2024.02.27

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の利回り最低ラインを教えて!利回りを上げる7つの運用術

  • 利回り
  • 不動産投資

株式やFX、賃貸経営など、投資での収益性を図る指標に「利回り」という言葉があります。これから不動産投資をスタートする人は一体どの程度の利回りがベストなのでしょうか。

この記事では、不動産投資における利回りの種類や動向、最低ラインについて解説するとともに、利回りを向上させるための実践的なアドバイスや戦略を紹介します。

不動産投資で用いる4つの「利回り」と計算法 

不動産投資で使われる「利回り」には、「表面利回り(グロス利回り)」「実質利回り(ネット利回り)」「現行利回り」「想定利回り」があります。
それぞれの意味や投資物件の収益性を算出する計算方法を理解して、最適な投資判断を行うことが重要です。

そもそも利回りとは何か

利回りとは、投資家が投入した資本に対して得られる収益の「割合」や「率」を示す指標のことです。物件から得られる収益を基準に計算します。
不動産投資における利回りは、投資物件の価値や投資額と比較し、投資家がどれだけのリターンを期待できるかを示す値で、購入物件を決定する際の重要な判断基準の1つです。

表面利回り 

投資物件を扱う不動産会社の広告には、一般的に「表面利回り」が用いられています。

【表面利回り計算方法】
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

高利回りになりやすいことが特徴です。算出が簡単な一方で実際の運用値との差も大きく、表面利回りばかりを重視してはならないとの見方もあります。

実質利回り 

実質利回りは、年間の家賃収入から修繕費や固定資産税などの必要経費を除いて算出された値です。

【実質利回り計算方法】
実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間家賃諸経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100

複数の不動産投資会社を比較する際、実質利回りにどのような経費を含めているかについても確認しましょう。

現行利回りと想定利回り

一般的に使用頻度が高いのは上記2種類ですが、その他に「想定利回り」と「現行利回り」もあります。
現行利回りの算出法は表面利回りと同様ですが、計算式で使われる「年間家賃収入」には空室の発生も考慮されています。
想定利回りとは、満室稼動を前提として、年間の家賃収入を計算した利益率のことです。こちらは空室・経費いずれも考慮されないため、最も高い利回りとなります。

以上4つを比較すると、いずれも1つの指標として参考にとどめ、購入時には「実質利回り」が最も正確性のある重要な値であると言えるでしょう。
それぞれの具体的な相場が知りたい方は下記コラムでも解説をしておりますので、こちらもご覧ください。

不動産投資成功のために考える「利回りの最低ライン」

不動産投資初心者は、「利回りの最低ライン」を決めておくことが大切です。
利回りの最低ラインが不動産投資の成功とリスクにどのように影響するのか、具体的に解説します。

不動産投資を成功に導く利回りの最低ラインとは

不動産投資における利回りの最低ラインについては定義が存在せず、一般的な目安として以下の値が示されています。

【不動産投資の利回り最低ライン目安】
・表面利回り5%以上
・実質利回り3%以上

物件のエリアや種類、投資の目的によって利回りが大きく異なるため、上記の最低ラインは気にしすぎないようにしましょう。上記の利回り最低ラインより低い値の物件でも、成功している例があります。

狙う利益で利回りの最低ラインは異なる 

不動産投資で狙う利益は以下の2種類です。

・家賃収入=インカムゲイン
・売却益=キャピタルゲイン

一般的には前者を目的とする方が多いとされていますが、複数の物件を所有する方や投資に慣れている方は後者を重視している傾向がみられます。

投資目的が「月々の不労所得を得たい」であれば前者を重視し、「毎月給与所得などからの切り崩しが必要であっても売却時の大きな利益を狙いたい」のであれば後者を重視すべきです。

このように投資の方針次第で購入時に参考とする利回り、運用時の実際の利回りは全く別物となるでしょう。大切なのは、自分の投資目的や指針に適した利回りを考えることです。

同じ利回りでも避けたい「高リスク」物件 

「相場よりも物件価格が安いのに高利回り」の物件を発見することがあります。少ない自己資金で大きなリターンを得られることは収益性を重視する投資において重要ですが、それだけ「リスク」が大きくなることに注意が必要です。

【リスク例】

1.旧耐震基準の建物である
2.物件に告知義務がある
3.入居者が見込めそうにない
4.設定家賃が周辺よりも突出して高い


基本的に1.2の場合は、物件の紹介や案内中など事前に不動産会社側から念を押して言われますが、3.4のように買主側から聞かないと教えてもらえないような情報には注意が必要です。特にこれから不動産投資を始める初心者にとっては上記に当てはまる物件はリスク分散が難しいため、リスクのある高利回り物件は選ばないようにするのが賢明でしょう。

利回りの最低ラインは条件で大きく異なる 

不動産投資で成功するための利回りの最低ラインは、物件の条件次第で大きく異なります。不動産ポータルサイトや紙媒体のメディアなどでは、「地方の中古戸建が利回り20%超え」というような記事も多く見かけるほどです。

どのような条件の物件が「高利回り」になるのか、また反対に「低利回り」になるのかを解説します。

不動産投資で利回りが高くなりやすい物件とは 

利回りの値に起因する背景には、「エリア」「築年数」「構造」主に3つの条件があります。それぞれ高利回りになりやすい条件は以下のとおりです。

1.エリア:地方物件 

一般的には地価が安価な「地方の物件」の方が利回りは高くなる傾向にあります。要因は低価格で物件を取得できるため、トータルコストが安く抑えられるためです。
地方物件は一見すると利回りが高く優良物件のように思えますが、それだけで選んでしまって失敗する人が多いため注意が必要です。エリアへの転入者数(転出者数)や将来を見据えたエリア環境を考慮し、継続的に人口を確保できる場所でなくてはなりません。

