2024.04.30

資産運用

ベルテックスコラム事務局

老後資金は実際いくら必要?豊かな老後を過ごすために知っておくこと

  • 老後資金
  • iDeCo

老後の生活資金に対する不安を抱える人々の中で、具体的に必要な金額を正確に把握している人は少ないでしょう。生活費や医療費、家族への支援費、趣味や旅行などの余暇活動に加えて、将来のインフレーションなどの社会的な要因も考慮する必要があります。

この記事では、老後に必要な金額や適切な資産形成の方法、私的年金など、豊かな老後を迎えるために重要なお金に関する話題を詳しく解説します。

老後資金は実際いくら必要なのか

老後資金の必要額は個人の家族構成や生活スタイル、健康状態によって異なりますが、一般的には年金や退職金だけでは不十分とされています。国民の多くが、老後までに数百万円から数千万円の貯蓄が必要とされています。明るく幸せな老後を過ごすためには、現役時代から問題解決に向け、積極的な取り組みをしなければなりません。

老後2,000万円問題とは

老後資金を考える際の一つの目安として知られるのが「老後2,000万円問題」です。
これは、金融庁が試算および公表した報告書において、公的年金だけでは老後の生活費が不足し、個人の貯蓄から2,000万円の切り崩しが必要であるという結論が示された問題です。2018年9月から専門家によって「高齢社会における資産形成・管理」というテーマで12回にわたる議論が繰り返され、その試算結果が信頼性の高いものであることから、社会全体に大きな影響を与えました。

老後2,000万円問題のモデルケースは以下の定義としています。

【モデルケース】

1.夫が65歳以上かつ妻が60歳以上、ともに無職である夫婦二人の世帯
2.夫が95歳かつ妻が90歳になるまで生存し、夫婦ともに健康である
3.毎月の生活赤字が約5.5万円である
※金融庁試算:5.5(万円)×12(ヵ月)×30(年)=1,980(万円)

老後に必要な資金目安

老後2,000万円問題については、2020年に発生した新型コロナウイルスの影響を加味すると、再試算が必要であるかもしれません。なぜなら、試算が行われた2018~2019年時点と2024年現在では、物価高が全く異なるからです。日用品や医療費、介護費などすべてにおいて値上げがされています。そして、国の予想を超えて加速する単身者世帯の増加によって、試算に用いた根拠の正確性が危ぶまれます。
では、実際に老後を迎えた人々は、毎月どれだけの支出で生活をしているのでしょうか。

夫婦二人世帯の場合 

ここでは、総務省統計局による2022年「家計調査年報(家計収支編)」の調査結果(19頁)の内容を一部ご紹介しましょう。

項目 65歳以上の夫婦のみの無職世帯
食料 6万7,776円
住居 1万5,578円
光熱・水道 2万2,611円
家具・家事用品 1万371円
被服及び履物 5,003円
保健医療 1万5,681円
交通・通信 2万8,878円
教育 3円
教養娯楽 2万1,365円
その他の消費支出 4万9,430円
(諸雑費) 1万9,818円
(交際費) 2万2,711円
(仕送り金) 1,334円
消費支出 23万6,696円

 

日常の消費支出費は、平均23万6,696円ということが明らかになっています。
また、非消費支出費として以下の支出も挙がりました。

直接税 1万2,854円
社会保険料  1万8,945円
非消費支出 3万1,812円

 

これらを合計すると、毎月26万8,508円の支出があるようです。

単身世帯の場合 

次は、単身者世帯の支出額についてご紹介します。

項目 65歳以上の単身の無職世帯
食料 3万7,485円
住居 1万2,746円
光熱・水道 1万4,704円
家具・家事用品 5,956円
被服及び履物 3,150円
保健医療 8,128円
交通・通信 1万4,625円
教育 0円
教養娯楽 1万4,473円
その他の消費支出 3万1,872円
(諸雑費) 1万3,595円
(交際費) 1万7,893円
(仕送り金) 341円
消費支出 14万3,139円
直接税 6,660円
社会保険料 5,625円
非消費支出 12,356円

このような結果となり、支出額の合計は15万5,495円となりました。

1人あたりの公的年金の受給額はいくら?

老後における支出額の目安が分かったところで、次は収入額の目安を解説しましょう。老後の収入、つまり公的年金は、働いていた頃に収めた年金額によって異なります。カテゴリーで大別すると「会社員」と「個人事業主」に分けられ、両者の違いは「厚生年金」の有無にあります。

会社員の場合は月14万円

日本の年金制度は、「3階建て」で構成されています。
1階部分は20~60歳までの全ての国民が支払う国民年金、2階部分は公務員や民間企業の社員が支払う厚生年金、3階部分は企業独自の私的年金です。日本年金機構ホームページ内の「令和5年4月分からの年金額等について」では、令和5年の厚生年金(夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は、月額224,482円でした。(※1)
また、厚生年金加入者の毎月の平均受給額はここ数年14万5,000~7,000円程度で推移しています。

※1:平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

個人事業主の場合は月5万円

老後に特に備えが必要なのは、個人事業主です。
令和3年度の国民年金は満額で6万5,075円となっており、老後2,000万円問題でのモデルケースにみる「毎月の生活赤字5.5万円」をはるかに上回るでしょう。ただし、これは満額の場合の話であり、平均受給額は5万5,000~5万6,000円程度です。個人事業主の人は、老後に毎月10万円以上の生活赤字となる可能性があります。

老後資金2,000万円では足りない

令和5年の厚生年金の受給額は月額224,482円、毎月の支出額が26万8,508円となると、実際の生活赤字は4万4,026円です。このケースに当てはまる65歳以上の無職の夫婦世帯は、4.4(万円)×12(ヵ月)×30(年間)=1,584万円程度の不足で済むかもしれません。
個人事業主の場合、仮に夫婦で6.0(万円)×2(人)として、年金受給額が月額12.0万円だとしましょう。不足額を単純計算すると、14.8(万円)×12(ヵ月)×30(年間)=5,328万円です。
また、家計調査年報による支出額は、あくまで「普通の生活」を送っている場合です。趣味や旅行などの娯楽を楽しむ「ゆとりある生活」をするには、夫婦二人の平均支出額は37万9,000円必要であると言われています。そうなると、厚生年金の受給者夫婦でさえ月額15万円の不足ですので、老後資金2,000万円では到底足りなさそうです。

