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2024.02.29
ベルテックスコラム事務局
止まらない円安!円安時代を乗り越える資産防衛策を解説
- 日本の現状
近年、日本経済では円安が進んでいます。円安時の資産形成戦略と、その中での資産防衛について考えることは、個人の資産管理において欠かせません。
ここでは、円安の背景や影響、そして資産を守るための具体的な方法について解説します。
円安とは
円安とは、為替相場において日本円の価値が外国通貨に比べて下落する状況を指します。つまり、1日の終わりと次の日の始まりにおいて、日本円が他の通貨に対して価値を失った場合に円安となります。例えば1米ドルが100円だったのが次の日には105円になるなど、同じ外国通貨を購入する際により多くの日本円が必要になる状態です。
円安が進行すると、日本からの輸出品が価格競争力を持つ一方で、輸入品の価格が上昇するなど経済への影響が生じます。また、為替相場の変動は国際的な金融市場にも影響を及ぼし、投資家や企業の意思決定に大きな影響を与える要因となります。このような状況の中では、円安の影響やメカニズムを理解し、適切な対策を考えることが重要です。
円安が続く日本の現状
現在、円安の流れが続いています。2020年以降、日本の通貨である円は他国の通貨に比べて相対的に価値を失いつつあります。この円安の現象は、外国為替市場におけるさまざまな要因の影響を受けています。一部の要因には、金融政策の違い、国際的な景気の動向などが含まれます。
円安は輸出企業にとっては、外国市場での商品価格が競争力を持つ可能性があります。ただし、輸入品の価格上昇や海外旅行費用の増加など、国内での生活にも影響を及ぼす側面も存在します。また、為替相場の変動は、金融市場の投資判断に影響を与え、企業の収益や経済政策に対する見方にも変化をもたらすことがあります。
円安の状況下では、個人や企業は適切な対策を検討する必要があります。過去の経済動向や国際的な状況を考慮しつつ、円安にどのように対処するか、資産の保全や運用の方針を見直す必要があるでしょう。円安がどれだけ続くかは予測が難しいものの、その影響を出来るだけ小さく抑えるための戦略を構築することが重要です。
日本のインフレーション推移
日本のインフレーション推移は、経済の健全性や物価の変動を示す重要な指標です。過去数十年間、日本はデフレーション(物価の下落)の影響を受けてきましたが、近年では一部の指標が上昇傾向を示しています。
1990年代から2000年代初頭にかけて、日本は長期にわたるデフレーションの時期を経験しました。物価が継続的に下落する状況は、企業の収益悪化や消費の減少を招き、経済の停滞を引き起こしました。
しかし、安倍政権による経済政策(アベノミクス)や日本銀行の金融緩和の影響もあり、一部の指標では物価の上昇が見られるようになりました。消費税の引き上げなど一時的な要因も影響していますが、2020年代に入っても政府や日銀は一定のインフレ率の目標を掲げ、景気刺激策を推進しています。
インフレーション推移の解釈には注意が必要です。一時的な変動や外部要因によって物価が上昇しても、持続的な価格上昇が達成されるかどうかは不確定です。物価の安定を確保するためには、経済の健全な成長と労働市場の安定が必要です。
円安の原因とは?
