2023.10.10

資産運用

ベルテックスコラム事務局

会社員が税金を減らす方法。控除や副業・不動産投資での節税対策を解説

  • 節税・税金
  • 資産形成
  • 不動産投資
  • 副業
  • 会社員

会社員は、給与から所得税や住民税が天引きされて、年末調整で納税が完結するため、「節税できない」と思われるかもしれません。しかし、サラリーマンでも、所得控除などを活用することにより、税負担を軽減することが可能です。具体的には、どのような方法があるのでしょうか。

この記事では、各種控除や副業・不動産投資の節税など、サラリーマンが税金を減らす方法を紹介します。

サラリーマンが税金を減らすために利用したい制度

まずは、サラリーマンが税金を減らすために利用したい制度を3つ紹介します。

ふるさと納税

ふるさと納税とは、生まれ故郷や応援したい自治体に寄附をすると、寄附金の額に応じて地域の特産品などの返礼品を受け取れる制度です。寄附金の額のうち、自己負担額2,000円を除いた全額が所得税や住民税の控除対象となります。

控除上限額は収入や家族構成などによって異なり、ふるさと納税のポータルサイトなどで確認できます。

ふるさと納税は、寄附金のうち2,000円を超える部分が戻ってくるだけなので、正確には節税できるわけではありません。しかし、自己負担2,000円で自治体から返礼品をもらえるため、お得な制度といえます。

ふるさと納税は原則として確定申告が必要ですが、会社員は確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」を利用できます。寄附先が5自治体以内であれば、自治体に申請書を提出すると確定申告不要で控除を受けられます。

NISA(少額投資非課税制度)

NISAは、株式や投資信託などの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。金融商品の利益には、通常約20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。しかし、NISA口座で取引すると税金がかからないため、より多くのお金を手元に残せます。

2024年以降はNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示されており、非課税投資枠は大幅に拡大され、非課税期間は無制限になる予定です。資産運用の税金を節税したい場合は、NISAをうまく活用しましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で掛金を支払い、自分で投資先を選んで運用を行う私的年金です。公的年金に上乗せすることによって、将来もらえる年金額を増やすことが可能です。定期預金や保険、投資信託など、金融機関ごとに異なる商品ラインナップから自分で運用先を選択できます。

年金制度の加入状況によっては、サラリーマンでもiDeCoに加入できる場合があります。会社員の掛金拠出限度額は、勤務先の年金制度に応じて月1万2,000円~2万3,000円(年14万4,000円~27万6,000円)となっています。

iDeCoには、以下の3つの税制上のメリットがあります。

  • 掛金は全額所得控除
  • 運用益は非課税
  • 受取時は所得控除が適用

iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されます。仮に税率20%(所得税10%、住民税10%)の人が毎月1万円を拠出すると、年2万4,000円の節税になります。 NISAと同じく、iDeCoの運用益に対して課税はされません。また、将来掛け金を受け取る際は「退職所得控除」または「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。

iDeCoは原則として60歳まで掛け金を引き出せない点に注意が必要ですが、税金を減らしながら老後資金を準備できるお得な制度です。

サラリーマンが年末調整で受けられる各種控除

会社員は、年末調整で各種控除を受けることにより、納めすぎた税金を戻してもらえます。所得控除や税額控除を受けられる場合は、忘れずに手続きをすることが大切です。ここでは、年末調整で受けられる各種控除を紹介します。

配偶者控除

配偶者控除とは、所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。納税者本人の合計所得金額に応じて、最高38万円(老人控除対象配偶者の場合は最高48万円)の控除を受けられます。老人控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で70歳以上の人をいいます。配偶者控除の控除額は以下の通りです。

納税者本人の合計所得金額 控除額
(一般の控除対象配偶者)
控除額
(老人控除対象配偶者)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超~950万円以下 26万円 32万円
950万円超~1,000万円以下 13万円 16万円

控除対象配偶者は、合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入103万円以下)の配偶者です。民法の規定による配偶者であることが要件のため、内縁関係の人は対象外となります。また納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられません。

