2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンとは・審査基準や住宅ローンとの違いを解説

  • 融資・ローン
  • 審査

不動産投資とローンは、セットで紹介されることがよくあります。不動産は高額な商品なので、多くの不動産投資家が購入時にローンを利用するからです。 この記事では、不動産投資に興味をお持ちの方に向けて、不動産投資ローンの概要、審査基準、住宅ローンとの違い、借り入れの流れなどについて解説します。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、その名の通り不動産投資を行うためのローンです。アパートローンと呼ばれることもあり、金融機関によっては「アパート・マンションローン」や「賃貸住宅ローン」といった商品名で取り扱っていることもあります。不動産投資ローンの資金用途は、不動産投資に限定されています。主な利用場面としては、賃貸用のマンションや一棟アパートの購入・新築などが挙げられます。
不動産投資ローンは、中古と新築どちらの物件でも利用可能で、大別するとパッケージローンとプロパーローンの2種類があります。

【パッケージローン】
・住宅ローンのように借入条件が事前に決められていて、その条件に沿って審査を行うもの
・不動産投資はパッケージローンにあたる


【プロパーローン】
・いわゆる事業性ローン
・パッケージ化された条件ではなく、個別に信用調査を行ったり返済計画を確認したりして融資を決定する
・いわばプロ投資家のためのオーダーメイド型ローンで、金利が比較的低いのが特徴

はじめての不動産投資や2~3戸目など事業規模が小さいうちは、プロパーローンではなく不動産投資ローンを利用するのが一般的です。不動産投資ローンは「大家さんになるためのローン」と考えて差し支えないでしょう。

不動産投資ローンの審査のポイント

金融機関は、不動産投資ローンの返済原資を「借入申込者の収入」と「物件の家賃収入」の2本立てとして審査するのが一般的です。そのため審査項目は、大別すると本人の給与収入や過去の借り入れなどに関する「本人の属性に関する部分」「物件の評価(価値)に関する部分」の2種類に分けられます。

本人の属性

住宅ローンと同様にまず審査で重視されるのは、本人の属性です。安定して高い収入がある人ほど、不動産投資ローンの審査に通りやすくなります。

・年収
給与収入は、大切な項目です。一般的に審査を申し込む際には、2~3年分の給与明細の写しを提出することが求められるでしょう。

・預貯金
預貯金も重要となります。空室が発生したり急な修繕などの出費が必要になったりしたときでも、まとまった預貯金があれば安定したマンション経営が行えるからです。年収が高いのに預貯金が少ないと「浪費癖があるか計画性がない人」とみなされ、金融機関の担当者に悪印象を与える可能性があります。 預貯金額が数万円や数十万円という状況では、不動産投資ローンの審査に通るのは難しいかもしれません。

・勤務先
勤務先の規模は、安定した給与収入が得られるかを金融機関が判断するために調べられます。一般的に経営状態が安定している優良企業や、ネームバリューのある会社に勤めていると融資を受けやすいです。公務員や上場会社勤務などの肩書きは、不動産投資ローンを利用するにあたって有利に働くでしょう。 一方で個人事業主や中小零細企業の経営者の場合は、どちらかというと融資を受けにくい属性です。ただし医師や税理士などの難関国家資格を取得して開業している士業者は除きます。

・勤続年数
不動産投資ローンの審査では、勤続年数も確認されます。基本的には、勤続年数が長いほど有利で、最低でも2~3年以上勤めていることが条件とされていることが多いです。

・信用情報
不動産投資ローンに限らず、金融機関に借り入れを申し込んだ際の審査では、信用情報の照会が行われます。信用情報とは、過去の借り入れや返済、クレジットカードの支払い遅延、契約状況など、お金の貸し借りに関する履歴のことです。
銀行やノンバンク、信販会社などの金融機関は、融資や、クレジットカードの支払い遅延などの情報を信用情報機関に登録します。 信用情報機関に支払い遅延や未返済などの履歴があると、借り入れは難しくなるでしょう。また、現在どれくらい借り入れをしているのかも調べられます。一般ローンや住宅ローンなど他の借入額が大きいほど、新たに不動産投資ローンで借りられる金額は少なくなるでしょう。

