2023.10.17

市況

ベルテックスコラム事務局

インフレによる資産の目減りを防ぐためには?おすすめの防衛策を紹介

  • 日本の現状
  • 資産形成

昨今、世界中で起きているインフレの波は日本にも押し寄せ、国民の生活に大打撃を与えています。 代表的な影響は物価上昇で、「インフレが続くと円安になる」のは有名な話です。 迫りくるインフレへの対応にひっ迫する中、同時に円安による資産の目減りが止まらず、私たち国民の不安はさらに大きくなっていきます。

この記事では、インフレと円安の理由や関係性、インフレに対応するための資産防衛策について、解説していきます。

最近の円安の理由を世界のインフレから考える

10年前の2013年における為替レートは、1ドル100円を下回る月がありましたが、2023年現在は1ドル140円を上回る状況です 。 中でも2017年から2022年までの5年間は、あまり変動することなく落ち着いており、ここ1年程度で急激に円安が進行したことが伺えます。 ここまで円安が推し進められた理由は一体何なのか、読み解いていきましょう。

世界の物価上昇率

昨今のインフレに苦しめられているのは、日本だけではありません。 国連による専門機関IMF (国際通貨基金)の予測では、世界のインフレ率は2021年の4.7%から2022年の8.8%への上昇が著しく、その後2023年に6.5%、2024年は4.1%と減速する見込みです。

同時に世界経済の成長率は2021年に6.0%、2023年は前年比-2.8%となる3.2%、さらに2023年には2.7%へ低迷するとされています。 世界の中でも、米国とユーロの物価指数はとりわけ高水準で、2022年12月の各国における消費者物価指数の推移(CPI)は、日本で+4.0%、米国で+6.5%、ユーロはさらに上回る+9.2%を記録しています 。

日本の物価上昇の現状

私たちはインターネットや実店舗での買い物を介して、また光熱費など日常的に物価の高騰を感じていますが、日本の2倍以上の物価上昇を記録している諸外国の状況には驚きでしょう。 総務省による「消費者物価指数」によれば、日本におけるインフレについて、上昇率+4.0%は1982年2月以来の記録で、なんと40年ぶりです。
2023年7月分の「消費者物価指数」では、総合指標は2020年を100として105.7へ3.3%の上昇となりました。
値上がりは、特に食品とエネルギーが中心で、生鮮食品を除く総合指数は105.4、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.9と公表されています。 調査では生鮮食品とされていますが、冷凍食品や味噌などの調味料、アイスやお菓子といった様々な食品が、大小企業を問わず値上げを続けている状況です。

また、資源エネルギー庁の発表では、2023年7月24日時点で、レギュラーガソリンの店頭販売価格は、全国 平均174.8円/Lでした。前週比+0.8円ですが、8月以降180円超のさらなる値上げが予想されています。

昨今の物価上昇の主な理由とは

値上げされたと思ったらまたすぐに値上げ、物価上昇に歯止めが効かず、先行き不透明な状態が続いています。 物価上昇の要因は一体何か、下記で具体的に4点ご説明します。

新型コロナウイルス、ウクライナ侵攻、中東の不安定さ

まず、世界的なインフレの大きな要因は、ロシアによるウクライナ侵攻と新型コロナウイルスの長期化です。 新型コロナウイルスの影響で人々の行動が制限され、飲食・旅行業界を筆頭に多くの業界へ打撃を与え、経済の不活性化で、資金の流れが完全に停止しました。

ウクライナ侵攻に関してロシア側は当初の計画では、ここまでの長期化は予測していなかったとされています。 最近は、「対ロシア制裁」として各国がロシアへの輸出入に対する制限・措置をとり、原油や天然ガス、穀物や金属などロシアから輸入していた多くの品目を他国に頼る動きが見られます。

