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2024.02.29
ベルテックスコラム事務局
ワンルームマンション投資で契約を撤回する方法!クーリングオフの手続きを解説
- はじめ方・基礎知識
最近ではクラウドソーシングサイトの普及で副業がより身近なものとなり、仕事をしながらでも取り組みやすいという理由で、ワンルームマンション投資に興味を持つ人が増えています。メリットが多いワンルームマンション投資ですが、購入申込の意思表示をした後や契約後に何らかの事情により「やはり考え直したい」という場合、定められた方法で申込を撤回する必要があります。
この記事では、ワンルームマンション投資の契約を撤回するクーリングオフの方法、手続きの流れや適用条件について解説します。「契約の解除はどのような手続きが必要なのか?」「契約を撤回したいけどいくらかかるのか?」という疑問にお答えしていきましょう。
ワンルームマンションの投資でクーリングオフはできるのか
結論から言うと、ワンルームマンション投資の購入申込を撤回したい場合には、要件を満たしている場合に限り、クーリングオフが可能です。
クーリングオフとは、一般消費者が商品購入やサービスの契約締結をした際に一定の期間と条件下であれば、無条件で撤回および契約解除ができる制度です。
以下では、ワンルームマンション投資におけるクーリングオフの概要と条件を詳しく解説していきます。
ワンルームマンション投資の「クーリングオフ」とは
ワンルーム投資マンションにおける「クーリングオフ」において、基本的な考え方は訪問販売などと同じです。
- うまいセールストークを聞いて安易な気持ちで申し込んでしまった
- 友達に勧められて断れなかった
- 冷静に考えたら怖くなってしまった
- 契約書をよく確認したら自分にとって有益な条件ではなく納得できない
- 契約後、より魅力的な投資先を見つけてしまった
上記のように、クーリングオフを検討する理由は様々です。
売主が宅建業者で買主が一般人の場合「プロと素人の契約」となり、情報量や知識量、ノウハウの格差が大きく開きます。実際、過去にトラブルも多く発生している背景から、クーリングオフ制度は「消費者保護」という観点から作られました。消費者に頭を冷やして考え直す期間を与え、一定の期間内であれば業者との間で締結した契約を無条件に解除することが認められています。
しかし、全ての契約が解除できるかと言うとそうではなく、一定の条件を満たす必要があります。
クーリングオフ制度は宅建業法で規定されている
クーリングオフ制度は「宅建業法(宅地宅建取引業法)第37条2」で定められています。
【事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等】第三十七条の二
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき
二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。
2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
4 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
ワンルームマンション投資のクーリングオフが認められる4つの条件
上記の文章だけで内容を読み解くのは難しいので、クーリングオフが適用される条件についてもう少しかみ砕いていきましょう。
1.売主が宅建業者であること
まず、ワンルームマンションの売主が宅建業者でなければクーリングオフはできません。
宅建業者とは「宅地建物取引業者」の略で、国土交通省もしくは都道府県知事により免許を受け、建物の売買契約や交換、その他媒介等を行う者です。売主が個人の場合には、いかなる状況の契約であってもクーリングオフの適用はありません。
売主が個人で契約手続き上の問題があり仲介業者へなにかしらの責任を求める場合には、クーリングオフではなく他の法律・規定が適用されます。
売主、仲介業者いずれにおいても、悪質な宅建業者が取引へ介入しないように気を付けましょう。
2.契約場所が宅建業者の事務所、自宅や勤務先でないこと
「当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。) 以外 の場所」とは、具体的には下記の場所です。
- 「レストラン」や「喫茶店」等の飲食店
- ホテルのロビー
- 訪問販売(自宅)
上記①②の場合、不特定多数の人が居合わせる騒がしい状況・場所であるとみなされ、買主が冷静な判断をできないと考えられるためです。また、契約場所が買主の自宅でも、売主から「ご自宅へ伺って契約をしたい」という申し出に対して買主が了承した場合、クーリングオフの対象になります。
しかし、以下の2つの場合にはクーリングオフが適用されません。
- 宅建業者の事務所で契約をした場合
- 買主が自ら自宅で契約をしたいと申し出て、自宅等で契約をした場合
上記①の場合、宅建業者の「事務所」には買主自らの意思で出向いており、在籍する専任の宅地建物取引士より重要な説明を直接受け、買主が納得して契約に至ったと判断されるためです。
また、「自らの申し出で、自宅へ招き入れる」という行為は、買主に自発的な購入の意思があることが明確と考えられるためです。
3.クーリングオフについて告知された日から8日以内であること
ワンルームマンションのクーリングオフは上記の要件を満たした場合において、宅建業者がクーリングオフについて書面で告げた日を含めて8日以内であれば可能です。
ただし、宅建業者からクーリングオフ制度に関する説明が無かった場合や、必要書類の交付が無かった場合には買主は当該契約の履行が終了するまでの間、いつでもクーリングオフが可能になります。
4.物件の引き渡し前、かつ代金全額を支払っていないこと
「申込者等が、 当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。」とは、当該契約の「宅地、建物の引渡しを受けていない」ことに加え、「代金を全額支払っていない」場合にクーリングオフが適用されます。