 

老後、生活費以外の必要資金は何か

老後に備える際、生活費だけでなく医療費や介護費用などの支出にも考慮が必要です。これらの必要資金を見落とさずあらかじめ計画に組み込むことが、安心した老後を迎えるための重要な一歩です。

リフォーム費用

マイホームを購入している場合、老後を迎え時点で住宅ローンを支払い終えている世帯もあるでしょう。だからと言って、安心していてはいけません。建物や設備の老朽化に備え、リフォーム費用の準備が必要です。
マンション住まいで毎月「修繕積立金」を支払っていても、将来に向けて値上がりすること、キッチンや洗面台、トイレなどの設備修繕は自己負担であることを見積もっておく必要があります。
一戸建てを購入している方は、外壁塗装や屋根の防水工事など、100万円を超える工事が必要となってきます。マンションのように計画的に貯蓄していく必要がありそうです。

医療費用

建物と同じで、人も年を取ると病気のリスクが高まり、健康を保つには身体のメンテナンスが必要です。必然的に通院費、薬剤費、検査費、入院費といった医療サービスの利用にかかる費用が増加します。
 

【出典】厚生労働省HP「医療費の一部負担(自己負担)割合について」より

医療費は上記の通り、年齢が上がるにつれて自己負担割合が減少していきます。しかし、厚生労働省保険局調査課が公表する「医療保険に関する基礎資料 ~令和3年度の医療費等の状況~」にれば、20代前半と比較して70代前半の医療費は6倍以上も跳ね上がっています。(以下参照)

医療費の自己負担額が2割に軽減されても、支出としてはかなりのダメージになることは間違いなさそうです。

介護費用

医療費よりもさらに負担額が大きいのは、介護費用です。生命保険文化センターは、令和3年度のデータとして過去3年間に介護経験がある人を対象に行った「生命保険に関する全国実態調査」を公表しています。

これによれば、介護ベッドの購入費用や住宅のバリアフリー化など一時支出の合計額は、平均74万円、おむつ代やデイサービスなどの施設利用料といった月々にかかる合計額は平均8.3万円であることが明らかになりました。(以下参照)

【介護に要した費用】

高齢者の中には、90歳近くでも介護が不要な人もいますし、自宅代わりとして特別養護老人ホーム(特養)へ完全入所する人もいます。また、特養は地方公共団体・社会福祉法人が設置する公的施設なので費用が安い一方、入所待ちの人が多く簡単には利用できません。そうなると、民間企業が運営する老人ホームへ入所することになりますが、特養と比較すると月額利用料は高額です。

お祝い費用

老後を迎える60代は、孫がいる世帯も多いことでしょう。晩婚化が進んでいる現代では、老後を迎えて初孫誕生もあり得ます。出産祝いから始まり、幼いうちは初節句や七五三、そして小学校から高校まで、入学や卒業の節目にはご祝儀が必要です。お祝いをしてあげたいのに資金不足、という現状がすでに多く見られますので、資金計画に組み込んでおきましょう。

葬儀・お墓費用

家族に負担を負わせないためには、人生の最終段階である葬儀やお墓の費用も、計画的に準備が必要です。葬儀費用には、会場手配や式場費用、遺体処置、花輪、弔電などが含まれます。
生命保険文化センターによれば、2022年の葬儀総額の平均は110万7,000円という結果が明らかになりました。(以下参照)

【出典】生命保険文化センター「葬儀にかかる費用はどれくらい?」より

老後資金を増やすためにやるべきこと5選

「2,000万円」をゴールに設定すると、到底達成できるはずがないと感じるかもしれません。しかし、以下5つのステップを踏むことで、着実に資金形成をすることが可能です。忙しい毎日の中から時間を捻出し、着実に資産形成していきましょう。

その1:もらえる年金額を調べる

まずは、自分が老後にどれだけの年金をもらえるか把握することから始めます。年金額は、以下の方法で調べることが可能です。

1.    「ねんきんネット」から年金記録を閲覧する
2.    「ねんきんダイヤル」へ電話をして確認する
3.    「ねんきん定期便」のはがきを確認する
4.    年金事務所で照会する

インターネットを利用して簡単に閲覧できますが、電話やはがき、年金事務所で確認する方法もあります。通常、ねんきん定期便では直近1年分の履歴しか確認できませんが、35歳、45歳、59歳の年には「封書版」のねんきん定期便が届きます。この定期便では全期間の確認ができますので、必ず保管しておくようにしましょう。

その2:生活費の見直しをする

次に、基本的なことですが生活費の見直しをすることです。
光熱費や通信費の見直し、外食や旅行が多い世帯は生活水準を下げるなど、できる節約は早めに取り掛かりましょう。特に、固定費が占める負担割合が大きいことに気付いていない世帯が多い傾向にあります。支出をできる限り抑え、その分を将来のための貯蓄・投資に回しましょう。

その3:目標を決めて資産運用を始める

上記1、2を行ったら、資産形成に向けて積極的に動き出しましょう。まずは、目標とするゴール設定をすることです。具体的に毎月いくら投資へ回し、いつまでにどれだけ増やすのかを考えます。
ここで大切なのは、自分の環境や生活水準、ライフスタイルに適した試算をすることです。自分の受給できる年金額によってゴールは異なりますし、資産運用を始める時の年齢や家族構成でも異なります。

