食です。不動産業界内でも価格競争があり、「物件を高く仕入れてしまった」というのはどの業者でもあります。会社として在庫を持ち続けるわけにはいかず、売ることが仕事である営業マンは初心者投資家を上手くその気にさせてくるでしょう。
このような「業者が売りたい物件」を正確に見極め、購入してしまわないように注意しましょう。
失敗例2:立地よりも利回りを重視する
こちらもよくある例で、利回りを気にしすぎて立地を妥協してしまうパターンです。
過去の賃貸住宅に関する統計から、利回りは都心よりも地方の方が高いことが明らかになっています。要因は、地方の建物取得費が安いからです。建物取得費の安さと高利回りに安堵して購入を決めてしまうと、家賃と資産価値の値崩れに見舞われてしまうかもしれません。特に一棟アパートはエリアのリスク分散ができないので、より一層慎重さが求められます。
また、入居者確保の点で言うと、都心よりも地方の方が広告費は高い傾向にあります。業界では「AD」とも呼ばれている広告費で、物件を決めてくれた仲介業者に支払う報酬のことです。一般的には家賃の1ヵ月程度で設定されているケースが多く、広告費が高いほど優先的に部屋を紹介してもらえます。
地方では、この広告費が家賃の3~4ヵ月分に設定されているケースも見られます。初心者はなかなか知らない情報ですので、注意が必要です。
物件選びは立地を重視した上で、見えない経費を洗い出して「実質利回り」を見るようにしましょう。
失敗例3:不動産管理会社の比較をしなかった
「失敗例1」で挙げた人に共通して見られるのは、「不動産管理会社の比較不足」による失敗です。
不動産管理会社にもそれぞれ特徴があり、良心的な会社とそうでない会社があります。実際に不動産会社が利益欲しさに退去部屋の設備をわざと壊し、原状回復費用としてオーナーへ請求する会社もあると言います。世間では少し前に中古車販売の企業で類似事件が話題になりましたが、不動産業界でも同様な事案をする会社が少なからずあります。
また、信頼できそうな不動産会社が見つかっても管理委託契約を締結する際は、内容をしっかりと精査しましょう。例えば、原状回復時のルームクリーニング費用など発生頻度が高い支出項目や、設備交換が発生した場合の対処法および発注先など、細かな部分を把握しておくとよいでしょう。
不動産管理会社が何をどのようにやってくれるのか、それに対していくらの対価を支払うのか、あまり繋がりがないと思われがちですがキャッシュフローへ密接に関わることです。
失敗例4:事前の収支シミュレーションが不十分
不動産投資に失敗するほとんどの人は、事前の収支シミュレーションが不十分という共通点があります。
収支シミュレーションは緻密な計算をし、多様なパターンで行うことが大切です。
【シミュレーション要素の一例】
金利 | 空室率 | 家賃下落 | 管理方法 |
---|---|---|---|
・固定金利 ・変動金利 |
・年5% ・年10% ・年20% |
・年1% ・年2% |
・自主委託 ・全部委託管理 ・サブリース契約 |
上記はキャッシュフローに大きく関係する項目のほんの一例ですが、それだけでも組み合わせると多様なシミュレーション結果が出るでしょう。他にも退去が出た場合にかかる想定費用など、複数の試算をするのは大変ですが、不動産投資を成功させるには必要不可欠です。
不動産投資を「割に合わない」から「成功」という考えに導くには
不動産投資は割に合わないからやめとけと言う人がいますが、「割に合わない=失敗」ではありません。「割に合わない」から「成功」へと考えを改めるには、下記5つのポイントを不動産投資の軸に置きましょう。
不動産投資のリスクやスタイルを理解する
投資ではリスクとリターンは相関関係にあります。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン、株式・FXはよりリスクの高いハイリスク・ハイリターンの位置づけです。「不動産投資はリスクが高い」という認識は、事前予測とシミュレーションで大きく変わっていきます。短期間で儲けを出すのではなく、長期間でゆっくりと資産を築く投資スタイルでかまえましょう。
不動産投資で発生する費用・税金を把握する
不動産投資には細かな出費が意外と多くあります。
