2025.02.17

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

借地権付き物件の不動産投資は危険!金融機関が積極的でない理由とリスクを解説

  • はじめ方・基礎知識

不動産投資の初心者にとって、借地権付き物件は魅力的な選択肢に映るかもしれません。借地権付き物件は一般的な物件より価格が安く、利回りの高い物件が多いためです。一方で、融資を引き出すのが難しい点や、その理由にもなっている借地権に固有のリスクは見逃せません。

ここでは、借地権付き物件の基本的な仕組みから、投資におけるメリット・デメリット、そして銀行の融資審査で不利になる理由までを詳しく解説します。 

借地権付き物件とは?基本的な仕組みを理解しよう

借地権付き物件は、土地は借りて建物だけを所有する不動産の形態のことです。一般的な物件より安く購入できる反面、地代の支払いや地主との関係性など、独特の課題があります。

まずは借地権付き物件の基本的な仕組みを理解しましょう。 

借地権の仕組み・所有権との違い

借地権とは、建物を所有する目的で土地の所有者と契約し、地代(=土地の賃料)を払う場合の権利形態です。

一般的な不動産所有権では土地と建物の両方を所有しますが、借地権付き物件では建物のみを所有し、土地(底地)は地主が保持したままとなります。

土地の借地権は、地主の承諾があれば売買でき、相続の対象にもなります。 

旧法借地権と新法借地権との違い

借地権の根拠となる法律は1992年(平成4年)8月1日に改正があり、改正前に成立した借地権は「旧法借地権」、改正後に成立した借地権は「新法借地権」と呼ばれます。

令和の現在も、設定されている権利の多くは旧法借地権となるため、現在の借地借家法下の新法借地権との区別に注意しましょう。 

旧法借地権の特徴

借地人の権利が強く、よほどの事情がなければ半永久的に更新できるのが特徴です。

契約期間は堅固建物(30年)と非堅固建物(20年)に区別され、地主は正当な理由がない限り借主側が希望する契約更新を拒めません。 

新法借地権の特徴

借地人と地主の権利のバランスを調整し、地主側が契約更新を拒むときの「正当な理由」が明確化されているなどの特徴を持ちます。

通常の借地権については、契約期間は30年(最初の更新は20年、それ以降は10年)に統一されました。

これとともに、契約を更新しない「定期借地権」も創設されています。 

借地権の種類

借地権は主に「普通借地権」と「定期借地権」の2種類に分類されます。

以下の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。 

種類 

契約時の存続期間 

契約更新 

利用制限 

契約終了時 

旧法借地権 

堅固建物:30年以上 

非堅固建物:20年以上 

可能 

なし 

原則として更地で返還 

(建物買取請求権を行使する余地あり) 

普通借地権 

30年以上 

可能 

なし 

原則として更地で返還 

(建物買取請求権を行使する余地あり) 

一般定期借地権 

50年以上 

不可 

なし 

原則として更地で返還 

事業用定期借地権 

10年以上50年未満 

不可 

事業用のみ 

原則として更地で返還 

建物譲渡特約付借地権 

30年以上 

不可 

なし 

建物ごと地主に売却 

【引用】日本地主家主協会「旧借地法と新法の借地借家法の違い」2025年1月15日現在の掲載内容を元に弊社作成 

普通借地権は契約更新が可能で、正当な事由がない限り地主は更新を拒否できません。

一方、定期借地権は契約期間満了後の更新はなく、建物を撤去して更地にして返還する必要があります。 

地代や保証金など必要な費用

借地権付き物件では、物件購入時の費用に加えて、運用時や売却時にも様々な費用が発生します。 

地代は土地価格の年2-3%程度が相場で、保証金は更地価格の20-25%程度を求められるのが一般的です。また、契約更新時には借地権価格の5-10%程度の更新料が必要になることがあります。 