そして、これら2つの要因以前から問題視されていた「中東の不安定さ」が挙げられます。 「中東」とはイギリス視点で、西アジアからアフリカにかけたエリアのことです。上記のように戦争勃発による経済への影響は大きく、多種多様な民族が存在するこのエリアでは、常に戦乱がやみません。 過去の戦争や協定など歴史的要因が複雑に絡み合っており、豊富な資源を持つ中東を狙った諸外国の策略も大きく、現状不安定さを解決するのは難しいでしょう。

原材料価格の高騰

次に、商品を作る工程で欠かせない製造業において、コストの大半である「原材料」と「エネルギーコスト」の高騰が挙げられます。 特に中国の「ゼロ・コロナ政策」では、厳しいロックダウンにより工場が稼働停止し、製造業に携わる人々の暮らしを脅かしました。 ロックダウンの影響で労働者の休日が増え、解雇や内定取り消しなど多くの人々の職が失われ、製造量が減少するとともに、商品不足で価格高騰に進展しています。
半導体不足はとりわけ問題視され、電子機器や自動車などは価格高騰のみならず、何年待ちなどお金を払っても購入できない事態へ陥りました。

円安の影響

日本では、日常品の多くを海外からの輸入に頼っています。 また、家電製品や通信機器など、複数のパーツからなる部品の一部を輸入することも多く、製品を販売するためには、貿易を止めることはできません。 円安で日本の通貨が安くなることで、輸入品の価格上昇に繋がり、利益を出すために商品価格を値上げせざるを得ない状況になっています。

インフレ圧が他国より低く低金利政策をとっているため

インフレ抑制のためには、一般的に金利を上昇させる必要があるとされています。 経済で物価水準の上昇を指す言葉で「インフレ圧力」という言葉がありますが、現在世界中でインフレ圧力が高まっている状況です。 インフレ圧力が高まっている状況下で、IMFは「各国の中央銀行は緩和的な金融政策や低金利を維持する余裕がない」と述べています。 この状況を加味して世界が金利上昇傾向にある中、日本で金利上昇が起こると、日銀が保有している国債価格の大暴落により巨額の損失が生じてしまうので、日本はいまだ低金利政策をとっています。 金利上昇には慎重な姿勢をみせていますが、この姿勢が物価上昇に大きく影響していると言えるでしょう。

為替相場が変化しない場合でも価値は下がる !?

そもそも昨今の円安は、ここ数十年の諸外国と日本の「経済成長格差」が今になって浮き彫りになっています。 バブル期以降、日本の経済が徐々に低迷していく一方で、諸外国では物価や賃金が上がり、成長を見せてきました。日本の労働者の賃金が上がらない背景には、ここ数十年の日本の物価がほとんど変わっていないことが起因しています。
その結果として、労働意欲やスキルが落ち、投資家たちは国外投資するようになり、日本企業の生産性が減退してしまいました。
日本企業の拠点が海外に移り変わり、収益を輸出に頼る日本のスタイルが壊れた末の円安であり、為替相場の変動に関係なく、日本自体の価値が下がっていると考えられます。

円の価値は目減りする一方

このように日本で物価上昇と円安が発生すると、現金や銀行で保有している日本円の価値はどんどん減っていきます。 投資に消極的で「安全資産」として現金保有する人口割合が多い日本ですが、現預金を取り巻く状況が大きく変わってきているようです。 価値が目減りすることのない「株式」「投資信託」など、日本では保有資産の見直しが必要なタイミングに直面しています。

インフレ下における資産の防衛方法とは

様々な要因が引き金となって起こるインフレですが、国の弱体化が進む日本にとって、昨今のインフレはひときわデメリットが目立っています。 インフレが取り巻く中で大幅な年収アップが見込めない現状、今後の日本を生き抜くためには、給与所得に頼るだけでなく、自身で資産運用していくことで収入増加を図らなくてはいけません。

30年後に資産が半分になる

もしも、このままインフレが続いた場合、私たち日本人が持っている現金の価値はどうなるのでしょうか。 インフレの状況を昨年と比較する「インフレ率」は、2~3%が望ましい指標と言われています。 このままインフレ率が上昇を続け、毎年2%ずつ物価上昇した場合、現金1000万円は10年後に836万円、20年後に672万円、30年後にはなんと約半分の508万円まで価値が下落してしまうのです。