その4:税制度を効果的に活用する 

次にすべきことは、節税対策です。
上記3で目標設定をすると、年率何パーセントで運用するべきか、またその年率の資産運用にはどのような商品があるのか、おのずと導かれます。NISAやiDeCoの非課税制度を利用し、目標達成できる商品を探してみましょう。
そして、日常生活での節税効果も同時に考えてみてください。例えば、一定額の支払い基準を超えたときに利用できる「医療費控除」や「生命保険控除」、ふるさと納税などによる「寄附金控除」などです。
一般的によく利用されている「扶養控除」や「配偶者控除」以外にも目を向け、家計から不要な出費がないよう「お金を守る」ことに意識を向けてください。

その5:副業などで収入アップを目指す

これまでの動きを実行できれば、漠然とした不安から解放され、将来の自分への安心感も増えるはずです。そして、現役として元気で健康に働けるうちに、副業などでもう少し収入アップをしておくと、より豊かな老後が実現できます。
会社員でもすぐに取り掛かれる副業には、単発アルバイト、せどり、Webライター・デザイナー、アフィリエイトなどがあります。特にパソコンを日頃から使っている人であれば、スムーズに開始できるでしょう。副業で得た収入を資産運用に投じることでより高い複利を得られ、老後資金の増収が見込めます。
ただし、会社規定で副業を禁止する企業も多くあります。罰則として強制解雇などもあり得ますので、よく調べてから始めるようにしてください。

豊かな老後を過ごすために資金を貯める方法【年代別】

年代によって異なる生活スタイルやライフステージに合わせて、資金形成の方法は異なります。若年層は長期的な投資スタイルが推奨され、中年層では収入の増加に伴って、投資の多様化が求められます。
そして、高齢者は安定した収入源や資産の管理をしなくてはなりません。それぞれの年代において、ライフプランやリスク許容度を考慮し、賢明な貯蓄や投資戦略を構築していきましょう。

20代~30代

日本の企業の多くは、戦後から「年功序列制度」を設けています。勤続年数や年齢が上がるごとにスキルや経験が増え、それに伴って給与が上がる人事制度のことです。最近では有能な人材確保のために実力社会になりつつありますが、それでもまだ年功序列制度が根強く残っています。
特に高校や大学を卒業してすぐの20代は給与が低い傾向にあります。金銭的な余裕がないうちは、少額でできる範囲で運用をスタートさせましょう。
新NISAのつみたて投資枠などを利用した長期運用が向いており、少額でも長い時間をかければ十分に資産形成は可能です。
また、独身でお金が自由に使えるうちに、海外旅行などを楽しむことも自分の人生の資産になります。今の自分の時間を大切にしながら、少しずつ投資について考えましょう。

40代~50代 

40~50代の世帯は一般的な傾向として、結婚して子供が学校(小学校~大学)へ通う頃です。若い頃に比べると年収が増えますが、その分子供にかかる食費や教育費なども増えます。
また、自分の老後資金や親の介護についても考え始める頃でしょう。人それぞれ大きく差が出る頃で、家計の収支バランス管理がとても重要になります。
株式投資で資産形成に挑戦することも正解ですし、債券投資によるローリスクな運用も正解です。大切なのは自分の資金力に合わせ、老後に向けて堅実な手法をとることです。

60代以降

60代に突入しても、再雇用制度や2025年に義務付けられる定年延長で、老後までの5年間のうちに資産運用したいという方もいるでしょう。また、65歳で定年を迎え、まとまった退職金が入ったので、今のうちに運用しておきたいという人もいるかもしれません。
運用を検討することは良いことですが、資産家や富裕層などでない限り、大きな利益を狙うことは控えましょう。退職金を運用したい場合、退職金専用定期預金で元本保証を意識したローリスク運用がおすすめです。

老後資金の形成に活用したい制度

先にも触れましたが、老後の資金を確保するには、NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)が有用です。どちらも国が提供する制度で、高い節税効果を得られます。
以下で、それぞれの違いを解説します。

新NISA

NISA(少額投資非課税制度)は、個人が株式や投資信託などの金融商品を取引する際に、一定の条件を満たすことで得られる税制優遇措置です。
要するに、これらの投資から得た利益について、ある程度までは課税されないという制度です。2024年からは新NISAとして、内容が拡充され、節税効果が一層高まりました。幅広い投資対象が適用されるため、リスク分散や資産の成長に大きく貢献します。新NISAの非課税期間や要件について確認し、早めに活用していくことが重要です。

iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人が自らの老後資金を積み立てるための私的年金制度です。
雇用者や個人事業主でも加入が可能で、毎月一定額を積み立てることで資産形成します。
iDeCoの特徴は、掛金全額の所得控除が可能であり、所得税や住民税を軽減できる点です。また、NISA制度のように運用益は非課税で、年金として受け取る際にも税制優遇措置が適用されます。
ただし、原則として60歳までは掛金の引き出しや途中解約はできず、毎月の掛金も年1回しか金額変更ができません。毎月自由に金額変更できるNISAと比べると柔軟性は劣りますが、高所得な人ほど高い節税効果を得られます。

老後資金でよく聞く「個人年金保険」とは?

個人年金保険とは、将来の生活資金の保障として設計された金融商品のことです。これは、個人が自ら老後の生活費や医療費を確保するために、保険会社と契約して保険料を支払うことで、将来的に受け取る私的年金として還元されます。
この章では、「個人年金保険」にフォーカスし、その種類やメリット・デメリットをご紹介します。

個人年金とは何か?iDecoとは違うの? 

