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2024.12.02
ベルテックスコラム事務局
累進課税制度を徹底解説!対象となる税金と計算方法
- はじめ方・基礎知識
- 節税・税金
日本では、所得税などに累進課税制度が採用されているため、所得が高い人には高い税率が課せられています。稼げば稼ぐほど税率が高くなるため、一定以上の税区分を超えないように仕事をセーブする人もいるようです。累進課税制度は税率が一律の比例課税とどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、累進課税制度の概要と、対象となる税金の種類・税率・計算方法などについて解説します。
累進課税制度とは?
所得が上がれば上がるほど、税率が高くなる累進課税制度。つまり、収入が上がれば上がるほど、より高い税率で課税されます。この制度により、所得のある人々が、社会保障、医療、教育などの公共サービスの財源を担うことになります。
応能負担の原則に基づいた制度
累進課税制度は、税の応能負担の原則に基づいた制度です。応能負担とは、能力に応じて負担することをいいます。つまり、「所得が多い人からたくさん取り、少ない人からは少なく取り、ない人からは取らない」というのが原則です。「ない人」には、住民税非課税世帯や生活保護受給世帯などが該当します。
累進課税制度が採用されている税金には所得税、相続税、贈与税があります。課税方法は、課税標準をいくつかの区分に分けて段階的に税率が上がる超過累進税が採用されています。
比例課税との違い
累進課税(累進税)の他に比例課税(比例税)という制度もあります。比例課税とは、課税水準に関わらず同じ税率で課税されることをいいます。銀行預金の利息、株式の配当金などが代表例です。住民税の均等割も比例税の一種といえます。
▽所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
課税所得が100万円の人と1億円の人で比較すると、累進課税では100万円の人は5万円(累進税率5%)、1億円の人は4,020万4,000円(累進税率45%)の納税額となります。
一方の比例課税では同じ20%の税率だとすると100万円の人は20万円、1億円の人は2,000万円となり、低所得者には負担が重く、高所得者にとっては負担が軽くなります。
【引用元】国税庁「No.2260 所得税の税率」より
日本と海外の累進課税制度の現状
日本と海外の累進課税制度の現状はどのようになっているのでしょうか。
日本で累進課税が採用された理由
日本で累進課税が導入されたのは、1887(明治20)年の所得税からです。納税者の税負担能力に応じて納税額を決めることで、税負担の公平化を図ることを目的として導入されました。
比例課税の場合は税率を低い人に合わせると高所得者の税負担が少なくなりすぎ、逆に高い人に合わせると低所得者の税負担が多くなりすぎます。納税が難しくなる人もいるでしょう。
累進課税にすることで、納税の余裕がある人には多く納めてもらい、余裕がない人には少ない納税額を納めてもらう現在の税制度が確立されたのです。
諸外国における累進課税の採用状況
諸外国でも先進国を中心に、多くの国で累進課税が採用されています。Webサイト「東証マネ部」の調査によると、各国の最高税率はフランスが所得税+社会保障関連諸税で54.7%、アメリカが所得税+地方個人所得税で49.7%、ドイツが所得税+連帯付加税で47.48%、イギリスが所得税のみで45%などとなっています。
日本の最高税率は所得税+住民税で55%なので、先進国のなかでも税負担が重いことがわかります。
累進課税制度の種類
累進課税にも種類があり、日本では超過累進課税制度が採用されています。
累進課税には、超過累進課税と単純累進課税の2種類があります。両者には明確な違いがありますので確認しておきましょう。
超過累進課税とは?
超過累進課税とは、所得税において、所得が一定額を超えた金額について、更に高い税率で課税される仕組みです。
例えば、100万円の課税区分を超えて110万円になったら、超えた分の10万円のみに次の区分の税率を課すという仕組みで、急に税負担が増えないように配慮されています。日本では超過累進課税が採用されています。
単純累進課税とは?