円安の原因は複雑であり、さまざまな経済的要因や国際的な出来事に影響を受けています。以下に、円安の主な原因をいくつか挙げてみましょう。
金融政策の影響
国内の金融政策は円相場に大きな影響を及ぼします。なぜなら一般的に投資家は、金利の高い国の国債を買ったり、金利の高い国に預金したりするからです。中央銀行である日本銀行が金利を引き下げたり、量的緩和策を実施したりすると、通貨価値が低下しやすくなります。これは他国の通貨に対して相対的に円安となる要因となります。
日本では、長く低金利が続いており、加えてアベノミクスでは大規模な金融緩和が実施されました。2023年8月時点の政策金利を見ると日本はマイナス0.10%ですが、アメリカは5.25~5.50%、イギリスは5.25%、中国は3.45%です。発展途上国ではもっと政策金利の高い国もあり、トルコは25.00%、メキシコは11.25%です。
日本の金融政策の影響で低金利が続き、円安が進んでいるとも考えられます。
経済成長の期待
好景気や経済成長の期待が高まると、外国からの投資が増えることがあります。国際的に知名度が高く業績の良い日本企業があれば、株式を買いたいと思う投資家も増えるでしょう。また全体として日本の経済成長への期待が高まれば、国債や株式が買われることになります。つまりその結果、他国の通貨に対して相対的に価値が上がることになるのです。
しかし日本の経済成長率は、高いとはいえません。2023年6月の経済協力開発機構(OECD)の発表によると2023年の世界経済成長率は2.7%ですが、日本の経済成長率は1.3%と予測されています。インド6.0%、中国5.4%、アメリカ1.6%などと比べると低い水準です。このように経済成長への期待感が薄いことから、円安が進んでいるとも考えられます。
貿易収支の影響
貿易収支とは、輸出額から輸入額を引いたもので輸出が上回っていれば黒字、輸入が上回っていれば赤字です。一般的に貿易収支が黒字だと受け取った外貨を売って日本円を買う必要があり、円高になります。逆に貿易収支の赤字が続くと、円安が進行することになります。
2022年度は、エネルギー価格が上昇したことで輸出入が増えましたが、結果として貿易赤字は拡大しました。 円安によって輸出額が増加すれば円高となりますが、長く続く円安を輸出額の増加に結びつけられていない現状があり、「 赤字が円安を加速させていると」いう見方もできます。
地政学的リスク
国際的な政治的な緊張や紛争が発生すると、投資家は安全資産とされる通貨への避難需要が高まることがあります。外国為替取引の格言に「有事の米ドル買い」という言葉があります。戦争や紛争が起きた場合、為替相場がどのように変動するか予測するのは困難なので、流動性の高い米ドルを買っておくと安心だという考え方です。
2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、国際的な緊張感が高まっています。その結果、有事の米ドル買いの格言に従い、米ドル高が進み円安になっているともいえるでしょう。自国内で戦争やクーデターが起きれば円安が進むのはもちろんですが、国際的な緊張感や隣国の動向も為替相場に影響を与えることがあります。
外国為替市場の需給バランス
外国為替市場では日々大量の通貨が取引されており、需給バランスによって交換比率が変わり、通貨価値が変動します。ここまで紹介してきた経済成長や貿易収支といったさまざまな要因によって、外貨を売って日本円を買う需要が高まれば、日本円の価値が上昇して円高になるでしょう。一方、日本円を外貨に換える需要が高まれば日本円は売られて供給過剰となり、価値が下落して円安になります。
外国為替市場の需給バランスは複雑に絡み合い、円相場の変動を引き起こす原因となります。そのため円安の原因を明確に特定することは難しく、さまざまな要因を複合的に分析していくことが必要です。 また円安が続くかどうかも、経済の状況や国際的な出来事によって大きく左右されるため、予測が難しい部分もあります。
円安で資産が目減りする可能性
円安は一部の資産に影響を及ぼす可能性があります。特に以下の点に注意が必要です。
円安による株式の評価減額
事業内容によっては、円安の影響で業績が悪化し、株式の評価額が下がる可能性があります。前述で「円安は輸出企業にとっては有利になる」と解説しました。しかし原材料などを輸入するものの輸出を行っていない企業にとっては、円安による恩恵はありません。それどころか、原材料などの輸入価格が上昇し、上昇分をうまく商品価格に転嫁できなければ損失を被ることになります。
原材料などの価格上昇分を商品価格に転嫁しても価格が上がったことで消費者離れが進み、結果として利益が落ちてしまうことも考えられます。