個人年金保険は保険契約者が一定期間にわたって保険料を支払い、将来的に年金を受け取る仕組みです。保険会社が預かり、老後の安定した収入源となる年金として還元します。個人年金保険は、個人のニーズやリスクに合わせた多様なプランがあり、老後の生活設計に合わせて好きな商品を選択できます。
個人年金保険に加入するタイミングは、早ければ早いほどよいでしょう。例えば、30代の若いうちから加入を始めれば、掛け金が比較的低めに設定でき、将来の受け取り額の増加につながります。
iDeCoと個人年金保険はどちらも老後の私的年金を目的としていますが、その違いは運用面や税制優遇面に見られます。60歳までは原則として解約できないiDeCoに対し、個人年金保険は返戻金が減少しますが、途中解約が可能です。また、iDeCoは自分で商品の運用をして、払い込んだ掛金と運用益を老後に受け取ります。
一方、個人年金保険では毎月保険料を払い込むことで、一般的には保険料を上回る金額を年金として受け取ることが可能です。
両者にはいずれも税制優遇が適用されますが、その効果はiDeCoの方が高いとされています。

個人年金保険の種類

個人年金保険は、おおまかに「終身年金保険」「確定年金保険」「定額年金保険」「変額年金保険」があり、それぞれに特徴があります。これら4種類はどれも、将来の不安を少しでも軽減するための仕組みが備わっています。

終身年金

終身年金保険は、契約者が積立てた保険料を基に、一生涯にわたり定期的に年金を受け取る保険商品です。老後の資金として安定した収入源を確保したい方や、長生きリスクへの備えとして適しています。終身年金保険は、長期間に渡って安定した収入が見込めるため、退職後のライフプランの一環として利用されています。

また、終身年金保険には、保障内容や受け取り方に柔軟性があるため、個々のライフスタイルやニーズに合わせたプランを選択することができるのが特徴です。
年金の受取期間中に契約者が死亡した場合、通常は契約が終了となり、相続人が受け取ることはできません。ただし、保証期間付終身年金に加入することで、相続人に支払われるプランもあります。
終身年金保険には解約時の返戻率が低いという特性があり、途中で解約すると多くの費用が損失となる可能性があるため、契約前には条項をよく確認することが必要です。

確定年金

確定年金保険は、保険料を一定期間払い込み、将来定められた時期から一定額の年金を受け取ることができる保険商品です。確定年金保険は、契約時に受け取り額と受け取り期間が固定されており、リスクを抑えながら将来の収入を見積もることが可能です。
終身年金と異なり、保険期間が決められているため、期間満了後には収入が途絶えることになりますが、その分、受け取り期間中の収入は安定しているという特性があります。
確定年金保険は、加入時に自身に適したプランを選択することが重要です。加入者が受け取れる金額は確定していますが、インフレや経済状況の変化によって実質的な価値は変わる可能性があります。そのため、将来の経済状況を見据え、柔軟で長期的な視野を持ち計画を立てることが大切です。

定額年金

定額年金保険は、保険料の支払い期間中に何が起ころうとも、保証された一定の金額を受け取ることができる保険商品です。これは、市場の変動リスクを気にせずに済むため、安定した収入を求める方に適しています。毎月または年一回など、あらかじめ定められた期間と金額で年金が支払われるシステムは、老後の生活計画を立てやすいという特徴があります。また、保険期間や保険料の支払い方法に柔軟性があり、たとえば子供の教育費が一段落したタイミングで受取を開始するなど、ライフステージに応じた柔軟な対応が可能です。このタイプの年金は、将来の収入を予測しやすく、受給者が毎月の支出を計画しやすいことがメリットとなります。
さらに、死亡保障を付けることもでき、万が一の時には遺族に対する経済的な安心を提供します。

変額年金 

変額年金保険とは、加入者が支払う保険料が投資運用され、その運用成果に応じて年金額が変動する保険商品です。投資のリスクは加入者が負担する形となっており、株式や債券によって運用されるため、運用がうまくいけば受け取る年金の増収が見込める反面、運用が思うようにいかなければ年金額が減少するリスクもあります。したがって、加入時には慎重なリスク管理が求められるでしょう。投資の知識がある方や将来の市場に対する動向分析に自信がある方に向いている年金保険であり、株価の変動や金利変動に強い興味を持っている方にも注目されています。

個人年金保険のメリット・デメリット

リスクが低く、私的年金として取り組みたい個人年金保険ですが、メリット・デメリットについて正確に把握しておくことが大切です。

メリット

1.    老後の年金として資金を準備できる
2.    所得税の控除対象となる

大きなメリットは老後の私的年金とすることができる点です。老後の生活の安定はもちろん、加入することで老後の不安が軽減され、自身のメンタルケアにも繋がります。
また、支払った保険料が「個人年金保険料控除」または「一般生命保険料控除」の適用対象になることも、利点として挙げられます。会社員は年末調整、個人事業主は確定申告で漏れがないよう申告しましょう。

デメリット

1.    途中で解約すると元本割れのリスクがある
2.    受取開始時期が決まっている

大きなデメリットは、中途解約には元本割れのリスクがあることです。iDeCoが原則として中途解約できないのに対し、個人年金保険の中途解約は容易です。しかし、解約してしまうと元本割れのリスクが高く、せっかくの資産形成が台無しになってしまいます。
また、個人年金保険では、60歳や65歳と受取時期をあらかじめ自分で設定できますが、受取時期の変更ができるかどうかは商品によって異なりますので注意が必要です。「繰り下げ受給」として受け取りを遅らせる場合、繰り下げによって増額となるケースもありますが、「繰り上げ受給」で受け取りを早める場合、年金額が減額されてしまいます。

まとめ

この記事では、老後を過ごすために必要な老後資金について解説しました。
金融庁による試算では、これからの日本は公的年金のみでは定年後の生活がまかなえないことが明らかになっており、若いうちから老後に向けた資産運用が必要です。
2019年時の試算時よりも人口減少は加速しており、さらにはインフレによる物価高が進み、「豊かな老後」と言うには2,000万円以上の準備をしなくてはなりません。試算をもとに日本の現状を把握し、まずは自分がどれだけの年金額を受給できるのか確認してみましょう。
そして、老後に必要な資金をシミュレーションして、自分に合う資産運用をなるべく早くスタートしてください。私的年金の準備としては、個人年金保険への加入も検討してみるとよいでしょう。
NISAやiDeCoなどの節税効果が高い制度を活用しながら、複数の資産運用を併用することも1つの手です。大切なのは、自身の年齢やライフスタイルに最適な運用法を見つけることです。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。