預金だけするのはNG

現金の目減りと同時に考えておきたいのは、銀行の定期預金では資産増加が見込めない点です。 今や周知の事実ですが、銀行への預入だけでは本当に資産増加は見込めないのか、実際の数字を見てみると驚くでしょう。
銀行の預金金利はメガバンクで0.002%、一部ネット銀行で条件によっては0.3%台の高金利で利息がつきます。 メガバンクに100万円を1年間預入した場合、1年後に20円の利息が発生しますが、約20%の税金分を差し引くと、実質手元に入るお金は16円しかありません。 同条件でネット銀行に預入した場合、1年後に3,008円の利息が発生し、同じく税金分を差し引くと、手元に入るお金は2,398円になります 。

30代の平均的な貯金額である300万円で金利0.3%、10年間の預入をシミュレーションすると、利息は9万73円、手残りは7万1,776円になりました。

現金価値が目減りすることを切り離して考えても、預金だけでは防衛策として不十分であることが、上記の結果から分かるでしょう 。

インフレに強い資産運用とは

私たち日本人は、引き続きインフレに備え、預金以外での資産形成を余儀なくされるでしょう。 インフレに強いとされる資産運用法は、主に下記の3つです。

株式

株式はインフレに強い資産であると言われていますが、その中でも特にインフレ対策になる企業銘柄の選定が必要になります。 インフレは物価上昇により家計を苦しめる悪いイメージが根強くありますが、株式を保有する投資家の間では「好転」と捉えられることもあるのです。 選択する株式次第では、インフレが強い味方になってくれるでしょう。

不動産投資

インフレの発生は「不動産価格」を高騰させるため、現物資産である不動産投資はインフレに強いとされています。 インフレに強い理由については後述しますが、最近では初心者が始めやすい少額商品も増え、不動産投資はより身近になっています。

円安によるインフレは海外資産が有効

米国との差で生じる円安の対策には、海外資産の保有が有効的でしょう。 日本に限定した「現預金」「国債」「保険」は円安に弱く、インフレが進むとさらに資産性が低下していきます。 一方で「米国株」や「全世界株」、「外貨」などは円安に強い資産として注目を浴び、今後の資産形成に有効的です。

不動産投資がインフレ対策として知られているワケ

世界的にインフレが起こる以前から、不動産価格は高騰を続けており、マイホーム購入や不動産投資において、各方面で様々な議論が行われています。 本章では、「不動産投資」と「インフレ対策」に特化したテーマで解説を進めていきます。

都内マンション価格は最高で250%の価値向上を記録

不動産購入を検討している方の中には、「今は買うべきではない」と言われ、マンション購入の時期を見計らっている方が多くいることでしょう。 分譲マンションは、敷地の一部所有権は割り当てられるものの、実際の土地は手に入らず、売るときの「リセールバリュー(資産価値)」が非常に重視されます。

不動産データバンクである「東京カンテイ」の資料によれば、2022年のリセールバリュー最高駅は「六本木一丁目」で、251.6%でした。 単純に考えると、2017年に購入した中古マンションを2022年に売却した場合、平均で購入価格の2.5倍以上の価格で売れる、という話になります。 5年間居住したことで経年劣化が起こっているのに、2.5倍以上の価格で売れるというのです。

同調査対象である首都圏398駅のうち、大半が100%を超えており、首都圏のリセールバリューの高さが伺えるでしょう。 さらに、その中で資産価値が1.5倍以上になった駅は71駅で、資産力としての強さが現れています。

マンション価格・地価が高騰した主な理由

不動産の高騰はマンションのみならず、その影響は地価にも及んでいます。 日本の地価は全国的に上昇しており、「土地転がし」と呼ばれる地価高騰による売却益を狙う人もいるほどです。 では、これほどまでに不動産高騰が続いた要因として、考えられる代表的な理由を4つご紹介します。