修繕費と一口にいっても建物修繕と室内修繕があり、室内修繕にも設備故障と原状回復があります。利回りに注視しがちですが、発生しうる費用や税金についてきちんと把握しておきましょう。
【一定要件を満たした場合にかかる税金一覧】
購入時 | 不動産取得税、印紙税、登録免許税、消費税 |
---|---|
運用時 | 固定資産税、都市計画税、所得税、住民税 |
売却時 | 譲渡所得税、住民税、復興特別所得税、印紙税、登録免許税 |
相続時 | 相続税 |
今後の資産価値が見込める物件を購入する
購入価格より著しい値崩れがないよう、キャッシュフローと同様に売却益が見込める物件を見極めましょう。出生数の減少、転入者数、再開発によるエリア需要などを加味すると、将来的に一定の人口を確保できる都心がおすすめと言えそうです。
需要が高まるほど資産価値は上昇していきますので、郊外を選定する際は需要減からくる家賃・資産価値の下落に注意してください。
自己資金と選定する物件の収益性が適正かどうかを見極める
割に合わないと考える人の多くは、「高額な資金を投じた」ことに対する潜在的な損失意識があります。高額な初期費用を一刻も早く取り戻したいと思う気持ちは分かりますが、そもそも投じる金額と収益に対する理解が必要です。
物件の購入価格、自己資金、返済期間など様々な条件によって収支計画が異なってくるため、総合的なバランスを見て「割に合う」と思える運用をしていきましょう。
信頼関係を築ける不動産会社を見つける
不動産投資ではどうしても物件・利回りに目がいきがちですが、物件とともに信頼できる不動産会社を選定し、長い付き合いをするようにしましょう。
運用後においても合わなければ別の会社に変えよう、と安易に考えてはいけません。管理委託契約には5年など一定の期間が設けられ、管理変更となると高額な違約金が発生する場合があります。
また、一度サブリース契約を結んでしまうと、なかなか解約ができないといった事例も見られます。購入・運用ともに任せられる、自分にとって最適な不動産会社を見つけましょう。
まとめ
この記事では「不動産投資は割に合わない」と言われる理由や失敗例から、その真偽を解説しました。
不動産投資はどうしても「空室リスク」や「借入リスク」が表立ってしまうことから、購入金額の高さや利益からすると割に合わないと思われてしまいます。
しかし、不動産投資は短期間に大きな利益を出す投資手法ではなく、その本質や運用スタイルを理解することで見方が変わってきます。地道な積み重ねによる手法を理解し、事前の収支計画とリスクシミュレーションを入念に行うことで「割に合う」投資法となるでしょう。
ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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「サラリーマン大家」という言葉が広く使われているように、近年、不動産投資は多くの人々に豊かな人生・老後を与える1つの手段となっています。しかし、一部では不動産投資で思ったような収益性を得られず、「割に合わない」と嘆く声があがっています。地価やマンション価格の上昇により資産価値の増加も期待できる「不動産投資」において、なぜそのように言われるのでしょうか。
この記事では、不動産投資が「割に合わない」という声について、その理由や背後に潜むリスク・失敗例について解説していきます。
不動産投資が「割に合わない」「やめとけ」と言われる主な3つの理由
多様な投資ジャンルがある中で、「不動産投資はやめておけ」という投資家が一定層の割合で存在します。理由は様々ですが、その意図としては「他の投資と比較すると割に合わないから」という意見が多いです。
不動産投資の否定派から聞かれる理由は、主に「リスク」「収益性」「手間」の3つに見られます。
理由1:リスクが高い、かつ多様である
どんな投資においてもリスクは付きものですが、不動産投資は投じる金額の大きさゆえに「高リスク」と捉えられてしまいます。また、金融機関からの借入を行う信用取引に関わるのも、敬遠されてしまう大きな理由でしょう。
しかし、実際にはこの他にも多くのリスクがあり、運用中もアンテナを張っておかなければなりません。
常時隣り合わせの空室リスク
不動産投資の最大の課題・リスクは「空室」です。