少子高齢化による都心への人口集中、一極化が懸念されている中、どれほど利回りが高くても、将来性のないエリアでは不動産投資の成功は見込めません。

2.築年数:中古物件 

中古物件と一括りにすると幅広くなりますが、「取得費の安さ」が利回りを高くする要因です。そのため、築10年未満の物件よりは、家賃下落が緩やかでありながらも物件価格の下落も緩やかとなる築20年前後の物件が狙い目でしょう。

ただし、築20年前後の物件は購入時点で「修繕リスク」が伴います。引渡し後すぐに修繕が必要となり、大きな出費を抱えるケースもあるため慎重に検討しましょう。
また、将来に向かって「修繕リスク」は膨らむため、物件や設備のメンテナンス状況は念入りにチェックしてください。投資物件では、一般的に入居者の居住中には物件の中を見ることができないため、仲介する不動産会社に確認してもらいましょう。

3.構造:木造物件 

一般的な建物の構造を強度順に並べると、「鉄筋鉄骨コンクリート造 > 鉄筋コンクリート > 鉄骨造 >軽量鉄骨造 > 木造」です。強度の高いものほど価格が高く、強度の弱いものほど価格が安くなります。これは素材の価格もですが、高層マンションは建築費が高額な一方、木造は3階程度までしか建てられないため建築費が抑えられることが関係します。これまでに解説してきたようにトータル的に物件の取得費が安い木造物件を選べば、利回りは必然的に高くなるのです。

ただし、木造は音が漏れやすく断熱性能が低いことから、好んで木造を選ぶ人は少なく、入居者のニーズ自体はさほど高くはありません。

不動産投資で利回りが低くなりやすい物件とは 

反対に低利回りになりやすい物件は、「取得費が高い」ものです。ただし、不動産投資では毎月のキャッシュフローだけではなく、キャピタルゲインに影響する物件そのものの資産価値も重要なため、単に低利回りだからと言って投資物件にふさわしくないとは限りません。

1.エリア:都心物件

不動産投資では都心に近いほど物件の取得費は高くなるため、利回りは低くなります。それを裏付けるように、東京都内の利回りは他の都道府県よりも低い傾向にあります。
しかし、近年東京都の不動産価格は他に類を見ない上昇率を見せており、資産価値として非常に優れていると言えるでしょう。毎月のキャッシュフローが数千円程度の赤字であっても、売却益を考慮すると、プラスに転じている可能性があります。

2.築年数:新築物件 

新築物件は、「新築プレミアム」で1割ほど価格が上乗せされている分、中古物件よりも取得費が高くなります。しかし、その分の付加価値で高めの家賃設定が可能で、修繕リスクがしばらくないのはプラス要素でもあります。
新築から築10年程度までは資産価値の下落率が激しく、高めの家賃設定をした場合には著しい家賃下落が起きる可能性があることを理解しておきましょう。

3.構造:鉄筋コンクリート 

鉄筋コンクリートは建築費が高く、木造・その他の物件よりも物件価格は高くなりがちで、低利回りの要因となっています。
ただし、木造物件と比較して人気があり、将来的にも需要の高さを見込める「物件力」を持ち合わせています。また、建築価格と収益性のバランスから一定の敷地面積を要する木造アパートは駅近に物件が建てづらいことが特徴です。鉄筋コンクリート造のマンションは駅近に建てられることが大きな利点とも言え、エリアや築年数とのバランスを見ながら、上手に収益性のある鉄筋コンクリート造の物件を所有したいものです。

エリア別に見る中古物件の利回り動向 

では、これらの利回りの条件を理解したうえで、実際に中古物件の利回り水準を見ていきましょう。
今回は、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」が公開する「収益物件 市場動向 マンスリーレポート 2023年11月期(以下、本データ。)」の最新情報を基にエリア別に紹介します。
※本章でご紹介するデータは、健美家に登録された収益(投資用)不動産において投資利回り(表面利回り)、物件価格の平均値を月次に集計しています。

区分マンション

本データによると、区分マンションの平均表面利回りは6.97%(前月比+0.22ポイント)で、価格は1,766万円(同-3.50%)となっています。
資料内で最も古い6年前の2017年11月期のデータでは、価格1,551万円と215万円低く、表面利回りも7.70%という結果から、地価高騰による利回りの低迷が伺えます。

【エリア別の利回り】

  全国 北海道 東北 首都圏 信州
北陸
東海 関西 中国
四国
九州
沖縄
利回り
%
6.97 12.88 12.34 6.36 14.20 8.91 7.23 13.52 9.38
価格
(万円)
1,766 1,009 1,894 2,198 1,356 1,240 1,243 653 1,137
築年
(年)
30.6 36.9 34.3 31.4 34.6 28.6 28.9 37.4 28.7

一棟アパート 

次に一棟アパートの平均表面利回りは8.04%(同-0.04ポイント)で、価格は7,843万円(同+0.60%)となっています。こちらも区分マンションと同様に価格高騰による利回りの低下が見られます。