建築費用の高騰

近年話題のウッドショックで戸建ての価格上昇は有名な話ですが、RC造のマンションにおいても、建築費用は増加しています。
一般財団法人建設物価調査会による「マンション建築費の高騰」、国土交通省が公表する「建築工事費デフレーター」いずれのデータにおいてもマンションの建築コストの増加が確認されました。 特に2021年以降の上昇は著しく、今後の推移も上昇するものと予測されています。

土地の減少による地価上昇

新型コロナウイルスのパンデミック化による先行き不透明さが、地価上昇にも影響を与えました。 不動産売却を検討する売主は、「できる限り高く売りたい」と考える方がほとんどで、2020年以降は経済の様子見をする状況が続き、物件の売却数が減少したのです。 在庫数が低下し、市場に流通する土地数が需要を大きく下回ってしまったことが、地価上昇に拍車をかけました。

金融緩和政策の影響

不動産価格と金利は比例関係にあり、金利が下がると不動産価格は上昇し、金利が上がると不動産価格は下落します。 日本では2000年以降低金利政策が進められ、ローンの借入に対するハードルが低下し、買主は融資が容易になるでしょう。買主の需要が高まることで、徐々に需要と供給の比重に変化が生じ、不動産価格の高騰に繋がったものとみられています。

投資用物件への人気上昇

不動産の需要が大きくなった理由の1つに「不動産投資」の人気上昇が挙げられます。 REITや不動産型クラウドファンディングなど、不動産の新しい投資スタイルが生まれた結果、投資初心者や外国人にも身近なものとなり、需要を推し進めている状況です。 新型コロナウイルスの影響で「ホテル」や「商業施設」への投資規模が縮小する一方、「賃貸住宅」は根強い人気で、「物流施設」の人気も上昇しています。

インフレになっても不動産投資が強い理由

最近再注目されている不動産投資は、インフレに強く保有資産として今後の価値も見込めそうです。 一体なぜ、不動産投資はインフレに強いのでしょうか。

実物資産だから

不動産は株式と違い、実物の商品自体に価値がある実物資産なので、経済や為替の影響による値崩れが起こりづらいのが特徴です。 先物取引では何らかの事情により株価が暴落すると、投資した元本は一気にマイナスに落ち込みますが、不動産は長期に渡る使用でも価値がゼロまで落ちることは考えにくいでしょう。

家賃も上昇するから

インフレで物価上昇が起こると、不動産価格の高騰が見られ、物価の1つである家賃上昇が容易になります。 すでに居住中の入居者は契約更新時などに協議が必要ですが、空室で入居者募集時は、家賃を上昇させやすいタイミングとなるでしょう。 毎月のローン返済金額が変わることなく家賃の値上げに成功すると、キャッシュフローに良い影響をもたらしてくれます。

ローンが目減りするから

多くの不動産投資では購入時にローンを組みますが、借入元本は現金と同じく、インフレによってその価値が目減りします。 つまり、返済するお金の価値が少なく、結果的に投資の収益性を考慮すると有利に働くのです。

その他不動産投資におけるメリット・デメリット

入居者からの家賃収入で運用する不動産投資には、その他にも節税効果が得られる、生命保険代わりになるなど得られるメリットが多くあります。 しかし、不動産は金額が大きいため、慎重に検討していかなくてはいけません。 不動産投資におけるメリット・デメリットは、別の記事でも詳しく紹介しておりますので、こちらも併せてご覧ください。

まとめ

インフレと円安、また金利と不動産には強い結びつきがあります。 これらを取り巻く経済は、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻で激動していますが、今後の日本で暮らしていくには、不動産投資などこれらに対応した資産防衛策を検討しましょう。 現状円安の回復目途は立っておらず、円預金だけを続けていく人に警鐘を鳴らす必要がありそうです。