建物の建替えや売却時には地主の承諾が必要です。その際、承諾料として更地価格の4%から6%程度(建替え時)や譲渡価格の10%程度(売却時)を支払います。 

借地権付き物件は将来的な地代値上げのリスクもあるため、長期的な収支計画を立てる際には注意が必要です。 

借地権付き物件を投資先に選ぶメリット

借地権付き物件は、金融機関の融資には課題があるものの、投資先として魅力的なメリットもあります。

特に、一般的な所有権物件と比べて高い利回りが期待できる点や、初期費用を抑えられる点が注目されます。

また、税制面での優位性もあり、適切な条件が揃えば検討に値する投資対象となり得ます。 

高利回りの物件が多い

借地権付き物件は、一般的な所有権物件と比べて2%から3%程度高い利回りが期待できます。

これは、立地の良い物件でも購入価格を抑えられる(所有権の60%から70%程度になる)ことが大きな要因です。 

具体的には、都心部の好立地物件で所有権物件の利回りが5%程度なのに対し、借地権付き物件では7%から8%の利回りになることも珍しくありません。 

ただし、これは地代支払い前の表面利回りであることに注意が必要です。

実質利回りを計算する際は、年間の賃料収入から地代を差し引いた上で、購入価格で割って算出します。デメリットの章で解説する地代の相場に注意しましょう。 

不動産取得税や固定資産税がかからない

借地権付き物件では、土地分の固定資産税がかからず、建物部分にのみ課税されます。 

たとえば、土地3,000万円・建物2,000万円の所有権物件であれば年間50万円程度の固定資産税が発生しますが、借地権付き物件では建物分の2,000万円に対する20万円程度で済みます。 

また、不動産取得税も建物分のみの課税となり、税負担を大幅に抑えることができます。地代は賃貸経費として計上でき、その他の承諾料や更新料なども、条件を満たせば経費として認められます。

こうした税務上のメリットは、長期的な収支計画を立てる上で重要なポイントとなります。 

旧法借地権の場合は契約延長がしやすい

旧法借地権では、地主が契約更新を拒否するための条件として、ほとんどの場合で「自己使用の必要性」が必要とされます。

さらに、代替地の提供などの措置も求められます。単に「契約期間が満了した」「土地を売却したい」といった理由では、地主は契約解除や更新拒絶ができません。 

もっとも、更新時には更新料(借地権価格の5%から10%程度)が必要になることが一般的ですが、この金額は交渉の余地があります。

こうした仕組みにより、借地人が希望する場合、契約を延長できる可能性が高いと言えます。 

高利回りに隠れた借地権付き物件の致命的なデメリット

借地権付き物件は一見、高利回りで魅力的な投資対象に映るかもしれません。しかし、その裏には投資の成否を左右する重大なリスクが潜んでいます。

とくに、金融機関からの融資が受けにくい点や、地主との関係性次第で運用が制限される点は、投資判断の際に慎重な検討が必要です。

ここでは、借地権付き物件特有の4つのデメリットについて解説します。 

融資を引き出しづらい

金融機関は借地権付き物件への融資について極めて慎重です。その主な理由は、担保としての価値が低く評価されるためです。

具体的には、所有権物件であれば物件価格の80%程度まで融資可能なケースでも、借地権付き物件ではよほど多くても50%程度に抑えられてしまいます。 

また、融資審査の際には、通常の収入要件や返済能力の確認に加えて、地代の支払い状況や、地主との関係性、借地契約の残存期間なども重要なチェックポイントとなります。

そこで注意したいのが、この次に解説する運用中の2つのデメリットです。 

地代の支払いが負担になりやすい

地代は一般的に土地価格の2%から3%程度とされていますが、これは毎月支払いが必要な固定費となります。たとえば、土地価格5,000万円の物件であれば、年間150万円前後の地代負担が発生することになり、空室時でもこの支払いは免れません。 

とくに都心部の人気エリアでは、地価上昇に伴う地代値上げの交渉を持ちかけられるリスクもあります。

こうした地代の上昇は、投資物件のキャッシュフローを直接的に圧迫する要因となり得ます。 

地主の意向・地主との関係性が運用に影響しやすい

借地権付き物件の運用では、多くの場面で地主の承諾が必要となります。建物の大規模修繕や建替え、賃貸条件の大幅な変更、そして売却時には必ず地主の同意を得なければなりません。