単純累進課税とは、課税標準区分を超えた場合に、全額に次の区分の税率が課される仕組みです。
例えば、100万円の区分を超えて110万円になったら、110万円全てに次の区分の税率が課されます。区分の境目にある納税者の負担が急に大きくなるため、日本では採用されていません。
累進課税の対象となる税金
累進課税になる税金には、所得税、相続税、贈与税などがあります。それぞれの仕組みについて確認しておきましょう。
所得税
所得税は、個人の所得に応じて支払う税金です。1年間に得た所得から所得控除を差し引いた残りの所得に対して課税されます。令和19年までは所得税と併せて復興特別所得税も申告・納付します。
所得税が課税される所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類あります。
複数の所得がある人は合算して所得を計算し、そこから基礎控除、医療費控除、社会保険料控除など15種類の所得控除のうち該当する金額を差し引いて課税所得額を計算します。
相続税
相続税は、親などから遺産を相続したときに支払う税金です。基礎控除として、「3,000万円+600万円×共同相続人の数」の計算式で算出した金額を課税資産から差し引くことができます。
例えば、相続人が一人の場合、課税資産が3,600万円以下であれば非課税となります。したがって、ほとんどの人は非課税となり、2020年における相続税の課税割合は8.8%程度でした。
また、配偶者特別控除を利用すると、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のうち、どちらか多い金額までは非課税となります。
【おすすめ関連記事】法定相続分とは?遺留分とは何が違う?それぞれの違いと計算方法を解説|カケコム
贈与税
贈与税は、贈与を受けたときに支払う税金です。1月1日~12月31日の1年間に財産の贈与を受けた合計額から、基礎控除110万円を差し引いた金額に課税されます。したがって、毎年110万円以下の金額を贈与すれば贈与税はかかりません。
ただし、基礎控除以下の金額であっても、毎年100万円を10年間にわたって贈与することをあらかじめ契約しているようなケースでは、契約した年に「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」の贈与を受けたものとして贈与税が課税されます。
【おすすめ関連記事】不動産投資は節税にならない?税金が安くなる仕組みや注意点を解説
所得税の累進課税率と計算方法
所得税の累進課税率は、所得金額に応じて段階的に上がります。具体的には、以下のような税率が適用されます。
所得税の累進課税率一覧
195万円以下:5%
195万円超~330万円以下:10%
330万円超~695万円以下:20%
695万円超~900万円以下:23%
900万円超~1,800万円以下:33%
1,800万円超~4,000万円以下:40%
4,000万円以上:45%
なお、所得税の累進課税率は、年度や税制改正によって変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
所得税の計算方法
所得税の計算方法は、以下の通りです。
・所得金額の計算
まず、課税対象となる所得金額を計算します。例えば、年収が1,000万円であれば、基礎控除や社会保険料など各種控除を差し引いた所得金額を計算します。
・累進課税の計算
課税所得金額に対して、累進課税率を適用して、税金を計算します。具体的には、以下のように所得金額や累進課税の計算をします。
【例:年収1,000万円の場合】
・所得金額の計算
年収1,000万円から社会保険料や医療費、生命保険料など控除できる金額を差し引いて所得金額を計算します。例えば、合計100万円の控除があった場合、所得金額は900万円となります。
・累進課税の計算
所得金額に累進課税率を掛け合わせて、税金を計算します。例えば、900万円の場合、以下のようになります。
195万円以下:5% × 195万円 = 9.75万円
195万円超~330万円以下:10% × (330万円 – 195万円) = 13.5万円
330万円超~695万円以下:20% × (695万円 – 330万円) = 73.0万円
695万円超~900万円以下:23%×(900万円-695万円)= 47.15万円
納税額は区分ごとに税率をかけ合わせて計算した金額を合計します。
このケースでは9.75万円+13.5万円+73万円+47.15万円=143万4,000円となります。
この金額は速算表で計算した場合の、
900万円×33%-153万6,000円=143万4,000円と同じ結果となります。