不動産投資は入居者からの家賃収入がなくても、毎月待ったなしでローン返済が必要です。空室中のローン返済には給与・貯蓄の切り崩しが必要で、保有する現金がどんどん減ってしまうのです。このような状況が続くと、その後に入居者が入っても「いつ退去してしまうのか」という不安が勝り、精神的に落ち着かないかもしれません。
また、先を見据えている投資家からは「不動産投資は将来性が見込みづらい」と指摘されているのも大きな要因です。
総務省が5年ごとに調査・公表している「住宅・土地統計調査」によれば、全国の賃貸用住宅における空室率の推移は右肩上がりの状況で、平成30年には「18.5%」と過去最高を記録しています。1,000万円以上の資金を金融機関から借入するにもかかわらず、空室率が将来に向かって上昇の一途を辿っているとなれば「割に合わない」という気持ちは分からなくもありません。
突発的な発生で資金不足となる修繕リスク
同様に不動産投資における大きなリスク要因とされるのが「修繕リスク」です。
修繕リスクには、経年により老朽化する建物のメンテナンス、突発的な故障による設備修理・交換、退去者の原状回復など、様々な内容があります。マンション全体の大規模修繕の費用が足りず、毎月の固定費である「修繕積立金」が値上がり、キャッシュフローへ打撃を与えることもあり得ます。
予見できない修繕が突発的に発生し、かかる修繕コストが高額であるため計画性がないと資金不足に陥りがちです。ただし、修繕費は毎月の積み立てが必要ですが、中古物件で購入直後に修繕が発生したり、積み立てた金額以上の出費になったりすることもあります。
また、オーナーが資金不足で修繕を怠ることにより、入居者が怪我など被害に合うケースが全国的に続出しています。被害による損害賠償を請求されてしまえば、資産形成の目的でスタートした不動産投資も本末転倒です。
入居者へ安全・快適な住居の提供、資産価値の下落防止のためにも、オーナーは物件の修繕が不可欠です。
キャッシュフローの悪化に繋がる家賃下落リスク
不動産投資で忘れてはいけないのが、経年とともに潜む「家賃下落リスク」です。
不動産には「新築プレミアム」という言葉があるように、新築物件は「誰も使っていない」という特別な付加価値があり、プレミアム価格(高額)が設定されています。「居住した瞬間に下がる価値」とも言われており、新築から数年は家賃の下落率が特に高くなり、築20年程度から緩やかな下落の推移を辿ります。
株式会社三井住友トラスト基礎研究所の「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」の調査結果によれば、賃貸物件は長期的に換算すると年間1%程度の家賃下落が見られているようです。
事前のシミュレーションに用いるには有効的な値ですが、周辺に競合物件が多くあるエリアや、資産価値の下落が著しいエリアなどでは1%以上となることも容易に想像できます。
一度下がってしまった家賃を上げることは難しくキャッシュフローが悪化してしまい、採算が合わない、つまり「割に合わない」と言われてしまうのでしょう。
赤字に転落する資産価値下落リスク
不動産投資は一見すると「家賃収入」による不労所得がメリットとして表に立ちますが、収益性を図るうえでは「売却益」も非常に重要な要素になります。
売却価格を下落させないためには、資産価値を維持しなくてはなりません。資産価値を維持するための大きなポイントは購入時のエリア選定に見られますが、国内外の社会情勢や金利変動、建物のメンテナンス状況など様々な要因で資産価値が決まります。
毎月の家賃収入を得られていても、修繕コストの増加・建物の資産価値下落によってトータル赤字もあり得ることを覚えておきましょう。
代表例として大分県では大手電機メーカーキャノンの工場撤退により需要が下落し、周辺一帯の家賃相場が急落した事例があります。昨今、インフレによるコストの増加や人手不足により、全国各地でこのような工場閉鎖が相次いでいます。
また、出生率の低下から、今までは人の流れを確保できていた「大学の近く」という立地も考えものになってきました。購入時の不動産価格が上昇している状況からも、売却益を考えると今後ますます割に合わないと言われるかもしれません。
定期的につきまとう金利変動リスク
