2024.09.18

資産運用

ベルテックスコラム事務局

【資産5,000万円計画】60歳までにやるべき資産運用シミュレーション

  • 日本の現状
  • 老後資金

老後のために資産形成が必要といわれているものの、その理由や目標とすべき貯蓄額などがわからない方は多いでしょう。
今回は、老後資産を形成する理由、そして必要な金額、その金額を貯めるための方法を解説します。

「老後資産」とはいつから必要なお金?

そもそも老後資産とは、何歳から使い始めるのでしょうか。

老後資産を使い始める平均は66.8歳

定年退職後、65歳から老齢年金の支給が始まります。老後は、基本的には受給する年金を柱に生活していくことになりますが、それまでに貯めた老後資産を使い始めるのもこの時期です。生命保険文化センターが公表したデータ(「リスクに備えるための生活設計ー「老後」とはいつから?」より)では、老後資産を使い始める年齢で最も多いのは65歳、次いで70歳で、平均は66.8歳です。

老後資金の利用開始年齢

  割合
59歳以下 1.0%
60歳 11.7%
61~64歳 1.7%
65歳 34.2%
66~69歳 2.0%
70歳 23.4%
71歳以上 9.3%
わからない 16.7%

老後資産で5,000万円が必要な理由

老後資産には5,000万円が必要だといわれています。その数字の根拠について解説します。

必要な老後の生活費

老後資金の用途である生活費にいくらかかるのかを知ることが先決です。政府等が集計したデータをもとにみていきましょう。
総務省統計局のデータでは、2021年度における老後の必要生活費は夫婦2人で月額約26万円、独身者で月約15万円です。
また、生命保険文化センターの2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」《速報版》によると、老後の最低日常生活費以外に必要と考えられている金額の平均は月額で14.8万円となっています。

以上のデータを踏まえると、ゆとりある生活をおこなうための必要金額は「26万円+14.8万円=40.8万円」です。

年金では足りない

では、ゆとりある生活を送るための40.8万円は年金で賄えるのでしょうか。
たとえば、年収帯が500万円台の会社員と専業主婦の夫婦の場合の年金額は1カ月あたり約22万円です(厚生年金加入期間40年で試算)。
必要金額の40.8万円から22万円を差し引くと、月に18.8万円が不足することがわかります。

定年から余命まで20年くらいある

月に18.8万円が不足する場合、亡くなる時期が遅くなればなるほどに多くの老後資金が必要になります。平均寿命から逆算した年数から必要金額を算出してみましょう。
先述の生活保険文化センターのデータによると、2022年の男性の平均寿命は81.05歳、女性は87.09歳です。
定年から余命までは、おおむね20~30年くらいあることがわかります。

ゆとりある老後生活費40.8万円―年金受給額22万円=不足額18.8万円
(不足額18.8万円×12か月)×20年=4,512万円
(不足額18.8万円×12か月)×30年=6,768万円

上記のように、定年後20年で亡くなる場合の必要額は4,512万円です。しかし、医療費や葬儀費用なども考慮すると、5,000万円は確保したいところでしょう。

老後資産の目処は実際に立たないのが現実

上記で述べた必要生活費はあくまで現時点での環境を反映したものです。必要な老後資産額は以下の要因で変化します。

年金受給額の減少

まずは、2005年から5年ごとの年金の月額表を確認しましょう。下記は、令和2年版厚生労働白書で公開された国民年金の満額受給額と、標準的な年金受給世帯の年金額(夫婦の基礎年金+夫の厚生年金)です。

国民年金の満額受給額と、標準的な年金受給世帯の年金額(夫婦の基礎年金+夫の厚生年金)月額

  国民年金 夫婦の基礎年金+夫の厚生年金
2005年 6万6,208円 23万3,229円
2010年 6万6,008円 23万2,591円
2015年 6万5,008円 22万1,507円
2020年 6万5,141円 22万724円

国民年金、厚生年金受給額ともに減少傾向にあります。特に厚生年金受給額の減額が顕著です。今後、少子高齢化にともない高齢者がさらに増加し、年金財政を支える現役世代人口が減少していく見込みです。年金受給者1人を支える現役世代の負担がますます増加することで、年金受給額がさらに減少していく可能性があります。
なお、年金受給額は、物価スライド制を採用しているため、物価変動によっても変化する場合があります。