輸入品の価格上昇
円安になると日本円の通貨価値が相対的に低くなります。海外から輸入を行う際にこれまでと同じものを得るためには、より多くの日本円を用意しなければなりません。つまり輸入品の価格が上がることになります。また価格上昇は、海外からの輸入品だけにとどまりません。日本の商品やサービスのなかにも、原材料を海外から輸入しているものは多くあります。
企業は仕入額が増加した場合、増加分を商品やサービスの価格に上乗せしなければ減益となりかねません。その結果、非常に多くのものが値上がりし、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
円安時に資産を防衛するための3つの対策
為替相場を踏まえて、資産を守り抜くためにはどのような対策を講じるべきでしょうか。円安時の資産防衛には慎重な選択と戦略が求められます。以下では、円安の際に考慮すべきポイントと、資産を守るための具体的な方法について解説します。円安が進行する状況では、資産を守るために以下の3つの対策を検討することが重要です。
1.分散投資として海外資産も視野に
円安が今後も続くと予想するなら海外資産にも分散投資をしましょう。商品の売買や利息の支払いが日本円で行われるものを円建て資産、外貨で行われるものを外貨建て資産と呼びます。例えば日本の預貯金や日本国債、日本株式は代表的な円建て資産です。一方、日本円を外貨に換えて保有する外貨預金や海外債券、海外株式などは外貨建て資産となります。
外貨建て資産へ投資したあとに円安が進んだ場合は、為替差益を得られる点がメリットです。今後も円安が進むと予想するなら資産防衛のためにも日本円を外貨建て資産に投資することを考えましょう。
2.インフレ耐性があるもの
円安は、輸入品の価格上昇を招き、物価の上昇を引き起こす可能性があります。このようなインフレリスクに対抗するために、インフレ耐性のある資産を保有することも効果的です。具体的には、不動産やコモディティ、インフレ連動債券などが考えられます。不動産は実体を持つ実物資産でインフレになっても価値が下がりにくい傾向です。
インフレで物価が上がれば預貯金の価値は相対的に下がりますが、インフレの影響で不動産価格が下がることはほとんどありません。むしろ、インフレの影響で価格が上がることもあり得ます。
また不動産投資では、第三者に物件を貸して家賃収入を得ますが、家賃収入はインフレとともに徐々に上がっていく傾向です。そのため家計の支出が増えても家賃収入の増加によってコスト増をまかなえる可能性もあります。
コモディティは物理的な商品であり、需要の変動に強く、インフレ期には価格上昇が期待されます。インフレ連動債券は、物価上昇に連動して利回りが上昇するため、購買力の維持に寄与します。
3.複利効果を活かす中長期運用
為替相場は、予測が難しく「今後円安が続くのか」「どこかで円高に転じるのか」について正確に知ることはできません。投資において為替相場を考慮することは重要ですが、為替相場にかかわらず中長期的に積立投資を続け、複利効果を得ることも投資初心者には効果的な戦略のひとつです。複利効果は、利益を再投資し続けることで元本が成長し、それに伴い利益も増えていくメカニズムです。
特に投資信託の積立購入を長期間にわたって継続することで、リスクを分散しながら長期間にわたって成果を上げられる可能性があります。市場の短期的な変動に惑わされず、将来の資産増加を見据えた戦略的な投資を行うことが大切です。円安時の資産防衛において、これら3つの対策を組み合わせて適切なポートフォリオを構築し、リスクを最小限に抑えながら資産を守ることが求められます。
円安時に気を付けること
円安時に投資を始める場合、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。ここでは、円安だからこそ意識したいポイントや初めて投資を始める人が知っておくべき視点について解説していきます。
1.過度な外貨依存を避ける
今後も円安が続くと予想するなら、外貨に資産をシフトすることが考えられますが、過度な外貨依存はリスクを伴います。なぜなら為替の変動は予測が難しく今後も円安が続くと思って投資した矢先に円高に転じて為替差損が発生してしまうこともあり得るからです。
また外貨建て資産には、為替リスク以外のリスクもあります。例えば投資先の国で戦争やクーデターが起き地政学的リスクから資産の評価額が下がってしまうことも十分に考えられるでしょう。日本国内と比べて海外の情報収集は難しいため、タイムリーに情報を入手できずに損失を出してしまうこともあるかもしれません。