この際、承諾料として工事費用の4%から6%程度や、売却価格の10%程度を要求されることが一般的です。 

さらに、地主の相続が発生した場合、新たな地主との関係構築が必要になるほか、相続税支払いのための地代値上げや底地の売却要請といった事態に発展するケースがあることも見逃せません。

過去には、地主の承諾が得られず必要な修繕が実施できないなど、物件の価値とともに収益力の低下に繋がるトラブルが多発しています。 

出口戦略が描きにくい

借地権付き物件の最大の課題は、売却時の出口戦略が描きにくい点です。

借地権付き物件は一般的な所有権物件と比べて市場性が低く、買い手がつきにくいのが実情です。その理由として、融資が受けにくい点や、地主との新たな関係構築が必要となる点、将来的な地代値上げリスクなどが挙げられます。

加えて、土地を所有していないため、地価上昇に伴う資産価値の上昇の恩恵を受けにくい点にも留意が必要です。 

さらに、すでに述べた売却時に払う譲渡承諾料は、売却価格の目減り要因となります。地主に底地を買い取ってもらうという選択肢もありますが、地主側に購入の意思や資金力がないケースも多く、解体・更地化して返還せざるを得ないこともあります。その場合、解体費用は借地人が負担することになるため、追加コストも考慮に入れる必要があります。 

金融機関から見た借地権付き物件のリスク

借地権付き物件の購入にあたって融資を引き出しにくいのは先に説明したとおりです。

ここでは、なぜ借地権付き物件に融資がつきにくいのか、補足を交えて詳しく解説します。 

担保評価額が低くなる理由

金融機関が借地権付き物件の担保評価を低く見積もる最大の理由は、これまで述べてきた地代負担・地主の承諾の必要性・これに伴う出口戦略の描きにくさによる担保処分の難しさにあります。

単純に物件の条件だけを見ても、土地の権利は底地にはないため価値が抑えられている上に、建物の価値は年々低下するため、全体の価値は低く見積もらざるを得ません。 

上記のような障害をクリアして担保処分できた場合でも、譲渡承諾料の支払いにより、実質的な回収額はさらに目減りします。

こうした理由により、借地およびその上の建物は、大幅に価値を減らすことになります。 

融資審査が厳しくなるポイント

借地権付き物件への融資審査では、一般的な所有権物件よりも厳しい基準が適用されます。

まず、年収要件は通常より高く設定され、多くの金融機関では少なくとも年収600万円以上を要求します。

また、頭金となる自己資金比率も高めに設定され、物件価格の30%から40%程度を用意する必要があるのが一般的です。 

物件自体の審査基準も厳格です。築年数や立地条件はもちろん、借地契約の残存期間や地代の水準、地主との関係性なども重要な審査ポイントとなります。

2018年以降、金融機関の審査傾向はさらに厳格化しており、借地権付き物件への融資承認率は20%程度にまで低下しているとも言われています。

加えて、定期借地権付き物件については、契約期間満了後の価値がゼロになることから、融資そのものを受け付けない金融機関も少なくありません。 

借地権付き物件の代替となる投資先

借地権付き物件は高利回りが魅力的ですが、融資や出口戦略など数々の課題があります。

では、不動産投資を検討している方は、どのような投資先を選べばよいのでしょうか。

ここでは、借地権付き物件の代替となる投資先として、区分所有マンション投資と一棟アパート投資を中心に紹介します。

また、現在の低金利環境を活かした投資戦略についても解説していきます。 

区分所有マンション投資のメリット

区分所有マンションは、不動産投資の入門としておすすめできる投資対象です。その最大の特徴は、1,000万円台から5,000万円以上まで、幅広い価格帯から選択できる点にあります。

また、金融機関の融資も通りやすく、物件価格の10%程度の頭金があれば投資をスタートできるケースが多いのが特徴です。 

管理に関しても、管理会社が建物全体の維持管理を担当するため、個人の負担は比較的軽くて済みます。売却時の出口戦略も立てやすく、特に都市部の物件は賃貸需要が高いため、資産価値も維持されやすい傾向です。 