平均寿命の変化

日本人の平均寿命は、食生活の変化や医療の進歩にともない、年々伸びています。1960年から2010年までの50年間で男性は約12年、女性は約14年も伸びました。
そして今後、75歳以上になっていく世代は第一次ベビーブーム世代、そして2030年代後半からは第二次ベビーブーム世代が65歳以上になります。このボリュームの大きいゾーンが年金受給する時代は、年金財政が今以上のひっ迫する可能性が高いでしょう。
年金財政のひっ迫予想により、受給額の減額や、受給年齢の引き下げなどがおこなわれる可能性があります。

日本人の男女別平均寿命推移

  男性 女性
1960年 65.32歳 70.19歳
1970年 69.31歳 74.66歳
1980年 73.35歳 78.76歳
1990年 75.92歳 81.90歳
2000年 77.72歳 84.60歳
2010年 79.55歳 86.30歳
2019年 81.41歳 87.45歳
2030年 81.95歳 88.68歳
2040年 82.82歳 89.55歳
2050年 83.55歳 90.29歳

※参照:2019年までは実数令和3年度版厚生労働白書より、それ以降内閣府平均寿命の推移より

インフレ・円安による物価上昇

インフレ・円安による物価上昇によって、生活に必要なモノの購入額が上がっています。
直近では、ロシア・ウクライナ問題や鳥インフルエンザなどの影響などで食料品の値段が高騰、円安などの影響でガソリン価格が高騰、そしてエネルギー価格の高騰により、電気・ガス代も高くなっています。
それにより、モノを購入する金額は年々増えているのです。2022年あたりから、大企業を中心に賃上げの機運が高まってきたり、国が最低賃金を上げたりして、長年上がることが無かった平均年収が上がることが期待されていますが、それでも物価の高騰を吸収するほどの力はないといっていいでしょう。
そして、今後も、物価の上昇は続く可能性があります。食料価格は年々世界の人口が増加しており、需給のひっ迫は否めません。エネルギー価格は、世界的の景気に影響されるでしょう。
円安での物価上昇に関しては、日銀の動きに左右されます。日銀が金利を上げることがあれば、円安は修正されて輸入物価は額が小さくなるかもしれませんが、この低金利が続くようであれば、円安もまだ続き、輸入物価額が大きくなると予想できます。

老後資産5,000万円を投資で計画的に築き上げる

老後資金5,000万円は、計画的に投資することで形成できます。具体的な理由や方法について解説します。

預金と投資の差とは

長年日本の預金金利は低く推移しています。ただ2023年日銀総裁が交代したことや、世界的に日本以外は高金利となっている状況より、金利が上昇する条件が整ってはいます。しかし、現状は低金利が続いています。
このような状況のため、お金を銀行預金に預けてもなかなか増えません。対して投資信託や株式投資などで資産形成をおこなう場合、銀行預金よりも高い利回りで運用できる可能性があるうえに、複利効果も期待できます。
仮に同じ金額を同じ期間積み立てた場合の30年後の資産の増え方を比較してみましょう。

<毎月1万5,000円を金利0.01%で30年間銀行定期預金に積み立てた場合>
30年後・・・540万8,086円

<毎月1万5,000円を利回り3%の複利で運用した場合の30年後>
30年後・・・874万1,053円

その差は333万2,967円です。
複利での運用を活用して効率よく増やすことを心がけると、老後資産5,000万円の達成も現実味を帯びてきます。

投資をするメリット

リスクの低い銀行預金に預けるのではなく、リスクはあっても投資をおこなうには大きなメリットがあるからです。

複利効果

投資で効率よくお金を増やすには、複利運用をおこなうことが大切です。そもそも「複利」とはどんなものなのかを簡単に解説します。
金融商品にお金を預けると、年に1回、ないしは2回、利息や配当、分配金が支払われます(ない場合もあります)。複利と比較される「単利」の場合は、その利息等を受け取ります。対して複利の場合、利息等は受け取らずに元本にまわすことになるのです。
たとえば、100万円を年3%の分配金が年1回支払われる金融商品に預けたとします。これを単利と複利でそれぞれ運用した場合の5年後の資産の比較をしてみます。

<単利で運用した場合>
100万円×3%(1年目)+100万円×3%(2年目)+100万円×3%(3年目)+100万円×3%(4年目)+100万円×3%(5年目)
=100万円+3万円+3万円+3万円+3万円+3万円
=115万円