配偶者特別控除

配偶者特別控除とは、配偶者の所得金額に応じて一定額の所得控除を受けられる制度です。納税者本人および配偶者の合計所得金額に応じて、最高38万円の控除を受けられます。

配偶者控除を受けられなくても、一定の要件を満たせば配偶者特別控除が適用されます。ただし、夫婦の間で互いに受けることはできません。配偶者特別控除の控除額は以下の通りです。

配偶者の合計所得金額 納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万~
950万円以下
950万~
1000万円以下
48万円超~95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超~100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超~105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超~110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超~115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超~120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超~125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超~130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超~133万円以下 3万円 2万円 1万円

納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者特別控除は受けられません。

配偶者控除と同じく、控除対象配偶者は民法の規定による配偶者で、内縁関係の人は対象外です。また、配偶者の合計所得金額が133万円を超える場合は適用されません。

扶養控除

扶養控除は、所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に、一定額の所得控除を受けられる制度です。扶養控除の控除額は以下の通りです。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族(同居老親等) 58万円
老人扶養親族(同居老親以外) 48万円

控除対象扶養親族とは、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上、特定扶養親族は19歳以上23歳未満、老人扶養親族は70歳以上の人をいいます。老親等との同居については、病気のための入院で納税者と別居している場合は、同居として取り扱うことが可能です。ただし、老人ホーム等に入所している場合は同居に該当しないので注意しましょう。

生命保険料控除

生命保険料控除とは、生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。控除額は新契約(2012年1月1日以後に保険契約締結)と旧契約(2011年12月31日以前に保険契約締結)で異なり、新契約と旧契約の合計で最高12万円となります。

新契約に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額はそれぞれ以下の通りです。

年間支払保険料 控除額
2万円以下 支払保険料の全額
2万円超~4万円以下 支払保険料×1/2+1万円
4万円超~8万円以下 支払保険料×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

一方、旧契約に基づく旧生命保険料、旧個人年金保険料の控除額はそれぞれ以下のようになります。

年間支払保険料 控除額
2万5,000円以下 支払保険料の全額
2万5,000円超~5万円以下 支払保険料×1/2+1万2,500円
5万円超~10万円以下 支払保険料×1/4+2万5,000円
10万円超 一律5万円

地震保険料控除

地震保険料控除とは、特定の地震保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。地震保険料控除の控除額は以下の通りです。

年間支払保険料 控除額
5万円以下 支払保険料の全額
5万円超 一律5万円

なお、旧損害保険料控除廃止の経過措置として、一定の要件を満たす損害保険料(旧長期損害保険料)は地震保険料控除の対象となります。旧長期損害保険料の控除額は最高1万5,000円です。

地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合は、それぞれの合計で最高5万円まで控除を受けられます。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に受けられる所得控除です。具体的には、iDeCoの掛け金が該当します。控除額は、その年に支払った掛け金の全額です。

寡婦控除

寡婦控除とは、納税者が寡婦であるときに一定額の所得控除を受けられる制度です。寡婦とは、原則としてその年の12月31日の現況で、ひとり親に該当せず、以下のいずれかに当てはまる人をいいます。

  • 夫と離婚した後に婚姻しておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
  • 夫と死別した後に婚姻していない人または夫の生死が明らかでない人で、合計所得金額が500万円以下の人

寡婦控除の控除額は27万円です。

ひとり親控除

ひとり親控除とは、納税者がひとり親であるときに一定額の所得控除を受けられる制度です。ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻していないまたは配偶者の生死が明らかでない人のうち、以下の3つ全てに当てはまる人をいいます。

  • 事実上、婚姻関係にあると認められる人がいないこと
  • 生計を一にする子がいること
  • 合計所得金額が500万円以下であること

ひとり親控除の控除額は35万円です。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得または増改築(リフォーム)をした場合に受けられる税額控除です。税額控除は、計算した税額から直接差し引かれるため、所得控除よりも高い節税効果を得られます。

住宅ローン控除では、一定の要件を満たすとローン年末残高の0.7%が最大13年間控除されます。借入限度額は住宅の環境性能等によって異なり、「長期優良住宅」など一定の省エネ基準を満たす住宅は、一般住宅よりも控除額が大きくなります。