そのため外貨建て資産を購入するときは、しっかりと情報収集してリスクを考慮し、バランスを保ちつつ投資しましょう。
2.長期投資を続ける
円安時の市場変動に惑わされず、長期投資を続けることも重要な戦略です。短期的な変動はあるものの、長期的な経済成長や企業価値の向上を見越した投資を行うことで、資産の安定的な増加を目指すことができます。また利益を再投資することで複利効果を得られる点もメリットです。
長期投資なら仮に円高となり為替差損が発生する状況になっても、じっくりと再び円安に振れるのを待つことができます。また為替相場の変動に一喜一憂して仕事や家事が手につかなくなる心配もありません。
長期投資を続けるためには、今後必要となる出費を見越した上で無理のない金額を投資に回すことが大切です。初心者なら毎月一定額を投資する積立投資を考えましょう。
3.リスクヘッジを意識する
円安によるリスクを軽減するために、国内外の資産をバランスよく保有し、分散投資を実践することが重要です。異なる資産クラスへの分散や、異なる国や地域への投資を通じて、リスクを分散させましょう。
投資の世界には「卵を1つのカゴに盛るな」という格言があります。これは、卵を1つのカゴに盛っているとカゴを落としたらすべての卵が割れてしまうものの、いくつかのカゴに分散して入れておけば1つのカゴを落としても他のカゴに入れた卵は割れないというものです。
このように分散投資では、ある商品が値下がりしても別の商品の値上がりが損失をカバーしてくれる可能性があります。日本円の預金だけだと円安が続いた場合の資産防衛が難しくなるため、外国株式に投資できる投資信託や外貨預金などへ分散投資することを考えましょう。
4.自身のリスク許容度を確認する
円安による市場変動は個々のリスク許容度に影響を与えます。リスク許容度とは、「投資による損失をどこまで受け入れられるか」という自分自身のキャパシティのことです。年齢や家族構成、職業、投資経験、財産などさまざまな要素がリスク許容度に影響を与えます。
例えば独身で年収が高く再就職しやすい資格を保有しており、貯金が多ければ多少の損失が出ても精神的なストレスは少なくて済むでしょう。一方、片働きの扶養者3人かつ転職しにくい業界で貯金も少ない世帯の場合は、損失が出たときに大きなストレスにさらされることになります。
自身のリスク許容度を確認し、適切な投資スタイルを選ぶことが大切です。無理なく資産を運用し、精神的な負担を軽減しましょう。
円安時には市場の変動が大きくなる傾向がありますが、冷静な判断と適切な対策を講じることで、資産の守りと増加を両立させることができます。
円安時のおすすめの資産運用商品
円安時には、以下の資産運用商品がおすすめです。円安の時期には、資産運用の選択が重要です。ここでは、円安時におすすめの資産運用商品をご紹介します。これらの商品は、円安やインフレに対して強い傾向があるため、資産を守りつつ増やすための手段となります。
1.外貨運用:円安・インフレ時に強いもの
外貨運用は、円安時に為替差益が期待できるため、おすすめの資産運用のひとつです。特に、以下の商品がおすすめです。
外国株
外国の株式に投資することで、分散投資ができ、資産を守れる可能性が高まります。
外貨建て投資信託
外貨建ての投資信託を通じて、海外の株式や債券等に分散投資する方法もあります。専門家が選定したポートフォリオで運用されるため、投資の専門知識がない方にもおすすめです。
2.iDeCoとNISA:年金対策に最適
為替相場の予測は難しいため、長期にわたって積立投資を継続しながら複利効果を得る投資方法も効果的です。長期にわたって積立投資をするなら利益が非課税になるなど税制上の優遇があるiDeCoやNISAを検討しましょう。
iDeCoは、将来の年金収入を増やすための手段として注目されています。原則60歳まで引き出せないものの節税効果が高い点がメリットです。NISAは、iDeCoのような所得控除といった節税効果こそありませんが、いつでも引き出せる自由度の高さが魅力といえます。
このように投資初心者の場合は、まずiDeCoやNISAの検討をすべきです。
3.不動産投資:インフレ耐性がある
不動産投資は、インフレに強い特性を持つため、円安時にもおすすめです。不動産の価値や家賃収入が上昇しやすい状況下で、資産を守りつつ収益を得ることが可能です。不動産投資信託(REIT)なども、手軽な不動産投資のひとつとして検討できます。
円安時には、これらの資産運用商品を組み合わせてポートフォリオを構築することで、リスクを分散し資産の安定と成長を実現することができます。適切な商品選びと、自身の投資目標に合った資産運用戦略を立てることが大切です。