<複利で運用した場合>
100万円×3%(1年目)+(100万円×3%)×3%(2年目)+{(100万円×3%)×3%}×3%(3年目)+・・・
=100万円3万円+3万900円+3万1,827円+3万2,781円+3万3,766円
=115万9,274円

単利で運用した場合と複利で運用した場合の5年後の資産の差は9,274円でした。これが20年、30年の運用となると、大きな差がでます。

<20年運用した場合>
単利・・・160万円
複利・・・180万6,111円


<30年運用した場合>
単利・・・190万円
複利・・・242万7,262円

毎月の収入

投資は、毎月の給料の一部をコツコツ積み立てておこなうことが一般的です。最初は無理なくできる範囲での金額を積み立てていくとよいでしょう。
決まった金額を投資にまわして、残りの額で生活をする習慣を身に付けることで、効率よく投資できます。
また、食費や家賃、娯楽にお金を使った後、残りのお金を投資にまわす方法もあります。しかし投資にまわす金額が一定ではなくなったり、趣味などに使いすぎて投資に1円もまわらない月もでてきたりする可能性があるため、なるべく給料が入ったら、すぐに積立にまわすように心がけてみましょう。

インフレに強い:金や不動産等の実物資産の場合

インフレは、モノの価値が上がることを指します。それは裏を返せばお金の価値がさがることを意味します。お金を増やそうと銀行預金に預けても、低金利なこともあってお金はほとんど増えません。
インフレ率が金利より高い場合は、資産価値は目減りします。インフレ率と金利が同じ場合は、お金の価値は変わりません。資産価値が増えるのは、金利の方が高い場合です。

  資産価値
インフレ率>金利 減る
インフレ率=金利 変わらない
インフレ率<金利 増える

インフレに強い資産は何があるのでしょうか。それは金や不動産などの実物資産といわれています。
金は、「有事の金買い」という言葉があるように、経済危機や争いごとなどがある場合に特に買われる傾向があります。そして実物資産のため物価上昇とともに金価格は上昇する傾向があります。金は、現物を購入する以外にも、純金積立という購入方法、金価格に連動する金融商品「金ETF」といったものでインフレヘッジができます。不動産も物価が上がると、不動産価格や家賃が上昇する傾向があるため、インフレに強い資産といえます。ただ購入するには千万円単位、億円単位といったまとまった資金が必要です。しかし自己資金は少額でローンを組んで購入できるほか、東証に上場している不動産投資信託(REIT)では比較的少額で購入でき、インフレに備えられます。

5,000万円を目指す資産形成シミュレーション

実物資産と金融商品を組み合わせることは、投資の基本である「分散投資」を実践できる手法です。「分散投資」ということは、それぞれの商品の個性が異なることで成立します。

実物資産+金融商品の資産形成シミュレーション

 

【不動産投資+iDeCo活用投資信託投資】

今回のシミュレーションは、実物資産として不動産投資、金融商品としてiDeCoを活用した投資信託で運用した場合でおこないます。前提として、投資開始年齢は30歳とし、60歳で退職するケースで考えてみましょう。

不動産投資は物件価格6,000万円(1室2,000万円を3室)とし、家賃は全部屋合計45万円(1室15万円を3室)、頭金で180万円を入れたとします。
※その他の条件 諸経費・・・月家賃に対し15%、空室率・・・10%、自己資金・・・180万円、借入金額・・・5,820万円、借入金利・・・年3.2%(固定金利)、返済期間・・・30年

〈不動産投資〉
年間家賃収入・・・540万円

年間返済金額・・・302万352円
年間想定空室率相当額・・・54万円
年間諸経費・・・81万円
年間手取金額・・・102万9,649円

総返済金額・・・9,061万25円(30年目で完済)
マンション投資30年目での総手取金額・・・3,088万9,470円

続いてiDeCoのケースもみてみましょう。こちらは毎月2万3,000円を積み立てとし、年利3%(複利運用)のケースでみてみましょう。

〈iDeCo〉
30年後のiDeCoで投資信託投資残高1,340万2,948円
※60歳で退職すると収入が途絶えるためiDeCo投資は終了

60歳時の資産は不動産投資とiDeCoの投資信託の収益を合算すると、計4,429万2,418円となります。不動産投資のローン返済は60歳で終了し、61歳からは家賃収入は全額収入に入るため、61歳での家賃手取り収入は540万円。よって、61歳時の資産は4,419万2,418円+540万円=4,959万2,418円になるため、61歳で約5,000万円に到達します。