2024.04.30

資産運用

ベルテックスコラム事務局

老後資金は実際いくら必要?豊かな老後を過ごすために知っておくこと

  • 老後資金
  • iDeCo

老後の生活資金に対する不安を抱える人々の中で、具体的に必要な金額を正確に把握している人は少ないでしょう。生活費や医療費、家族への支援費、趣味や旅行などの余暇活動に加えて、将来のインフレーションなどの社会的な要因も考慮する必要があります。

この記事では、老後に必要な金額や適切な資産形成の方法、私的年金など、豊かな老後を迎えるために重要なお金に関する話題を詳しく解説します。

老後資金は実際いくら必要なのか

老後資金の必要額は個人の家族構成や生活スタイル、健康状態によって異なりますが、一般的には年金や退職金だけでは不十分とされています。国民の多くが、老後までに数百万円から数千万円の貯蓄が必要とされています。明るく幸せな老後を過ごすためには、現役時代から問題解決に向け、積極的な取り組みをしなければなりません。

老後2,000万円問題とは

老後資金を考える際の一つの目安として知られるのが「老後2,000万円問題」です。
これは、金融庁が試算および公表した報告書において、公的年金だけでは老後の生活費が不足し、個人の貯蓄から2,000万円の切り崩しが必要であるという結論が示された問題です。2018年9月から専門家によって「高齢社会における資産形成・管理」というテーマで12回にわたる議論が繰り返され、その試算結果が信頼性の高いものであることから、社会全体に大きな影響を与えました。

老後2,000万円問題のモデルケースは以下の定義としています。

【モデルケース】

1.夫が65歳以上かつ妻が60歳以上、ともに無職である夫婦二人の世帯
2.夫が95歳かつ妻が90歳になるまで生存し、夫婦ともに健康である
3.毎月の生活赤字が約5.5万円である
※金融庁試算:5.5(万円)×12(ヵ月)×30(年)=1,980(万円)

老後に必要な資金目安

老後2,000万円問題については、2020年に発生した新型コロナウイルスの影響を加味すると、再試算が必要であるかもしれません。なぜなら、試算が行われた2018~2019年時点と2024年現在では、物価高が全く異なるからです。日用品や医療費、介護費などすべてにおいて値上げがされています。そして、国の予想を超えて加速する単身者世帯の増加によって、試算に用いた根拠の正確性が危ぶまれます。
では、実際に老後を迎えた人々は、毎月どれだけの支出で生活をしているのでしょうか。

夫婦二人世帯の場合 

ここでは、総務省統計局による2022年「家計調査年報(家計収支編)」の調査結果(19頁)の内容を一部ご紹介しましょう。

項目 65歳以上の夫婦のみの無職世帯
食料 6万7,776円
住居 1万5,578円
光熱・水道 2万2,611円
家具・家事用品 1万371円
被服及び履物 5,003円
保健医療 1万5,681円
交通・通信 2万8,878円
教育 3円
教養娯楽 2万1,365円
その他の消費支出 4万9,430円
(諸雑費) 1万9,818円
(交際費) 2万2,711円
(仕送り金) 1,334円
消費支出 23万6,696円

 

日常の消費支出費は、平均23万6,696円ということが明らかになっています。
また、非消費支出費として以下の支出も挙がりました。

直接税 1万2,854円
社会保険料  1万8,945円
非消費支出 3万1,812円

 

これらを合計すると、毎月26万8,508円の支出があるようです。

単身世帯の場合 

次は、単身者世帯の支出額についてご紹介します。

項目 65歳以上の単身の無職世帯
食料 3万7,485円
住居 1万2,746円
光熱・水道 1万4,704円
家具・家事用品 5,956円
被服及び履物 3,150円
保健医療 8,128円
交通・通信 1万4,625円
教育 0円
教養娯楽 1万4,473円
その他の消費支出 3万1,872円
(諸雑費) 1万3,595円
(交際費) 1万7,893円
(仕送り金) 341円
消費支出 14万3,139円
直接税 6,660円
社会保険料 5,625円
非消費支出 12,356円

このような結果となり、支出額の合計は15万5,495円となりました。

1人あたりの公的年金の受給額はいくら?

老後における支出額の目安が分かったところで、次は収入額の目安を解説しましょう。老後の収入、つまり公的年金は、働いていた頃に収めた年金額によって異なります。カテゴリーで大別すると「会社員」と「個人事業主」に分けられ、両者の違いは「厚生年金」の有無にあります。

会社員の場合は月14万円

日本の年金制度は、「3階建て」で構成されています。
1階部分は20~60歳までの全ての国民が支払う国民年金、2階部分は公務員や民間企業の社員が支払う厚生年金、3階部分は企業独自の私的年金です。日本年金機構ホームページ内の「令和5年4月分からの年金額等について」では、令和5年の厚生年金(夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は、月額224,482円でした。(※1)
また、厚生年金加入者の毎月の平均受給額はここ数年14万5,000~7,000円程度で推移しています。

※1:平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

個人事業主の場合は月5万円

老後に特に備えが必要なのは、個人事業主です。
令和3年度の国民年金は満額で6万5,075円となっており、老後2,000万円問題でのモデルケースにみる「毎月の生活赤字5.5万円」をはるかに上回るでしょう。ただし、これは満額の場合の話であり、平均受給額は5万5,000~5万6,000円程度です。個人事業主の人は、老後に毎月10万円以上の生活赤字となる可能性があります。

老後資金2,000万円では足りない

令和5年の厚生年金の受給額は月額224,482円、毎月の支出額が26万8,508円となると、実際の生活赤字は4万4,026円です。このケースに当てはまる65歳以上の無職の夫婦世帯は、4.4(万円)×12(ヵ月)×30(年間)=1,584万円程度の不足で済むかもしれません。
個人事業主の場合、仮に夫婦で6.0(万円)×2(人)として、年金受給額が月額12.0万円だとしましょう。不足額を単純計算すると、14.8(万円)×12(ヵ月)×30(年間)=5,328万円です。
また、家計調査年報による支出額は、あくまで「普通の生活」を送っている場合です。趣味や旅行などの娯楽を楽しむ「ゆとりある生活」をするには、夫婦二人の平均支出額は37万9,000円必要であると言われています。そうなると、厚生年金の受給者夫婦でさえ月額15万円の不足ですので、老後資金2,000万円では到底足りなさそうです。