物件

不動産投資ローンを利用して購入する不動産は、金融機関にとって返済不能に陥った場合の担保でもあり、そこから生じる家賃収入は返済原資となります。そのため、融資可能な金額の算定において、不動産の評価額は非常に重要です。不動産の評価方法には、さまざまなものがありますが、金融機関が重視している評価方法の一つが積算評価と呼ばれるものです。また近年では、不動産投資において広く用いられている収益還元法が用いられるケースも多い傾向にあります。 基本的に、不動産の評価額が高いほど融資を受けられる可能性は高くなります。

・積算評価
主に担保物件としての価値を評価するために用いられる方法です。土地と建物をそれぞれ「単価×面積」で計算し、最終的に合算して評価します。「同じような物件を購入するとしたらいくらかかるか?」という発想にもとづいた評価方法です。計算式にどのような数値が用いられるかは、金融機関によって異なります。
ここでは、一般的な計算方法を紹介します。 土地の評価は「相続税路線価×敷地面積」で算出します。これを土地の形状などに応じて補正します。相続税路線価とは、相続税の計算を行うために国税庁が定めた1平方メートルあたりの単価です。おおむね実勢価格の8割ほど になります。

建物の評価は「再調達単価 ×総床面積×(残存年数÷耐用年数)」で算出します。再調達単価とは「同じ構造の建物を建てたとしたら1平方メートルあたりいくらかかるか」という金額で各金融機関のデータや国税庁の資料を使います。RC造なら○○円、木造なら○○円などと一覧化されています。 なお「残存年数÷耐用年数」というのは、築年数に応じて減価償却(経年劣化により建物の価値が減少した)部分を差し引くという意味です。

・収益還元法
主に中古マンションを売買する際の販売価格や購入価格を決める際に用いられます。投資家目線で、「この不動産は、将来にわたってどれほどの収益を生み出すのか」という発想で行う評価方法です。収益還元法は、さらに直接還元法とDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)に分けられます。

【直接還元法】 
1年間の家賃収入から経費を差し引いた純収益を還元利回りで割り戻して求める方法です。還元利回りとは簡単に言うと「期待できる不動産の利回り」のことであり、地域や物件の特性などによって異なります。


【DCF法】
 将来の各期間における収益と売却時に得られる収入を、それぞれ現在価値に換算して合計することで評価額を求めます。空き室リスクや家賃の下落率を考慮して計算するため、精度の高い評価が可能です。

変動金利と固定金利

不動産投資ローンや住宅ローンの金利は大別すると「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。 変動金利は、一般的に半年に1回金利が見直され、それに応じて返済額も変わる金利タイプです。 固定金利は、文字通り金利が変わりません。なかには、全期間固定のタイプもあれば借入当初の3年間や10年間は固定され、その後は変動金利に切り替わるタイプなどさまざまです。一般的に固定期間が長ければ長いほど、利率は高 くなります。

元金均等返済と元利均等返済

返済方法には「元金均等返済方式」と「利均等返済方式」の2つがあります。これも住宅ローンと考え方は変わりません。基本的に商品によってどちらの返済方式を採用するかが決まっていますが、借入申込者が選べる場合もあります。

・元金均等返済方式
毎月一定額の元金と残高に対してかかる金利を合わせて返済する方式です。返済が進むにつれて、毎月支払う利息も少しずつ減っていきます。つまり初回の返済額が最も多く、だんだん減っていくわけです。元金が減るスピードが速いため、総返済額は元金均等返済方式の方が少なくなります。

・元利均等返済方式
元金と利息合わせた返済額が毎回同額に設定されている返済方式です。返済当初は、毎月の返済額に占める元金の割合が少なく、支払利息の割合が大きくなります。総返済額は、元金均等返済方式よりも高くなるのが特徴です。 経年劣化とともに募集家賃が下がっていくことを考えると、返済額が減っていく元金均等返済方式の方が不動産投資の実態に合っているといえるでしょう。
ただし、当初の返済負担は元利均等返済方式に比べて重くなるので注意が必要です。また、毎月同額を返済し続ける元利均等返済方式には、資金繰りの計画が立てやすいというメリットがあります。

自己資本比率

不動産投資ローンの借入額を考えるにあたっては、自己資本比率を考慮することが大切です。健全なマンション経営を続けるためにも重要な概念です。自己資本比率とは、企業が保有する総資本(=総資産)のうちに占める自己資本の割合を表した指標のことです。
自己資本とは、総資本から未払金や借入金などの負債を除いた返済する必要のない資金のことです。 自己資本比率が高いほど経営が安定しているといえます。
逆に自己資本比率がマイナス、つまり総資産よりも借入金の方が多い場合は、債務超過と呼ばれ、苦しい経営状態です。不動産投資においては、次のように置き換えて考えることができます。