【エリア別の利回り】

  全国 北海道 東北 首都圏 信州
北陸
東海 関西 中国
四国
九州
沖縄
利回り
%
8.04 11.70 12.63 7.50 12.35 8.82 8.68 11.17 9.28
価格
(万円)
7,843 4,358 4,434 8,480 4,804 6,346 6,406 5,958 6,378
築年
(年)
22.5 30.1 26.5 22.1 26.3 17.9 24.1 26.8 22.5

一棟マンション 

一棟マンションの平均表面利回りは7.70%(同-0.06ポイント)で、価格は17,122万円(-1.11%)です。一棟マンションも2017年頃よりも利回りは下がっていますが、区分マンションおよび一棟マンションよりも下落率は穏やかな推移をたどっています。

【エリア別の利回り】

  全国 北海道 東北 首都圏 信州
北陸
東海 関西 中国
四国
九州
沖縄
利回り
%
7.70 8.82 10.29 6.87 11.91 9.08 8.48 11.97 8.61
価格
(万円)
17,122 14,315 13,412 19,062 10,981 15,003 12,487 9,491 20,877
築年
(年)
29.3 24.7 29.0 28.6 30.7 30.2 32.4 32.3 28.9

比較すると、首都圏よりも東北や信州・北陸、中国・四国など地方の収益物件は、高利回りになっていることが明らかです。しかし、これほど高利回りのエリアが混在する一方で、全国の平均値は首都圏よりの値であることから、日本の収益物件は人口の確保がしやすい都心に密集していると考えられます。

なお、ここで記載されているデータは、購入時のボーダーラインとして考えるのではなく、あくまで参考とする1つの目安として考えてください。

不動産投資で利回りを上げる具体的な7つの術 

不動産投資を成功させるためには、戦略的に利回りを最大化させる必要があります。行き当たりばったりではなく、事前の資金計画やリスク対策をして適切な物件を選定することから始まります。
ここでは、利回りを上げるために「自分でできる」具体的な7つの方法を紹介します。

運用前にやるべきこと 

まずは、「物件を購入する前の時点」で必ずやっておくべきポイントを4つ紹介します。
これから不動産投資をスタートする方は、2.3.4は特に積極的に取り入れるべき方法でしょう。

1.ローンの返済期間を長くする 

ローンを早期に完済し、家賃収入の全額を不労所得にしたいという方もいますが、ローンの返済期間を短くすることで毎月の返済額が高くなり、利回りは低くなってしまいます。不動産投資用の余剰資金が手元に多くあるなどの場合を除き、ローンの返済期間は長めに設定しておいた方が毎月の余裕が生まれるでしょう。また、ローンが長いほど団体信用生命保険の効果も長くなるメリットもあります。
しかし、ローンの返済期間を長くすることで総返済額は高くなるため、バランスや自己の投資計画を考慮し、最適な選択をしましょう。

2.自己資金を多く入れる 

自己資金の投入額も利回りを下げるうえで重要な要素であり、不動産投資を成功へ導く鍵でもあります。「頭金ゼロ」や「フルローン可」の不動産投資会社もあり、気軽に取り組みやすい一方、月の利回りを上げたいのであれば、多めの自己資金を購入時に入れておくと良いでしょう。
準備する自己資金は一般的に物件価格の1.5割~3割と言われているため、2割程度は投入したいところです。これにより金融機関からの借入額を減らし、毎月の返済額を減らす、つまり利回りを上げることへとつながります。

3.金融機関の比較や金利の交渉をする 

事前審査でローンの承認を得られると、おろそかにしがちなのが「金融機関の比較」です。
金融機関の本審査に入る前に、事前審査を行うケースがあります。事前審査だけでも書類の記入や提出などの手間や労力がかかり、本業のある会社員にとっては後回しにしたくなる面倒な作業工程でしょう。

なんとなく良さそうな1社の金融機関で審査が通ると、安堵の気持ちから安易に契約してしまいがちですが、戦略としては問題があります。
利回りを確実に上げるには、面倒な作業でも金融機関のサービス内容の比較や、金利の交渉を徹底的に行わなくてはいけません。購入後に金利負担の大きさを理由に金融機関を変更しようとすると、借り換え手数料など余計な費用が発生してしまいます。金融機関の選定は、事前の準備・対策が非常に重要です。

具体的な金利交渉の方法としては、他の金融機関を引き合いに出すことです。
最も低金利で承認を得られた他行の審査結果を伝えると、それよりも低い金利への交渉に成功し、利回りを上げられる可能性があります。

また、不動産会社の提携の金融機関を紹介してもらうパターンもあります。ベルテックスは提携の金融機関数が豊富で「もう一件買い増ししたかったが、他社では購入できなかったけれどベルテックスでは買えた」というケースもございます。詳しく知りたい方はぜひセミナーや個別相談で資産形成コンサルタントにご相談ください。

4.管理会社の比較をする 

金融機関の比較と並行して、管理会社の比較も重要です。不動産投資を専門とする会社から物件購入する場合、多くは購入後の管理まで一任する流れが構築されており、管理会社の変更は難しいかもしれません。
しかし、不動産仲介会社から物件購入する場合は、管理会社を自分で自由に選定できるケースがあります。金融機関の審査と同じく煩わしい手間や労力はかかりますが、毎月の管理委託料や契約内容など会社ごとのサービスを徹底的に比較することで、利回りを上げられるでしょう。
空室リスクを不安視する人の中には一定の割合で「サブリース」を検討する方がいますが、サブリース契約をすると満室稼動時の8~9割程度の家賃収入が保証されることはメリットですが、利回りは低くなります。サブリース契約を行う際は、メリット・デメリットや利回りを考えたうえで慎重に選びましょう。