実際には速算式で計算することがほとんどなので、区分ごとの計算は必要ありませんが、累進課税の計算方法として覚えておいて損はないでしょう。
以上のように、所得金額に応じて累進的に上がる税率を適用し、所得税を計算します。
相続税の累進課税率と計算方法
相続税も所得税と同様に、課税相続資産額に応じて税率が上がります。具体的には、以下のような税率が適用されます。
相続税の累進課税率一覧
1,000万円以下:10%
3,000万円以下:15%
5,000万円以下:20%
1億円以下:30%
2億円以下:40%
3億円以下:45%
6億円以下:50%
6億円超:55%
所得税に比べると税率は高めになっています。
相続税の計算方法
相続税の計算方法(速算式)は以下のとおりです。
【例:相続遺産総額1億円、相続人子ども一人の場合】
・相続税課税額の計算
1億円-基礎控除(3,000万円+600万円)=6,400万円
・納税額の計算
6,400万円×30%-控除額700万円=1,220万円
なお、相続人が配偶者一人の場合は配偶者特別控除を利用すれば非課税となります。
贈与税の累進課税率と計算方法
贈与税も所得税・相続税と同様に累進課税が採用され、贈与額が増えるにしたがって税率が上がります。
贈与税の累進課税率一覧
200万円以下:10%
300万円以下:15%
400万円以下:20%
600万円以下:30%
1,000万円以下:40%
1,500万円以下:45%
3,000万円以下:50%
3,000万円超:55%
相続税と同じく最高税率は55%ですが、課税金額の水準は相続税に比べて大幅に低くなっています。
贈与税の計算方法
贈与税の計算方法(速算式)は以下のとおりです。
【例:贈与額1,000万円の場合】
・課税贈与額の計算
1,000万円-基礎控除110万円=890万円
・納税額の計算(一般税率の場合)
890万円×40%-控除額125万円=231万円
まとめ
累進課税制度は税負担の公平を保つために必要な制度です。税率が高い人はその分年収が多いことを意味するので、恵まれていると考えることもできます。
所得税、相続税、贈与税にはそれぞれさまざまな控除制度も用意されているので、可能な限り利用して納税額を少なくすることが可能です。累進課税制度の主旨に沿ってしっかり納税し、社会に貢献することが求められます。
ベルテックスでは不動産にまつわる節税対策セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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累進課税制度を徹底解説!対象となる税金と計算方法
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日本では、所得税などに累進課税制度が採用されているため、所得が高い人には高い税率が課せられています。稼げば稼ぐほど税率が高くなるため、一定以上の税区分を超えないように仕事をセーブする人もいるようです。累進課税制度は税率が一律の比例課税とどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、累進課税制度の概要と、対象となる税金の種類・税率・計算方法などについて解説します。
累進課税制度とは?
所得が上がれば上がるほど、税率が高くなる累進課税制度。つまり、収入が上がれば上がるほど、より高い税率で課税されます。この制度により、所得のある人々が、社会保障、医療、教育などの公共サービスの財源を担うことになります。
応能負担の原則に基づいた制度
累進課税制度は、税の応能負担の原則に基づいた制度です。応能負担とは、能力に応じて負担することをいいます。つまり、「所得が多い人からたくさん取り、少ない人からは少なく取り、ない人からは取らない」というのが原則です。「ない人」には、住民税非課税世帯や生活保護受給世帯などが該当します。
累進課税制度が採用されている税金には所得税、相続税、贈与税があります。課税方法は、課税標準をいくつかの区分に分けて段階的に税率が上がる超過累進税が採用されています。
比例課税との違い
累進課税(累進税)の他に比例課税(比例税)という制度もあります。比例課税とは、課税水準に関わらず同じ税率で課税されることをいいます。銀行預金の利息、株式の配当金などが代表例です。住民税の均等割も比例税の一種といえます。
▽所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
課税所得が100万円の人と1億円の人で比較すると、累進課税では100万円の人は5万円(累進税率5%)、1億円の人は4,020万4,000円(累進税率45%)の納税額となります。