ベルテックスでは資産形成にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.17

市況

ベルテックスコラム事務局

インフレによる資産の目減りを防ぐためには?おすすめの防衛策を紹介

  • 日本の現状
  • 資産形成

昨今、世界中で起きているインフレの波は日本にも押し寄せ、国民の生活に大打撃を与えています。 代表的な影響は物価上昇で、「インフレが続くと円安になる」のは有名な話です。 迫りくるインフレへの対応にひっ迫する中、同時に円安による資産の目減りが止まらず、私たち国民の不安はさらに大きくなっていきます。

この記事では、インフレと円安の理由や関係性、インフレに対応するための資産防衛策について、解説していきます。

最近の円安の理由を世界のインフレから考える

10年前の2013年における為替レートは、1ドル100円を下回る月がありましたが、2023年現在は1ドル140円を上回る状況です 。 中でも2017年から2022年までの5年間は、あまり変動することなく落ち着いており、ここ1年程度で急激に円安が進行したことが伺えます。 ここまで円安が推し進められた理由は一体何なのか、読み解いていきましょう。

世界の物価上昇率

昨今のインフレに苦しめられているのは、日本だけではありません。 国連による専門機関IMF (国際通貨基金)の予測では、世界のインフレ率は2021年の4.7%から2022年の8.8%への上昇が著しく、その後2023年に6.5%、2024年は4.1%と減速する見込みです。

同時に世界経済の成長率は2021年に6.0%、2023年は前年比-2.8%となる3.2%、さらに2023年には2.7%へ低迷するとされています。 世界の中でも、米国とユーロの物価指数はとりわけ高水準で、2022年12月の各国における消費者物価指数の推移(CPI)は、日本で+4.0%、米国で+6.5%、ユーロはさらに上回る+9.2%を記録しています 。

日本の物価上昇の現状

私たちはインターネットや実店舗での買い物を介して、また光熱費など日常的に物価の高騰を感じていますが、日本の2倍以上の物価上昇を記録している諸外国の状況には驚きでしょう。 総務省による「消費者物価指数」によれば、日本におけるインフレについて、上昇率+4.0%は1982年2月以来の記録で、なんと40年ぶりです。
2023年7月分の「消費者物価指数」では、総合指標は2020年を100として105.7へ3.3%の上昇となりました。
値上がりは、特に食品とエネルギーが中心で、生鮮食品を除く総合指数は105.4、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.9と公表されています。 調査では生鮮食品とされていますが、冷凍食品や味噌などの調味料、アイスやお菓子といった様々な食品が、大小企業を問わず値上げを続けている状況です。

また、資源エネルギー庁の発表では、2023年7月24日時点で、レギュラーガソリンの店頭販売価格は、全国 平均174.8円/Lでした。前週比+0.8円ですが、8月以降180円超のさらなる値上げが予想されています。

昨今の物価上昇の主な理由とは

値上げされたと思ったらまたすぐに値上げ、物価上昇に歯止めが効かず、先行き不透明な状態が続いています。 物価上昇の要因は一体何か、下記で具体的に4点ご説明します。

新型コロナウイルス、ウクライナ侵攻、中東の不安定さ

まず、世界的なインフレの大きな要因は、ロシアによるウクライナ侵攻と新型コロナウイルスの長期化です。 新型コロナウイルスの影響で人々の行動が制限され、飲食・旅行業界を筆頭に多くの業界へ打撃を与え、経済の不活性化で、資金の流れが完全に停止しました。

ウクライナ侵攻に関してロシア側は当初の計画では、ここまでの長期化は予測していなかったとされています。 最近は、「対ロシア制裁」として各国がロシアへの輸出入に対する制限・措置をとり、原油や天然ガス、穀物や金属などロシアから輸入していた多くの品目を他国に頼る動きが見られます。

