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- 契約直前の「重要事項説明書」、理解できますか? 弁護士が指摘する「宅建士の説明」の聞きどころ
2026.01.13
山村 暢彦
契約直前の「重要事項説明書」、理解できますか? 弁護士が指摘する「宅建士の説明」の聞きどころ
- 購入
- 弁護士
- 執筆記事
「重要事項説明書」と「売買契約書」の違い
不動産投資の契約直前に行われる「重要事項説明(重説)」は、投資判断に欠かせないプロセスです。重説は、宅地建物取引士が物件の権利関係や法的制限、インフラ状況などを説明するもので、いわば投資の“前提条件”を確認する場。ここで内容を理解せずに進むと、想定利回りや出口戦略が崩れるリスクがあります。
一方、「売買契約書」は、売主と買主の間の約束事を定める書面であり、契約解除の条件や違約金など、法的拘束力を持つものです。つまり、重説が「買うかどうかを判断する資料」なのに対し、契約書は「買うと決めた後の約束」を記したもの。弁護士として見ても、多くのトラブルはこれらの書面の違いを理解しないまま契約してしまうことから生じています。重説は単なる形式的説明ではなく、“投資リスクの最終チェックリスト”だと意識することが、安定した不動産投資のカギです。
弁護士が注目する「重説」のチェックポイント
不動産投資では、重説の中に“利回りを左右するリスク”が潜んでいます。弁護士として特に注意を促したいのは次の4点です。
- 権利関係:抵当権が残ったまま物件が引き渡されると、金融機関による競売リスクが残ります。重説に「引き渡し時に抹消」と明記されているか要確認です。非常に重要な点なので、ここはそれほど問題がないことが多いです。
- 法令上の制限:再建築不可や用途地域の制限は、将来の建替え・売却に直結します。利回りが高くても、制限がかかっていて、出口戦略が狭まる物件は要注意。法令上の制限によって、将来どのような建物が再建築できるかが大きく変わることもあるので要チェックです。
- インフラ設備:私設水道や浄化槽の場合、維持費が高く実質利回りを圧迫します。設備の種別と管理主体を確認しましょう。道路より低い物件などはポンプ設備などが必要となり、余剰費用が発生するケースもあります。しっかり確認しましょう。
- アスベスト・耐震診断:築古物件では空室リスクや修繕費増大につながる要因です。「不明」と書かれていたら、追加調査を検討しましょう。ただ、調査費用もコストがかかるので、リスクと安全のバランスを考慮して検討することが大事です。
重説は単なる説明書ではなく、投資のリスクを見抜くための最初の法的フィルターです。ここを軽視しないことが、安定収益の第一歩となります。
「区分マンション特有」のチェックポイント
区分マンションへの投資では、建物そのものよりも「管理状況」が収益の安定性を左右します。重説では、まず管理費・修繕積立金の滞納がないかを確認しましょう。滞納があると管理組合の運営が不安定になり、最悪の場合、買主に請求が及ぶおそれもあります。 また、修繕積立金の残高や長期修繕計画も重要です。積み立てが不足すると、将来的に「一時金」の徴収や資産価値の下落につながります。
さらに、駐車場の空き状況は賃貸需要に直結し、ペット飼育や民泊利用の可否はターゲット層や利回りに影響します。これらは「管理規約」「使用細則」で定められているため、宅建士の説明で「詳細は管理規約参照」といわれた場合は、必ず写しを取り寄せましょう。
実務的にかみ砕くと、賃料不払いの状態で購入することは少ないと思うので、「賃借人の属性」と、建物が適正に管理されているか、つまり「管理組合が信頼できる会社か」という2点が重要といえるでしょう。区分マンション投資では、建物の立地や築年数だけでなく、管理の健全性こそが資産価値を支える基盤であり、重説はその見極めのチャンスです。
「告知事項あり」とは? 心理的瑕疵の確認
重説で「告知事項あり」と書かれている場合は、過去に事件・事故・自殺・孤独死などがあった可能性があります。こうした「心理的瑕疵(しんりてきかし)」は、賃貸需要や家賃設定に直接影響するため、投資家にとって極めて重要な情報です。
宅建士には、知っている範囲でこれらの事実を説明する法的義務がありますが、実務上は「少し前に入居者が亡くなったようです」といった曖昧な説明にとどまることもあります。そのまま契約してしまうと、後に入居者が敬遠して空室が長期化するリスクがあります。
説明が不明確な場合は、「発生時期」「内容」「入居者への影響」を具体的に質問し、メモを残しておくことが大切です。法的トラブルは「言った/言わない」で揉めるケースが多く、記録化は基本にして、非常に重要です。また、売主や管理会社が告知事項についてどこまで把握しているかも確認しておくと安心です。 心理的瑕疵の有無は、収益性と出口戦略の双方に関わる重要な部分です。「曖昧なまま契約しない」ことが、投資家としての最低限のリスク管理といえます。
まとめ
重要事項説明書は、不動産投資におけるリスクと収益性を見極める最後の防波堤です。内容を理解せずに署名すれば、「聞いていなかった」では済みません。疑問点は必ず宅建士に確認し、それでも不安が残る場合は、契約前に弁護士へ相談することが安全な投資への第一歩です。
この記事を書いた人
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。
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「重要事項説明書」と「売買契約書」の違い