不動産投資の醍醐味である家賃収入をプラスにするには、良好なキャッシュフローの定着が必要です。より良いキャッシュフローにするため、不動産投資でローンを組む際には大多数が変動金利を選択しています。
変動金利は半年に一度の見直しがあり、「次は金利の上昇が起こらないか」と定期的に不安がつきまといます。特に不動産価格の高騰中に発生した新型コロナウイルスの影響や、近年の不安定な世界情勢を鑑みると、金利はいつどのように上昇するのか予測もつきません。
一度上昇した変動金利は半年間変わらないこと、また半年後にはさらに上昇するリスクもあることで不動産投資を投資候補から除外してしまう人もいると考えられます。
予測できない災害リスク
上記で解説したリスクよりも可能性こそ高くないものの、「予想外の災害に見舞われること」で大きな損失を生んでしまうケースもあります。
通常、台風や豪雨による災害で建物に影響があると、火災保険の要件を満たしている場合には損害部分の修繕費用は保険金がおります。総合的なバランスを計算しながらなるべく手厚い保険への加入が必要ですが、不運にも保険金がすぐにおりないケースもあるのです。
例えば、2019年9月に発生した「市原ゴルフガーデン鉄柱倒壊事故」では、関東地方に上陸した台風15号の強風により、千葉県市原市でゴルフ練習場のネットを支えていた鉄柱が倒壊しました。鉄柱の倒壊により周辺の住宅が破壊され、負傷する住民が出るなど大きな被害を与えています。
当時ニュースでも注目を浴びた事件ですが、ゴルフ場運営側の賠償責任の有無や対象範囲が問題となり、弁護士が介入する大きな問題で修繕までに時間を要しました。
稀ではありますが、この事件を投資用物件に置き換えて考えると、入居者は退去もしくは修繕中ホテル住まいなどを余儀なくされ、その間の家賃収入はありません。
また、ホテル住まいなど別宅の用意費用に関しては補償対象でない可能性もあり、オーナー側に負担が強いられるなど災害リスクは大きな不安要素となります。
法律の知識を要する入居者トラブルリスク
理由3でも後述しますが、不動産投資は専門的な知識を要するため常に学習の姿勢が大切です。
近年、家賃保証会社の普及により滞納に関するオーナー負担は大きく減少しましたが、それでも良い入居者ばかりではなく様々なトラブルに直面します。
一般的に建物の管理委託をしている場合、不動産管理会社がトラブル解決に向けて中立の立場で施策してくれますが、それでも解決が難しい場合は裁判へ発展してしまいます。
弁護士に依頼するにしても、入居者とのトラブルには多くの法律の知識がもとめられ、調査や資料の用意に時間が必要です。
これらの理由から「ほったらかし投資」で手間がかからないはずなのに「割に合わない」と言われてしまいます。
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理由2:取得費用が高く利益回収までが長期戦
次の理由は、不動産投資は「収益性」が悪いと考えられていることです。そもそも株式やFXと運用の趣旨そのものが違うため、不動産投資のメカニズムを知ることが必要です。
長期の投資期間が必要
まず、不動産投資のスタイルは「長期運用」が基本スタンスとなります。毎月コツコツと地道に実績を積み上げることで、成功へと近づいていきます。
「投資」というと一攫千金をイメージする人が多くいますが、投資の運用法や収益性は様々です。しいて言えば、不動産投資は「つみたてNISA」や「iDeCo」と類似していると考えておきましょう。
売却益については、バブル期こそ「土地ころがし」という言葉が生まれたように短期所有でも上手く儲けられました。しかし、規制が厳しくなった現在では一般の消費者が購入できる物件において、そう簡単に短期間での売却益は狙えません。
収益物件購入までに時間・労力がかかる
収益物件の購入には意外と多くの時間を要し、もちろんそれに対する労力もかかります。
マイホーム購入と同じで、不動産は巡り合いです。「フィーリングによる自分が気に入った物件である」かつ「立地や収益性も重要である」となると、希望に合う物件はほんの一握りしかありません。
一般的に収益物件を探す多くの人は「投資物件専用のポータルサイト」を利用しますが、日本全国の顧客がターゲットとなるため、本当に良い物件は掲載後の数時間で売却が決まります。心を決めて買付を入れても2番手だった、という状況もよくあります。