契約締結の際、「手付金」として代金の一部を支払っている場合でも、クーリングオフ適用後に全額返金されます。
申込後の契約前ならいつでもやめられる
一般的には、申込から一週間以内を目途に契約日を決めますが、申込後でも契約締結前であればキャンセルをしたいという意志を告げることで申込の撤回が可能です。このケースでは「クーリングオフ」には該当せず、「申込撤回」となります。メールでの撤回も可能ですので、記録として残せるという点では、口頭よりもよいかもしれません。
この場合においても同様に「手付金」を一部支払ってしまった状態であっても、基本的にはそのまま全額返金されます。
誠実な業者であれば、申込後は本契約に向け真摯に準備を進めているでしょう。キャンセルをしたい場合は、できるだけ早めに申込キャンセルの連絡をすることが望ましいです。
ワンルームマンション投資におけるクーリングオフの具体的な方法
ここからは実際のクーリングオフについて、具体的な手続き方法についてみていきましょう。
クーリングオフの方法は書面による提示で行う
買主はクーリングオフをする場合、クーリングオフの説明を受けた日から8日以内に売主の宅建業者に対して書面で契約解除の通知を行わなければなりません。
より詳しく言うと、買主はクーリングオフの説明を受けた日から8日以内に書面を発送する必要がありますが、書類が相手方に届くのは8日を過ぎてしまっても問題はありません。
ただし、8日間という短い期間で手続きを済ませる必要がありますので、できる限り早急に書面の用意をしましょう。
所定の記載項目はないが「クーリングオフ制度の適用」を明示する
書面の記載項目に決まりはありませんが、下記5つの項目は明記しておくとよいでしょう。
- 申込、契約をした日
- 購入した物件の詳細(住所、名称、価格など)
- 申し込みをした場所
- 担当の宅地建物取引士の氏名
- 宅地建物取引業法37条の2に基づいて解除する旨
「解除の理由」については明記必須の項目ではありませんので、記入しなくても問題はありません。
クーリングオフには内容証明郵便を用いる
クーリングオフの書面は、郵便局にて内容証明を用いて発送するのが一般的です。
内容証明で送るメリットは、書面を「送り主」「受取人」「郵便局」の手元に残せることです。後から送付した日時や内容を確認できるため、法的な紛争やトラブルの際に証拠として活用できます。
クーリングオフの告知から8日以内に書面発送さえしてしまえば、売主である宅建業者の意思は関係無くクーリングオフが適用されます。
「聞いてない」や「届いていない」などのトラブルを防ぐために、いつ、どこで、誰が、どんな内容を発送したかが分かるよう、配達記録を残す事が非常に大切です。
また、インターネットの「電子内容証明郵便サービス」は郵便局へ行かなくても内容証明の発送ができる、ありがたくて便利なサービスです。忙しくて時間がない人はぜひ活用してみましょう。
なお、内容証明郵便は「縦書きは1枚あたり1行20文字以内で書く」など特殊な書式・規定があるので、注意して作成する必要があります。
内容証明の書式・規定に合わせて作成するのが難しいと感じる方は、文房具店などで「内容証明郵便専用用紙」が販売されているので、探してみると良いでしょう。
内容証明郵便と合わせて配達証明を利用する
郵便局では内容証明のみならず、配達記録(配達したことを証明するもの)を用いた郵便も可能です。内容証明と併用して利用すると、より確実な証拠となるためこれらを利用して文書を送りましょう。
配達記録郵便とは、郵便局で郵便物を引き受けた「時間」と「配達情報」を記録するもので、書留と同じように扱われ普通郵便よりも紛失リスクが低くなるものです。
二重に証拠を残すことで、後に「届いていない」「気が付かなかった」といった言い逃れを防ぐことができます。
ワンルームマンション投資でクーリングオフが認められないのはどんな時?
先述したとおり、ワンルームマンション投資において全ての契約にクーリングオフが適用されるわけではありません。
「クーリングオフ適用」にフォーカスして解説してきましたが、ここからはワンルームマンション投資でクーリングオフが認められないケースをご紹介します。
①クーリングオフが適用できず「手付解除」となるケース
「申込キャンセルをしたいけどクーリングオフ制度が適用されない」というシーンでは、売買契約書の内容に基づいて「手付解除」と「契約違反」2つの選択肢があります。
手付解除とは?買主側はいくら支払うのか?
「手付解除」とはクーリングオフ制度の適用条件に当てはまらなかった場合、一定条件を満たしていれば手付金を放棄することによって契約を解除できる方法です。
手付金の相場はマンション価格の5%~10%程度と言われています。マンション価格が1000万円の場合には、50万円~100万円程度の手付金が必要です。
手付解除の方法をするケースとしては、例えば以下の2つが考えられます。
契約場所がクーリングオフの適用外の場所で行われた
クーリングオフ適用外の場所とは、宅建業者の「事務所等」が該当します。「事務所等」とは、宅建業者のオフィスだけでなく物件のモデルルームも該当します。そのような営業所や案内所には専任の宅地建物取引士の在籍や標識の設置が必要で、顧客が外部的な要因にとらわれず安定した精神状態で意思決定を行えると考えられるためです。ただし、買主が売主に脅されていた場合などには、契約の取り消しができる可能性があります。
クーリングオフの適用期間を過ぎてしまった
先述したように、売主である宅建業者がクーリングオフに関する告知をした日から8日を経過した場合、クーリングオフは適用外になります。
このような場合には、一定条件を満たしていれば手付金を放棄することで、契約解除が可能です。
宅建業者は法律で定められている事項を記載した告知書を必ず買主に交付しなくてはなりません。
売買契約を締結して書面を交付されていても、告知書がなければクーリングオフの行使期間はいつまでも進行しないので、この点はよく確認することが大事です。
②手付解除が適用できず「契約違反」となるケース
2つ目は、手付解除が適用できず「契約違反」となるケースです。
手付解除では「一定の条件を満たす」ことが必要であり、「クーリングオフ適用外」かつ「手付解除の一定条件を満たしていない」となれば契約違反に該当してしまいます。
契約違反とは?買主側はいくら支払うのか?