そして、これら2つの要因以前から問題視されていた「中東の不安定さ」が挙げられます。 「中東」とはイギリス視点で、西アジアからアフリカにかけたエリアのことです。上記のように戦争勃発による経済への影響は大きく、多種多様な民族が存在するこのエリアでは、常に戦乱がやみません。 過去の戦争や協定など歴史的要因が複雑に絡み合っており、豊富な資源を持つ中東を狙った諸外国の策略も大きく、現状不安定さを解決するのは難しいでしょう。

原材料価格の高騰

次に、商品を作る工程で欠かせない製造業において、コストの大半である「原材料」と「エネルギーコスト」の高騰が挙げられます。 特に中国の「ゼロ・コロナ政策」では、厳しいロックダウンにより工場が稼働停止し、製造業に携わる人々の暮らしを脅かしました。 ロックダウンの影響で労働者の休日が増え、解雇や内定取り消しなど多くの人々の職が失われ、製造量が減少するとともに、商品不足で価格高騰に進展しています。
半導体不足はとりわけ問題視され、電子機器や自動車などは価格高騰のみならず、何年待ちなどお金を払っても購入できない事態へ陥りました。

円安の影響

日本では、日常品の多くを海外からの輸入に頼っています。 また、家電製品や通信機器など、複数のパーツからなる部品の一部を輸入することも多く、製品を販売するためには、貿易を止めることはできません。 円安で日本の通貨が安くなることで、輸入品の価格上昇に繋がり、利益を出すために商品価格を値上げせざるを得ない状況になっています。

インフレ圧が他国より低く低金利政策をとっているため

インフレ抑制のためには、一般的に金利を上昇させる必要があるとされています。 経済で物価水準の上昇を指す言葉で「インフレ圧力」という言葉がありますが、現在世界中でインフレ圧力が高まっている状況です。 インフレ圧力が高まっている状況下で、IMFは「各国の中央銀行は緩和的な金融政策や低金利を維持する余裕がない」と述べています。 この状況を加味して世界が金利上昇傾向にある中、日本で金利上昇が起こると、日銀が保有している国債価格の大暴落により巨額の損失が生じてしまうので、日本はいまだ低金利政策をとっています。 金利上昇には慎重な姿勢をみせていますが、この姿勢が物価上昇に大きく影響していると言えるでしょう。

為替相場が変化しない場合でも価値は下がる !?

そもそも昨今の円安は、ここ数十年の諸外国と日本の「経済成長格差」が今になって浮き彫りになっています。 バブル期以降、日本の経済が徐々に低迷していく一方で、諸外国では物価や賃金が上がり、成長を見せてきました。日本の労働者の賃金が上がらない背景には、ここ数十年の日本の物価がほとんど変わっていないことが起因しています。
その結果として、労働意欲やスキルが落ち、投資家たちは国外投資するようになり、日本企業の生産性が減退してしまいました。
日本企業の拠点が海外に移り変わり、収益を輸出に頼る日本のスタイルが壊れた末の円安であり、為替相場の変動に関係なく、日本自体の価値が下がっていると考えられます。

円の価値は目減りする一方

このように日本で物価上昇と円安が発生すると、現金や銀行で保有している日本円の価値はどんどん減っていきます。 投資に消極的で「安全資産」として現金保有する人口割合が多い日本ですが、現預金を取り巻く状況が大きく変わってきているようです。 価値が目減りすることのない「株式」「投資信託」など、日本では保有資産の見直しが必要なタイミングに直面しています。

インフレ下における資産の防衛方法とは

様々な要因が引き金となって起こるインフレですが、国の弱体化が進む日本にとって、昨今のインフレはひときわデメリットが目立っています。 インフレが取り巻く中で大幅な年収アップが見込めない現状、今後の日本を生き抜くためには、給与所得に頼るだけでなく、自身で資産運用していくことで収入増加を図らなくてはいけません。