【おすすめ関連記事】初心者必見!不動産投資の始め方を6つのステップで解説します
まとめ
円安の影響を受けつつも、資産を守りつつ成長させるにはいくつかのポイントがあります。まず、リスク分散が重要です。異なる資産クラスへの投資を検討し、市場変動へのバランスを保ちましょう。次に、長期的な視点で投資を続けることがポイントです。短期的な変動に左右されず、市場の成長トレンドを捉えることが肝要です。
また、自身のリスク許容度や目標に合った運用戦略を選択することも大切です。専門家のアドバイスを活用し、適切な商品を選びましょう。さらに、円安状況を活かすためには、経済や為替の専門家の意見を参考にすることが有益です。
円安の局面でも、戦略的な資産運用を通じてリスクヘッジを行い、将来の安定的な資産形成を目指しましょう。焦ることなく、計画的な運用を続けることで、資産を増やし続けることが可能です。
ベルテックスでは不動産投資やその他の資産運用にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。
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2024.02.29
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止まらない円安!円安時代を乗り越える資産防衛策を解説
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近年、日本経済では円安が進んでいます。円安時の資産形成戦略と、その中での資産防衛について考えることは、個人の資産管理において欠かせません。
ここでは、円安の背景や影響、そして資産を守るための具体的な方法について解説します。
円安とは
円安とは、為替相場において日本円の価値が外国通貨に比べて下落する状況を指します。つまり、1日の終わりと次の日の始まりにおいて、日本円が他の通貨に対して価値を失った場合に円安となります。例えば1米ドルが100円だったのが次の日には105円になるなど、同じ外国通貨を購入する際により多くの日本円が必要になる状態です。
円安が進行すると、日本からの輸出品が価格競争力を持つ一方で、輸入品の価格が上昇するなど経済への影響が生じます。また、為替相場の変動は国際的な金融市場にも影響を及ぼし、投資家や企業の意思決定に大きな影響を与える要因となります。このような状況の中では、円安の影響やメカニズムを理解し、適切な対策を考えることが重要です。
円安が続く日本の現状
現在、円安の流れが続いています。2020年以降、日本の通貨である円は他国の通貨に比べて相対的に価値を失いつつあります。この円安の現象は、外国為替市場におけるさまざまな要因の影響を受けています。一部の要因には、金融政策の違い、国際的な景気の動向などが含まれます。
円安は輸出企業にとっては、外国市場での商品価格が競争力を持つ可能性があります。ただし、輸入品の価格上昇や海外旅行費用の増加など、国内での生活にも影響を及ぼす側面も存在します。また、為替相場の変動は、金融市場の投資判断に影響を与え、企業の収益や経済政策に対する見方にも変化をもたらすことがあります。
円安の状況下では、個人や企業は適切な対策を検討する必要があります。過去の経済動向や国際的な状況を考慮しつつ、円安にどのように対処するか、資産の保全や運用の方針を見直す必要があるでしょう。円安がどれだけ続くかは予測が難しいものの、その影響を出来るだけ小さく抑えるための戦略を構築することが重要です。
日本のインフレーション推移
日本のインフレーション推移は、経済の健全性や物価の変動を示す重要な指標です。過去数十年間、日本はデフレーション(物価の下落)の影響を受けてきましたが、近年では一部の指標が上昇傾向を示しています。
1990年代から2000年代初頭にかけて、日本は長期にわたるデフレーションの時期を経験しました。物価が継続的に下落する状況は、企業の収益悪化や消費の減少を招き、経済の停滞を引き起こしました。
しかし、安倍政権による経済政策(アベノミクス)や日本銀行の金融緩和の影響もあり、一部の指標では物価の上昇が見られるようになりました。消費税の引き上げなど一時的な要因も影響していますが、2020年代に入っても政府や日銀は一定のインフレ率の目標を掲げ、景気刺激策を推進しています。
インフレーション推移の解釈には注意が必要です。一時的な変動や外部要因によって物価が上昇しても、持続的な価格上昇が達成されるかどうかは不確定です。物価の安定を確保するためには、経済の健全な成長と労働市場の安定が必要です。
円安の原因とは?