以下の記事ではより詳しくiDeCoと不動産投資を併用して資産形成する方法等についてご紹介しています。また、その他金融商品を活用しての記事も参考にしてみてください。

実物資産の資産形成シミュレーション

続いて、次のシミュレーションは、メインに不動産投資、そして金投資も併せて行う実物資産中心の設定でおこないます。

【不動産投資+金投資】

不動産投資は物件価格6,000万円の一棟物件を保有したとし、家賃は全部屋合計45万円、頭金は10万円とします。こちらも前提として、投資開始年齢は30歳とし、60歳で退職するケースで考えてみましょう。
※その他の条件 諸経費・・・月家賃に対し15%、空室率・・・10%、自己資金・・・10万円、借入金額・・・5,990万円、借入金利・・・年3.2%(固定金利)、返済期間・・・30年

〈不動産投資〉
年間家賃収入・・・540万円

年間返済金額・・・310万8,576円
年間想定空室率相当額・・・54万円
年間諸経費・・・81万円
年間手取金額・・・94万1,425円

総返済金額・・・9,325万6,693円
マンション投資30年目での総手取金額・・・2,824万2,750円

続いて金投資ですが、こちらは毎月3万円を純金積み立てとします。1993年から2022年までに30年間の金価格の年平均上昇価格が約4%なので、今後30年間の利回りも4%と想定して計算してみましょう。

〈金投資〉
30年後の純金積立残高2,082万1,482円(複利運用で計算)
※60歳で退職すると収入が途絶えるため純金積み立ては終了

60歳時の資産は合計して4,906万4,232円となりますので、60歳でほぼ5,000万円に到達します。

まとめ

今回は、老後資産に5,000万円が必要な理由と、その5,000万円を貯める方法について解説しました。老後、ゆとりのある生活を送るためには国の年金を受給するだけでは足らず、老後までに5,000万円は必要です。
そして、5,000万円を貯めるためには、毎月コツコツと積立投資をおこなったり、少額の自己資金で大きな利益が得られる不動産投資をおこなったりすることが有効です。この記事の内容を参考に、投資を実践して、ゆとりのある老後を送りましょう。

ベルテックスでは資産形成にまつわるセミナーを開催しています。ご自宅からオンラインでご参加いただけますので、より詳しく話を聞いてみたい方はぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.09.18

資産運用

ベルテックスコラム事務局

【資産5,000万円計画】60歳までにやるべき資産運用シミュレーション

  • 日本の現状
  • 老後資金

老後のために資産形成が必要といわれているものの、その理由や目標とすべき貯蓄額などがわからない方は多いでしょう。
今回は、老後資産を形成する理由、そして必要な金額、その金額を貯めるための方法を解説します。

「老後資産」とはいつから必要なお金?

そもそも老後資産とは、何歳から使い始めるのでしょうか。

老後資産を使い始める平均は66.8歳

定年退職後、65歳から老齢年金の支給が始まります。老後は、基本的には受給する年金を柱に生活していくことになりますが、それまでに貯めた老後資産を使い始めるのもこの時期です。生命保険文化センターが公表したデータ(「リスクに備えるための生活設計ー「老後」とはいつから?」より)では、老後資産を使い始める年齢で最も多いのは65歳、次いで70歳で、平均は66.8歳です。

老後資金の利用開始年齢

  割合
59歳以下 1.0%
60歳 11.7%
61~64歳 1.7%
65歳 34.2%
66~69歳 2.0%
70歳 23.4%
71歳以上 9.3%
わからない 16.7%

老後資産で5,000万円が必要な理由

老後資産には5,000万円が必要だといわれています。その数字の根拠について解説します。

必要な老後の生活費

老後資金の用途である生活費にいくらかかるのかを知ることが先決です。政府等が集計したデータをもとにみていきましょう。
総務省統計局のデータでは、2021年度における老後の必要生活費は夫婦2人で月額約26万円、独身者で月約15万円です。
また、生命保険文化センターの2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」《速報版》によると、老後の最低日常生活費以外に必要と考えられている金額の平均は月額で14.8万円となっています。

以上のデータを踏まえると、ゆとりある生活をおこなうための必要金額は「26万円+14.8万円=40.8万円」です。

年金では足りない

では、ゆとりある生活を送るための40.8万円は年金で賄えるのでしょうか。
たとえば、年収帯が500万円台の会社員と専業主婦の夫婦の場合の年金額は1カ月あたり約22万円です(厚生年金加入期間40年で試算)。
必要金額の40.8万円から22万円を差し引くと、月に18.8万円が不足することがわかります。