運用中に見直すべきこと 

次は、「物件を購入した後」に見直すことで利回りを上げるポイントを3つ紹介します。実際に手元の資金が動く方法のため、自分に適した方法であるか否かの判断が重要です。

1.家賃収入を上げる 

運用中に利回りを上げる方法として手っ取り早く実行に移せるのは、物件力を上げて家賃収入を増やすことです。

【家賃収入を上げる具体例】
・水回りの設備交換やグレードアップをする
・内装をリノベーションする
・家具付きマンションにする
・ペット飼育可マンションにする など

設備交換・リノベーションには大きなコストは発生しますが、多くのオーナーが家賃収入アップに成功しています。
また、ペット飼育可マンションは希少性があり需要が高く、子供をもたない「DINKs世帯」や結婚に前向きでない「Z世代」のことを考慮すると、今後も伸びそうです。ただし、管理規約や細則でマンション全体がペット飼育を不可としているケースも多くあるため、あらかじめ確認してから取りかかりましょう。

2.ローンの借り換えをする 

不動産投資に慣れているオーナーの方は、「ローンの借り換え」によって利回りアップを図っています。初心者からすると少々レベルが高い方法に思えるかもしれませんが、手順は購入時に行ったローン契約と同じです。すでに借入および返済履歴や、物件の運用実績が明確になっているため、購入時のローン審査よりもハードルは低くなっているでしょう。最近では、窓口のないネット銀行の利用により低金利のアパートローンを実現することも可能です。
ただし、ローン借り換えでは手数料などのバランスを考慮して総合的な判断が求められます。たとえ借り換え後のキャッシュフローが改善しても、手数料で多額の支出がある場合には採算が合わなくなるため注意しましょう。
ローン借り換えを検討する前に、既存の金融機関へ金利交渉を行うのも1つの手です。

3.ローンの繰り上げ返済を考える 

資金に余裕がある方は、ローンの繰り上げ返済による利回りアップを試みましょう。
繰り上げ返済することで借入残高が減少し、発生する金利負担も抑えられます。繰り上げ返済には毎月のローン返済額を変えずに残りの期間を短くする「期間短縮型」、残りの返済期間を変えずに毎月のローン返済額を少なくする「返済額軽減型」の2種類があります。自分にとってどちらがより有利に働くかを比較検討し、最適な選択をすることが重要です。
不動産投資では何かあった時に備え、手元にすぐに支払える余剰資金(現金)を残しておかなくてはなりません。ローンの繰り上げ返済はあくまで「手元の資金に余裕がある」ケースに限り、慢性的な赤字や切羽が詰まった経営状態では行わないようにしましょう。

不動産投資で「利回りの最低ライン」以外に考えるポイント 

不動産投資で「利回りの最低ライン」では、先述の「表面利回り」「実質利回り」の他にも考えるべきポイントがあります。特に注視しておきたい2つの点を紹介します。

イールドギャップを確認する 

1つ目は、「イールドギャップ」の値を確認することです。
イールドギャップとは「投資利回りから金利を差し引いたもの」で、不動産投資を行うにあたり利回り同様に重要な指標となります。
イールドギャップの最低ラインは「3%程度」と言われており、金融機関から承認を得られた金利条件との照らし合わせが必要です。

【イールドギャップの計算式】
イールドギャップ(%)=実質利回り(%)-借入金利(%)

実質利回りが5.0%、借入金利が2.0%と仮定すると、イールドギャップはちょうど最低ラインの目安とする3.0%になります。金融機関からの金利条件が良いのか悪いのか分からない、また良い金利条件が出たがこのまま不動産投資をスタートするのが不安などという方はイールドギャップも参考の1つとしましょう。
イールドギャップについては下記のコラムでも触れておりますので、ぜひご一読ください。

CF利回りを確認する

イードルギャップを考えるとより適正な利回りのラインが分かるように思えるかもしれませんが、これだけでは判断できません。そこで考えたいのがCF(キャッシュフロー)利回りです。
CF利回りとは、毎月の家賃収入からローン返済を引いた手残り額で考える利回りのことです。

【CF利回りの計算式】
CF利回り(%)=(毎月収入-毎月返済)×12÷購入費用×100
※購入費用は物件価格の他に諸経費も含みます

CF利回りは「手元に残った資金」の収益性を示すもので、0を下回らなければ黒字と言えます。最低ラインを考えると、この「CF利回り」という造語を生み出した株式会社アートアベニューの代表取締役である藤澤氏は、「新築時は2%以上が目安」と回答しています。
ローン返済分や経費、金利などを除く「純粋な手残り」という観点から、利回りとして値は最も低くなりますが、整合性やリアルさがありぜひとも参考にしたい基準値です。

まとめ 

本記事では、不動産投資における利回りの最低ラインをテーマに、利回りの種類や計算法、また利回りを上げるポイントについて紹介しました。
不動産投資をするうえで利回りは重要な1つの指標ですが、表面利回りや他の利回りよりも「実質利回り」を基準に判断することが重要です。また、実際の手残り額をベースに考えるCF利回りを基に判断することも効果的と言えるでしょう。
不動産投資の利回り最低ラインは投資をする目的や指針、また運用する物件で大きな差が生じますので、自分にとって最適な利回りとなる物件の選定を行うようにしてください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.02.27