・総資本=物件の評価額

・負債=ローン残高

・自己資本=用意した自己資金+「いくら儲かったか」

高額のローンを組んで割高な物件を購入してしまうと債務超過に陥り、返済に行き詰まってしまう可能性もあります。購入時の自己資本比率を高められれば、債務超過に陥る可能性も低くなり、金利負担も低減することができるでしょう。自己資金には諸費用なども含まれますが、物件価格における頭金の割合と考えるとシンプルで分かりやすいです。
頭金の割合は、金融機関によって借入条件に20~30%など最低ラインが定められていることがありますが、頭金不要の不動産投資ローン商品も少なくありません。いずれにしても自己資本比率が高いほどローンは借りやすくなります。自己資金を多めに用意しておくことが不動産投資ローンを借りるためのコツといえるのです。

返済比率

自己資金を多めに用意するのは、返済比率を下げるためでもあります。返済比率とは、家賃収入のうち返済額が占める割合のことです。
返済比率が低ければキャッシュフロー(現金収支)に余裕が生まれ、急に資金が必要になったときにも対応しやすいでしょう。経営が安定しやすくなるため、不動産投資ローンも借りやすくなるというわけです。
借入時の返済比率は、満室を想定した家賃で計算します。おおむね30 ~40%を目指したいところですが、自己資金や物件価格、想定利回りによっては難しいでしょう。
返済比率が80%を超えてしまうと空室の発生状況によってはすぐに赤字になってしまうため、危険な水準といえます。 返済比率は、不動産購入後のマンション経営を計画的に行ううえでも重要です。ローン借入額とあわせて物件を選定する段階から考えるようにしましょう。

不動産投資ローンの融資額は?

不動産投資は、大きな買い物です。規模の大きなファミリーマンションや都心のRCマンションなどは、物件価格が十数億円にのぼることもあります。そのため、これから不動産投資を始めたいと考えている人にとって「いくらまで借りることができるのか」は、気になるところではないでしょうか。

パッケージ商品の不動産投資ローンにおける借入可能額の上限は、商品内容として一律に決められている上限と、審査で個別に査定される上限の2段階で考えます。商品内容としての上限は、金融機関の商品紹介ページなどに記載されていることが多いです。一般的には1億~5億 円程度が上限とされていますが、不動産投資に積極的な銀行では10 億円というケースもあります。

個別査定の部分は、本人の属性や物件評価によって決められます。2020年2月にオンライン不動産投資ローンサービス「モゲチェック不動産投資」を提供する株式会社MFSが行った調査によると、年収に対する借入額の倍率は、平均11.8倍でした。住宅ローンの5~7 倍と大きな差がある理由は、給与収入だけではなく家賃収入も返済原資としているからです。 物件評価における積算評価は、特に重要でこれに一定の割合を差し引いた金額が上限とされることが少なくありません。例えば「8掛け」としている金融機関であれば積算評価の8割が上限額となります。

年収基準

金融機関によっては、商品内容として年収の最低ラインを設定しています。700万円以上としていることが多いですが、500万円以上という金融機関もあります。

不動産投資ローンの融資までの流れ

不動産投資ローンの申し込みから借り入れまでの一般的な流れは、以下の6ステップ です。

  1. 仮申込
    金融機関のホームページや店頭などから申し込み、簡単な個人情報や物件概要などを伝えます。
  2. 仮審査
    仮申込時に伝えた情報をもとに簡単な審査が行われます。
  3. 本申込
    仮審査に通過した場合、本人属性や物件に関する詳細な情報を記入した申込書を提出し、金融機関の担当者と面談を行います。
  4. 物件調査・本審査
    金融機関の審査担当者が実際に物件周辺に出向くなどして対象物件の評価を行い、融資審査の決定をします。
  5. 契約締結
    借り入れの契約書となる金銭消費貸借契約を締結します。
  6. 融資実行
    融資が実行され、融資額が振り込まれます。不動産の引き渡しと融資実行日は同日に行われるのが一般的です。