不動産投資の契約直前に行われる「重要事項説明(重説)」は、投資判断に欠かせないプロセスです。重説は、宅地建物取引士が物件の権利関係や法的制限、インフラ状況などを説明するもので、いわば投資の“前提条件”を確認する場。ここで内容を理解せずに進むと、想定利回りや出口戦略が崩れるリスクがあります。
一方、「売買契約書」は、売主と買主の間の約束事を定める書面であり、契約解除の条件や違約金など、法的拘束力を持つものです。つまり、重説が「買うかどうかを判断する資料」なのに対し、契約書は「買うと決めた後の約束」を記したもの。弁護士として見ても、多くのトラブルはこれらの書面の違いを理解しないまま契約してしまうことから生じています。重説は単なる形式的説明ではなく、“投資リスクの最終チェックリスト”だと意識することが、安定した不動産投資のカギです。
弁護士が注目する「重説」のチェックポイント
不動産投資では、重説の中に“利回りを左右するリスク”が潜んでいます。弁護士として特に注意を促したいのは次の4点です。
- 権利関係:抵当権が残ったまま物件が引き渡されると、金融機関による競売リスクが残ります。重説に「引き渡し時に抹消」と明記されているか要確認です。非常に重要な点なので、ここはそれほど問題がないことが多いです。
- 法令上の制限:再建築不可や用途地域の制限は、将来の建替え・売却に直結します。利回りが高くても、制限がかかっていて、出口戦略が狭まる物件は要注意。法令上の制限によって、将来どのような建物が再建築できるかが大きく変わることもあるので要チェックです。
- インフラ設備:私設水道や浄化槽の場合、維持費が高く実質利回りを圧迫します。設備の種別と管理主体を確認しましょう。道路より低い物件などはポンプ設備などが必要となり、余剰費用が発生するケースもあります。しっかり確認しましょう。
- アスベスト・耐震診断:築古物件では空室リスクや修繕費増大につながる要因です。「不明」と書かれていたら、追加調査を検討しましょう。ただ、調査費用もコストがかかるので、リスクと安全のバランスを考慮して検討することが大事です。
重説は単なる説明書ではなく、投資のリスクを見抜くための最初の法的フィルターです。ここを軽視しないことが、安定収益の第一歩となります。
「区分マンション特有」のチェックポイント
区分マンションへの投資では、建物そのものよりも「管理状況」が収益の安定性を左右します。重説では、まず管理費・修繕積立金の滞納がないかを確認しましょう。滞納があると管理組合の運営が不安定になり、最悪の場合、買主に請求が及ぶおそれもあります。 また、修繕積立金の残高や長期修繕計画も重要です。積み立てが不足すると、将来的に「一時金」の徴収や資産価値の下落につながります。
さらに、駐車場の空き状況は賃貸需要に直結し、ペット飼育や民泊利用の可否はターゲット層や利回りに影響します。これらは「管理規約」「使用細則」で定められているため、宅建士の説明で「詳細は管理規約参照」といわれた場合は、必ず写しを取り寄せましょう。
実務的にかみ砕くと、賃料不払いの状態で購入することは少ないと思うので、「賃借人の属性」と、建物が適正に管理されているか、つまり「管理組合が信頼できる会社か」という2点が重要といえるでしょう。区分マンション投資では、建物の立地や築年数だけでなく、管理の健全性こそが資産価値を支える基盤であり、重説はその見極めのチャンスです。
「告知事項あり」とは? 心理的瑕疵の確認
重説で「告知事項あり」と書かれている場合は、過去に事件・事故・自殺・孤独死などがあった可能性があります。こうした「心理的瑕疵(しんりてきかし)」は、賃貸需要や家賃設定に直接影響するため、投資家にとって極めて重要な情報です。
宅建士には、知っている範囲でこれらの事実を説明する法的義務がありますが、実務上は「少し前に入居者が亡くなったようです」といった曖昧な説明にとどまることもあります。そのまま契約してしまうと、後に入居者が敬遠して空室が長期化するリスクがあります。
説明が不明確な場合は、「発生時期」「内容」「入居者への影響」を具体的に質問し、メモを残しておくことが大切です。法的トラブルは「言った/言わない」で揉めるケースが多く、記録化は基本にして、非常に重要です。また、売主や管理会社が告知事項についてどこまで把握しているかも確認しておくと安心です。 心理的瑕疵の有無は、収益性と出口戦略の双方に関わる重要な部分です。「曖昧なまま契約しない」ことが、投資家としての最低限のリスク管理といえます。
まとめ
重要事項説明書は、不動産投資におけるリスクと収益性を見極める最後の防波堤です。内容を理解せずに署名すれば、「聞いていなかった」では済みません。疑問点は必ず宅建士に確認し、それでも不安が残る場合は、契約前に弁護士へ相談することが安全な投資への第一歩です。
この記事を書いた人
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所 代表弁護士
実家で発生した不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力している。法律トラブルは表面化しにくく、早期対応こそが最善策につながるという考えから、セミナー講師としての情報発信にも積極的に取り組む。「不動産に強い」との評価から不動産相続案件の依頼が増え、複雑な相続や特殊訴訟も数多く担当してきた。相続開始直後の緊急相談から、事前の生前対策まで幅広く対応し、円満かつ実務的な解決を重視する。税理士・司法書士・不動産鑑定士らと連携し、依頼者ごとに最適な解決策と再発防止策を提案している。