2023.10.12

資産運用

ベルテックスコラム事務局

老後二千万円問題の実態!老後の資金不足には若いうちからの資産形成が大切

  • 老後資金
  • 資産形成

昨今の日本において「老後二千万円問題」が掲げられ、将来を不安視する若者が増加しています。しかし、多くの人は「老後までに二千万円を貯めなくてはいけない」という曖昧な概念でしか実態を知り得ていません。

本記事では、老後二千万円問題が掲げられた理由やきっかけ、実態について解説し、今後に備えた資産形成の在り方を言及していきます。

老後二千万円問題と言われ始めた理由

今や「老後二千万円問題」は代名詞化したフレーズですが、発端は2019年6月に金融庁により発表された「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」の内容によるものです。
各専門家により構成された本審議会では、2018年9月から計12回にわたり議論が行われました。その議論を基に上記報告書において「高齢社会における資産形成・管理」と題し、結果が取り纏められたのです。

老後二千万円問題は金融庁試算がきっかけ

報告書の内容には、日本で採用されている退職金制度がある企業の割合は徐々に低下傾向にあり、さらに退職給付金額においても減少が続く可能性があるとしています。
また、老後の生活においては公的年金の収入だけではまかないきれず、不足分は個人が保有する金融資産を取崩していく必要があるとしているため、退職金の制度が非常に重要なことが分かるでしょう。

ポイントとなる老後(65歳)時点での金融資産の保有状況は、夫婦世帯で2,252万円、単身男性で1,552万円、単身女性で1,506万円という結果でしたが、無職の高齢夫婦世帯は、生活に必要な支出が毎月平均約5.5万円の赤字なることが分かりました。
そのため、老後の生活で赤字が30年続いた場合には、保有資産から約2,000万円の取崩しが必要であると数値化され、これらがニュースやSNSなどで拡散されたのが「老後二千万円問題」の始まりです。

老後二千万円問題が騒がれ出したモデルケースとは

金融庁の試算によって騒がれ出した老後二千万円問題ですが、現役世代の年収・貯蓄・資産形成など状況は人それぞれなので、全ての方に該当するわけではありません。

老後二千万円問題を試算したモデルケースをご紹介します。

1. 夫が65歳以上かつ妻が60歳以上、ともに無職である夫婦二人の世帯
2. 夫が95歳かつ妻が90歳になるまで生存し、夫婦ともに健康である
3. 毎月の生活赤字が約5.5万円である
※金融庁試算:-5.5(万円)×12(ヵ月)×30(年)=-1,980(万円)

しかし、2020年の統計データでは「夫婦65歳以上の夫婦高齢者世帯」と対象者の内容に軽微な変更点がありました。その結果、驚くことに2020年の生活支出は約1,100円の黒字だったのです。
少子高齢化や経済低迷による増税の懸念など、試算状況はその都度変化していきます。モデルケースはあくまで2019年時点で絞られたモデル層の概算にすぎず、確実なものではありません。

老後資金が足りなくなる理由

老後に保有資産の取崩しが必要であるとしても、できる限り支出は抑えたいところです。 なぜ老後資金が足りなくなるのか、その理由について考えてみましょう。

退職金がない

まず1つ目の理由は、退職金の給付制度がない、もしくは少額であることです。
退職金は、退職時に現金一括で受け取る「退職一時金制度」と退職後に一定額を定期的に受け取る「退職年金制度」の2つに大別されます。
どちらを採用するかは企業に委ねられており、退職金の制度や給付額に関する内容についても企業ごとの取り決めとなっているようです。

退職金給付制度そのものがない企業もあり、厚生労働省による「平成30年_就労条件総合調査」では、約2割の企業では退職金給付制度が設けられていないことが分かりました。
企業規模の大きい会社ほど退職金の金額が高く、さらに高学歴で勤続年数が長い人ほど高額になることが分析されています。