不動産投資ローン住宅ローンとの違い

金融機関によっては、商品内容として年収の最低ラインを設定しています。700万円以上としていることが多いですが、500万円以上という金融機関もあります。

不動産投資ローンと住宅ローンの主な共通点は、利用目的が不動産の購入で、パッケージローンであることが挙げられます。両者の違いは、購入する不動産が「自己居住用」か「賃貸用」かという点です。不動産投資ローンは、賃貸用の不動産を対象としているため、返済原資に借入申込者の本業における収入だけでなく賃貸収入を見込んでいます。

この違いは、借入可能額や金利にも現れています。借入可能額については前述しましたが、金利は一般的に住宅ローンよりも高くなります。不動産投資は事業であり、事業にはリスクが伴うからです。

ローンの契約書には利用目的が記載されており、違反すると最悪の場合、契約が解除されて一括返済を迫られる可能性があります。そのため、不動産投資をするために住宅ローンを利用することは厳禁です。ただし、住宅購入後の転勤などやむを得ない事情がある場合は認められることがあります。

もう一つ金利の低い住宅ローンで不動産投資を行えるケースがあることをご存じでしょうか。それは、賃貸併用住宅です。例えば2階建てのアパートで1階の部屋を自宅として住み、2階の部屋を賃貸するという状況が当てはまります。

ただし、全体の床面積に対する自己居住用部分の割合が一定以上になるように規定されており、50%以上とされるのが一般的です。つまり賃貸部分が全体の半分を超えてはいけません。なぜなら住宅ローンの主な用途は、あくまでも自己居住用だからです。マンションやアパートを購入して不動産投資を行うためには、基本的に不動産投資ローンを利用することになります。

まとめ

高額商品となる投資用不動産は、購入時にローンを利用するのが一般的といえます。投資経験の少ない人でも本人の属性にもとづいて借りられる可能性があるパッケージ商品が不動産投資ローンです。お金が足りないから借りるわけですが、借り入れだけに依存しすぎるとマンション経営が安定しにくくなるため、注意しましょう。

また頭金を全く用意できない場合は、ローンを利用すること自体が難しいかもしれません。まずは、自己資金をしっかりと準備したうえで、預貯金がある人はどれだけ不動産投資に充当できるかを明確にしておきましょう。

不動産投資をご検討中の方は、ぜひ一度ベルテックスにお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2023.10.11

不動産投資の基本

ベルテックスコラム事務局

不動産投資ローンとは・審査基準や住宅ローンとの違いを解説

  • 融資・ローン
  • 審査

不動産投資とローンは、セットで紹介されることがよくあります。不動産は高額な商品なので、多くの不動産投資家が購入時にローンを利用するからです。 この記事では、不動産投資に興味をお持ちの方に向けて、不動産投資ローンの概要、審査基準、住宅ローンとの違い、借り入れの流れなどについて解説します。

不動産投資ローンとは

不動産投資ローンとは、その名の通り不動産投資を行うためのローンです。アパートローンと呼ばれることもあり、金融機関によっては「アパート・マンションローン」や「賃貸住宅ローン」といった商品名で取り扱っていることもあります。不動産投資ローンの資金用途は、不動産投資に限定されています。主な利用場面としては、賃貸用のマンションや一棟アパートの購入・新築などが挙げられます。
不動産投資ローンは、中古と新築どちらの物件でも利用可能で、大別するとパッケージローンとプロパーローンの2種類があります。

【パッケージローン】
・住宅ローンのように借入条件が事前に決められていて、その条件に沿って審査を行うもの
・不動産投資はパッケージローンにあたる


【プロパーローン】
・いわゆる事業性ローン
・パッケージ化された条件ではなく、個別に信用調査を行ったり返済計画を確認したりして融資を決定する
・いわばプロ投資家のためのオーダーメイド型ローンで、金利が比較的低いのが特徴

はじめての不動産投資や2~3戸目など事業規模が小さいうちは、プロパーローンではなく不動産投資ローンを利用するのが一般的です。不動産投資ローンは「大家さんになるためのローン」と考えて差し支えないでしょう。

不動産投資ローンの審査のポイント

金融機関は、不動産投資ローンの返済原資を「借入申込者の収入」と「物件の家賃収入」の2本立てとして審査するのが一般的です。そのため審査項目は、大別すると本人の給与収入や過去の借り入れなどに関する「本人の属性に関する部分」「物件の評価(価値)に関する部分」の2種類に分けられます。