物件を探しているうちに目的を見失ってしまったり、疲れて機会を逃してしまったりする人もいますので、すぐに物件を購入できるという考えは誤りです。
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一度に大きな利益が出づらい
不動産投資は一度に大きな利益が出せる投資法ではありません。
金額が大きいため勘違いされやすいですが、家賃収入で毎月利益が発生していても突発的な修繕に備えた積み立てが必要です。不動産投資の広告などでは簡易的な値で算出される「表面利回り」で記載されることが多く、ある程度の利益を確保できると勘違いしてしまう人がいます。
実際には、不動産経営にかかる「経費」を差し引いた「実質利回り」を軸に考えることが大切で、毎月の儲けは意外と少ないのが不動産投資の仕組みです。
実質利回りの数値を見て、初期費用が高いわりに毎月の収益性が低いことも「割に合わない」と思われる要因になっています。
理由3:不動産投資における日々の学習が必要
不動産投資はプロでも日常のニュースなどアンテナを張り、情報収集をしています。不動産に関する知識付けが大変だから、不動産投資には手を出したくないという投資家もいるようです。
税金や確定申告の知識が求められる
家賃収入として得た「不動産所得」は毎年確定申告が必要となります。
確定申告に慣れない会社員はそれだけでハードルが高いですが、建物の減価償却計算など申告内容も少し複雑です。また、給与所得との損益通算についても、不動産投資のメリットでありながら実際の申告になると事務的な手間が煩わしいと感じるでしょう。
税金に関しては、相続税が安いなどのメリットを享受できる反面、毎年行われる改正でその都度新たな情報を更新する必要があります。確定申告を税理士へ依頼すれば素早く解決できますが、小さい規模の物件でも3~4万円程度の余計な出費となってしまい一概に良策とは言えません。
ネット検索や税務署へ赴く時間・手間が割に合わないのかどうか、判断が分かれるところです。
【おすすめ関連記事】不動産投資の減価償却とは?計算方法と税金が安くなる仕組みを解説
管理会社がいても管理面の知識は必要
税金や確定申告よりも難易度は低めですが、管理面の勉強もしなくてはなりません。
不動産会社に管理を委託する場合でも、例えば管理会社からの修繕提案に対する見積もり・費用が妥当かどうか判断するのはオーナー業の務めです。実績豊富で良心的な管理会社であればとりわけ問題はありませんが、中には修繕で入居者やオーナーから高い利益を得ようとする管理会社もあります。
また、火災保険の適用範囲となる修繕が発生した場合、保険会社に修繕金額が適正でないと判断されてしまうと、その後の保険適用事案にも影響を与えかねません。
自分の身は自分で守るために、任せきりではなく正しい知識を付けることが必要です。
失敗例について学ぶことも大切
不動産投資の運用開始後に「割に合わない」と言う人は、リスク・失敗に対する事前シミュレーションが甘いことが特徴の1つに挙げられます。
メリットや前向きなシミュレーションよりも、不動産投資はリスク・失敗例からあらかじめ入念に対策を練っておくことが重要です。よくある失敗例の事案を後述しますので、これから不動産投資を検討している方は参考にしてみてください。
不動産投資が「割に合わないと感じる人」「向いていない人」の特徴
不動産投資を「割に合わない」と感じる人は、そもそも選択する投資法として向いていない恐れがあります。以下で解説する特徴に当てはまるかどうか、一度自己分析してみると良いでしょう。
投資で短期間に大きな儲けを出したい人
1つ目は、「短期間に大きな儲けを出す」ことを目的として投資を始める人です。
そもそも不動産投資は短期間に大きな利益を出す手法ではなく、売却で得られる譲渡所得においても、5年を境とする短期譲渡より長期譲渡の方が税率は安くなります。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期間で儲けたいと考える人は、傾向として株式やFXの方が投資法として向いています。
不動産投資にまわせる自己資金が少ない人
2つ目は、運用中の十分な資金を準備していない人です。