定年から余命まで20年くらいある

月に18.8万円が不足する場合、亡くなる時期が遅くなればなるほどに多くの老後資金が必要になります。平均寿命から逆算した年数から必要金額を算出してみましょう。
先述の生活保険文化センターのデータによると、2022年の男性の平均寿命は81.05歳、女性は87.09歳です。
定年から余命までは、おおむね20~30年くらいあることがわかります。

ゆとりある老後生活費40.8万円―年金受給額22万円=不足額18.8万円
(不足額18.8万円×12か月)×20年=4,512万円
(不足額18.8万円×12か月)×30年=6,768万円

上記のように、定年後20年で亡くなる場合の必要額は4,512万円です。しかし、医療費や葬儀費用なども考慮すると、5,000万円は確保したいところでしょう。

老後資産の目処は実際に立たないのが現実

上記で述べた必要生活費はあくまで現時点での環境を反映したものです。必要な老後資産額は以下の要因で変化します。

年金受給額の減少

まずは、2005年から5年ごとの年金の月額表を確認しましょう。下記は、令和2年版厚生労働白書で公開された国民年金の満額受給額と、標準的な年金受給世帯の年金額(夫婦の基礎年金+夫の厚生年金)です。

国民年金の満額受給額と、標準的な年金受給世帯の年金額(夫婦の基礎年金+夫の厚生年金)月額

  国民年金 夫婦の基礎年金+夫の厚生年金
2005年 6万6,208円 23万3,229円
2010年 6万6,008円 23万2,591円
2015年 6万5,008円 22万1,507円
2020年 6万5,141円 22万724円

国民年金、厚生年金受給額ともに減少傾向にあります。特に厚生年金受給額の減額が顕著です。今後、少子高齢化にともない高齢者がさらに増加し、年金財政を支える現役世代人口が減少していく見込みです。年金受給者1人を支える現役世代の負担がますます増加することで、年金受給額がさらに減少していく可能性があります。
なお、年金受給額は、物価スライド制を採用しているため、物価変動によっても変化する場合があります。

平均寿命の変化

日本人の平均寿命は、食生活の変化や医療の進歩にともない、年々伸びています。1960年から2010年までの50年間で男性は約12年、女性は約14年も伸びました。
そして今後、75歳以上になっていく世代は第一次ベビーブーム世代、そして2030年代後半からは第二次ベビーブーム世代が65歳以上になります。このボリュームの大きいゾーンが年金受給する時代は、年金財政が今以上のひっ迫する可能性が高いでしょう。
年金財政のひっ迫予想により、受給額の減額や、受給年齢の引き下げなどがおこなわれる可能性があります。

日本人の男女別平均寿命推移

  男性 女性
1960年 65.32歳 70.19歳
1970年 69.31歳 74.66歳
1980年 73.35歳 78.76歳
1990年 75.92歳 81.90歳
2000年 77.72歳 84.60歳
2010年 79.55歳 86.30歳
2019年 81.41歳 87.45歳
2030年 81.95歳 88.68歳
2040年 82.82歳 89.55歳
2050年 83.55歳 90.29歳

※参照:2019年までは実数令和3年度版厚生労働白書より、それ以降内閣府平均寿命の推移より

インフレ・円安による物価上昇

インフレ・円安による物価上昇によって、生活に必要なモノの購入額が上がっています。
直近では、ロシア・ウクライナ問題や鳥インフルエンザなどの影響などで食料品の値段が高騰、円安などの影響でガソリン価格が高騰、そしてエネルギー価格の高騰により、電気・ガス代も高くなっています。
それにより、モノを購入する金額は年々増えているのです。2022年あたりから、大企業を中心に賃上げの機運が高まってきたり、国が最低賃金を上げたりして、長年上がることが無かった平均年収が上がることが期待されていますが、それでも物価の高騰を吸収するほどの力はないといっていいでしょう。
そして、今後も、物価の上昇は続く可能性があります。食料価格は年々世界の人口が増加しており、需給のひっ迫は否めません。エネルギー価格は、世界的の景気に影響されるでしょう。
円安での物価上昇に関しては、日銀の動きに左右されます。日銀が金利を上げることがあれば、円安は修正されて輸入物価は額が小さくなるかもしれませんが、この低金利が続くようであれば、円安もまだ続き、輸入物価額が大きくなると予想できます。