30年後に資産が半分になる

もしも、このままインフレが続いた場合、私たち日本人が持っている現金の価値はどうなるのでしょうか。 インフレの状況を昨年と比較する「インフレ率」は、2~3%が望ましい指標と言われています。 このままインフレ率が上昇を続け、毎年2%ずつ物価上昇した場合、現金1000万円は10年後に836万円、20年後に672万円、30年後にはなんと約半分の508万円まで価値が下落してしまうのです。

預金だけするのはNG

現金の目減りと同時に考えておきたいのは、銀行の定期預金では資産増加が見込めない点です。 今や周知の事実ですが、銀行への預入だけでは本当に資産増加は見込めないのか、実際の数字を見てみると驚くでしょう。
銀行の預金金利はメガバンクで0.002%、一部ネット銀行で条件によっては0.3%台の高金利で利息がつきます。 メガバンクに100万円を1年間預入した場合、1年後に20円の利息が発生しますが、約20%の税金分を差し引くと、実質手元に入るお金は16円しかありません。 同条件でネット銀行に預入した場合、1年後に3,008円の利息が発生し、同じく税金分を差し引くと、手元に入るお金は2,398円になります 。

30代の平均的な貯金額である300万円で金利0.3%、10年間の預入をシミュレーションすると、利息は9万73円、手残りは7万1,776円になりました。

現金価値が目減りすることを切り離して考えても、預金だけでは防衛策として不十分であることが、上記の結果から分かるでしょう 。

インフレに強い資産運用とは

私たち日本人は、引き続きインフレに備え、預金以外での資産形成を余儀なくされるでしょう。 インフレに強いとされる資産運用法は、主に下記の3つです。

株式

株式はインフレに強い資産であると言われていますが、その中でも特にインフレ対策になる企業銘柄の選定が必要になります。 インフレは物価上昇により家計を苦しめる悪いイメージが根強くありますが、株式を保有する投資家の間では「好転」と捉えられることもあるのです。 選択する株式次第では、インフレが強い味方になってくれるでしょう。

不動産投資

インフレの発生は「不動産価格」を高騰させるため、現物資産である不動産投資はインフレに強いとされています。 インフレに強い理由については後述しますが、最近では初心者が始めやすい少額商品も増え、不動産投資はより身近になっています。

円安によるインフレは海外資産が有効

米国との差で生じる円安の対策には、海外資産の保有が有効的でしょう。 日本に限定した「現預金」「国債」「保険」は円安に弱く、インフレが進むとさらに資産性が低下していきます。 一方で「米国株」や「全世界株」、「外貨」などは円安に強い資産として注目を浴び、今後の資産形成に有効的です。

不動産投資がインフレ対策として知られているワケ

世界的にインフレが起こる以前から、不動産価格は高騰を続けており、マイホーム購入や不動産投資において、各方面で様々な議論が行われています。 本章では、「不動産投資」と「インフレ対策」に特化したテーマで解説を進めていきます。

都内マンション価格は最高で250%の価値向上を記録

不動産購入を検討している方の中には、「今は買うべきではない」と言われ、マンション購入の時期を見計らっている方が多くいることでしょう。 分譲マンションは、敷地の一部所有権は割り当てられるものの、実際の土地は手に入らず、売るときの「リセールバリュー(資産価値)」が非常に重視されます。

不動産データバンクである「東京カンテイ」の資料によれば、2022年のリセールバリュー最高駅は「六本木一丁目」で、251.6%でした。 単純に考えると、2017年に購入した中古マンションを2022年に売却した場合、平均で購入価格の2.5倍以上の価格で売れる、という話になります。 5年間居住したことで経年劣化が起こっているのに、2.5倍以上の価格で売れるというのです。

同調査対象である首都圏398駅のうち、大半が100%を超えており、首都圏のリセールバリューの高さが伺えるでしょう。 さらに、その中で資産価値が1.5倍以上になった駅は71駅で、資産力としての強さが現れています。

マンション価格・地価が高騰した主な理由

不動産の高騰はマンションのみならず、その影響は地価にも及んでいます。 日本の地価は全国的に上昇しており、「土地転がし」と呼ばれる地価高騰による売却益を狙う人もいるほどです。 では、これほどまでに不動産高騰が続いた要因として、考えられる代表的な理由を4つご紹介します。