物件購入で融資を受けるためには、物件価格のおおよそ2~3割にあたる現金の準備が必要となります。ただし、その額が貯まったからスタートではありません。
不動産投資は空室や修繕など緊急事態に対応しなくてはならず、融資の頭金とは別枠として資金の用意が必要です。緊急事態に備えた金額は一概にいくらという基準はありませんが、この考え無しに運用を開始してしまうと資金繰りの悪化に陥ります。
不動産投資に関するリスクに理解がない人
3つ目は、不動産投資のリスクシミュレーションをしていない人です。
不動産投資はリスクが高いと言われますが、多くのリスクは事前に予想することができます。購入前に様々なシーンに直面したときの予測立てやリスクの払拭が非常に大切で、これによりリスク許容度を大幅に軽減できます。
しかし、この予測立てを怠る人があまりに多く、不動産投資は失敗すると言われる要因になっているようです。
勉強・情報収集が苦手で他人任せの人
最後は、自分で知識付け・情報収集をしない人です。
不動産投資会社の勧誘広告・DMなどで「管理が一任できる」「毎月の収支確認だけ」と、オーナーの負担がほとんどないといった内容が見られます。この記載は間違いではありませんが、誤解を生む文言です。
成功している不動産オーナーは勉強家の人が非常に多く、自ら積極的に学び情報収集の時間や手間を惜しみません。実際に購入前に昼夜10回以上物件を見に行く人もいます。
この考えに反する人は、不動産投資にはあまり向いていないと言えそうです。
本当に「割に合わない」?不動産投資独自のメリットや強み
ここまで不動産投資に関する否定的な意見を中心に述べましたが、実際のところ「割に合わない」というのは本当なのでしょうか。検証材料として、不動産投資独自にみられるメリット・強みを5つご紹介します。
インフレ対策
昨今まさに問題になっている物価上昇によってお金の価値が低下していくインフレ下で、現物資産である不動産は物価とともに価格が上昇する傾向にあります。
また、不動産価格の高騰が著しい東京都においては、ワンルームマンション・ファミリーマンションともに家賃が上昇している状況です。インフレによりキャッシュフローが好転する可能性もあり、心強いインフレ対策となります。
生命保険代わりになる
金融機関から融資を受ける際に加入する「団体信用生命保険」の効果で、生命保険代わりにもなります。団体信用生命保険とはローン契約者が死亡、もしくは高度障害状態でローン返済能力がなくなった場合、残りのローン返済を保険でまかなえる制度です。
自分が死亡した後に不動産を相続することで、「毎月継続的な家賃収入」もしくは「売却によるまとまった現金」いずれかを遺すことができます。
不動産は現金よりも相続税の税率が低いので、不動産投資に限らず賢く選択していきたいものです。
レバレッジ効果を得られる
不動産投資の大きな特徴として、レバレッジ効果があります。
普段あまり聞き馴染みのない言葉ですが、金融機関からの融資を利用して自己資金だけでは得られなかった高い収益性をあげられることです。融資を活用しリスク分散しながら複数の物件を所有していくと、より高いレバレッジ効果が得られます。
金融機関からの借入に消極的な意見がある反面、借入によって高い効果があることを念頭に置いておきましょう。
節税効果を期待できる
不動産投資には税負担の軽減が期待できます。節税効果を得られる税金の種類は主に下記の5つです。
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 贈与税
- 法人税
節税効果を得られるかどうかは、人それぞれの置かれている状況次第で一概に「絶対」ではありません。節税に関してはおおまかに「メリット」として効果を期待するのではなく、自分の状況ではどのような節税効果があるのか知っておくことが重要です。
私的年金代わりになる
不動産投資を始める理由として多いのが「私的年金」を目的とする声です。
運用に行き詰っている人からローン返済中の空室リスクに苦しむ声も聞かれますが、ローン完済後は毎月の家賃収入をまるまる手元に残すことができます。退職金代わりとしたい場合は、売却することで一括現金化も可能です。
ローン返済中、毎月の収支にマイナスが出ているから「割に合わない」ではなく、売却益や将来を見据えた総合的な判断をしましょう。
不動産投資のよくある失敗例とは?