一方の比例課税では同じ20%の税率だとすると100万円の人は20万円、1億円の人は2,000万円となり、低所得者には負担が重く、高所得者にとっては負担が軽くなります。
【引用元】国税庁「No.2260 所得税の税率」より
日本と海外の累進課税制度の現状
日本と海外の累進課税制度の現状はどのようになっているのでしょうか。
日本で累進課税が採用された理由
日本で累進課税が導入されたのは、1887(明治20)年の所得税からです。納税者の税負担能力に応じて納税額を決めることで、税負担の公平化を図ることを目的として導入されました。
比例課税の場合は税率を低い人に合わせると高所得者の税負担が少なくなりすぎ、逆に高い人に合わせると低所得者の税負担が多くなりすぎます。納税が難しくなる人もいるでしょう。
累進課税にすることで、納税の余裕がある人には多く納めてもらい、余裕がない人には少ない納税額を納めてもらう現在の税制度が確立されたのです。
諸外国における累進課税の採用状況
諸外国でも先進国を中心に、多くの国で累進課税が採用されています。Webサイト「東証マネ部」の調査によると、各国の最高税率はフランスが所得税+社会保障関連諸税で54.7%、アメリカが所得税+地方個人所得税で49.7%、ドイツが所得税+連帯付加税で47.48%、イギリスが所得税のみで45%などとなっています。
日本の最高税率は所得税+住民税で55%なので、先進国のなかでも税負担が重いことがわかります。
累進課税制度の種類
累進課税にも種類があり、日本では超過累進課税制度が採用されています。
累進課税には、超過累進課税と単純累進課税の2種類があります。両者には明確な違いがありますので確認しておきましょう。
超過累進課税とは?
超過累進課税とは、所得税において、所得が一定額を超えた金額について、更に高い税率で課税される仕組みです。
例えば、100万円の課税区分を超えて110万円になったら、超えた分の10万円のみに次の区分の税率を課すという仕組みで、急に税負担が増えないように配慮されています。日本では超過累進課税が採用されています。
単純累進課税とは?
単純累進課税とは、課税標準区分を超えた場合に、全額に次の区分の税率が課される仕組みです。
例えば、100万円の区分を超えて110万円になったら、110万円全てに次の区分の税率が課されます。区分の境目にある納税者の負担が急に大きくなるため、日本では採用されていません。
累進課税の対象となる税金
累進課税になる税金には、所得税、相続税、贈与税などがあります。それぞれの仕組みについて確認しておきましょう。
所得税
所得税は、個人の所得に応じて支払う税金です。1年間に得た所得から所得控除を差し引いた残りの所得に対して課税されます。令和19年までは所得税と併せて復興特別所得税も申告・納付します。
所得税が課税される所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類あります。
複数の所得がある人は合算して所得を計算し、そこから基礎控除、医療費控除、社会保険料控除など15種類の所得控除のうち該当する金額を差し引いて課税所得額を計算します。
相続税
相続税は、親などから遺産を相続したときに支払う税金です。基礎控除として、「3,000万円+600万円×共同相続人の数」の計算式で算出した金額を課税資産から差し引くことができます。
例えば、相続人が一人の場合、課税資産が3,600万円以下であれば非課税となります。したがって、ほとんどの人は非課税となり、2020年における相続税の課税割合は8.8%程度でした。
また、配偶者特別控除を利用すると、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のうち、どちらか多い金額までは非課税となります。
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贈与税
贈与税は、贈与を受けたときに支払う税金です。1月1日~12月31日の1年間に財産の贈与を受けた合計額から、基礎控除110万円を差し引いた金額に課税されます。したがって、毎年110万円以下の金額を贈与すれば贈与税はかかりません。
ただし、基礎控除以下の金額であっても、毎年100万円を10年間にわたって贈与することをあらかじめ契約しているようなケースでは、契約した年に「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」の贈与を受けたものとして贈与税が課税されます。
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所得税の累進課税率と計算方法