加えて、複数の物件を購入するなど、自分の希望や資産形成プランに応じて柔軟な投資戦略を描きやすいことも魅力です。 

一棟アパート投資の可能性

一棟アパート投資は、より本格的な不動産投資を目指す人、またはすでに土地を所有している人に適した選択肢です。複数戸をまとめて所有することで、管理コストの削減や空室リスクの分散が可能になります。

また、建物全体の管理や運営方針を自由に決定できるため、リノベーションや付加価値サービスの提供によって、物件の収益性を高めることができます。 

金融機関も一棟物件への融資には前向きな姿勢を示しており、特に築浅物件や立地の良い物件であれば、借入比率80%程度までの融資も可能です。

さらに、相続対策としても有効で、建物の減価償却による節税効果や、将来的な資産分割のしやすさなども魅力となっています。 

低金利時代に適した投資戦略

現在の低金利環境は、不動産投資において追い風となっています。2%前後という低い金利水準は、投資における資金調達コストを大きく抑制します。

ただし、金利の先行きは不透明であり、変動金利での借入れは慎重に検討する必要があります。 

投資エリアの選定では、人口動態や開発計画などの将来性を重視することが重要です。特に、都心部や交通利便性の高いエリアは、不動産価値が維持されやすい傾向にあります。

物件タイプについては、単身者向けの1Kタイプから、ファミリー向けの3LDKタイプまで、エリアの需要に応じた選択が求められます。 

自分にあった投資先・金融機関の選び方は専門家に相談を

不動産投資には、借地権付き物件以外にも様々な選択肢があります。

重要なのは、自身の資金力や投資目的に合った投資先を選ぶことです。特に初めての不動産投資では、融資の条件や将来的なリスクを見据えた収支計画など、専門的な判断が必要な要素が多く存在します。 

不動産投資の経験豊富な専門家に相談することで、より安全で収益性の高い投資プランを見つけることができます。

ベルテックスでは、不動産投資の幅広い知見を活かし、一人ひとりに最適な投資プランを提案しています。まずは無料相談で、あなたに合った投資先を見つけてみませんか。 

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2025.02.17

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

借地権付き物件の不動産投資は危険!金融機関が積極的でない理由とリスクを解説

  • はじめ方・基礎知識

不動産投資の初心者にとって、借地権付き物件は魅力的な選択肢に映るかもしれません。借地権付き物件は一般的な物件より価格が安く、利回りの高い物件が多いためです。一方で、融資を引き出すのが難しい点や、その理由にもなっている借地権に固有のリスクは見逃せません。

ここでは、借地権付き物件の基本的な仕組みから、投資におけるメリット・デメリット、そして銀行の融資審査で不利になる理由までを詳しく解説します。 

借地権付き物件とは?基本的な仕組みを理解しよう

借地権付き物件は、土地は借りて建物だけを所有する不動産の形態のことです。一般的な物件より安く購入できる反面、地代の支払いや地主との関係性など、独特の課題があります。