老後資産5,000万円を投資で計画的に築き上げる

老後資金5,000万円は、計画的に投資することで形成できます。具体的な理由や方法について解説します。

預金と投資の差とは

長年日本の預金金利は低く推移しています。ただ2023年日銀総裁が交代したことや、世界的に日本以外は高金利となっている状況より、金利が上昇する条件が整ってはいます。しかし、現状は低金利が続いています。
このような状況のため、お金を銀行預金に預けてもなかなか増えません。対して投資信託や株式投資などで資産形成をおこなう場合、銀行預金よりも高い利回りで運用できる可能性があるうえに、複利効果も期待できます。
仮に同じ金額を同じ期間積み立てた場合の30年後の資産の増え方を比較してみましょう。

<毎月1万5,000円を金利0.01%で30年間銀行定期預金に積み立てた場合>
30年後・・・540万8,086円

<毎月1万5,000円を利回り3%の複利で運用した場合の30年後>
30年後・・・874万1,053円

その差は333万2,967円です。
複利での運用を活用して効率よく増やすことを心がけると、老後資産5,000万円の達成も現実味を帯びてきます。

投資をするメリット

リスクの低い銀行預金に預けるのではなく、リスクはあっても投資をおこなうには大きなメリットがあるからです。

複利効果

投資で効率よくお金を増やすには、複利運用をおこなうことが大切です。そもそも「複利」とはどんなものなのかを簡単に解説します。
金融商品にお金を預けると、年に1回、ないしは2回、利息や配当、分配金が支払われます(ない場合もあります)。複利と比較される「単利」の場合は、その利息等を受け取ります。対して複利の場合、利息等は受け取らずに元本にまわすことになるのです。
たとえば、100万円を年3%の分配金が年1回支払われる金融商品に預けたとします。これを単利と複利でそれぞれ運用した場合の5年後の資産の比較をしてみます。

<単利で運用した場合>
100万円×3%(1年目)+100万円×3%(2年目)+100万円×3%(3年目)+100万円×3%(4年目)+100万円×3%(5年目)
=100万円+3万円+3万円+3万円+3万円+3万円
=115万円


<複利で運用した場合>
100万円×3%(1年目)+(100万円×3%)×3%(2年目)+{(100万円×3%)×3%}×3%(3年目)+・・・
=100万円3万円+3万900円+3万1,827円+3万2,781円+3万3,766円
=115万9,274円

単利で運用した場合と複利で運用した場合の5年後の資産の差は9,274円でした。これが20年、30年の運用となると、大きな差がでます。

<20年運用した場合>
単利・・・160万円
複利・・・180万6,111円


<30年運用した場合>
単利・・・190万円
複利・・・242万7,262円

毎月の収入

投資は、毎月の給料の一部をコツコツ積み立てておこなうことが一般的です。最初は無理なくできる範囲での金額を積み立てていくとよいでしょう。
決まった金額を投資にまわして、残りの額で生活をする習慣を身に付けることで、効率よく投資できます。
また、食費や家賃、娯楽にお金を使った後、残りのお金を投資にまわす方法もあります。しかし投資にまわす金額が一定ではなくなったり、趣味などに使いすぎて投資に1円もまわらない月もでてきたりする可能性があるため、なるべく給料が入ったら、すぐに積立にまわすように心がけてみましょう。

インフレに強い:金や不動産等の実物資産の場合

インフレは、モノの価値が上がることを指します。それは裏を返せばお金の価値がさがることを意味します。お金を増やそうと銀行預金に預けても、低金利なこともあってお金はほとんど増えません。
インフレ率が金利より高い場合は、資産価値は目減りします。インフレ率と金利が同じ場合は、お金の価値は変わりません。資産価値が増えるのは、金利の方が高い場合です。

  資産価値
インフレ率>金利 減る
インフレ率=金利 変わらない
インフレ率<金利 増える

インフレに強い資産は何があるのでしょうか。それは金や不動産などの実物資産といわれています。
金は、「有事の金買い」という言葉があるように、経済危機や争いごとなどがある場合に特に買われる傾向があります。そして実物資産のため物価上昇とともに金価格は上昇する傾向があります。金は、現物を購入する以外にも、純金積立という購入方法、金価格に連動する金融商品「金ETF」といったものでインフレヘッジができます。不動産も物価が上がると、不動産価格や家賃が上昇する傾向があるため、インフレに強い資産といえます。ただ購入するには千万円単位、億円単位といったまとまった資金が必要です。しかし自己資金は少額でローンを組んで購入できるほか、東証に上場している不動産投資信託(REIT)では比較的少額で購入でき、インフレに備えられます。