住宅ローン控除は年末調整で控除を受けられますが、適用初年度のみ確定申告が必要です。確定申告の際は、「特別控除額の計算明細書」「ローン年末残高証明書」「登記事項証明書」などの書類を添付します。

住宅ローン控除の適用可否や必要書類は、住宅を購入する前に住宅メーカーなどに確認するといいでしょう。

サラリーマンが確定申告で受けられる各種控除

年末調整では受けられなくても、確定申告をすれば受けられる控除もあります。ここでは、サラリーマンが確定申告で受けられる各種控除を紹介します。

医療費控除

医療費控除とは、自己や配偶者、その他の親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる所得控除です。その年の1月1日~12月31日に実際に支払った医療費が控除対象となります。

医療費控除の金額は、「実際に支払った医療費-10万円(または総所得金額の5%)」です(最高200万円)。保険金などで補てんされる金額がある場合は、支払った医療費から差し引きます。

医療費控除を受けるには、医療費の領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付する必要があります。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは、自己や配偶者、その他の親族のために特定一般用医薬品を購入した場合に一定額の所得控除を受けられる制度です。医療費控除との選択適用となるため、有利な方を選んで控除を受けられます。

控除額は、「特定一般用医薬品購入費の合計-1万2,000円」です(最高8万8,000円)。

購入した一般用医薬品がセルフメディケーション税制の対象かどうかは、厚生労働省のホームページで確認できます。また、一部の対象商品には、パッケージに適用対象である旨を示す識別マークが掲載されているので、併せて確認しておきましょう。

特定支出控除

特定支出控除は、サラリーマンが仕事に関する支出を必要経費として計上できる制度です。一定の要件を満たす支出については、給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。控除対象となる支出は以下の通りです。

  • 通勤費
  • 職務上の旅費
  • 転居費
  • 研修費
  • 資格取得費
  • 帰宅旅費(単身赴任など)
  • 図書費、衣服費、交際費など(65万円まで)

上記のうち、給与支払者が証明したものが特定支出として認められます。確定申告の際は、特定支出に関する明細書や給与支払者の証明書の添付が必要です。

譲渡損失の繰越控除(株取引の損失など)

譲渡損失の繰越控除とは、株取引などの損失を3年間繰り越して、翌年以降の株式の譲渡益や配当などから控除できる制度です。翌年以降の所得を減らせるため、所得税や住民税の節税になります。

例えば、2022年に株取引で損失100万円、2023年に利益100万円が生じたとします。この場合、2022年の損失を繰り越せば、2023年は損益通算後の所得が0円になるので税金はかかりません。

  2022年 2023年
株式の譲渡損益 ▲100万円 +100万円
損失の繰越控除 ▲100万円
損益通算後の所得 0円
納税額 0円 0円

この特例を受けるためには、損失が生じた年だけでなく、その損失を繰り越す期間中は毎年確定申告をする必要があります。

副業をしているサラリーマンの節税対策

会社員は、副業を活用して節税することも可能です。ここでは、副業をしているサラリーマンの節税対策を紹介します。

青色申告をする

青色申告とは、収入や必要経費に関する日々の取引を記帳し、請求書などの書類を保存することによって税務上有利な取扱いを受けられる制度です。

最高55万円(一定の要件を満たす場合は最高65万円)の「青色申告特別控除」、親族に支払った給与を経費にできる「青色事業専従者給与」などの特典があります。

青色申告が認められる所得は、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3つです。副業が事業所得と認められれば、サラリーマンでも青色申告を利用できます。

ただし、副業収入は基本的に「雑所得」に該当します。事業所得として申告するには、継続性や反復性、収入額などの観点から事業として認められる必要があるため、事前に税務署や税理士に確認することが大切です。

副業の費用を経費に計上する

副業で収入を得るために要した支出は、税務上の必要経費として認められます。経費が多くなれば所得が抑えられるので、所得税や住民税の節税になります。副業のためにお金を支払った場合は、忘れずに経費として計上しましょう。