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資の利回り最低ラインを教えて!利回りを上げる7つの運用術

  • 利回り
  • 不動産投資

株式やFX、賃貸経営など、投資での収益性を図る指標に「利回り」という言葉があります。これから不動産投資をスタートする人は一体どの程度の利回りがベストなのでしょうか。

この記事では、不動産投資における利回りの種類や動向、最低ラインについて解説するとともに、利回りを向上させるための実践的なアドバイスや戦略を紹介します。

不動産投資で用いる4つの「利回り」と計算法 

不動産投資で使われる「利回り」には、「表面利回り(グロス利回り)」「実質利回り(ネット利回り)」「現行利回り」「想定利回り」があります。
それぞれの意味や投資物件の収益性を算出する計算方法を理解して、最適な投資判断を行うことが重要です。

そもそも利回りとは何か

利回りとは、投資家が投入した資本に対して得られる収益の「割合」や「率」を示す指標のことです。物件から得られる収益を基準に計算します。
不動産投資における利回りは、投資物件の価値や投資額と比較し、投資家がどれだけのリターンを期待できるかを示す値で、購入物件を決定する際の重要な判断基準の1つです。

表面利回り 

投資物件を扱う不動産会社の広告には、一般的に「表面利回り」が用いられています。

【表面利回り計算方法】
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

高利回りになりやすいことが特徴です。算出が簡単な一方で実際の運用値との差も大きく、表面利回りばかりを重視してはならないとの見方もあります。

実質利回り 

実質利回りは、年間の家賃収入から修繕費や固定資産税などの必要経費を除いて算出された値です。

【実質利回り計算方法】
実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間家賃諸経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100

複数の不動産投資会社を比較する際、実質利回りにどのような経費を含めているかについても確認しましょう。

現行利回りと想定利回り

一般的に使用頻度が高いのは上記2種類ですが、その他に「想定利回り」と「現行利回り」もあります。
現行利回りの算出法は表面利回りと同様ですが、計算式で使われる「年間家賃収入」には空室の発生も考慮されています。
想定利回りとは、満室稼動を前提として、年間の家賃収入を計算した利益率のことです。こちらは空室・経費いずれも考慮されないため、最も高い利回りとなります。

以上4つを比較すると、いずれも1つの指標として参考にとどめ、購入時には「実質利回り」が最も正確性のある重要な値であると言えるでしょう。
それぞれの具体的な相場が知りたい方は下記コラムでも解説をしておりますので、こちらもご覧ください。

不動産投資成功のために考える「利回りの最低ライン」

不動産投資初心者は、「利回りの最低ライン」を決めておくことが大切です。
利回りの最低ラインが不動産投資の成功とリスクにどのように影響するのか、具体的に解説します。

不動産投資を成功に導く利回りの最低ラインとは

不動産投資における利回りの最低ラインについては定義が存在せず、一般的な目安として以下の値が示されています。

【不動産投資の利回り最低ライン目安】
・表面利回り5%以上
・実質利回り3%以上

物件のエリアや種類、投資の目的によって利回りが大きく異なるため、上記の最低ラインは気にしすぎないようにしましょう。上記の利回り最低ラインより低い値の物件でも、成功している例があります。

狙う利益で利回りの最低ラインは異なる 

不動産投資で狙う利益は以下の2種類です。

・家賃収入=インカムゲイン
・売却益=キャピタルゲイン

一般的には前者を目的とする方が多いとされていますが、複数の物件を所有する方や投資に慣れている方は後者を重視している傾向がみられます。

投資目的が「月々の不労所得を得たい」であれば前者を重視し、「毎月給与所得などからの切り崩しが必要であっても売却時の大きな利益を狙いたい」のであれば後者を重視すべきです。

このように投資の方針次第で購入時に参考とする利回り、運用時の実際の利回りは全く別物となるでしょう。大切なのは、自分の投資目的や指針に適した利回りを考えることです。

同じ利回りでも避けたい「高リスク」物件 

「相場よりも物件価格が安いのに高利回り」の物件を発見することがあります。少ない自己資金で大きなリターンを得られることは収益性を重視する投資において重要ですが、それだけ「リスク」が大きくなることに注意が必要です。

【リスク例】

1.旧耐震基準の建物である
2.物件に告知義務がある
3.入居者が見込めそうにない
4.設定家賃が周辺よりも突出して高い


基本的に1.2の場合は、物件の紹介や案内中など事前に不動産会社側から念を押して言われますが、3.4のように買主側から聞かないと教えてもらえないような情報には注意が必要です。特にこれから不動産投資を始める初心者にとっては上記に当てはまる物件はリスク分散が難しいため、リスクのある高利回り物件は選ばないようにするのが賢明でしょう。

利回りの最低ラインは条件で大きく異なる 

不動産投資で成功するための利回りの最低ラインは、物件の条件次第で大きく異なります。不動産ポータルサイトや紙媒体のメディアなどでは、「地方の中古戸建が利回り20%超え」というような記事も多く見かけるほどです。

どのような条件の物件が「高利回り」になるのか、また反対に「低利回り」になるのかを解説します。

不動産投資で利回りが高くなりやすい物件とは 

利回りの値に起因する背景には、「エリア」「築年数」「構造」主に3つの条件があります。それぞれ高利回りになりやすい条件は以下のとおりです。

1.エリア:地方物件 

一般的には地価が安価な「地方の物件」の方が利回りは高くなる傾向にあります。要因は低価格で物件を取得できるため、トータルコストが安く抑えられるためです。
地方物件は一見すると利回りが高く優良物件のように思えますが、それだけで選んでしまって失敗する人が多いため注意が必要です。エリアへの転入者数(転出者数)や将来を見据えたエリア環境を考慮し、継続的に人口を確保できる場所でなくてはなりません。