調査による統計では、「大学・大学院卒かつ35年以上働いた管理・事務・技術職の人」の退職金給付額が2,173万円で唯一2,000万円を超えています。次いで、「高校卒かつ35年以上働いた管理・事務・技術職の人」が1,954万円の給付金を受け取っているようです。
老後二千万円問題に備えるためには不可欠な退職金給付制度ですが、退職金で2,000万円を受け取るのはハードルが高いので、65歳を迎えるまでに一定の預貯金が必要であることが分かります。

年金が少ない

2つ目の理由は、公的年金の給付額が少ないことが挙げられるでしょう。 公的年金の給付額は、国民年金か厚生年金どちらを納めてきたかによって受給額に差が生じます。
厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和3年度に国民年金受給者の平均月額は56,368円、厚生年金受給者の平均月額は145,665円と2倍以上の差がありました。

しかし、老後の夫婦二人世帯の生活費としては平均月額約26~28万円が必要で、ゆとりある老後を送るためには平均月額約36万円程度必要であると推測されます。(※総務省統計局 2021年「家計調査」に基づく)
特に国民年金受給者は、公的年金のみでの生活は非常に苦しくなることが分かるでしょう。

不要な支出が多い

3つ目の理由は、現役世代にも共通して言えることで不要な支出が多いことが挙げられます。 そもそも老後資金が足りなくなるのが分かっているなら、節約をしてお金を守る行動をとらなくてはいけません。
現役世代で収入よりも支出が上回ってしまう場合は、一度家計の見直しが必要です。家計を見直すことで収入と支出のバランスを上手くやりくりする術を身につけ、余剰金はできる限り老後資金として貯蓄にまわすことが理想的でしょう。

高年収で生活水準が高い人は、生活自体を見直すことも必要です。生活水準が高いまま老後を迎えてしまうと、なかなか水準を落とすことが難しく支出ばかりが増えてしまいます。
老後はスーツや靴といった消耗品費、付き合いの飲み会にかかる交際費など仕事関連の支出が減る一方、介護費用や医療費などの増加を懸念しておかなければなりません。

介護・老人ホームへの入居

4つ目の理由は、高齢による介護費用や老人ホームへの入居が必要になることです。
若くて元気があるうちはあまり馴染みのない費用ですが、老後の介護費用をしっかりとシミュレーションしておかなくては、必要な資金が想像以上に高額で驚くことになるでしょう。
こちらは下記でさらに詳しくお伝えしますが、介護費用の相場はなんと1人あたり580万円必要と言われています。
また、老人ホームには公的施設と民間施設の2種類があり、公的施設の方が安価に利用できますが、いずれの月額利用料も10万円前後が相場であり、老後における資金不足の大きな要因の1つです。

老後の資産の取り崩しは何年持つか?

インターネット上では、保有資産や取崩しの開始年齢、毎月の取り崩し額などの条件を入力し、何年後に資産が尽きるのかシミュレーションできるサイトがあります。

例1)
・保有資産3,000万円
・取り崩し開始年齢:65歳
・取り崩し額:5.5万円

例えば、単身者の65歳時点における平均的な保有資産1,500万円と退職一時金の1,500万円で、保有資産が3,000万円あると仮定しましょう。
毎月の赤字約5.5万円の取り崩し額で試算をしてみると、110歳6ヵ月まで老後資金が持つことになります。寿命よりも長生きすることを考慮しても、なんとか不足することなく生活ができそうです。
一方で、ゆとりのある生活をする場合には約8万円の取崩しが必要と言われています。 同条件でゆとりのある生活をシミュレーションすると、96歳3ヵ月で資金が尽きてしまうことになり心配が残る試算結果となりました。

例2)
・保有資産1,500万円
・取り崩し開始年齢:65歳
・取り崩し額:5.5万円

次は、退職金のない会社に勤めていたケースです。
先程の(例1)から退職金を引いて試算してみると、毎月5.5万円取り崩していくと87歳9ヵ月まで、毎月8万円取り崩していくと80歳8ヵ月までしか老後の資産が持たないことになります。