契約とは「約束ごと」「取り決めごと」を意味し、そこには「債権」と「債務」が発生します。
契約違反とは、契約において債務不履行が発生する状態のことを指し、契約に基づいて罰金やペナルティが課されます。約束を破った債務者(この場合は買主)は、債権者(この場合は売主)に対して「違約金」を支払うことにより損害賠償しなくてはなりません。
不動産売買では違約金の上限が20%と定められています。例えば、物件価格が1000万円のワンルームマンションの場合には、違約金の上限は200万円です。
売主がすでに契約の履行に着手している
契約後のクーリングオフができず、さらに手付解除が認められない理由は、主に2つです。
まずは、「売主がすでに契約の履行に着手している」ときです。
- 買主の希望に応じて土地の分筆登記をしたとき
- 買主の希望に応じて建築資材の発注をしたときや、建築工事に着手したとき
- 売買物件の一部を引渡したとき
- 買主の事情で先行登記(物件の引渡し前に所有権移転登記を済ませること)をしたとき
- 売買物件の引渡しと所有者移転登記(最終的な履行)を済ませたとき
上記に該当すると、既に売主が買主の希望に沿って契約の履行に着手しているとみなされるため、正当な理由なく契約解除すれば、債務不履行による賠償責任を負うことになります。
契約書に記載の「手付解除の期日」を過ぎている
次は、「手付解除の期日を超過した」ときです。手付解除の期日は、締結した売買契約書に記載されているので確認するようにしましょう。
ちなみに不動産業界では「手付解除の期日」について、契約締結日から約30日と定めるケースが多いようです。「手付解除の期日」を過ぎてしまってからの解約には、違約金のペナルティが課せられます。
クーリングオフの適用要件外でも違約金が発生せず契約解除となる例
非常に稀ですが、上記のようなクーリングオフ適用の要件外であっても、買主が不利益を被ることなく契約解除できるケースがあります。
【買主側の問題】ローンの融資審査に落ちた
まずは、買主側の融資審査が通らず「ローン解除特約」が認められる例です。
ローンの融資承認が得られないことを理由に「手付金を放棄しなくてはならない」「違約金を支払わなくてはならない」という契約は、買主にとってあまりにも高リスクです。
このような事態を避けるため、売買契約にはローンの融資承認が得られなかった場合、買主が損害賠償を負うことなく契約解除を認める「ローン解除特約(融資特約)」が定められています。この制度により、クーリングオフ適用外であっても買主は不利益を追うことなく契約を取り消しができます。
売買契約書に記載がなければ、買主は他の融資先を検討してローンを再度申し込む義務、申込条件を変えて再度申し込みをするという義務はありません。
しかし、融資審査が通らない理由に「買主側の落ち度」があると、ローン解除特約は認められない可能性があります。例として、金融機関による事前審査で承認を得たのに、本審査までの間に「家族が購入する車の連帯保証人になった」などです。
【売主側の問題】売主による違法取引であった
売主側の問題は、具体的には下記のような内容が挙げられます。
- 資格を持った宅建士が重要事項説明書の説明をしなかった
- 宅建士が記名押印した重要事項説明書など必要とされる書類の交付が無かった
- 売主が不動産業の無免許がない会社であった
- 無免許業者(売主)が他の不動産開業者を介して販売し、転売利益及び媒介手数料を得ている業者だった
- 手付金の貸付があった
上記のような違法取引に該当するケースでは、買主は不利益を負うことなく契約解除が可能です。
ただし、これらのトラブルが発生した場合には悪徳業者や詐欺といった可能性も懸念され、すでに支払ってしまった手付金が必ず戻ってくるとは限りません。1人で何とかしようとせず、不動産の専門家や、弁護士に相談しましょう。
ワンルームマンション投資のクーリングオフによるトラブルを避けるために
では、ワンルームマンション投資のクーリングオフによるトラブルを避けるにはどうしたらよいのでしょうか。トラブル回避のために重要なポイントを5つお伝えします。
強引な営業をされてもきちんと断る
「大切な投資先を決めたい」という買主に対して誠実な姿勢で向き合う業者は、いくら自社の利益のためと言っても押し売りのようなことはしません。
「もしかして詐欺かな?」と疑わしいマンション契約をしないためにも、強引な営業だと感じるときはしっかりお断りしましょう。また、購入の意思がはっきり決まらないときも同様に申込は控えた方が無難です。
ワンルームマンション投資の知識を付けてから購入する
投資用のワンルームマンションを探していると、たくさんの魅力的な物件に出会うことでしょう。
しかし、実際に利益を生み出さなければ意味がありません。営業トークのメリットばかりに目を輝かせ、失敗しないためにも知識を付けることは重要です。
- 空室発生と家賃下落
- 資産価値の下落
- 高額な管理費
- 近年の災害による危険性
上記はワンルームマンション投資において特に学んでおかなくてはなりません。
ワンルームマンション投資や不動産投資を成功させるために重要なポイントについては、下記の記事で解説しておりますのでご覧ください。
重要事項説明書・契約書の内容を把握する
重要事項説明書や売買契約書の内容は分かりづらい用語が並び、読解が難しい部分が多くあります。
しかし、契約は自己責任ですので、1つ1つの項目・内容について丁寧に理解しなくてはなりません。特に下記5つの項目には注意が必要です。
- 「引渡し前の紛失・損害」
自然災害によって引渡し前に建物が減失した場合、誰の負担になるのかが記載されています。民法では買主が負担することになっていますが、建物が無いのにお金だけ払わないといけないという事態になってしまったら悲惨です。通常、売買契約書には「引渡し前の自然災害による建物の滅失」は、売主の負担とする記載がされています。 - 「負担の削除」