少子高齢化による都心への人口集中、一極化が懸念されている中、どれほど利回りが高くても、将来性のないエリアでは不動産投資の成功は見込めません。

2.築年数:中古物件 

中古物件と一括りにすると幅広くなりますが、「取得費の安さ」が利回りを高くする要因です。そのため、築10年未満の物件よりは、家賃下落が緩やかでありながらも物件価格の下落も緩やかとなる築20年前後の物件が狙い目でしょう。

ただし、築20年前後の物件は購入時点で「修繕リスク」が伴います。引渡し後すぐに修繕が必要となり、大きな出費を抱えるケースもあるため慎重に検討しましょう。
また、将来に向かって「修繕リスク」は膨らむため、物件や設備のメンテナンス状況は念入りにチェックしてください。投資物件では、一般的に入居者の居住中には物件の中を見ることができないため、仲介する不動産会社に確認してもらいましょう。

3.構造:木造物件 

一般的な建物の構造を強度順に並べると、「鉄筋鉄骨コンクリート造 > 鉄筋コンクリート > 鉄骨造 >軽量鉄骨造 > 木造」です。強度の高いものほど価格が高く、強度の弱いものほど価格が安くなります。これは素材の価格もですが、高層マンションは建築費が高額な一方、木造は3階程度までしか建てられないため建築費が抑えられることが関係します。これまでに解説してきたようにトータル的に物件の取得費が安い木造物件を選べば、利回りは必然的に高くなるのです。

ただし、木造は音が漏れやすく断熱性能が低いことから、好んで木造を選ぶ人は少なく、入居者のニーズ自体はさほど高くはありません。

不動産投資で利回りが低くなりやすい物件とは 

反対に低利回りになりやすい物件は、「取得費が高い」ものです。ただし、不動産投資では毎月のキャッシュフローだけではなく、キャピタルゲインに影響する物件そのものの資産価値も重要なため、単に低利回りだからと言って投資物件にふさわしくないとは限りません。

1.エリア:都心物件

不動産投資では都心に近いほど物件の取得費は高くなるため、利回りは低くなります。それを裏付けるように、東京都内の利回りは他の都道府県よりも低い傾向にあります。
しかし、近年東京都の不動産価格は他に類を見ない上昇率を見せており、資産価値として非常に優れていると言えるでしょう。毎月のキャッシュフローが数千円程度の赤字であっても、売却益を考慮すると、プラスに転じている可能性があります。

2.築年数:新築物件 

新築物件は、「新築プレミアム」で1割ほど価格が上乗せされている分、中古物件よりも取得費が高くなります。しかし、その分の付加価値で高めの家賃設定が可能で、修繕リスクがしばらくないのはプラス要素でもあります。
新築から築10年程度までは資産価値の下落率が激しく、高めの家賃設定をした場合には著しい家賃下落が起きる可能性があることを理解しておきましょう。

3.構造:鉄筋コンクリート 

鉄筋コンクリートは建築費が高く、木造・その他の物件よりも物件価格は高くなりがちで、低利回りの要因となっています。
ただし、木造物件と比較して人気があり、将来的にも需要の高さを見込める「物件力」を持ち合わせています。また、建築価格と収益性のバランスから一定の敷地面積を要する木造アパートは駅近に物件が建てづらいことが特徴です。鉄筋コンクリート造のマンションは駅近に建てられることが大きな利点とも言え、エリアや築年数とのバランスを見ながら、上手に収益性のある鉄筋コンクリート造の物件を所有したいものです。

エリア別に見る中古物件の利回り動向 

では、これらの利回りの条件を理解したうえで、実際に中古物件の利回り水準を見ていきましょう。
今回は、不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」が公開する「収益物件 市場動向 マンスリーレポート 2023年11月期(以下、本データ。)」の最新情報を基にエリア別に紹介します。
※本章でご紹介するデータは、健美家に登録された収益(投資用)不動産において投資利回り(表面利回り)、物件価格の平均値を月次に集計しています。

区分マンション

本データによると、区分マンションの平均表面利回りは6.97%(前月比+0.22ポイント)で、価格は1,766万円(同-3.50%)となっています。
資料内で最も古い6年前の2017年11月期のデータでは、価格1,551万円と215万円低く、表面利回りも7.70%という結果から、地価高騰による利回りの低迷が伺えます。

【エリア別の利回り】

  全国 北海道 東北 首都圏 信州
北陸
東海 関西 中国
四国
九州
沖縄
利回り
%
6.97 12.88 12.34 6.36 14.20 8.91 7.23 13.52 9.38
価格
(万円)
1,766 1,009 1,894 2,198 1,356 1,240 1,243 653 1,137
築年
(年)
30.6 36.9 34.3 31.4 34.6 28.6 28.9 37.4 28.7

一棟アパート 

次に一棟アパートの平均表面利回りは8.04%(同-0.04ポイント)で、価格は7,843万円(同+0.60%)となっています。こちらも区分マンションと同様に価格高騰による利回りの低下が見られます。