まずは借地権付き物件の基本的な仕組みを理解しましょう。 

借地権の仕組み・所有権との違い

借地権とは、建物を所有する目的で土地の所有者と契約し、地代(=土地の賃料)を払う場合の権利形態です。

一般的な不動産所有権では土地と建物の両方を所有しますが、借地権付き物件では建物のみを所有し、土地(底地)は地主が保持したままとなります。

土地の借地権は、地主の承諾があれば売買でき、相続の対象にもなります。 

旧法借地権と新法借地権との違い

借地権の根拠となる法律は1992年(平成4年)8月1日に改正があり、改正前に成立した借地権は「旧法借地権」、改正後に成立した借地権は「新法借地権」と呼ばれます。

令和の現在も、設定されている権利の多くは旧法借地権となるため、現在の借地借家法下の新法借地権との区別に注意しましょう。 

旧法借地権の特徴

借地人の権利が強く、よほどの事情がなければ半永久的に更新できるのが特徴です。

契約期間は堅固建物(30年)と非堅固建物(20年)に区別され、地主は正当な理由がない限り借主側が希望する契約更新を拒めません。 

新法借地権の特徴

借地人と地主の権利のバランスを調整し、地主側が契約更新を拒むときの「正当な理由」が明確化されているなどの特徴を持ちます。

通常の借地権については、契約期間は30年(最初の更新は20年、それ以降は10年)に統一されました。

これとともに、契約を更新しない「定期借地権」も創設されています。 

借地権の種類

借地権は主に「普通借地権」と「定期借地権」の2種類に分類されます。

以下の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。 

種類 

契約時の存続期間 

契約更新 

利用制限 

契約終了時 

旧法借地権 

堅固建物:30年以上 

非堅固建物:20年以上 

可能 

なし 

原則として更地で返還 

(建物買取請求権を行使する余地あり) 

普通借地権 

30年以上 

可能 

なし 

原則として更地で返還 

(建物買取請求権を行使する余地あり) 

一般定期借地権 

50年以上 

不可 

なし 

原則として更地で返還 

事業用定期借地権 

10年以上50年未満 

不可 

事業用のみ 

原則として更地で返還 

建物譲渡特約付借地権 

30年以上 

不可 

なし 

建物ごと地主に売却 

【引用】日本地主家主協会「旧借地法と新法の借地借家法の違い」2025年1月15日現在の掲載内容を元に弊社作成 

普通借地権は契約更新が可能で、正当な事由がない限り地主は更新を拒否できません。

一方、定期借地権は契約期間満了後の更新はなく、建物を撤去して更地にして返還する必要があります。 

地代や保証金など必要な費用

借地権付き物件では、物件購入時の費用に加えて、運用時や売却時にも様々な費用が発生します。 

地代は土地価格の年2-3%程度が相場で、保証金は更地価格の20-25%程度を求められるのが一般的です。また、契約更新時には借地権価格の5-10%程度の更新料が必要になることがあります。 

建物の建替えや売却時には地主の承諾が必要です。その際、承諾料として更地価格の4%から6%程度(建替え時)や譲渡価格の10%程度(売却時)を支払います。 

借地権付き物件は将来的な地代値上げのリスクもあるため、長期的な収支計画を立てる際には注意が必要です。 

借地権付き物件を投資先に選ぶメリット

借地権付き物件は、金融機関の融資には課題があるものの、投資先として魅力的なメリットもあります。

特に、一般的な所有権物件と比べて高い利回りが期待できる点や、初期費用を抑えられる点が注目されます。

また、税制面での優位性もあり、適切な条件が揃えば検討に値する投資対象となり得ます。 

高利回りの物件が多い

借地権付き物件は、一般的な所有権物件と比べて2%から3%程度高い利回りが期待できます。

これは、立地の良い物件でも購入価格を抑えられる(所有権の60%から70%程度になる)ことが大きな要因です。 

具体的には、都心部の好立地物件で所有権物件の利回りが5%程度なのに対し、借地権付き物件では7%から8%の利回りになることも珍しくありません。 

ただし、これは地代支払い前の表面利回りであることに注意が必要です。

実質利回りを計算する際は、年間の賃料収入から地代を差し引いた上で、購入価格で割って算出します。デメリットの章で解説する地代の相場に注意しましょう。 

不動産取得税や固定資産税がかからない

借地権付き物件では、土地分の固定資産税がかからず、建物部分にのみ課税されます。 

たとえば、土地3,000万円・建物2,000万円の所有権物件であれば年間50万円程度の固定資産税が発生しますが、借地権付き物件では建物分の2,000万円に対する20万円程度で済みます。 

また、不動産取得税も建物分のみの課税となり、税負担を大幅に抑えることができます。地代は賃貸経費として計上でき、その他の承諾料や更新料なども、条件を満たせば経費として認められます。