家事按分をする

家事按分とは、支出額をプライベート部分と事業部分に区分することをいいます。例えば、賃貸マンション(自宅)の一部を副業の事務所として使っている場合、家賃の一部を副業の必要経費として計上できます。この場合、「床面積」や「使用時間」などを基準に按分計算を行うのが一般的です。按分計算をして経費として計上できる金額が増えれば、所得税や住民税の節税になります。

家事按分を行う場合は、按分計算の基準を明確にして、税務署に説明できるようにしておくことが大切です。

不動産投資で節税する仕組み

サラリーマンは、不動産投資を利用して節税することも可能です。ここでは、会社員が不動産投資で節税できる仕組みを解説します。

赤字を給与所得と損益通算する

不動産投資の家賃収入は「不動産所得」に該当します。不動産所得は、損益通算の対象であるため、損失が生じた場合は、その損失を給与所得から控除できます。不動産投資の赤字と給与を相殺することによって、給与にかかる所得税や住民税を節税することが可能です。不動産投資は、初期費用がかかり、不定期で修繕費が発生することもあるため、年によっては赤字になるかもしれません。赤字になった場合、サラリーマンなら給与所得から赤字分を差し引けるので、税負担を軽減できます。

減価償却をうまく活用する

減価償却とは、資産の取得価額を取得時に全額必要経費にするのではなく、その資産の使用可能期間(法定耐用年数)にわたって分割して必要経費にしていく手続きです。不動産投資では、物件の取得価額のうち建物部分が減価償却の対象となります。減価償却費は必要経費になるので課税所得を減らす効果がありますが、計上時に現金の支出を伴いません。そのため、減価償却をうまく活用すれば、現金を支出することなく税負担を軽減できる可能性があります。

土地は減価償却の対象外であるため、建物比率の高い物件を選ぶ方がより多くの減価償却費を計上できます。

まとめ

この記事では、各種控除や副業・不動産投資の節税など、サラリーマンが税金を減らす方法を紹介しました。 「サラリーマンは節税できない」と思うかもしれませんが、税金を減らす方法はたくさんあります。 少しでも税金の負担を減らしたい場合は、今回紹介した方法のうち、実践できそうなものから試してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.10

資産運用

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会社員は、給与から所得税や住民税が天引きされて、年末調整で納税が完結するため、「節税できない」と思われるかもしれません。しかし、サラリーマンでも、所得控除などを活用することにより、税負担を軽減することが可能です。具体的には、どのような方法があるのでしょうか。

この記事では、各種控除や副業・不動産投資の節税など、サラリーマンが税金を減らす方法を紹介します。

サラリーマンが税金を減らすために利用したい制度

まずは、サラリーマンが税金を減らすために利用したい制度を3つ紹介します。

ふるさと納税

ふるさと納税とは、生まれ故郷や応援したい自治体に寄附をすると、寄附金の額に応じて地域の特産品などの返礼品を受け取れる制度です。寄附金の額のうち、自己負担額2,000円を除いた全額が所得税や住民税の控除対象となります。

控除上限額は収入や家族構成などによって異なり、ふるさと納税のポータルサイトなどで確認できます。

ふるさと納税は、寄附金のうち2,000円を超える部分が戻ってくるだけなので、正確には節税できるわけではありません。しかし、自己負担2,000円で自治体から返礼品をもらえるため、お得な制度といえます。

ふるさと納税は原則として確定申告が必要ですが、会社員は確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」を利用できます。寄附先が5自治体以内であれば、自治体に申請書を提出すると確定申告不要で控除を受けられます。

NISA(少額投資非課税制度)

NISAは、株式や投資信託などの金融商品から得られる利益が非課税になる制度です。金融商品の利益には、通常約20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。しかし、NISA口座で取引すると税金がかからないため、より多くのお金を手元に残せます。

2024年以降はNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示されており、非課税投資枠は大幅に拡大され、非課税期間は無制限になる予定です。資産運用の税金を節税したい場合は、NISAをうまく活用しましょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で掛金を支払い、自分で投資先を選んで運用を行う私的年金です。公的年金に上乗せすることによって、将来もらえる年金額を増やすことが可能です。定期預金や保険、投資信託など、金融機関ごとに異なる商品ラインナップから自分で運用先を選択できます。