介護にかかるお金も考えよう

少しでも老後不安を解消するためには、老後資金が足りなくなる理由でも挙げられた「介護費用」の目安を知っておくべきです。
生命保険文化センターによる「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」では、本人が負担する介護費用は1人月額8.3万円、介護期間は5年1ヵ月という結果になりました。
また、住宅のバリアフリー化など介護の一時金としては74万円が平均で、これら全てを合計すると約580万円の介護費用が必要であると見込まれます。 一方で、介護費用についてはそれほど不安視するものではない、との見方もあります。 2019(令和元)年時点での日本の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳です。
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2021年10月データを元に生命保険文化センターが作成した資料によれば、年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合は、80~84歳では26.4%、85歳以上では59.8%となりました。
男性の平均寿命に対し、実際に介護が必要であるのは26.4%に留まっており、全ての人が必ずしも580万円の費用を要すわけではないことが分かります。
介護費用は亡くなる年齢や健康状態により大きく左右するので、食事や運動など生活習慣の見直しが資金確保への近道かもしれません。

「老後二千万円問題」に陥らないための若いうちからの備え方

不安を煽る内容が多くありましたが、老後二千万円問題は若いうちからの行動が非常に重要であり、老後の資金形成に向けた備え方次第で、回避することが可能です。

最初にライフプランを設計する

まずは、自分の人生設計をすることからスタートしてみて下さい。人生には数多くの分岐点があり、選択したライフプランの中には「結婚」「出産」といったイベントを迎える方もいるでしょう。さらに子育て世帯は、子供一人あたり0歳~中学生まで約1,900万円、高校3年間で約530~690万円、大学生は教育費約1,000万円が必要と言われています。

ライフプランを考慮しながら、老後二千万円問題を解決するため自分に合った資産形成を行うことが必要となるでしょう。

iDeCo

堅実な資産形成におすすめの方法は「iDeCo」「NISA」「不動産投資」の3つです。iDeCoは60歳以降に私的年金として受け取り、公的年金と併用することで老後にゆとりある生活を送ることができます。ただし、原則60歳まで引き出しができないデメリットを十分考慮しましょう。

定期預金・投資信託・保険商品など運用方法や掛金を自分で選択することができ、国の税制優遇を得られる一方で、元本保証されている定期預金では大きなリターンは得られません。

NISA

資産形成の強い味方である投資では、多くの方がNISAの制度を利用しています。通常、株式などの先物取引で発生した利益や配当には税金が課税されますが、NISA口座による取引であれば年間120万円まで購入可能で最大5年間は非課税です。投資を学んでNISAを上手く利用していくと、お得に資産形成できるでしょう。

若いうちからの備えとしては「つみたてNISA」もおすすめです。株式の購入はできず投資信託の運用となりますが、NISAと同様に年間40万円まで購入可能で最大20年間非課税となります。 さらにNISA制度は2024年に投資金額の拡充、非課税期間の恒久化が予定されているので、変更内容を確認しておくことが大切です。長期・積立・分散型でリスクヘッジすることができるため、20~30代の方には活用してもらいたい制度です。

不動産投資

最後にご紹介する資産形成が不動産投資です。金融機関の融資を受けることにより、自己資金だけでは得られない高い収益性を上げることができます。「不動産投資は危ない」と言われることもありますが、株式や投資信託と異なり、事前に予測されるリスクと向き合い対策を立てることにより、より多くのキャッシュフローを生み出すことができます。

不動産投資は小さな規模からスタートし、所有物件を増加させることで大きな資産を築いていく方法です。また、 現物取引なのでインフレによる物価の上昇にも強いため価格変動が起こりづらく、運用の手間がほとんどかからないなどのメリットがあります。より賢く大きな収益を上げたい方は是非一度、不動産投資を検討してみて下さい。

まとめ

今回は、「老後二千万円問題」のきっかけやモデルケースを読解し、実際に老後に必要な資金について紐解いてお伝えしました。
記事内では多くの調査結果や資料を用いて解説しましたが、いずれも目安としての統計にすぎません。
人それぞれ人生は違うものです。あくまで参考としてご覧頂き、ゆとりある老後を迎えるための資産運用法について考えていきましょう。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.12