5,000万円を目指す資産形成シミュレーション

実物資産と金融商品を組み合わせることは、投資の基本である「分散投資」を実践できる手法です。「分散投資」ということは、それぞれの商品の個性が異なることで成立します。

実物資産+金融商品の資産形成シミュレーション

 

【不動産投資+iDeCo活用投資信託投資】

今回のシミュレーションは、実物資産として不動産投資、金融商品としてiDeCoを活用した投資信託で運用した場合でおこないます。前提として、投資開始年齢は30歳とし、60歳で退職するケースで考えてみましょう。

不動産投資は物件価格6,000万円(1室2,000万円を3室)とし、家賃は全部屋合計45万円(1室15万円を3室)、頭金で180万円を入れたとします。
※その他の条件 諸経費・・・月家賃に対し15%、空室率・・・10%、自己資金・・・180万円、借入金額・・・5,820万円、借入金利・・・年3.2%(固定金利)、返済期間・・・30年

〈不動産投資〉
年間家賃収入・・・540万円

年間返済金額・・・302万352円
年間想定空室率相当額・・・54万円
年間諸経費・・・81万円
年間手取金額・・・102万9,649円

総返済金額・・・9,061万25円(30年目で完済)
マンション投資30年目での総手取金額・・・3,088万9,470円

続いてiDeCoのケースもみてみましょう。こちらは毎月2万3,000円を積み立てとし、年利3%(複利運用)のケースでみてみましょう。

〈iDeCo〉
30年後のiDeCoで投資信託投資残高1,340万2,948円
※60歳で退職すると収入が途絶えるためiDeCo投資は終了

60歳時の資産は不動産投資とiDeCoの投資信託の収益を合算すると、計4,429万2,418円となります。不動産投資のローン返済は60歳で終了し、61歳からは家賃収入は全額収入に入るため、61歳での家賃手取り収入は540万円。よって、61歳時の資産は4,419万2,418円+540万円=4,959万2,418円になるため、61歳で約5,000万円に到達します。

以下の記事ではより詳しくiDeCoと不動産投資を併用して資産形成する方法等についてご紹介しています。また、その他金融商品を活用しての記事も参考にしてみてください。

実物資産の資産形成シミュレーション

続いて、次のシミュレーションは、メインに不動産投資、そして金投資も併せて行う実物資産中心の設定でおこないます。

【不動産投資+金投資】

不動産投資は物件価格6,000万円の一棟物件を保有したとし、家賃は全部屋合計45万円、頭金は10万円とします。こちらも前提として、投資開始年齢は30歳とし、60歳で退職するケースで考えてみましょう。
※その他の条件 諸経費・・・月家賃に対し15%、空室率・・・10%、自己資金・・・10万円、借入金額・・・5,990万円、借入金利・・・年3.2%(固定金利)、返済期間・・・30年

〈不動産投資〉
年間家賃収入・・・540万円

年間返済金額・・・310万8,576円
年間想定空室率相当額・・・54万円
年間諸経費・・・81万円
年間手取金額・・・94万1,425円

総返済金額・・・9,325万6,693円
マンション投資30年目での総手取金額・・・2,824万2,750円

続いて金投資ですが、こちらは毎月3万円を純金積み立てとします。1993年から2022年までに30年間の金価格の年平均上昇価格が約4%なので、今後30年間の利回りも4%と想定して計算してみましょう。

〈金投資〉
30年後の純金積立残高2,082万1,482円(複利運用で計算)
※60歳で退職すると収入が途絶えるため純金積み立ては終了

60歳時の資産は合計して4,906万4,232円となりますので、60歳でほぼ5,000万円に到達します。

まとめ

今回は、老後資産に5,000万円が必要な理由と、その5,000万円を貯める方法について解説しました。老後、ゆとりのある生活を送るためには国の年金を受給するだけでは足らず、老後までに5,000万円は必要です。
そして、5,000万円を貯めるためには、毎月コツコツと積立投資をおこなったり、少額の自己資金で大きな利益が得られる不動産投資をおこなったりすることが有効です。この記事の内容を参考に、投資を実践して、ゆとりのある老後を送りましょう。

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この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。