本人の属性

住宅ローンと同様にまず審査で重視されるのは、本人の属性です。安定して高い収入がある人ほど、不動産投資ローンの審査に通りやすくなります。

・年収
給与収入は、大切な項目です。一般的に審査を申し込む際には、2~3年分の給与明細の写しを提出することが求められるでしょう。

・預貯金
預貯金も重要となります。空室が発生したり急な修繕などの出費が必要になったりしたときでも、まとまった預貯金があれば安定したマンション経営が行えるからです。年収が高いのに預貯金が少ないと「浪費癖があるか計画性がない人」とみなされ、金融機関の担当者に悪印象を与える可能性があります。 預貯金額が数万円や数十万円という状況では、不動産投資ローンの審査に通るのは難しいかもしれません。

・勤務先
勤務先の規模は、安定した給与収入が得られるかを金融機関が判断するために調べられます。一般的に経営状態が安定している優良企業や、ネームバリューのある会社に勤めていると融資を受けやすいです。公務員や上場会社勤務などの肩書きは、不動産投資ローンを利用するにあたって有利に働くでしょう。 一方で個人事業主や中小零細企業の経営者の場合は、どちらかというと融資を受けにくい属性です。ただし医師や税理士などの難関国家資格を取得して開業している士業者は除きます。

・勤続年数
不動産投資ローンの審査では、勤続年数も確認されます。基本的には、勤続年数が長いほど有利で、最低でも2~3年以上勤めていることが条件とされていることが多いです。

・信用情報
不動産投資ローンに限らず、金融機関に借り入れを申し込んだ際の審査では、信用情報の照会が行われます。信用情報とは、過去の借り入れや返済、クレジットカードの支払い遅延、契約状況など、お金の貸し借りに関する履歴のことです。
銀行やノンバンク、信販会社などの金融機関は、融資や、クレジットカードの支払い遅延などの情報を信用情報機関に登録します。 信用情報機関に支払い遅延や未返済などの履歴があると、借り入れは難しくなるでしょう。また、現在どれくらい借り入れをしているのかも調べられます。一般ローンや住宅ローンなど他の借入額が大きいほど、新たに不動産投資ローンで借りられる金額は少なくなるでしょう。

物件

不動産投資ローンを利用して購入する不動産は、金融機関にとって返済不能に陥った場合の担保でもあり、そこから生じる家賃収入は返済原資となります。そのため、融資可能な金額の算定において、不動産の評価額は非常に重要です。不動産の評価方法には、さまざまなものがありますが、金融機関が重視している評価方法の一つが積算評価と呼ばれるものです。また近年では、不動産投資において広く用いられている収益還元法が用いられるケースも多い傾向にあります。 基本的に、不動産の評価額が高いほど融資を受けられる可能性は高くなります。

・積算評価
主に担保物件としての価値を評価するために用いられる方法です。土地と建物をそれぞれ「単価×面積」で計算し、最終的に合算して評価します。「同じような物件を購入するとしたらいくらかかるか?」という発想にもとづいた評価方法です。計算式にどのような数値が用いられるかは、金融機関によって異なります。
ここでは、一般的な計算方法を紹介します。 土地の評価は「相続税路線価×敷地面積」で算出します。これを土地の形状などに応じて補正します。相続税路線価とは、相続税の計算を行うために国税庁が定めた1平方メートルあたりの単価です。おおむね実勢価格の8割ほど になります。

建物の評価は「再調達単価 ×総床面積×(残存年数÷耐用年数)」で算出します。再調達単価とは「同じ構造の建物を建てたとしたら1平方メートルあたりいくらかかるか」という金額で各金融機関のデータや国税庁の資料を使います。RC造なら○○円、木造なら○○円などと一覧化されています。 なお「残存年数÷耐用年数」というのは、築年数に応じて減価償却(経年劣化により建物の価値が減少した)部分を差し引くという意味です。

・収益還元法
主に中古マンションを売買する際の販売価格や購入価格を決める際に用いられます。投資家目線で、「この不動産は、将来にわたってどれほどの収益を生み出すのか」という発想で行う評価方法です。収益還元法は、さらに直接還元法とDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)に分けられます。

【直接還元法】 
1年間の家賃収入から経費を差し引いた純収益を還元利回りで割り戻して求める方法です。還元利回りとは簡単に言うと「期待できる不動産の利回り」のことであり、地域や物件の特性などによって異なります。


【DCF法】
 将来の各期間における収益と売却時に得られる収入を、それぞれ現在価値に換算して合計することで評価額を求めます。空き室リスクや家賃の下落率を考慮して計算するため、精度の高い評価が可能です。