先に解説した不動産投資が割に合わないと言われる理由を抑えている人といない人では、賃貸経営成功の可否が明確に分かれます。失敗する人によくある例を下記にピックアップしました。
失敗例1:不動産会社や他人の話を鵜呑みにする
失敗する人の代表例として多いのが、人の話を精査せず鵜呑みにするケースです。
特に「すでに成功している人がおすすめした物件だから購入した」というパターンが多く見受けられます。例えば、大家の交流会などで出会った成功者からの情報提供です。貴重な情報源である一方、本当に優良物件であれば赤の他人に教えず自分で購入するはずで、不動産会社の紹介制度による報酬欲しさに勧めている可能性もあります。
また、不動産会社にとってこれから不動産投資の購入を検討している初心者投資家は、まさに格好の餌食です。不動産業界内でも価格競争があり、「物件を高く仕入れてしまった」というのはどの業者でもあります。会社として在庫を持ち続けるわけにはいかず、売ることが仕事である営業マンは初心者投資家を上手くその気にさせてくるでしょう。
このような「業者が売りたい物件」を正確に見極め、購入してしまわないように注意しましょう。
失敗例2:立地よりも利回りを重視する
こちらもよくある例で、利回りを気にしすぎて立地を妥協してしまうパターンです。
過去の賃貸住宅に関する統計から、利回りは都心よりも地方の方が高いことが明らかになっています。要因は、地方の建物取得費が安いからです。建物取得費の安さと高利回りに安堵して購入を決めてしまうと、家賃と資産価値の値崩れに見舞われてしまうかもしれません。特に一棟アパートはエリアのリスク分散ができないので、より一層慎重さが求められます。
また、入居者確保の点で言うと、都心よりも地方の方が広告費は高い傾向にあります。業界では「AD」とも呼ばれている広告費で、物件を決めてくれた仲介業者に支払う報酬のことです。一般的には家賃の1ヵ月程度で設定されているケースが多く、広告費が高いほど優先的に部屋を紹介してもらえます。
地方では、この広告費が家賃の3~4ヵ月分に設定されているケースも見られます。初心者はなかなか知らない情報ですので、注意が必要です。
物件選びは立地を重視した上で、見えない経費を洗い出して「実質利回り」を見るようにしましょう。
失敗例3:不動産管理会社の比較をしなかった
「失敗例1」で挙げた人に共通して見られるのは、「不動産管理会社の比較不足」による失敗です。
不動産管理会社にもそれぞれ特徴があり、良心的な会社とそうでない会社があります。実際に不動産会社が利益欲しさに退去部屋の設備をわざと壊し、原状回復費用としてオーナーへ請求する会社もあると言います。世間では少し前に中古車販売の企業で類似事件が話題になりましたが、不動産業界でも同様な事案をする会社が少なからずあります。
また、信頼できそうな不動産会社が見つかっても管理委託契約を締結する際は、内容をしっかりと精査しましょう。例えば、原状回復時のルームクリーニング費用など発生頻度が高い支出項目や、設備交換が発生した場合の対処法および発注先など、細かな部分を把握しておくとよいでしょう。
不動産管理会社が何をどのようにやってくれるのか、それに対していくらの対価を支払うのか、あまり繋がりがないと思われがちですがキャッシュフローへ密接に関わることです。
失敗例4:事前の収支シミュレーションが不十分
不動産投資に失敗するほとんどの人は、事前の収支シミュレーションが不十分という共通点があります。
収支シミュレーションは緻密な計算をし、多様なパターンで行うことが大切です。
【シミュレーション要素の一例】
金利 | 空室率 | 家賃下落 | 管理方法 |
---|---|---|---|
・固定金利 ・変動金利 |
・年5% ・年10% ・年20% |
・年1% ・年2% |
・自主委託 ・全部委託管理 ・サブリース契約 |