所得税の累進課税率は、所得金額に応じて段階的に上がります。具体的には、以下のような税率が適用されます。
所得税の累進課税率一覧
195万円以下:5%
195万円超~330万円以下:10%
330万円超~695万円以下:20%
695万円超~900万円以下:23%
900万円超~1,800万円以下:33%
1,800万円超~4,000万円以下:40%
4,000万円以上:45%
なお、所得税の累進課税率は、年度や税制改正によって変更される可能性があるため、最新の情報を確認することが重要です。
所得税の計算方法
所得税の計算方法は、以下の通りです。
・所得金額の計算
まず、課税対象となる所得金額を計算します。例えば、年収が1,000万円であれば、基礎控除や社会保険料など各種控除を差し引いた所得金額を計算します。
・累進課税の計算
課税所得金額に対して、累進課税率を適用して、税金を計算します。具体的には、以下のように所得金額や累進課税の計算をします。
【例:年収1,000万円の場合】
・所得金額の計算
年収1,000万円から社会保険料や医療費、生命保険料など控除できる金額を差し引いて所得金額を計算します。例えば、合計100万円の控除があった場合、所得金額は900万円となります。
・累進課税の計算
所得金額に累進課税率を掛け合わせて、税金を計算します。例えば、900万円の場合、以下のようになります。
195万円以下:5% × 195万円 = 9.75万円
195万円超~330万円以下:10% × (330万円 – 195万円) = 13.5万円
330万円超~695万円以下:20% × (695万円 – 330万円) = 73.0万円
695万円超~900万円以下:23%×(900万円-695万円)= 47.15万円
納税額は区分ごとに税率をかけ合わせて計算した金額を合計します。
このケースでは9.75万円+13.5万円+73万円+47.15万円=143万4,000円となります。
この金額は速算表で計算した場合の、
900万円×33%-153万6,000円=143万4,000円と同じ結果となります。
実際には速算式で計算することがほとんどなので、区分ごとの計算は必要ありませんが、累進課税の計算方法として覚えておいて損はないでしょう。
以上のように、所得金額に応じて累進的に上がる税率を適用し、所得税を計算します。
相続税の累進課税率と計算方法
相続税も所得税と同様に、課税相続資産額に応じて税率が上がります。具体的には、以下のような税率が適用されます。
相続税の累進課税率一覧
1,000万円以下:10%
3,000万円以下:15%
5,000万円以下:20%
1億円以下:30%
2億円以下:40%
3億円以下:45%
6億円以下:50%
6億円超:55%
所得税に比べると税率は高めになっています。
相続税の計算方法
相続税の計算方法(速算式)は以下のとおりです。
【例:相続遺産総額1億円、相続人子ども一人の場合】
・相続税課税額の計算
1億円-基礎控除(3,000万円+600万円)=6,400万円
・納税額の計算
6,400万円×30%-控除額700万円=1,220万円
なお、相続人が配偶者一人の場合は配偶者特別控除を利用すれば非課税となります。
贈与税の累進課税率と計算方法
贈与税も所得税・相続税と同様に累進課税が採用され、贈与額が増えるにしたがって税率が上がります。
贈与税の累進課税率一覧
200万円以下:10%
300万円以下:15%
400万円以下:20%
600万円以下:30%
1,000万円以下:40%
1,500万円以下:45%
3,000万円以下:50%
3,000万円超:55%
相続税と同じく最高税率は55%ですが、課税金額の水準は相続税に比べて大幅に低くなっています。
贈与税の計算方法
贈与税の計算方法(速算式)は以下のとおりです。
【例:贈与額1,000万円の場合】
・課税贈与額の計算
1,000万円-基礎控除110万円=890万円
・納税額の計算(一般税率の場合)
890万円×40%-控除額125万円=231万円
まとめ
累進課税制度は税負担の公平を保つために必要な制度です。税率が高い人はその分年収が多いことを意味するので、恵まれていると考えることもできます。
所得税、相続税、贈与税にはそれぞれさまざまな控除制度も用意されているので、可能な限り利用して納税額を少なくすることが可能です。累進課税制度の主旨に沿ってしっかり納税し、社会に貢献することが求められます。
ベルテックスでは不動産にまつわる節税対策セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。