変動金利と固定金利

不動産投資ローンや住宅ローンの金利は大別すると「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。 変動金利は、一般的に半年に1回金利が見直され、それに応じて返済額も変わる金利タイプです。 固定金利は、文字通り金利が変わりません。なかには、全期間固定のタイプもあれば借入当初の3年間や10年間は固定され、その後は変動金利に切り替わるタイプなどさまざまです。一般的に固定期間が長ければ長いほど、利率は高 くなります。

元金均等返済と元利均等返済

返済方法には「元金均等返済方式」と「利均等返済方式」の2つがあります。これも住宅ローンと考え方は変わりません。基本的に商品によってどちらの返済方式を採用するかが決まっていますが、借入申込者が選べる場合もあります。

・元金均等返済方式
毎月一定額の元金と残高に対してかかる金利を合わせて返済する方式です。返済が進むにつれて、毎月支払う利息も少しずつ減っていきます。つまり初回の返済額が最も多く、だんだん減っていくわけです。元金が減るスピードが速いため、総返済額は元金均等返済方式の方が少なくなります。

・元利均等返済方式
元金と利息合わせた返済額が毎回同額に設定されている返済方式です。返済当初は、毎月の返済額に占める元金の割合が少なく、支払利息の割合が大きくなります。総返済額は、元金均等返済方式よりも高くなるのが特徴です。 経年劣化とともに募集家賃が下がっていくことを考えると、返済額が減っていく元金均等返済方式の方が不動産投資の実態に合っているといえるでしょう。
ただし、当初の返済負担は元利均等返済方式に比べて重くなるので注意が必要です。また、毎月同額を返済し続ける元利均等返済方式には、資金繰りの計画が立てやすいというメリットがあります。

自己資本比率

不動産投資ローンの借入額を考えるにあたっては、自己資本比率を考慮することが大切です。健全なマンション経営を続けるためにも重要な概念です。自己資本比率とは、企業が保有する総資本(=総資産)のうちに占める自己資本の割合を表した指標のことです。
自己資本とは、総資本から未払金や借入金などの負債を除いた返済する必要のない資金のことです。 自己資本比率が高いほど経営が安定しているといえます。
逆に自己資本比率がマイナス、つまり総資産よりも借入金の方が多い場合は、債務超過と呼ばれ、苦しい経営状態です。不動産投資においては、次のように置き換えて考えることができます。

・総資本=物件の評価額

・負債=ローン残高

・自己資本=用意した自己資金+「いくら儲かったか」

高額のローンを組んで割高な物件を購入してしまうと債務超過に陥り、返済に行き詰まってしまう可能性もあります。購入時の自己資本比率を高められれば、債務超過に陥る可能性も低くなり、金利負担も低減することができるでしょう。自己資金には諸費用なども含まれますが、物件価格における頭金の割合と考えるとシンプルで分かりやすいです。
頭金の割合は、金融機関によって借入条件に20~30%など最低ラインが定められていることがありますが、頭金不要の不動産投資ローン商品も少なくありません。いずれにしても自己資本比率が高いほどローンは借りやすくなります。自己資金を多めに用意しておくことが不動産投資ローンを借りるためのコツといえるのです。

返済比率

自己資金を多めに用意するのは、返済比率を下げるためでもあります。返済比率とは、家賃収入のうち返済額が占める割合のことです。
返済比率が低ければキャッシュフロー(現金収支)に余裕が生まれ、急に資金が必要になったときにも対応しやすいでしょう。経営が安定しやすくなるため、不動産投資ローンも借りやすくなるというわけです。
借入時の返済比率は、満室を想定した家賃で計算します。おおむね30 ~40%を目指したいところですが、自己資金や物件価格、想定利回りによっては難しいでしょう。
返済比率が80%を超えてしまうと空室の発生状況によってはすぐに赤字になってしまうため、危険な水準といえます。 返済比率は、不動産購入後のマンション経営を計画的に行ううえでも重要です。ローン借入額とあわせて物件を選定する段階から考えるようにしましょう。

不動産投資ローンの融資額は?