【エリア別の利回り】

  全国 北海道 東北 首都圏 信州
北陸
東海 関西 中国
四国
九州
沖縄
利回り
%
8.04 11.70 12.63 7.50 12.35 8.82 8.68 11.17 9.28
価格
(万円)
7,843 4,358 4,434 8,480 4,804 6,346 6,406 5,958 6,378
築年
(年)
22.5 30.1 26.5 22.1 26.3 17.9 24.1 26.8 22.5

一棟マンション 

一棟マンションの平均表面利回りは7.70%(同-0.06ポイント)で、価格は17,122万円(-1.11%)です。一棟マンションも2017年頃よりも利回りは下がっていますが、区分マンションおよび一棟マンションよりも下落率は穏やかな推移をたどっています。

【エリア別の利回り】

  全国 北海道 東北 首都圏 信州
北陸
東海 関西 中国
四国
九州
沖縄
利回り
%
7.70 8.82 10.29 6.87 11.91 9.08 8.48 11.97 8.61
価格
(万円)
17,122 14,315 13,412 19,062 10,981 15,003 12,487 9,491 20,877
築年
(年)
29.3 24.7 29.0 28.6 30.7 30.2 32.4 32.3 28.9

比較すると、首都圏よりも東北や信州・北陸、中国・四国など地方の収益物件は、高利回りになっていることが明らかです。しかし、これほど高利回りのエリアが混在する一方で、全国の平均値は首都圏よりの値であることから、日本の収益物件は人口の確保がしやすい都心に密集していると考えられます。

なお、ここで記載されているデータは、購入時のボーダーラインとして考えるのではなく、あくまで参考とする1つの目安として考えてください。

不動産投資で利回りを上げる具体的な7つの術 

不動産投資を成功させるためには、戦略的に利回りを最大化させる必要があります。行き当たりばったりではなく、事前の資金計画やリスク対策をして適切な物件を選定することから始まります。
ここでは、利回りを上げるために「自分でできる」具体的な7つの方法を紹介します。

運用前にやるべきこと 

まずは、「物件を購入する前の時点」で必ずやっておくべきポイントを4つ紹介します。
これから不動産投資をスタートする方は、2.3.4は特に積極的に取り入れるべき方法でしょう。

1.ローンの返済期間を長くする 

ローンを早期に完済し、家賃収入の全額を不労所得にしたいという方もいますが、ローンの返済期間を短くすることで毎月の返済額が高くなり、利回りは低くなってしまいます。不動産投資用の余剰資金が手元に多くあるなどの場合を除き、ローンの返済期間は長めに設定しておいた方が毎月の余裕が生まれるでしょう。また、ローンが長いほど団体信用生命保険の効果も長くなるメリットもあります。
しかし、ローンの返済期間を長くすることで総返済額は高くなるため、バランスや自己の投資計画を考慮し、最適な選択をしましょう。

2.自己資金を多く入れる 

自己資金の投入額も利回りを下げるうえで重要な要素であり、不動産投資を成功へ導く鍵でもあります。「頭金ゼロ」や「フルローン可」の不動産投資会社もあり、気軽に取り組みやすい一方、月の利回りを上げたいのであれば、多めの自己資金を購入時に入れておくと良いでしょう。
準備する自己資金は一般的に物件価格の1.5割~3割と言われているため、2割程度は投入したいところです。これにより金融機関からの借入額を減らし、毎月の返済額を減らす、つまり利回りを上げることへとつながります。

3.金融機関の比較や金利の交渉をする 

事前審査でローンの承認を得られると、おろそかにしがちなのが「金融機関の比較」です。
金融機関の本審査に入る前に、事前審査を行うケースがあります。事前審査だけでも書類の記入や提出などの手間や労力がかかり、本業のある会社員にとっては後回しにしたくなる面倒な作業工程でしょう。

なんとなく良さそうな1社の金融機関で審査が通ると、安堵の気持ちから安易に契約してしまいがちですが、戦略としては問題があります。
利回りを確実に上げるには、面倒な作業でも金融機関のサービス内容の比較や、金利の交渉を徹底的に行わなくてはいけません。購入後に金利負担の大きさを理由に金融機関を変更しようとすると、借り換え手数料など余計な費用が発生してしまいます。金融機関の選定は、事前の準備・対策が非常に重要です。

具体的な金利交渉の方法としては、他の金融機関を引き合いに出すことです。
最も低金利で承認を得られた他行の審査結果を伝えると、それよりも低い金利への交渉に成功し、利回りを上げられる可能性があります。

また、不動産会社の提携の金融機関を紹介してもらうパターンもあります。ベルテックスは提携の金融機関数が豊富で「もう一件買い増ししたかったが、他社では購入できなかったけれどベルテックスでは買えた」というケースもございます。詳しく知りたい方はぜひセミナーや個別相談で資産形成コンサルタントにご相談ください。

4.管理会社の比較をする 

金融機関の比較と並行して、管理会社の比較も重要です。不動産投資を専門とする会社から物件購入する場合、多くは購入後の管理まで一任する流れが構築されており、管理会社の変更は難しいかもしれません。
しかし、不動産仲介会社から物件購入する場合は、管理会社を自分で自由に選定できるケースがあります。金融機関の審査と同じく煩わしい手間や労力はかかりますが、毎月の管理委託料や契約内容など会社ごとのサービスを徹底的に比較することで、利回りを上げられるでしょう。
空室リスクを不安視する人の中には一定の割合で「サブリース」を検討する方がいますが、サブリース契約をすると満室稼動時の8~9割程度の家賃収入が保証されることはメリットですが、利回りは低くなります。サブリース契約を行う際は、メリット・デメリットや利回りを考えたうえで慎重に選びましょう。