上記はキャッシュフローに大きく関係する項目のほんの一例ですが、それだけでも組み合わせると多様なシミュレーション結果が出るでしょう。他にも退去が出た場合にかかる想定費用など、複数の試算をするのは大変ですが、不動産投資を成功させるには必要不可欠です。
不動産投資を「割に合わない」から「成功」という考えに導くには
不動産投資は割に合わないからやめとけと言う人がいますが、「割に合わない=失敗」ではありません。「割に合わない」から「成功」へと考えを改めるには、下記5つのポイントを不動産投資の軸に置きましょう。
不動産投資のリスクやスタイルを理解する
投資ではリスクとリターンは相関関係にあります。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン、株式・FXはよりリスクの高いハイリスク・ハイリターンの位置づけです。「不動産投資はリスクが高い」という認識は、事前予測とシミュレーションで大きく変わっていきます。短期間で儲けを出すのではなく、長期間でゆっくりと資産を築く投資スタイルでかまえましょう。
不動産投資で発生する費用・税金を把握する
不動産投資には細かな出費が意外と多くあります。
修繕費と一口にいっても建物修繕と室内修繕があり、室内修繕にも設備故障と原状回復があります。利回りに注視しがちですが、発生しうる費用や税金についてきちんと把握しておきましょう。
【一定要件を満たした場合にかかる税金一覧】
購入時 | 不動産取得税、印紙税、登録免許税、消費税 |
---|---|
運用時 | 固定資産税、都市計画税、所得税、住民税 |
売却時 | 譲渡所得税、住民税、復興特別所得税、印紙税、登録免許税 |
相続時 | 相続税 |
今後の資産価値が見込める物件を購入する
購入価格より著しい値崩れがないよう、キャッシュフローと同様に売却益が見込める物件を見極めましょう。出生数の減少、転入者数、再開発によるエリア需要などを加味すると、将来的に一定の人口を確保できる都心がおすすめと言えそうです。
需要が高まるほど資産価値は上昇していきますので、郊外を選定する際は需要減からくる家賃・資産価値の下落に注意してください。
自己資金と選定する物件の収益性が適正かどうかを見極める
割に合わないと考える人の多くは、「高額な資金を投じた」ことに対する潜在的な損失意識があります。高額な初期費用を一刻も早く取り戻したいと思う気持ちは分かりますが、そもそも投じる金額と収益に対する理解が必要です。
物件の購入価格、自己資金、返済期間など様々な条件によって収支計画が異なってくるため、総合的なバランスを見て「割に合う」と思える運用をしていきましょう。
信頼関係を築ける不動産会社を見つける
不動産投資ではどうしても物件・利回りに目がいきがちですが、物件とともに信頼できる不動産会社を選定し、長い付き合いをするようにしましょう。
運用後においても合わなければ別の会社に変えよう、と安易に考えてはいけません。管理委託契約には5年など一定の期間が設けられ、管理変更となると高額な違約金が発生する場合があります。
また、一度サブリース契約を結んでしまうと、なかなか解約ができないといった事例も見られます。購入・運用ともに任せられる、自分にとって最適な不動産会社を見つけましょう。
まとめ
この記事では「不動産投資は割に合わない」と言われる理由や失敗例から、その真偽を解説しました。
不動産投資はどうしても「空室リスク」や「借入リスク」が表立ってしまうことから、購入金額の高さや利益からすると割に合わないと思われてしまいます。
しかし、不動産投資は短期間に大きな利益を出す投資手法ではなく、その本質や運用スタイルを理解することで見方が変わってきます。地道な積み重ねによる手法を理解し、事前の収支計画とリスクシミュレーションを入念に行うことで「割に合う」投資法となるでしょう。
ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。