年金制度の加入状況によっては、サラリーマンでもiDeCoに加入できる場合があります。会社員の掛金拠出限度額は、勤務先の年金制度に応じて月1万2,000円~2万3,000円(年14万4,000円~27万6,000円)となっています。

iDeCoには、以下の3つの税制上のメリットがあります。

  • 掛金は全額所得控除
  • 運用益は非課税
  • 受取時は所得控除が適用

iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されます。仮に税率20%(所得税10%、住民税10%)の人が毎月1万円を拠出すると、年2万4,000円の節税になります。 NISAと同じく、iDeCoの運用益に対して課税はされません。また、将来掛け金を受け取る際は「退職所得控除」または「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。

iDeCoは原則として60歳まで掛け金を引き出せない点に注意が必要ですが、税金を減らしながら老後資金を準備できるお得な制度です。

サラリーマンが年末調整で受けられる各種控除

会社員は、年末調整で各種控除を受けることにより、納めすぎた税金を戻してもらえます。所得控除や税額控除を受けられる場合は、忘れずに手続きをすることが大切です。ここでは、年末調整で受けられる各種控除を紹介します。

配偶者控除

配偶者控除とは、所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。納税者本人の合計所得金額に応じて、最高38万円(老人控除対象配偶者の場合は最高48万円)の控除を受けられます。老人控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で70歳以上の人をいいます。配偶者控除の控除額は以下の通りです。

納税者本人の合計所得金額 控除額
(一般の控除対象配偶者)
控除額
(老人控除対象配偶者)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超~950万円以下 26万円 32万円
950万円超~1,000万円以下 13万円 16万円

控除対象配偶者は、合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入103万円以下)の配偶者です。民法の規定による配偶者であることが要件のため、内縁関係の人は対象外となります。また納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除は受けられません。

配偶者特別控除

配偶者特別控除とは、配偶者の所得金額に応じて一定額の所得控除を受けられる制度です。納税者本人および配偶者の合計所得金額に応じて、最高38万円の控除を受けられます。

配偶者控除を受けられなくても、一定の要件を満たせば配偶者特別控除が適用されます。ただし、夫婦の間で互いに受けることはできません。配偶者特別控除の控除額は以下の通りです。

配偶者の合計所得金額 納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万~
950万円以下
950万~
1000万円以下
48万円超~95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超~100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超~105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超~110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超~115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超~120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超~125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超~130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超~133万円以下 3万円 2万円 1万円

納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者特別控除は受けられません。

配偶者控除と同じく、控除対象配偶者は民法の規定による配偶者で、内縁関係の人は対象外です。また、配偶者の合計所得金額が133万円を超える場合は適用されません。

扶養控除

扶養控除は、所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に、一定額の所得控除を受けられる制度です。扶養控除の控除額は以下の通りです。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族(同居老親等) 58万円
老人扶養親族(同居老親以外) 48万円

控除対象扶養親族とは、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上、特定扶養親族は19歳以上23歳未満、老人扶養親族は70歳以上の人をいいます。老親等との同居については、病気のための入院で納税者と別居している場合は、同居として取り扱うことが可能です。ただし、老人ホーム等に入所している場合は同居に該当しないので注意しましょう。

生命保険料控除

生命保険料控除とは、生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。控除額は新契約(2012年1月1日以後に保険契約締結)と旧契約(2011年12月31日以前に保険契約締結)で異なり、新契約と旧契約の合計で最高12万円となります。

新契約に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額はそれぞれ以下の通りです。

年間支払保険料 控除額
2万円以下 支払保険料の全額
2万円超~4万円以下 支払保険料×1/2+1万円
4万円超~8万円以下 支払保険料×1/4+2万円
8万円超 一律4万円

一方、旧契約に基づく旧生命保険料、旧個人年金保険料の控除額はそれぞれ以下のようになります。

年間支払保険料 控除額
2万5,000円以下 支払保険料の全額
2万5,000円超~5万円以下 支払保険料×1/2+1万2,500円
5万円超~10万円以下 支払保険料×1/4+2万5,000円
10万円超 一律5万円