資産運用

ベルテックスコラム事務局

老後二千万円問題の実態!老後の資金不足には若いうちからの資産形成が大切

  • 老後資金
  • 資産形成

昨今の日本において「老後二千万円問題」が掲げられ、将来を不安視する若者が増加しています。しかし、多くの人は「老後までに二千万円を貯めなくてはいけない」という曖昧な概念でしか実態を知り得ていません。

本記事では、老後二千万円問題が掲げられた理由やきっかけ、実態について解説し、今後に備えた資産形成の在り方を言及していきます。

老後二千万円問題と言われ始めた理由

今や「老後二千万円問題」は代名詞化したフレーズですが、発端は2019年6月に金融庁により発表された「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」の内容によるものです。
各専門家により構成された本審議会では、2018年9月から計12回にわたり議論が行われました。その議論を基に上記報告書において「高齢社会における資産形成・管理」と題し、結果が取り纏められたのです。

老後二千万円問題は金融庁試算がきっかけ

報告書の内容には、日本で採用されている退職金制度がある企業の割合は徐々に低下傾向にあり、さらに退職給付金額においても減少が続く可能性があるとしています。
また、老後の生活においては公的年金の収入だけではまかないきれず、不足分は個人が保有する金融資産を取崩していく必要があるとしているため、退職金の制度が非常に重要なことが分かるでしょう。

ポイントとなる老後(65歳)時点での金融資産の保有状況は、夫婦世帯で2,252万円、単身男性で1,552万円、単身女性で1,506万円という結果でしたが、無職の高齢夫婦世帯は、生活に必要な支出が毎月平均約5.5万円の赤字なることが分かりました。
そのため、老後の生活で赤字が30年続いた場合には、保有資産から約2,000万円の取崩しが必要であると数値化され、これらがニュースやSNSなどで拡散されたのが「老後二千万円問題」の始まりです。

老後二千万円問題が騒がれ出したモデルケースとは

金融庁の試算によって騒がれ出した老後二千万円問題ですが、現役世代の年収・貯蓄・資産形成など状況は人それぞれなので、全ての方に該当するわけではありません。

老後二千万円問題を試算したモデルケースをご紹介します。

1. 夫が65歳以上かつ妻が60歳以上、ともに無職である夫婦二人の世帯
2. 夫が95歳かつ妻が90歳になるまで生存し、夫婦ともに健康である
3. 毎月の生活赤字が約5.5万円である
※金融庁試算:-5.5(万円)×12(ヵ月)×30(年)=-1,980(万円)

しかし、2020年の統計データでは「夫婦65歳以上の夫婦高齢者世帯」と対象者の内容に軽微な変更点がありました。その結果、驚くことに2020年の生活支出は約1,100円の黒字だったのです。
少子高齢化や経済低迷による増税の懸念など、試算状況はその都度変化していきます。モデルケースはあくまで2019年時点で絞られたモデル層の概算にすぎず、確実なものではありません。

老後資金が足りなくなる理由

老後に保有資産の取崩しが必要であるとしても、できる限り支出は抑えたいところです。 なぜ老後資金が足りなくなるのか、その理由について考えてみましょう。

退職金がない

まず1つ目の理由は、退職金の給付制度がない、もしくは少額であることです。
退職金は、退職時に現金一括で受け取る「退職一時金制度」と退職後に一定額を定期的に受け取る「退職年金制度」の2つに大別されます。
どちらを採用するかは企業に委ねられており、退職金の制度や給付額に関する内容についても企業ごとの取り決めとなっているようです。

退職金給付制度そのものがない企業もあり、厚生労働省による「平成30年_就労条件総合調査」では、約2割の企業では退職金給付制度が設けられていないことが分かりました。
企業規模の大きい会社ほど退職金の金額が高く、さらに高学歴で勤続年数が長い人ほど高額になることが分析されています。