 

老後、生活費以外の必要資金は何か

老後に備える際、生活費だけでなく医療費や介護費用などの支出にも考慮が必要です。これらの必要資金を見落とさずあらかじめ計画に組み込むことが、安心した老後を迎えるための重要な一歩です。

リフォーム費用

マイホームを購入している場合、老後を迎え時点で住宅ローンを支払い終えている世帯もあるでしょう。だからと言って、安心していてはいけません。建物や設備の老朽化に備え、リフォーム費用の準備が必要です。
マンション住まいで毎月「修繕積立金」を支払っていても、将来に向けて値上がりすること、キッチンや洗面台、トイレなどの設備修繕は自己負担であることを見積もっておく必要があります。
一戸建てを購入している方は、外壁塗装や屋根の防水工事など、100万円を超える工事が必要となってきます。マンションのように計画的に貯蓄していく必要がありそうです。

医療費用

建物と同じで、人も年を取ると病気のリスクが高まり、健康を保つには身体のメンテナンスが必要です。必然的に通院費、薬剤費、検査費、入院費といった医療サービスの利用にかかる費用が増加します。
 

【出典】厚生労働省HP「医療費の一部負担(自己負担)割合について」より

医療費は上記の通り、年齢が上がるにつれて自己負担割合が減少していきます。しかし、厚生労働省保険局調査課が公表する「医療保険に関する基礎資料 ~令和3年度の医療費等の状況~」にれば、20代前半と比較して70代前半の医療費は6倍以上も跳ね上がっています。(以下参照)

医療費の自己負担額が2割に軽減されても、支出としてはかなりのダメージになることは間違いなさそうです。

介護費用

医療費よりもさらに負担額が大きいのは、介護費用です。生命保険文化センターは、令和3年度のデータとして過去3年間に介護経験がある人を対象に行った「生命保険に関する全国実態調査」を公表しています。

これによれば、介護ベッドの購入費用や住宅のバリアフリー化など一時支出の合計額は、平均74万円、おむつ代やデイサービスなどの施設利用料といった月々にかかる合計額は平均8.3万円であることが明らかになりました。(以下参照)

【介護に要した費用】

高齢者の中には、90歳近くでも介護が不要な人もいますし、自宅代わりとして特別養護老人ホーム(特養)へ完全入所する人もいます。また、特養は地方公共団体・社会福祉法人が設置する公的施設なので費用が安い一方、入所待ちの人が多く簡単には利用できません。そうなると、民間企業が運営する老人ホームへ入所することになりますが、特養と比較すると月額利用料は高額です。

お祝い費用

老後を迎える60代は、孫がいる世帯も多いことでしょう。晩婚化が進んでいる現代では、老後を迎えて初孫誕生もあり得ます。出産祝いから始まり、幼いうちは初節句や七五三、そして小学校から高校まで、入学や卒業の節目にはご祝儀が必要です。お祝いをしてあげたいのに資金不足、という現状がすでに多く見られますので、資金計画に組み込んでおきましょう。

葬儀・お墓費用

家族に負担を負わせないためには、人生の最終段階である葬儀やお墓の費用も、計画的に準備が必要です。葬儀費用には、会場手配や式場費用、遺体処置、花輪、弔電などが含まれます。
生命保険文化センターによれば、2022年の葬儀総額の平均は110万7,000円という結果が明らかになりました。(以下参照)

【出典】生命保険文化センター「葬儀にかかる費用はどれくらい?」より

老後資金を増やすためにやるべきこと5選

「2,000万円」をゴールに設定すると、到底達成できるはずがないと感じるかもしれません。しかし、以下5つのステップを踏むことで、着実に資金形成をすることが可能です。忙しい毎日の中から時間を捻出し、着実に資産形成していきましょう。

その1:もらえる年金額を調べる

まずは、自分が老後にどれだけの年金をもらえるか把握することから始めます。年金額は、以下の方法で調べることが可能です。

1.    「ねんきんネット」から年金記録を閲覧する
2.    「ねんきんダイヤル」へ電話をして確認する
3.    「ねんきん定期便」のはがきを確認する
4.    年金事務所で照会する

インターネットを利用して簡単に閲覧できますが、電話やはがき、年金事務所で確認する方法もあります。通常、ねんきん定期便では直近1年分の履歴しか確認できませんが、35歳、45歳、59歳の年には「封書版」のねんきん定期便が届きます。この定期便では全期間の確認ができますので、必ず保管しておくようにしましょう。

その2:生活費の見直しをする

次に、基本的なことですが生活費の見直しをすることです。
光熱費や通信費の見直し、外食や旅行が多い世帯は生活水準を下げるなど、できる節約は早めに取り掛かりましょう。特に、固定費が占める負担割合が大きいことに気付いていない世帯が多い傾向にあります。支出をできる限り抑え、その分を将来のための貯蓄・投資に回しましょう。

その3:目標を決めて資産運用を始める

上記1、2を行ったら、資産形成に向けて積極的に動き出しましょう。まずは、目標とするゴール設定をすることです。具体的に毎月いくら投資へ回し、いつまでにどれだけ増やすのかを考えます。
ここで大切なのは、自分の環境や生活水準、ライフスタイルに適した試算をすることです。自分の受給できる年金額によってゴールは異なりますし、資産運用を始める時の年齢や家族構成でも異なります。

その4:税制度を効果的に活用する 

次にすべきことは、節税対策です。
上記3で目標設定をすると、年率何パーセントで運用するべきか、またその年率の資産運用にはどのような商品があるのか、おのずと導かれます。NISAやiDeCoの非課税制度を利用し、目標達成できる商品を探してみましょう。
そして、日常生活での節税効果も同時に考えてみてください。例えば、一定額の支払い基準を超えたときに利用できる「医療費控除」や「生命保険控除」、ふるさと納税などによる「寄附金控除」などです。
一般的によく利用されている「扶養控除」や「配偶者控除」以外にも目を向け、家計から不要な出費がないよう「お金を守る」ことに意識を向けてください。