地震保険料控除

地震保険料控除とは、特定の地震保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。地震保険料控除の控除額は以下の通りです。

年間支払保険料 控除額
5万円以下 支払保険料の全額
5万円超 一律5万円

なお、旧損害保険料控除廃止の経過措置として、一定の要件を満たす損害保険料(旧長期損害保険料)は地震保険料控除の対象となります。旧長期損害保険料の控除額は最高1万5,000円です。

地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合は、それぞれの合計で最高5万円まで控除を受けられます。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に受けられる所得控除です。具体的には、iDeCoの掛け金が該当します。控除額は、その年に支払った掛け金の全額です。

寡婦控除

寡婦控除とは、納税者が寡婦であるときに一定額の所得控除を受けられる制度です。寡婦とは、原則としてその年の12月31日の現況で、ひとり親に該当せず、以下のいずれかに当てはまる人をいいます。

  • 夫と離婚した後に婚姻しておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
  • 夫と死別した後に婚姻していない人または夫の生死が明らかでない人で、合計所得金額が500万円以下の人

寡婦控除の控除額は27万円です。

ひとり親控除

ひとり親控除とは、納税者がひとり親であるときに一定額の所得控除を受けられる制度です。ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻していないまたは配偶者の生死が明らかでない人のうち、以下の3つ全てに当てはまる人をいいます。

  • 事実上、婚姻関係にあると認められる人がいないこと
  • 生計を一にする子がいること
  • 合計所得金額が500万円以下であること

ひとり親控除の控除額は35万円です。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得または増改築(リフォーム)をした場合に受けられる税額控除です。税額控除は、計算した税額から直接差し引かれるため、所得控除よりも高い節税効果を得られます。

住宅ローン控除では、一定の要件を満たすとローン年末残高の0.7%が最大13年間控除されます。借入限度額は住宅の環境性能等によって異なり、「長期優良住宅」など一定の省エネ基準を満たす住宅は、一般住宅よりも控除額が大きくなります。

住宅ローン控除は年末調整で控除を受けられますが、適用初年度のみ確定申告が必要です。確定申告の際は、「特別控除額の計算明細書」「ローン年末残高証明書」「登記事項証明書」などの書類を添付します。

住宅ローン控除の適用可否や必要書類は、住宅を購入する前に住宅メーカーなどに確認するといいでしょう。

サラリーマンが確定申告で受けられる各種控除

年末調整では受けられなくても、確定申告をすれば受けられる控除もあります。ここでは、サラリーマンが確定申告で受けられる各種控除を紹介します。

医療費控除

医療費控除とは、自己や配偶者、その他の親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる所得控除です。その年の1月1日~12月31日に実際に支払った医療費が控除対象となります。

医療費控除の金額は、「実際に支払った医療費-10万円(または総所得金額の5%)」です(最高200万円)。保険金などで補てんされる金額がある場合は、支払った医療費から差し引きます。

医療費控除を受けるには、医療費の領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付する必要があります。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは、自己や配偶者、その他の親族のために特定一般用医薬品を購入した場合に一定額の所得控除を受けられる制度です。医療費控除との選択適用となるため、有利な方を選んで控除を受けられます。

控除額は、「特定一般用医薬品購入費の合計-1万2,000円」です(最高8万8,000円)。

購入した一般用医薬品がセルフメディケーション税制の対象かどうかは、厚生労働省のホームページで確認できます。また、一部の対象商品には、パッケージに適用対象である旨を示す識別マークが掲載されているので、併せて確認しておきましょう。

特定支出控除

特定支出控除は、サラリーマンが仕事に関する支出を必要経費として計上できる制度です。一定の要件を満たす支出については、給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。控除対象となる支出は以下の通りです。

  • 通勤費
  • 職務上の旅費
  • 転居費
  • 研修費
  • 資格取得費
  • 帰宅旅費(単身赴任など)
  • 図書費、衣服費、交際費など(65万円まで)

上記のうち、給与支払者が証明したものが特定支出として認められます。確定申告の際は、特定支出に関する明細書や給与支払者の証明書の添付が必要です。

譲渡損失の繰越控除(株取引の損失など)