円安の原因は複雑であり、さまざまな経済的要因や国際的な出来事に影響を受けています。以下に、円安の主な原因をいくつか挙げてみましょう。
金融政策の影響
国内の金融政策は円相場に大きな影響を及ぼします。なぜなら一般的に投資家は、金利の高い国の国債を買ったり、金利の高い国に預金したりするからです。中央銀行である日本銀行が金利を引き下げたり、量的緩和策を実施したりすると、通貨価値が低下しやすくなります。これは他国の通貨に対して相対的に円安となる要因となります。
日本では、長く低金利が続いており、加えてアベノミクスでは大規模な金融緩和が実施されました。2023年8月時点の政策金利を見ると日本はマイナス0.10%ですが、アメリカは5.25~5.50%、イギリスは5.25%、中国は3.45%です。発展途上国ではもっと政策金利の高い国もあり、トルコは25.00%、メキシコは11.25%です。
日本の金融政策の影響で低金利が続き、円安が進んでいるとも考えられます。
経済成長の期待
好景気や経済成長の期待が高まると、外国からの投資が増えることがあります。国際的に知名度が高く業績の良い日本企業があれば、株式を買いたいと思う投資家も増えるでしょう。また全体として日本の経済成長への期待が高まれば、国債や株式が買われることになります。つまりその結果、他国の通貨に対して相対的に価値が上がることになるのです。
しかし日本の経済成長率は、高いとはいえません。2023年6月の経済協力開発機構(OECD)の発表によると2023年の世界経済成長率は2.7%ですが、日本の経済成長率は1.3%と予測されています。インド6.0%、中国5.4%、アメリカ1.6%などと比べると低い水準です。このように経済成長への期待感が薄いことから、円安が進んでいるとも考えられます。
貿易収支の影響
貿易収支とは、輸出額から輸入額を引いたもので輸出が上回っていれば黒字、輸入が上回っていれば赤字です。一般的に貿易収支が黒字だと受け取った外貨を売って日本円を買う必要があり、円高になります。逆に貿易収支の赤字が続くと、円安が進行することになります。
2022年度は、エネルギー価格が上昇したことで輸出入が増えましたが、結果として貿易赤字は拡大しました。 円安によって輸出額が増加すれば円高となりますが、長く続く円安を輸出額の増加に結びつけられていない現状があり、「 赤字が円安を加速させていると」いう見方もできます。
地政学的リスク
国際的な政治的な緊張や紛争が発生すると、投資家は安全資産とされる通貨への避難需要が高まることがあります。外国為替取引の格言に「有事の米ドル買い」という言葉があります。戦争や紛争が起きた場合、為替相場がどのように変動するか予測するのは困難なので、流動性の高い米ドルを買っておくと安心だという考え方です。
2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、国際的な緊張感が高まっています。その結果、有事の米ドル買いの格言に従い、米ドル高が進み円安になっているともいえるでしょう。自国内で戦争やクーデターが起きれば円安が進むのはもちろんですが、国際的な緊張感や隣国の動向も為替相場に影響を与えることがあります。
外国為替市場の需給バランス
外国為替市場では日々大量の通貨が取引されており、需給バランスによって交換比率が変わり、通貨価値が変動します。ここまで紹介してきた経済成長や貿易収支といったさまざまな要因によって、外貨を売って日本円を買う需要が高まれば、日本円の価値が上昇して円高になるでしょう。一方、日本円を外貨に換える需要が高まれば日本円は売られて供給過剰となり、価値が下落して円安になります。
外国為替市場の需給バランスは複雑に絡み合い、円相場の変動を引き起こす原因となります。そのため円安の原因を明確に特定することは難しく、さまざまな要因を複合的に分析していくことが必要です。 また円安が続くかどうかも、経済の状況や国際的な出来事によって大きく左右されるため、予測が難しい部分もあります。
円安で資産が目減りする可能性
円安は一部の資産に影響を及ぼす可能性があります。特に以下の点に注意が必要です。
円安による株式の評価減額
事業内容によっては、円安の影響で業績が悪化し、株式の評価額が下がる可能性があります。前述で「円安は輸出企業にとっては有利になる」と解説しました。しかし原材料などを輸入するものの輸出を行っていない企業にとっては、円安による恩恵はありません。それどころか、原材料などの輸入価格が上昇し、上昇分をうまく商品価格に転嫁できなければ損失を被ることになります。
原材料などの価格上昇分を商品価格に転嫁しても価格が上がったことで消費者離れが進み、結果として利益が落ちてしまうことも考えられます。
輸入品の価格上昇
円安になると日本円の通貨価値が相対的に低くなります。海外から輸入を行う際にこれまでと同じものを得るためには、より多くの日本円を用意しなければなりません。つまり輸入品の価格が上がることになります。また価格上昇は、海外からの輸入品だけにとどまりません。日本の商品やサービスのなかにも、原材料を海外から輸入しているものは多くあります。