前の所有者に抵当権などの権利関係が登記されている場合は、引渡しを受ける際にその権利が抹消されているか、もしくは引き継がれるのかが記載してあります。万が一知らずに抵当権がついたまま登記がなされた場合、抵当権が発動されて物件が没収されてしまう、といったトラブルにもなりかねません。
権利関係において大切なのは「どのような権利なのか内容を理解すること」、そして「権利が抹消されているのか引き継がれるのかを把握すること」です。 - 「ローンの特約」
高額な不動産の取引では多くの場合、融資を組んで物件を購入します。先述のとおり必ず注意しておきたいのは、金融期間の融資審査が落ちてしまったときの対応についてです。一般的には定められた期日内に金融機関の審査を行ったのにもかかわらずローンが通らなかったときは、預けた金額が全て戻ってくる旨の記載がされています。業者によっては、ローン審査の承認が得られなかったら別の金融機関へ申し込みを入れる旨の記載がされている場合もあるようです。
このようなローン特約は具体的な内容が書かれていないと、白紙撤回ができずトラブルが起こりやすくなります。 - 「クーリングオフ」
今回のテーマとして解説したクーリングオフ制度についての確認も大切です。クーリングオフの告知をされ、書面を受け取った日から効力が発揮されるので、適用期限についてしっかりと把握しておきましょう。書面の受け取りが無い場合はいつまでもクーリングオフは可能ですが、申込場所によってクーリングオフの適用外となるため契約する場所にも注意しましょう。 - 「サブリース契約(一括借上契約)に関する事項」
投資物件において特に注意したいのは、サブリース契約をする場合です。サブリース契約とは、契約期間中は実際の契約者(入居者)が居ない空室状態でも家賃を保証します、という契約です。危険な例として、十数年後の相場に合わせてどんどん保証額が下げられるというものがあります。これにより「予測していた経営シミュレーションとかけ離れてしまった」と嘆く方もいるようです。
サブリース契約のほとんどは、相場に合わせて保証する家賃の見直しが行われるため、周辺の家賃相場が低ければキャッシュフローが悪化してしまうでしょう。
以上が確認を怠ることによって被る損害が大きくなる項目です。
不動産の契約内容はどの項目も非常に重要なものばかりですが、最低限のポイントだけは必ず抑えておきましょう。
クーリングオフの適用要件を正しく理解する
ワンルームマンションの購入申込前に、宅建業法で定めるクーリングオフの適用要件について正しく理解しましょう。
- 売主が宅建業者であること
- 買主が宅建業者でないこと
- 対象が売買物件であること
- 「事務所以外」(喫茶店、レストラン、ホテルのロビー、買主の自宅や勤務先)での意思表示、契約であること
- 代金の支払いまたは物件の引渡しの前であること
- クーリングオフについて売主から書面で告知されてから8日以内であること
クーリングオフの適用要件として、上記の内容が明記されています。 ワンルームマンション投資不動産を検討されている方は、まだ物件を探している段階であっても覚えておいて損はないでしょう。
一人で解決できないことは専門家へ相談する
クーリングオフをすれば契約が無かったことになり、すでに支払ったお金を全額取り戻すことができます。
しかし、高額商品のため「違約金がかかるからキャンセルはしないほうが良い」「ローンの審査が進んでいるからクーリングオフできない」 と頑なに拒否され、なかなかクーリングオフに応じてくれない可能性もあります。そんなときは専門家へ相談し、スムーズなトラブル解決を目指しましょう。
上記のようなトラブルの相談先は、以下を参考にしてみて下さい。
- 取引を行った宅建業者の相談窓口
- 取引を行った宅建業者が所属する団体相談窓口(保証協会など)
- 弁護士、司法書士などの専門家・都道府県庁の相談窓口
- 不動産や一般消費者に関する各種無料相談(消費者センターなど)
クーリングオフの適用には期間・条件が定められているため、一人での解決が難しいと感じたら一刻も早く専門家へ相談することをおすすめします。
また、国土交通省のホームページでも「投資用マンション」の勧誘に関する注意喚起を行っていますので、詳しい問い合わせ先など参考にしてみてください。
【参考元】国土交通省「建設産業・不動産業:投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください 」
まとめ
この記事では、ワンルームマンション投資で契約を撤回する方法と、クーリングオフの手続きについて解説しました。
ワンルームマンション投資物件の不動産売買においても、特定の条件を満たせばクーリングオフができます。
しかし、全ての場合においてクーリングオフの対象となるわけではありません。また、クーリングオフの手続きでは、書面の作成にかかる時間や労力も必要になります。「契約を取り消したい」という万が一の事態へ備えて、クーリングオの細かな決まりは契約前に必ず確認しておきましょう。
ワンルームマンション投資は、正しい知識を持っていれば安定した収入が得られる魅力的な投資方法です。後悔する契約をしないためには信頼できる不動産会社を見つけ、気持ち良いスタートを切りましょう。
ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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2024.02.29
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- はじめ方・基礎知識
最近ではクラウドソーシングサイトの普及で副業がより身近なものとなり、仕事をしながらでも取り組みやすいという理由で、ワンルームマンション投資に興味を持つ人が増えています。メリットが多いワンルームマンション投資ですが、購入申込の意思表示をした後や契約後に何らかの事情により「やはり考え直したい」という場合、定められた方法で申込を撤回する必要があります。