譲渡損失の繰越控除とは、株取引などの損失を3年間繰り越して、翌年以降の株式の譲渡益や配当などから控除できる制度です。翌年以降の所得を減らせるため、所得税や住民税の節税になります。

例えば、2022年に株取引で損失100万円、2023年に利益100万円が生じたとします。この場合、2022年の損失を繰り越せば、2023年は損益通算後の所得が0円になるので税金はかかりません。

  2022年 2023年
株式の譲渡損益 ▲100万円 +100万円
損失の繰越控除 ▲100万円
損益通算後の所得 0円
納税額 0円 0円

この特例を受けるためには、損失が生じた年だけでなく、その損失を繰り越す期間中は毎年確定申告をする必要があります。

副業をしているサラリーマンの節税対策

会社員は、副業を活用して節税することも可能です。ここでは、副業をしているサラリーマンの節税対策を紹介します。

青色申告をする

青色申告とは、収入や必要経費に関する日々の取引を記帳し、請求書などの書類を保存することによって税務上有利な取扱いを受けられる制度です。

最高55万円(一定の要件を満たす場合は最高65万円)の「青色申告特別控除」、親族に支払った給与を経費にできる「青色事業専従者給与」などの特典があります。

青色申告が認められる所得は、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3つです。副業が事業所得と認められれば、サラリーマンでも青色申告を利用できます。

ただし、副業収入は基本的に「雑所得」に該当します。事業所得として申告するには、継続性や反復性、収入額などの観点から事業として認められる必要があるため、事前に税務署や税理士に確認することが大切です。

副業の費用を経費に計上する

副業で収入を得るために要した支出は、税務上の必要経費として認められます。経費が多くなれば所得が抑えられるので、所得税や住民税の節税になります。副業のためにお金を支払った場合は、忘れずに経費として計上しましょう。

家事按分をする

家事按分とは、支出額をプライベート部分と事業部分に区分することをいいます。例えば、賃貸マンション(自宅)の一部を副業の事務所として使っている場合、家賃の一部を副業の必要経費として計上できます。この場合、「床面積」や「使用時間」などを基準に按分計算を行うのが一般的です。按分計算をして経費として計上できる金額が増えれば、所得税や住民税の節税になります。

家事按分を行う場合は、按分計算の基準を明確にして、税務署に説明できるようにしておくことが大切です。

不動産投資で節税する仕組み

サラリーマンは、不動産投資を利用して節税することも可能です。ここでは、会社員が不動産投資で節税できる仕組みを解説します。

赤字を給与所得と損益通算する

不動産投資の家賃収入は「不動産所得」に該当します。不動産所得は、損益通算の対象であるため、損失が生じた場合は、その損失を給与所得から控除できます。不動産投資の赤字と給与を相殺することによって、給与にかかる所得税や住民税を節税することが可能です。不動産投資は、初期費用がかかり、不定期で修繕費が発生することもあるため、年によっては赤字になるかもしれません。赤字になった場合、サラリーマンなら給与所得から赤字分を差し引けるので、税負担を軽減できます。

減価償却をうまく活用する

減価償却とは、資産の取得価額を取得時に全額必要経費にするのではなく、その資産の使用可能期間(法定耐用年数)にわたって分割して必要経費にしていく手続きです。不動産投資では、物件の取得価額のうち建物部分が減価償却の対象となります。減価償却費は必要経費になるので課税所得を減らす効果がありますが、計上時に現金の支出を伴いません。そのため、減価償却をうまく活用すれば、現金を支出することなく税負担を軽減できる可能性があります。

土地は減価償却の対象外であるため、建物比率の高い物件を選ぶ方がより多くの減価償却費を計上できます。

まとめ

この記事では、各種控除や副業・不動産投資の節税など、サラリーマンが税金を減らす方法を紹介しました。 「サラリーマンは節税できない」と思うかもしれませんが、税金を減らす方法はたくさんあります。 少しでも税金の負担を減らしたい場合は、今回紹介した方法のうち、実践できそうなものから試してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。