不動産投資は、大きな買い物です。規模の大きなファミリーマンションや都心のRCマンションなどは、物件価格が十数億円にのぼることもあります。そのため、これから不動産投資を始めたいと考えている人にとって「いくらまで借りることができるのか」は、気になるところではないでしょうか。

パッケージ商品の不動産投資ローンにおける借入可能額の上限は、商品内容として一律に決められている上限と、審査で個別に査定される上限の2段階で考えます。商品内容としての上限は、金融機関の商品紹介ページなどに記載されていることが多いです。一般的には1億~5億 円程度が上限とされていますが、不動産投資に積極的な銀行では10 億円というケースもあります。

個別査定の部分は、本人の属性や物件評価によって決められます。2020年2月にオンライン不動産投資ローンサービス「モゲチェック不動産投資」を提供する株式会社MFSが行った調査によると、年収に対する借入額の倍率は、平均11.8倍でした。住宅ローンの5~7 倍と大きな差がある理由は、給与収入だけではなく家賃収入も返済原資としているからです。 物件評価における積算評価は、特に重要でこれに一定の割合を差し引いた金額が上限とされることが少なくありません。例えば「8掛け」としている金融機関であれば積算評価の8割が上限額となります。

年収基準

金融機関によっては、商品内容として年収の最低ラインを設定しています。700万円以上としていることが多いですが、500万円以上という金融機関もあります。

不動産投資ローンの融資までの流れ

不動産投資ローンの申し込みから借り入れまでの一般的な流れは、以下の6ステップ です。

  1. 仮申込
    金融機関のホームページや店頭などから申し込み、簡単な個人情報や物件概要などを伝えます。
  2. 仮審査
    仮申込時に伝えた情報をもとに簡単な審査が行われます。
  3. 本申込
    仮審査に通過した場合、本人属性や物件に関する詳細な情報を記入した申込書を提出し、金融機関の担当者と面談を行います。
  4. 物件調査・本審査
    金融機関の審査担当者が実際に物件周辺に出向くなどして対象物件の評価を行い、融資審査の決定をします。
  5. 契約締結
    借り入れの契約書となる金銭消費貸借契約を締結します。
  6. 融資実行
    融資が実行され、融資額が振り込まれます。不動産の引き渡しと融資実行日は同日に行われるのが一般的です。

不動産投資ローン住宅ローンとの違い

金融機関によっては、商品内容として年収の最低ラインを設定しています。700万円以上としていることが多いですが、500万円以上という金融機関もあります。

不動産投資ローンと住宅ローンの主な共通点は、利用目的が不動産の購入で、パッケージローンであることが挙げられます。両者の違いは、購入する不動産が「自己居住用」か「賃貸用」かという点です。不動産投資ローンは、賃貸用の不動産を対象としているため、返済原資に借入申込者の本業における収入だけでなく賃貸収入を見込んでいます。

この違いは、借入可能額や金利にも現れています。借入可能額については前述しましたが、金利は一般的に住宅ローンよりも高くなります。不動産投資は事業であり、事業にはリスクが伴うからです。

ローンの契約書には利用目的が記載されており、違反すると最悪の場合、契約が解除されて一括返済を迫られる可能性があります。そのため、不動産投資をするために住宅ローンを利用することは厳禁です。ただし、住宅購入後の転勤などやむを得ない事情がある場合は認められることがあります。

もう一つ金利の低い住宅ローンで不動産投資を行えるケースがあることをご存じでしょうか。それは、賃貸併用住宅です。例えば2階建てのアパートで1階の部屋を自宅として住み、2階の部屋を賃貸するという状況が当てはまります。

ただし、全体の床面積に対する自己居住用部分の割合が一定以上になるように規定されており、50%以上とされるのが一般的です。つまり賃貸部分が全体の半分を超えてはいけません。なぜなら住宅ローンの主な用途は、あくまでも自己居住用だからです。マンションやアパートを購入して不動産投資を行うためには、基本的に不動産投資ローンを利用することになります。

まとめ

高額商品となる投資用不動産は、購入時にローンを利用するのが一般的といえます。投資経験の少ない人でも本人の属性にもとづいて借りられる可能性があるパッケージ商品が不動産投資ローンです。お金が足りないから借りるわけですが、借り入れだけに依存しすぎるとマンション経営が安定しにくくなるため、注意しましょう。

また頭金を全く用意できない場合は、ローンを利用すること自体が難しいかもしれません。まずは、自己資金をしっかりと準備したうえで、預貯金がある人はどれだけ不動産投資に充当できるかを明確にしておきましょう。

不動産投資をご検討中の方は、ぜひ一度ベルテックスにお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。