企業は仕入額が増加した場合、増加分を商品やサービスの価格に上乗せしなければ減益となりかねません。その結果、非常に多くのものが値上がりし、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
円安時に資産を防衛するための3つの対策
為替相場を踏まえて、資産を守り抜くためにはどのような対策を講じるべきでしょうか。円安時の資産防衛には慎重な選択と戦略が求められます。以下では、円安の際に考慮すべきポイントと、資産を守るための具体的な方法について解説します。円安が進行する状況では、資産を守るために以下の3つの対策を検討することが重要です。
1.分散投資として海外資産も視野に
円安が今後も続くと予想するなら海外資産にも分散投資をしましょう。商品の売買や利息の支払いが日本円で行われるものを円建て資産、外貨で行われるものを外貨建て資産と呼びます。例えば日本の預貯金や日本国債、日本株式は代表的な円建て資産です。一方、日本円を外貨に換えて保有する外貨預金や海外債券、海外株式などは外貨建て資産となります。
外貨建て資産へ投資したあとに円安が進んだ場合は、為替差益を得られる点がメリットです。今後も円安が進むと予想するなら資産防衛のためにも日本円を外貨建て資産に投資することを考えましょう。
2.インフレ耐性があるもの
円安は、輸入品の価格上昇を招き、物価の上昇を引き起こす可能性があります。このようなインフレリスクに対抗するために、インフレ耐性のある資産を保有することも効果的です。具体的には、不動産やコモディティ、インフレ連動債券などが考えられます。不動産は実体を持つ実物資産でインフレになっても価値が下がりにくい傾向です。
インフレで物価が上がれば預貯金の価値は相対的に下がりますが、インフレの影響で不動産価格が下がることはほとんどありません。むしろ、インフレの影響で価格が上がることもあり得ます。
また不動産投資では、第三者に物件を貸して家賃収入を得ますが、家賃収入はインフレとともに徐々に上がっていく傾向です。そのため家計の支出が増えても家賃収入の増加によってコスト増をまかなえる可能性もあります。
コモディティは物理的な商品であり、需要の変動に強く、インフレ期には価格上昇が期待されます。インフレ連動債券は、物価上昇に連動して利回りが上昇するため、購買力の維持に寄与します。
3.複利効果を活かす中長期運用
為替相場は、予測が難しく「今後円安が続くのか」「どこかで円高に転じるのか」について正確に知ることはできません。投資において為替相場を考慮することは重要ですが、為替相場にかかわらず中長期的に積立投資を続け、複利効果を得ることも投資初心者には効果的な戦略のひとつです。複利効果は、利益を再投資し続けることで元本が成長し、それに伴い利益も増えていくメカニズムです。
特に投資信託の積立購入を長期間にわたって継続することで、リスクを分散しながら長期間にわたって成果を上げられる可能性があります。市場の短期的な変動に惑わされず、将来の資産増加を見据えた戦略的な投資を行うことが大切です。円安時の資産防衛において、これら3つの対策を組み合わせて適切なポートフォリオを構築し、リスクを最小限に抑えながら資産を守ることが求められます。
円安時に気を付けること
円安時に投資を始める場合、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。ここでは、円安だからこそ意識したいポイントや初めて投資を始める人が知っておくべき視点について解説していきます。
1.過度な外貨依存を避ける
今後も円安が続くと予想するなら、外貨に資産をシフトすることが考えられますが、過度な外貨依存はリスクを伴います。なぜなら為替の変動は予測が難しく今後も円安が続くと思って投資した矢先に円高に転じて為替差損が発生してしまうこともあり得るからです。
また外貨建て資産には、為替リスク以外のリスクもあります。例えば投資先の国で戦争やクーデターが起き地政学的リスクから資産の評価額が下がってしまうことも十分に考えられるでしょう。日本国内と比べて海外の情報収集は難しいため、タイムリーに情報を入手できずに損失を出してしまうこともあるかもしれません。
そのため外貨建て資産を購入するときは、しっかりと情報収集してリスクを考慮し、バランスを保ちつつ投資しましょう。
2.長期投資を続ける
円安時の市場変動に惑わされず、長期投資を続けることも重要な戦略です。短期的な変動はあるものの、長期的な経済成長や企業価値の向上を見越した投資を行うことで、資産の安定的な増加を目指すことができます。また利益を再投資することで複利効果を得られる点もメリットです。
長期投資なら仮に円高となり為替差損が発生する状況になっても、じっくりと再び円安に振れるのを待つことができます。また為替相場の変動に一喜一憂して仕事や家事が手につかなくなる心配もありません。
長期投資を続けるためには、今後必要となる出費を見越した上で無理のない金額を投資に回すことが大切です。初心者なら毎月一定額を投資する積立投資を考えましょう。
3.リスクヘッジを意識する