建築費用の高騰

近年話題のウッドショックで戸建ての価格上昇は有名な話ですが、RC造のマンションにおいても、建築費用は増加しています。
一般財団法人建設物価調査会による「マンション建築費の高騰」、国土交通省が公表する「建築工事費デフレーター」いずれのデータにおいてもマンションの建築コストの増加が確認されました。 特に2021年以降の上昇は著しく、今後の推移も上昇するものと予測されています。

土地の減少による地価上昇

新型コロナウイルスのパンデミック化による先行き不透明さが、地価上昇にも影響を与えました。 不動産売却を検討する売主は、「できる限り高く売りたい」と考える方がほとんどで、2020年以降は経済の様子見をする状況が続き、物件の売却数が減少したのです。 在庫数が低下し、市場に流通する土地数が需要を大きく下回ってしまったことが、地価上昇に拍車をかけました。

金融緩和政策の影響

不動産価格と金利は比例関係にあり、金利が下がると不動産価格は上昇し、金利が上がると不動産価格は下落します。 日本では2000年以降低金利政策が進められ、ローンの借入に対するハードルが低下し、買主は融資が容易になるでしょう。買主の需要が高まることで、徐々に需要と供給の比重に変化が生じ、不動産価格の高騰に繋がったものとみられています。

投資用物件への人気上昇

不動産の需要が大きくなった理由の1つに「不動産投資」の人気上昇が挙げられます。 REITや不動産型クラウドファンディングなど、不動産の新しい投資スタイルが生まれた結果、投資初心者や外国人にも身近なものとなり、需要を推し進めている状況です。 新型コロナウイルスの影響で「ホテル」や「商業施設」への投資規模が縮小する一方、「賃貸住宅」は根強い人気で、「物流施設」の人気も上昇しています。

インフレになっても不動産投資が強い理由

最近再注目されている不動産投資は、インフレに強く保有資産として今後の価値も見込めそうです。 一体なぜ、不動産投資はインフレに強いのでしょうか。

実物資産だから

不動産は株式と違い、実物の商品自体に価値がある実物資産なので、経済や為替の影響による値崩れが起こりづらいのが特徴です。 先物取引では何らかの事情により株価が暴落すると、投資した元本は一気にマイナスに落ち込みますが、不動産は長期に渡る使用でも価値がゼロまで落ちることは考えにくいでしょう。

家賃も上昇するから

インフレで物価上昇が起こると、不動産価格の高騰が見られ、物価の1つである家賃上昇が容易になります。 すでに居住中の入居者は契約更新時などに協議が必要ですが、空室で入居者募集時は、家賃を上昇させやすいタイミングとなるでしょう。 毎月のローン返済金額が変わることなく家賃の値上げに成功すると、キャッシュフローに良い影響をもたらしてくれます。

ローンが目減りするから

多くの不動産投資では購入時にローンを組みますが、借入元本は現金と同じく、インフレによってその価値が目減りします。 つまり、返済するお金の価値が少なく、結果的に投資の収益性を考慮すると有利に働くのです。

その他不動産投資におけるメリット・デメリット

入居者からの家賃収入で運用する不動産投資には、その他にも節税効果が得られる、生命保険代わりになるなど得られるメリットが多くあります。 しかし、不動産は金額が大きいため、慎重に検討していかなくてはいけません。 不動産投資におけるメリット・デメリットは、別の記事でも詳しく紹介しておりますので、こちらも併せてご覧ください。

まとめ

インフレと円安、また金利と不動産には強い結びつきがあります。 これらを取り巻く経済は、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻で激動していますが、今後の日本で暮らしていくには、不動産投資などこれらに対応した資産防衛策を検討しましょう。 現状円安の回復目途は立っておらず、円預金だけを続けていく人に警鐘を鳴らす必要がありそうです。

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この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

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