この記事では、ワンルームマンション投資の契約を撤回するクーリングオフの方法、手続きの流れや適用条件について解説します。「契約の解除はどのような手続きが必要なのか?」「契約を撤回したいけどいくらかかるのか?」という疑問にお答えしていきましょう。
ワンルームマンションの投資でクーリングオフはできるのか
結論から言うと、ワンルームマンション投資の購入申込を撤回したい場合には、要件を満たしている場合に限り、クーリングオフが可能です。
クーリングオフとは、一般消費者が商品購入やサービスの契約締結をした際に一定の期間と条件下であれば、無条件で撤回および契約解除ができる制度です。
以下では、ワンルームマンション投資におけるクーリングオフの概要と条件を詳しく解説していきます。
ワンルームマンション投資の「クーリングオフ」とは
ワンルーム投資マンションにおける「クーリングオフ」において、基本的な考え方は訪問販売などと同じです。
- うまいセールストークを聞いて安易な気持ちで申し込んでしまった
- 友達に勧められて断れなかった
- 冷静に考えたら怖くなってしまった
- 契約書をよく確認したら自分にとって有益な条件ではなく納得できない
- 契約後、より魅力的な投資先を見つけてしまった
上記のように、クーリングオフを検討する理由は様々です。
売主が宅建業者で買主が一般人の場合「プロと素人の契約」となり、情報量や知識量、ノウハウの格差が大きく開きます。実際、過去にトラブルも多く発生している背景から、クーリングオフ制度は「消費者保護」という観点から作られました。消費者に頭を冷やして考え直す期間を与え、一定の期間内であれば業者との間で締結した契約を無条件に解除することが認められています。
しかし、全ての契約が解除できるかと言うとそうではなく、一定の条件を満たす必要があります。
クーリングオフ制度は宅建業法で規定されている
クーリングオフ制度は「宅建業法(宅地宅建取引業法)第37条2」で定められています。
【事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等】第三十七条の二
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき
二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。
2 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
4 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
ワンルームマンション投資のクーリングオフが認められる4つの条件
上記の文章だけで内容を読み解くのは難しいので、クーリングオフが適用される条件についてもう少しかみ砕いていきましょう。
1.売主が宅建業者であること
まず、ワンルームマンションの売主が宅建業者でなければクーリングオフはできません。
宅建業者とは「宅地建物取引業者」の略で、国土交通省もしくは都道府県知事により免許を受け、建物の売買契約や交換、その他媒介等を行う者です。売主が個人の場合には、いかなる状況の契約であってもクーリングオフの適用はありません。
売主が個人で契約手続き上の問題があり仲介業者へなにかしらの責任を求める場合には、クーリングオフではなく他の法律・規定が適用されます。
売主、仲介業者いずれにおいても、悪質な宅建業者が取引へ介入しないように気を付けましょう。
2.契約場所が宅建業者の事務所、自宅や勤務先でないこと
「当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。) 以外 の場所」とは、具体的には下記の場所です。
- 「レストラン」や「喫茶店」等の飲食店
- ホテルのロビー
- 訪問販売(自宅)
上記①②の場合、不特定多数の人が居合わせる騒がしい状況・場所であるとみなされ、買主が冷静な判断をできないと考えられるためです。また、契約場所が買主の自宅でも、売主から「ご自宅へ伺って契約をしたい」という申し出に対して買主が了承した場合、クーリングオフの対象になります。
しかし、以下の2つの場合にはクーリングオフが適用されません。
- 宅建業者の事務所で契約をした場合
- 買主が自ら自宅で契約をしたいと申し出て、自宅等で契約をした場合
上記①の場合、宅建業者の「事務所」には買主自らの意思で出向いており、在籍する専任の宅地建物取引士より重要な説明を直接受け、買主が納得して契約に至ったと判断されるためです。
また、「自らの申し出で、自宅へ招き入れる」という行為は、買主に自発的な購入の意思があることが明確と考えられるためです。
3.クーリングオフについて告知された日から8日以内であること
ワンルームマンションのクーリングオフは上記の要件を満たした場合において、宅建業者がクーリングオフについて書面で告げた日を含めて8日以内であれば可能です。
ただし、宅建業者からクーリングオフ制度に関する説明が無かった場合や、必要書類の交付が無かった場合には買主は当該契約の履行が終了するまでの間、いつでもクーリングオフが可能になります。
4.物件の引き渡し前、かつ代金全額を支払っていないこと
「申込者等が、 当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったとき。」とは、当該契約の「宅地、建物の引渡しを受けていない」ことに加え、「代金を全額支払っていない」場合にクーリングオフが適用されます。
契約締結の際、「手付金」として代金の一部を支払っている場合でも、クーリングオフ適用後に全額返金されます。
申込後の契約前ならいつでもやめられる
一般的には、申込から一週間以内を目途に契約日を決めますが、申込後でも契約締結前であればキャンセルをしたいという意志を告げることで申込の撤回が可能です。このケースでは「クーリングオフ」には該当せず、「申込撤回」となります。メールでの撤回も可能ですので、記録として残せるという点では、口頭よりもよいかもしれません。