運用中に見直すべきこと 

次は、「物件を購入した後」に見直すことで利回りを上げるポイントを3つ紹介します。実際に手元の資金が動く方法のため、自分に適した方法であるか否かの判断が重要です。

1.家賃収入を上げる 

運用中に利回りを上げる方法として手っ取り早く実行に移せるのは、物件力を上げて家賃収入を増やすことです。

【家賃収入を上げる具体例】
・水回りの設備交換やグレードアップをする
・内装をリノベーションする
・家具付きマンションにする
・ペット飼育可マンションにする など

設備交換・リノベーションには大きなコストは発生しますが、多くのオーナーが家賃収入アップに成功しています。
また、ペット飼育可マンションは希少性があり需要が高く、子供をもたない「DINKs世帯」や結婚に前向きでない「Z世代」のことを考慮すると、今後も伸びそうです。ただし、管理規約や細則でマンション全体がペット飼育を不可としているケースも多くあるため、あらかじめ確認してから取りかかりましょう。

2.ローンの借り換えをする 

不動産投資に慣れているオーナーの方は、「ローンの借り換え」によって利回りアップを図っています。初心者からすると少々レベルが高い方法に思えるかもしれませんが、手順は購入時に行ったローン契約と同じです。すでに借入および返済履歴や、物件の運用実績が明確になっているため、購入時のローン審査よりもハードルは低くなっているでしょう。最近では、窓口のないネット銀行の利用により低金利のアパートローンを実現することも可能です。
ただし、ローン借り換えでは手数料などのバランスを考慮して総合的な判断が求められます。たとえ借り換え後のキャッシュフローが改善しても、手数料で多額の支出がある場合には採算が合わなくなるため注意しましょう。
ローン借り換えを検討する前に、既存の金融機関へ金利交渉を行うのも1つの手です。

3.ローンの繰り上げ返済を考える 

資金に余裕がある方は、ローンの繰り上げ返済による利回りアップを試みましょう。
繰り上げ返済することで借入残高が減少し、発生する金利負担も抑えられます。繰り上げ返済には毎月のローン返済額を変えずに残りの期間を短くする「期間短縮型」、残りの返済期間を変えずに毎月のローン返済額を少なくする「返済額軽減型」の2種類があります。自分にとってどちらがより有利に働くかを比較検討し、最適な選択をすることが重要です。
不動産投資では何かあった時に備え、手元にすぐに支払える余剰資金(現金)を残しておかなくてはなりません。ローンの繰り上げ返済はあくまで「手元の資金に余裕がある」ケースに限り、慢性的な赤字や切羽が詰まった経営状態では行わないようにしましょう。

不動産投資で「利回りの最低ライン」以外に考えるポイント 

不動産投資で「利回りの最低ライン」では、先述の「表面利回り」「実質利回り」の他にも考えるべきポイントがあります。特に注視しておきたい2つの点を紹介します。

イールドギャップを確認する 

1つ目は、「イールドギャップ」の値を確認することです。
イールドギャップとは「投資利回りから金利を差し引いたもの」で、不動産投資を行うにあたり利回り同様に重要な指標となります。
イールドギャップの最低ラインは「3%程度」と言われており、金融機関から承認を得られた金利条件との照らし合わせが必要です。

【イールドギャップの計算式】
イールドギャップ(%)=実質利回り(%)-借入金利(%)

実質利回りが5.0%、借入金利が2.0%と仮定すると、イールドギャップはちょうど最低ラインの目安とする3.0%になります。金融機関からの金利条件が良いのか悪いのか分からない、また良い金利条件が出たがこのまま不動産投資をスタートするのが不安などという方はイールドギャップも参考の1つとしましょう。
イールドギャップについては下記のコラムでも触れておりますので、ぜひご一読ください。

CF利回りを確認する

イードルギャップを考えるとより適正な利回りのラインが分かるように思えるかもしれませんが、これだけでは判断できません。そこで考えたいのがCF(キャッシュフロー)利回りです。
CF利回りとは、毎月の家賃収入からローン返済を引いた手残り額で考える利回りのことです。

【CF利回りの計算式】
CF利回り(%)=(毎月収入-毎月返済)×12÷購入費用×100
※購入費用は物件価格の他に諸経費も含みます

CF利回りは「手元に残った資金」の収益性を示すもので、0を下回らなければ黒字と言えます。最低ラインを考えると、この「CF利回り」という造語を生み出した株式会社アートアベニューの代表取締役である藤澤氏は、「新築時は2%以上が目安」と回答しています。
ローン返済分や経費、金利などを除く「純粋な手残り」という観点から、利回りとして値は最も低くなりますが、整合性やリアルさがありぜひとも参考にしたい基準値です。

まとめ 

本記事では、不動産投資における利回りの最低ラインをテーマに、利回りの種類や計算法、また利回りを上げるポイントについて紹介しました。
不動産投資をするうえで利回りは重要な1つの指標ですが、表面利回りや他の利回りよりも「実質利回り」を基準に判断することが重要です。また、実際の手残り額をベースに考えるCF利回りを基に判断することも効果的と言えるでしょう。
不動産投資の利回り最低ラインは投資をする目的や指針、また運用する物件で大きな差が生じますので、自分にとって最適な利回りとなる物件の選定を行うようにしてください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。