調査による統計では、「大学・大学院卒かつ35年以上働いた管理・事務・技術職の人」の退職金給付額が2,173万円で唯一2,000万円を超えています。次いで、「高校卒かつ35年以上働いた管理・事務・技術職の人」が1,954万円の給付金を受け取っているようです。
老後二千万円問題に備えるためには不可欠な退職金給付制度ですが、退職金で2,000万円を受け取るのはハードルが高いので、65歳を迎えるまでに一定の預貯金が必要であることが分かります。

年金が少ない

2つ目の理由は、公的年金の給付額が少ないことが挙げられるでしょう。 公的年金の給付額は、国民年金か厚生年金どちらを納めてきたかによって受給額に差が生じます。
厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和3年度に国民年金受給者の平均月額は56,368円、厚生年金受給者の平均月額は145,665円と2倍以上の差がありました。

しかし、老後の夫婦二人世帯の生活費としては平均月額約26~28万円が必要で、ゆとりある老後を送るためには平均月額約36万円程度必要であると推測されます。(※総務省統計局 2021年「家計調査」に基づく)
特に国民年金受給者は、公的年金のみでの生活は非常に苦しくなることが分かるでしょう。

不要な支出が多い

3つ目の理由は、現役世代にも共通して言えることで不要な支出が多いことが挙げられます。 そもそも老後資金が足りなくなるのが分かっているなら、節約をしてお金を守る行動をとらなくてはいけません。
現役世代で収入よりも支出が上回ってしまう場合は、一度家計の見直しが必要です。家計を見直すことで収入と支出のバランスを上手くやりくりする術を身につけ、余剰金はできる限り老後資金として貯蓄にまわすことが理想的でしょう。

高年収で生活水準が高い人は、生活自体を見直すことも必要です。生活水準が高いまま老後を迎えてしまうと、なかなか水準を落とすことが難しく支出ばかりが増えてしまいます。
老後はスーツや靴といった消耗品費、付き合いの飲み会にかかる交際費など仕事関連の支出が減る一方、介護費用や医療費などの増加を懸念しておかなければなりません。

介護・老人ホームへの入居

4つ目の理由は、高齢による介護費用や老人ホームへの入居が必要になることです。
若くて元気があるうちはあまり馴染みのない費用ですが、老後の介護費用をしっかりとシミュレーションしておかなくては、必要な資金が想像以上に高額で驚くことになるでしょう。
こちらは下記でさらに詳しくお伝えしますが、介護費用の相場はなんと1人あたり580万円必要と言われています。
また、老人ホームには公的施設と民間施設の2種類があり、公的施設の方が安価に利用できますが、いずれの月額利用料も10万円前後が相場であり、老後における資金不足の大きな要因の1つです。

老後の資産の取り崩しは何年持つか?

インターネット上では、保有資産や取崩しの開始年齢、毎月の取り崩し額などの条件を入力し、何年後に資産が尽きるのかシミュレーションできるサイトがあります。

例1)
・保有資産3,000万円
・取り崩し開始年齢:65歳
・取り崩し額:5.5万円

例えば、単身者の65歳時点における平均的な保有資産1,500万円と退職一時金の1,500万円で、保有資産が3,000万円あると仮定しましょう。
毎月の赤字約5.5万円の取り崩し額で試算をしてみると、110歳6ヵ月まで老後資金が持つことになります。寿命よりも長生きすることを考慮しても、なんとか不足することなく生活ができそうです。
一方で、ゆとりのある生活をする場合には約8万円の取崩しが必要と言われています。 同条件でゆとりのある生活をシミュレーションすると、96歳3ヵ月で資金が尽きてしまうことになり心配が残る試算結果となりました。

例2)
・保有資産1,500万円
・取り崩し開始年齢:65歳
・取り崩し額:5.5万円

次は、退職金のない会社に勤めていたケースです。
先程の(例1)から退職金を引いて試算してみると、毎月5.5万円取り崩していくと87歳9ヵ月まで、毎月8万円取り崩していくと80歳8ヵ月までしか老後の資産が持たないことになります。