こうした税務上のメリットは、長期的な収支計画を立てる上で重要なポイントとなります。 

旧法借地権の場合は契約延長がしやすい

旧法借地権では、地主が契約更新を拒否するための条件として、ほとんどの場合で「自己使用の必要性」が必要とされます。

さらに、代替地の提供などの措置も求められます。単に「契約期間が満了した」「土地を売却したい」といった理由では、地主は契約解除や更新拒絶ができません。 

もっとも、更新時には更新料(借地権価格の5%から10%程度)が必要になることが一般的ですが、この金額は交渉の余地があります。

こうした仕組みにより、借地人が希望する場合、契約を延長できる可能性が高いと言えます。 

高利回りに隠れた借地権付き物件の致命的なデメリット

借地権付き物件は一見、高利回りで魅力的な投資対象に映るかもしれません。しかし、その裏には投資の成否を左右する重大なリスクが潜んでいます。

とくに、金融機関からの融資が受けにくい点や、地主との関係性次第で運用が制限される点は、投資判断の際に慎重な検討が必要です。

ここでは、借地権付き物件特有の4つのデメリットについて解説します。 

融資を引き出しづらい

金融機関は借地権付き物件への融資について極めて慎重です。その主な理由は、担保としての価値が低く評価されるためです。

具体的には、所有権物件であれば物件価格の80%程度まで融資可能なケースでも、借地権付き物件ではよほど多くても50%程度に抑えられてしまいます。 

また、融資審査の際には、通常の収入要件や返済能力の確認に加えて、地代の支払い状況や、地主との関係性、借地契約の残存期間なども重要なチェックポイントとなります。

そこで注意したいのが、この次に解説する運用中の2つのデメリットです。 

地代の支払いが負担になりやすい

地代は一般的に土地価格の2%から3%程度とされていますが、これは毎月支払いが必要な固定費となります。たとえば、土地価格5,000万円の物件であれば、年間150万円前後の地代負担が発生することになり、空室時でもこの支払いは免れません。 

とくに都心部の人気エリアでは、地価上昇に伴う地代値上げの交渉を持ちかけられるリスクもあります。

こうした地代の上昇は、投資物件のキャッシュフローを直接的に圧迫する要因となり得ます。 

地主の意向・地主との関係性が運用に影響しやすい

借地権付き物件の運用では、多くの場面で地主の承諾が必要となります。建物の大規模修繕や建替え、賃貸条件の大幅な変更、そして売却時には必ず地主の同意を得なければなりません。

この際、承諾料として工事費用の4%から6%程度や、売却価格の10%程度を要求されることが一般的です。 

さらに、地主の相続が発生した場合、新たな地主との関係構築が必要になるほか、相続税支払いのための地代値上げや底地の売却要請といった事態に発展するケースがあることも見逃せません。

過去には、地主の承諾が得られず必要な修繕が実施できないなど、物件の価値とともに収益力の低下に繋がるトラブルが多発しています。 

出口戦略が描きにくい

借地権付き物件の最大の課題は、売却時の出口戦略が描きにくい点です。

借地権付き物件は一般的な所有権物件と比べて市場性が低く、買い手がつきにくいのが実情です。その理由として、融資が受けにくい点や、地主との新たな関係構築が必要となる点、将来的な地代値上げリスクなどが挙げられます。

加えて、土地を所有していないため、地価上昇に伴う資産価値の上昇の恩恵を受けにくい点にも留意が必要です。 

さらに、すでに述べた売却時に払う譲渡承諾料は、売却価格の目減り要因となります。地主に底地を買い取ってもらうという選択肢もありますが、地主側に購入の意思や資金力がないケースも多く、解体・更地化して返還せざるを得ないこともあります。その場合、解体費用は借地人が負担することになるため、追加コストも考慮に入れる必要があります。 

金融機関から見た借地権付き物件のリスク

借地権付き物件の購入にあたって融資を引き出しにくいのは先に説明したとおりです。

ここでは、なぜ借地権付き物件に融資がつきにくいのか、補足を交えて詳しく解説します。 

担保評価額が低くなる理由

金融機関が借地権付き物件の担保評価を低く見積もる最大の理由は、これまで述べてきた地代負担・地主の承諾の必要性・これに伴う出口戦略の描きにくさによる担保処分の難しさにあります。