この場合においても同様に「手付金」を一部支払ってしまった状態であっても、基本的にはそのまま全額返金されます。
誠実な業者であれば、申込後は本契約に向け真摯に準備を進めているでしょう。キャンセルをしたい場合は、できるだけ早めに申込キャンセルの連絡をすることが望ましいです。
ワンルームマンション投資におけるクーリングオフの具体的な方法
ここからは実際のクーリングオフについて、具体的な手続き方法についてみていきましょう。
クーリングオフの方法は書面による提示で行う
買主はクーリングオフをする場合、クーリングオフの説明を受けた日から8日以内に売主の宅建業者に対して書面で契約解除の通知を行わなければなりません。
より詳しく言うと、買主はクーリングオフの説明を受けた日から8日以内に書面を発送する必要がありますが、書類が相手方に届くのは8日を過ぎてしまっても問題はありません。
ただし、8日間という短い期間で手続きを済ませる必要がありますので、できる限り早急に書面の用意をしましょう。
所定の記載項目はないが「クーリングオフ制度の適用」を明示する
書面の記載項目に決まりはありませんが、下記5つの項目は明記しておくとよいでしょう。
- 申込、契約をした日
- 購入した物件の詳細(住所、名称、価格など)
- 申し込みをした場所
- 担当の宅地建物取引士の氏名
- 宅地建物取引業法37条の2に基づいて解除する旨
「解除の理由」については明記必須の項目ではありませんので、記入しなくても問題はありません。
クーリングオフには内容証明郵便を用いる
クーリングオフの書面は、郵便局にて内容証明を用いて発送するのが一般的です。
内容証明で送るメリットは、書面を「送り主」「受取人」「郵便局」の手元に残せることです。後から送付した日時や内容を確認できるため、法的な紛争やトラブルの際に証拠として活用できます。
クーリングオフの告知から8日以内に書面発送さえしてしまえば、売主である宅建業者の意思は関係無くクーリングオフが適用されます。
「聞いてない」や「届いていない」などのトラブルを防ぐために、いつ、どこで、誰が、どんな内容を発送したかが分かるよう、配達記録を残す事が非常に大切です。
また、インターネットの「電子内容証明郵便サービス」は郵便局へ行かなくても内容証明の発送ができる、ありがたくて便利なサービスです。忙しくて時間がない人はぜひ活用してみましょう。
なお、内容証明郵便は「縦書きは1枚あたり1行20文字以内で書く」など特殊な書式・規定があるので、注意して作成する必要があります。
内容証明の書式・規定に合わせて作成するのが難しいと感じる方は、文房具店などで「内容証明郵便専用用紙」が販売されているので、探してみると良いでしょう。
内容証明郵便と合わせて配達証明を利用する
郵便局では内容証明のみならず、配達記録(配達したことを証明するもの)を用いた郵便も可能です。内容証明と併用して利用すると、より確実な証拠となるためこれらを利用して文書を送りましょう。
配達記録郵便とは、郵便局で郵便物を引き受けた「時間」と「配達情報」を記録するもので、書留と同じように扱われ普通郵便よりも紛失リスクが低くなるものです。
二重に証拠を残すことで、後に「届いていない」「気が付かなかった」といった言い逃れを防ぐことができます。
ワンルームマンション投資でクーリングオフが認められないのはどんな時?
先述したとおり、ワンルームマンション投資において全ての契約にクーリングオフが適用されるわけではありません。
「クーリングオフ適用」にフォーカスして解説してきましたが、ここからはワンルームマンション投資でクーリングオフが認められないケースをご紹介します。
①クーリングオフが適用できず「手付解除」となるケース
「申込キャンセルをしたいけどクーリングオフ制度が適用されない」というシーンでは、売買契約書の内容に基づいて「手付解除」と「契約違反」2つの選択肢があります。
手付解除とは?買主側はいくら支払うのか?
「手付解除」とはクーリングオフ制度の適用条件に当てはまらなかった場合、一定条件を満たしていれば手付金を放棄することによって契約を解除できる方法です。
手付金の相場はマンション価格の5%~10%程度と言われています。マンション価格が1000万円の場合には、50万円~100万円程度の手付金が必要です。
手付解除の方法をするケースとしては、例えば以下の2つが考えられます。
契約場所がクーリングオフの適用外の場所で行われた
クーリングオフ適用外の場所とは、宅建業者の「事務所等」が該当します。「事務所等」とは、宅建業者のオフィスだけでなく物件のモデルルームも該当します。そのような営業所や案内所には専任の宅地建物取引士の在籍や標識の設置が必要で、顧客が外部的な要因にとらわれず安定した精神状態で意思決定を行えると考えられるためです。ただし、買主が売主に脅されていた場合などには、契約の取り消しができる可能性があります。
クーリングオフの適用期間を過ぎてしまった
先述したように、売主である宅建業者がクーリングオフに関する告知をした日から8日を経過した場合、クーリングオフは適用外になります。
このような場合には、一定条件を満たしていれば手付金を放棄することで、契約解除が可能です。
宅建業者は法律で定められている事項を記載した告知書を必ず買主に交付しなくてはなりません。
売買契約を締結して書面を交付されていても、告知書がなければクーリングオフの行使期間はいつまでも進行しないので、この点はよく確認することが大事です。
②手付解除が適用できず「契約違反」となるケース
2つ目は、手付解除が適用できず「契約違反」となるケースです。
手付解除では「一定の条件を満たす」ことが必要であり、「クーリングオフ適用外」かつ「手付解除の一定条件を満たしていない」となれば契約違反に該当してしまいます。
契約違反とは?買主側はいくら支払うのか?