円安によるリスクを軽減するために、国内外の資産をバランスよく保有し、分散投資を実践することが重要です。異なる資産クラスへの分散や、異なる国や地域への投資を通じて、リスクを分散させましょう。
投資の世界には「卵を1つのカゴに盛るな」という格言があります。これは、卵を1つのカゴに盛っているとカゴを落としたらすべての卵が割れてしまうものの、いくつかのカゴに分散して入れておけば1つのカゴを落としても他のカゴに入れた卵は割れないというものです。
このように分散投資では、ある商品が値下がりしても別の商品の値上がりが損失をカバーしてくれる可能性があります。日本円の預金だけだと円安が続いた場合の資産防衛が難しくなるため、外国株式に投資できる投資信託や外貨預金などへ分散投資することを考えましょう。
4.自身のリスク許容度を確認する
円安による市場変動は個々のリスク許容度に影響を与えます。リスク許容度とは、「投資による損失をどこまで受け入れられるか」という自分自身のキャパシティのことです。年齢や家族構成、職業、投資経験、財産などさまざまな要素がリスク許容度に影響を与えます。
例えば独身で年収が高く再就職しやすい資格を保有しており、貯金が多ければ多少の損失が出ても精神的なストレスは少なくて済むでしょう。一方、片働きの扶養者3人かつ転職しにくい業界で貯金も少ない世帯の場合は、損失が出たときに大きなストレスにさらされることになります。
自身のリスク許容度を確認し、適切な投資スタイルを選ぶことが大切です。無理なく資産を運用し、精神的な負担を軽減しましょう。
円安時には市場の変動が大きくなる傾向がありますが、冷静な判断と適切な対策を講じることで、資産の守りと増加を両立させることができます。
円安時のおすすめの資産運用商品
円安時には、以下の資産運用商品がおすすめです。円安の時期には、資産運用の選択が重要です。ここでは、円安時におすすめの資産運用商品をご紹介します。これらの商品は、円安やインフレに対して強い傾向があるため、資産を守りつつ増やすための手段となります。
1.外貨運用:円安・インフレ時に強いもの
外貨運用は、円安時に為替差益が期待できるため、おすすめの資産運用のひとつです。特に、以下の商品がおすすめです。
外国株
外国の株式に投資することで、分散投資ができ、資産を守れる可能性が高まります。
外貨建て投資信託
外貨建ての投資信託を通じて、海外の株式や債券等に分散投資する方法もあります。専門家が選定したポートフォリオで運用されるため、投資の専門知識がない方にもおすすめです。
2.iDeCoとNISA:年金対策に最適
為替相場の予測は難しいため、長期にわたって積立投資を継続しながら複利効果を得る投資方法も効果的です。長期にわたって積立投資をするなら利益が非課税になるなど税制上の優遇があるiDeCoやNISAを検討しましょう。
iDeCoは、将来の年金収入を増やすための手段として注目されています。原則60歳まで引き出せないものの節税効果が高い点がメリットです。NISAは、iDeCoのような所得控除といった節税効果こそありませんが、いつでも引き出せる自由度の高さが魅力といえます。
このように投資初心者の場合は、まずiDeCoやNISAの検討をすべきです。
3.不動産投資:インフレ耐性がある
不動産投資は、インフレに強い特性を持つため、円安時にもおすすめです。不動産の価値や家賃収入が上昇しやすい状況下で、資産を守りつつ収益を得ることが可能です。不動産投資信託(REIT)なども、手軽な不動産投資のひとつとして検討できます。
円安時には、これらの資産運用商品を組み合わせてポートフォリオを構築することで、リスクを分散し資産の安定と成長を実現することができます。適切な商品選びと、自身の投資目標に合った資産運用戦略を立てることが大切です。
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まとめ
円安の影響を受けつつも、資産を守りつつ成長させるにはいくつかのポイントがあります。まず、リスク分散が重要です。異なる資産クラスへの投資を検討し、市場変動へのバランスを保ちましょう。次に、長期的な視点で投資を続けることがポイントです。短期的な変動に左右されず、市場の成長トレンドを捉えることが肝要です。
また、自身のリスク許容度や目標に合った運用戦略を選択することも大切です。専門家のアドバイスを活用し、適切な商品を選びましょう。さらに、円安状況を活かすためには、経済や為替の専門家の意見を参考にすることが有益です。
円安の局面でも、戦略的な資産運用を通じてリスクヘッジを行い、将来の安定的な資産形成を目指しましょう。焦ることなく、計画的な運用を続けることで、資産を増やし続けることが可能です。
ベルテックスでは不動産投資やその他の資産運用にまつわる資産形成セミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ベルテックスコラム事務局
不動産コンサルタント・税理士
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