単純に物件の条件だけを見ても、土地の権利は底地にはないため価値が抑えられている上に、建物の価値は年々低下するため、全体の価値は低く見積もらざるを得ません。 

上記のような障害をクリアして担保処分できた場合でも、譲渡承諾料の支払いにより、実質的な回収額はさらに目減りします。

こうした理由により、借地およびその上の建物は、大幅に価値を減らすことになります。 

融資審査が厳しくなるポイント

借地権付き物件への融資審査では、一般的な所有権物件よりも厳しい基準が適用されます。

まず、年収要件は通常より高く設定され、多くの金融機関では少なくとも年収600万円以上を要求します。

また、頭金となる自己資金比率も高めに設定され、物件価格の30%から40%程度を用意する必要があるのが一般的です。 

物件自体の審査基準も厳格です。築年数や立地条件はもちろん、借地契約の残存期間や地代の水準、地主との関係性なども重要な審査ポイントとなります。

2018年以降、金融機関の審査傾向はさらに厳格化しており、借地権付き物件への融資承認率は20%程度にまで低下しているとも言われています。

加えて、定期借地権付き物件については、契約期間満了後の価値がゼロになることから、融資そのものを受け付けない金融機関も少なくありません。 

借地権付き物件の代替となる投資先

借地権付き物件は高利回りが魅力的ですが、融資や出口戦略など数々の課題があります。

では、不動産投資を検討している方は、どのような投資先を選べばよいのでしょうか。

ここでは、借地権付き物件の代替となる投資先として、区分所有マンション投資と一棟アパート投資を中心に紹介します。

また、現在の低金利環境を活かした投資戦略についても解説していきます。 

区分所有マンション投資のメリット

区分所有マンションは、不動産投資の入門としておすすめできる投資対象です。その最大の特徴は、1,000万円台から5,000万円以上まで、幅広い価格帯から選択できる点にあります。

また、金融機関の融資も通りやすく、物件価格の10%程度の頭金があれば投資をスタートできるケースが多いのが特徴です。 

管理に関しても、管理会社が建物全体の維持管理を担当するため、個人の負担は比較的軽くて済みます。売却時の出口戦略も立てやすく、特に都市部の物件は賃貸需要が高いため、資産価値も維持されやすい傾向です。 

加えて、複数の物件を購入するなど、自分の希望や資産形成プランに応じて柔軟な投資戦略を描きやすいことも魅力です。 

一棟アパート投資の可能性

一棟アパート投資は、より本格的な不動産投資を目指す人、またはすでに土地を所有している人に適した選択肢です。複数戸をまとめて所有することで、管理コストの削減や空室リスクの分散が可能になります。

また、建物全体の管理や運営方針を自由に決定できるため、リノベーションや付加価値サービスの提供によって、物件の収益性を高めることができます。 

金融機関も一棟物件への融資には前向きな姿勢を示しており、特に築浅物件や立地の良い物件であれば、借入比率80%程度までの融資も可能です。

さらに、相続対策としても有効で、建物の減価償却による節税効果や、将来的な資産分割のしやすさなども魅力となっています。 

低金利時代に適した投資戦略

現在の低金利環境は、不動産投資において追い風となっています。2%前後という低い金利水準は、投資における資金調達コストを大きく抑制します。

ただし、金利の先行きは不透明であり、変動金利での借入れは慎重に検討する必要があります。 

投資エリアの選定では、人口動態や開発計画などの将来性を重視することが重要です。特に、都心部や交通利便性の高いエリアは、不動産価値が維持されやすい傾向にあります。

物件タイプについては、単身者向けの1Kタイプから、ファミリー向けの3LDKタイプまで、エリアの需要に応じた選択が求められます。 

自分にあった投資先・金融機関の選び方は専門家に相談を

不動産投資には、借地権付き物件以外にも様々な選択肢があります。

重要なのは、自身の資金力や投資目的に合った投資先を選ぶことです。特に初めての不動産投資では、融資の条件や将来的なリスクを見据えた収支計画など、専門的な判断が必要な要素が多く存在します。 

不動産投資の経験豊富な専門家に相談することで、より安全で収益性の高い投資プランを見つけることができます。

ベルテックスでは、不動産投資の幅広い知見を活かし、一人ひとりに最適な投資プランを提案しています。まずは無料相談で、あなたに合った投資先を見つけてみませんか。 

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。