契約とは「約束ごと」「取り決めごと」を意味し、そこには「債権」と「債務」が発生します。
契約違反とは、契約において債務不履行が発生する状態のことを指し、契約に基づいて罰金やペナルティが課されます。約束を破った債務者(この場合は買主)は、債権者(この場合は売主)に対して「違約金」を支払うことにより損害賠償しなくてはなりません。
不動産売買では違約金の上限が20%と定められています。例えば、物件価格が1000万円のワンルームマンションの場合には、違約金の上限は200万円です。
売主がすでに契約の履行に着手している
契約後のクーリングオフができず、さらに手付解除が認められない理由は、主に2つです。
まずは、「売主がすでに契約の履行に着手している」ときです。
- 買主の希望に応じて土地の分筆登記をしたとき
- 買主の希望に応じて建築資材の発注をしたときや、建築工事に着手したとき
- 売買物件の一部を引渡したとき
- 買主の事情で先行登記(物件の引渡し前に所有権移転登記を済ませること)をしたとき
- 売買物件の引渡しと所有者移転登記(最終的な履行)を済ませたとき
上記に該当すると、既に売主が買主の希望に沿って契約の履行に着手しているとみなされるため、正当な理由なく契約解除すれば、債務不履行による賠償責任を負うことになります。
契約書に記載の「手付解除の期日」を過ぎている
次は、「手付解除の期日を超過した」ときです。手付解除の期日は、締結した売買契約書に記載されているので確認するようにしましょう。
ちなみに不動産業界では「手付解除の期日」について、契約締結日から約30日と定めるケースが多いようです。「手付解除の期日」を過ぎてしまってからの解約には、違約金のペナルティが課せられます。
クーリングオフの適用要件外でも違約金が発生せず契約解除となる例
非常に稀ですが、上記のようなクーリングオフ適用の要件外であっても、買主が不利益を被ることなく契約解除できるケースがあります。
【買主側の問題】ローンの融資審査に落ちた
まずは、買主側の融資審査が通らず「ローン解除特約」が認められる例です。
ローンの融資承認が得られないことを理由に「手付金を放棄しなくてはならない」「違約金を支払わなくてはならない」という契約は、買主にとってあまりにも高リスクです。
このような事態を避けるため、売買契約にはローンの融資承認が得られなかった場合、買主が損害賠償を負うことなく契約解除を認める「ローン解除特約(融資特約)」が定められています。この制度により、クーリングオフ適用外であっても買主は不利益を追うことなく契約を取り消しができます。
売買契約書に記載がなければ、買主は他の融資先を検討してローンを再度申し込む義務、申込条件を変えて再度申し込みをするという義務はありません。
しかし、融資審査が通らない理由に「買主側の落ち度」があると、ローン解除特約は認められない可能性があります。例として、金融機関による事前審査で承認を得たのに、本審査までの間に「家族が購入する車の連帯保証人になった」などです。
【売主側の問題】売主による違法取引であった
売主側の問題は、具体的には下記のような内容が挙げられます。
- 資格を持った宅建士が重要事項説明書の説明をしなかった
- 宅建士が記名押印した重要事項説明書など必要とされる書類の交付が無かった
- 売主が不動産業の無免許がない会社であった
- 無免許業者(売主)が他の不動産開業者を介して販売し、転売利益及び媒介手数料を得ている業者だった
- 手付金の貸付があった
上記のような違法取引に該当するケースでは、買主は不利益を負うことなく契約解除が可能です。
ただし、これらのトラブルが発生した場合には悪徳業者や詐欺といった可能性も懸念され、すでに支払ってしまった手付金が必ず戻ってくるとは限りません。1人で何とかしようとせず、不動産の専門家や、弁護士に相談しましょう。
ワンルームマンション投資のクーリングオフによるトラブルを避けるために
では、ワンルームマンション投資のクーリングオフによるトラブルを避けるにはどうしたらよいのでしょうか。トラブル回避のために重要なポイントを5つお伝えします。
強引な営業をされてもきちんと断る
「大切な投資先を決めたい」という買主に対して誠実な姿勢で向き合う業者は、いくら自社の利益のためと言っても押し売りのようなことはしません。
「もしかして詐欺かな?」と疑わしいマンション契約をしないためにも、強引な営業だと感じるときはしっかりお断りしましょう。また、購入の意思がはっきり決まらないときも同様に申込は控えた方が無難です。
ワンルームマンション投資の知識を付けてから購入する
投資用のワンルームマンションを探していると、たくさんの魅力的な物件に出会うことでしょう。
しかし、実際に利益を生み出さなければ意味がありません。営業トークのメリットばかりに目を輝かせ、失敗しないためにも知識を付けることは重要です。
- 空室発生と家賃下落
- 資産価値の下落
- 高額な管理費
- 近年の災害による危険性
上記はワンルームマンション投資において特に学んでおかなくてはなりません。
ワンルームマンション投資や不動産投資を成功させるために重要なポイントについては、下記の記事で解説しておりますのでご覧ください。
重要事項説明書・契約書の内容を把握する
重要事項説明書や売買契約書の内容は分かりづらい用語が並び、読解が難しい部分が多くあります。
しかし、契約は自己責任ですので、1つ1つの項目・内容について丁寧に理解しなくてはなりません。特に下記5つの項目には注意が必要です。
- 「引渡し前の紛失・損害」