その5:副業などで収入アップを目指す

これまでの動きを実行できれば、漠然とした不安から解放され、将来の自分への安心感も増えるはずです。そして、現役として元気で健康に働けるうちに、副業などでもう少し収入アップをしておくと、より豊かな老後が実現できます。
会社員でもすぐに取り掛かれる副業には、単発アルバイト、せどり、Webライター・デザイナー、アフィリエイトなどがあります。特にパソコンを日頃から使っている人であれば、スムーズに開始できるでしょう。副業で得た収入を資産運用に投じることでより高い複利を得られ、老後資金の増収が見込めます。
ただし、会社規定で副業を禁止する企業も多くあります。罰則として強制解雇などもあり得ますので、よく調べてから始めるようにしてください。

豊かな老後を過ごすために資金を貯める方法【年代別】

年代によって異なる生活スタイルやライフステージに合わせて、資金形成の方法は異なります。若年層は長期的な投資スタイルが推奨され、中年層では収入の増加に伴って、投資の多様化が求められます。
そして、高齢者は安定した収入源や資産の管理をしなくてはなりません。それぞれの年代において、ライフプランやリスク許容度を考慮し、賢明な貯蓄や投資戦略を構築していきましょう。

20代~30代

日本の企業の多くは、戦後から「年功序列制度」を設けています。勤続年数や年齢が上がるごとにスキルや経験が増え、それに伴って給与が上がる人事制度のことです。最近では有能な人材確保のために実力社会になりつつありますが、それでもまだ年功序列制度が根強く残っています。
特に高校や大学を卒業してすぐの20代は給与が低い傾向にあります。金銭的な余裕がないうちは、少額でできる範囲で運用をスタートさせましょう。
新NISAのつみたて投資枠などを利用した長期運用が向いており、少額でも長い時間をかければ十分に資産形成は可能です。
また、独身でお金が自由に使えるうちに、海外旅行などを楽しむことも自分の人生の資産になります。今の自分の時間を大切にしながら、少しずつ投資について考えましょう。

40代~50代 

40~50代の世帯は一般的な傾向として、結婚して子供が学校(小学校~大学)へ通う頃です。若い頃に比べると年収が増えますが、その分子供にかかる食費や教育費なども増えます。
また、自分の老後資金や親の介護についても考え始める頃でしょう。人それぞれ大きく差が出る頃で、家計の収支バランス管理がとても重要になります。
株式投資で資産形成に挑戦することも正解ですし、債券投資によるローリスクな運用も正解です。大切なのは自分の資金力に合わせ、老後に向けて堅実な手法をとることです。

60代以降

60代に突入しても、再雇用制度や2025年に義務付けられる定年延長で、老後までの5年間のうちに資産運用したいという方もいるでしょう。また、65歳で定年を迎え、まとまった退職金が入ったので、今のうちに運用しておきたいという人もいるかもしれません。
運用を検討することは良いことですが、資産家や富裕層などでない限り、大きな利益を狙うことは控えましょう。退職金を運用したい場合、退職金専用定期預金で元本保証を意識したローリスク運用がおすすめです。

老後資金の形成に活用したい制度

先にも触れましたが、老後の資金を確保するには、NISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)が有用です。どちらも国が提供する制度で、高い節税効果を得られます。
以下で、それぞれの違いを解説します。

新NISA

NISA(少額投資非課税制度)は、個人が株式や投資信託などの金融商品を取引する際に、一定の条件を満たすことで得られる税制優遇措置です。
要するに、これらの投資から得た利益について、ある程度までは課税されないという制度です。2024年からは新NISAとして、内容が拡充され、節税効果が一層高まりました。幅広い投資対象が適用されるため、リスク分散や資産の成長に大きく貢献します。新NISAの非課税期間や要件について確認し、早めに活用していくことが重要です。

iDeCo

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人が自らの老後資金を積み立てるための私的年金制度です。
雇用者や個人事業主でも加入が可能で、毎月一定額を積み立てることで資産形成します。
iDeCoの特徴は、掛金全額の所得控除が可能であり、所得税や住民税を軽減できる点です。また、NISA制度のように運用益は非課税で、年金として受け取る際にも税制優遇措置が適用されます。
ただし、原則として60歳までは掛金の引き出しや途中解約はできず、毎月の掛金も年1回しか金額変更ができません。毎月自由に金額変更できるNISAと比べると柔軟性は劣りますが、高所得な人ほど高い節税効果を得られます。

老後資金でよく聞く「個人年金保険」とは?

個人年金保険とは、将来の生活資金の保障として設計された金融商品のことです。これは、個人が自ら老後の生活費や医療費を確保するために、保険会社と契約して保険料を支払うことで、将来的に受け取る私的年金として還元されます。
この章では、「個人年金保険」にフォーカスし、その種類やメリット・デメリットをご紹介します。

個人年金とは何か?iDecoとは違うの? 

個人年金保険は保険契約者が一定期間にわたって保険料を支払い、将来的に年金を受け取る仕組みです。保険会社が預かり、老後の安定した収入源となる年金として還元します。個人年金保険は、個人のニーズやリスクに合わせた多様なプランがあり、老後の生活設計に合わせて好きな商品を選択できます。
個人年金保険に加入するタイミングは、早ければ早いほどよいでしょう。例えば、30代の若いうちから加入を始めれば、掛け金が比較的低めに設定でき、将来の受け取り額の増加につながります。
iDeCoと個人年金保険はどちらも老後の私的年金を目的としていますが、その違いは運用面や税制優遇面に見られます。60歳までは原則として解約できないiDeCoに対し、個人年金保険は返戻金が減少しますが、途中解約が可能です。また、iDeCoは自分で商品の運用をして、払い込んだ掛金と運用益を老後に受け取ります。
一方、個人年金保険では毎月保険料を払い込むことで、一般的には保険料を上回る金額を年金として受け取ることが可能です。
両者にはいずれも税制優遇が適用されますが、その効果はiDeCoの方が高いとされています。