介護にかかるお金も考えよう

少しでも老後不安を解消するためには、老後資金が足りなくなる理由でも挙げられた「介護費用」の目安を知っておくべきです。
生命保険文化センターによる「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」では、本人が負担する介護費用は1人月額8.3万円、介護期間は5年1ヵ月という結果になりました。
また、住宅のバリアフリー化など介護の一時金としては74万円が平均で、これら全てを合計すると約580万円の介護費用が必要であると見込まれます。 一方で、介護費用についてはそれほど不安視するものではない、との見方もあります。 2019(令和元)年時点での日本の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳です。
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2021年10月データを元に生命保険文化センターが作成した資料によれば、年代別人口に占める要支援・要介護認定者の割合は、80~84歳では26.4%、85歳以上では59.8%となりました。
男性の平均寿命に対し、実際に介護が必要であるのは26.4%に留まっており、全ての人が必ずしも580万円の費用を要すわけではないことが分かります。
介護費用は亡くなる年齢や健康状態により大きく左右するので、食事や運動など生活習慣の見直しが資金確保への近道かもしれません。

「老後二千万円問題」に陥らないための若いうちからの備え方

不安を煽る内容が多くありましたが、老後二千万円問題は若いうちからの行動が非常に重要であり、老後の資金形成に向けた備え方次第で、回避することが可能です。

最初にライフプランを設計する

まずは、自分の人生設計をすることからスタートしてみて下さい。人生には数多くの分岐点があり、選択したライフプランの中には「結婚」「出産」といったイベントを迎える方もいるでしょう。さらに子育て世帯は、子供一人あたり0歳~中学生まで約1,900万円、高校3年間で約530~690万円、大学生は教育費約1,000万円が必要と言われています。

ライフプランを考慮しながら、老後二千万円問題を解決するため自分に合った資産形成を行うことが必要となるでしょう。

iDeCo

堅実な資産形成におすすめの方法は「iDeCo」「NISA」「不動産投資」の3つです。iDeCoは60歳以降に私的年金として受け取り、公的年金と併用することで老後にゆとりある生活を送ることができます。ただし、原則60歳まで引き出しができないデメリットを十分考慮しましょう。

定期預金・投資信託・保険商品など運用方法や掛金を自分で選択することができ、国の税制優遇を得られる一方で、元本保証されている定期預金では大きなリターンは得られません。

NISA

資産形成の強い味方である投資では、多くの方がNISAの制度を利用しています。通常、株式などの先物取引で発生した利益や配当には税金が課税されますが、NISA口座による取引であれば年間120万円まで購入可能で最大5年間は非課税です。投資を学んでNISAを上手く利用していくと、お得に資産形成できるでしょう。

若いうちからの備えとしては「つみたてNISA」もおすすめです。株式の購入はできず投資信託の運用となりますが、NISAと同様に年間40万円まで購入可能で最大20年間非課税となります。 さらにNISA制度は2024年に投資金額の拡充、非課税期間の恒久化が予定されているので、変更内容を確認しておくことが大切です。長期・積立・分散型でリスクヘッジすることができるため、20~30代の方には活用してもらいたい制度です。

不動産投資

最後にご紹介する資産形成が不動産投資です。金融機関の融資を受けることにより、自己資金だけでは得られない高い収益性を上げることができます。「不動産投資は危ない」と言われることもありますが、株式や投資信託と異なり、事前に予測されるリスクと向き合い対策を立てることにより、より多くのキャッシュフローを生み出すことができます。

不動産投資は小さな規模からスタートし、所有物件を増加させることで大きな資産を築いていく方法です。また、 現物取引なのでインフレによる物価の上昇にも強いため価格変動が起こりづらく、運用の手間がほとんどかからないなどのメリットがあります。より賢く大きな収益を上げたい方は是非一度、不動産投資を検討してみて下さい。

まとめ

今回は、「老後二千万円問題」のきっかけやモデルケースを読解し、実際に老後に必要な資金について紐解いてお伝えしました。
記事内では多くの調査結果や資料を用いて解説しましたが、いずれも目安としての統計にすぎません。
人それぞれ人生は違うものです。あくまで参考としてご覧頂き、ゆとりある老後を迎えるための資産運用法について考えていきましょう。

ベルテックスでは不動産にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。