自然災害によって引渡し前に建物が減失した場合、誰の負担になるのかが記載されています。民法では買主が負担することになっていますが、建物が無いのにお金だけ払わないといけないという事態になってしまったら悲惨です。通常、売買契約書には「引渡し前の自然災害による建物の滅失」は、売主の負担とする記載がされています。 - 「負担の削除」
前の所有者に抵当権などの権利関係が登記されている場合は、引渡しを受ける際にその権利が抹消されているか、もしくは引き継がれるのかが記載してあります。万が一知らずに抵当権がついたまま登記がなされた場合、抵当権が発動されて物件が没収されてしまう、といったトラブルにもなりかねません。
権利関係において大切なのは「どのような権利なのか内容を理解すること」、そして「権利が抹消されているのか引き継がれるのかを把握すること」です。 - 「ローンの特約」
高額な不動産の取引では多くの場合、融資を組んで物件を購入します。先述のとおり必ず注意しておきたいのは、金融期間の融資審査が落ちてしまったときの対応についてです。一般的には定められた期日内に金融機関の審査を行ったのにもかかわらずローンが通らなかったときは、預けた金額が全て戻ってくる旨の記載がされています。業者によっては、ローン審査の承認が得られなかったら別の金融機関へ申し込みを入れる旨の記載がされている場合もあるようです。
このようなローン特約は具体的な内容が書かれていないと、白紙撤回ができずトラブルが起こりやすくなります。 - 「クーリングオフ」
今回のテーマとして解説したクーリングオフ制度についての確認も大切です。クーリングオフの告知をされ、書面を受け取った日から効力が発揮されるので、適用期限についてしっかりと把握しておきましょう。書面の受け取りが無い場合はいつまでもクーリングオフは可能ですが、申込場所によってクーリングオフの適用外となるため契約する場所にも注意しましょう。 - 「サブリース契約(一括借上契約)に関する事項」
投資物件において特に注意したいのは、サブリース契約をする場合です。サブリース契約とは、契約期間中は実際の契約者(入居者)が居ない空室状態でも家賃を保証します、という契約です。危険な例として、十数年後の相場に合わせてどんどん保証額が下げられるというものがあります。これにより「予測していた経営シミュレーションとかけ離れてしまった」と嘆く方もいるようです。
サブリース契約のほとんどは、相場に合わせて保証する家賃の見直しが行われるため、周辺の家賃相場が低ければキャッシュフローが悪化してしまうでしょう。
以上が確認を怠ることによって被る損害が大きくなる項目です。
不動産の契約内容はどの項目も非常に重要なものばかりですが、最低限のポイントだけは必ず抑えておきましょう。
クーリングオフの適用要件を正しく理解する
ワンルームマンションの購入申込前に、宅建業法で定めるクーリングオフの適用要件について正しく理解しましょう。
- 売主が宅建業者であること
- 買主が宅建業者でないこと
- 対象が売買物件であること
- 「事務所以外」(喫茶店、レストラン、ホテルのロビー、買主の自宅や勤務先)での意思表示、契約であること
- 代金の支払いまたは物件の引渡しの前であること
- クーリングオフについて売主から書面で告知されてから8日以内であること
クーリングオフの適用要件として、上記の内容が明記されています。 ワンルームマンション投資不動産を検討されている方は、まだ物件を探している段階であっても覚えておいて損はないでしょう。
一人で解決できないことは専門家へ相談する
クーリングオフをすれば契約が無かったことになり、すでに支払ったお金を全額取り戻すことができます。
しかし、高額商品のため「違約金がかかるからキャンセルはしないほうが良い」「ローンの審査が進んでいるからクーリングオフできない」 と頑なに拒否され、なかなかクーリングオフに応じてくれない可能性もあります。そんなときは専門家へ相談し、スムーズなトラブル解決を目指しましょう。
上記のようなトラブルの相談先は、以下を参考にしてみて下さい。
- 取引を行った宅建業者の相談窓口
- 取引を行った宅建業者が所属する団体相談窓口(保証協会など)
- 弁護士、司法書士などの専門家・都道府県庁の相談窓口
- 不動産や一般消費者に関する各種無料相談(消費者センターなど)
クーリングオフの適用には期間・条件が定められているため、一人での解決が難しいと感じたら一刻も早く専門家へ相談することをおすすめします。
また、国土交通省のホームページでも「投資用マンション」の勧誘に関する注意喚起を行っていますので、詳しい問い合わせ先など参考にしてみてください。
【参考元】国土交通省「建設産業・不動産業:投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください 」
まとめ
この記事では、ワンルームマンション投資で契約を撤回する方法と、クーリングオフの手続きについて解説しました。
ワンルームマンション投資物件の不動産売買においても、特定の条件を満たせばクーリングオフができます。
しかし、全ての場合においてクーリングオフの対象となるわけではありません。また、クーリングオフの手続きでは、書面の作成にかかる時間や労力も必要になります。「契約を取り消したい」という万が一の事態へ備えて、クーリングオの細かな決まりは契約前に必ず確認しておきましょう。
ワンルームマンション投資は、正しい知識を持っていれば安定した収入が得られる魅力的な投資方法です。後悔する契約をしないためには信頼できる不動産会社を見つけ、気持ち良いスタートを切りましょう。
ベルテックスでは不動産投資にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。