個人年金保険の種類

個人年金保険は、おおまかに「終身年金保険」「確定年金保険」「定額年金保険」「変額年金保険」があり、それぞれに特徴があります。これら4種類はどれも、将来の不安を少しでも軽減するための仕組みが備わっています。

終身年金

終身年金保険は、契約者が積立てた保険料を基に、一生涯にわたり定期的に年金を受け取る保険商品です。老後の資金として安定した収入源を確保したい方や、長生きリスクへの備えとして適しています。終身年金保険は、長期間に渡って安定した収入が見込めるため、退職後のライフプランの一環として利用されています。

また、終身年金保険には、保障内容や受け取り方に柔軟性があるため、個々のライフスタイルやニーズに合わせたプランを選択することができるのが特徴です。
年金の受取期間中に契約者が死亡した場合、通常は契約が終了となり、相続人が受け取ることはできません。ただし、保証期間付終身年金に加入することで、相続人に支払われるプランもあります。
終身年金保険には解約時の返戻率が低いという特性があり、途中で解約すると多くの費用が損失となる可能性があるため、契約前には条項をよく確認することが必要です。

確定年金

確定年金保険は、保険料を一定期間払い込み、将来定められた時期から一定額の年金を受け取ることができる保険商品です。確定年金保険は、契約時に受け取り額と受け取り期間が固定されており、リスクを抑えながら将来の収入を見積もることが可能です。
終身年金と異なり、保険期間が決められているため、期間満了後には収入が途絶えることになりますが、その分、受け取り期間中の収入は安定しているという特性があります。
確定年金保険は、加入時に自身に適したプランを選択することが重要です。加入者が受け取れる金額は確定していますが、インフレや経済状況の変化によって実質的な価値は変わる可能性があります。そのため、将来の経済状況を見据え、柔軟で長期的な視野を持ち計画を立てることが大切です。

定額年金

定額年金保険は、保険料の支払い期間中に何が起ころうとも、保証された一定の金額を受け取ることができる保険商品です。これは、市場の変動リスクを気にせずに済むため、安定した収入を求める方に適しています。毎月または年一回など、あらかじめ定められた期間と金額で年金が支払われるシステムは、老後の生活計画を立てやすいという特徴があります。また、保険期間や保険料の支払い方法に柔軟性があり、たとえば子供の教育費が一段落したタイミングで受取を開始するなど、ライフステージに応じた柔軟な対応が可能です。このタイプの年金は、将来の収入を予測しやすく、受給者が毎月の支出を計画しやすいことがメリットとなります。
さらに、死亡保障を付けることもでき、万が一の時には遺族に対する経済的な安心を提供します。

変額年金 

変額年金保険とは、加入者が支払う保険料が投資運用され、その運用成果に応じて年金額が変動する保険商品です。投資のリスクは加入者が負担する形となっており、株式や債券によって運用されるため、運用がうまくいけば受け取る年金の増収が見込める反面、運用が思うようにいかなければ年金額が減少するリスクもあります。したがって、加入時には慎重なリスク管理が求められるでしょう。投資の知識がある方や将来の市場に対する動向分析に自信がある方に向いている年金保険であり、株価の変動や金利変動に強い興味を持っている方にも注目されています。

個人年金保険のメリット・デメリット

リスクが低く、私的年金として取り組みたい個人年金保険ですが、メリット・デメリットについて正確に把握しておくことが大切です。

メリット

1.    老後の年金として資金を準備できる
2.    所得税の控除対象となる

大きなメリットは老後の私的年金とすることができる点です。老後の生活の安定はもちろん、加入することで老後の不安が軽減され、自身のメンタルケアにも繋がります。
また、支払った保険料が「個人年金保険料控除」または「一般生命保険料控除」の適用対象になることも、利点として挙げられます。会社員は年末調整、個人事業主は確定申告で漏れがないよう申告しましょう。

デメリット

1.    途中で解約すると元本割れのリスクがある
2.    受取開始時期が決まっている

大きなデメリットは、中途解約には元本割れのリスクがあることです。iDeCoが原則として中途解約できないのに対し、個人年金保険の中途解約は容易です。しかし、解約してしまうと元本割れのリスクが高く、せっかくの資産形成が台無しになってしまいます。
また、個人年金保険では、60歳や65歳と受取時期をあらかじめ自分で設定できますが、受取時期の変更ができるかどうかは商品によって異なりますので注意が必要です。「繰り下げ受給」として受け取りを遅らせる場合、繰り下げによって増額となるケースもありますが、「繰り上げ受給」で受け取りを早める場合、年金額が減額されてしまいます。

まとめ

この記事では、老後を過ごすために必要な老後資金について解説しました。
金融庁による試算では、これからの日本は公的年金のみでは定年後の生活がまかなえないことが明らかになっており、若いうちから老後に向けた資産運用が必要です。
2019年時の試算時よりも人口減少は加速しており、さらにはインフレによる物価高が進み、「豊かな老後」と言うには2,000万円以上の準備をしなくてはなりません。試算をもとに日本の現状を把握し、まずは自分がどれだけの年金額を受給できるのか確認してみましょう。
そして、老後に必要な資金をシミュレーションして、自分に合う資産運用をなるべく早くスタートしてください。私的年金の準備としては、個人年金保険への加入も検討してみるとよいでしょう。
NISAやiDeCoなどの節税効果が高い制度を活用しながら、複数の資産運用を併用することも1つの手です。大切なのは、自身の年齢やライフスタイルに最適な運用法を見つけることです。

この記事を書いた人

ベルテックスコラム事務局

不動産コンサルタント・税理士

不動産ソリューションの面白さや基礎、役に立つ情報や体験談などをフラットな目線で分かりやすくご紹介。宅建士・ファイナンシャルプランナー・税理士など有資格者の知見を生かしつつ、経験豊かなライターたちが不動産投資でおさえておきたいポイントをお届けします。